説明

難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品

【課題】本発明は、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、高温加熱時においてガス発生の少ない難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品を得ることを目的とし、さらには、前記の特性を維持しながら、高度な耐トラッキング性を有し、機械機構部品、電気電子部品または自動車部品として有用な成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂20〜95重量%、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤1〜30重量%、(C)酸成分中和剤0.01〜3重量%、および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物0.01〜4重量%を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、高温加熱時においてガス発生の少ない難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。最近では、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品は、その形状が複雑化し、小型、薄肉化していく傾向に有るのが現状であり、より高度な機械特性、射出形成時の流動性、低ガス性が要求される。
【0003】
また、成形品などに電圧がかかると成形品の炭化が進み発火に至る現象をトラッキングというが、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂においても高電圧化で用いられる成形品が多く、例えば、ブレーカー、電磁開閉器、および複写機やプリンターの定着機用成形品などは、優れた難燃性と相対トラッキング指数が600V以上有する高度な耐トラッキング性を有する成形品が望まれている。
【0004】
さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂は、本質的に可燃性であるため、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求され、UL−94規格のV−0を示す高度な難燃性が必要とされる場合が多い。
【0005】
熱可塑性ポリエステル樹脂に難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂にコンパウンドする方法が一般的であるが、難燃助剤のアンチモン化合物の影響により流動性が低下する課題があった。
【0006】
また、環境意識の高まりから、ハロゲン系難燃材料の環境に及ぼす影響を懸念する動きがある。そこで、近年これらハロゲンを全く含まない非ハロゲン系難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。
【0007】
例えば、特許文献1や特許文献2には、非ハロゲン系難燃剤として、ホスフィン酸塩と窒素含有化合物を配合することが開示されているが、射出成形で得られた成形品は機械特性、流動性および耐トラッキング性に劣るという課題があった。
【0008】
また、特許文献3には、非ハロゲン系難燃剤として、芳香族燐酸エステルとメラミンシアヌレートを配合することが開示されているが、射出成形で得られた成形品は高温加熱時のガス発生量が多いことと流動性に劣るという課題があった。
【0009】
このように、上記で提案されている技術では、これらの課題は解決する事はできず、その解決が必須であった。従って、上記課題を解決し、近年の機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品での要求を満足できる新たな技術の開発が待望されていた。
【特許文献1】特開11−60924号公報
【特許文献2】特開2004−263188号公報
【特許文献3】特開平3−281652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、高温加熱時においてガス発生の少ない難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品を得ることを目的とし、さらには、前記の特性を維持しながら、高度な耐トラッキング性を有し、機械機構部品、電気電子部品または自動車部品として有用な成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、ホスフィン酸塩類を難燃剤とし、熱可塑性ポリエステル組成物を難燃化するにあたって、(C)酸成分中和剤および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物を特定範囲内にする事により上記した課題を解決できる事を見いだし本発明に到達した。すなわち、かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
(1)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂20〜95重量%、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤1〜30重量%、(C)酸成分中和剤0.01〜3重量%、および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物0.01〜4重量%を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
(2)(E)ビニル系樹脂0.1〜10重量%を配合してなる(1)に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
(3)(F)難燃助剤1〜50重量%を配合してなる(1)または(2)に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
(5)(2)または(3)に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる相対トラッキング指数600V以上の成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果である種々の特性は、(C)酸成分中和剤および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物により大きく変動し、特定範囲内の(C)および(D)を有する組成物を使用した場合において顕著な特性の改善が見られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体である。
【0015】
上記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0016】
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0017】
また、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0018】
また、上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
【0019】
これらの中で、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましく、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートから選ばれる一種の芳香族ポリエステル樹脂が最も好ましく、二種以上の芳香族ポリエステル樹脂を任意の混合量で用いることもできる。
【0020】
本発明において、上記ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂として、溶融時に異方性を形成し得る液晶性ポリエステルを用いても良い。液晶性ポリエステルの構造単位としては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位、芳香族イミノオキシ単位などが挙げられる
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の配合量は、20〜95重量%であり、25〜90重量%が好ましく、30〜85重量%がより好ましい。20重量%以上で十分な成形性が得られ、95重量%以下では良好な成形性と機械物性が得られる。
【0022】
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下であることがより好ましく、20eq/t以下であることがさらに好ましく、10eq/t以下であることが特に好ましい。下限は0eq/tである。
【0023】
なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のヒドロキシル末端基量は、成形性および流動性の点で、50eq/t以上であることが好ましく、80eq/t以上であることがより好ましく、100eq/t以上であることがさらに好ましく、120eq/t以上であることが特に好ましい。なお、上限は180eq/tである。
【0024】
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の粘度は、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.50dl/gの範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)8000を超え500000以下の範囲であることが好ましく、8000を超え300000以下の範囲であることがより好ましく、8000を超え250000以下の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、ポリエステル樹脂のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0026】
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の製造方法は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。
【0027】
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられるが、これらの内でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
【0028】
本発明における(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤とは、下記(1)式のホスフィン酸塩、下記(2)式のジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーの一種以上からなる難燃剤である。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
式中のR1とR2は、同じかまたは異なり、C1〜C6のアルキル基もしくはアリール基であり、直鎖であっても分岐であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、およびフェニル基などが挙げられる。また、R3は、直鎖状または枝分かれしたC1〜C10のアルキレン基もしくはC6〜C10のアリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、ドデシレン基、フェニル基、ナフチレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、tert−ブチルフェニレン基、およびtert−ブチルナフチレン基などが挙げられる。
Mは、カルシウム、アルミニウムまたは亜鉛である。Mとしては、アルミニウムが好ましい。また、mは1〜4、nは1〜4、xは1〜4である。
【0032】
市販品としては、クラリアントジャパン社の「Exolit」(登録商標)OP1230やOP1240などが挙げられる。また、同社からは、(B)成分と窒素含有化合物および/またはホウ素含有化合物を含む混合物も市販されており、市販品の例としてはOP1312が挙げられ、OP1240を好ましく用いることができる。
【0033】
本発明において、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤の配合量は1〜30重量%であり、2〜25重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。1重量%以上で十分な難燃性効果が得られ、30重量%以下では良好な機械特性が得られる。
【0034】
本発明において、(C)酸成分中和剤を配合することにより、熱分解や加水分解特性を著しく向上させることができる。(C)酸成分中和剤を配合することで、(B)成分から発生する酸を中和し、(A)成分の加水分解を防止し、機械特性に優れる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が得られているものと推定される。
【0035】
(C)酸成分中和剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の化合物が好ましく挙げられる。また、前記のアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの有機酸塩が挙げられる。また、前記のアルカリ土類金属化合物具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、さらにはオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。この中で、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩が好ましく用いられ、特に、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムが好ましく用いられ、より好ましくは炭酸カルシウムが用いられる。かかるアルカリ土類金属は1種または2種以上で用いることができる。また、上記の炭酸カルシウムは製造方法により、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕微粉重質炭酸カルシウム、湿式重質炭酸カルシウム(白亜)などが知られており、いずれも本発明に用いることができる。これらのアルカリ土類金属化合物は、シランカップリング剤、有機物、無機物などから選択される一種以上の表面処理剤で処理されていても良く、形状は粉末状、板状あるいは繊維状であっても構わないが、10μm以下の粉末状で用いることが分散性などから好ましい。さらに粒径が細かいと加水分解性の向上効果が大きく好ましい。
【0036】
また、本発明における(C)酸成分中和剤の配合量は、0.01〜3重量%であり、0.02〜2.5重量%が好ましく、0.03〜2重量%がより好ましい。0.01重量%以上で酸成分を中和する効果が十分得られ、5重量%以下では良好な機械特性が得られる。
【0037】
本発明において、難燃剤として使用する(B)成分は、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の加工温度である300℃近傍まで加熱しても十分に溶融しないため、射出成形など成形加工時の流動性を低下させる。したがって、本発明では、射出成形など成形加工時の流動性を向上させることを目的に、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物を配合することが必要である。
【0038】
前記(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよく、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物であれば、いずれでも好ましく用いられる。また、3つ以上の官能基の官能基とは、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択された少なくとも1種類以上であることが好ましく、これらの中から同一あるいは異なる3つ以上の官能基を有していることがより好ましく、とくに流動性、機械物性、耐久性、耐熱性および生産性の点で、同一の官能基であることがさらに好ましいまた、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物のアルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が有効であり、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位などを挙げることができ、本発明においては、特に、流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性に優れるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用するのが好ましく、耐加水分解性および靭性(引張破断伸度)に優れるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましく、アルキレンオキシド単位数については、流動性および機械物性に優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
【0039】
また、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
【0040】
また、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の好ましい例として、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0041】
また、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン等を挙げることができる。
【0042】
また、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルやエステル誘導体などが挙げられる。
【0043】
また、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、アミド誘導体などが挙げられる。
【0044】
また、難燃性ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の特に好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトールが挙げられ、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸が挙げられ、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼンが挙げられる。
【0045】
本発明で用いる(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と反応し、(A)成分の主鎖および側鎖に導入されていても良く、(A)成分と反応せずに、配合時の構造を保っていても良い。
【0046】
本発明で用いる(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の粘度は、25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性の点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、成形時のブリード性の点から100m・Pa以上であることが好ましい。25℃における粘度が15000m・Paよりも大きいと流動性改良効果が不十分であるため好ましくない。
【0047】
本発明で用いる(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の分子量または重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定され、ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値で数値化された値が、流動性の点で、50〜10000の範囲であることが好ましく、150〜8000の範囲であることがより好ましく、200〜6000の範囲であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明で用いる(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の含水分は1%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下であり、含水分の下限は特にない。含水分が1%よりも高いと機械物性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0049】
本発明における(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の配合量は、0.01〜4重量%であり、0.05〜3重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。0.01重量%以上で流動性の改善効果が十分得られ、4重量%以下で良好な機械特性が得られる。
【0050】
本発明における(E)ビニル系樹脂とは、耐トラッキング性、耐アーク性および耐電圧特性などの電気特性を向上させることを目的に、本発明の樹脂組成物に配合する。また、本発明(E)ビニル系樹脂の中でゴム質成分を含有するビニル系樹脂は、前記の電気特性と衝撃強度などの靭性を向上させる効果を有する材料として好ましく用いられる。
【0051】
本発明における上記(E)ビニル系樹脂を配合した難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の相対トラッキング指数は、電気特性の観点から、600V以上であることが好ましい。
【0052】
本発明における(E)ビニル系樹脂としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体からなる群より選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂、あるいは、ポリブタジエン系ゴムなどのゴム系成分にこれら単量体をグラフト重合したもの、あるいは、共重合したものなどが挙げられ、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体からなる群より選択される一種以上の単量体成分が50重量%以上含有するグラフト重合したもの、あるいは、共重合したビニル系樹脂である(以下これらを「(共)重合体」と総称することがある)。
【0053】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルトルエン、および、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nーブチル、およびアクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、マレイミド系単量体としては、マレイミド、Nーメチルマレイミド、Nーエチルマレイミド、Nーフェニルマレイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、およびその誘導体などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。また、上記のビニル系樹脂と共重合が可能な下記の成分とのビニル系樹脂も本発明に用いることができる。かかる共重合が可能な成分の具体例としては、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、およびビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0054】
(E)ビニル系樹脂の好ましい(共)重合体の例としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、スチレン/Nーフェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/Nーフェニルマレイミド樹脂などのビニル系(共)重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂等のゴム質重合体で変性されたスチレン系樹脂、およびブロック共重合体としてスチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などが挙げられ、とくに、ポリスチレン樹脂およびアクリロニトリル/スチレン樹脂が好ましく、さらには、アクリロニトリルとスチレンを共重合せしめてなる共重合体であるアクリロニトリル/スチレン共重合体がより好ましい(/は共重合を示す)。
【0055】
また、アクリロニトリル/スチレン樹脂としては、アクリロニトリルを10wt%以上50wt%未満含有するアクリロニトリル/スチレン樹脂が特に好ましい。
【0056】
また、(E)ビニル系樹脂に不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂であっても良い。なかでも不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂であることが好ましい。
【0057】
前記の不飽和酸無水物類は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基と酸無水物の両者を共有する化合物であり、具体例としては無水マレイン酸等が好ましく挙げられる。
【0058】
また、エポキシ基含有ビニル系単量体は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基とエポキシ基の両者を共有する化合物であり、具体例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類および2−メチルグリシジルメタクリレートなどの上記の誘導体類が挙げられ、なかでもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用できる。またこれらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合する際の使用量は、(E)ビニル系樹脂に対して0.05重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の傾向があり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0060】
また、(E)ビニル系樹脂に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したビニル系樹脂であっても良い。この場合、エポキシ変性を有効に行わせるためにビニル系樹脂にはジエン系のモノマーがランダム共重合もしくはブロック共重合されていることが好ましい。ジエン系のモノマーの例としては、ブタジエン、イソプレン等が好ましく用いられる。これらのエポキシ変性ビニル系樹脂の好適な製造法の例は、特開平6−256417、特開平6−220124等に示されている。
【0061】
また、多層構造体からなる(E)ビニル系樹脂も好ましく用いられる。前記の多層構造体は、最内層(コア層)とそれを覆う1種以上の外層(シェル層)から形成され、(E)ビニル系樹脂が外層(シェル層)の1種として構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体であることが好ましい。
【0062】
多層構造体を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよい。
【0063】
また、多層構造体としては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造体であることが好ましい。
【0064】
多層構造体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせて共重合させたものから構成されるゴムも好ましく用いられる。
【0065】
多層構造体において、外層(シェル層)は(E)ビニル系樹脂で構成されるものであり、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、スチレン/Nーフェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/Nーフェニルマレイミド樹脂などのビニル系(共)重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂等のゴム質重合体で変性されたスチレン系樹脂、およびブロック共重合体としてスチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などが挙げられ、とくに、ポリスチレン樹脂およびアクリロニトリル/スチレン樹脂が好ましく用いられ、(E)ビニル系樹脂に不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂、あるいは(E)ビニル系樹脂に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したビニル系樹脂であっても良い。
【0066】
また、多層構造体の好ましい例としては、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるものなどが挙げられる。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であることがより好ましい。
【0067】
また、多層構造体において、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体に対して、コア層が10重量部以上、90重量部以下であることが好ましく、さらに、30重量部以上、80重量部以下であることがより好ましい。
【0068】
また、多層構造体としては、前記した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
【0069】
また、多層構造体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、武田薬品工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0070】
また、本発明の(E)ビニル系樹脂の配合量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜9重量%がより好ましく、1〜8重量%がとくに好ましい。0.1重量%以上とすることで電気特性や靭性が改善され、10重量%以下で良好な難燃性が得られる。
【0071】
また、本発明の(F)難燃助剤とは、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤と共に併用配合することにより、難燃性を向上させる目的で難燃助剤を配合することができる。
【0072】
本発明における上記(F)難燃助剤を配合した難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の相対トラッキング指数は、電気特性の観点から、600V以上であることが好ましい。
【0073】
本発明の(F)難燃助剤としては、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フェノール樹脂および(B)成分以外のリン系難燃剤あるいは後記のフッ素系樹脂から選ばれる一種以上の難燃助剤が挙げらる。窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤、および(B)成分以外のリン系難燃剤は、燃焼時に発生する熱を吸熱する効果や炭化層を形成し、燃焼を防止する。また、シリコーン系難燃剤とフェノール樹脂は、燃焼熱でシリコーン系難燃剤とフェノール樹脂が成形品表面に移動し、成形品表面から燃焼を防止するため、少量の配合で難燃助剤効果を発現し、多量配合は機械特性が著しく低下するため好ましくない。
【0074】
本発明の(F)難燃助剤の窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤、および(B)成分以外のリン系難燃剤の配合量は、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%がとくに好ましい。1重量%以上とすることで良好な難燃性が得られ、50重量%以下で良好な機械特性が得られる。
【0075】
本発明の(F)難燃助剤のシリコーン系難燃剤とフェノール樹脂の配合量は、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜4重量%がより好ましく、0.3〜3重量%がとくに好ましい。1重量%以上とすることで良好な難燃性が得られ、3重量%以下で良好な機械特性が得られる。
【0076】
上記の窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素等が挙げることができる。
【0077】
前記の脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。
【0078】
前記の芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
前記の含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリ
ン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などを挙げることができる。
【0079】
前記のシアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。また、前記
の脂肪族アミドや芳香族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0080】
前記の含窒素複素環化合物において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができ、メラミンシアヌレートとメラミンイソシアヌレートが好ましく用いられる。前記のメラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコールおよびシリカなどの金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.1μmが好ましく、好ましくは50〜0.5μmであり、さらに好ましくは10〜1μmであり、平均粒径はレーザーミクロンサイザー法による累積分布50%粒子径で測定される平均粒径であり、日産化学(株)製MC−4000やMC−6000などが好ましく用いられる。
【0081】
前記の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム水和物、水酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸カルシウム水和物、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、ハイドロタルサイト、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができ、脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理されていても良く、前記の中でも、硼酸亜鉛水和物、膨潤性黒鉛が好ましい。
【0082】
前記のシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO、RSiO3/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0083】
前記のフェノール樹脂とは、燃焼時に表面に移動し、炭化層形成を助ける難燃助剤として効果があり、上記のリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種以上と共に併用して好ましく用いられる。また、フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応性であるノボラック型フェノール樹脂またはメラミン変性ノボラック型フェノール樹脂が難燃性、機械特性、経済性の点で好ましい。
【0084】
また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用でき、必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。また、フェノール系樹脂は特に限定するものではなく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは二種以上用いることができる。
【0085】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
【0086】
ここで、フェノール類としてはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上用いることができる。一方、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0087】
フェノール樹脂の分子量は、特に限定されないが好ましくは数平均分子量で200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なおフェノール系樹脂の分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定できる。
【0088】
前記の(B)成分以外のリン系難燃剤とは、リン成分を含有するリン系難燃剤であり、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、フォスファフェナントレン化合物、赤リン、リン酸エステルアミドおよびポリリン酸アンモニウムなどが挙げられ、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系難燃剤がとくに好ましく用いられる。
【0089】
前記の芳香族リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリス(ジメチルフェニル)ホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートおよび縮合燐酸エステルなどが挙げられ、縮合燐酸エステルが加水分解性や高温でのガス発生が少ないことから好ましく用いられ、その市販品としては、大八化学工業(株)社製PX−202、CR−741、PX−200、PX−201、(株)アデカ社製FP−500、FP−600、FP−700およびPFRなどから選ばれる1種または2種以上が使用することができる。
【0090】
前記のホスファゼン化合物としては、ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーであり、特に直鎖状のフェノキシホスファゼンを主成分とするものが好ましく用いられ、前記のホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーは、著者梶原『ホスファゼン化合物の合成と応用』などに記載されている公知の方法で合成することができ、例えば、りん源として五塩化リンあるいは三塩化リン、窒素源として塩化アンモニウムあるいはアンモニアガスを公知の方法で反応させて(環状物を精製してもよい)、得られた物質をアルコール、フェノールおよびアミン類で置換することで合成することができ、(株)伏見製薬所製“ラビトル”FP−110などが好ましく用いられる。
【0091】
前記のフォスファフェナントレン化合物としては、分子内に少なくとも1個のフォスファフェナントレン骨格を有するリン系難燃剤であり、市販品としては、三光(株)社製HCA、HCA−HQ、BCA、SANKO−220およびM−Esterなどが挙げられ、とくにM−Esterは末端の水酸基と(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の末端との反応が溶融混練時に期待でき、高温多湿下でのブリードアウト抑制に効果があり好ましく用いられる。
【0092】
前記のリン酸エステルアミドとは、リン原子と窒素原子を含む芳香族アミド系難燃剤であり、高い融点を持つ常温で粉末状の物質であり、配合時のハンドリング性に優れ、熱変形温度の高い難燃性ポリエステル樹脂が得られ、市販品としては、四国化成(株)社製SP−703などが好ましく用いられる。
【0093】
前記のポリ燐酸アンモニウムとしては、ポリ燐酸アンモニウム、メラミン変性ポリ燐酸ア
ンモニウム、およびカルバミルポリ燐酸アンモニウムなどが挙げられ、熱硬化性を示すフェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂などによって被覆されていても良く、1種で用いても2種以上で用いても良い。
【0094】
前記のポリ燐酸メラミンとは、リン原子燐酸メラミン、ピロ燐酸メラミンおよびメラミン、メラム、メレムとのリン酸塩などのポリ燐酸メラミンが挙げられ、1種で用いても2種以上で用いても良く、(株)三和ケミカル製“MPP−A、日産化学(株)製PMP−100やPMP−200などが好ましく用いられる
前記の赤リンとは、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
【0095】
また、本発明においては、燃焼時の難燃性樹脂組成物が溶融落下することを抑制し、さらに難燃性を向上させることを目的にフッ素系樹脂を配合することができ、(F)難燃助剤の一つとして扱われる。
【0096】
前記のフッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
【0097】
また、フッ素系樹脂の配合量は、難燃性の観点から、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.15〜2重量%である。
【0098】
本発明においては、前記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と前記(E)ビニル系樹脂の混合物に他の樹脂を併用配合することもできる。他の樹脂とは、本発明における難燃性、成形加工性、耐熱性、または高温多湿雰囲気下においてもブリードアウト特性のいずれかを改善可能な樹脂、あるいは衝撃強度などの靭性を改善可能な樹脂であり、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれも用い得るが、成形性の点から熱可塑性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂以外の樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などを挙げることができる。
【0099】
上記の他に、前記他の樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴムおよびエチレンに無水マレイン酸などの酸無水物、グリシジルメタクリレートおよびエポキシ化剤でエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂なども挙げられ、更に、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものなどが挙げられる。前記のエチレンに無水マレイン酸などの酸無水物、グリシジルメタクリレートおよびエポキシ化剤でエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂としては、エチレン/グリシジルメタクリレート、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸、エチレン/無水マレイン酸およびエチレンに過酸化物などでエポキシ化させたエポキシ化オレフィン系樹脂などが具体例として挙げられ、市販品の例としては、住友化学(株)製“ボンドファースト”Eなどが挙げられる。ここで、上記具体例に挙げた各種の共重合体、重合体およびゴムは、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれであっても用いることができ、1種で用いても、2種以上併用して用いてもかまわない。
【0100】
前記他の樹脂の中では、機械特性、難燃性および衝撃強度のいずれかに改善効果が高いことから、芳香族ポリカーボネート樹脂、グリシジルメタクリレートおよびエポキシ化剤でエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂が特に好ましく、1種以上で用いられる。
【0101】
本発明に用いる前記他の樹脂の配合量は、機械特性、難燃性および衝撃強度の観点から、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%がさらに好ましい。
【0102】
本発明においては、離型剤を配合することができる。本発明の離型剤とは、射出成形時の離型性を改善する成分である。
【0103】
また、離型剤を配合する場合の添加量は0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がさらに好ましい。0.02重量%以上で十分な離型性効果が得られ、2重量%以下では良好な機械物性が得られる。
【0104】
本発明においては、機械強度を向上させることを目的に繊維強化材を配合することができる。前記の繊維強化材の具体例としては、ガラス繊維、アラミド繊維、および炭素繊維などが挙げられる。上記のガラス繊維としては、チョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維でありアミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはウレタン、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられ、シランカップリング剤および/または集束剤はエマルジョン液で使用されていても良い。また、繊維径は1〜30μm、好ましくは5〜15μmである。また、前記の繊維断面は円形状であるが任意の縦と横比の楕円形ガラス繊維、扁平ガラス繊維およびまゆ型形状ガラス繊維など任意な断面を持つ繊維強化材を用いることもでき、射出成形時の流動性向上と、ソリの少ない成形品が得られる特徴がある。
【0105】
また、繊維強化材の配合量は、射出成形時の流動性と射出成形機や金型の耐久性の点から、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%がとくに好ましい。、
また、本発明においては、さらに繊維強化材以外の無機充填材を配合することができ、本発明の成形品の結晶化特性、耐アーク性、異方性、機械強度、難燃性あるいは熱変形温度などの一部を改良するものであり、とくに、異方性に効果があるためソリの少ない成形品が得られる。かかる繊維強化材以外の無機充填材としては、限定されるものではないが針状、粒状、粉末状および層状の無機充填剤が挙げられ、具体例としては、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、チタン酸カリウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリン、タルク、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、およびドロマイトなどが挙げられ、一種以上で用いられる。とくに、ガスビーズ、ガラスフレーク、カオリン、タルクおよびマイカを用いた場合は、異方性に効果があるためソリの少ない成形品が得られる。
【0106】
また、上記の繊維強化材以外の無機充填材には、カップリング剤処理、エポキシ化合物、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていても良い。また、粒状、粉末状および層状の無機充填剤の平均粒径は衝撃強度の点から0.1〜20μmであることが好ましく、特に0.2〜10μmであることが好ましい。また、繊維強化材以外の無機充填材の配合量は、成形時の流動性と成形機や金型の耐久性の点から繊維強化材の配合量と合わせて50重量%を越えない量が成形時の流動性の観点から好ましい。
【0107】
本発明においては、加水分解性を向上させることを目的にエポキシ化合物を配合することができ、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物が挙げられ、これらは一種以上で用いることができる。
【0108】
また、エポキシ化合物の配合量は加水分解性向上の観点から、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。
【0109】
本発明においては、さらに耐加水分解性改良を目的に、オキサゾリン化合物、カルボジイミド変性イソシアネート化合物およびカルボジイミド化合物などを配合でき、単独で用いても良いが、前記のエポキシ化合物を超えない範囲の配合量で、エポキシ化合物と併用して用いることが好ましい。
【0110】
本発明においては、さらに本発明の組成物が長期間高温にさらされても極めて良好な耐熱エージング性を与える安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤を配合でき、その配合量は、耐熱エージング性向上の観点から、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。
【0111】
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより種々の色に樹脂を調色、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能であり、顔料や染料の配合量は、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。0.01重量%未満では調色、耐候(光)性、および導電性に効果がなく、3重量%を超すと機械特性が低下するため好ましくない。
【0112】
また、前記のカーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
【0113】
また、上記の酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記の熱可塑性樹脂としては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂や(E)ビニル系樹脂およびその混合物が好ましく用いられる。
【0114】
さらに、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品に対して本発明の目的を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、および帯電防止剤などの公知の添加剤や前記以外の熱可塑性樹脂を1種以上配合された材料も用いることができる。
【0115】
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品は、機械機構部品、電気電子部品または自動車部品として用いることができる。具体的には、ブレーカー、電磁開閉器、フォーカスケース、フライバックトランス、複写機やプリンターの定着機用成形品、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、バリコンケース部品、各種端子板、変成器、プリント配線板、ハウジング、端子ブロック、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、各種ケース類、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品、コンピューター関連部品、音響部品などの音声部品、照明部品、電信・電話機器関連部品、エアコン部品、VTRやテレビなどの家電部品、複写機用部品、ファクシミリ用部品、光学機器用部品、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、および各種自動車用電装部品などの成形品が挙げられる。
【0116】
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤、(C)酸成分中和剤、および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物、必要に応じて(E)ビニル系樹脂、(F)難燃助剤、さらには、必要に応じて(A)(E)成分以外の樹脂、離型剤、繊維強化材、繊維強化材以外の無機充填材、エポキシ化合物、酸化防止剤、および顔料や染料、さらには、その他の必要な帯電防止剤や可塑剤などの添加剤を予備混合して押出機などに供給して十分溶融混練する方法、あるいは、重量フィダーなどの定量フィダーを用いて各成分を所定量押出機などに供給して十分溶融混練する方法などにより本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が製造される。
【0117】
上記の予備混合の例として、ドライブレンドするだけでも可能であるが、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合することが挙げられる。また、繊維強化材や繊維強化材以外の無機充填材は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加する方法であっても良い。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプを用いて添加する方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法などであっても良い。
【0118】
また、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造するに際し、限定されるものではないが、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、コニカル押出機およびニーダータイプの混練機などを用いることができる。
【0119】
かくして得られる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、公知の方法で射出成形することによって得られる。前記射出成形方法としては、通常の射出成形方法以外にガスアシスト法、2色成形法、サンドイッチ成形、インモールド成形、インサート成形およびインジェクションプレス成形などが知られているが、いずれの成形方法も適用できる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで%および部とはすべて重量%および重量部をあらわし、下記の参考例の樹脂名中の「/」は、共重合を意味する。また、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0121】
[参考例]
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
<A−1>ポリエチレンテレフタレート樹脂、三井ぺット樹脂(株)社製三井PET“J005”固有粘度が0.63のPETを用いた(以下、PETと略す)。
<A−2>ポリブチレンテレフタレート樹脂、東レ(株)社製“トレコン”1401−X31固有粘度が0.80のPBTを用いた(以下、PBTと略す)。
【0122】
(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤
<B−1>ホスフィン酸金属塩、クラリアントジャパン製「Exolit」(登録商標)OP1240を用いた。
【0123】
(C)酸成分中和剤
<C−1>炭酸カルシウム、同和カルファイン(株)社製“KSS1000”を用いた。
【0124】
(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物
<D−1>ポリオキシエチレンペンタエリスリトール、日本乳化剤(株)社製PNT−60U(分子量400、1官能基当たりのアルキレンオキシド(エチレンオキシド)単位数1.5を用いた(以下、多価アルコールと略す)。
【0125】
(E)ビニル系樹脂
<E−1>スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート=70/29.5/0.5重量%のエポキシ変性AS樹脂(以下、エポキシ化ASと略す)。
【0126】
(F)難燃助剤
<F−1>芳香族リン酸エステル化合物、大八化学工業(株)社製“PX−200”を用いた。
<F−2>ホスファゼン化合物、(株)伏見製薬所製「ラビトル」(登録商標)FP−110を用いた。
<F−3>トリアジン系化合物、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩(メラミンシアヌレート)、日産化学工業(株)社製MC−4000を用いた(以下、MC塩と略す)。
<F−4>燃焼時溶融落下(ドリップ)防止剤として作用するフッ素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、三井・デュポンフロロケミカル(株)社製「テフロン」(登録商標)6−Jを用いた。
【0127】
(G)必要に応じて配合する成分
<G−1>離型剤、モンタン酸の部分カルシウムケン化物、ヘキストジャパン社製“ヘキストワックス−OP”を用いた。
<G−2>(A)(E)成分以外の樹脂、グリシジルメタクリレートでエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂、エチレン(88wt%)/グリシジルメタクリレート(12wt%)共重合体、住友化学(株)社製“BF−E”を用いた。
<G−3>(A)(E)成分以外の樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、出光石油化学(株)社製“A−1900”を用いた(以下、PCと略す)。
<G−4>エステル交換防止剤、長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物、旭電化(株)社製“アデカスタブ”AX−71を用いた。
<G−5>繊維強化材、繊維径10μmのチョップドストランド状のガラス繊維、日東紡績(株)社製“CS3J948”を用いた(以下、GFと略す)。
<G−6>繊維強化材以外の無機充填剤、タルク、富士タルク工業(株)社製“LMS−100”を用いた。
<G−7>エポキシ化合物、バーサティク酸グリシジルエステル、ジャパンエポキシレジン社製“カージュラーE10”30重量%とビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン社製“エピコート828”70重量%の混合物。
【0128】
(H)本発明外の酸成分中和剤
<H−1>炭酸ナトリウム、試薬一級
(I)本発明外の多価アルコール
<I−1>3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を含まない多価アルコール化合物、ペンタエリスリトール(分子量136、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、東京化成(株)試薬を用いた(以下、本発明外の多価アルコールと略す)
[各特性の測定方法]
本実施例、比較例においては以下に記載する測定方法によって、その特性を評価した。
【0129】
1.射出成形時の流動性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の温度条件、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件で試験片厚み3.2mmのASTM1号ダンベルの機械強度評価用試験片の射出成形を行い、前記の試験片が充填される成形ゲージ圧力(以下、成形下限圧力と略す。)を求めた。なお、成形下限圧力の値が低い程、流動性に優れる。
【0130】
2.機械強度
前記の機械強度評価用試験片3本を用い、ASTMD638(2005年)に従い、引張強度を測定し、値は3本の測定値の平均値とした。
【0131】
3.難燃性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の条件で厚み1.59mmと厚み0.79mmの燃焼試験片を得た。前記の1/16”厚みの燃焼試験片は繊維強化材を配合しない組成物の難燃性評価に用いた。また、前記厚み0.79mmの燃焼試験片は繊維強化材を配合した組成物の難燃性評価に用いた。
【0132】
前記の燃焼試験片を用い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
【0133】
また、燃焼試験時において、第1接炎後と第2接炎後の燃焼試験片が熱で溶融して試験片の一部が落下するか落下しないかを観察し、落下しない材料をノンドリップと評価した。
【0134】
4.高温時におけるガス発生量
前記の厚み0.79mmの燃焼試験片3本を190℃に温調されたタバイエスペック(株)製ギヤオーブンGPHH−200に100h投入し、投入前後の試験片の重量から重量減量を求め、3本の測定値の平均値を高温時におけるガス発生量した。
【0135】
5.耐トラッキング性
IEC(International Electrotechnical commission)Publication 112規格に示されている試験方法に従い、0.1%塩化アンモニウム水溶液、白金電極を用い、試験片にトラッキングが生じる印加電圧(V:ボルト)を求め、この数値を相対トラッキング指数(V)とした。なお、印加電圧が高い程、耐トラッキング性に優れる。
【0136】
6.離型力
前記、3.難燃性で使用した金型の構成は、固定側と金型を開閉する稼働側の2プレートからなり、稼働側のプレートに成形品が充填され、成形品は突き出しピンで突き出されて金型から離型して取り出される。また、突き出しピン部に荷重を検知するロードセルを挿入し、離型時の離型力を測定できる構造とした。成形品5個の離型力を測定し、離型力値は5個の平均値を用いた。なお、離型力の値が小さい程、離型性に優れる。
【0137】
7.衝撃強度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の条件で厚み3.2mmのアイゾット衝撃試験片の射出成形を行い、ASTMD256(2005年)に従い、ノッチ無しのアイゾット衝撃強度を測定し、値は7本の測定値の平均値とした。
【0138】
8.加水分解性
前記、1.で得られたASTM1号ダンベル3本を80℃×95%RHの温度と湿度に設定された恒温高湿試験器(エスペック(株)“ヒューミデイキャビネツト”LHL−113)に400h投入し湿熱処理を行い、次に、ASTMD638(2005年)に従って機械強度(引張強度)の測定を行い、値は3本の測定値の平均値とした。さらに、湿熱処理前の2.で得られた機械強度(引張強度)に対する保持率(%)を求め、加水分解性の指標とした。
【0139】
[実施例1〜24]、[比較例1〜13]
スクリュ径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30α)を用いて、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤、(C)酸成分中和剤、および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物、必要に応じて(E)ビニル系樹脂、(F)難燃助剤、さらには、必要に応じて(A)(E)成分以外の樹脂、離型剤、繊維強化材、繊維強化材以外の無機充填材、エポキシ化合物などを表1〜表6に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。なお、繊維強化材の<G−5>のガラス繊維は、元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加した。
【0140】
さらに、混練温度270℃、スクリュ回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した。
【0141】
得られたペレットを110℃の熱風乾燥機で6時間乾燥後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用い、各種成形品を得た。
【0142】
さらに、前記の測定方法で種々の値を測定し、同じく表1〜表6にその結果を示した。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

【0148】
【表6】

【0149】
実施例1〜13と比較例1〜9の比較から、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、高温加熱時においてガス発生の少ない成形品であると言える。また、(E)ビニル系樹脂を配合した組成物は、上記の性能を維持しながら、600V以上の耐トラッキング性を示す成形品と言える。また、実施例9〜13から、フッ素系樹脂を配した組成物は、燃焼時のドリップ抑制効果によりV−1の難燃性を示し、燃焼性が向上した成形品と言える。
【0150】
また、比較例10〜11の本発明外の酸成分中和剤あるいは本発明外の多価アルコールを配合した組成物は、本発明効果の複数の性能に劣る組成物と言える。
【0151】
実施例14〜24と比較例10〜11の比較から、繊維強化材を配合した本発明の強化難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、高温加熱時においてガス発生の少ない成形品であると言える。また、(E)ビニル系樹脂を配合した組成物は、上記の性能を維持しながら、600V以上の耐トラッキング性を示すことがわかる。
【0152】
また、特定の離型剤を配合した実施例18の組成物は、優れた性能を維持しながら、離型力が大きく低下し、離型性が向上していることが判る。また、(A)(E)成分以外の樹脂を配合した実施例20と21の組成物は、優れた性能を維持しながら、衝撃強度が改善されていることが判る。また、特定のエポキシ化合物配合した実施例23と24の組成物は、優れた性能を維持しながら、加水分解性が改善されていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂20〜95重量%、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種以上からなる難燃剤1〜30重量%、(C)酸成分中和剤0.01〜3重量%、および(D)3つ以上の官能基を有する、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物0.01〜4重量%を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
(E)ビニル系樹脂0.1〜10重量%を配合してなる請求項1に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
(F)難燃助剤1〜50重量%を配合してなる請求項1または2に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
【請求項5】
請求項2または3に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる相対トラッキング指数600V以上の成形品。

【公開番号】特開2010−37375(P2010−37375A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199428(P2008−199428)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】