説明

雪粒又は雨粒の通過阻止具

【課題】
本発明の課題は、空気の移動圧(風圧)による影響を低減することで破壊を回避する中で、雪粒又は雨粒が通過することなく一面側に捕獲され、傾斜した面に沿って滑落し、保護対象のある側には、雪や雨が集積しない雪粒・雨粒の通過阻止具を提供することである。
【解決手段】
本発明の雪粒・雨粒の通過阻止具は、空気を通過させるが、降ってくる雪粒・雨粒を通さないで捕獲するために、雪粒・雨粒より小さい表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒・雨粒を滑落させ、阻止具を構成する素材部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーすべき対象とその周囲の空間との間に介在させ、且つ水平に対して傾斜させて付設され、降雪または降雨の通過を阻止して、対象のある側とは反対側に降雪または降雨を落とし、風(空気)は通過させる雪粒又は雨粒の通過阻止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雪又は降雨による被害には、多くの例が知られている。
例えば、雪害では、道路への積雪による交通障害、雪崩、積雪による農作物の被害、太陽電池への積雪による発電量の低下など例に限りが無い。同様に降雨による被害では、水害、豪雨による交通麻痺、農作物被害などがあげられる。
雪も雨も降ってくる個々の粒は小さく対策も小規模でよいが、積雪、或いは雨による水溜りのように集団塊となると、質量も巨大になり大きな被害をもたらすとともに対策も大規模になってくる。
従来、集団塊に対する対策の提案は多く見られるが、個々の粒、或いは降雪中、降雨中に対する提案は極めて少ない。これは、ほとんど100%の被害が、集団塊になってから起こるものであり、しかも、被害が集団塊の局在するところに起こり、且つ、まとまっているので対処しやすい。
然しながら、粒や降雪、又は降雨中では被害に至らないこと、降雪や降雨は広域におこり、場所の特定がし難い。従って、一般の被害は、粒や降雪、又は降雨中では対処ができない例が多いのが実情である。
多くの例がある集団塊に対する従来例を挙げると、例えば雨では、貯水ダム、堤防、土嚢積み、道路シェルタなどが挙げられる。雪では、除雪、雪崩柵、雪シュルタなどが挙げられる。更に雪や雨にこだわらないで集団塊に対する対策例を挙げると、土砂や岩に対しては、コンクリートで固める、防護網、防護柵などがよく見かけることができる。これは、落下しないようにこれらの対策物でとどめておくものである。このような提案例として、特許文献1の提案を示すことができる。
これらの集団塊に対する全ての対策は、局所的で対処しやすいが、質量が膨大になるので、規模の大きい強固な対策が必須になっているのが特徴である。
これに対して、降雪中、降雨中に対応する提案では、勾配を急にした園芸ハウスの屋根、急傾斜勾配で設置された太陽電池の面などが挙げられるが、集団塊に対する対策にもなるし、雪粒又は雨粒への対策にもなりえる例である。屋根は施設の一部としてつくられるので、構造から規模が大きくならざるを得ない。太陽電池では設置角度の勾配と発電効率の妥協を図らなければならない。
【0003】
以上のように一般に局所的な対応するものは、集団塊を扱うので大規模になるが、屋根の例のように集団塊でなくとも規模が大きくなり、コスト高になることがあるが、局所的な対応でも規模を小さくすることは可能であり、極力、雪粒又は雨粒などや降雪中、降雨中にその場で対処するのが合理的である。対策として扱う対象の質量が小さいので、対策に要する規模が小さくてよく、設備や運用コストが小さくてよいからである。
このような観点で、降雪中、降雨中に保護対象とこれを囲む空間の間に介在され、降雪又は降雨中の雪粒または雨が介在物の面に沿って面の片面を滑落するように水平面とは傾斜して設置され、介在物の面の裏側(保護対象のある側)への落下を低減し、面の両側間では空気の通過移動が可能であることで、破壊に対する空気による風圧の影響を低減した雪粒又は雨粒の通過阻止具は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−261910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、空気の移動圧(風圧)による影響を低減することで破壊を回避する中で、雪粒又は雨粒が通過することなく一面側に捕獲され、傾斜した面に沿って滑落し、保護対象のある側には、雪や雨が集積しない雪粒又は雨粒の通過阻止具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の雪粒又は雨粒の通過阻止具は、空気を通過させるが、降ってくる雪粒又は雨粒を通さないで捕獲するために、雪粒又は雨粒より小さい表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒又は雨粒を滑落させ、阻止具を構成する素材部を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明は、雪粒又は雨粒通過阻止具であって、雪粒又は雨粒が傾斜した面に沿って滑落し、保護対象のある側には、雪や雨が集積しないように傾斜して付設されるものであって、空気を通過させるが、降ってくる前記雪粒又は雨粒を通さないで捕獲するために、雪粒又は雨粒より小さい大きさの表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒又は雨粒を滑落させる素材部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の雪粒又は雨粒通過阻止具において、前記素材部に雪粒又は雨粒を滑落させるように水を滑らせる滑水性、又は水をはじく撥水性を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の雪粒又は雨粒通過阻止具において、前記素材部の裏面には撥水性を、表面には滑水性を備えることで、裏面への雪粒又は雨粒の回り込みを低減したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具において、前記開口部と前記素材部の関係は、空気の通過穴を有する前記素材部によるシート又は空気の通過穴が備わった前記素材部による網の関係にあることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具において、前記素材部が受ける風圧による前記素材部の受ける力を緩和するために、前記素材部に複数の面積に分割して前記素材部の裏面に補強部を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具において、前記素材部の端、又は及び、所望の位置に他の支持体に取り付けるための結節補助具を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の様に構成されているので、本発明の雪粒又は雨粒の通過阻止具は、降雪中、降雨中の空間を降りてくる雪粒又は雨粒を捕獲し、保護対象のある側には集積しないようにするが、設備規模や運用コスが通常の対策に比べて極めて小さくできる点にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の一実施態様を示す図である。
【図2】本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の使用例を示す図である。
【図3】本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の使用例の断面を示す図である。
【図4】本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具にかかる風圧と素材部の強度を吟味した数値を表示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による空気を通過させるが、降ってくる雪粒又は雨粒を通さないで捕獲するために、雪粒又は雨粒より小さく表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒又は雨粒を滑落させ、阻止具を構成する素材部を有している。
以下、実施例で説明する。
【0016】
図1は、本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の一実施態様を示す図である。
雪粒又は雨粒の通過阻止具100は、雪粒又は雨粒より小さく表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒又は雨粒を滑落させ、阻止具を構成する素材部を有している。開口部は、空気を通過させるので、風は吹く抜けることができ、その結果風圧を低減することができて、通過阻止具の破壊が回避できる。開口部の大きさは、対応する雪粒又は雨粒の大きさを考慮して決められる。雪粒の大きさ(粒径)は、積雪の国際分類に従うと0.2mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm、5.0mmに分けられている。これに従って、開口部の径は、最大でも5.0mm、好ましくは、2.0mm、更に好ましくは1.0mmに設定することができる。又、雨粒の大きさ(粒径)は、0.1mmから最大でも7.0mmであり、ほとんどは、5.0mm以下であり、1.0mmが標準値であるので、開口部の径は、雪の場合と同じでも差し支えない。
【0017】
本阻止具の受ける風圧と素材部の引張強度を検討する。図4は、本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具にかかる風圧と素材部の強度を吟味した数値を表示する図である。
風圧Q(N/m)=ρV×C÷2と与えられる。
ここで、ρ:空気の密度1.23kg/m3
V:風速 台風時を想定して、40m/sとする。
C:風力係数 1.0とする。
従って、風圧Q=984(N/m
本阻止具を縦の辺長X、横の辺長Yを想定すると、
面積X・Yの本阻止具が受ける風による力は、984X・Yである。
開口部は風圧を受けないので、風圧を受ける素材部の面積率rとすると、実際に受ける風圧による力は、984X・Y・rとなる。
長さL間隔で網が作られているとすると、縦と横の辺にある網線の数は、
2・(X+Y)÷Lである。
風の力は、阻止具の面に直角であり、風圧で押されて、曲がり、その傾斜角の成分が網線を引くので、網線を引くのはこの力より小さくなるが、余裕を取るためこの値をそのまま使用する。力が均等に網線に分散して均等に掛かるとして、網線1本当たりが受ける力fは、力を網線の数で割って、
f=984X・Y・r÷{2・(X+Y)÷L}=492・r・L/{1/X+1/Y}
f=K・r K=492・L/{1/X+1/Y}
これに対して、Lとして、{0.5、1.0、2.0、5.0(×10−3m)}、
X、Y{1.0、2.0、3.0、5.0、10.0、20.0(m)}を入れて、Kの値を求めると、表2のようになる。rは、1より小さい値であるが、実際のfは、Kより小さくなるが、Kの値がそのまま1本の網線に掛かると見る。
各種の素材の引張強度(単位N)を図4の4−Aに示す。両者を比較すると、素材の強度は、必要となる風圧による力に十分耐えられることが分かり、開口部と素材部の面積的割合は、あまり気にする必要も無く構成が可能であることが分かる。その他の素材もほぼ同様である。
余裕を取って、図4の4−Bの値の1/3の値を採用すると、この条件に合わないのは下線を引いた3条件のみで、他は十分条件に合うことが分かる。
【0018】
素材部は、取り扱いが容易なように畳む、巻くことができるものが都合がよい。軽く丈夫なシート又は糸又は紐又は線のような素材が適している。シートでは、これに多数の開口部が分布して設けれ、糸又は紐又は線では、ネットに編みこまれることで開口部が備えられている。シート又はネットの素材部の材料としては、金属でもよいが、樹脂特にポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、テフロン樹脂のほか炭素繊維なども利用できる。
【0019】
素材部には、雪粒又は雨粒の付着を防止し、滑落を容易にするため撥水性又は滑水性を備えると好都合となる。備えるには、糸又は紐又は線自体にその機能をするものを使用しても良いし、編みこみ後に、塗布などによりコーティングしてもよい。
特に、素材部の裏面には撥水性を、表面には滑水性を備えることは、開口部を介した裏面への雪粒又は雨粒の回り込みの低減に効果がある。
撥水性又は滑水性も材料としては、フッ素系の樹脂や、シリコン系の樹脂が知られているが、特許文献である特願2001−78233、特開平10−316820、特開平10−310740、特開平10−237431、特開平6−264051、特開平8−157643、特開平5−239381、特開平11−29722、特開2000−230060など多くの文献で提案があり使用することが可能である。
【0020】
1−Aにおいて、本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具は、使用時には、傾斜を持って張設されるが、張設のために鳩目、紐、フック、カラナビなど他の固定物へ結びつけるための結節補助具101を備える好都合である。1−Bには、通過阻止具100のシート又はネットの部分を拡大して示している。上の2個は網状であり、下の2個は開口部としての穴が多数開いているものを示している。通過阻止具100は、風圧に対して強化する目的で通過阻止具の面上に適当な間隔で補強部を設けてもよい。補強部は、通過阻止具100の素材部よりも強い素材や太さを太くして強くするなどし、例えば、通過阻止具100の裏面に備えるか、通過阻止具100とは別体にして、使用時に通過阻止具100に当てて使用することもできる。1−Cには、別体になった枠状の補強部を示している。1−Dには、通過阻止具100に補強部を当てた使用状態を示している。
【0021】
図2は、本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の使用例を示す図である。
1−Aには、雪粒又は雨粒の通過阻止具を山形(逆V字)の枠に取り付けた例を示す。雪粒又は雨粒201が雪粒又は雨粒の通過阻止具100の表面に降りて、表面を滑落し一方側の下に滑落し、雪の場合は、下に堆積した雪塊202を形成した状態を示している。1−Bでは、柱203に適当な結節補助具101により一面側に張り付けた例を示す。1−Cでは、柱203に山形に2面側に張り付けた例を示す。山形の頂部が開く場合や積雪を防止する場合は、1−Dのように先が突起状になったカバー204をかぶせてもよい。1−Eは1−Dの矢印方向から見た断面を示す。
【0022】
図3は、本発明による雪粒又は雨粒の通過阻止具の使用例の断面を示す図である。
図2の1−Aにおいて矢印の方向から見た断面となっている。
この例は、雪粒又は雨粒の通過阻止具100で覆われた内部に農作物301がある例であり、3−Bでは、太陽電池302がある例である。農作物301や、太陽電池302などのほか沢山の保護対象物が収容できることは当然である。収容空間には、雪粒又は雨粒ははいらないか、又はその量が低減される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように本発明に係る雪粒又は雨粒の通過阻止具は、簡単な構成でありながら、雪粒又は雨粒を滑落させる傾斜角を持って簡単に設置することで、雪または雨による被害を減少させることが可能となるので、産業上利用性が極めて大きい。
【符号の説明】
【0024】
100 雪粒又は雨粒の通過阻止具
101 結節補助具
201 雪粒又は雨粒
202 雪塊
203 柱
204 カバー
301 農作物
302 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪粒又は雨粒が傾斜した面に沿って滑落し、保護対象のある側には、雪や雨が集積しないように傾斜して付設されるものであって、空気を通過させるが、降ってくる前記雪粒又は雨粒を通さないで捕獲するために、雪粒又は雨粒より小さい大きさの表裏を貫通する開口部とそれを取り巻き、雪粒又は雨粒を滑落させる素材部を有することを特徴とする雪粒又は雨粒通過阻止具。
【請求項2】
前記素材部に雪粒又は雨粒を滑落させるように水を滑らせる滑水性、又は水をはじく撥水性を備えたことを特徴とする請求項1に記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。
【請求項3】
前記素材部の裏面には撥水性を、表面には滑水性を備えることで、裏面への雪粒又は雨粒の回り込みを低減したことを特徴とする請求項2記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。
【請求項4】
前記開口部と前記素材部の関係は、空気の通過穴を有する前記素材部によるシート又は空気の通過穴が備わった前記素材部による網の関係にあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。
【請求項5】
前記素材部が受ける風圧による前記素材部の受ける力を緩和するために、前記素材部に複数の面積に分割して前記素材部の裏面に補強部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。
【請求項6】
前記素材部の端、又は及び、所望の位置に他の支持体に取り付けるための結節補助具を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の雪粒又は雨粒通過阻止具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104188(P2013−104188A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247122(P2011−247122)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(396020132)株式会社システック (101)
【Fターム(参考)】