説明

難燃性熱収縮チューブ及び該チューブで被覆された部材

【課題】収縮特性及び耐熱性に優れ、かつ臭素系化合物、リン系化合物、アンチモン系化合物を添加しない、優れた難燃性を有する難燃性熱収縮チューブの提供。
【解決手段】難燃性熱収縮チューブにおいて、ガラス転移温度が0℃以下であり、かつ、結晶融解温度が70〜120℃であるポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)で構成される樹脂組成物を主成分とし、ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率が70質量%以上であり、この樹脂組成物の総量を100質量%とした場合、メラミン誘導体化合物(B)の含有率を20〜60質量%以下、架橋剤(C)の含有率を0.1〜0.7質量%未満、カルボジイミド化合物(D)の含有率を0.1〜3質量%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮特性及び耐熱性に優れ、かつ臭素系化合物、リン系化合物、アンチモン系化合物を添加することなく優れた難燃性を付与することのできる難燃性熱収縮チューブ及び該チューブで被覆された部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサ被覆用途などに使用される電気絶縁材料としては、主としてポリ塩化ビニルからなる熱収縮チューブが広く使用されてきた。しかしながら、ポリ塩化ビニル製の熱収縮チューブは、燃焼時に塩化水素ガスが発生し、焼却等の廃棄処理をする際に焼却炉を傷めやすい等の問題があり、このような観点からポリ塩化ビニル製チューブの代替として、ポリオレフィン系樹脂製やポリエステル系樹脂製の熱収縮チューブが使用されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂製の熱収縮チューブをコンデンサ被覆用途へ使用するために難燃性を付与する場合、無機系の難燃剤、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを多量に添加する必要があり、機械強度の低下を生じるだけでなく、高比重化するため、製品重量の増加が生じている。
【0004】
一方、ポリエステル系樹脂の架橋技術については、例えばポリ乳酸に対してアリル基を有するモノマーを添加し、架橋させた収縮材が例示されているが(特許文献1参照)、当該技術では収縮開始温度が150℃と非常に高く、被覆する材料を劣化させるおそれがある。さらに、当該技術では難燃性が不十分であり、高度な難燃性が要求される電子材料等の被覆材への応用は非常に困難である。また、当該技術では架橋剤の添加量が少ない場合においては十分な架橋密度が得られず、チューブで使用する場合には実用上十分な収縮特性、耐熱性が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−125674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、開示されている技術では、収縮特性、耐熱性、及び難燃性のすべてを兼ね備えたポリエステル系樹脂からなるチューブを提供することは非常に困難であり、特に、臭素系化合物、リン系化合物、アンチモン系化合物を含まずにVW−1の難燃性を達成することは非常に困難であり、重要な課題として挙げられている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、特定のガラス転移温度、結晶融解熱量を有するポリエステル系樹脂に対して、メラミン誘導体化合物を配合することで難燃性を付与し、架橋剤とカルボジイミド化合物を併用することで、優れた架橋構造を構成し、収縮特性、耐熱性に優れたチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、メラミン誘導体化合物と架橋剤とカルボジイミド化合物の特性に着目して、ポリエステル系樹脂に混合した樹脂組成物につき鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、ガラス転移温度が0℃以下であり、かつ、結晶融解温度が70℃以上120℃以下であるポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)で構成される樹脂組成物を主成分としてなる熱収縮チューブであって、ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率が70質量%以上であり、ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合、メラミン誘導体化合物(B)の含有率が20質量%以上60質量%以下であり、架橋剤(C)の含有率が0.1質量%以上0.7質量%未満であり、かつ、カルボジイミド化合物(D)の含有率が0.1質量%以上3質量%以下であることを特徴とする難燃性熱収縮チューブ(以下、「本発明のチューブ」ともいう。)により達成される。
【0010】
本発明のチューブは、架橋剤(C)がトリメタアリルイソシアネートであることが好ましい。
【0011】
また、本発明のチューブは、120℃の熱風中に20秒間静置した場合に径方向の収縮率が30%以上80%以下であることができる。
【0012】
また、本発明のチューブは、ポリエステル系樹脂(A)が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のチューブは、ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量が5J/g以上40J/g以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のチューブは、電子機器又は電気機器用途として部材に被覆して用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、臭素系化合物、リン系化合物、アンチモン系化合物を添加することなく、優れた収縮特性、耐熱性、及び難燃性を有する難燃性熱収縮チューブと該チューブで被覆された部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、ガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下であることが重要である。ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が0℃を超える場合、通常使用される温度域(0℃〜40℃)において樹脂がガラス状態となるため耐衝撃性に劣ることがあり、またメラミンを配合した場合に実用上十分な機械特性を発現することが困難となることがある。
【0018】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、結晶融解温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上であり、かつ120℃以下、好ましくは115℃以下であり、さらに好ましくは110℃以下であることが重要である。ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解温度が70℃未満であると、十分な耐熱性が得られず、また結晶融解温度が120℃を超えると、低温収縮性が得られない場合がある。
【0019】
上記ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、又はこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の芳香環を含まない二塩基酸成分と、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール成分とからなる共重合体が挙げられ、中でもポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ポリブチレンサクシネートが好ましい。
【0020】
脂肪族ポリエステルの市販品としては、例えば、三菱化学社製「GSPla」AZシリーズ、及びADシリーズ、昭和高分子社製の「ビオノーレ」#1000シリーズ、#3000シリーズ等が挙げられる。
【0021】
また脂肪族−芳香族ポリエステルとしては、例えば、芳香環を含む二塩基酸成分とジオール成分、及び/又は芳香環を含まない二塩基酸成分との重縮合ポリマーが挙げられる。芳香族ポリエステルの原料モノマーとして用いられる二塩基酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、ジオール成分の具体例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ポリオキシレングリコール等が挙げられる。
【0022】
脂肪族−芳香族ポリエステルの市販品としては、例えば、BASF社製「エコフレックス」シリーズ、Eastman Chemicals社製の「Eastar Bio」シリーズ、東洋紡績社性「バイロン」(登録商標)シリーズ、日本合成化学工業社製「ニチゴーポリエスター」シリーズ等が挙げられる。
【0023】
上記脂肪族ポリエステル及び脂肪族−芳香族ポリエステルの重量平均分子量の下限値は、50,000以上、好ましくは80,000以上、さらに好ましくは100,000以上であり、上限は400,000以下、好ましくは300,000以下さらに好ましくは250,000以下である。上記脂肪族ポリエステル及び脂肪族−芳香族ポリエステルの重量平均分子量が、50,000以上であれば、使用時における機械物性等の低下が発生せず、脂肪族ポリエステルの重量平均分子量が400,000以下である場合には、加工時における粘度が最適となり、積層体の厚み不良、あるいは、メラミン誘導体化合物の分散不良という問題が発生しない。
【0024】
なお、上記重量平均分子量は、次の方法で測定を行なった。すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、溶媒としてクロロホルムを使用して(溶液濃度0.2wt/vol%、溶液注入量200μl、溶媒流速1.0ml/分、溶媒温度40℃)、測定を行い、ポリスチレン換算で、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量を算出した。用いた標準ポリスチレンの重量平均分子量は、2,000,000、430,000、110,000、35,000、10,000、4,000、600である。
【0025】
また、上記ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量(ΔHm)は5J/g以上、好ましくは10J/g以上、さらに好ましくは15J/g以上であり、かつ、40J/g以下、好ましくは35J/g以下、さらに好ましくは30J/g以下であることが望ましい。ΔHmが上記範囲内であれば、優れた耐熱性と耐衝撃性とを兼ね備えたチューブを提供することができる。
【0026】
本発明のチューブは、収縮特性を付与する目的で、電離性放射線の照射による架橋を行う。この際、上記ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率は、70質量%以上100質量%以下、好ましくは75質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であることが重要である。上記ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率が70質量%未満である場合には十分な収縮特性、耐熱性付与効果が得られない場合がある。
【0027】
ポリエステル系樹脂(A)の含有率は、ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合に、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。ポリエステル系樹脂(A)の含有率が30質量%以上であれば、優れた収縮特性を有する収縮チューブを提供することができる。また、ポリエステル系樹脂(A)の含有率が90質量%以下であれば、優れた機械特性を有する収縮チューブを提供することができる。
【0028】
<メラミン誘導体化合物(B)>
本発明のチューブではメラミン誘導体化合物(B)を用いる。これまで使用されている難燃剤は、臭素系化合物、あるいは、リン系化合物が一般的であり、これらは優れた難燃性を付与できるものの、臭素系化合物は環境面、安全面で問題がある場合があり、リン系化合物は樹脂の可塑化による耐熱性低下や、リン系化合物の成形品表面へのブリードを生じる場合があった。これに対し、メラミン誘導体化合物は、構造の中心にトリアジン環を持つ有機窒素化合物の一種であり、難燃助剤としては広く知られ、リン系化合物との併用により優れた難燃性を付与できることが知られているが、メラミン誘導体化合物単独で優れた難燃性を付与する技術は知られていないのが現状である。本発明者らは、メラミン誘導体化合物が有する昇華による吸熱と不活性ガスによる可燃性ガスの希釈という2段階の燃焼抑制機構に基づき難燃性を示すことを見出し、窒素系難燃剤として本発明のチューブに用いている。
【0029】
本発明のチューブで用いられるメラミン誘導体化合物とは、以下の一般式(1)で示される化合物をいう。
【0030】
【化1】

【0031】
上記式(1)において、R1〜R6はH、OH、−CH2OCH3、−CH2OC25、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH2CH2CH2OHのいずれかであり、R1〜R6は同一の置換基であってもよく、異なる置換基であってもよい。中でもR1〜R6がHであるメラミンが好適に用いられる。
【0032】
メラミン誘導体化合物(B)の平均粒径は、10μm以下、好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。メラミン誘導体化合物(B)の平均粒径を10μm以下とすることにより、本発明のチューブの難燃性及び機械強度を向上させることができる。なお、前記平均粒径は、メラミンを円相当形として計算した値である。
【0033】
メラミン誘導体化合物(B)の含有率は、ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、60質量%以下、好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の含有率で配合することが重要である。メラミン誘導体化合物(B)の含有率が20質量%以上であれば、十分な難燃性が得られ、また60質量%以下であれば、機械物性の低下が抑えられ、本発明のチューブ使用時における破損等の発生を抑えることができる。
【0034】
メラミン誘導体化合物(B)の市販品としては、例えば、微分メラミン(日産化学工業社製)、メラミン(三井化学社製)などが挙げられる。
【0035】
<架橋剤(C)>
本発明のチューブで用いる架橋剤(C)は、分子内にアクリル基、メタクリル基、アリル基、ビニル基等の官能基を2個以上有し、かつ重量平均分子量が概ね2,000以下の化合物であることが好ましい。具体的には、ジアリルイソシアネート、トリアリルイソシアネート、ジメタアリルイソシアネート、トリメタアリルイソシアネート、ジアリルモノグリシジルイソシアネート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールメタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン等が挙げられる。中でも特にトリメタアリルイソシアネートを配合することで、より低添加量でポリエステル系樹脂(A)の高いゲル分率を達成することができる。
【0036】
架橋剤(C)の含有率は、ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、かつ0.7質量%未満、好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であることが重要である。架橋剤(C)の含有率が0.1質量%以上であれば、十分な架橋効果が得られ、また0.7質量%未満であれば、粘度上昇による成形加工上の不具合の発生を抑え、かつ、樹脂のゲル化による外観低下を抑えることができる。
【0037】
架橋剤(C)の市販品としては、例えば、日本化成社製トリアリルイソシアネート「TAIC」、トリメタアリルイソシアネート「TMAIC」等が挙げられる。
【0038】
<カルボジイミド化合物(D)>
本発明のチューブを構成する樹脂組成物の架橋効率を向上し、架橋剤が低添加量の場合において十分なゲル分率を達成し、優れた収縮特性、耐熱性を付与するために、カルボジイミド化合物(D)を配合することが重要である。カルボジイミド化合物(D)としては、下記一般式(2)の基本構造を有するものが挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
上記式において、nは1以上の整数を示す。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでもよい。通常、nは1〜50の間で適宜決められる。
【0041】
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4'−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等が挙げられる。カルボジイミド化合物(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
カルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、日清紡績社製「カルボジライト」シリーズ等が挙げられる。
【0043】
上記カルボジイミド化合物(D)の含有率としては、上記ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、かつ3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であることが重要である。カルボジイミド化合物(D)の含有率が0.1質量%以上であれば、架橋速度の向上効果や耐加水分解性付与効果が得られ、また3.0質量%以下であれば、樹脂組成物の軟質化やカルボジイミド化合物(D)のブリード等を抑制することができる。
【0044】
本発明のチューブは、その他、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
【0045】
次に、本発明のチューブの製造方法について説明する。本発明のチューブの製造方法については、特に限定されるものではないが、通常丸ダイを用いて未延伸チューブを押出した後、電離性放射線を照射することで架橋し、次いで、架橋処理を施した未延伸チューブを延伸して熱収縮チューブとする方法が好ましい方法として挙げられる。その他、TダイやIダイを用いて押出・延伸したフィルムを融着、溶着または接着などにより貼合せてチューブ形状とする方法、さらに前記チューブ又はフィルムをスパイラル状に貼合せてチューブ形状とする方法などが挙げられる。
【0046】
ここで、丸ダイを用いて未延伸チューブを押出し、次いで延伸して熱収縮チューブとする方法についてさらに詳細に説明する。前記した樹脂組成物は、溶融押出装置により融点以上の温度に加熱溶融され、丸ダイから連続的に押し出した後、強制的に冷却され未延伸チューブに成型される。強制冷却の手段としては、低温の水に浸漬する方法、冷風による方法等を用いることができる。中でも低温の水に浸漬する方法が、冷却効率高く有効である。この未延伸チューブを連続的に次の延伸工程に供給してもよく、また一度ロール状に巻き取った後、この未延伸ロールを次の延伸工程の原反として用いてもよい。製造効率や熱効率の点から未延伸チューブを連続的に次の延伸工程に供給する方法が好ましい。
【0047】
本発明では、上記製法で得られたチューブに収縮特性を付与する目的で、電離性放射線の照射による架橋を行う。電離性放射線としては、紫外線・電子線・α線、β線、γ線、中性子線等が挙げられるが、より効率良く架橋を進行させるためにはγ線を用いることが好ましい。また、電離性放射線の照射線量としては、10kGy以上、好ましくは20kGy以上、さらに好ましくは30kGy以上であり、100kGy以下、好ましくは80kGy以下、さらに好ましくは70kGy以下である。かかる範囲の照射線量で電離性放射線を照射することにより十分に架橋が進行し、本発明のチューブに優れた収縮特性、耐熱性を付与することができる。
【0048】
次に、上記方法にて架橋処理を施した未延伸チューブを、チューブ内側より圧縮気体で加圧し、延伸する。延伸方法は特に限定されるものではないが、例えば未延伸チューブの一方の端から圧縮気体による圧力を管の内側に加えつつ一定速度で送り出し、次いで温水または赤外線ヒーター等により加熱し、径方向の延伸倍率を規制するために冷却された円筒管の中を通して固定倍率の延伸を行う。円筒管の適当な位置で延伸される様に温度条件等を調整する。円筒管で冷却された延伸後のチューブは、一対のニップロールにより挟んで延伸圧力を保持しながら延伸チューブとして引き取り巻取られる。延伸は、長さ方向または径方向のいずれの順序でもよいが、同時に行なうのが好ましい。
【0049】
長さ方向の延伸倍率は、未延伸チューブの送り速度と延伸後のニップロール速度との比で決められ、径方向の延伸倍率は未延伸外径と延伸チューブ外径の比で決められる。これ以外の延伸加圧方法として、未延伸チューブ送り出し側と延伸チューブ引き取り側双方をニップロールに挟み封入した圧縮気体の内圧を維持する方法も採用できる。
【0050】
延伸条件は、ポリエステル系樹脂(A)の種類や、その他混合物との配合比率、及び、目的とする熱収縮率などにより調整されるが、通常延伸温度はポリエステル系樹脂の融点−20℃以上、+40℃以下、より好ましくは−10℃以上、+30℃以下、さらに好ましくは−10℃以上、+20℃以下の範囲で行われる。
【0051】
本発明のチューブは、未延伸チューブをその径方向に1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.4倍以上であり、3.0倍以下、好ましくは2.5倍以下、さらに好ましくは2.0倍以下であり、また、その長さ方向に1.0倍以上、好ましくは1.02倍以上であり、2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下、さらに好ましくは1.3倍以下の範囲で延伸させて得られたものが好ましい。
【0052】
チューブの径方向の延伸倍率が1.2倍未満では、被覆するに十分な収縮量が得られない場合がある。一方、チューブの径方向の延伸倍率が3.0倍を超えると、厚み振れが大きくなる傾向がある。またチューブの長さ方向の延伸倍率が2.0倍を超えると、長さ方向の収縮量が大きくなり、電子部品等を被覆加工したときに被覆位置がずれてしまう場合があり好ましくない。
【0053】
本発明のチューブは、120℃のシリコンオイル中に20秒間浸漬した時の熱収縮率が、チューブの径方向では30%以上、好ましくは35%であり、さらに好ましくは40%以上であり、かつ、80%以下、好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。また、チューブの長さ方向では40%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下であり、最も好ましくは0%である。120℃のシリコンオイル中に20秒間浸漬した時の熱収縮率が上記範囲であれば、低温収縮特性に優れているため、コンデンサ等の内容物を破損する恐れもなく、さらに、低温から徐々に収縮し、コンデンサなどを被覆する工程での被覆仕上がりが向上し、また被覆速度の高速化などが達成されることが期待される。
【0054】
上記のようにして得られる熱収縮チューブの厚みは特に限定されないが、一般にコンデンサに使用されるチューブの被覆後(収縮後)の厚みは、コンデンサの定格電圧に応じて、おおよそ0.05m以上、1mm以下、代表的には0.07mm以上、0.2mm以下であるものが使用されている。
【0055】
本発明のチューブで用いる混合樹脂組成物は、予め各成分をタンブラー、V型ブレンダー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などの混合機により混合して使用してもよく、また未延伸チューブを押し出すための押出機の供給口に計量した各成分を直接供給する方法や、さらには2ケ所以上の供給口を有する押出機の各供給口に別々に計量した成分を供給してもよい。さらに本発明では、ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)、その他添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。
【0056】
例えば、各種添加剤をポリエステル系樹脂(A)などの適当なベース樹脂に高濃度に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合する方法、あるいは使用する樹脂に直接各種添加剤を混合する方法などが挙げられる。
【0057】
本発明のチューブで用いる混合樹脂組成物は、押出機内でのポリエステル系樹脂(A)の加水分解を避けるために、予め水分が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下になる様に充分乾燥することが重要である。例えば、60℃、真空減圧下で8時間以上の条件で乾燥する。また、同方向二軸押出機を用いて真空ベントを行う、いわゆる無乾燥押出を行う方法も好適な方法として挙げられる。
【0058】
本発明のチューブは、アルミ電解コンデンサなどのコンデンサの被覆用として好適に用いることができるが、他の用途、例えば、電線(丸線、角線)、乾電池、リチウムイオン電池等の2次電池、鋼管またはモーターコイルエンド、トランスなどの電気機器や小型モーター、あるいは、電球、蛍光灯、ファクシミリやイメージスキャナーの蛍光灯被覆用チューブとしても利用可能である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるチューブについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、チューブの押出機からの流れ方向を長さ方向、その直交方向を径方向と呼ぶ。
【0060】
先ず実施例にて行った評価方法について説明する。
【0061】
(1)ガラス転移温度の測定
東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、ポリエステル系樹脂(A)に周波数1Hzの正弦波状に変化する歪みを加えながら、引張弾性率の温度依存性を測定した。測定条件は、サンプル厚み0.5mm、最大歪み1%、昇温速度は3℃/分で、−100℃から200℃の範囲で測定を行った。得られたチャートより、損失正接のピーク値を読み取り、ガラス転移温度とした。
【0062】
(2)結晶融解温度、結晶融解熱量の測定
JIS K7121に基づき、10mg程度に削り出したサンプルについて、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて10℃/分の速度にて30℃から200℃まで昇温し、得られたサーモグラムより、結晶融解温度と結晶融解熱量を読みとった。
【0063】
(3)ゲル分率の測定
本発明のチューブを構成するポリエステル系樹脂(A)のゲル分率の測定方法について、以下に説明する。
a)得られた熱収縮チューブから切り取った0.25gの試験片をクロロホルム20mlに、23℃で5時間溶解させた。
b)前記a)で作製した溶液をSigma Laborzentrifugen GmbH社製テーブルトップ高速冷却遠心機3−18Kを用いて、回転速度11,400rpmで不溶解物の分離を行った。
c)前記b)で得られた不溶解物を乾燥し、ポリエステル系樹脂(A)以外の成分(メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、カルボジイミド化合物(D)等)を差し引いた後、以下の式にてゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=A/B×100
A:前記c)で得られたポリエステル系樹脂(A)以外の成分の質量を差し引いた後の樹脂成分の不溶解物の質量
B:得られた熱収縮チューブ中に占めるポリエステル系樹脂(A)以外の成分の質量を差し引いた樹脂成分の理論質量
【0064】
(4)熱収縮率
シリコンオイルが入ったシリコンバス中に径30mm、長さ100mmのチューブを120℃、20秒間浸漬した後の径方向の収縮率を下式に基づいて算出した。
熱収縮率(%)=[(L−L)/L0]×100
ここで、Lは収縮前の寸法、Lは収縮後の寸法を意味する。
【0065】
(5)耐熱性
ナガノ化学機械製作所製恒温熱風オーブンNH−402を用い、径18mm、長さ200mmのステンレス棒に、径30mm、長さ100mmのチューブを被覆した後、200℃、30分間静置し、チューブにピンホール、裂け等の不良が生じていないかどうかを目視にて評価した。ピンホール、裂け等の不良が生じていないものを○、不良が生じているものを×とした。
【0066】
(6)難燃性(VW−1)
UL1581VW−1規格の燃焼試験方法に基づき、チリルバーナーを用いて15秒着火、15秒休止を5回繰り返し、試験片の燃焼時間、インジケータの損傷割合、ドリップによる脱脂綿の着火有無により合否判定を行った。燃焼時間が60秒以下、インジケータの損傷割合が25%以下、ドリップによる脱脂綿の着火がないものをVW−1合格とした。
【0067】
次に、実施例にて使用した樹脂、及び、添加剤について説明する。
【0068】
『ポリエステル系樹脂(A)』
(A)−1:三菱化学社製GSPla AD92W(ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ガラス転移温度=−45℃、結晶融解温度=88℃、結晶融解熱量=35J/g)
(A)−2:三菱化学社製GSPla AZ91T(ポリブチレンサクシネート、ガラス転移温度=−32℃、結晶融解温度=110℃、結晶融解熱量=54J/g)
(A)−3:日本合成化学社製ポリエスターSP154(ポリブチレンアジペート・テレフタレート、ガラス転移温度=−20℃、結晶融解温度=120℃、結晶融解熱量=10J/g)
【0069】
『メラミン誘導体化合物(B)』
(B)−1:日産化学工業社製微粉メラミン(平均粒径=3μm)
【0070】
『架橋剤(C)』
(C)−1:日本化成社製TMAIC(トリメタアリルイソシアネート)
【0071】
『カルボジイミド化合物(D)』
(D)−1:日清紡績社製カルボジライトLA−1(ポリカルボジイミド)
【0072】
(実施例1)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比79.25:20:0.25:0.5の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて200℃で混練し、丸ダイを用いて押出し、水に浸漬、冷却固化して外径20mm、厚み0.2mm未延伸チューブを得た。次いで、未延伸チューブに照射線量50kGyで放射線を照射した後、85℃の温水で加熱し、長さ方向に1.09倍、径方向に1.8倍延伸後、冷却して外径11mm、厚み0.1mmの熱収縮チューブを得た。得られた熱収縮チューブに関して、熱収縮率、難燃性、耐熱性の評価を行った結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比59.5:40:0.25:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比39.5:60:0.25:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例4)
(A)−1の代わりに(A)−2を用い、延伸温度を105℃とした以外は実施例2と同様の配合にて熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例5)
(A)−1の代わりに(A)−3を用い、延伸温度を115℃とした以外は実施例2と同様の配合にて熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比59.9:40:0.1:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例7)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比59:40:0.5:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例8)
実施例2において、外径を28mm、厚みを0.28mmの未延伸チューブを作製し、照射線量50kGyで放射線を照射した後、85℃の温水で加熱し、長さ方向に1.09倍、径方向に2.5倍延伸後、冷却して外径11mm、厚み0.1mmの熱収縮チューブを得た。得られたチューブに関して実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0080】
(実施例9)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び、(D)−1を混合質量比58.25:40:0.25:1.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例10)
(C)−1の代わりに(C)−2を用いた以外は、実施例1と同様の配合にて熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び(D)−1を混合質量比89.25:10:0.25:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例2)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び、(D)−1を混合質量比59.45:40:0.05:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製を行ったが、架橋が十分ではなくチューブの延伸は不可であった。
【0084】
(比較例3)
カルボジイミド化合物(D)を配合せず、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を混合質量比59.75:40:0.25でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例4)
ポリエステル系樹脂としてNature Works社製NW4032D(以下、PLA−1という。ガラス転移温度=55℃、結晶融解温度=165℃、結晶融解熱量=42J/g)を用い、PLA−1、(B)−1、(C)−1、及び、(D)−1を混合質量比59.25:40:0.25:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例5)
(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び、(D)−1を混合質量比29.25:70:0.25:0.5でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製を行ったが、未延伸チューブの成形工程において割れ等が発生し、チューブの成形が不可であった。
【0087】
(比較例6)
照射線量を10kGyに変更した以外は実施例1と同様の方法で熱収縮チューブの作製を行ったが、架橋が十分ではなくチューブの延伸は不可であった。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1より、実施例1から10の難燃性収縮チューブは、120℃のシリコンオイル中に20秒間浸漬した時の径方向の収縮率が30%以上の優れた収縮特性を備え、UL1581VW−1を満足する難燃性を有し、さらには200℃の熱風中に30分間静置した場合にもピンホール、裂け等の不良を生じない耐熱性を有していた。
【0091】
これに対し、表2より比較例1はメラミン誘導体化合物(B)の含有率が少なかったため、難燃性に劣るものであった。また比較例2は架橋剤の配合量が少なかったため、ゲル分率が十分ではなく、チューブの延伸が不可であった。また比較例3はカルボジイミド化合物(D)の含有率が少なかったため、ゲル分率が不十分であり、十分な収縮率が得られなかった。また比較例4は、ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解温度が120℃よりも高く、また十分なゲル分率も得られなかったため、十分な収縮率が得られず、かつ耐熱性、難燃性にも劣るものであった。また、比較例5はメラミン誘導体化合物(B)の含有率が多すぎたため、チューブの成形が不可であった。また、比較例6は照射線量が少なかったため、ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率が不十分であり、チューブの延伸が不可能であった。
【0092】
上述したように、本発明の熱収縮チューブは、優れた収縮特性、難燃性、耐熱性を有するため、アルミ電解コンデンサなどのコンデンサの被覆用チューブを始めとして、電線(丸線、角線)、乾電池、リチウムイオン電池等の2次電池、鋼管またはモーターコイルエンド、トランスなどの電気機器や小型モーター、あるいは、電球、蛍光灯、ファクシミリやイメージスキャナーの蛍光灯被覆用チューブ等の用途へ広く使用することができる。
【0093】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う難燃性熱収縮チューブ及び該チューブで被覆された部材もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が0℃以下であり、かつ、結晶融解温度が70℃以上120℃以下であるポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)で構成される樹脂組成物を主成分としてなる熱収縮チューブであって、
ポリエステル系樹脂(A)のゲル分率が70質量%以上であり、
ポリエステル系樹脂(A)、メラミン誘導体化合物(B)、架橋剤(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の総量を100質量%とした場合、メラミン誘導体化合物(B)の含有率が20質量%以上60質量%以下であり、架橋剤(C)の含有率が0.1質量%以上0.7質量%未満であり、かつ、カルボジイミド化合物(D)の含有率が0.1質量%以上3質量%以下であることを特徴とする難燃性熱収縮チューブ。
【請求項2】
架橋剤(C)がトリメタアリルイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性熱収縮チューブ。
【請求項3】
120℃のシリコンオイル中に20秒間浸漬した時の径方向の収縮率が30%以上80%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性熱収縮チューブ。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂(A)が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の難燃性熱収縮チューブ。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量が5J/g以上40J/g以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の難燃性熱収縮チューブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の難燃性熱収縮チューブで被覆された部材。
【請求項7】
電子機器又は電気機器の用途で用いられる請求項6に記載の部材。

【公開番号】特開2011−52122(P2011−52122A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202471(P2009−202471)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】