説明

雨水ます

【課題】蓋を閉じた状態にロックするロック機構と、雨水に混じった異物を回収する充分な大きさの容器とを備えた雨水ますを提供する。
【解決手段】雨水ます1は、ます本体2と、立管3と、立管3に取り付けられた枠8と、枠8に着脱自在に嵌め込まれた蓋9と、バケット20と、蓋9を閉じた状態にロックするロック部材10とを備えている。枠8の下側筒状部8bの内周面には、ロック部材10のフック部12と係合する凸部は形成されていない。ロック部材10は、フック部12が下側筒状部8bの下端面と係合するロック位置と、フック部12が下側筒状部8bの下端面と係合しないロック解除位置との間で回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、地中に埋設されるますは、ます本体の内部の点検や清掃等のために、地表にて開口する立管を有している。立管の開口部には開閉自在な蓋が取り付けられる。蓋は、通常時には閉じられ、ます本体の点検等の際に取り外される。従来から、蓋を閉じた状態にロックするロック機構が知られている。
【0003】
特許文献1には、公共用ますの立管に嵌め込まれた蓋をロックするロック機構が開示されている。図8に示すように、このロック機構は、蓋体101に回転自在に挿入された鍵部材102を備えている。立管の上部には枠104が嵌め込まれており、枠104の内周面には内側に突出する係合部105が設けられている。鍵部材102の下側には、横方向に延びるフック103が形成されている。鍵部材102を回転させると、フック103は係合部105の下方に位置付けられる。これにより、フック103と係合部105とが係合し、蓋体101を枠104から上方に取り外すことができなくなって、蓋体101は閉じた状態にロックされる。一方、鍵部材102を逆回転させると、フック103と係合部105との係合が解かれ、蓋体101を枠104から取り外すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3295837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚水管路と異なり、雨水管路に設けられるます、すなわち雨水ますの内部には、雨水と共に流れる異物(例えば、砂、枯葉等)を回収するために、いわゆるバケットやバスケット等と称される容器が設けられることが多い。容器に回収された異物は、雨水ますのメンテナンスの際に容器と共に地上に取り出され、外部に排出される。容器の回収可能量を多くしてメンテナンスの頻度を少なくする等の観点から、容器はできるだけ大きいことが好ましい。
【0006】
ところが、雨水ますの立管の蓋に上記ロック機構を設けようとすると、容器の大きさが制限されてしまうという新たな課題が生じることとなる。すなわち、図9に示すように、例えば容器本体111と把手112とを有する容器110を雨水ます本体106に収容しようとすると、枠104および立管107を通じて容器110を上方から挿入しなければならない。しかし、ロック機構を設けるために枠104の内側に係合部105を形成することとすると、容器本体111および把手112の横幅を係合部105の内径よりも小さく抑える必要がある。そのため、容器110の大きさが制限されてしまう。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓋を閉じた状態にロックするロック機構と、雨水に混じった異物を回収する充分な大きさの容器とを備えた雨水ますを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る雨水ますは、略有底筒状のます本体と、前記ます本体の上部に接続された立管と、前記立管の上端面上に載置される上側筒状部と、前記上側筒状部の下部から半径方向の内向きに延びる段差部と、前記段差部から下方に延びる下側筒状部とを有し、前記下側筒状部が前記立管の内側に差し込まれることによって前記立管に取り付けられた枠と、貫通孔が形成され、その外周縁部が前記段差部上に載置されるように前記枠に着脱自在に嵌め込まれた蓋と、前記枠および前記立管を通じて前記ます本体の内部に装着される容器と、前記蓋の貫通孔に回転自在に挿入された軸部と、前記軸部から横方向に延び且つ前記下側筒状部の下端面よりも下方に位置するフック部と、を有するロック部材と、を備える。前記下側筒状部の内周面には前記フック部と係合する凸部は形成されておらず、前記ロック部材は、前記フック部が前記下側筒状部の下端面と係合するロック位置と、前記フック部が前記下側筒状部の下端面と係合しないロック解除位置との間で回転可能に構成されている。
【0009】
なお、本明細書において雨水ますとは、雨水を地中に浸透させないますと、雨水を地中に浸透させるます(いわゆる雨水浸透ます)との両方が含まれる。前記フック部は前記軸部から横方向に延びているが、ここでいう「横方向に延びている」とは、フック部の全部が横方向に延びている場合に限らず、フック部の一部が横方向に延びている場合も含まれる。また、「横方向」とは、水平方向に限らず、水平方向から傾いた方向であってもよい。
【0010】
上記雨水ますによれば、ロック部材のフック部は、枠の下側筒状部の内周部に係合するのではなく、下側筒状部の下端面と係合する。下側筒状部の内周面には、ロック部材のフック部と係合する凸部は形成されていない。したがって、ロック部材により蓋を閉じた状態にロックすることが可能であると共に、容器の横幅を下側筒状部の内径と略同程度まで大きくすることができ、容器を充分に大きくすることが可能となる。
【0011】
前記立管および前記枠は樹脂材料からなっていてもよい。この場合、前記立管および前記枠は、互いに接着されていることが好ましい。
【0012】
例えば集中豪雨時などでは、雨水ますに大量の雨水が流れ込み、立管内に密封された空気の圧力または立管内において水位上昇した雨水によって、蓋に対して上向きの大きな力が加えられる場合がある。そのような場合、蓋を介して枠にも大きな力が加えられるので、蓋をロックしていても、枠自体が立管から外れてしまうおそれがある。しかし、立管と枠とを接着することとすれば、蓋に対して上向きの大きな力が加えられたとしても、蓋が枠と共に立管から外れることを防止することができる。
【0013】
前記蓋は樹脂材料からなっていてもよい。この場合、前記枠の前記下側筒状部の縦方向の長さは、前記上側筒状部の縦方向の長さの2倍以上であることが好ましい。
【0014】
雨水ますと異なりマンホールでは、枠はコンクリート製であり、蓋は鉄製であるため、枠および蓋の重量は大きい。これに対し、枠および蓋が樹脂製であると、枠および蓋の重量は小さいため、上向きの大きな力が加わった場合に枠および蓋は外れやすくなる。しかし、上述のように下側筒状部の縦方向の長さが長ければ、枠の固定は強固になり、また、接着する場合には接着代が大きくなり、接着強度が大きくなる。そのため、蓋に対して上向きの大きな力が加えられたときに、蓋が枠と共に立管から外れることをより確実に防止することができる。
【0015】
前記ます本体には、雨水を流入させる流入管と、雨水を流出させる流出管とが接続され、前記容器は、有底筒状の容器本体と、前記容器本体に設けられた把手とを有し、前記容器は、前記容器の上端部が前記流入管および前記流出管の管底部よりも低くなるように配置され、前記把手は、前記把手の上端部が前記ロック部材の下端部よりも低くなるような寸法に形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、容器は流入管および流出管の管底部よりも低い位置に配置されているので、雨水に含まれる異物を良好に回収することができる。前述したように枠の下側筒状部の縦方向の長さが長い場合、ロック部材の縦方向の長さは長くなる。そのため、把手の縦方向の長さが長いと、蓋を閉じる際にロック部材と把手とが干渉し、蓋を閉じる作業を円滑に行えなくなるおそれがある。ところが、上記雨水ますによれば、把手はその上端部がロック部材の下端部よりも低くなるような寸法に形成されている。したがって、枠の下側筒状部の縦方向の長さが短い場合は勿論、その長さが長い場合であっても、蓋を閉じる際にロック部材と把手とが干渉しないため、蓋を閉じる作業を円滑に行うことができる。
【0017】
前記ロック部材の前記軸部と前記フック部とは別体に形成され、互いに組み立てられていてもよい。
【0018】
このことにより、ロック部材を蓋に容易に取り付けることができる。枠の下側筒状部の縦方向の長さが長い場合、ロック部材の縦方向の長さも長くなる。そのため、ロック部材を蓋の貫通孔に嵌め込む作業は難しくなる。しかし、上述のようにロック部材が組み立て式であれば、軸部を蓋の貫通孔に上方から挿入した後、フック部を軸部の下側に下方または横方向から組み付けることにより、長いロック部材であっても蓋に容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓋を閉じた状態にロックするロック機構と、雨水に混じった異物を回収する充分な大きさの容器とを備えた雨水ますを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る雨水ますの断面図である。
【図2】雨水ますのロック部材の近傍を拡大して示す断面図である。
【図3】蓋および枠の模式的な断面図である。
【図4】蓋、枠およびロック部材の平面図である。
【図5】蓋、枠およびロック部材の側面図である。
【図6】蓋、枠およびロック部材の裏面図である。
【図7】他の実施形態に係る雨水ますのロック部材の近傍を拡大して示す断面図である。
【図8】従来の公共用ますのロック部材の近傍を拡大して示す断面図である。
【図9】従来のロック部材を雨水ますに適用した仮想例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る雨水ます1は、ます本体2と、ます本体2の上側に接続された立管3と、立管3の上側に嵌め込まれた枠8と、枠8に嵌め込まれた蓋9とを備えている。ます本体2は、有底円筒状の泥溜め部4と、泥溜め部4の上部に接続された胴部5とを有している。泥溜め部4および胴部5は、塩化ビニル等の樹脂材料からなっており、互いに接着されている。胴部5には、流入側の受口5aと、流出側の受口5bとが形成されている。受口5aには流入管6が接続されている。受口5bには流出管7が接続されている。なお、本実施形態では受口5aおよび受口5bはそれぞれ1つであるが、受口5aおよび受口5bの個数は特に限定される訳ではない。
【0022】
胴部5の上側には受口5cが形成され、立管3の下部は胴部5の受口5cに差し込まれている。立管3は、内径および外径が一定の円管によって構成されている。立管3は塩化ビニル等の樹脂材料からなっており、胴部5の受口5cに接着されている。
【0023】
立管3の上側には、枠8が嵌め込まれている。枠8は、上側筒状部8aと、上側筒状部8aの下部から半径方向の内向きに延びる段差部8dと、段差部8dから下方に延びる下側筒状部8bとを有している。下側筒状部8bの外径は上側筒状部8aの外径よりも小さく、下側筒状部8bの内径は上側筒状部8aの内径よりも小さくなっている。
【0024】
図2に示すように、下側筒状部8bの縦方向の長さL2は、上側筒状部8aの縦方向の長さL1よりも大きい。本実施形態では、L2はL1の2倍以上である。なお、L1およびL2の具体的数値は適宜設定することができる。図3に示すように、枠8の上側筒状部8aの外径をD1、蓋9の外径をD2、下側筒状部8bの外径をD3としたときに、例えば、いわゆるます径が150mmの場合、D1=163mm、D2=146mm、D3=155mm、L1=15mm、L2=35mm以上とすることができる。ます径が200mmの場合、D1=212mm、D2=194mm、D3=203mm、L1=18mm、L2=50mm以上とすることができる。ます径が300mmの場合、D1=313mm、D2=294mm、D3=290mm、L1=38mm、L2=100mm以上とすることができる。ます径が350mmの場合、D1=363mm、D2=345mm、D3=340mm、L1=38mm、L2=100mm以上とすることができる。
【0025】
図2に示すように、枠8の外側には段差8cが形成されている。この段差8cには、立管3の上端面3aが当接している。上側筒状部8aは、立管3の上端面3a上に載置されている。下側筒状部8bは、立管3の内側に差し込まれている。枠8は塩化ビニル等の樹脂材料からなっている。枠8は立管3に接着されている。
【0026】
図4に示すように、蓋9は略円板状に形成されている。蓋9の中心から外れた位置には、貫通孔9aが形成されている。本実施形態では、合計2つの貫通孔9aが形成されている。ただし、貫通孔9aの数は2つに限定されない。蓋9の外径は、枠8の上側筒状部8aの内径とほぼ等しい。蓋9の外周部には、蓋9を開くときにバール等が差し込まれるスリット9bが形成されている。図2に示すように、蓋9の外周面は、下方に行くほど中心に近づくように傾斜している。蓋9の外周縁部9fは、枠8の段差部8d上に載置される。蓋9の外周面には凹部9cが形成されており、凹部9cにはシール材としてゴムリング13が嵌め込まれている。ゴムリング13は、蓋9と枠8との間の隙間を封止している。蓋9は塩化ビニル等の樹脂材料からなっている。
【0027】
蓋9の貫通孔9aには、ロック部材10が挿入されている。図2に示すように、ロック部材10は、軸部11とフック部12とからなっている。軸部11とフック部12とは別体に形成され、互いに組み立てられている。
【0028】
軸部11は、円板状の頭部11aと、頭部11aの下方に位置する柱状部11bと、柱状部11bの下方に位置する摺接部11cと、摺接部11cの下方に位置する垂直部11dと、垂直部11dの下部から上方に向かって広がる係止片11eとを有している。柱状部11bには、放射状に広がるリブ11fが設けられている。摺接部11cは、軸部11を回転させる際に貫通孔9aの内周面と摺接する部分である。両摺接部11cの間には凹部11gが形成され、この凹部11gにはゴムリング11hが嵌め込まれている。ゴムリング11hは、貫通孔9aの内周面と軸部11との間の隙間を封止するシール部材である。本実施形態では、垂直部11dは中空状に形成されている。しかし、垂直部11dの形状は何ら限定されず、中実状に形成されていてもよい。係止片11eの上側には、段差11iが設けられている。軸部11は塩化ビニル等の樹脂材料によって一体成型されており、係止片11eには開く方向の弾性力が常に生じている。軸部11は上方から貫通孔9aに挿入される。係止片11eは、貫通孔9aを通過するときには貫通孔9aの内周面と摺接し、折り畳まれる。係止片11eが貫通孔9aの下方に至ると、係止片11eは上記弾性力によって展開される。これにより、係止片11eの段差11iと貫通孔9aの縁部の下面9dとが係合し、軸部11の貫通孔9aからの抜けが防止される。
【0029】
フック部12は、L字状に湾曲した管状体12aと、係合体12bとからなっている。フック部12は、軸部11から横方向に延びている。なお、「軸部11から横方向に延びている」とは、フック部12の全体が横方向に延びている場合に限らず、本実施形態のようにフック部12の一部が縦方向に延び、他の一部が横方向に延びている場合も含まれる。また、横方向とは、水平方向に限らず、水平方向から傾いた方向であってもよい。
【0030】
管状体12aおよび係合体12bは、塩化ビニル等の樹脂材料からなっている。管状体12aの上側には、垂直部11dが差し込まれている。管状体12aと垂直部11dとは、接着されている。管状体12aの下部は横方向に延びている。係合体12bは管状に形成されており、管状体12aに差し込まれている。管状体12aと係合体12bとは、接着されている。本実施形態では、管状体12aと係合体12bとは別体に形成され、互いに組み立てられているが、管状体12aと係合体12bとは一体成型されていてもよい。管状体12aおよび係合体12bは、係合体12bが枠8の下側筒状部8bの下端面8eと係合可能な長さに形成されている。言い換えると、管状体12aおよび係合体12bは、係合体12bの先端部12cが下側筒状部8bの下端面8eの下方に位置するような長さに形成されている(図5および図6も参照)。図2に示すように、下側筒状部8bの下端面8eと係合体12bの先端部12cとの間に若干の隙間が設けられてもよいが、それらは接触していてもよい。
【0031】
図4に示すように、ロック部材10の頭部11aの上側には、係合体12bの向きを示す目印11jが設けられている。目印11jの内側には、スリット11kが形成されている。ドライバー等の工具をスリット11kに挿入して回転させると、ロック部材10を回転させることができる。
【0032】
図1に示すように、雨水ます1の内部には、バケット20が設けられている。バケット20は、雨水と共に雨水ます1の内部に流れ込んでくる砂、石、枯葉等の異物を回収する容器の一例である。バケット20は、有底円筒状のバケット本体21と、バケット本体21に取り付けられた把手22とを有している。
【0033】
バケット20の横幅の最大値は、枠8の下側筒状部8bの内径と略同一であり、厳密には、下側筒状部8bの内径よりも若干小さくなっている。本実施形態では、把手22の横幅の方がバケット本体21の横幅(言い換えると、バケット本体21の外径)よりも大きくなっており、把手22の横幅は枠8の下側筒状部8bの内径と略同一である。ただし、バケット本体21の横幅の方が把手22の横幅よりも大きく、バケット本体21の横幅が下側筒状部8bの内径と略同一であってもよい。
【0034】
バケット本体21の上端部21aの位置は、流入管6の管底部6aおよび流出管7の管底部7aの位置よりも低くなっている。把手22の上端部22aの位置は、ロック部材10の下端部10bの位置よりも低くなっている。
【0035】
なお、バケット本体21の出し入れが可能である限り、把手22は必ずしも必要ではない。バケット20は、バケット本体21のみによって構成されていてもよい。
【0036】
バケット20には異物が溜まるので、雨水ます1では、定期的にバケット20内の異物を外部に排出するメンテナンス作業が必要となる。メンテナンス作業の際には、作業者は、ドライバー等の工具をスリット11kに挿入して回転させ、ロック部材10の係合体12bの先端部12cが下側筒状部8bの下端面8eの下方の位置からずれるように、ロック部材10を回転させる。これにより、ロック部材10はロック解除位置に位置付けられる。次に、作業者は、蓋9のスリット9b(図4参照)にバール等の工具を挿入し、てこの原理を利用して蓋9を上方に向かって取り外す。これにより、枠8の上側が開放される。そして、作業者は、把手22を掴んで持ち上げ、立管3および枠8を通じてバケット20を外部に取り出す。その後、バケット20内に回収された異物を除去する。
【0037】
異物が除去されて空になったバケット20は、再び泥溜め部4に収容される。作業者は、把手22を掴み、枠8および立管3を通じてバケット20を持ち下げ、泥溜め部4に装着する。次に、作業者は、枠8の上側に蓋9を嵌め込む。その後、ドライバー等の工具をスリット11kに挿入して回転させ、ロック部材10の係合体12bの先端部12cが下側筒状部8bの下端面8eの下方に位置するように、ロック部材10を回転させる。これにより、ロック部材10はロック位置に位置付けられ、蓋9は閉じた状態にロックされる。
【0038】
バケット20を備える雨水ます1によれば、雨水に混じった異物はバケット20に回収される。バケット20に回収された異物は、バケット20を外部に取り出すことにより、容易に排出することができる。したがって、バケット20を備える雨水ます1によれば、内部に異物が滞留することによってます本来の機能が低下することを容易に回避することができる。
【0039】
例えば集中豪雨時などでは、雨水ます1に大量の雨水が流れ込み、雨水ます1の内部に密封された空気の圧力または水位上昇した雨水によって、蓋9に対して上向きの大きな力が加えられる場合がある。しかし、本実施形態に係る雨水ます1によれば、ロック部材10により蓋9を閉じた状態にロックすることができるので、蓋9に上向きの大きな力が加わったとしても、蓋9が外れてしまうことを防止することができる。
【0040】
本実施形態に係る雨水ます1によれば、枠8の下側筒状部8bの内周面には、ロック部材10のフック部12と係合する凸部は形成されておらず、フック部12は下側筒状部8bの下端面8eと係合するように構成されている。下側筒状部8bの内周面には、バケット20の昇降を阻害するような凸部が設けられていないので、バケット20の横幅を下側筒状部8bの内径と略同程度にまで大きくすることができる。したがって、雨水ます1によれば、ロック部材10により蓋9を閉じた状態にロックすることが可能であると共に、大きなバケット20を収容することが可能となる。
【0041】
ところで、蓋9を枠8にロックしたとしても、蓋9に上向きの大きな力が加わった場合、蓋9と共に枠8が立管3から外れてしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、立管3と枠8とは互いに接着されている。そのため、枠8は立管3に対し強固に固定される。したがって、蓋9が枠8と共に外れてしまうことをより確実に防止することができる。
【0042】
雨水ますと異なりマンホールでは、枠はコンクリート製であり、蓋は鉄製であるため、枠および蓋の重量は大きい。しかし、本実施形態に係る雨水ます1では枠8および蓋9は樹脂製であり、それらの重量は小さい。そのため、マンホールに比べると、上向きの大きな力が加わった場合に枠8および蓋9は外れやすくなる。ところが、本実施形態では従来と比べて、枠8の下側筒状部8bの縦方向長さL2が長い。なお、上記長さL2は特に限定される訳ではないが、本実施形態では、上記長さL2は上側筒状部8aの縦方向長さL1の2倍以上である。そのため、枠8と立管3との固定が強固になり、また、本実施形態のようにそれらを接着する場合には接着代が大きくなり、接着強度が大きくなる。したがって、蓋9が枠8と共に外れてしまうことをより確実に防止することができる。
【0043】
バケット20の把手22の位置が高いほど、バケット20を外に取り出す作業は容易となる。しかし、本実施形態では、蓋9に取り付けられたロック部材10の縦方向長さが長いので、把手22の位置が高いと、枠8に蓋9を嵌め込む際に、蓋9の向きによってはロック部材10と把手22とが干渉してしまうおそれがある。ところが、把手22は、その上端部22aの位置がロック部材10の下端部10bの位置よりも低くなるような寸法に形成されている。したがって、蓋9を閉じる際にロック部材10とバケット20とが干渉するおそれがなく、蓋9を閉じる作業を円滑に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、ロック部材10の軸部11とフック部12とは別体に形成され、互いに組み立てられている。しかし、軸部11とフック部12とは、必ずしも別体でなくてもよい。図7に示す実施形態は、軸部11とフック部12とが一体成型されたものである。このような実施形態であっても、前述の作用効果を得ることができる。
【0045】
ただし、軸部11とフック部12とが別体に形成されていれば、ロック部材10を蓋9に取り付ける作業が容易となる。すなわち、軸部11を上方から蓋9の貫通孔9aに挿入し、その後、蓋9の下方からフック部12を軸部11の下部に嵌め込むことによって、ロック部材10を蓋9に取り付けることができる。本実施形態では、ロック部材10は枠8の下側筒状部8bの下端面8eと係合するように形成され、下側筒状部8bの縦方向長さL2が長いので、ロック部材10も長くなる。しかし、ロック部材10の下部(すなわち、係合体12b)は横方向に延びているので、ロック部材10の縦方向長さが長いと、貫通孔9aに嵌め込む作業は難しくなる。ところが、軸部11とフック部12とを別体とし、軸部11を貫通孔9aに挿入した後にフック部12を軸部11に取り付けることとすれば、縦方向に長いロック部材10であっても、比較的容易に取り付けることができる。
【0046】
上記実施形態では、雨水に混じった異物を回収する容器は、側部および底部に孔の空いていない容器であった。しかし、上記容器は、側部または底部に孔が形成された容器、すなわちバスケットであってもよい。
【0047】
上記実施形態に係る雨水ます1は、雨水を地中に浸透させないものであった。しかし、本発明に係る雨水ますは、雨水を地中に浸透させるものであってもよい。雨水ますは、例えば泥溜め部4に複数の小孔が形成されたものであってもよい。
【0048】
前述したように、枠8の下側筒状部8bの内周面には、ロック部材10のフック部12と係合する凸部は形成されていない。ただし、フック部12と係合しない程度の微小なものであれば、下側筒状部8bの内周面に凸部が設けられていてもよい。例えば、枠8の成型上の理由から、下側筒状部8bの内周面にフック部12と係合しない微小な凸部が形成されていてもよい。また、枠8の強度を高めるために、下側筒状部8bの内周面にフック部12と係合しない程度の微小なリブ等が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 雨水ます
2 ます本体
3 立管
6 流入管
7 流出管
8 枠
8a 上側筒状部
8b 下側筒状部
8d 段差部
8e 下側筒状部の下端面
9 蓋
9a 貫通孔
9f 蓋の外周縁部
10 ロック部材
11 軸部
12 フック部
20 バケット(容器)
21 バケット本体(容器本体)
22 把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略有底筒状のます本体と、
前記ます本体の上部に接続された立管と、
前記立管の上端面上に載置される上側筒状部と、前記上側筒状部の下部から半径方向の内向きに延びる段差部と、前記段差部から下方に延びる下側筒状部とを有し、前記下側筒状部が前記立管の内側に差し込まれることによって前記立管に取り付けられた枠と、
貫通孔が形成され、その外周縁部が前記段差部上に載置されるように前記枠に着脱自在に嵌め込まれた蓋と、
前記枠および前記立管を通じて前記ます本体の内部に装着される容器と、
前記蓋の貫通孔に回転自在に挿入された軸部と、前記軸部から横方向に延び且つ前記下側筒状部の下端面よりも下方に位置するフック部と、を有するロック部材と、
を備え、
前記下側筒状部の内周面には前記フック部と係合する凸部は形成されておらず、
前記ロック部材は、前記フック部が前記下側筒状部の下端面と係合するロック位置と、前記フック部が前記下側筒状部の下端面と係合しないロック解除位置との間で回転可能に構成されている、雨水ます。
【請求項2】
前記立管および前記枠は樹脂材料からなり、互いに接着されている、請求項1に記載の雨水ます。
【請求項3】
前記蓋は樹脂材料からなり、
前記枠の前記下側筒状部の縦方向の長さは、前記上側筒状部の縦方向の長さの2倍以上である、請求項1または2に記載の雨水ます。
【請求項4】
前記ます本体には、雨水を流入させる流入管と、雨水を流出させる流出管とが接続され、
前記容器は、有底筒状の容器本体と、前記容器本体に設けられた把手とを有し、
前記容器は、前記容器の上端部が前記流入管および前記流出管の管底部よりも低くなるように配置され、
前記把手は、前記把手の上端部が前記ロック部材の下端部よりも低くなるような寸法に形成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の雨水ます。
【請求項5】
前記ロック部材の前記軸部と前記フック部とは別体に形成され、互いに組み立てられている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の雨水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−87566(P2012−87566A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236360(P2010−236360)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】