説明

電力伝達用絶縁回路および電力変換装置

【課題】入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させる。
【解決手段】電力伝達用絶縁回路101は、スイッチ素子Z1およびZ2を含み、スイッチ素子Z1の第1端T1およびスイッチ素子Z2の第1端T3において受けた電力を第1の蓄電素子C1に供給するための入力スイッチ部21と、スイッチ素子Z3およびZ4を含み、第1の蓄電素子C1に蓄えられた電力を第2の蓄電素子C2に供給するための出力スイッチ部22と、第1の電圧検出部10によって検出されたスイッチ素子Z1の第1端およびスイッチ素子Z2の第1端間の電圧と第2の電圧検出部12によって検出された第2の蓄電素子C2の両端電圧との差に基づいて、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出するための制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関し、特に、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の交流電力を用いて電気自動車(EV:Electric Vehicle)およびプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
このようなEV等の主電池への充電を目的とするものではないが、交流電力を直流電力に変換する電源装置用絶縁回路の一例が、たとえば、特許第3595329号公報(特許文献1)に記載されている。すなわち、この電源装置用絶縁回路は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、上記整流回路から供給される直流電流に残存する脈流成分を低減する第1のコンデンサーと、上記第1のコンデンサーから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第1のスイッチ回路と、上記第1のスイッチ回路から供給される電流を蓄積する第2のコンデンサーと、上記第2のコンデンサーから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第2のスイッチ回路と、上記第2のスイッチ回路から供給される電流を保持するとともに負荷側に放出する第3のコンデンサーとを備える。また、ONとなる時間がOFFとなる時間よりも短く設定された方形波によって構成されるコントロール信号φ1、および上記コントロール信号φ1と相補的にONするとともにON時間がOFF時間よりも短く設定されたコントロール信号φ2を生成するゲートコントロール回路を備える。上記コントロール信号φ1により上記第1のスイッチ回路の開閉を行い、上記コントロール信号φ2により上記第2のスイッチ回路の開閉を行なう。このような構成により、大きな容積を占める電源トランスを使用することなく交流電圧を直流電圧に変換し、かつ交流電源側と負荷側とを電気的に絶縁することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3595329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路では、各スイッチ回路におけるスイッチ素子が故障して短絡した場合、入力側および出力側間の絶縁が確保できない可能性がある。しかしながら、特許文献1には、このような問題に対処するための構成は開示されていない。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることが可能な電力伝達用絶縁回路および電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、第1端、および上記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および上記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端間の電圧である入力電圧を検出するための第1の電圧検出部と、上記第2の蓄電素子の両端電圧を検出するための第2の電圧検出部と、上記第1の電圧検出部によって検出された上記入力電圧と上記第2の電圧検出部によって検出された上記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出するための制御部とを備える。
【0008】
このような構成により、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。また、スイッチ素子の両端電圧と比べてレベルの大きい蓄電素子の両端電圧を監視することから、出力電圧検出部において安価なフォトカプラ等を用いることが可能となり、コストを低減することが可能となる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【0009】
また、入力電圧と第2の蓄電素子の両端電圧との差を用いることにより、スイッチ素子の正常時および短絡故障時においてこれらの電圧が時間によってばらつく場合でも、スイッチ素子の故障を高い精度で検出することができる。
【0010】
さらに、電力伝達用絶縁回路のような電気回路では、回路動作を検証する目的等のために、入力電圧の測定部および出力電圧の測定部が設けられていることが多く、これらの測定電圧は一般的に精度が高い。したがって、故障検出用に別途測定部を設けることなく、入力電圧の測定部すなわち第1の電圧検出部、および出力電圧の測定部すなわち第2の電圧検出部をそのまま流用することができるため、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することが可能となる。
【0011】
好ましくは、上記制御部は、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のうちのいずれかを故障検出対象スイッチ素子として選択し、上記故障検出対象スイッチ素子をオフし、上記故障検出対象スイッチ素子が含まれる上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における他方の上記スイッチ素子と、上記故障検出対象スイッチ素子が含まれない上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における各上記スイッチ素子とをオンした状態において、上記第1の電圧検出部によって検出された上記入力電圧と上記第2の電圧検出部によって検出された上記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、上記故障検出対象スイッチ素子の故障を検出する。
【0012】
このような構成により、故障検出対象スイッチ素子の短絡故障を適切に検出することができる。
【0013】
より好ましくは、上記制御部は、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の少なくともいずれか1つをオフした状態における上記入力電圧および上記第2の蓄電素子の両端電圧、または上記入力電圧および上記両端電圧の差を初期値として保存し、上記初期値と、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の少なくともいずれか1つをオフした状態において新たに検出された上記入力電圧および上記第2の蓄電素子の両端電圧の差とを比較し、比較結果に基づいて上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出する。
【0014】
このような構成により、故障判定基準を出力電圧検出部の特性バラツキに応じて調整することが可能となるため、出力電圧検出部の特性バラツキ等によって故障検出精度が劣化することを防ぐことができる。
【0015】
より好ましくは、上記制御部は、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、上記制御部は、上記第4の期間において上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出する。
【0016】
このように、入力電圧と第2の蓄電素子の両端電圧との差が大きくなる第4の期間において故障検出を行なう構成により、スイッチ素子の故障を高い精度で検出することができる。
【0017】
好ましくは、上記電力伝達用絶縁回路は、通常動作モードおよび故障検出モードを有し、上記制御部は、上記通常動作モードにおいて、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、上記制御部は、上記故障検出モードにおいて、上記第1の期間および上記第2の期間を実行し、上記通常動作モードと比べて上記第1の期間および上記第2の期間をそれぞれ長く設定する。
【0018】
このような構成により、蓄電素子を十分に充放電して入力電圧と第2の蓄電素子の両端電圧との差を大きくできるため、電力伝達用絶縁回路における入力スイッチ部および出力スイッチ部のスイッチング周波数が高い場合でも、故障検出精度を高めることができる。
【0019】
好ましくは、上記制御部は、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、上記制御部は、所定のタイミングにおいて上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出することが可能であり、かつ上記電力伝達用絶縁回路の外部からの指令に基づくタイミングにおいて上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出することが可能である。
【0020】
このような構成により、ユーザからの種々の要求に対して柔軟に対応することが可能となる。
【0021】
好ましくは、上記制御部は、自己と上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子との間を絶縁しながら、制御信号を上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子へそれぞれ出力することにより、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御する。
【0022】
このような構成により、第1のスイッチ素子ないし第4のスイッチ素子のスイッチング制御を安定して行なうことができる。
【0023】
より好ましくは、上記制御部は、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の各々に対応して設けられた複数のフォトカプラを含み、対応の上記フォトカプラを介して上記制御信号を上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子へそれぞれ出力する。
【0024】
フォトカプラは、制御信号のデューティ比に関わらず、安定して信号伝達を行なうことが可能であるため、パルストランスを用いる構成と比べて、電力変換装置の入出力電圧の選択における自由度を高めることができる。また、第1の蓄電素子および第2の蓄電素子の充放電時間を長くした故障検出モードを設ける場合でも、パルストランスを用いる構成と比べて、電力伝達用絶縁回路の小型化を図ることができる。
【0025】
好ましくは、上記電力伝達用絶縁回路は、さらに、上記第1のスイッチ素子の第1端と上記第2のスイッチ素子の第1端との間に接続された第3の蓄電素子を備える。
【0026】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路への入力電流のリップルを防ぎ、回路動作の安定化を図ることができる。
【0027】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、受けた交流電力を整流するための整流部と、上記整流部および上記負荷間を絶縁しながら、上記整流部によって整流された電力を上記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、上記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、上記整流部と上記第1の蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子、および上記整流部と上記第1の蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、上記整流部によって整流された電力を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子、および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端間の電圧である入力電圧を検出するための第1の電圧検出部と、上記第2の蓄電素子の両端電圧を検出するための第2の電圧検出部と、上記第1の電圧検出部によって検出された上記入力電圧と上記第2の電圧検出部によって検出された上記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の故障を検出するための制御部とを含む。
【0028】
このような構成により、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。また、スイッチ素子の両端電圧と比べてレベルの大きい蓄電素子の両端電圧を監視することから、出力電圧検出部において安価なフォトカプラ等を用いることが可能となり、コストを低減することが可能となる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、入力電圧と第2の蓄電素子の両端電圧との差を用いることにより、スイッチ素子の正常時および短絡故障時においてこれらの電圧が時間によってばらつく場合でも、スイッチ素子の故障を高い精度で検出することができる。
【0030】
さらに、電力伝達用絶縁回路のような電気回路では、回路動作を検証する目的等のために、入力電圧の測定部および出力電圧の測定部が設けられていることが多く、これらの測定電圧は一般的に精度が高い。したがって、故障検出用に別途測定部を設けることなく、入力電圧の測定部すなわち第1の電圧検出部、および出力電圧の測定部すなわち第2の電圧検出部をそのまま流用することができるため、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における出力電圧検出部の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における各キャパシタの電圧波形を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における制御部の構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における制御部の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0034】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【0035】
図1を参照して、電力変換装置201は、電力伝達用絶縁回路101と、整流部102とを備える。電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC0〜C2と、入力スイッチ部21と、出力スイッチ部22と、出力電圧検出部10,12と、制御部14とを含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1,Z2を含む。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3,Z4を含む。
【0036】
電力変換装置201は、交流電源202から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷203に供給する。負荷203は、たとえば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池である。
【0037】
整流部102は、たとえば、ダイオードブリッジを含み、交流電源202から受けた交流電力を全波整流して電力伝達用絶縁回路101へ出力する。
【0038】
電力伝達用絶縁回路101において、スイッチ素子Z1は、キャパシタC0の第1端T11と電気的に接続された第1端T1、およびキャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第2端T2を有する。スイッチ素子Z2は、キャパシタC0の第2端T12と電気的に接続された第1端T3、およびキャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第2端T4を有する。スイッチ素子Z3は、キャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第1端T5、およびキャパシタC2の第1端T15と電気的に接続された第2端T6を有する。スイッチ素子Z4は、キャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第1端T7、およびキャパシタC2の第2端T16と電気的に接続された第2端T8を有する。
【0039】
キャパシタC0は、整流部102によって整流された電力を蓄える。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1の第1端T1およびスイッチ素子Z2の第1端T3において受けた電力すなわちキャパシタC0に蓄えられた電力をキャパシタC1に供給する。出力スイッチ部22は、キャパシタC1に蓄えられた電力をキャパシタC2に供給する。キャパシタC2に蓄えられた電力は、放電されて負荷203に供給される。
【0040】
制御部14は、ゲート駆動信号G1〜G4をスイッチ素子Z1〜Z4に出力することにより、スイッチ素子Z1〜Z4のオンおよびオフをそれぞれ切り替える。電力伝達用絶縁回路101は、制御部14のスイッチ制御により、整流部102および負荷203間を絶縁しながら、キャパシタC0に蓄えられた電力を負荷203に伝達する。
【0041】
出力電圧検出部10は、スイッチ素子Z1の第1端T1およびスイッチ素子Z2の第1端T3間の電圧V0すなわちキャパシタC0の両端電圧(入力電圧)V0を検出する。出力電圧検出部12は、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する。
【0042】
制御部14は、出力電圧検出部10によって検出されたキャパシタC0の両端電圧V0と出力電圧検出部12によって検出されたキャパシタC2の両端電圧V2との差に基づいて、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出する。
【0043】
図2は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における出力電圧検出部の構成を示す図である。図2では、出力電圧検出部10の構成を代表的に示している。出力電圧検出部12の構成は出力電圧検出部10と同様である。
【0044】
図2を参照して、出力電圧検出部10は、フォトカプラX1と、入力抵抗R1と、出力抵抗R2とを含む。キャパシタC0の第1端T11および第2端T12間に、入力抵抗R1およびフォトカプラX1の発光素子が直列接続されている。電源電圧Vddの供給されるノードと接地電圧の供給されるノードとの間にフォトカプラX1の受光素子および出力抵抗R2が直列接続されている。
【0045】
キャパシタC0の両端電圧に応じた量の電流がフォトカプラX1の発光素子を通して流れ、この電流量がフォトカプラX1の受光素子に伝達される。すなわち、キャパシタC0の両端電圧に応じた量の電流がフォトカプラX1における受光素子を通して流れる。これにより、キャパシタC0の両端電圧に応じた大きさの電圧が制御部14へ伝達される。
【0046】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路が電力伝達および故障検出を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【0048】
図3を参照して、まず、制御部14は、期間T1において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオフし、スイッチ素子Z4をオフする。これにより、キャパシタC0に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC1に蓄えられる。スイッチ素子Z3およびZ4がオフされていることにより、整流部102および負荷203間の絶縁が確保される。
【0049】
次に、制御部14は、期間T2において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。すなわち、入力スイッチ部21における各スイッチおよび出力スイッチ部22における各スイッチを介して電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間、すなわち整流部102および負荷203間が短絡することを防ぐことができる。
【0050】
次に、制御部14は、期間T3において、スイッチ素子Z1をオフし、スイッチ素子Z2をオフし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。これにより、キャパシタC1に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC2に蓄えられる。スイッチ素子Z1およびZ2がオフされていることにより、整流部102および負荷203間の絶縁が確保される。
【0051】
次に、制御部14は、期間T4において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、期間T2と同様に、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。
【0052】
ここで、期間T1〜T4において、キャパシタC1は整流部102からの電力により充電されており、また、キャパシタC2に蓄えられた電力は放電されて負荷203に供給されている。また、期間T2およびT4においては、キャパシタC1における電荷の移動はない。
【0053】
そして、制御部14は、これら期間T1、期間T2、期間T3および期間T4をこの順番で繰り返すことにより、整流部102と協働して、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間を絶縁しながら、交流電源202からの交流電力を直流電力に変換して負荷203に供給する。
【0054】
さらに、制御部14は、スイッチ素子Z1〜Z4の故障をそれぞれ検出するための故障検出期間TE1〜TE4を設ける。故障検出期間TE1〜TE4は、期間T1〜T4の各期間の間に設けられてもよいし、期間T1〜T4の中で設けられてもよい。
【0055】
具体的には、制御部14は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のうちのいずれかを故障検出対象スイッチ素子として選択する。制御部14は、故障検出対象スイッチ素子をオフする。そして、制御部14は、故障検出対象スイッチ素子が含まれる入力スイッチ部21または出力スイッチ部22における他方のスイッチ素子と、故障検出対象スイッチ素子が含まれない入力スイッチ部21または出力スイッチ部22における各スイッチ素子とをオンする。
【0056】
この状態において、制御部14は、キャパシタC0の両端電圧V0とキャパシタC2の両端電圧V2との差に基づいて故障検出対象スイッチ素子の故障を検出する。
【0057】
より詳細には、制御部14は、期間TE1において、スイッチ素子Z1をオフし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。そして、制御部14は、この状態における電圧V0と電圧V2との差に基づいてスイッチ素子Z1の故障を検出する。具体的には、スイッチ素子Z1が正常である場合には、電圧V0が電圧V2よりも大きくなる。これは、期間TE1においては、キャパシタC0は整流部102からの電力によって充電される一方で、キャパシタC2はキャパシタC0に蓄えられた電荷によっては充電されず、キャパシタC2に蓄えられた電荷は負荷203へ放電されるからである。一方、スイッチ素子Z1が故障して短絡している場合には、短絡状態のスイッチ素子Z1およびオン状態のスイッチ素子Z2〜Z4により、電圧V0および電圧V2は等しくなる。制御部14は、電圧V0および電圧V2の電圧差の相違に基づき、スイッチ素子Z1の故障検出を行なう。
【0058】
また、制御部14は、期間TE2において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオフし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。そして、制御部14は、この状態における電圧V0と電圧V2との差に基づいてスイッチ素子Z2の故障を検出する。具体的には、スイッチ素子Z2が正常である場合には、電圧V0が電圧V2よりも大きくなる。これは、期間TE2においては、キャパシタC0は整流部102からの電力によって充電される一方で、キャパシタC2はキャパシタC0に蓄えられた電荷によっては充電されず、キャパシタC2に蓄えられた電荷は負荷203へ放電されるからである。一方、スイッチ素子Z2が故障して短絡している場合には、短絡状態のスイッチ素子Z2およびオン状態のスイッチ素子Z1,Z3,Z4により、電圧V0および電圧V2は等しくなる。制御部14は、電圧V0および電圧V2の電圧差の相違に基づき、スイッチ素子Z2の故障検出を行なう。
【0059】
また、制御部14は、期間TE3において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオフし、スイッチ素子Z4をオンする。そして、制御部14は、この状態における電圧V0と電圧V2との差に基づいてスイッチ素子Z3の故障を検出する。具体的には、スイッチ素子Z3が正常である場合には、電圧V0が電圧V2よりも大きくなる。これは、期間TE3においては、キャパシタC0は整流部102からの電力によって充電される一方で、キャパシタC2はキャパシタC0に蓄えられた電荷によっては充電されず、キャパシタC2に蓄えられた電荷は負荷203へ放電されるからである。一方、スイッチ素子Z3が故障して短絡している場合には、短絡状態のスイッチ素子Z3およびオン状態のスイッチ素子Z1,Z2,Z4により、電圧V0および電圧V2は等しくなる。制御部14は、電圧V0および電圧V2の電圧差の相違に基づき、スイッチ素子Z3の故障検出を行なう。
【0060】
また、制御部14は、期間TE4において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオフする。そして、制御部14は、この状態における電圧V0と電圧V2との差に基づいてスイッチ素子Z4の故障を検出する。具体的には、スイッチ素子Z4が正常である場合には、電圧V0が電圧V2よりも大きくなる。これは、期間TE4においては、キャパシタC0は整流部102からの電力によって充電される一方で、キャパシタC2はキャパシタC0に蓄えられた電荷によっては充電されず、キャパシタC2に蓄えられた電荷は負荷203へ放電されるからである。一方、スイッチ素子Z4が故障して短絡している場合には、短絡状態のスイッチ素子Z4およびオン状態のスイッチ素子Z1〜Z3により、電圧V0および電圧V2は等しくなる。制御部14は、電圧V0および電圧V2の電圧差の相違に基づき、スイッチ素子Z4の故障検出を行なう。
【0061】
なお、電力伝達用絶縁回路101では、期間TE1〜TE4において、故障検出対象スイッチ素子が短絡故障していた場合には、入力側および出力側間が短絡することになる。このため、期間TE1〜TE4においては、電力伝達用絶縁回路101と負荷203とを電気的に切り離す構成であってもよい。ただし、電力伝達用絶縁回路101において何らかの保護回路を設けることにより、電力伝達用絶縁回路101と負荷203とを電気的に切り離す必要性は低くなる。
【0062】
図4は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における各キャパシタの電圧波形を概略的に示す図である。
【0063】
図4を参照して、期間T4においては、他の期間と比べて電圧V0および電圧V2の差が大きくなる。このため、制御部14は、期間TE1〜TE4をたとえば期間T4において設ける。このような構成により、スイッチ素子Z1〜Z4の故障を高い精度で検出することができる。
【0064】
ここで、期間T4の終了間際、すなわち期間T4の終了タイミングの所定時間前から期間T3の終了タイミングまでにおけるタイミングTAにおいて、電圧V0が上昇方向、電圧V2が下降方向をとっており、電圧V0および電圧V2の差が最大となる。このため、制御部14は、期間TE1〜TE4をたとえばタイミングTAにおいて設ける。このような構成により、スイッチ素子Z1〜Z4の故障をさらに高い精度で検出することができる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、出力電圧検出部10,12において、コスト低減のためフォトカプラを使用している。一般的に、フォトカプラは特性のばらつきが大きい。そして、電圧V0および電圧V2の電圧差はそれほど大きくならないことから、フォトカプラの特性バラツキによって故障検出精度が劣化する可能性がある。
【0066】
そこで、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、制御部14は、各スイッチ素子が正常な状態における電圧V0および電圧V2をあらかじめ測定し、たとえばこれらの電圧値を初期値として保存しておく。
【0067】
具体的には、期間TE1〜TE4において、保存している電圧V0と電圧V2との差をスイッチ素子Z1〜Z4が故障していない正常状態の初期値として扱い、この初期値と新たに測定した電圧V0と電圧V2との差とを比較し、比較結果に基づいて故障スイッチ素子Z1〜Z4の故障検出を行なう。すなわち、制御部14は、スイッチ素子Z1〜Z4の少なくともいずれか1つをオフした状態におけるキャパシタC0の両端電圧およびキャパシタC2の両端電圧、または各両端電圧の差を初期値として保存する。そして、制御部14は、この初期値と、スイッチ素子Z1〜Z4の少なくともいずれか1つをオフした状態において新たに検出されたキャパシタC0の両端電圧およびキャパシタC2の両端電圧の差とを比較し、比較結果に基づいてスイッチ素子Z1〜Z4の故障を検出する。たとえば、制御部14は、キャパシタC0の両端電圧およびキャパシタC2の両端電圧の差が初期値からプラスマイナス数ミリボルトの範囲内にあればスイッチ素子Z1〜Z4は正常であると判定し、当該範囲外にあればスイッチ素子Z1〜Z4は異常であると判定する。
【0068】
なお、2つのキャパシタの両端電圧をそれぞれ初期値として保存する場合には、故障検出時に、これらの初期値の差を算出し、算出した差と、新たに検出された2つのキャパシタの両端電圧の差とを比較すればよい。
【0069】
このような構成により、故障判定基準をフォトカプラの特性バラツキに応じて調整することが可能となるため、フォトカプラの特性バラツキ等によって故障検出精度が劣化することを防ぐことができる。
【0070】
また、スイッチ素子の故障検出処理は、前述のように期間T1〜T4を繰り返す通常動作モードにおいて行ってもよいが、キャパシタの充放電時間すなわち期間T1または期間T3の期間を長くした故障検出モードを設け、この故障検出モードにおいて故障検出処理を行ってもよい。すなわち、制御部14は、故障検出モードにおいて、通常動作モードと比べて期間T1および期間T3をそれぞれ長く設定し、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出するための期間TE1〜TE4を期間T1〜期間T4の各期間の間、および期間T1〜期間T4の中の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて設ける。
【0071】
これにより、測定対象となる2つのキャパシタを十分に充放電してこれらの両端電圧の差を大きくできるため、電力伝達用絶縁回路101における入力スイッチ部21および出力スイッチ部22のスイッチング周波数が高い場合でも、故障検出精度を高めることができる。
【0072】
また、上記故障検出モードは、通常動作モードの途中に制御部14が自動的に実行してもよいし、ユーザによる任意のタイミングで実行されてもよい。すなわち、制御部14は、期間T1〜期間T4の各期間の間、期間T1〜期間T4の中の少なくともいずれか1つにおける所定のタイミングにおいてスイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出することが可能である。また、制御部14は、電力伝達用絶縁回路101の外部からの指令タイミングを受け付け、当該指令タイミングにおいてスイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出することが可能である。
【0073】
このような構成により、ユーザからの種々の要求に対して柔軟に対応することが可能となる。
【0074】
ここで、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4の各々の基準電位が異なることから、制御部14から共通の電位の制御信号を供給すると、各スイッチ素子が所望の動作を行なわなくなる場合がある。このような問題は、比較的大きい電力を入出力する電力変換装置、たとえばEVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池を充電する電力変換装置において、特に解決されることが好ましい。
【0075】
そこで、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14とスイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4との間を電気的に絶縁しながら、制御信号の伝達を行なう。すなわち、制御部14は、自己とスイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4との間を絶縁しながら、制御信号をスイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4へそれぞれ出力することにより、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4のスイッチングを制御する。
【0076】
このような構成により、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4のスイッチング制御を安定して行なうことができる。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における制御部の構成の一例を示す図である。
【0078】
図5を参照して、制御部14は、信号源31と、パルストランス32とを含む。制御部14において、信号源31およびパルストランス32は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4に対応してたとえば4組設けられる。以下、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4の各々をスイッチ素子Zと称する場合がある。また、スイッチ素子ZはたとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0079】
制御部14は、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4の各々に対応して設けられた複数のパルストランス32を含み、対応のパルストランス32を介して制御信号をスイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4へそれぞれ出力する。
【0080】
制御部14において、信号源31は、スイッチ素子Zへ出力するための制御信号を生成し、パルストランス32へ出力する。
【0081】
パルストランス32は、信号源31およびスイッチ素子Z間を絶縁しながら、信号源31から受けた制御信号をゲート抵抗R経由でスイッチ素子Zのゲートへ伝達する。
【0082】
ここで、信号源31およびパルストランス32間、ならびにパルストランス32およびスイッチ素子Z間には、たとえば図示しない信号変換回路が設けられる。
【0083】
このように、電力伝達用絶縁回路101では、制御信号の絶縁伝達手段としてパルストランスを用いることが可能である。しかしながら、前述のようにキャパシタの充放電時間すなわち期間T1または期間T3の期間を長くした故障検出モードを設ける場合には、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチング周波数が低くなるため、パルストランスを用いることは好ましくない。
【0084】
これは、パルストランスを低い周波数において使用する場合には、大きなインダクタンスが必要となり、その結果パルストランスのターン数が増大し、体積が大きくなってしまうからである。
【0085】
また、パルストランスでは、制御信号のデューティ比が50%から離れるほど、1次側および2次側の磁束のバランスが悪くなり、コアが飽和してしまう場合がある。このため、パルストランス自体の設計が困難となり、また、電力変換装置201の入出力電圧の選択に制限が生じてしまう場合がある。
【0086】
図6は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における制御部の構成の一例を示す図である。
【0087】
図6を参照して、制御部14は、信号源31と、フォトカプラ33とを含む。制御部14において、信号源31およびフォトカプラ33は、たとえばスイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4に対応して4組設けられる。
【0088】
制御部14は、スイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4の各々に対応して設けられた複数のフォトカプラ33を含み、対応のフォトカプラ33を介して制御信号をスイッチ素子Z1,Z2,Z3,Z4へそれぞれ出力する。
【0089】
制御部14において、信号源31は、スイッチ素子Zへ出力するための制御信号を生成し、フォトカプラ33へ出力する。
【0090】
フォトカプラ33は、信号源31およびスイッチ素子Z間を絶縁しながら、信号源31から受けた制御信号をゲート抵抗R経由でスイッチ素子Zのゲートへ伝達する。
【0091】
より詳細には、信号源31から出力された制御信号に応じた量の電流がフォトカプラ33の発光素子を通して流れ、この電流量がフォトカプラ33の受光素子に伝達される。すなわち、信号源31から出力された制御信号に応じた量の電流がフォトカプラ33における受光素子を通して流れる。これにより、信号源31およびスイッチ素子Z間を絶縁しながら、制御信号のレベルに応じた大きさの電圧がスイッチ素子Zのゲートへ伝達される。
【0092】
また、信号源31およびフォトカプラ33間、ならびにフォトカプラ33およびスイッチ素子Z間には、たとえば図示しない信号変換回路が設けられる。
【0093】
ここで、フォトカプラは、幅広い周波数の信号を伝達可能であり、パルストランスと異なり、低い周波数の信号に対しても体積が大きくなる等のデメリットがない。したがって、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、フォトカプラを用いて制御信号を伝達する構成により、キャパシタの充放電時間を長くした故障検出モードを設ける場合でも、パルストランスを用いる構成と比べて、電力伝達用絶縁回路101の小型化を図ることができる。
【0094】
また、フォトカプラは、制御信号のデューティ比に関わらず、安定して信号伝達を行なうことが可能であるため、電力変換装置201の入出力電圧の選択における自由度を高めることができる。
【0095】
ところで、特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路は、各スイッチ回路におけるスイッチ素子が故障して短絡した場合において、入力側および出力側間の絶縁が確保できないという問題に対処するための構成を備えていない。
【0096】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、出力電圧検出部10によって検出されたキャパシタC0の両端電圧V0と出力電圧検出部12によって検出されたキャパシタC2の両端電圧V2との差に基づいて、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の故障を検出する。
【0097】
このような構成により、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。
【0098】
ここで、スイッチ素子Z1〜Z4の故障を検出する構成としては、各スイッチ素子の両端電圧を監視する構成が考えられる。しかしながら、通常、スイッチ素子Z1〜Z4の両端電圧はレベルが小さく、フォトリレー等の高価な部品を用いる必要があり、コストが増大してしまう。
【0099】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、スイッチ素子の両端電圧と比べてレベルの大きいキャパシタの両端電圧を監視する構成である。このため、出力電圧検出部10,12において安価なフォトカプラを用いることが可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0100】
したがって、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【0101】
また、入力電圧と第2の蓄電素子の両端電圧との差を用いることにより、スイッチ素子の正常時および短絡故障時においてこれらの電圧が時間によってばらつく場合でも、スイッチ素子の故障を高い精度で検出することができる。
【0102】
さらに、電力伝達用絶縁回路101のような電気回路では、回路動作を検証する目的等のために、入力電圧の測定部および出力電圧の測定部が設けられていることが多く、これらの測定電圧は一般的に精度が高い。本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、故障検出用に別途測定部を設けることなく、入力電圧の測定部すなわち出力電圧検出部10、および出力電圧の測定部すなわち出力電圧検出部12をそのまま流用することができるため、低コストな構成でスイッチ素子の故障を検出することが可能となる。
【0103】
また、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のうちのいずれかを故障検出対象スイッチ素子として選択する。制御部14は、故障検出対象スイッチ素子をオフする。そして、制御部14は、故障検出対象スイッチ素子が含まれる入力スイッチ部21または出力スイッチ部22における他方のスイッチ素子と、故障検出対象スイッチ素子が含まれない入力スイッチ部21または出力スイッチ部22における各スイッチ素子とをオンする。そして、制御部14は、この状態において検出したキャパシタの両端電圧に基づいて故障検出対象スイッチ素子の故障を検出する。このような構成により、故障検出対象スイッチ素子の短絡故障を適切に検出することができる。
【0104】
また、キャパシタC0により、整流部102によって整流された電力が平滑化されるが、整流部102によって整流された電力を平滑化するためのキャパシタが整流部102に設けられる場合には、電力伝達用絶縁回路101においてキャパシタC0を設けない構成が可能となる。ただし、キャパシタC0を設けることにより、電力伝達用絶縁回路101への入力電流のリップルを防ぎ、回路動作の安定化を図るという効果が得られる。
【0105】
また、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路は、キャパシタC0〜C2を備える構成であるとしたが、キャパシタに限らず、コイル(インダクタ)等の他の蓄電素子を備える構成であってもよい。
【0106】
また、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、期間T1〜T4を繰り返す構成であるとしたが、これに限定するものではない。期間T2およびT4は理想的には設ける必要はなく、制御部14が期間T1およびT3を順番に繰り返す構成であればよい。
【0107】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
10,12 出力電圧検出部
14 制御部
21 入力スイッチ部
22 出力スイッチ部
31 信号源
32 パルストランス
33 フォトカプラ
101 電力伝達用絶縁回路
102 整流部
201 電力変換装置
202 交流電源
203 負荷
C0〜C2 キャパシタ
X1 フォトカプラ
R ゲート抵抗
R1 入力抵抗
R2 出力抵抗
Z1,Z2,Z3,Z4 スイッチ素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
第1端、および前記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および前記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端間の電圧である入力電圧を検出するための第1の電圧検出部と、
前記第2の蓄電素子の両端電圧を検出するための第2の電圧検出部と、
前記第1の電圧検出部によって検出された前記入力電圧と前記第2の電圧検出部によって検出された前記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出するための制御部とを備える、電力伝達用絶縁回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のうちのいずれかを故障検出対象スイッチ素子として選択し、前記故障検出対象スイッチ素子をオフし、前記故障検出対象スイッチ素子が含まれる前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における他方の前記スイッチ素子と、前記故障検出対象スイッチ素子が含まれない前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における各前記スイッチ素子とをオンした状態において、前記第1の電圧検出部によって検出された前記入力電圧と前記第2の電圧検出部によって検出された前記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、前記故障検出対象スイッチ素子の故障を検出する、請求項1に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の少なくともいずれか1つをオフした状態における前記入力電圧および前記第2の蓄電素子の両端電圧、または前記入力電圧および前記両端電圧の差を初期値として保存し、前記初期値と、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の少なくともいずれか1つをオフした状態において新たに検出された前記入力電圧および前記第2の蓄電素子の両端電圧の差とを比較し、比較結果に基づいて前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出する、請求項1または2に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、
前記制御部は、前記第4の期間において前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項5】
前記電力伝達用絶縁回路は、通常動作モードおよび故障検出モードを有し、
前記制御部は、前記通常動作モードにおいて、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、
前記制御部は、前記故障検出モードにおいて、前記第1の期間および前記第2の期間を実行し、前記通常動作モードと比べて前記第1の期間および前記第2の期間をそれぞれ長く設定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項6】
前記制御部は、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、
前記制御部は、所定のタイミングにおいて前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出することが可能であり、かつ前記電力伝達用絶縁回路の外部からの指令に基づくタイミングにおいて前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出することが可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項7】
前記制御部は、自己と前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子との間を絶縁しながら、制御信号を前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子へそれぞれ出力することにより、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御する、請求項1から6のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の各々に対応して設けられた複数のフォトカプラを含み、対応の前記フォトカプラを介して前記制御信号を前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子へそれぞれ出力する、請求項7に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項9】
前記電力伝達用絶縁回路は、さらに、
前記第1のスイッチ素子の第1端と前記第2のスイッチ素子の第1端との間に接続された第3の蓄電素子を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項10】
交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、
受けた交流電力を整流するための整流部と、
前記整流部および前記負荷間を絶縁しながら、前記整流部によって整流された電力を前記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
前記整流部と前記第1の蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子、および前記整流部と前記第1の蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、前記整流部によって整流された電力を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子、および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端間の電圧である入力電圧を検出するための第1の電圧検出部と、
前記第2の蓄電素子の両端電圧を検出するための第2の電圧検出部と、
前記第1の電圧検出部によって検出された前記入力電圧と前記第2の電圧検出部によって検出された前記第2の蓄電素子の両端電圧との差に基づいて、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の故障を検出するための制御部とを含む、電力変換装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19670(P2012−19670A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166105(P2010−166105)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】