説明

電力ケーブル接続部

【課題】 接続部内において非対称オフセットにより生ずる軸力差を吸収できるようにし、オフセットレイアウトを小さくできるようにすること。
【解決手段】 接続部内にケーブルシース2とケーブルコア9とを拘束するケーブルコア/シース拘束装置10を設ける。ケーブルコア/シース拘束装置10は、ゴムユニット3の片側もしくは両側のケーブルコア9とケーブルシース2の外周に取り付けられ、ケーブルコアとケーブルシース間の摩擦力を増大させる。これにより、非対称オフセットにより生ずる軸力差を吸収し、オフセットの影響を小さくすることができる。このため、オフセットレイアウトを小さくすることが可能となり、土木工事費を削減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル接続部に関し、特に非対称オフセット部に使用される電力ケーブル接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の電力ケーブル接続部の組み立て方法を説明する図である。
同図(a)に示すように接続すべき2本の電力ケーブル1の端部を段剥ぎし、導体1a、絶縁体1b、外部半導電層1c、綿テープ1d、金属被1eを露出させる。そして、露出させたケーブル導体を(b)に示すように導体接続管2で接続する。
ついで、(c)に示すように、導体接続管2の周囲にゴムユニット3を組み立て、その上に同図(d)に示すように、遮蔽処理およびテープ巻きし、遮蔽+テープ巻き層4を形成する。
さらに、(e)に示すように外装(銅管)5およびエポキシ絶縁筒6を組み立て、ついで(f)に示すようにビニルカバー8を取り付け、防食テープ層7を設ける。
図5は、上記のようにして組み立てられたケーブル接続部の断面構造を示す模式図である。同図に示すように導体、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層からなるケーブルコア9の上に、ゴムユニット3、遮蔽+テープ巻き層4が形成され、その一方の側にエポキシ絶縁筒6が取り付けられ、遮蔽+テープ巻き層4とケーブルシース2(同図では金属シースを示している)上に外装(銅管)5が設けられる。
【0003】
ところで、上記のように電力ケーブルを接続し、マンホールなどに設置する際、負荷変動や年間の気温差によるケーブル導体の熱膨張に伴う伸び出しを吸収するため、ケーブルをオフセットして配置することが行われる。
例えば、特許文献1の図9などには、ケーブル端末部にたるみが生ずるように歪曲させたオフセット接続し、熱伸縮をマンホール内部で吸収するようにした接続部について記載されている。
また、特許文献2には、プレハブ型接続部において、ヒートサイクル時にケーブルオフセットの挙動に応答して、ケーブル接続箱固定部を支点とするケーブル曲げ応力が働き、ケーブルが径方向に動くことを防止するため、ケーブルクランプによりケーブルの径方向に動きを規制するようにした接続部について記載されている。
【特許文献1】特開2002−135957号公報
【特許文献2】特開2003−18738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負荷変動や年間の気温差によるケーブル導体の熱膨張に伴う伸び出しによる力(軸力)は、大サイズのケーブルになるほど大きくなる。オフセットがケーブル接続部の左右で均等であれば、軸力は接続部の左右で相殺されるが、オフセット形状が接続部の左右で非対称である場合、接続部の左右では軸力差が生じることになり、非対称オフセット部に使用される接続部では、この軸力差に耐える必要がある。
接続部は、銅管等の外装がそれを支持する金物に固定されるため、非対称オフセットにより軸力差が生じると、ケーブル導体と銅管等の外装の間に剪断応力が生じる。特に、金属被をもつ電力ケーブルでは、ケーブルコア部分(ケーブル導体、内部半導電層、絶縁層と外部半導電層)の摩擦力は大きいが、ケーブルコアとケーブルシース間の摩擦力はそれほど大きくないため、接続部の銅管等の外装とケーブルコア部分に加わる剪断応力はさらに大きくなる。
【0005】
軸力の大きさは、ケーブルをオフセットするレイアウトにより決まるが、非対称オフセット部分の軸力差を小さくするためには、大きなオフセットをとらなければならず、土木工事費がかさむという問題がある。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、接続部内において非対称オフセットにより生ずる軸力差を吸収できるようにし、オフセットレイアウトを小さくできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明においては図1のように電力ケーブル接続部内にケーブルコア/シース拘束装置を内蔵させる。
これにより、接続部においてより大きな軸力差を吸収することが可能となり、オフセットの影響を小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、電力ケーブル接続部の外装内部にケーブルコア/シース拘束装置を内蔵させたので、非対称オフセットにより生ずる大きな軸力差を許容することができ、オフセットレイアウトを小さくすることが可能となる。このため、土木工事費を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施例のケーブル接続部の構造を示す図である。
同図に示すように、本実施例においては、ゴムユニット3の両側のケーブルコア9とケーブルシース2の外周にケーブルコア/シース拘束装置10が取りつけられている。なお、上記拘束装置10は片側のみに取り付けても良い。
図2は上記拘束装置10の構成例を示す図である。上記拘束装置10は、例えば同図(a)に示すように、一対の帯状の金属板11を円弧状に曲げてケーブルコア9とケーブルシース2の周囲に取り付け、ボルトとナットなどの固定手段13で締め付けて固定したものである。
上記金属板11は、同図(b)に示すように、ケーブルコア9とケーブルシース2上に複数取り取り付けられ、上記複数の金属板11の間には、同図(a)に示すように帯状の連結板12がはさみつけて固定される。連結板12の長さは、少なくとも上記金属板11からなる拘束装置10のケーブル長手方向の長さと等しく、連結板12により複数枚の金属板11は相互に移動しないように連結される。
【0009】
図3は本実施例のケーブル接続部の組み立て方法を説明する図である。
同図(a)に示すように接続すべき2本の電力ケーブル1の端部を段剥ぎし、導体1a、絶縁体1b、外部半導電層1c、綿テープ1d、金属被1eを露出させる。そして、露出させたケーブル導体を(b)に示すように導体接続管2で接続する。
ついで、(c)に示すように、導体接続管2の周囲にゴムユニット3を組み立て、その上に同図(d)に示すように、遮蔽処理およびテープ巻きし、遮蔽+テープ巻き層4を形成する。
そして、(e)に示すように、ケーブルコア9およびケーブルシース2上に上記ケーブルコア/シース拘束装置10を取り付ける。
ついで(f)に示すように外装(銅管)5およびエポキシ絶縁筒6を組み立てる。外装(銅管)5の内側には防食混和物が充填され、外装(銅管)5の端部はケーブルシース2に半田付けなどで固定される。
そして、最後にビニルカバー8を取り付け、防食テープ層7を設ける。これにより、図1に示したケーブル接続部が製作される。
【0010】
本実施例においては、上記のようにケーブルコア9およびケーブルシース2上に上記ケーブルコア/シース拘束装置10を取り付け、ケーブルコアとケーブルシース間の摩擦力を増大させたので、ケーブルコアと外装(銅管)5等の間に作用する剪断応力を吸収することができる。このため、非対称オフセットにより生ずる軸力差を吸収し、オフセットの影響を小さくすることができる。
したがって、非対称オフセットの影響をそれほど考慮することなくマンホールなどへの接続部の設置が可能となり、オフセットレイアウトを小さくし土木工事費の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の電力ケーブル接続部の構造を示す図である。
【図2】ケーブルコア/シース拘束装置の構成例を示す図である。
【図3】本実施例の電力ケーブル接続部の組み立て方法を示す図である。
【図4】従来の電力ケーブル接続部の組み立て方法を示す図である。
【図5】従来の電力ケーブル接続部の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
1 電力ケーブル
2 ケーブルシース
3 ゴムユニット
4 遮蔽+テープ巻き層
5 外装(銅管)
6 エポキシ絶縁筒
7 防食テープ層
8 ビニルカバー
9 ケーブルコア
10ケーブルコア/シース拘束装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルシースとケーブルコアとを拘束する装置を電力ケーブル接続部外装内部に内蔵させた
ことを特徴とする電力ケーブル接続部。

























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−304413(P2006−304413A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119408(P2005−119408)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】