説明

難燃性ポリウレタン発泡体、及びその製造方法

【課題】ポリオール類の配合によって難燃性を向上させつつも、引張強度や引裂強度等の強度及び低圧縮残留歪性に優れた難燃性ポリウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】難燃性ポリウレタン発泡体は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られる。ポリオール類として、(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られる難燃性ポリウレタン発泡体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応及び発泡させてポリウレタン発泡体を製造する場合の発泡方法としては、化学的発泡法とメカニカルフロス法のいずれかの方法が用いられている。化学的発泡法は、混合原料中に、イソシアネートと反応してガスを発生させる化学的発泡剤や発泡体成形時の反応熱で気化する物理的発泡剤を添加し、これら発泡剤によって気泡を形成させる方法である。一方、メカニカルフロス法は、上記混合原料中に特定の発泡剤を添加することなく、混合原料を攪拌・混合する際に、不活性ガス等の圧縮気体を混入することによって気泡を形成させる方法である。
【0003】
化学的発泡法と比較して、メカニカルフロス法を採用した場合には、発泡時の発泡圧が低いことから、非常に高密度のポリウレタン発泡体が得られるという特徴がある。こうした特徴を生かして、メカニカルフロス法により得られたポリウレタン発泡体は、携帯電話、カメラ、テレビ等の電子機器部品における振動・衝撃緩衝用のクッション材や、防塵用のシール材として好適に使用されている。また、含有成分の非移行性や摩擦安定性に優れていることから足ゴムとして使用される場合もある。
【0004】
ところで、こうしたポリウレタン発泡体には難燃性の付与を目的として、ハロゲン系難燃剤や有機リン系の難燃剤等の難燃剤が添加されている。これらの難燃剤のなかでも、難燃作用が優れている点からハロゲン系の難燃剤が多く用いられているが、ハロゲン系の難燃剤は環境への負荷が大きいことから、可能な限り使用を避けたいという要求がある。たとえば、国際電気標準会議(IEC)、日本電子回路工業会(JPCA)、及び米国電子回路協会(IPC)では、プリント基板を対象として、臭素含量900ppm以下、塩素含量900ppm以下、且つ臭素と塩素の合計含量1500ppm以下といった閾値が設けられている。
【0005】
そのため、近年では難燃剤を用いることなく、ポリオール類の配合によってポリウレタン発泡体に難燃性を付与するという試みがなされている。たとえば、特許文献1には、ポリオール類としてポリエーテルポリオールと特定のポリマーポリオールとを併用することによってポリウレタン発泡体に難燃性を付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−111788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術は、水等の発泡剤を用いた化学的発泡法により発泡させて得られるポリウレタン発泡体に関する技術であり、メカニカルフロス法により発泡させて得られるポリウレタン発泡体に関する技術ではない。そこで、メカニカルフロス法により発泡させて得られるポリウレタン発泡体において、ポリオール類としてポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとの併用を試みたところ、ある程度の難燃性の向上効果を得ることはできるものの、引張強度や引裂強度等の強度の低下や加熱圧縮時に歪みが生じやすくなるといった問題があった。
【0008】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られるポリウレタン発泡体において、ポリオール類の配合によって難燃性を向上させつつも、引張強度や引裂強度等の強度、及び低圧縮残留歪性に優れた難燃性ポリウレタン発泡体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の難燃性ポリウレタン発泡体は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られる難燃性ポリウレタン発泡体であって、前記ポリオール類として、(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部とを含有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の難燃性ポリウレタン発泡体は、請求項1に記載の発明において、前記ポリイソシアネート類として、モノメリックイソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、又はそれらを出発原料として得られるプレポリマーを含有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の難燃性ポリウレタン発泡体は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記(C)第3のポリオールは、官能基数3のカプロラクトン系ポリエステルポリオールであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応させるとともに、メカニカルフロス法により発泡させる難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法であって、前記ポリオール類として、(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部とを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の難燃性ポリウレタン発泡体、及びその製造方法によれば、難燃性を向上させつつも、引張強度や引裂強度等の強度を向上させ、かつ低圧縮残留歪性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の難燃性ポリウレタン発泡体は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られるものである。なお、メカニカルフロス法は、混合原料中に特定の発泡剤を添加することなく、混合原料を攪拌・混合する際に、不活性ガス等の圧縮気体を混入することによって気泡を形成させる方法である。
【0015】
まず、混合原料に含有される各成分について説明する。
[ポリオール類]
ポリオール類として、少なくとも(A)ポリマーポリオールからなる第1のポリオール、(B)ポリエーテルポリオールからなる第2のポリオール、及び(C)ポリエステルポリオールからなる第3のポリオールの3種のポリオールが組合せて用いられる。
【0016】
(A)第1のポリオールは、数平均分子量1500〜4500(好ましくは2000〜4000)、官能基数3のポリマーポリオールであって、(B)第2のポリオール及び(C)第3のポリオールとの併用によりポリウレタン発泡体に難燃性を付与する。(A)第1のポリオールとしては、例えば、ベースポリオールとしての官能基数3のポリエーテルポリオール中でアクリロニトリル及びスチレン等のビニルモノマーをグラフト共重合させてなるポリマーポリオールを好適に用いることができる。上記ベースポリオールとしては、例えば、グリセリン等の3価の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールが挙げられる。なお、上記(A)第1のポリオールの数平均分子量は、ベースポリオールの数平均分子量を意味する。
【0017】
また、(A)第1のポリオールのポリマーコンテント(ポリマーポリオール全体に対するベースポリオール以外の部分の質量割合)は15〜45質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。ポリウレタン発泡体の強度を向上させるという観点においては、(A)第1のポリオールのポリマーコンテントは大きいほうが好ましいが、同ポリマーコンテントが45質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて作業性が低下するおそれがある。なお、(A)第1のポリオールとしては、一種のポリマーポリオールのみが含有されてもよいし、数平均分子量やポリマーコンテント等が異なる二種以上のポリマーポリオールが組み合わされて含有されてもよい。
【0018】
混合原料中における(A)第1のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、50〜80質量部であり、好ましくは55〜78質量部であり、より好ましくは58〜70質量部である。この含有量が50質量部未満である場合、難燃性が低下するおそれがあり、80質量部を超える場合、ある程度の硬さは得られるものの、引張強度や引裂強度等における強度不足となるおそれがある。
【0019】
(B)第2のポリオールは、数平均分子量300〜900(好ましくは、450〜750)、官能基数3のポリエーテルポリオールであって、(A)第1のポリオールとの併用によりポリウレタン発泡体に難燃性を付与するとともに、(C)第3のポリオールとの併用によりポリウレタン発泡体の引張強度等の強度及び低圧縮残留歪性を向上させる。
【0020】
(B)第2のポリオールとしては、例えば、グリセリン等の3価の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオールを好適に用いることができる。また、(B)第2のポリオールは、アミノ基等の水酸基以外の官能基を有していてもよい。そして、(B)第2のポリオールとして、一種のポリエーテルポリオールのみが含有されていてもよいし、数平均分子量や官能基等の異なる二種以上のポリエーテルポリオールが組み合わされて含有されてもよい。
【0021】
混合原料中における(B)第2のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、5〜16質量部である。この含有量が5質量部未満である場合、低圧縮残留歪性を十分に得ることができなくなるおそれがあり、16質量部を超えると低反発性が発現する。高反発性のポリウレタン発泡体を得るという観点においては、上記含有量を16質量部以下にすることが好ましい。また、(B)第2のポリオールの上記含有量を7〜10質量部とした場合には、ポリウレタン発泡体に高反発性を付与することができる。
【0022】
(C)第3のポリオールは、官能基数2又は3のポリエステルポリオールであって、(A)第1のポリオールとの併用によりポリウレタン発泡体に難燃性を付与するとともに、(B)第2のポリオールとの併用によりポリウレタン発泡体の引張強度及び低圧縮残留歪性を向上させる。また、(C)第3のポリオールは、ポリウレタン発泡体のセルを微細化、及び均一化する作用も有している。
【0023】
(C)第3のポリオールの分子量(数平均分子量)は、400〜2500の範囲であることが好ましく、450〜1500の範囲であることがより好ましい。(C)第3のポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、アジペート系ポリエステルポリオール等を用いることができる。ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環付加重合させて得たポリエステルポリオールが挙げられる。アジペート系ポリエステルポリオールとしては、例えば、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリエステルポリオールのなかでも、難燃性の向上及び揮発性有機化合物含量の低減という観点から官能基数3のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0024】
混合原料中における(C)第3のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部としたとき、1〜6質量部であり、好ましくは2〜5質量部である。この含有量が1質量部未満である場合には低反発性が発現する。高反発性のポリウレタン発泡体を得るという観点においては、上記含有量を1質量部以上にすることが好ましい。また、上記含有量が6質量部を超える場合、低圧縮残留歪性が損なわれて、圧縮残留歪が増大するおそれがある。
【0025】
また、ポリオール類として、上記第1〜3のポリオール以外のその他のポリオールを含有してもよい。その他のポリオールとしては、ポリウレタン発泡体に一般に用いられるポリオールであれば特に限定されることなく用いることができる。なお、上記ポリオール類には、成分の酸化を抑制するために酸化防止剤が配合される場合があるが、揮発性有機化合物含量の低減という観点から、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を使用していないBHTフリーのポリオール類を用いることが好ましい。BHTフリーのポリオール類としては、例えば、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用したポリオールが挙げられる。
【0026】
[ポリイソシアネート類]
ポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート類、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー類、カルボジイミド変性ポリイソシアネート類等の変性ポリイソシアネート類を用いることができる。また、これらのポリイソシアネート類は、一種のみ含有されていてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されていてもよい。
【0027】
なお、ポリイソシアネート類は、ハロゲン含量(特に塩素含量)の低減という観点から、モノメリックイソシアネート(たとえば、モノメリックMDI)、カルボジイミド変性イソシアネート、又はそれらを出発原料として得られるイソシアネート基末端を有するプレポリマーを用いることが好ましい。また、ポリイソシアネート類の官能基数は2.0〜2.2の範囲であることが好ましい。
【0028】
なお、ポリイソシアネート類のイソシアネートインデックスは0.9〜1.1の範囲であることが好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリオール類におけるイソシアネートと反応し得る水酸基等の反応基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比である。従って、その値が1未満の場合には水酸基等の反応基がイソシアネート基より過剰であることを意味し、1を越える場合にはイソシアネート基が水酸基等の反応基より過剰であることを意味する。イソシアネートインデックスが0.9未満の場合、ポリオール類がポリイソシアネート類と十分に反応することができなくなるおそれがある。一方、イソシアネートインデックスが1.1を越える場合、低圧縮残留歪性の悪化や低反発性の発現をまねくおそれがある。
【0029】
[整泡剤]
整泡剤は混合原料の発泡を円滑に行うために用いられるものであり、混合原料は好ましくは整泡剤を含有する。整泡剤としては、メカニカルフロス法を採用した場合に通常使用される公知の整泡剤、例えば、シリコーン系整泡剤を用いることができる。こうした整泡剤は粘度が高いことから、通常、アルキルベンゼン等の溶剤により希釈した状態として混合原料中に配合される。
【0030】
ここで、揮発性有機化合物含量の低減、及び難燃性の向上という観点から、上記溶剤として粘度500cps以下(好ましくは粘度40cps〜500cps)の低粘度ポリオールを用いることが好ましい。上記低粘度ポリオールとしては、例えば、分子量(数平均分子量)1700以下のポリエーテルポリオールや、常温で液体のポリオールが挙げられる。上記低粘度ポリオールの官能基数は特に限定されないが、1〜3官能であることが好ましい。また、上記低粘度ポリオールとして、商品の名称が架橋剤等であるものを用いることもできる。
【0031】
溶剤としての低粘度ポリオールは、反応原料中においてイソシアネート類と反応してポリウレタンの分子内に取り込まれる。これにより、低粘度ポリオールの揮発を抑制することができる。なお、上記低粘度ポリオールの粘度が500cps以下であれば、水酸基がイソシアネート類と好適に反応する。
【0032】
混合原料中における整泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、3〜6質量部であることが好ましい。この含有量が3質量部未満である場合、整泡力が不足してしまい、均一なセル構造の形成や低密度化することが困難になるおそれがある。また、6質量部を超えて含有させても、これ以上の飛躍的な整泡力の向上は期待できない。また、整泡剤を溶剤により希釈する場合には、質量比(整泡剤:溶剤)で25:75〜75:25の範囲とすることが好ましい。
【0033】
[触媒]
触媒は主としてポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものであり、混合原料は好ましくは触媒を含有する。触媒としては、ポリウレタン発泡体に通常使用される公知の触媒、例えば、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、スタナスオクトエート、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラートを用いることができる。
【0034】
混合原料中における触媒の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。この含有量が0.1質量部未満である場合、ウレタン化反応を十分に促進させることができないおそれがあり、5.0質量部を超える場合、ウレタン化反応が過剰に促進されてセル構造の形成が不均一になりやすい。
【0035】
[架橋剤]
架橋剤はポリオール類間に架橋を形成して強度等を向上させるために用いられるものであり、混合原料は好ましくは架橋剤を含有する。架橋剤としては、ポリウレタン発泡体に通常使用される公知の架橋剤、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの活性水素化合物にエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等を付加した化合物を挙げることができる。
【0036】
混合原料中における架橋剤の含有量は、ポリオール類100質量部に対して、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。この含有量が2.0質量部未満である場合、引張強度等の強度不足となるおそれがある。また、10.0質量部を超える場合、硬度が硬くなりすぎたり、低反発性が発現したりするおそれがある。
【0037】
[その他の成分]
混合原料は必要に応じて上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、可塑剤、抗菌剤、及び着色剤が挙げられる。なお、酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられるが、揮発性有機化合物含量の低減という観点から、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。増粘剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0038】
次に、本実施形態の難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法について説明する。
本実施形態の難燃性ポリウレタン発泡体は、メカニカルフロス法を採用した場合に用いられる一般的なポリウレタン発泡体の製造方法により製造することができる。たとえば、上記混合原料をミキシングヘッド内に投入した後、不活性ガスを混入しながら均質となるように攪拌して混合する。次いで、ミキシングヘッド内で混合された混合原料を離型紙等の上や所定の成形型内で加熱硬化させることにより、難燃性ポリウレタン発泡体を得ることができる。
【0039】
こうして得られた難燃性ポリウレタン発泡体は、難燃剤を使用せずとも難燃性に優れたものとなるとともに、引張強度、引裂強度、及び低圧縮残留歪性に優れたポリウレタン発泡体となる。なお、本実施形態の難燃性ポリウレタン発泡体は、例えば、携帯電話、カメラ、テレビ等の電子機器部品における振動・衝撃緩衝用のクッション材、及び防塵用のシール材に好適に適用することができる。
【0040】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)難燃性ポリウレタン発泡体は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られる。ポリオール類として、(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部とを含有する。上記構成によれば、難燃剤を用いずともポリウレタン発泡体の難燃性を向上させることができるとともに、そのポリウレタン発泡体は引張強度や引裂強度等の強度及び低圧縮残留歪性に優れたものとなる。
【0041】
(2)好ましくは、ポリイソシアネート類として、モノメリックイソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、又はそれらを出発原料として得られるプレポリマーを含有する。この場合、ポリウレタン発泡体中に含有されるハロゲン量を低減することができる。
【0042】
(3)好ましくは、(C)第3のポリオールは、官能基数3のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールである。この場合、ポリウレタン発泡体の難燃性をさらに向上させることができるとともに、ポリウレタン発泡体中に含まれる揮発性有機化合物含量を低減することができる。
【0043】
なお、ポリウレタン発泡体を電子機器等の用途で使用した場合には、ポリウレタン発泡体から発生する揮発性有機化合物は、ガラスや透明なプラスチックの内面を曇らせるという問題を生じさせる。そのため、揮発性有機化合物含量を低減させた難燃性ポリウレタン発泡体は、電子機器等の用途に特に好適に用いることができる。
【0044】
(4)好ましくは、混合原料中における(B)第2のポリオールの含有量は、ポリオール類全体を100質量部として7〜10質量部含有する。この場合、難燃性ポリウレタン発泡体に高反発性を付与することができる。
【0045】
(5)難燃性ポリウレタン発泡体の製造時において、好ましくは、混合原料中に、整泡剤を粘度500cps以下のポリオールにより希釈した状態で含有させる。この場合、ポリウレタン発泡体中に含まれる揮発性有機化合物含量を低減することができる。
【0046】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記(B)第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として7〜10質量部含有することを特徴とする前記難燃性ポリウレタン発泡体。
【0047】
(ロ)前記混合原料中に、整泡剤を粘度500cps以下のポリオールにより希釈した状態で含有させることを特徴とする前記難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法。
【実施例】
【0048】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
[難燃性ポリウレタン発泡体の製造]
まず、各実施例及び各比較例のポリウレタン発泡体に用いた混合原料の成分を以下に示す。
【0049】
ポリマーポリオール1:数平均分子量3000、官能基数3、ポリマーコンテント20質量%のポリマーポリオール(三洋化成工業社製、サンニックスFA−728R)
ポリマーポリオール2:数平均分子量3000、官能基数3、ポリマーコンテント40質量%のポリマーポリオール(三洋化成工業社製、シャープフローFS−7301)
ポリエーテルポリオール:数平均分子量600、官能基数3のポリオキシプロピレングリセリルエーテル(三洋化成工業社製、サンニックスGP−600)
ポリエステルポリオール1:分子量850、官能基数3のポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業社製、プラクセル308)
ポリエステルポリオール2:分子量530、官能基数2のアジペート系ポリエステルポリオール(アデカ社製、アデカニューエース Y65−55)
その他のポリオール1:数平均分子量2000、官能基数2のポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業社製、サンニックスPP−2000)
その他のポリオール2:数平均分子量400、官能基数2のポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業社製、サンニックスPP−400)
イソシアネート1:モノメリックMDIをカルボジイミド変性したカルボジイミド変性イソシアネート、NCO含量31%(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMTL)
イソシアネート2:ポリイソシアネート、NCO含量31%(日本ポリウレタン工業社製、C−1130)
整泡剤1:シリコーン系整泡剤(ポリジメチルシロキサン及びポリオキシアルキレン)を、低粘度ポリオール(粘度60cpsの低分子量ポリエーテルポリオール)を用いて質量比(整泡剤:溶剤)50:50で希釈した物質(モメンティブ社製、L−5617)
整泡剤2:シリコーン系整泡剤(ポリジメチルシロキサン及びポリオキシアルキレン)を、アルキルベンゼンを用いて質量比(整泡剤:溶剤)50:50で希釈した物質(モメンティブ社製、L−5614)
架橋剤:1,4ブタンジオール(三協化学社製)
触媒:スタナスオクトエート(城北化学社製)
増粘剤:炭酸カルシウム(白石カルシウム社製)
着色剤:油性加工顔料(山陽色素社製)
上記各成分を下記表1及び2に示す配合割合で調製し、各実施例及び各比較例の混合原料を得た。なお、表1及び2中の(A)〜(C)の標記は本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示すとともに、表1及び2中の各成分の数値は質量部を表す。次いで、混合原料をミキシングヘッド内に投入し、不活性ガス(窒素)を69〜77体積%の範囲で混入しながら均質となるように攪拌して混合した。その後、混合された混合原料を連続的に供給される所定厚みのフィルム上に供給し、120〜200℃にて加熱硬化させることにより、シート状のポリウレタン発泡体を得た。
【0050】
なお、比較例1は(B)第2のポリオールを含有しない例、比較例2は(C)第3のポリオールを含有しない例、比較例3は(C)第3のポリオールの含有量が多い例をそれぞれ示すものである。また、比較例4は難燃剤を含有させることによって、難燃性を発揮させている従来の難燃性ポリウレタン発泡体である。
【0051】
次に、得られた各実施例及び各比較例のポリウレタン発泡体について、引張強度、引裂強度、圧縮残留歪、難燃性、及び塩素含量の評価を行った。また、これらの評価に加えて、反発性及び揮発性有機化合物含量についても評価を行った。その結果を表1及び2に示す。
【0052】
[引張強度の評価]
JIS K6251に準拠して引張強度の測定を行った。
[引裂強度の評価]
JIS K6252に準拠して引裂強度の測定を行った。
【0053】
[圧縮残留歪の評価]
JIS K6401に準拠して圧縮残留歪の測定を行った。
[難燃性の評価]
UL94の規定に準拠して難燃性の評価を行った。具体的には、各実施例及び各比較例のポリウレタン発泡体から切り出した試験片(縦50±1mm×横150±5mm×任意の厚さ)を、水平に保持した金網の上に水平に置き、その片端に炎を60±11秒間接炎させ、燃焼速度及び燃焼挙動を観察した。そして、以下の評価基準により難燃性の評価を行った。
【0054】
◎:試験片の片端から25mmの位置を基準(表線)として、表線から100mmに達する前に消火した。
○:表線から100mm間の燃焼速度が40mm/分以下である。
【0055】
×:表線から100mm間の燃焼速度が40mm/分を超える。
[塩素含量の評価]
BS EN 14582:2007に準拠してイオンクロマトグラフにより塩素含量の評価を行った。
【0056】
[反発性の評価]
各実施例及び各比較例のポリウレタン発泡体から切り出したφ15mmよりも十分に大きい試験片に対して、低圧荷重器により荷重1kgを負荷して押圧するとともに、5秒後に押圧を解除した。そして、押圧を解除してから元の厚みに復元するまでの復元時間(秒)を測定した。なお、復元時間が2秒以下であれば、反発性が良好であり、4秒を超えると低反発性を発現する。
【0057】
[揮発性有機化合物含量の評価]
ドイツ自動車工業会(VDA)において定められるVDA278に準拠して揮発性有機化合物(VOC)含量の評価を行った。具体的には、各実施例及び各比較例のポリウレタン発泡体から切り出した試験片(7mg)をガラスチューブに入れ、温度90℃、時間30分の条件下で熱脱着装置にかけ、熱脱着時に発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計により分析した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

表2に示すように、難燃剤を含有する比較例4は優れた難燃性を有するものの、塩素含量が極めて高いことが分かる。一方、表1及び2に示すように、(A)第1のポリオール、(B)第2のポリオール、及び(C)第3のポリオールをすべて含有する各実施例は、難燃剤を含有せずとも、難燃剤を含有する比較例4と略同等の優れた難燃性を有している。そして、各実施例は引張強度が0.59を超え、引裂強度が1.8を超え、圧縮残留歪が10%未満であり、強度及び低圧縮残留歪性に優れていることが分かる。
【0060】
これに対して、(B)第2のポリオールを含有しない比較例1は、優れた難燃性を有するものの、引張強度及び圧縮残留歪の評価が低い結果であった。一方、(C)第3のポリオールを含有しない比較例2も同様に優れた難燃性を有するものの、引張強度の評価が低い結果であった。この結果から、(A)第1のポリオールに対して、(B)第2のポリオール又は(C)第3のポリオールのいずれか一方を加えたのみでは、引張強度及び引裂き強度ともに高強度とし、同時に低圧縮残留歪性を発揮させることはできず、(B)第2のポリオール及び(C)第3のポリオールの両方を加えた場合に初めて高強度及び低圧縮残留歪性を発揮させることができることが推測できる。また、比較例3の結果から、第1〜3のポリオールをすべて含有する場合であっても、(C)第3のポリオールを過剰に含有する場合には、低圧縮残留歪性を発揮させることができないことが分かる。
【0061】
さらに、イソシアネート類として、カルボジイミド変性イソシアネートを用いた実施例4は、ポリメリックイソシアネートを用いた実施例10と比較して塩素含量が少ない結果であった。低粘度ポリオールにて希釈した整泡剤を用いた実施例4は、アルキルベンゼンにて希釈した整泡剤を用いた実施例11と比較して揮発性有機化合物含量が低い結果であった。(C)第3のポリオールとして、官能基数3のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールを用いた実施例4は、アジペート系ポリエステルポリオール用いた実施例12と比較して揮発性有機化合物含量が低い結果であった。さらに、(B)第2のポリオールを7〜10質量部の範囲で含有する実施例3〜12は、同範囲外である実施例1及び2と比較して反発性が大きいという結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応、及びメカニカルフロス法により発泡させて得られる難燃性ポリウレタン発泡体であって、
前記ポリオール類として、
(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、
(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、
(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部と
を含有することを特徴とする難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート類として、モノメリックイソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、又はそれらを出発原料として得られるプレポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記(C)第3のポリオールは、官能基数3のカプロラクトン系ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項4】
ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む混合原料を反応させるとともに、メカニカルフロス法により発泡させる難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法であって、
前記ポリオール類として、
(A)数平均分子量1500〜4500、官能基数3のポリマーポリオールからなる第1のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として50〜80質量部と、
(B)数平均分子量300〜900、官能基数3のポリエーテルポリオールからなる第2のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として5〜16質量部と、
(C)官能基数2又は3のポリエステルポリオールからなる第3のポリオールを、前記ポリオール類全体を100質量部として1〜6質量部と
を用いることを特徴とする難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−82273(P2012−82273A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228139(P2010−228139)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(593139123)株式会社ロジャースイノアック (13)
【Fターム(参考)】