説明

難燃性吸音材

【課題】難燃性を有し、150Hz以下の低周波領域のみならず150Hzを超える高周波領域の広帯域の騒音を効果的に吸収し、製品形態の自由度を向上させる。
【解決手段】
本発明の難燃性吸音材は、音源側に配置される発泡体層1と、発泡体層1の剛壁3側に積層される多孔質体層2とを備えている。
発泡体層1は、分子量500〜5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、イソシアネートおよび難燃剤の各成分を原料成分とする発泡体で形成されている。
多孔質体層2は、グラスウール、ロックウール、粗毛フェルト、植物繊維系フェルト、動物繊維系フェルト、合成繊維系フェルトの何れかまたはこれらの混合物で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性吸音材に係り、特に、米連邦自動車安全規格FMVSS302に適合し、自動車エンジンルーム等の難燃性が必要とされる場所に配設することができる難燃性吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の吸音材として、(a)グラスウールやロックウール等から成る多孔質体層を使用するもの、(b)音源側に空気層を設けたもの、(c)吸音材の音源側に空気層を設けて成るもの、(d)通気度が5〜100倍異なる高密度と低密度の繊維集合体を少なくとも2層以上積層して成るものなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、(a)および(b)の吸音材においては、周波数帯域が500Hzを超えるような騒音や500Hz以下の騒音に対して、所要の吸音効果を発揮させるためには、多孔質体層の肉厚を厚くしなければならず、ひいては、全体的に吸音材の重量が重くなるという難点があった。また、(c)の吸音材においては、吸音材の音源側に空気層が存在するため、吸音材の重量が重くなり、また、スペースを広くとらなければならないという難点があった。一方、(d)の吸音材は、空気の粘性抵抗を利用し、音波のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸音する多孔質吸音構造体に、さらに密度が異なる繊維集合体を積層することで、高密度部分が付加質量、低密度部分がバネの役割を担う、いわゆる動吸振機を構成させて特に低周波数帯域の吸音率を向上させるものであるが、このような構成の吸音材においては、特に100Hz以下のいわゆる低周波帯域においては、十分な吸音効果が得られないという難点があった。また、低周波帯域の音や振動は空気伝搬音だけではなく、建物や窓のがたつきなども発生するため、固体伝搬音および振動防止に対する対策を同時に行う必要があり、従来の吸音材ではその対策が困難であった。
【0004】
このため、本出願人は、先に、空気の粘性抵抗を利用し、音波のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸音する多孔質吸音構造体に、さらに密度が異なる繊維集合体を積層した吸音材を開発し、出願している(特開2003−316364号公報)。
【0005】
この吸音材は、音源側に配置される発泡体層と、この発泡体層の剛壁側に積層される多孔質体層とを備えている。ここで、発泡体層は、分子量500〜5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、およびイソシアネートの各成分を含有する発泡体で形成され、また、多孔質体層は、汎用のグラスウールで形成されている。
【0006】
このような構成の吸音材によれば、高密度部分が付加質量、低密度部分がバネの役割を担う、いわゆる動吸振機を構成させて、特に低周波数帯域の吸音率を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、このような構成の吸音材においては、次のような難点があった。
【0008】
第1に、吸音材自身に難燃性が付与されていないため、特に難燃性が必要とされる場所、例えば、自動車のエンジンルーム等に配設することができない。
【0009】
第2に、多孔質体層を構成するグラスウールは、150Hz以上の高周波領域、若しくは150Hz以下の低周波領域では吸音効果が弱くなる。
【0010】
第3に、発泡体層と多孔質体層とが一体成型され、この一体成型に際して発泡体層の音源側に表面皮膜が形成されるため、製品の自由度を向上させることができない。すなわち、発泡体層と多孔質体層との一体成形の際に表面皮膜が同時に形成されるため、所要の吸音特性を発揮させるためには、発泡体層の音源側や多孔質体層の剛壁側を変更しなければならない。
【0011】
【特許文献1】特開平8−152890号公報
【特許文献2】特開2003−316364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、第1に、難燃性が必要とされる自動車エンジンルーム等に配設でき、第2に、150Hz以下の低周波領域のみならず150Hzを超える高周波領域の広帯域の騒音を効果的に吸収し、第3に、製品形態の自由度を向上させることができる難燃性吸音材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様である難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、発泡体層の剛壁側に積層される多孔質体層とを備えるものである。
【0014】
本発明の第2の態様である難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、発泡体層の音源側に積層される第1の多孔質体層と、発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層とを備えるものである。
【0015】
本発明の第3の態様である難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、発泡体層の音源側面に形成され、それ自身の音源側が摩擦加工により粗面化されている被膜面とを備えるものである。
【0016】
本発明の第4の態様である難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、発泡体層の音源側に接着される被膜層とを備えるものである。
【0017】
本発明の第5の態様である難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、発泡体層の音源側に当接される被膜層とを備えるものである。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、発泡体層は、分子量500〜5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、およびイソシアネート、難燃剤の各成分を原料成分とするものである。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、発泡体の密度は、50〜500kg/mであるものである。
【0020】
本発明の第8の態様は、第1の態様乃至第7の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、第1のジオールに含まれる水酸基含量と、第2のジオールに含まれる水酸基含量の比は、1:0.3〜2.5であるものである。
【0021】
本発明の第9の態様は、第1の態様乃至第8の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、無機充填材の含量は、第1のジオール100重量部に対して10〜200重量部であるものである。
【0022】
本発明の第10の態様は、第1の態様乃至第9の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、発泡剤としての水の含量は、第1のジオール100重量部に対して2〜5重量部であるものである。
【0023】
本発明の第11の態様は、第1の態様乃至第10の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、第1、第2のジオール、および発泡剤としての水の水酸基含量の合計と、イソシアネートのイソシアネート含量との比であるイソシアネートインデックス(NCO/OH)は、0.5〜1.0の範囲にあるものである。
【0024】
本発明の第12の態様は、第1の態様乃至第11の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、イソシアネートインデックスは、0.6〜0.9の範囲にあるものである。
【0025】
本発明の第13の態様は、第1の態様乃至第12の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、難燃剤の含量は、第1のジオール100重量部に対して2〜100重量部であるものである。
【0026】
本発明の第14の態様は、第1の態様乃至第13の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、第1のジオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールのうちから選択されたいずれかのジオールであるものである。
【0027】
本発明の第15の態様は、第1の態様乃至第14の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、第2のジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の脂肪族系若しくはN、N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の芳香族系のうちから選択されたいずれかのジオールであるものである。
【0028】
本発明の第16の態様は、第1の態様乃至第15の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、無機充填材は、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのうちから選択されたいずれかの無機充填剤であるものである。
【0029】
本発明の第17の態様は、第1の態様乃至第16の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、イソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネートのうちから選択されたいずれかのイソシアネートであるものである。
【0030】
本発明の第18の態様は、第1の態様乃至第17の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン等の窒素系、シリコーンパウダー、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系、ホウ酸亜鉛のうちから選択されたいずれかの難燃剤であるものである。
【0031】
本発明の第19の態様は、第1の態様乃至第18の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、第1の多孔質体層および第2の多孔質体層のうち少なくとも一方は、グラスウール、ロックウール、粗毛フェルト、植物繊維系フェルト、動物繊維系フェルト、合成繊維系フェルトの何れかまたはこれらの混合物から成るものである。
【0032】
本発明の第20の態様は、第1の態様乃至第19の態様の何れかの態様である難燃性吸音材において、米連邦自動車安全規格FMVSS302に定める燃焼速度が10cm/分未満であるものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の第1の態様乃至第20の態様の難燃性吸音材によれば、次のような効果がある。
【0034】
第1に、吸音材自身に難燃性が付与されているので、当該難燃性吸音材を難燃性が必要とされる場所、例えば自動車のエンジンルーム等に配設することができ、また、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤や鉛系化合物が使用されていないので、燃焼時に有毒ガスが発生する虞がなく、環境保全対策を施した難燃性吸音材を提供することができる。
【0035】
第2に、難燃性を有する発泡体層の両面に多孔質体層を備えることにより、150Hz以上の高周波領域における吸音特性が向上し、ひいては、広帯域の周波数領域においても対応可能な難燃性吸音材を提供することができる。
【0036】
第3に、難燃性吸音材の表面皮膜に針状部材で孔等を設けることにより、難燃性を有する発泡体層の通気性が向上し、ひいては、低周波領域の吸音特性を向上させることができる。
【0037】
第4に、難燃性を有する発泡体層の音源側に、別体で形成された被膜層を接着・当接させることにより、製品形態の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の難燃性吸音材を適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明における難燃性吸音材の第1の実施の形態を示す断面図である。
【0039】
同図において、本発明の難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層1と、発泡体層1の剛壁3側に積層される多孔質体層2とを備えている。
【0040】
難燃性を有する発泡体層1としては、連続気泡発泡を有する発泡体が用いられる。これは音波が発泡体層1に入射した場合、間隙部分の空気が振動し、この空気の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換されて吸音が行われるとともに、制振性も有しているために発泡体層1自身が振動し、この時の粘性抵抗によって音波のエネルギーが熱エネルギーに変換され吸音が行われるためである。また、難燃性を有する発泡体層1の片面に、多孔質体層2を積層するのは、発泡体層1部分が付加質量、すなわち錘の役割として作用し、多孔質体層部分がバネ、すなわち空気バネの役割として作用し、膜振動による吸音を行わせるためである。
【0041】
このような難燃性を有する発泡体層1は、次のような発泡体で形成されている。
【0042】
第1に、発泡体は、分子量500〜5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、イソシアネートおよび難燃剤の各成分を原料成分としており、特に主ポリマーである第1のジオールを分子量500〜5000、好ましくは分子量1000〜2000のジオールとすることにより制振性を付加した発泡体を得ることができる。ここで、この主ポリマーを分子量500未満のジオールで構成すると、硬い発泡体となり、制振性が得られず、また、分子量が5000を超えるジオールで構成すると、初期粘度が高くなり、所要の発泡体が得られなくなる。なお、主ポリマーとして、トリオールや本発明に用いるジオール以外のポリオールを使用した場合には、制振性を得ることが困難になる。
【0043】
第2に、発泡体の密度は、50〜500kg/mの範囲にあることが好ましい。密度が50kg/m未満では通気性が良くなり過ぎて、低周波数領域の吸音効率が悪くなり、500kg/mを超えると反対に通気性が悪くなり過ぎて、音が反射し吸音が困難になるからである。
【0044】
第3に、発泡体を構成する第1のジオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどが好適する。
【0045】
第4に、発泡体を構成する第2のジオールは、本発明の発泡体層1の鎖延長剤として使用され、補強の役割を果たす。ここで、分子量が500以下としたのは、分子量が500を超えると補強効果が得られなくなるからである。また、この成分をトリオールや本発明に用いるジオール以外のポリオールにした場合は補強効果が大きくなり過ぎ、制振性を損なってしまう。
【0046】
第5に、発泡体を構成する第2のジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の脂肪族系若しくはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の芳香族系のジオールなどが好適する。
【0047】
ここで、発泡体に用いられる第1のジオールに含まれる水酸基含量と第2のジオールに含まれる水酸基含量との比は1:0.3〜2.5が好ましい。第2のジオールの水酸基含量の比が0.3未満になると補強効果が不十分になり、水酸基含量の比が2.5を超えても効果に差異が見られないからである。
【0048】
第6に、発泡体を構成する無機充填剤は、発泡体層を補強し、制振性を付加する目的で使用される。この無機充填剤は、分子量500〜5000の第1のジオール100重量部に対して10〜200重量部配合することが好ましい。10重量部未満では充分な補強や制振性の付加を行うには効果が小さく、200重量部を超えると成型前の組成物の粘度が高くなり成型が困難になるからである。
【0049】
第7に、発泡体を構成する無機充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが好適である。
【0050】
第8に、発泡体を構成する水は、発泡剤として用いられる。発泡剤の添加量は、発泡体が得られる量であればよいが、分子量500〜5000の第1のジオール100重量部に対して2〜5重量部が好適である。2重量部未満では充分な発泡が行われず、5重量部を超えても効果に大きな差異が見られないからである。
【0051】
第9に、発泡体を構成するイソシアネートは、基本的にはウレタン発泡体の製造に使用されるものを用いることができるが、特に2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネートなどが好適し、これらのイソシアネートを単独若しくは混合して使用することができる。
【0052】
第10に、発泡体に適度な剛性と制振性を付与するためには、第1のジオール、第2のジオール、および発泡剤としての水の水酸基含量の合計と、イソシアネートのイソシアネート含量の比であるイソシアネートインデックス(NCO/OH)が、0.5〜1.0、好ましくは0.6〜0.9の範囲にあることが望ましい。イソシアネートインデックスが0.5未満では架橋度が少なくなって剛性が低下し、1.0を超えると適度な剛性は得られるものの制振性が低下するからである。
【0053】
第11に、発泡体を構成する難燃剤は、発泡体層1に難燃性を付加する目的で使用される。この難燃剤の含量は、第1のジオール100重量部に対して2〜100重量部配合することが好ましい。また、この難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン等の窒素系、シリコーンパウダー、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系、ホウ酸亜鉛のうちから選択されたいずれかの難燃剤が好適する。
【0054】
第12に、上記の発泡体には、通常のウレタン発泡体層の製造に使用される触媒、製泡剤、難燃剤、可塑剤、着色剤等を目的に応じて適宜添加してもよい。
【0055】
次に、多孔質体層2は、次のようなもので形成されている。
【0056】
第1に、多孔質体層2は、グラスウール、ロックウール、粗毛フェルト、植物繊維系フェルト、動物繊維系フェルト、合成繊維系フェルトの何れかまたはこれらの混合物から成るもので形成されている。
【0057】
第2に、多孔質体層2は、損失係数ηが0.05以上、通気量が0.1dm/s以上、厚さが1〜50mm、望ましくは10〜25mmのもので形成されている。このような構成の多孔質体層2においては、後述するように低周波数領域から高周波数領域までの広範囲に亘って吸音特性が優れており、また固体伝搬音や振動の低減にも効果的な制振性を発揮する。
【0058】
第3に、多孔質体層2は、熱伝導率が0.1〜0.5W/mKのものや、基材がウレタンフォーム若しくはウレタンフォーム基材に熱伝導性付与材を配合したもので形成されている。ここで、熱伝導性付与材としては、セラミックス若しくは金属材料から成るものを配合したもの、炭化珪素粉、アルミナ粉、アルミ粉、黒鉛、銅粉、ステンレス粉から選ばれた1種若しくはこれらを2種以上混合したもの、または黒鉛(黒鉛の添加量はウレタンフォームを形成するポリオール100重量部に対して10〜150重量部である)が用いられる。
【0059】
このような構成の多孔質体層2は、エンジン類等の音源に取り付けられ、エンジン類から発生する空気伝搬音、固体伝搬音、振動の低減に効果的な吸音性能を有し、またエンジン類の運転により室内や防音ボックス内の温度が上昇しても多孔質体の温度上昇が抑制でき、劣化が促進されず寿命が長くなる。
【0060】
以上の難燃性吸音材は、米連邦自動車安全規格「FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard)302」に定める燃焼速度が10cm/分未満とされ、UL94の難燃グレードを有するものである。なお、FMVSS302の試験方法はJISD1201に準拠している。
【0061】
以上のように、第1の実施の形態の難燃性吸音材によれば、吸音材自身に難燃性が付与されているため、当該吸音材を自動車のエンジンルーム等の難燃性を必要とする場所に配設することができ、また、難燃剤としてハロゲン系難燃剤や鉛系化合物が使用されていないので、発泡体層が燃焼しても燃焼時に有毒ガスを発生する虞がなくなる。
[第2の実施の形態]
図2は、本発明における難燃性吸音材の第2の実施の形態を示す断面図である。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0062】
図2において、本発明の難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性を有する発泡体層1と、発泡体層1の音源側に積層される第1の多孔質体層2aと、発泡体層1の剛壁3側に積層される第2の多孔質体層2bとを備えている。ここで、発泡体層1の両面に、第1、第2の多孔質体層2a、2bを積層するのは、前述と同様に、発泡体層1部分が付加質量、すなわち錘の役割として作用し、第1、第2の多孔質体層2a、2bがバネ、すなわち空気バネの役割として作用し、膜振動による吸音を行わせるためである。
【0063】
なお、第1、第2の多孔質体層2a、2bは、それぞれ同様の構成とされ、それぞれ前述の多孔質体層2と同様のもの形成されている。
【0064】
図3は、第2の実施の形態における難燃性吸音材の吸音特性を示している。ここで、図中、太線L1は、多孔質体層の厚さを100mmとした従来の吸音材の吸音特性、細線L2は、第1の多孔質体層2aの厚さを25mm、第2の多孔質体層2bの厚さを75mmとした本発明の難燃性吸音材の吸音特性、点線L3は多孔質体層をグラスウールで構成し、その厚さを100mmとした従来の吸音材の吸音特性を示している。同図より、本発明の難燃性吸音材が150Hz以下の低周波領域のみならず、150Hz以上の高周波領域にわたって、優れた吸音特性を示していることが分かる。従って、第2の実施の形態における難燃性吸音材を使用すれば、広帯域の周波数領域に対応可能な難燃性吸音材を提供することができる。
[第3の実施の形態]
図4は、本発明における難燃性吸音材の第3の実施の形態を示す断面図である。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
図4において、本発明の難燃性吸音材は、音源側に配置される難燃性発泡体層1と、発泡体層1の剛壁3側に積層される第2の多孔質体層2bと、発泡体層1の音源側面に形成される被膜面4とを備えている。
【0066】
ここで、被膜面4の音源側には、針状部材で被膜面4と直交する方向に多数個の孔(不図示)が設けられている。
【0067】
このような被膜面4への孔の形成により、被膜面4の通気性が向上し、ひいては、吸音率のピーク周波数を低周波数側へ移動させることができる。
【0068】
図5は、第3実施の形態における難燃性吸音材の吸音特性を示している。ここで、図中、細線L4は、被膜面4に孔を有しない従来の吸音材の吸音特性、点線L5は、被膜面4の音源側に、針状部材によって1cm当たり50個の孔を形成した本発明の第1の難燃性吸音材の吸音特性、太線L6は、被膜面4の音源側に、針状部材によって1cm当たり200個の孔を形成した本発明の第2の難燃性吸音材の吸音特性を示している。同図より、本発明の第1、第2の難燃性吸音材における吸音率のピーク周波数が低周波数側へ移動していることが分かる。従って、第3の実施の形態における難燃性吸音材を使用すれば、150Hz以下の低周波数領域に対応可能な難燃性吸音材を提供することができる。なお、このような針状部材による孔の形成に代えて、グラインダーにより被膜面4に摩擦加工を施して、当該表面を粗面化しても、前述の難燃性吸音材と同様の効果を奏する。
[第4の実施の形態]
図6は、本発明における難燃性吸音材の第4の実施の形態を示す断面図である。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
図6において、難燃性吸音材1は、音源側に配置される難燃性発泡体層1と、発泡体層1の剛壁側に積層される第2の多孔質体層2bと、発泡体層1の音源側に接着される被膜層5とを備えている。
【0070】
ここで、被膜層5は、発泡体層1と第2の多孔質体層2bとの一体成形とは、別体で形成される。これは、製品形態の自由度を向上させるためである。
【0071】
図7は、第4実施の形態における難燃性吸音材の吸音特性を示している。ここで、図中、太線L7は、ガラスウールから成る多孔質体層4の厚さを50mmとし、発泡体層1の音源側に被膜層を一体で成形した従来の第1の吸音材の吸音特性、一点鎖線L8は、ガラスウールから成る多孔質体層4の厚さを100mmとし、発泡体層1の音源側に被膜層を一体で成形した従来の第2の吸音材の吸音特性、細線L9は、ガラスウールから成る多孔質体層4の厚さを50mmとし、発泡体層1の音源側に別体の被膜層5を接着させた本発明の第1の難燃性吸音材の吸音特性、点線L10は、ガラスウールから成る多孔質体層4の厚さを50mmとし、発泡体層1の音源側に別体の被膜層5を接着させた本発明の第2の難燃性吸音材の吸音特性を示している。同図より、本発明の第1、第2の難燃性吸音材は、従来の第1、第2の吸音材と同様の吸音特性を示していることがわかる。従って、第4の実施の形態における難燃性吸音材を使用すれば、要求される吸音特性や施工方法に応じて、発泡体層1の音源側若しくは剛壁側に別体の被膜層5を接着・当接(接触)させることで対処することができ、ひいては製品形態の自由度を向上させることができる。なお、被膜層5は発泡体層1に接着させたものに限定されず、被膜層5を発泡体層1に当接(接触)させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
なお、前述の第1〜第4の実施の形態においては、発泡体層1として、発泡密度が均一な単一の発泡体層について述べているが、次のような構成のもの、例えば、第1に、内部に連続気泡を有する発泡体であって、音源側の表面に薄膜層を発泡体と一体成型して配置されているもの、第2に、例えば厚さ1mm以下の薄膜層が音源側および剛壁側双方の発泡体と一体成型して配置されているもの、第3に、連続気泡発泡体の発泡密度が厚さ方向に傾斜的に異なっているもの、第4に、異なる複数の連続気泡発泡体を発泡密度が傾斜的に配置されるように積層されたもの、第5に、連続気泡発泡体の発泡密度が音源側で高密度となるようにしたもの、第6に、連続気泡発泡体として粘弾性体から成るものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明における難燃性吸音材の第1の実施の形態を示す断面図。
【図2】本発明における難燃性吸音材の第2の実施の形態を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る難燃性吸音材の吸音特性を示す説明図。
【図4】本発明における難燃性吸音材の第3の実施の形態を示す断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る難燃性吸音材の吸音特性を示す説明図。
【図6】本発明における難燃性吸音材の第4の実施の形態を示す断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る難燃性吸音材の吸音特性を示す説明図。
【符号の説明】
【0074】
1・・・発泡体層
2・・・多孔質体層
2a・・・第1の多孔質体層
2b・・・第2の多孔質体層
3・・・剛壁
4・・・被膜面
5・・・被膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、前記発泡体層の剛壁側に積層される多孔質体層とを備えることを特徴とする難燃性吸音材。
【請求項2】
音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、前記発泡体層の音源側に積層される第1の多孔質体層と、前記発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層とを備えることを特徴とする難燃性吸音材。
【請求項3】
音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、前記発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、前記発泡体層の音源側面に形成され、それ自身の音源側が摩擦加工により粗面化されている被膜面とを備えることを特徴とする難燃性吸音材。
【請求項4】
音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、前記発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、前記発泡体層の音源側に接着される被膜層とを備えることを特徴とする難燃性吸音材。
【請求項5】
音源側に配置される難燃性を有する発泡体層と、前記発泡体層の剛壁側に積層される第2の多孔質体層と、前記発泡体層の音源側に当接される被膜層とを備えることを特徴とする難燃性吸音材。
【請求項6】
前記発泡体層は、分子量500〜5000の第1のジオール、分子量500以下の第2のジオール、無機充填材、発泡剤としての水、およびイソシアネート、難燃剤の各成分を原料成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項7】
前記発泡体の密度は、50〜500kg/mであることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項8】
前記第1のジオールに含まれる水酸基含量と、前記第2のジオールに含まれる水酸基含量の比は、1:0.3〜2.5であることを特徴とする請求項1乃至請求項7何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項9】
前記無機充填材の含量は、前記第1のジオール100重量部に対して10〜200重量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項8何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項10】
前記発泡剤としての水の含量は、前記第1のジオール100重量部に対して2〜5重量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項9何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項11】
前記第1、第2のジオール、および発泡剤としての水の水酸基含量の合計と、前記イソシアネートのイソシアネート含量との比であるイソシアネートインデックス(NCO/OH)は、0.5〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項10何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項12】
前記イソシアネートインデックスは、0.6〜0.9の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項11何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項13】
前記難燃剤の含量は、前記第1のジオール100重量部に対して2〜100重量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項12何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項14】
前記第1のジオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールのうちから選択されたいずれかのジオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項13何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項15】
前記第2のジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の脂肪族系若しくはN、N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の芳香族系のうちから選択されたいずれかのジオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項14何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項16】
前記無機充填材は、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのうちから選択されたいずれかの無機充填剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項15何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項17】
前記イソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネートのうちから選択されたいずれかのイソシアネートであることを特徴とする請求項1乃至請求項16何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項18】
前記難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン等の窒素系、シリコーンパウダー、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系、ホウ酸亜鉛のうちから選択されたいずれかの難燃剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項17何れか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項19】
前記第1の多孔質体層および前記第2の多孔質体層のうち少なくとも一方は、グラスウール、ロックウール、粗毛フェルト、植物繊維系フェルト、動物繊維系フェルト、合成繊維系フェルトの何れかまたはこれらの混合物から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項18いずれか1項記載の難燃性吸音材。
【請求項20】
米連邦自動車安全規格FMVSS302に定める燃焼速度が10cm/分未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項19何れか1項記載の難燃性吸音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71914(P2006−71914A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254528(P2004−254528)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】