説明

難燃性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体

【課題】耐熱性、耐衝撃性、耐久性を備えた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)と、結晶核剤(X)とを含有する樹脂組成物であって、(A)の含有量が50質量%以上、(B)の含有量が10〜40質量%、(C)の含有量が1〜15質量%、(D)の含有量が0.1〜10質量%であり、(E)が、ガラス繊維および/またはフッ素樹脂系ドリップ防止剤であり、ガラス繊維の含有量が5〜35質量%、フッ素樹脂系ドリップ防止剤の含有量が0.1〜5質量%であり、(X)の含有量が(A)100質量部に対して0.03〜5質量部であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐衝撃性、耐久性を備えた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形用の原料としては、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリアミド(PA6、PA66など)、ポリエステル(PET、PBTなど)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、このような樹脂から製造された成形体は、成形性、機械的強度に優れているが、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
【0003】
一方、近年、環境保全の見地から生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性ポリエステル樹脂の中でもポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどは、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。そのうち、ポリ乳酸は既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は難燃性が不充分であり、これを単体で電気製品等の筺体に利用する場合には、その燃焼性により、安全上問題がある。加えて、それらの用途には、多くの場合、少なくとも100℃を上回る高温環境にも耐えうる耐熱性が必要である。ポリ乳酸には、このような難燃性と耐熱性とに加えて、さらに耐久性、耐衝撃性を兼ね備えたものが求められている。
【0005】
これらの特性のうち、難燃性は、難燃剤を高比率で配合することにより改善され、また、耐熱性、特に大荷重(1.8MPa)での荷重たわみ温度は、強化用充填剤を高比率で配合することで改善される。しかしながら、難燃剤や強化用充填剤を高比率で配合することにより、組成物においてポリ乳酸樹脂が占める比率が小さくなり、環境への有用性を低減させるので好ましくない。ポリ乳酸樹脂が組成物全体のうちの過半を占めた上で、前記各物性を満足することが要求されている。
【0006】
すでに、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂に有機充填剤と難燃剤(芳香族縮合リン酸エステル等)を添加し、金型温度90℃で射出成形することにより、V−2〜V−0の難燃性とある程度の耐熱性が得られることが開示されている。
この方法では、有機充填剤として古紙粉末を20%以上添加することで、耐熱性を向上させているが、混錬や成形の際の溶融時に、熱により変色することは免れず、色調の調整が難しいものであった。また得られた耐熱性は、荷重たわみ温度が小荷重(0.45MPa)でも110℃未満という低いレベルのものであり、電気機器筺体などへの使用に供するためには不充分であった。
さらに、この特許文献1においては、V−0の難燃性を満たすうちでの、接炎後の残炎時間については考慮されていない。電気製品等の筺体として利用する場合には、残炎時間が長いと、引火の恐れなどの安全上問題がある。
加えて、特許文献1では、アイゾット衝撃値が25J/m未満の値しか得られていない。
【0007】
また、特許文献2には、表面処理を施した水酸化物を添加することで、難燃性とある程度の耐熱性が得られることが開示されている。しかしながら、得られた難燃性はV−2であり、前記用途への使用に際してはまだ不充分なレベルであった。
【0008】
特許文献3には、ホスフィン酸系化合物により難燃化したポリ乳酸系メッシュシートが開示されている。特許文献3にはホスフィン酸系化合物としてジメチルホスフィン酸等の遊離酸が例示されているが、射出成形用途での高い難燃性レベルに関して検討されていない。
【0009】
また、特許文献4には、コアシェル型耐衝撃剤を用いて一定の耐衝撃性が得られたことが開示されている。特許文献4では、60℃95%×200hという極めて緩い条件で耐久性が検討されているが、1割程度の劣化が見られ、また耐熱性については検討されていない。また、特許文献5には、グリシジル系化合物とコアシェル型耐衝撃剤がともに用いられていた例が示されているが、特許文献4と同様の結果である。
【0010】
また、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤が、ポリ乳酸に対して耐衝撃効果および耐熱効果を有することが三菱レイヨン社の資料に開示されているが、難燃組成における難燃性や耐久性については言及されておらず、組成としても示されていない。
【特許文献1】特開2005−023260号公報
【特許文献2】特開2005−139441号公報
【特許文献3】特開2005−105472号公報
【特許文献4】特開2006−016447号公報
【特許文献5】特開2006−016446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、耐熱性、耐衝撃性、耐久性を備えた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂に結晶核剤を配合することによって、または、ポリ乳酸樹脂と(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物とを溶融混練することによって、ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進させ、そして、この結晶化させたポリ乳酸樹脂に、特定の難燃剤、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤、加水分解抑制剤、ドリップ防止成分を配合して得られる樹脂組成物が前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)と、結晶核剤(X)とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が50質量%以上、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)の含有量が1〜15質量%、加水分解抑制剤(D)の含有量が0.1〜10質量%であり、ドリップ防止成分(E)が、ガラス繊維および/またはフッ素樹脂系ドリップ防止剤であり、ガラス繊維の含有量が5〜35質量%、フッ素樹脂系ドリップ防止剤の含有量が0.1〜5質量%であり、結晶核剤(X)の含有量がポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.03〜5質量部であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
(2)架橋ポリ乳酸樹脂(A′)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)とを含有する含有する樹脂組成物であって、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)の含有量が50質量%以上、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)の含有量が1〜15質量%、加水分解抑制剤(D)の含有量が0.1〜10質量%であり、ドリップ防止成分(E)が、ガラス繊維および/またはフッ素樹脂系ドリップ防止剤であり、ガラス繊維の含有量が5〜35質量%、フッ素樹脂系ドリップ防止剤の含有量が0.1〜5質量%であり、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)0.01〜20質量部と、過酸化物(Z)0.1〜20質量部とを溶融混練してなる樹脂であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
(3)難燃剤(B)が有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする(1)または(2)記載の樹脂組成物。
(4)ポリ乳酸樹脂(A)におけるD−乳酸成分の割合が0.6モル%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐衝撃性、耐熱性、耐久性に優れ、かつ、植物由来比率の高い難燃性樹脂組成物を提供することができる。この樹脂組成物を電気製品の部品などに用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)と、結晶核剤(X)とを含有する樹脂組成物、または、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)とを含有する樹脂組成物であり、前記架橋ポリ乳酸樹脂(A′)は、ポリ乳酸樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)と、過酸化物(Z)とを溶融混練してなる樹脂である。
【0015】
ポリ乳酸樹脂(A)としては、耐熱性、成形性の面からポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができるが、生分解性、および、成形加工性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。
【0016】
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)の融点は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形体の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を約3モル%未満とすればよい。さらに、樹脂組成物の成形性および耐熱性の点から、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)においては、D−乳酸成分の割合が0.6モル%以下であることが、特に好ましい。市販のポリ乳酸樹脂としては、たとえば、トヨタ製ポリ乳酸樹脂『S−09』、『S−12』、『S−17』などが挙げられる。
【0017】
ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート(例えば、JIS規格K−7210(試験条件4)による値)は通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、最適には0.5〜10g/10分である。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は成形加工時の負荷が高くなって、操業性が低下する場合がある。
【0018】
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、そのメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合はメルトフローレートの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0019】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)は、その結晶化が促進されていることが必要である。ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化促進方法として、後述する結晶核剤(X)を樹脂組成物に含有させる方法と、ポリ乳酸樹脂(A)を、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)と過酸化物(Z)とともに溶融混練して、ポリ乳酸樹脂(A)を架橋する方法が挙げられる。
【0020】
本発明において結晶核剤(X)は、樹脂組成物の結晶化を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものであり、結晶化促進効果の点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。具体的な化合物としては、例えば、伊藤製油製N,N′−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、新日本理化製N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミドなどが挙げられる。その他、ポリ乳酸樹脂ベースのマスターバッチの市販品として、トヨタ製核剤マスターバッチ『KX238B』(有機スルホン酸塩系核剤を10%含有)なども挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂組成物における結晶核剤(X)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.03〜5質量部である。添加量が0.03質量部未満では、目的とする耐熱性が得られず、また、5質量部を超えて添加すると、混練時の操業性が低下する。
【0022】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進する方法として、上述のように、結晶核剤(X)を樹脂組成物に含有させる方法と、ポリ乳酸樹脂(A)を、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)と過酸化物(Z)とともに溶融混練して得られる架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を用いる方法とのいずれかを実施する。
【0023】
本発明において(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)は、樹脂組成物の結晶化を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものであり、具体的な化合物としては、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、また、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが必要である。添加量が0.01質量部未満では、目的とする耐熱性が得られず、また、20質量部を超えて添加すると、混練時の操業性が低下する。
【0025】
また過酸化物(Z)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)とポリ乳酸樹脂(A)との反応を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものであり、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
【0026】
過酸化物(Z)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。添加量が0.1質量部未満では、目的とする耐熱性が得られず、また、20質量部を超えて添加すると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0027】
ポリ乳酸樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)と、過酸化物(Z)とを溶融混練して架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を製造する方法としては、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリ乳酸樹脂の融点+5℃)〜(ポリ乳酸樹脂の融点+100℃)の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合がある。
【0028】
本発明において難燃剤(B)は、樹脂組成物の燃焼性を抑制し、一定の難燃性を付与することを目的として配合されるものである。
難燃剤(B)としては、リン系難燃剤、金属系難燃剤、シリコン系難燃剤、窒素系難燃剤など、公知の用いることができる。環境への悪影響を避けるため、ハロゲン元素を含まない難燃剤を用いることが好ましい。
具体的な化合物としては、ホスフィン酸塩類、リン酸エステル類、縮合リン酸エステル類、含芳香環リン酸エステル類、リン酸アンモニウム類、ポリリン酸アンモニウム類、その他各種リン酸塩類、メラミン化合物類、リン酸メラミン類、硫酸メラミン類、ホスファゼン類、シアヌレート類、金属酸化物、金属水酸化物、ホウ酸塩類など、公知の難燃剤を挙げることができる。
【0029】
本発明において難燃剤(B)として、有機ホスフィン酸金属塩系の難燃剤を用いることが好ましい。有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤を用いることにより、樹脂組成物の燃焼性を抑制し、一定の難燃性を付与することができ、特に、燃焼性の高いポリ乳酸樹脂が多く配合されている場合でも、効果的に燃焼継続を抑制することが可能となり、また、耐熱性においても良好な効果を奏する。
有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤のうち市販のものとしては例えば、クラリアント製『エクソリットОP』シリーズなどが挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物における難燃剤(B)の含有量は、10〜40質量%であることが必要であり、15〜38質量%であることが好ましい。含有量が10質量%未満では、充分な難燃性が得られない場合があり、40質量%を超えると、耐衝撃性、破断歪等の物性性能を低下させる場合があり、また混練時の操業性を低下させることがある。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)を含有する。グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)を含有することによって、耐衝撃性を充分付与することができる他、別途含有している加水分解抑制剤(D)の効果がさらに促進され、極めて良好な耐久性を得ることができる。
グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)は、耐久性に良好な効果を及ぼすグリシジルメタクリレートと、コアシェル型耐衝撃剤とが一体化されていることにより、含有量が少なくても、両方の効果を効率的に発揮することができる。
グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)としては、たとえば、三菱レイヨン製『メタブレン』シリーズ『S2200』が挙げられる。
グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)の含有量は、1〜15質量%であることが必要であり、3〜12質量%であることが好ましい。含有量が1質量%未満ではその効果が十分に得られず、15質量%を超えると、コスト的に不利である他、植物由来成分であるポリ乳酸の配合比率を不必要に相対的に低下させることになる。
【0032】
本発明の樹脂組成物は加水分解抑制剤(D)を含有する。加水分解抑制剤(D)を含有することにより、樹脂組成物の耐久性を向上させ、その難燃性および耐熱性を長期間、安定的に維持することができる。加水分解抑制剤(D)としては、カルボジイミド化合物をはじめ、種々のものを用いることができる。
【0033】
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができ、分子中に1個以上のカルボジイミド基を持つものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族モノカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、あるいは、芳香族ポリカルボジイミドなど、この範囲の全てのものを用いることができる。さらに、分子内に各種複素環、あるいは、各種官能基を持つものであっても構わない。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有していないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N′−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N′−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N′−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N′−フェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4′−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
【0034】
カルボジイミド化合物の具体例としては、多くのものが挙げられる。脂環族モノカルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが挙げられ、また脂環族ポリカルボジイミドとしては、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられ、また芳香族モノカルボジイミドとしては、N,N′−ジフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが挙げられ、また芳香族ポリカルボジイミドとしては、フェニレン−p−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピル−フェニレン−2,4−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部位が、イソシアネート基等の官能基を有する、あるいは、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていても構わない。
【0035】
本発明の樹脂組成物における加水分解抑制剤(D)の含有量は、0.1〜10質量%であることが必要であり、0.1〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%未満では目的とする耐久性が得られない場合があり、また、10質量%を超えて添加すると、色調が大きく損なわれる場合があり、また、コスト的にも不利である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、ドリップ防止成分(E)を含有する。ドリップ防止成分(E)を含有することにより、燃焼時の燃焼粒の滴下を抑制し、燃焼テストの際の綿着火による難燃性評価のバラツキを低減し、UL規格V−1以上の高い難燃性を得ることができる。ドリップ防止成分(E)としては、ガラス繊維および/またはドリップ防止剤が用いられる。
ガラス繊維を含有することにより、樹脂組成物の荷重たわみ温度を上昇させる効果もある。ガラス繊維としては、あらゆる形状のものを用いることができる。ガラス繊維の含有量は5〜35質量%であることが必要である。含有量が5質量%未満では、必要な燃焼粒滴下抑制効果や荷重たわみ抑制効果を得ることができず、35質量%を超えると、樹脂組成物を構成する他の成分を充分配合することができなくなる。
フッ素樹脂系ドリップ防止剤としては、種々のものを用いることができる。フッ素樹脂系ドリップ防止剤のうち市販のものとしては、ダイキン製『ポリフロンFA500C』、三菱レイヨン製『メタブレンA3700』、『メタブレンA3800』などが挙げられる。ドリップ防止剤の含有量は0.1〜5質量%であることが必要である。含有量が0.1質量部未満では必要な燃焼粒滴下抑制効果を得ることができず、5質量%を超えると、混練時の操業性が低下することがある。
【0037】
ポリ乳酸樹脂(A)と、難燃剤(B)、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)、加水分解抑制剤(D)、ドリップ防止成分(E)、結晶核剤(X)とを混合する手段や、また、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)と、難燃剤(B)、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)、加水分解抑制剤(D)、ドリップ防止成分(E)とを混合する手段は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリ乳酸樹脂の融点+5℃)〜(ポリ乳酸樹脂の融点+100℃)の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。
【0038】
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を添加することができる。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。なお、本発明の樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。とりわけ、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは190〜270℃とし、また、金型温度は樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当である。成形温度が低すぎると成形品にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に、成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
【0040】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、パソコン周辺の各種部品および筐体、携帯電話部品および筐体、その他OA機器部品等の電化製品用樹脂部品、バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。また、フィルム、シート、中空成形品などとすることもできる。これらの部品のうち、柔軟性、耐衝撃性、難燃性を必要とされる部品において、本発明の樹脂組成物は特に有用である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた測定法は次のとおりである。
(1)難燃性:
UL94に準拠して測定した。試験片は1.5mm厚のものを用いた。難燃性は、V−0、または、V−1であることが求められる。なお、燃焼試験時にドリップの見られなかったものは、燃焼テストの際の各試験片における残炎時間(接炎1回目+接炎2回目)の平均も算出し、残炎時間の平均が25秒以上のものを×、15〜25秒のものを○、15秒以下のものを◎とした。
(2)耐衝撃性:
ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度を用いた。アイゾット衝撃強度が40J/m以下のものを×、40〜60J/mのものを○、60J/m以上のものを◎とした。
(3)耐熱性:
ISO 75に準拠し、荷重1.8MPa(=大荷重)で熱変形温度を測定した。大荷重での熱変形温度が120℃以下のものを×、120〜140℃のものを○、140℃以上のものを◎とした。
(4)曲げ破断歪:
ISO178に準拠して曲げ破断歪を測定し、曲げ破断歪が3以上のものを◎、2〜3のものを○、2以下のものを×とした。
(5)耐湿熱性:
試験片を60℃95%RHの高温高湿環境下に200hまたは700h曝した場合の、ISO178に準拠して測定した曲げ強度および曲げ破断歪の処理前後の保持率を算出し、保持率が90%を超えるものを◎◎、80〜90%のものを◎、60〜80%のものを○、60%未満のものを×とした。
【0042】
実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。
ポリ乳酸樹脂(A):
・カーギルダウ製『3001D』(D体含有量1.4%)
・トヨタ製『S−12』(D体含有量0.1%)
架橋ポリ乳酸樹脂(A′):
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)を用い、『3001D』100質量部をドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数150rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)(日本油脂製エチレングリコールジメタクリレート『ブレンマーPDE−50』)0.10質量部、および過酸化物(Z)(日本油脂製 ジ−t−ブチルパーオキサイド『パーブチルD』)0.2質量部をシリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を得た。
【0043】
難燃剤(B):
・クラリアント製有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤『OP1312』
・大八化学製芳香族系縮合リン酸エステル『PX200』
【0044】
耐衝撃剤:
・三菱レイヨン製グリシジルメタクリレート変性コアシェル型シリコーン・アクリルゴム系耐衝撃剤『メタブレンS2200』、
・三菱レイヨン製コアシェル型シリコーン・アクリルゴム系耐衝撃剤『メタブレンS2001』、
・三菱レイヨン製コアシェル型シブタジエンゴム系耐衝撃剤『メタブレンC223A』、
・日本油脂製PMMAグラフトエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体『モディパーA4200』、
・アルケマ性変性ポリオレフィン『ロタダーAX8900』
【0045】
加水分解抑制剤(D):
・日清紡製イソシアネート変性カルボジイミド『LA−1』(イソシアネート基含有率1〜3%)
・ラインケミー製カルボジイミド『スタバックゾールP』(以下「STX−P」と称す。)
【0046】
ガラス繊維:
・オーエンスコーニング製『FT592』
フッ素樹脂系ドリップ防止剤:
・三菱レイヨン製PMMA変性PTFE系ドリップ防止剤『A3700』
【0047】
結晶核剤(X):
・竹本油脂製 有機スルホン酸Ba
・新日本理化製 トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド『TF−1』
【0048】
実施例1
ポリ乳酸樹脂(A)として『S−12』50質量部、難燃剤(B)として『OP1312』28質量部、耐衝撃剤(C)として『S2200』5質量部、加水分解抑制剤(D)として『STX−P』2.6質量部、フッ素樹脂系ドリップ防止剤『A3700』0.8質量部、結晶核剤(X)として有機スルホン酸Ba0.97質量部を用い、これらをドライブレンドして、二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数150rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、ガラス繊維13質量部を押出ノズル近傍シリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、金型表面温度を105℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ASTM型)を作製し、各種測定に供した。
【0049】
実施例2〜5、および比較例1〜10
ポリ乳酸樹脂、難燃剤、耐衝撃改良剤、加水分解抑制剤、ガラス繊維、ドリップ防止剤、結晶核剤の量、種類を変えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得て、これを射出成形して各種物性を測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜5においては、難燃性、耐衝撃性、柔軟性、耐熱性、耐久性に優れた結果が得られた。特に、実施例1、5においては、ポリ乳酸樹脂としてD体含有量の低いものを用いたため、耐熱性に特に優れた結果が得られた。なお、実施例4においても、ポリ乳酸樹脂としてD体含有量の低いものを用いたが、難燃剤として有機ホスフィン酸金属塩系のものを用いず、リン酸エステル系のものを用いたため、耐熱性について、特に優れた結果は得られなかった。
比較例1〜6においては、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤を用いていないため、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、耐久性のいずれかが劣る結果となった。
比較例2、5ではコアシェル型耐衝撃剤を用いたが、グリシジルメタクリレート変性ではなかったため、耐久性に劣る結果となった。比較例3、6では耐衝撃改良剤としてグリシジルメタクリレート共重合体などの変性ポリマーを用いたが、コアシェル型耐衝撃剤を用いなかったため、耐衝撃性に劣る結果となった。比較例4では、コアシェル型耐衝撃剤とグリシジルメタクリレート共重合体をともに用いたが、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤を用いなかったため、やはり耐衝撃性に劣る結果となった。
比較例7においては、難燃剤の配合量が小さいため、難燃性に劣る結果となった。
比較例8においては、ポリ乳酸樹脂が架橋されず、また結晶核剤も含有されていないため、耐熱性に劣る結果となった。
比較例9においては、加水分解抑制剤が配合されていないため、耐久性に劣る結果となった。
比較例10においては、ドリップ防止成分としてのガラス繊維の含有量が少ないため、燃焼時に滴下して綿着火を生じ、残炎時間は長くなかったものの、難燃性判定としてはV−2という好ましくない結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)と、結晶核剤(X)とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が50質量%以上、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)の含有量が1〜15質量%、加水分解抑制剤(D)の含有量が0.1〜10質量%であり、ドリップ防止成分(E)が、ガラス繊維および/またはフッ素樹脂系ドリップ防止剤であり、ガラス繊維の含有量が5〜35質量%、フッ素樹脂系ドリップ防止剤の含有量が0.1〜5質量%であり、結晶核剤(X)の含有量がポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.03〜5質量部であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
架橋ポリ乳酸樹脂(A′)と、難燃剤(B)と、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)と、加水分解抑制剤(D)と、ドリップ防止成分(E)とを含有する含有する樹脂組成物であって、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)の含有量が50質量%以上、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、グリシジルメタクリレート変性コアシェル型耐衝撃剤(C)の含有量が1〜15質量%、加水分解抑制剤(D)の含有量が0.1〜10質量%であり、ドリップ防止成分(E)が、ガラス繊維および/またはフッ素樹脂系ドリップ防止剤であり、ガラス繊維の含有量が5〜35質量%、フッ素樹脂系ドリップ防止剤の含有量が0.1〜5質量%であり、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)0.01〜20質量部と、過酸化物(Z)0.1〜20質量部とを溶融混練してなる樹脂であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
難燃剤(B)が有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂(A)におけるD−乳酸成分の割合が0.6モル%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2010−144084(P2010−144084A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323896(P2008−323896)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】