説明

難燃硬化性樹脂組成物

【課題】難燃性、低吸水性、高耐熱性を有し、屈曲性に優れ、ポリイミドフィルム等の電気絶縁性フィルム及び金属箔との接着性、接着強度に対する耐湿熱信頼性に優れる難燃硬化性樹脂組成物及びその硬化物、該組成物を用いた接着フィルム、カバーレイフィルムを提供する。
【解決手段】(A)成分:ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物からなる多官能ビニル芳香族共重合体、(B)成分:エポキシ樹脂又は炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物のいずれか一方の成分若しくは両成分、(C)成分:水添スチレンブタジエンブロック共重合体と、(D)成分:リン−窒素系難燃剤からなる樹脂組成物であり、全成分の合計に対し(A)成分が4〜70wt%、(B)成分が4〜70wt%、(C)成分が15〜70wt%、(D)成分が3〜20wt%である難燃硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃硬化性樹脂組成物に関する。この難燃硬化性樹脂組成物からは、難燃性樹脂硬化物、難燃硬化性接着フィルム、電気絶縁性フィルムの片面に難燃硬化性樹脂組成物から形成された樹脂層を有するカバーレイフィルムが得られる。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、電子機器に用いられる電子部品の高密度化、小型化、薄型化の要請が高まっている。これに伴い、電子部品の素材についても、耐熱性、機械的強度、電気特性等の諸物性の更なる改善が要求されるようになってきている。例えば、半導体素子を実装するプリント配線板についても、より高密度、高機能、高性能なものが求められている。
【0003】
こうした状況の中、狭い空間に立体的な配線、実装が可能なフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという)の需要が増大している。一般に、FPCは耐熱性、屈曲性に優れるポリイミドフィルム上に回路パターンを形成し、その表面は接着剤層を持つカバー層、所謂カバーレイフィルムが貼りあわされた構造を有している。また、これら配線材料や配線部品の高密度実装のための最も一般的かつ重要な手法として多層化が採用されており、この多層化には接着フィルム、所謂ボンディングシートが用いられていることが多い。ボンディングシートは、接着性を有する薄いシートで、多層を形成するそれぞれの層の間に挟み込まれることにより各層を貼り合わせて積層体を形成するとともに、各層を絶縁する層間絶縁膜としても機能する。
【0004】
このようなFPCを得るためには、カバーレイフィルム及びボンディングシートとして使用される接着フィルムには、金属箔やポリイミドフィルムに対し優れた接着強度を有することが要求される。更に、はんだリフローに耐えうる耐熱性や、プレッシャークッカーテスト(以下、PCTという)処理等の湿熱雰囲気に長時間耐えうる接着強度も要求される。
【0005】
例えば、特許文献1にはエポキシ樹脂、カルボン酸で変性されたアクリロニトリルブタジエンゴム、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤からなる接着剤組成物、カバーレイフィルムが示されている。これらは優れた耐熱性を有するものの、耐湿熱信頼性に疑問がある。また、特許文献2にはエポキシ基を含有するアクリル系樹脂、硬化剤、エポキシ樹脂、窒素系化合物及びリン系化合物からなる難燃接着剤組成物が示されているが、PCT処理後の接着強度に疑問がある。特許文献3には、非ハロゲン系エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及びリン含有充填剤からなる接着シート、カバーレイフィルムが示されているが、ポリイミドフィルムとの接着性については、それのプラズマ処理が必要であるなど、接着性は十分なものではない。特許文献4には、イミド含有アクリレート、アルキルアクリレート及びエポキシ基含有モノマーからなる接着剤組成物性が示されている。この組成物は耐熱性に優れ、PCT処理にも耐えうる接着強度も有しているが、難燃性に課題を残している。
【0006】
このようにいずれの樹脂組成物も、その硬化物が耐熱性や接着強度に対する耐湿、耐熱信頼性や難燃性に優れたものではなかった。ハロゲン系難燃剤を配合することにより難燃性は向上するが、環境上の問題がある。
【0007】
ところで、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有し、ジビニル芳香族化合物(a)に由来するペンダントビニル基を含有する可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体については、特許文献5、6等で知られている。この共重合体は、熱硬化性であり、優れた性質を有する硬化物を与えることが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−169446号公報
【特許文献2】特開2000−159860号公報
【特許文献3】特開2005−248048号公報
【特許文献4】特開2002−012842号公報
【特許文献5】特開2004−131638号公報
【特許文献6】特開2006−089683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、はんだリフローに耐えうる耐熱性、ポリイミドフィルム及び金属箔との接着強度に対する優れた耐湿熱信頼性を発現し、かつハロゲンを含まずに難燃性を有する難燃硬化性樹脂組成物を提供することにある。他の目的は、その硬化物、該組成物を用いた接着フィルム、カバーレイフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体の末端を改質し、これに特定の樹脂及び難燃剤を配合すると、これらの相乗効果により、上記目的が達成されることを見出した。
【0011】
本発明は、(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を10モル%以上含有し、下記式(a1)
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位を全ての単量体由来の構造単位に対して5.0モル%以上含有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600〜100,000であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)が2.0〜100.0であり、かつその末端の一部にエーテル結合を介した鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコール性水酸基から選ばれる官能基を1種以上有し、該エーテル結合及びアルコール性水酸基由来の酸素含有量が0.1〜5.0wt%である溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体、
(B)成分:多官能エポキシ樹脂(B1)又は炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)、
(C)成分:水添スチレンブタジエンブロック共重合体類、及び
(D)成分:リン−窒素系難燃剤、
を含んでなる樹脂組成物であり、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(A)成分の配合量が4〜70wt%、(B)成分の配合量が4〜70wt%、(C)成分の配合量が15〜70wt%、(D)成分の配合量が3〜20wt%であることを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物である。
【0012】
ここで、(A)成分において、モノビニル芳香族化合物(b)がエチルビニルベンゼン、スチレン又は両者からなることが好ましい。
【0013】
(B)成分において、重合性化合物(B2)が、数平均分子量Mnが700〜4,000の両末端にビニル基を有する下記式(1)
【化2】

(式(1)中、-(O-X-O)-は式(2)で表され、R3、R4、R9、R10は独立に、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R5、R6、R7、R8は独立に、水素原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Aは炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基である。-(Y-O)-は式(3)で表され、R11、R12は独立に、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R13、R14は独立に、水素原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Zは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子を含んでもよい。Tはビニル基である。a及びbは、少なくともいずれか一方が0でない0〜20の整数を示す。i及びjは独立に、0又は1の整数を示す。)で表されるポリフェニレンエーテルオリゴマーであることが好ましい。
【0014】
また、(B)成分において、重合性化合物(B2)が、下記式(4)
【化3】

(式中、mは2〜10の整数であり、R15は水素又はメチル基を示し、R16は多価ヒドロキシ化合物の残基を示す。)で示される(メタ)アクリロイル化合物であることが好ましい。
【0015】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物には、更に、(E)成分:エチレン−アクリル酸エステル−グリシジル化合物共重合体、又は(F)成分:カルボキシル基変性エチレン−アクリル酸エステル共重合体を含有させることが用途によっては有利である。この場合、(E)成分の配合量は(A)〜(E)成分の合計に対して1〜20wt%であることがよく、(F)成分の配合量は(A)〜(F)成分の合計に対して1〜20wt%であることがよい。
【0016】
また、本発明は、上記の難燃硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする接着フィルムである。更に本発明は、上記の難燃硬化性樹脂組成物から形成された樹脂層を電気絶縁性フィルムの片面に有することを特徴とするカバーレイフィルムである。更にまた本発明は、上記の難燃硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする難燃硬化物である。
【0017】
以下、本発明の難燃硬化性樹脂組成物について詳しく説明する。
【0018】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物ということがある)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分として含む。本発明の樹脂組成物は、その用途によっては更に、(E)成分及び(F)成分及びその他の成分から選ばれるいずれか1以上の任意成分を含むことが有利である。以下、(A)成分から順次説明する。
【0019】
(A)成分は、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体(以下、共重合体ともいう)であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を10モル%以上含有し、上記式(a1)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位(以下、構造単位(a1)という)を全ての単量体由来の構造単位に対して5.0モル%以上含有する。この共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600〜100,000であり、Mw/Mnが2.0〜100.0であり、その末端の一部にエーテル結合を介した鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素又はアルコール性水酸基から選ばれる官能基を一種以上有し、該エーテル結合及びアルコール性水酸基由来の酸素含有量が0.1〜5.0wt%である。この酸素含有量は、NMR分析によって測定される。有利には、NMR分析と元素分析を併用して測定される。また、この共重合体は溶剤可溶性である。ここで、可溶性とはトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることを意味する。
【0020】
(A)成分の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物を共重合して得られる共重合体であって、その末端の一部にOR(ここで、Rは鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基又はHを示す)で表される基を有する。ここで、Rが鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合は、エーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基となり、RがHである場合はアルコール性水酸基となる。そして、エーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基又はアルコール性水酸基に由来する酸素含有量は0.1〜5.0wt%である。更に、この多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位を10モル%以上含有し、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する上記式(a1)で表される未反応のビニル基を含有する構造単位(a1)(ペンダントビニル基を有する構造単位ということがある)を5.0モル%以上含有する。
【0021】
多官能ビニル芳香族共重合体を得るために使用されるジビニル芳香族化合物(a)としては、たとえば、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2,7-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、4,4'-ジビニルビフェニル、4,3'-ジビニルビフェニル、3,3'-ジビニルビフェニル、2,2'-ジビニルビフェニル等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0022】
多官能ビニル芳香族共重合体において、共重合体の機械的特性及び加工性を改善する構造単位を与えるモノビニル芳香族化合物(b)としては、スチレン、エチルビニル芳香族化合物等の核アルキル置換スチレン、エチルビニル芳香族化合物以外の核アルキル置換芳香族ビニル化合物、α-アルキル置換スチレン、α−アルキル置換芳香族ビニル化合物、β-アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、インデン誘導体及びアセナフチレン誘導体等を挙げることができる。
【0023】
ジビニル芳香族化合物(a)に由来する構造単位には、上記式(a1)で表される構造単位(a1)の他に、下記式(a2)で表される内部オレフィン構造を含有する構造単位(構造単位(a2)ともいう)、分岐構造を含有する構造単位又はインダン構造を含有する構造単位等のいくつかの構造単位が考えられるが、架橋構造が多いと可溶性を示さなくなるので、各構造単位が適当な範囲となるように制御された条件で重合が行われる。このような条件は、特許文献5、6等に開示されている。
【0024】
構造単位(a1)と構造単位(a2)のモル分率を、それぞれ(a1)と(a2)で表した場合、モル分率(a1)は、(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足することがよい。好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.9以上である。0.5未満であると共重合体を含む組成物から生じる硬化物の耐熱性が低下するとか、硬化に長時間を要するなどの問題が生ずる恐れがある。
【0025】
【化4】

(式中、R17は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)
【0026】
また、多官能ビニル芳香族共重合体ではその主鎖骨格中に下記式(a3)で表されるインダン構造を有することが好ましい。式(a3)において、Yはビニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、これらの炭化水素基置換体等があり、これらは0〜4個置換することができる。
【0027】
【化5】

(但し、Yは飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基又はベンゼン環に縮合した芳香族環若しくは置換芳香族環を示し、nは0〜4の整数である。)
【0028】
式(a3)で表されるインダン構造は本発明の硬化性樹脂組成物で使用される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の耐熱性と溶剤への可溶性を更に高める構造単位であり、溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を製造する際、特定の溶媒、触媒、温度等の製造条件下で製造を行うことにより、成長ポリマー鎖末端の活性点がジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位の芳香族環を攻撃することにより生成するものである。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して0.01モル%以上存在することが好ましく。より好ましくは0.1モル%以上であり、更に好ましくは1モル%以上である。多官能ビニル芳香族共重合体の主鎖骨格中に上記インダン構造が存在しないと、耐熱性と溶剤への可溶性が不足する恐れがある。
【0029】
多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mnは600〜100,000であり、好ましくは600〜50,000、最も好ましくは700〜25,000である。Mnが600未満であると可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の粘度が低すぎるため、厚膜の形成が困難になるなど加工性が低下するので好ましくない。また、Mnが100,000以上であると、ゲルが生成したり、他の樹脂成分との相溶性が低下しやすくなり、シート等に成形した場合、外観の低下や物性の低下を招くので好ましくない。
【0030】
多官能ビニル芳香族共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の値は2.0〜100であり、好ましくは2.5〜50、より好ましくは2.5〜20、最も好ましくは2.5〜10である。Mw/Mnが2.0未満であると、各種基材との接着強度が低下するので好ましくない。一方、Mw/Mnが100を越えると、本発明の難燃硬化性樹脂組成物の粘度が上昇することに伴う加工特性の悪化、他の樹脂成分との相溶性の低下に伴う外観や物性の低下といった問題点を生ずるので好ましくない。
【0031】
多官能ビニル芳香族共重合体の末端基のエーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基及びアルコール性水酸基由来の酸素含有量の値は0.1〜5.0wt%であり、好ましくは0.2〜4.0wt%、より好ましくは0.3〜3.0wt%である。酸素含有量が0.1wt%未満であると、相溶性、接着強度が低下するので好ましくない。一方、酸素含有量が5.0wt%を越えると、本発明の難燃硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の機械的特性の悪化、熱安定性の低下に伴う外観の低下といった問題点を生ずるので好ましくない。
【0032】
多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法は上記のように特許文献5、6等で知られているが、多官能ビニル芳香族共重合体の末端基に、エーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基及びアルコール性水酸基を有させるためには、ルイス酸触媒、エステル系助触媒と共に、重合添加剤を使用する方法がある。重合添加剤は重合反応時に重合活性種との間で連鎖移動反応を起こして、多官能ビニル芳香族共重合体の末端基に、熱安定性及び耐熱変色性に優れたエーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基を形成させる役割を果たす化合物であり、具体的には、アルコール性水酸基を有する炭素数1〜30の鎖状炭化水素化合物及び芳香族炭化水素化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物が挙げられる。
【0033】
重合添加剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−デカノール及びベンジルアルコール等のアルコール性水酸基を有する炭素数1〜30の鎖状炭化水素化合物及び芳香族炭化水素化合物からなる群から選ばれる1種以上の重合添加剤が挙げられる。これらの中では、反応性と入手性の点で、メタノール、エタノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−デカノール及びベンジルアルコールが好ましい。
【0034】
次に(B)成分について説明する。(B)成分は、多官能エポキシ樹脂(B1)、炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)又は両者であることができる。多官能エポキシ樹脂(B1)と重合性化合物(B2)は、構造は異なるが、その効果は同一でいずれも(A)成分である可溶性の多官能性共重合体とともに架橋構造を形成し、耐熱性、機械物性の向上に効果を示すものである。更に、重合性化合物(B2)に関しては好ましい構造が2種存在するが、これはいずれも二重結合により架橋構造を形成することで耐熱性、機械物性の向上に効果を示すとともに(A)成分とも同時に架橋し、更に効果が向上するものである。
【0035】
まず、多官能エポキシ樹脂(B1)について説明する。以下にエポキシ樹脂の好適な例を具体的に挙げる。
【0036】
エポキシ樹脂は、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物であり、一般的に電子部品用材料に使用されているものであれば、特に制限はない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン(4官能性エポキシ樹脂)、各種のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲内で分子内にエポキシ基を1個有するエポキシ樹脂を併用することもできる。多官能エポキシ樹脂(B1)の中では芳香族構造を有するエポキシ樹脂が(A)成分との相溶性が良好であること、芳香環に起因する耐熱性の改善効果が大きいので好んで使用される。
【0037】
多官能エポキシ樹脂(B1)を使用する場合、本発明の難燃硬化性樹脂組成物に硬化剤を含有することができる。エポキシ樹脂の硬化反応に用いる硬化剤としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
また、多官能エポキシ樹脂(B1)を使用する場合、硬化反応を促進するために、本発明の効果を損なわない範囲内で硬化促進剤の添加を行うこともできる。硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
次に、(B)成分の炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)について説明する。
【0040】
重合性化合物(B2)は、一般的に電子部品用材料に使用されている化合物であれば、分子構造、分子量など特に制限はなく、2種類以上のものを合わせて使用することもできる。しかし、(B)成分は構造単位(a1)を実質的に有しない。(A)成分は、炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物でもあるので、重合性化合物(B2)の1種とも言えるが、構造単位(a1)を有する(A)成分に該当する多官能ビニル芳香族ビニル化合物は、(B)成分の重合性化合物(B2)としては扱わず、(A)成分としてのみ扱う。
【0041】
重合性化合物(B2)として好適な例は、数平均分子量Mnが700〜4,000の両末端にビニル基を有する上記式(1)で表されるポリフェニレンエーテルオリゴマー(以下、2官能OPE-2Vnと記す)を挙げることができる。
【0042】
式(1)中、-(O-X-O)-は式(2)で表され、R3、R4、R9、R10は、同一又は異なってもよい炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R5、R6、R7、R8は、同一又は異なってもよく、水素原子、又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Aは炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基である。-(Y-O)-は、式(3)で定義される1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列したものである。R11、R12は同一又は異なってもよい炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R13、R14は同一又は異なってもよい水素原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Zは炭素数1以上の有機基であり、酸素原子を含むこともある。Tはビニル基である。a及びbは、少なくともいずれか一方が0でない0〜20の整数を示す。i及びjはそれぞれ独立に、0又は1の整数を示す。
【0043】
2官能OPE-2Vnは、(A)成分である可溶性多官能ビニル芳香族共重合体との相溶性の観点及び保存安定性、耐熱性向上効果の観点から、好ましく用いられる。2官能OPE-2Vnの数平均分子量Mnは700〜4000の範囲がよい。数平均分子量が4000を超えると樹脂組成物の溶融粘度が増大し、加工性が低下するばかりでなく、(A)成分などの他の樹脂成分との相溶性が低下し、フィルムの外観不良、物性低下などをもたらす恐れがある。一方、Mnが700未満であると耐熱性、機械特性が低下する。上記の2官能OPE-2Vnは、溶融粘度が低く流動性が良好で、多官能ビニル芳香族共重合体との相溶性に優れ、また両末端にビニル基を有するため樹脂組成物の耐熱性、機械特性が良好であり、かつ硬化物の熱時強度がより優れる。その結果、はんだ等高温に曝された際に、クラックの発生を防ぐことができる。
【0044】
別の好ましい重合性化合物(B2)としては、上式(4)で表される多官能性(メタ)アクリロイル化合物が挙げられる。
【0045】
式(4)において、多価ヒドロキシ化合物の残基であるR16の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水素添加ビスフェノールAなどで例示されるアルカンポリオールの残基;ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどで例示されるポリエーテルポリオールの残基;キシレングリコール、ビスフェノールAで代表される複数個のベンゼン環が橋絡部を介して連結された芳香族性ポリオール及びこれらの芳香族ポリオールのアルキレンオキサイド付加物などで例示される芳香族ポリオール残基;フェノールとホルムアルデヒドとを反応させて得られるベンゼン多核体(通常、10核体以下のものが好適に用いられる)の残基;エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂から導かれる残基;末端に水酸基を2個以上有するポリエステル樹脂から導かれる残基がある。
【0046】
式(4)で表される多官能性(メタ)アクリロイル化合物の具体的な例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、2,2−ビス(アクリロキシシクロヘキサン)プロパン、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA−ジアクリレート、2,2−ビス(4−(2−アクリロキシ エトキシ)フェニル)プロパン;フェノール樹脂初期縮合体の多価アクリレート;ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステルとポリカルボン酸等とアクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート類;末端に水酸基を2個以上有するポリエステルとアクリル酸とを反応して得られるポリエステルポリアクリレート類;上述したアクリレートがメタクリレート類になったもの等が挙げられる。これらの重合性化合物の中では芳香族構造を有するものが、(A)成分との相溶性、耐熱性の改善の観点からより好ましい。
【0047】
次に、(C)成分の水添スチレンブタジエンブロック共重合体類について説明する。
【0048】
水添スチレンブタジエンブロック共重合体類は、靱性を向上させるという観点から、ガラス転移温度が20℃以下、好ましくは0℃以下の重合体セグメントを有するものが好ましい。このような水添スチレンブタジエンブロック共重合体類は、下記の式1)〜5)に示すように、スチレン等の芳香族ビニル化合物(以下、スチレン等という)を主体とする重合体ブロックAとブタジエン等の共役ジエン化合物(以下、ブタジエン等という)を主体とする重合体ブロックBの一部又は全部を水素添加して得られるものである。
【0049】
1) A−B、2) A−B−A、3) B−A−B−A、
4) [A−B−]4−Si、5) [B−A−B−]4−Si
なお、構造式中、Aはスチレン等を主体とする重合体ブロック、Bはブタジエン等を主体とする重合体ブロックを示す。この水添スチレンブタジエンブロック共重合体類は、スチレン等単位を5〜85wt%、好ましくは10〜70wt%、より好ましくは15〜40wt%含むものである。
【0050】
なお、水添されていないスチレン共役ジエンブロック共重合体は、耐熱酸化劣化性の観点から、その使用は好ましくない。
【0051】
水添スチレンブタジエンブロック共重合体類を構成する原料となるスチレン等としては、スチレン以外にも、例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等の内から1種又は2種以上が選択できる。中でも、スチレンが好ましい。
【0052】
また、ブタジエン等としては、ブタジエン以外にも例えば、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の内から1種又は2種以上を選択できる。中でも、相溶性の観点からブタジエンが好ましい。
【0053】
また、上記の構造を有する水添スチレンブタジエンブロック共重合体類の数平均分子量は特に限定されないが、数平均分子量は5000〜100万、好ましくは1万〜50万、更に好ましくは3万〜30万の範囲である。更に、水添スチレンブタジエン共重合体類の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0054】
更に、カルボキシル基で変性した水添スチレンブタジエンブロック共重合体類も好ましく使用することができる。
【0055】
カルボキシル基変性水添スチレンブタジエンブロック共重合体類とは、上記水添スチレンブタジエンブロック共重合体類を不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させ、共重合あるいはグラフト変性させたものを言う。耐熱酸化劣化性、相溶性の観点から、水添スチレンブタジエンブロック共重合体を変性させたものがより好ましい。
【0056】
変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水フマル酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水イタコン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル等が挙げられる。機械的特性を一層向上させる観点から、無水マレイン酸が最も好適である。
【0057】
カルボキシル基変性水添スチレンブタジエンブロック共重合体類の変性割合としては、0.1〜10wt%の範囲にあることが好ましい。0.1wt%より小さいと、絶縁フィルム、金属箔表面における化学結合力が低下し、強固な結合界面が得られなくなって、変性による効果が小さくなる傾向があるので好ましくなく、10wt%より大きいと、各種特性のバランスが悪くなる傾向があるので好ましくない。
【0058】
また、カルボキシル基変性水添スチレンブタジエンブロック共重合体類の数平均分子量も特に限定されないが、数平均分子量は5000〜100万、好ましくは1万〜50万、更に好ましくは3万〜30万の範囲である。
【0059】
次に、本発明で使用する(D)成分のリン−窒素系難燃剤について説明する。
【0060】
リン−窒素系難燃剤としては、一分子中に窒素原子とリン原子とを共に有する化合物であると同時に、(A)成分の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と共通の溶剤に可溶であることがよい。このような難燃剤を特定の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と併用することにより、平坦性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
リン−窒素系難燃剤の好適な例としては、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシフォスファゼン、アミノフォスファゼン等のようなフォスファゼン化合物、N,N-ジエチルフォスファミドのようなリン酸アミド、ポリ(N,N-ジエチルフォスファミド)のようなポリリン酸アミドなどを挙げることができる。これらのリン−窒素系難燃剤の中でも、フォスファゼン化合物は優れた平坦性と流れ性を発揮するので、好適である。リン−窒素系難燃剤は、単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0062】
次に、本発明の樹脂組成物に任意の成分として配合される(E)成分、(F)成分及びその他の成分について説明する。
【0063】
(E)成分として使用されるエチレンーアクリル酸エステルーグリシジル化合物共重合体は、エチレンと、アクリル酸エステルと、不飽和グリシジル化合物とを主たるモノマーとして重合した共重合体である。
【0064】
ここでアクリル酸エステルとは、アクリル酸又はメタクリル酸と、アルコールから得られるエステルである。アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができる。なお、アクリル酸エステルとしては、その1種を単独で使用してもよく又は2種以上を併用してもよい。
【0065】
また、不飽和グリシジル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル又は不飽和グリシジルエーテル、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルなどであることが好ましく、特に(メタ)アクリル酸グリシジル、すなわちアクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルが好ましい。以下、(メタ)アクリル酸をアクリル酸で代表することがある。
【0066】
具体的には、エチレン単位を10〜95wt%、更に好ましくは40〜80wt%、アクリル酸エステル単位が5〜70wt%、更に好ましくは10〜40wt%、不飽和グリシジル化合物が0.1〜30wt%、更に好ましくは0.5〜20wt%含むモノマー成分を重合させて得られるものであることよい。上記の範囲外であると、得られる接着フィルム又はカバーレイフィルムの成形体の耐熱性や機械的性質が不十分となる場合がある。前記のグルシジル基は活性であって、接着強度向上に有用である。なお、エチレンーアクリル酸エステルーグリシジル化合物共重合体はグリシジル基を複数個含む化合物であるが、その主な目的はエチレンーアクリル酸エステルによる熱可塑性高分子に由来する硬化前の組成物の支持性や硬化物に可とう性を付与するもので、一般的なエポキシ樹脂(B1)とは異なるため、エポキシ樹脂(B1)には含めない。エポキシ樹脂(B1)は、エチレンーアクリル酸エステルの共重合単位を含まない。
【0067】
次に、本発明の(F)成分として使用されるカルボキシル基変性エチレンーアクリル酸エステル共重合体について説明する。
【0068】
カルボキシル基変性エチレンーアクリル酸エステル共重合体とは、エチレンと、アクリル酸エステルと、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる共重合体である。
【0069】
ここでアクリル酸エステルとは、前記の通り(メタ)アクリル酸エステルであり、その一種を単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。
【0070】
不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水フマル酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水イタコン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル等が挙げられる。機械的特性を一層向上させる観点から、無水マレイン酸が最も好適である。
【0071】
具体的には、エチレン単位を10〜95wt%、更に好ましくは40〜80wt%、アクリル酸エステル単位が5〜70wt%、更に好ましくは10〜40wt%、不飽和カルボン酸単位が0.1〜10wt%の範囲にあることが好ましい。上記の範囲外であると、得られる接着フィルム又はカバーレイフィルムの成形体の耐熱性や機械的性質が不十分となる場合があり、好ましくない。この(F)成分を添加することにより、絶縁フィルム、と金属箔との接着がより強固となり、得られる組成物の機械的特性、耐熱性などが向上する。
【0072】
本発明の難燃硬化性樹脂剤組成物は、前記の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分として含む。そして、その配合比は広範囲に変化させることができるが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の配合量(wt%)が下記式を満足する必要がある。
【0073】
(A)成分=4〜70(wt%)
(B)成分=(B1)、(B2)の一方又は両方の配合量=4〜70(wt%)
(C)成分=15〜70(wt%)
(D)成分=3〜20(wt%)
【0074】
好ましくは(A)成分配合量が6〜70wt%であり、より好ましくは6〜60wt%である。また、(B)成分、すなわち(B1)又は(B2)のいずれか一方若しくは両方の配合量が、好ましくは6〜70wt%、より好ましくは6〜60(wt%)である。(C)成分配合量については、好ましくは15〜70wt%、より好ましく25〜60(wt%)である。更に(D)成分配合量については、好ましくは5〜20wt%、より好ましくは5〜15(wt%)である。
【0075】
(A)成分である多官能ビニル芳香族共重合体の添加量が4wt%未満であると組成物から得られる硬化物の機械的強度が低下し、70wt%を越えると屈曲性の低下を招く。(B)成分配合量が4wt%未満では絶縁フィルム、金属箔との接着性が低下し、70wt%を越えると耐湿熱信頼性が低下する。(C)成分配合量が15wt%未満では屈曲性が低下し、70wt%を越えると機械的強度が低下する。(D)成分であるリン−窒素系難燃剤の添加量が3wt%未満であると難燃性が低下し、20wt%を越えると機械的強度の低下を招く。
【0076】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の他、他の成分を含有することができる。他の成分として、好ましいものに(E)成分及び(F)成分がある。これらの配合量は、(A)〜(F)成分の合計量の和から定められ、それぞれ1〜20wt%、好ましくは1〜15wt%含むことがよい。
【0077】
本発明の難燃硬化性接着剤組成物において(A)成分である多官能ビニル芳香族共重合体は加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くしたり不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられるラジカル開始剤の量はビニル基を含有する(A)成分と(B)成分中の(B2)の和を基準として、0.01〜15wt%、好ましくは0.05〜10wt%である。特に好ましくは0.1〜8wt%である。ラジカル開始剤の量が0.01wt%未満であると硬化に長時間を要する上に、硬化物のガラス転移温度が低下し、15wt%を超えて使用すると硬化物の機械的特性が低下する。
【0078】
ラジカル開始剤の代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また、過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル開始剤として使用できる。しかし、本発明の難燃硬化性接着剤組成物の硬化に用いられる開始剤はこれらの例に限定されない。
【0079】
なお、本発明の難燃硬化性樹脂組成物は難燃性の一層の向上を図る目的で、(E)成分の難燃剤以外の難燃剤を、本発明の効果を損なわない範囲の量を配合して使用することができる。他の難燃剤としては、窒素系難燃剤、リン系難燃剤及び無機系難燃剤が挙げられる。
【0080】
また、本発明の難燃硬化性樹脂組成物は難燃助剤を含有することもできる。難燃助剤が配合されることにより、酸素指数の向上や最大発熱速度の大幅な低下をもたらすことができる。上記難燃助剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、フッ素樹脂、シリコーンオイル、シリコーン−アクリル複合ゴムからなる群より選択される少なくとも1種類の難燃助剤が好適に用いられる。これらの難燃助剤を用いることにより(A)成分である樹脂の分解を防ぎ、最大発熱速度を抑制することができる。
【0081】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、その用途に応じて所望の性能を付与させる目的で本来の性質を損なわない範囲の量のその他の添加剤を配合して用いることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤等が挙げられる。
【0082】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物中の各成分の存在割合は、次の範囲であることが望ましい。
(A)成分:4〜70wt%、好ましくは6〜70wt%
(B)成分:4〜70wt%、好ましくは6〜65wt%
(C)成分:15〜70wt%、好ましくは15〜65wt%
(D)成分:3〜20wt%、好ましくは5〜20wt%
(E)成分:1〜20wt%、好ましくは1〜15wt%
(F)成分:1〜20wt%、好ましくは1〜15wt%
(B)成分が、(B1)と(B2)の両方である場合、これらの成分の存在割合は、次の範囲であることが望ましい。
(B1):2〜35wt%、好ましくは3〜30wt%
(B2):2〜35wt%、好ましくは3〜35wt%
【0083】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物を製造する際の混合方法としては特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば、各成分を溶媒中に均一に溶解又は分散させる溶液混合法、あるいはヘンシェルミキサー等による撹拌・混合するブレンド法等が利用できる。溶液混合に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)などの1種以上が用いられる。
【0084】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、あらかじめその用途に応じて所望の形に成形してもよい。その成形方法は特に限定されない。通常は、難燃硬化性樹脂組成物を上述した溶媒に溶解させて所定の形に成形するキャスト法又は難燃硬化性樹脂組成物を加熱溶融して所定の形に成形する加熱溶融法が用いられる。
【0085】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、これを硬化することにより硬化物が得られる。硬化の方法は任意であり、熱、光、電子線等による方法を採用することができる。加熱により硬化を行う場合その温度は、ラジカル開始剤の種類によっても異なるが、80〜300℃、より好ましくは120〜250℃の範囲で選ばれる。また、時間は1分〜10時間程度、より好ましくは1分〜5時間である。
【0086】
次に、本発明の難燃硬化性樹脂組成物から得られる接着フィルム、カバーレイフィルムについて説明する。
【0087】
本発明の樹脂組成物を接着剤層とする接着フィルムの構成としては、接着剤層と、該接着剤層を被覆する離型材層とを有するものが適する。具体的には、例えば、離型材層と接着剤層とを有する2層構造、もしくは離型材層と接着剤層と離型材層とを有する3層構造等が挙げられる。接着シートの2層構造及び3層構造はフレキシブル印刷配線板製造時の加工方法等により、適宜選択すればよい。この接着剤層の厚さは、使用目的により任意の厚さを選択できるが、乾燥状態で、通常、5〜50μmであり、好ましくは5〜35μm、特に好ましくは5〜25μmである。
【0088】
離型材層を構成する離型材としては、前記接着剤層の形状を損なうことなく剥離できるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム;シリコーン離型材付きPEフィルム及びPPフィルム;PE樹脂コート紙、PP樹脂コート紙、TPX樹脂コート紙等が挙げられる。この離型材の厚さは、任意の厚さでよいが、フィルムでは13〜75μm、紙では50〜200μmが好ましい。
【0089】
上記接着フィルムを製造する方法としては、特に限定されることはなく、予め必要成分と有機溶剤から成る樹脂ワニスをコンマコータ、リップコータ等を用いて、保護層に塗布する。接着剤溶液が塗布された保護層をインラインドライヤに通し、40〜160℃で30秒〜10分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、半硬化状態とし、次いでロールラミネータを用いて別の保護層と圧着し、積層することにより接着フィルムが得られる。
【0090】
また、本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、カバーレイフィルムにも用いることができる。カバーレイフィルムの構成は、電気絶縁性フィルム層と、該フィルム層上に設けられた接着剤層とを有するものである。具体的には、電気絶縁性フィルム層と接着剤層とを有する2層構造;電気絶縁性フィルム層と接着剤層と離型材層とを有する3層構造が挙げられる。この接着剤層は難燃硬化性樹脂組成物から形成され、その厚さは、使用目的により任意の厚さを選択できるが、乾燥状態で、通常、5〜45μmであり、好ましくは5〜35μm、特に好ましくは5〜25μmである。
【0091】
電気絶縁性フィルム層を構成する電気絶縁性フィルムとしては、通常カバーレイフィルムに用いられるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム等が挙げられ、耐熱性、寸法安定性、機械特性(弾性率、伸び等)等の点から、ポリイミドフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムが好ましく、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0092】
この電気絶縁性フィルム層の厚さは、使用目的により任意の厚さを選択してよいが、通常、10〜75μmであり、好ましくは12.5〜50μm、特に好ましくは12.5〜25μmである。また、接着剤層との密着性向上、フィルム表面の洗浄、寸法安定性の向上等のために、このフィルムの片面又は両面に、低温プラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等の表面処理を施してもよい。
【0093】
離型材層を構成する離型材としては、前記接着剤層の形状を損なうことなく剥離できるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム;シリコーン離型材付きPEフィルム及びPPフィルム;PE樹脂コート紙、PP樹脂コート紙、TPX樹脂コート紙等が挙げられる。この離型材の厚さは、任意の厚さでよいが、フィルムでは13〜75μm、紙では50〜200μmが好ましい。
【0094】
本発明のカバーレイフィルムを製造する方法としては接着フィルム同様、特に限定されることはなく、予め必要成分と芳香族溶剤等の有機溶剤とを混合することにより調製した樹脂ワニスをコンマコータ、リップコータ等を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。接着剤溶液が塗布された電気絶縁性フィルムをインラインドライヤに通し、40〜160℃で30秒〜10分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥し、次いでロールラミネータを用いて保護層と圧着、積層することによりカバーレイフィルムが得られる。
【0095】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。
【発明の効果】
【0096】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、硬化後において難燃性、低吸水性、高耐熱性を有し、屈曲性に優れ、ポリイミドフィルム等の電気絶縁性フィルム及び金属箔との接着性、接着強度に対する耐湿熱信頼性に優れる。該組成物を用いた接着フィルム、カバーレイフィルムは、片面、両面、多層プリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板等に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0098】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:THF、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム-d1を使用した。1H−NMRではテトタメチルシラン、13C−NMRではNMR測定溶媒であるクロロホルム-d1の共鳴線を内部標準として使用した。
【0099】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は、サンプルフィルムをTMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。
【0100】
4)引張り強度及び伸び率
乾燥後の接着剤層の厚みが50μmになるように接着フィルムを作成し、このフィルムを真空プレス成形機にて180℃、3MPa、1時間の条件で硬化させ、約50μmの硬化物フィルムを得た。この硬化物フィルムの引張り強度及び伸び率を引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
【0101】
5)ポリイミド引き剥し強さ
乾燥後の接着剤層の厚みが50μmになるように接着フィルムを作成し、これをポリイミドフィルム(カプトンEN、25μm、東レ・デュポン社製)に真空ラミネーターを用いて貼り付け、真空プレス成型機にて180℃、3MPa、1時間の条件でプレスして試験用サンプルを得た。プレスにより得られたサンプルを10mm幅に切り出して、90°の方向に50mm/分の速さで連続的にポリイミドを引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した(JIS C 6481に準拠)。
6)銅箔引き剥し強さ
乾燥後の接着剤層の厚みが50μmになるように接着フィルムを作成し、これを電解銅箔(USLPSE-18、日本電解社製)に真空ラミネーターを用いて貼り付け、真空プレス成型機にて180℃、3MPa、1時間の条件でプレスして試験用サンプルを得た。プレスにより得られたサンプルを10mm幅に切り出して、90°の方向に50mm/分の速さで連続的に銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した(JIS C 6481に準拠)。
【0102】
7)はんだ耐熱性
5)、6)で得られたポリイミド付き硬化物、銅箔付き硬化物を50mm角に切り取り試験片を作成し、85℃、85%RHの条件にて168時間吸湿させた。所定条件吸湿後、試験片を、260℃、60秒、半田浴に浸漬し、外観異常(ふくれ、はがれの有無)を目視により調べた。異常が認められなかったものをA、外観異常が見られたものをBとした。
【0103】
8)耐湿熱性
5)、6)で得られたポリイミド付き硬化物、銅箔付き硬化物を10mm幅に切り出して、PCT(条件:121℃、2.1atm)で192時間処理し、90°の方向に50mm/分の速さで連続的にポリイミド及び銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した。
【0104】
9)燃焼性
燃焼性はアメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験を行い、難燃性を評価した。燃焼性試験に使用した試験片はハロゲン系難燃剤を使用することなく難燃化されたFR−4基板の上に本発明の接着フィルムを両面に200μmの厚さで貼り合わせ、真空プレス成形機により180℃、3MPa、1時間の条件で成形した後、所定の寸法に切断することによって作成した。
【実施例】
【0105】
合成例1
ジビニルベンゼン28.5モル(4059ml)、エチルビニルベンゼン1.5モル(213.7ml)、スチレン10.0モル(1145.8ml)、ベンジルアルコール16モル(1655.7ml)、酢酸エチル4.80モル(468.9ml)、トルエン7111ml(誘電率:2.3)及びシクロヘキサン6222ml(誘電率:2.02)を30Lの反応器内に投入し、30℃で6.4モルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、5時間反応させた。重合反応を水酸化カルシウム2845gで停止させた後、ろ過を行い、5Lの蒸留水で3回洗浄した。重合溶液にブチルヒドロキシトルエンを8.0g溶解させた後、40℃で1時間エバポレーターを使用して濃縮した。室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A3356g(収率:67.8wt%)を得た。
【0106】
得られた共重合体AのMwは6230、Mnは2100、Mw/Mnは2.97であった。13C−NMR及び1H−NMR分析を行うことにより、共重合体Aはエーテル末端、インダン末端及びアルコール末端に由来する共鳴線が観察された。NMR測定結果より算出される全含酸素末端中に占めるエーテル末端の割合は79.4モル%であった。NMR測定結果より、エーテル末端及びアルコール末端に由来する酸素含有量を算出したところ2.3wt%であった。また、共重合体Aの元素分析を行った結果、C:90.5wt%、H:7.6wt%、O:2.4wt%であり、NMR測定結果と良い一致を示した。元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体へのエーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基の導入量は3.4(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を合計45.3モル%、及びスチレン由来の構造単位とベンジルアルコール由来の構造とエチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計54.7モル%含有していた。また、共重合体Aに含まれるインダン構造は全ての単量体の構造単位の合計に対して5.5モル%存在していた。また、前記(a1)で表される構造単位(a1)を39.8モル%含有していた。また、TMA測定の結果、Tgは289℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃に於ける重量減少量は0.3wt%、耐熱変色性はAであった。
共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0107】
以下に実施例で使用した成分の略号を次に示す。
【0108】
(B)成分
B1-1:o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-1020)
B1-2:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)
B2-1:両末端にビニル基を有するポリフェニレンオリゴマー(三菱瓦斯化学社製、商品名:OPE-2St-1(Mn=1160、2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチルビフェニル-4,4'-ジオール・2,6-ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物)
B2-2:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(日本化薬社製、商品名:R−684)
B2-3:ポリエチエングリコールジアクリレート(サートマー社製、商品名:SR-344)
B2-4:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬社製、商品名:R-115)
B2-5:ノボラック型エポキシアクリレート/トリプロピレングリコールジアクリレート=80wt%/20wt%(ダイセル・サイテック社製、商品名:EBECRYL 3603)
【0109】
(C)成分
C-1:水添スチレンブタジエンブロック共重合体、旭化成工業社製、商品名:タフテックH1053
C-2:水添スチレンブタジエンブロック共重合体、旭化成工業社製、商品名:タフテックH1041
C-3:水添スチレンブタジエンブロック共重合体、旭化成工業社製、商品名:タフテックM1913
【0110】
(D)成分
D-1:リン−窒素系難燃剤、ヘキサフェノキシシクロトリフォスファゼン(大塚化学社製)
【0111】
(E)、(F)成分
E-1:エチレン−アクリル酸エステル−不飽和グリシジル化合物共重合体(アルケマ社製、商品名:ロタダーAX8900)
F-1:カルボキシル基変性エチレン−アクリル酸エステル共重合体(アルケマ社製、商品名:ボンダインAX8390)
【0112】
その他の成分
G-1:反応開始剤、α,α’ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、商品名:パーブチルP)
G-2:硬化触媒、2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成社製、キュアゾール2E4MZ)
G-3:シランカップリング剤、ビス−(3-[トリエトキシシリル]プロピル)ポリスルフィド
【0113】
実施例1
合成例で得られた多官能ビニル芳香族共重合体A、エポキシ樹脂B1-1、炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物 B2-1、水添スチレンブタジエンブロック共重合体C-1、C-2、C-3、リン−窒素系難燃剤D-1、シランカップリング剤G-3と溶剤としてキシレンを表1の割合で配合して、攪拌後、反応開始剤G-1及び硬化触媒G-2を加えて、難燃硬化性樹脂組成物溶液を調製した。組成を表1に示した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートを張りつけた台に、難燃硬化性樹脂組成物溶液をキャストし、フィルムを得た。得られたフィルムは窒素ガスを流したイナートオーブンで、80℃で10分間乾燥させた。得られたフィルムは約50μmの厚みであった。目視によるフィルムの外観は良好であった。このフィルムを前記成形方法、試験方法に則って、硬化物フィルムの機械特性、銅箔及びポリイミドフィルム引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、PCT後の銅箔及びポリイミドフィルム引き剥がし強さ、燃焼性を評価した。結果を表3に示した
【0114】
実施例2〜10
難燃硬化性樹脂組成物に配合する成分の種類、添加量を変化させたこと以外は実施例1と同様の方法によって、難燃硬化性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成を表1〜2に、硬化物の評価結果を表3〜4に示した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
比較例1〜4
難燃硬化性樹脂組成物に配合する成分の種類、添加量を変化させたこと以外は実施例1と同様の方法によって、難燃硬化性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成を表5に、硬化物の評価結果を表6に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を10モル%以上含有し、下記式(a1)
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位を全ての単量体由来の構造単位に対して5.0モル%以上含有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600〜100,000であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)が2.0〜100.0であり、かつその末端の一部にエーテル結合を介した鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコール性水酸基から選ばれる官能基を1種以上有し、該エーテル結合及びアルコール性水酸基由来の酸素含有量が0.1〜5.0wt%である溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体、
(B)成分:多官能エポキシ樹脂(B1)又は炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)、
(C)成分:水添スチレンブタジエンブロック共重合体類、及び
(D)成分:リン−窒素系難燃剤、
を含んでなる樹脂組成物であり、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(A)成分の配合量が4〜70wt%、(B)成分の配合量が4〜70wt%、(C)成分の配合量が15〜70wt%、(D)成分の配合量が3〜20wt%であることを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
モノビニル芳香族化合物(b)がエチルビニルベンゼン、スチレン又は両者からなる請求項1に記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)が、数平均分子量Mnが700〜4,000の両末端にビニル基を有する下記式(1)
【化2】

(式(1)中、-(O-X-O)-は式(2)で表され、R3、R4、R9、R10は独立に、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R5、R6、R7、R8は独立に、水素原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Aは炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基である。-(Y-O)-は式(3)で表され、R11、R12は独立に、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R13、R14は独立に、水素原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。Zは炭素数1以上の有機基であり、酸素原子を含んでもよい。Tはビニル基である。a及びbは少なくともいずれか一方が0でない0〜20の整数を示す。i及びjは独立に、0又は1の整数を示す。)で表されるポリフェニレンエーテルオリゴマーである請求項1又は2に記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
炭素−炭素二重結合を分子内に2個以上有する重合性化合物(B2)が、下記式(4)
【化3】

(式中、mは2〜10の整数であり、R15は水素又はメチル基を示し、R16は多価ヒドロキシ化合物の残基を示す。)で表される(メタ)アクリロイル化合物である請求項1又は2に記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(E)成分:エチレン−アクリル酸エステル−グリシジル化合物共重合体、を含有し、その配合量が(A)〜(E)成分の合計に対して1〜20wt%である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(F)成分:カルボキシル基変性エチレン−アクリル酸エステル共重合体、を含有し、その配合量が(A)〜(F)成分の合計に対して1〜20wt%である請求項1〜5のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする接着フィルム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物から形成された樹脂層を電気絶縁性フィルムの片面に有することを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする難燃硬化物。

【公開番号】特開2008−248141(P2008−248141A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92729(P2007−92729)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】