説明

電力供給パネル及びその接合方法

【課題】複数の電力供給パネルを並設後に容易かつ迅速に接合することができる、電力供給パネルの接合方法を提供すること。
【解決手段】複数の導電板11、12と絶縁層13とを備えて構成された電力供給パネル10であって、同一面内に並設される複数の電力供給パネル10を、相互に隣接するパネル端部において相互に接合するための接合方法であって、複数の電力供給パネル10を設置面上に並設する。次いで、導電板11を作業空間部5に対して露出させるように、かつ、導電板11が突出するように、接合スペース6を形成する。その後、導電板11同士を作業空間部5側から接合し、導電板12同士を連結用部材15を介して作業空間部5側から接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力を供給するための複数の電力供給パネルを相互に接合するための接合方法と、この方法にて接合された電力供給パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般住宅やオフィス等の各種の空間に対して電力や通信信号を供給するための様々な供給構造が提案されている。一般的には、配電盤から床下や壁面内部にケーブルを敷設すると共に、このケーブルの端部を室内近傍に引出していた。そして、この端部に電源コネクタや信号端子を接続し、これら電源コネクタや信号端子に電気機器を接続することによって、電力や通信信号を供給していた。しかしながら、近年のOA機器を中心とする電気機器の多様化に伴い、空間内の様々な位置で電力や通信信号を使用したいとのニーズが高まっており、より自由度の高い電力や通信信号の供給構造が要望されている。
【0003】
このような自由度の高い供給構造の一形態として、従来から、いわゆるフラットケーブルを用いた構造が提案されている。このフラットケーブルは、一対の平線型の導体を複数本並べた状態で被覆して構成されている。このフラットケーブルは一般的なケーブルに比べて薄厚であり、このフラットケーブルを床上面に敷設してカーペット等にて覆うことでその存在感をほぼ消すことができるため、このフラットケーブルの敷設経路の自由度を高めることができる。
【0004】
また、特許文献1には、板状の導体を用いた電力用配線構造が開示されている。この構造は、第1の導体及び第2の導体にて絶縁膜を介して第3の導体を挟むことによって層状に構成されている。第1から第3の導体はそれぞれ細幅の板状に形成されており、このような構造を用いることで、平坦状の電力供給構造を構築することができる。
【0005】
しかしながら、このような従来の電力や通信信号の供給構造は、平坦化を図ることで敷設経路の自由度を高めることが可能になる一方で、細幅の導体を用いていたことから、依然として一部の領域に対してしか電力や通信信号を供給することができなかった。例えば、広範な室内の多数の位置で電力や通信信号を使用する可能性がある場合、フラットケーブルや特許文献1の電力用配線構造を用いる場合にはこれらを多数本敷設しなければならず、その敷設や接続に多大な手間を要する等、実用性に欠けていた。また、特許文献1の如き電力供給構造においては、導体が表面側に露出していて利用者に触れる可能性があるため、電力供給構造における最も基本的な目標である利用者の安全確保が、阻害される危険性があった。
【0006】
このような点に鑑みて、本願発明者等は、新規な電力供給パネルを提案した(例えば特許文献2。ただし本願出願時において未公開)。この電力供給パネルは、複数の導電板と当該複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを相互に重畳状に配置して構成されている。このような電力供給パネルを複数並設することで、広範な範囲で電力供給環境及び通信環境を構築できると共に、ユーザ側に露出する導電板をGND極とすることで安全性の確保を図ることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−151367号公報
【特許文献2】特願2007−126982号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2で提案された電力供給パネルを設置面に敷設する場合には、1枚の電力供給パネルを畳みのように規格寸法にて形成し、設置面の面積に応じて枚数の電力供給パネルを並設することが合理的である。このように複数の電力供給パネルを並設する場合には、これら複数の電力供給パネルを相互に接合することで、送電経路や通信経路を確保する必要があるが、この電力供給パネル自体が新規なものであり、この接合方法について有効なものは未だ提案されていない。
【0009】
特に、設置作業性の観点からすれば、設置面に複数の電力供給パネルを並設した後で、これら複数の電力供給パネルを相互に接合することが好ましいが、各電力供給パネルには複数の導電板が設けられており、これら導電板を並設後に接合することは困難である。
【0010】
この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、複数の電力供給パネルを並設後に容易かつ迅速に接合することができる、電力供給パネルの接合方法と、この方法にて接合された電力供給パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、複数の導電板と当該複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを備えて構成された電力供給パネルを同一の設置面上に複数並設し、当該複数の電力供給パネルを相互に隣接するパネル端部において相互に接合するための接合方法であって、前記複数の電力供給パネルを、前記設置面上に並設する並設工程と、前記並設工程の前又は後において、前記設置面に面する第1の前記導電板の接合側の端部を前記電力供給パネルに対して前記設置面と反対側に位置する作業空間部に露出させるように、当該第1の導電板における接合側の端部に対して当該第1の導電板以外の前記導電板及び前記絶縁層の接合側の端部を後退させることにより、前記相互に隣接する前記パネル端部の相互間に接合スペースを形成する形成工程と、前記並設工程及び前記形成工程の後において、前記相互に隣接する前記パネル端部の前記第1の導電板同士を、前記作業空間部側から前記接合スペース内で相互に接合する第1接合工程と、前記第1接合工程の後において、前記第1の導電板以外の前記導電板であって、前記複数の電力供給パネルの前記パネル端部において相互に隣接する前記導電板同士を、導電性連結手段を介して前記作業空間部側から相互に接合する第2接合工程とを備える。
【0012】
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記第2接合工程において、前記第1接合工程において接合された前記第1の導電板における前記作業空間部側の面に、前記パネル端部において隣接する前記絶縁層の相互間に介在させる絶縁性連結手段を、前記作業空間部側から配置した後、前記絶縁性連結手段における前記作業空間部側の面に、前記導電性連結手段を配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明は、請求項2に係る本発明において、前記形成工程において、前記接合スペースを、前記第1の導電板から前記作業空間部に至るに伴って幅広状となるように形成し、前記第2接合工程において、前記接合スペースに対応する幅で形成された前記絶縁性連結手段を、幅の狭い方を先頭として前記絶縁層の相互間に挿入することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る本発明は、請求項2又は3に係る本発明において、前記第2接合工程において、相互に一体に形成された前記絶縁性連結手段及び前記絶縁性連結手段を、前記絶縁性連結手段を先頭として前記絶縁層又は前記導電板の相互間に挿入することを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る本発明は、請求項1から4のいずれか一項に係る本発明において、前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、前記導電性連結手段としての接合用導電板を、接合対象になる前記導電板の相互間において、これら導電板に対して突き合せ状に配置し、これら導電板と接合用導電板との相互間の接合部に前記作業空間部側から回転体を圧接させることで、これら導電板と接合用導電板とを相互に摩擦攪拌接合することを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る本発明は、請求項1から4のいずれか一項に係る本発明において、前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、前記導電性連結手段としての接合用導電板であって、その一方の面にインサート材を付けた接合用導電板を、接合対象になる前記導電板に前記作業空間部側から跨るように、かつ、前記インサート材を付けた側の面が当該導電板に接するように配置し、前記インサート材に前記作業空間部側から回転体を圧接させることで、当該回転体と前記接合用導電板との摩擦熱によって前記インサート材を前記導電板に拡散させて、前記導電板同士を接合することを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る本発明は、請求項1から4のいずれか一項に係る本発明において、前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、前記導電性連結手段としての金属板であって、前記作業空間部側の面を開口部とする中空状の複数の突起を有する金属板を、接合対象になる前記導電板の相互間に前記作業空間部側から跨るように、かつ、前記突起と略同一平面形状の貫通孔であって当該導電板に形成した貫通孔に前記突起が挿入されるように配置し、前記突起の側辺の内面に前記作業空間部側から回転体を圧接させて当該突起の側辺を拡張させることで、当該突起の平面形状を前記貫通孔の平面形状よりも拡大して、前記導電板同士を接合することを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る本発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力供給パネルの接合方法にて接合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る本発明によれば、作業空間部側から接合作業を行うことができるので、設置面側から電力供給パネルに対して作業を行う必要がなくなり、電力供給パネルの並設後に接合作業を行うことができる。従って、広範な領域に電力供給パネルを敷設する場合であっても、多数の電力供給パネルの敷設のみをまず連続的に行い、その後に、電力供給パネルの上方から接合作業を行うことで、接合作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。
【0020】
請求項2に係る本発明によれば、絶縁層の相互間に介在させる絶縁性連結手段を配置し、この絶縁性連結手段における作業空間部側の面に導電性連結手段を配置することで、絶縁性連結手段と導電性連結手段とを順次積み重ねて積層化でき、接合部においても当該接合部以外の電力供給パネルと同様の構造を構築でき、接合部の導通性や絶縁性を確保できて、接合部を電力供給経路や通信経路の一部として利用することができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によれば、接合スペースに対応する幅で形成された絶縁性連結手段を、幅の狭い方を先頭として絶縁層の相互間に挿入することで、絶縁性連結手段を接合スペースに挿入する作業が極めて容易になり、接合の作業性を向上させることができる。
【0022】
請求項4に係る本発明によれば、相互に一体に形成された絶縁性連結手段及び絶縁性連結手段を絶縁層又は導電板の相互間に挿入することで、これら絶縁性連結手段及び絶縁性連結手段を個別的に配置する場合に比べて、挿入作業が一層容易になり、接合の作業性を向上させることができる。
【0023】
請求項5に係る本発明によれば、摩擦攪拌接合にて接合部を接合するので、接合部の金属組織を強加工でき、優れた機械的特性を得ることができる。また、凹凸がない平滑な接合面を得ることができるので、導電板を通信路として用いた場合であっても、接合部を要因とするインピーダンス不整合を低減することができる。
【0024】
請求項6に係る本発明によれば、インサート材を熱拡散させることで接合部を接合するので、酸素を遮断して接合を行うことができるので、アルミニウムのように酸化皮膜が障害になって溶接が困難な材料にて導電板を形成した場合であっても、容易に接合を行うことができる。
【0025】
請求項7に係る本発明によれば、金属板の突起を拡張させることで接合部を接合するので、導電板が塑性流動や熱拡散による接合に不向きな場合であっても、導電板を確実に接合することができる。
【0026】
請求項8に係る本発明によれば、上述の如き各種の方法にて接合された電力供給パネルを得ることができる。特に、請求項5に係る本発明にて接合された電力供給パネルは、優れた機械的特性を有すると共に、凹凸がない平滑な接合面を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る電力供給パネルの接合方法は、一般住宅やオフィス等の任意空間において電力や通信環境を提供するために設置される複数の電力供給パネルを相互に接合するものである。この空間は、室内に限定されず室外であってもよく、また建屋に限定されずに電車や飛行機の如き乗り物の内部空間を含む。以下では、電力又は通信信号の供給対象になる3次元空間を「給電対象空間部」と称すると共に、この給電対象空間部を区画する各平面のうち、電力や通信信号を供給するための平面を「給電対象平面」、それ以外の平面を「給電通信非対象平面」と称する。給電対象平面は、例えば、給電対象空間部を区画する床の全領域や、あるいはこれら領域のうちの一部(例えば、床面のうち、四周の周縁部のみを除外した中央領域)である。
【0029】
電力供給パネルは、概略的には、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成されている。ここで、導電板とは、従来のような細幅の導体以外にも、広幅のパネル体として形成してもよく、広範な面積をカバーする。このことにより、広範な給電対象平面において容易に電力供給や通信を行なうことができる。特に、給電対象平面の全てを1枚の電力供給パネルで覆うのではなく、複数の電力供給パネルを並設することで、給電対象平面をカバーする。この電力供給パネルは、任意の平面形状で形成可能であるが、以下では方形状とした例について説明する。なお、電力供給パネルから通信機能を除外して電力供給のみを行うように構成することもできる。
【0030】
このような構成において、各実施の形態の基本的特徴の一つは、電力供給パネルを設置面に並設した後、作業空間部側から接合作業を可能としている点にある。設置面とは、電力供給パネルを支持する任意の支持構造体であり、例えば床面が該当する。作業空間部は、電力供給パネルを挟んで設置面と反対側に位置する空間部であり、上述した給電対象空間部と重複する。このように作業空間部側から接合作業を可能とするため、概念的には、設置面に面する導電板同士を最初に接合し、その他の導電板同士又は絶縁層同士を、設置面に近い方から順次接合する。このことにより、設置面からの接合作業を行う必要がなくなるため、電力供給パネルを設置面に並設した後で接合作業を行うことができ、接合作業を簡易かつ迅速に行うことができる。なお、導電板同士を接合するための具体的な方法は、以下の各実施の形態で示す方法以外にも任意の方法を採用でき、導電板同士を導通可能に接続できる限りにおいて、公知の方法を採用することができる。ここで、導通可能とは、相互に接合された導電板の相互間における通電が可能になることを意味し、導電板単体での導電性と同等の導電性を持たせる他、導電板単体での導電性より劣る導電性であっても電力供給や通信に支障ない範囲での導電性を持たせることを含む。
【0031】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、各実施の形態に係る電力供給パネルの接合方法の具体的内容について説明する。
【0032】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この形態は、導電板同士を摩擦攪拌接合する形態である。
【0033】
(電力供給パネルの構成)
図1は給電通信システムを適用した居室の斜視図、図2は図1の要部平面図、図3は図2の要部縦断面図である。これら各図に示すように、給電通信システムは、給電対象空間部である居室1における床部2の上面に、縦断面が相互に同一である複数の電力供給パネル10を並設して構成されている。
【0034】
床部2は、電力供給パネル10を支持する支持体であり、例えば鉄筋コンクリート造の床スラブとして構成されており、その上面を平滑状の水平面とした面構造体である。この床部2の上面の略全面には絶縁シート3が敷設されており、この絶縁シート3によって、床部2と電力供給パネル10とが相互に絶縁されている。この絶縁シート3の上面は、特許請求の範囲における設置面に対応する。また、電力供給パネル10の上面には、フロアタイルやタイルカーペット等の仕上げ材4が敷設されており、電力供給パネル10が居室1に直接的には露出しないようにカバーされている。このように構成される平面方形状の床部2のうち、本実施の形態1では、図2に示すように、後述する床構成パネル7が配置されている一部の領域のみを給電通信非対象平面としており、その他の部分を給電対象平面としている。
【0035】
給電対象平面においては、複数の電力供給パネル10を並設することでその上面に連続する平坦な床面が形成されており、床面に任意の通信機器(例えば、コンピュータやロボット)を配置することができる。各電力供給パネル10は、絶縁シート3の上面に敷設されており、隣接する他の電力供給パネル10と、後述する接合方法によって相互に接合されている。一方、給電通信非対象平面においては、床部2を単に露出状としてもよいが、ここでは図1、2に示すように、電力供給パネル10と略同一の厚みを有する床構成パネル7を配置することで、電力供給パネル10と床構成パネル7との上面を相互に略面一状として、平坦な床面を構成している。床構成パネル7は、例えば樹脂や木材にて形成された板状体である。
【0036】
次に、各電力供給パネル10の構成について説明する。図2に示すように(電力供給パネル10の上面を露出させた状態を示す)、電力供給パネル10は平面方形状に形成されている。この電力供給パネル10は、図3に示すように、複数(ここでは2枚)の導電板11、12と、これら複数の導電板11、12の相互の間に設けられた絶縁層13とを、相互に重畳状に配置して構成されている。これら導電板11と導電板12とは、例えば接着の如き任意の固定方法によって相互に固定されており、全体として1枚の電力供給パネル10が構成されている。
【0037】
各導電板11、12は、金属等の導電体から形成された板状体である。これら導電板11、12の具体的な材質や厚みは、所望の強度や供給電力等を考慮して決定することができる。
【0038】
絶縁層13は、導電板11、12を相互に絶縁することによってこれら相互間における短絡を防止すると共に、通信信号を伝播させる導波管として機能する。この絶縁層13は、導電板11、12と略同一の平面形状に形成され、これら導電板11、12の相互の間のほぼ全域に設けられている。この絶縁層13の具体的な材質や厚みは、所望の絶縁性や導波性を考慮して決定することができ、例えば、ポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂、マイカやガラス繊維などの無機材料、あるいは、磁器を用いることができる。ただし、本実施の形態1においては、後述する摩擦攪拌接合の熱によって当該絶縁層がダメージを受けないこと、及び、後述する回転体20の圧接に対抗可能な反力がとれることが必要であるため、このような条件を満たす材質にて形成する。
【0039】
このように構成された電力供給パネル10において、図3に示すように、導電板11、12のうち、少なくとも一方の導電板を接地極とするように、導電板11、12を直流電源8に接続している。例えば、床部2によって電力供給パネル10を支持する構造の場合、床部2に近接する側の導電板12を陽極、この陽極と対向する側の導電板11を接地極とする。具体的には、任意位置に直流電源8を設け、この直流電源8の陽極をいずれか1枚の電力供給パネル10の導電板12に接続すると共に、直流電源8の接地極を当該電力供給パネル10の導電板11に接続し、他の電力供給パネル10に対してはこれら電力供給パネル10の相互の接続構造を介して電力を供給する。また、閉回路を形成するため、いずれかの電力供給パネル10の導電板11と導電板12とを任意の方法で相互に接続する(図示省略)。このように導電板11、12を接地極とした電力供給経路を構築することで、人間が導電板11に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができるので、人の安全性を確保することが可能になる。
【0040】
次に、通信機能及び電力供給機能に共通の構成について説明する。図3に示すように、電力供給パネル10には接続端子9が配置されている。この接続端子9は、円筒状の外部電極9aと棒状の内部電極9bとを相互に同心状に組み合わせて構成されている。内部電極9bは、陽極側の電極であり、接地極側の導電板11及び絶縁層13を貫通して陽極側の導電板12に至る長さに形成されている。外部電極9aは、接地極側の電極であり、内部電極9bよりも短く形成され、内部電極9bと共に導電板11に貫通される。このような構成において、電力供給パネル10において通信を行いたい任意位置(通信機器の近傍等)に接続端子9を上方から挿入することで、外部電極9aを接地極の導電板11に接触させると共に、内部電極9bを陽極の導電板12に接触させることができる。そして、外部電極9aと内部電極9bに対して電力取得用接続線及び通信用接続線を接続し、これら電力取得用接続線や通信用接続線を電力負荷や通信機器に接続することで、電力負荷に対して電力供給を行うことができると共に、通信機器に対して通信信号の入力及び出力を行うことができる。
【0041】
(電力供給パネルの接合方法)
次に、上述のように構成された電力供給パネル10の接合方法について説明する。図4は、接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。まず、図4(a)に示すように、複数の電力供給パネル10を、設置面上に並設する(特許請求の範囲における並設工程に対応する)。この並設は、隣接する電力供給パネル10のパネル端部同士が突き合わせられるように行う。ここでは、電力供給パネル10を挟んで設置面と反対側に位置する空間部が作業空間部5となる。
【0042】
次いで、電力供給パネル10のパネル端部に対して、設置面に面する導電板12(特許請求の範囲における第1の導電板に対応する)のみを残し、絶縁層13と導電板11を切削して除去することにより、接合スペース6を形成する。この切削は、電力供給パネル10のパネル端部の全長に渡って行う。ここでは、導電板12を作業空間部5に対して露出させるように、各導電板12の接合側の端部に対して導電板11及び絶縁層13の接合側の端部を後退させることにより、接合スペース6を形成する(なお、本実施の形態において「後退」とは、各電力供給パネル10において、当該電力供給パネル10に隣接する他の電力供給パネル10から遠ざかる方向に至ることを意味する)。この状態では、電力供給パネル10の導電板12のみが相互に突き合わせ状に配置されることになる(以下、このように突き合わせられた導電板12の境界部分を「接合部14」と称する)。特に、接合スペース6を、導電板12から作業空間部5に至るに伴って幅広状となるように形成することで、すなわち幅W1>幅W2とすることで、後述する連結用部材15の挿入を一層容易に行うことができる。なお、接合スペース6の形成は、並設工程の前に行ってもよい。例えば、電力供給パネル10を工場にて製造する際に、導電板12よりも狭幅の絶縁層13や導電板11を用いて電力供給パネル10を製造することで、接合スペース6を形成してもよい。
【0043】
その後、相互に隣接する導電板12同士を、作業空間部5側から相互に接合する(特許請求の範囲における第1接合工程に対応する)。このように作業空間部5側から導電板12を接合する方法としては、例えば摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)を用いることができる。図5は摩擦攪拌接合を示す縦断面図、図6は摩擦攪拌接合を示す斜視図である。摩擦攪拌接合とは、接合部14に回転体20を圧接させることで、この回転体20と接合部14との摩擦熱によって当該接合部14を構成する材料(ここでは導電板12)を攪拌(塑性流動化)して接合する方法である。具体的には、回転体20を作業空間部5側から接合部14の上面に押し当て、当該回転体20を所定速度で回転させつつ当該接合部14に対して加圧する。この回転体20の先端には突部21が設けられており、この突部21のみが接合部14の内部に圧入されることになる。このように圧入された突部21は接合部14を摩擦熱で塑性流動化させて攪拌し、接合部14が接合される。この接合を行いつつ、一定速度で回転体20を接合部14に沿って水平移動させることで、接合部14をその全長に渡って接合することができる。
【0044】
次に、絶縁層13と導電板11とを作業空間部5側から接合する(特許請求の範囲における第2接合工程に対応する)。このため図4(c)に示すように、連結用部材15を作業空間部5側から接合スペース6に挿入する。この連結用部材15は、連結用絶縁層15aと連結用導電板15bとを相互に一体として構成されたもので、接合スペース6に対応する長さ及び幅を有する。連結用絶縁層15aは、電力供給パネル10のパネル端部において相互に隣接する絶縁層13同士を連結するためのもので、特許請求の範囲における絶縁性連結手段に対応する。連結用導電板15bは、電力供給パネル10のパネル端部において相互に隣接する導電板11同士を連結するためのもので、特許請求の範囲における導電性連結手段に対応する。特に、上述のように接合スペース6を導電板12から作業空間部5に至るに伴って幅広状となるように形成しており、この接合スペース6に対応する形状で連結用絶縁層15aと連結用導電板15bとを形成しているので、連結用絶縁層15aを先頭に連結用部材15を接合スペース6に挿入する際、連結用絶縁層15aの狭幅部分を接合スペース6の広幅部分に挿入することになり、挿入が極めて容易である。
【0045】
この連結用部材15の挿入後、図4(d)に示すように、導電板11と連結用導電板15bとの2箇所の接合部16を、その全長に渡って摩擦攪拌接合することで、隣接する導電板11を連結用導電板15bを介して相互に連結することができる。これにて全ての接合作業が終了し、図4(e)に示すように、電力供給パネル10の接合が完了する。
【0046】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、作業空間部5側から全ての接合作業を行うことができるので、設置面側を介して電力供給パネル10に対する作業を行う必要がなくなり、電力供給パネル10の並設後に接合作業を行うことができる。従って、広範な領域に電力供給パネル10を敷設する場合であっても、多数の電力供給パネル10の敷設のみをまず連続的に行い、その後に、電力供給パネル10の上方から接合作業を行うことで、接合作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。
【0047】
また、接合スペース6を導電板12から作業空間部5に至るに伴って幅広状となるように形成したので、連結用部材15を接合スペース6に挿入する作業が極めて容易である。
【0048】
さらに、連結用絶縁層15aと連結用導電板15bとを相互に一体として連結用部材15を構成したので、これら連結用絶縁層15aと連結用導電板15bとを個別的に配置する場合に比べて、作業が一層容易になる。
【0049】
さらに、摩擦攪拌接合を採用したことで、様々な利点を得ることができる。すなわち、この摩擦攪拌接合は、接合部14、16を溶解せずに固相に保持したまま接合を行う固相接合法であるため、接合部14、16の金属組織を強加工でき、優れた機械的特性を得ることができる。また、凹凸がない平滑な接合面を得ることができるので、導電板11、12を通信路として用いた場合であっても、接合部14、16を要因とするインピーダンス不整合を低減することができる。
【0050】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、絶縁層を耐熱性や所要の反力を有しない材質にて構成した場合の接合方法に係る形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0051】
(電力供給パネルの接合方法)
この実施の形態2において、絶縁層13は耐熱性や所要の反力を有しない材質(例えば発泡性樹脂)にて構成されている。この場合、実施の形態1の図4(d)のように、導電板11を絶縁層13の上方で摩擦攪拌接合したのでは、この摩擦攪拌接合による摩擦熱が導電板11を介して絶縁層13に伝達されると共に、回転体20の圧力が導電板11を介して絶縁層13に伝達されることになり、この絶縁層13にダメージが生じる等の好ましくない状態が生じ得る。これを回避するため、実施の形態2では、図7に示す方法にて接合を行う。
【0052】
最初に、図7(a)に示すように、複数の電力供給パネル10を、設置面上に並設する(特許請求の範囲における並設工程に対応する)。次いで、電力供給パネル10のパネル端部に対して、設置面に面する導電板12を残し、絶縁層13と導電板11を切削して除去することにより、接合スペース6Aを形成する。ここでは、絶縁層13を導電板11のパネル端部よりも後退するように切削することで、導電板11、12の相互間にも接合スペース6Bを形成している。その後、図7(b)に示すように、導電板12の接合部14を摩擦攪拌接合にて接合する。
【0053】
次いで、図7(c)に示すように、連結用部材17を作業空間部5側から接合スペース6A、6Bに挿入する。この連結用部材17は、連結用絶縁層17a、17bと連結用導電板17cとを備えて構成されたもので、接合スペース6A、6Bに対応する長さ及び幅を有する。特に、連結用絶縁層17a、17bは、絶縁性、耐熱性、及び回転体20の圧接に対抗可能な反力がとれる材質にて形成されている。また、この連結用絶縁層17a、17bは、接合スペース6Aに挿入される連結用絶縁層17aと、導電板11、12の相互の接合スペース6Bに挿入される連結用絶縁層17bとに分割されており、最初に連結用絶縁層17bを配置し、次に連結用絶縁層17aを連結用導電板17cと共に配置することができる。連結用絶縁層17bは、絶縁層13の端部から突出した導電板11の部分よりも若干広幅に形成されており、接合スペース6Bに挿入された状態では、当該連結用絶縁層17bの上面に導電板11の端部が載置されることになり、回転体20の圧接に対する反力を発揮し得る。
【0054】
この連結用部材17の挿入後、図7(d)に示すように、導電板11と連結用導電板17cとの2箇所の接合部16を摩擦攪拌接合することで、隣接する導電板11を連結用導電板17cを介して相互に連結することができる。この際、接合部16の下方には耐熱性及び反力を有する連結用絶縁層17bが配置されているので、摩擦熱によるダメージ等の問題を生じさせることなく、摩擦攪拌接合を行うことができる。これにて全ての接合作業が終了し、図7(e)に示すように、電力供給パネル10の接合が完了する。
【0055】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、絶縁層13が耐熱性や所要の反力を有しない材質にて構成されている場合であっても、摩擦攪拌接合を用いた接合を行うことが可能になる。
【0056】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、上下一対の導電板の相互間にもう1枚の導電板を配置して構成された電力供給パネルの接合方法に係る形態である。なお、実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて実施の形態2の構成と略同一であり、実施の形態2の構成と略同一の構成については、必要に応じて、この実施の形態2で用いたのと同一の符号及び/又は名称を付して、その説明を省略する。
【0057】
(電力供給パネルの構成)
図8は、実施の形態3に係る電力供給構造の要部縦断面図である。この図8に示すように、電力供給構造は、実施の形態1と同様に構成された床部2及び絶縁シート3の上面に、複数の電力供給パネル30を並設して構成されている。
【0058】
各電力供給パネル30は、相互に間隔を空けて並設された複数(ここでは3枚)の導電板31、32、33と、これら導電板31、32、33の相互間に配置された絶縁層34、35とを備えて構成されている。この構成では、図示のように直流電源8及び負荷100を接続することで、上下の導電板31、32を接地極、中央の導電板33を陽極として使用することができ、陽極が外部に露出せず一層安全性の高い電力供給構造を構築できる。なお、この実施の形態3においては、実施の形態2と同様に、絶縁層34、35は耐熱性や所要の反力を有しない材質にて構成されているものとする。
【0059】
(電力供給パネルの接合方法)
図9及び図10は、接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。最初に、図9(a)に示すように、複数の電力供給パネル30を、設置面上に並設する(特許請求の範囲における並設工程に対応する)。次いで、電力供給パネル30のパネル端部に対して、設置面に面する導電板32を残し、他の絶縁層34、35と導電板31、33を切削して除去することにより、接合スペース6A、6Bを形成する。ここでは、絶縁層35を導電板33の端部よりも後退するように切削し、絶縁層34を導電板31の端部よりも後退するように切削することで、導電板32、33の相互間や、導電板31、33の相互間にも、接合スペース6A、6Bを形成する。その後、図9(b)に示すように、導電板32の接合部14を摩擦攪拌接合にて接合する。
【0060】
次いで、図9(c)に示すように、連結用部材17を作業空間部5側から接合スペース6A、6Bに挿入し、図9(d)に示すように、導電板33と連結用導電板17cとの2箇所の接合部16を摩擦攪拌接合することで、隣接する導電板33を連結用導電板17cを介して相互に連結する。この際、接合部16の下方には耐熱性及び反力を有する連結用絶縁層17bが配置されているので、摩擦熱によるダメージ等の問題を生じさせることなく、摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0061】
その後、図10(a)に示すように、連結用部材18を作業空間部5側から接合スペース6A、6Bに挿入する。この連結用部材18は、連結用絶縁層18a、18bと連結用導電板18cとを相互に一体として構成されたもので、導電板31及び絶縁層34を切削して形成された接合スペース6A、6Bに対応する長さ及び幅を有する。連結用部材18に関するその他の点は、連結用部材17と同一である。そして、図10(b)に示すように、導電板31と連結用導電板18cとの2箇所の接合部16を摩擦攪拌接合することで、隣接する導電板31を連結用導電板18cを介して相互に連結する。この際にも、接合部16の下方には耐熱性及び反力を有する連結用絶縁層18bが配置されているので、摩擦熱によるダメージ等の問題を生じさせることなく、摩擦攪拌接合を行うことができる。これにて全ての接合作業が終了し、図10(c)に示すように、電力供給パネル30の接合が完了する。
【0062】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、3枚の導電板31、32、33を用いた複層構造の電力供給パネル30を接合する際において、絶縁層34、35が耐熱性や所要の反力を有しない材質にて構成されている場合であっても、摩擦攪拌接合を用いた接合を行うことが可能になる。
【0063】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この形態は、接合用導電板及びインサート材を用いた接合を行う形態である。なお、実施の形態4の構成は、特記する場合を除いて実施の形態3の構成と略同一であり、実施の形態3の構成と略同一の構成については、必要に応じて、この実施の形態3で用いたのと同一の符号及び/又は名称を付して、その説明を省略する。
【0064】
(電力供給パネルの接合方法)
図11及び図12は、実施の形態4に係る接合方法を示す縦断面図である。この実施の形態4においては、図11(a)に示すように、実施の形態3と同様に電力供給パネル30の並設や接合スペース6A、6Bの形成を行った後、図11(b)に示すように、導電板32の接合を回転体20に加えて接合用導電板22及びインサート材23を用いて行う。これら接合用導電板22及びインサート材23は、接合部14の長さ及び幅に対応する形状を有するもので、インサート材23が接合部14に接触するような向きで、これら接合用導電板22及びインサート材23を配置した後、回転体20を回転させつつ接合部14に沿って水平移動させることで、この接合部14を接合することができる。
【0065】
図13は、図11(b)の接合部周辺の拡大図である。図13(a)に示すように、接合用導電板22の一方の面(ここでは底面)にインサート材23が予め付けられている。接合用導電板22は、導電板32を相互に導通可能に接続するための中継部材であり、例えば導電板32と同一の材質にて形成される。インサート材23は、導電板32及び接合用導電板22に熱拡散することによって、これらを相互に接合するもので、低融点金属(例えばアルミニウム合金)にて形成される。回転体20は、接合用導電板22に摩擦熱を生じさせるもので、実施の形態1とは異なり突起物が省略されたものが使用される。この回転体20を接合用導電板22に圧接させつつ回転させることで、回転体20と接合用導電板22との摩擦熱が当該接合用導電板22を介してインサート材23に伝達され、図13(b)に示すように、このインサート材23を導電板32及び接合用導電板22に熱拡散させる。この接合方法では、酸素を遮断して接合を行うことができるので、アルミニウムのように酸化皮膜が障害になって溶接が困難な材料にて導電板32を形成した場合に好適である。以降、図11(c)から図12(b)に順次示すように、連結用部材18の挿入と、接合用導電板22及びインサート材23を用いた接合を繰り返すことで、図12(c)に示すように、電力供給パネル30の接合が完了する。
【0066】
(実施の形態4の効果)
このように実施の形態4によれば、実施の形態3の効果に加えて、酸素を遮断して接合を行うことができるので、アルミニウムのように酸化皮膜が障害になって溶接が困難な材料にて導電板を形成した場合であっても、容易に接合を行うことができる。
【0067】
〔実施の形態5〕
次に、実施の形態5について説明する。この形態は、導電性テープを用いた接合を行う形態である。なお、実施の形態5の構成は、特記する場合を除いて実施の形態3の構成と略同一であり、実施の形態3の構成と略同一の構成については、必要に応じて、この実施の形態3で用いたのと同一の符号及び/又は名称を付して、その説明を省略する。
【0068】
(電力供給パネルの接合方法)
図14及び図15は、実施の形態5に係る接合方法を示す縦断面図である。この実施の形態5においては、図14(a)に示すように、電力供給パネル30の並設及び接合スペース6A、6Bの形成を行う。この形態では接合時に摩擦熱が発生することがないため、絶縁層35を導電板33の端部よりも後退させたり、絶縁層34を導電板31の端部よりも後退させる必要がないため、実施の形態1と同様の接合スペース6A、6Bを形成する。
【0069】
次いで、図14(b)に示すように、導電板32の接合部14に、作業空間部5側から導電性テープ24を貼付することで、接合部14の接合を行う。この導電性テープ24は、隣接する導電板32の両方に跨る幅であり、かつ、接合部14の全長に対応する長さのテープであって、特許請求の範囲における連結用部材に対応する。この導電性テープ24は、例えば導電化繊維の両面に導電性感圧型粘着剤を塗布することで形成されている。以降、図14(c)から図15(b)に順次示すように、連結用部材15の挿入と、導電性テープ24を用いた接合を繰り返すことで、図15(c)に示すように、電力供給パネル30の接合が完了する。
【0070】
(実施の形態5の効果)
このように実施の形態5によれば、接合時に摩擦熱を発生させることがないので、実施の形態3のように絶縁層34、35の耐熱対策を施す必要がなくなり、また回転体20のような機械装置を用いる必要もないことから、接合作業を一層簡易に行うことができる。
【0071】
〔実施の形態6〕
次に、実施の形態6について説明する。この形態は、導電板同士の接合方法や、導電板と連結用導電板との接合方法の変形例に係る形態である。なお、実施の形態6の構成は、特記する場合を除いて実施の形態5の構成と略同一であり、実施の形態5の構成と略同一の構成については、必要に応じて、この実施の形態5で用いたのと同一の符号及び/又は名称を付して、その説明を省略する。
【0072】
設置面に面するように配置された導電板同士を接合する方法や、導電板と連結用導電板とを接合する方法としては、実施の形態1から5までに示した方法以外にも、下記のような各変形例に係る接合方法を用いることが可能である。なお、以下では、導電板同士を接合する方法として説明するが、導電板と連結用導電板との接合にも同様に適用できる。
【0073】
(第1の変形例)
最初に、第1の変形例について説明する。図16及び図17は、第1の変形例に係る接合方法を示す図であり、図16は導電板の平面図、図17は接合方法を順次示す導電板の斜視図である。図16に示すように、導電板12には、複数の貫通孔12aが接合部に沿って並設されている。これら貫通孔12aの形成は、電力供給パネルの並設前後のいずれに行ってもよい。次いで、図17(a)に示すように、接合部14を跨いて対向する一対の貫通孔12aに、固定ピン25を作業空間部5側から挿入する。この固定ピン25は、導電性金属にて形成されるもので、側面略下向きコ字状に形成されている。
【0074】
そして、図17(b)に示すように、固定ピン25及び接合部14を覆うように導電性テープ24を貼付することにより、固定ピン25の脱落防止及び接合部14の導電性の向上を図る。これにて接合作業が終了する。なお、固定ピン25と導電性テープ24のうち、いずれか一方を介して導電板12同士の通電を確保できる場合には、いずれか他方は非導電性としてもよい。なお、固定ピン25の挿入後に、接合部14を摩擦攪拌接合してもよく、この場合には、固定ピン25を導電板12の仮止め部材として機能させた後、摩擦攪拌接合にて所要の接合強度を得ることができる。また、固定ピン25を、形状記憶合金にて形成し、加熱された場合には後述する図20と同様に変形させることで、摩擦攪拌接合を行う際に必要になる導電板12同士の密着性を確保することもできる。なお、第1の変形例においては、導電性テープ24及び固定ピン25が特許請求の範囲における連結用部材に対応する。
【0075】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例について説明する。図18は、第2の変形例に係る接合方法を示す縦断面図である。上述した第1の変形例と同様に貫通孔12aの形成及び固定ピン25の挿入を行った後、作業空間部5側から固定ピン25を加熱する。この固定ピン25は、形状記憶合金にて形成されており、加熱された場合には図20に示すように変形して、導電板12を裏側から保持する。加熱手段は任意であるが、例えば、バーナー加熱、通電加熱、電磁加熱、あるいは摩擦攪拌接合による加熱を採用することができる。この第2の変形例においては、固定ピン25が特許請求の範囲における連結用部材に対応する。
【0076】
(第3の変形例)
最後に、第3の変形例について説明する。図19から図21は、第3の変形例に係る接合方法を示す図であり、図19は導電板の平面図、図20は超塑性合金シートの斜視図、図21は接合部の拡大図であり、(a)は接合前の要部縦断面図、(b)は接合前の要部平面図、(c)は接合後の要部縦断面図、(d)は接合後の要部平面図である。図19に示すように、導電板12には、複数の貫通孔12bが接合部14に沿って並設されている。これら貫通孔12bの形成は、電力供給パネル30の並設前後のいずれに行ってもよい。この貫通孔12bは、図20に示す超塑性合金シート40の突部42に対応する略方形状に形成されている。この超塑性合金シート40は、平板状の本体41に対して、一方(ここでは下方)に突出する複数の突部42を形成したものである。これら複数の突部42は、各々が平面略方形状に形成されており、2列に略等間隔で並設されている。この超塑性合金シート40は、超塑性材料(塑性不安定を生ずることなく、大きなひずみ領域まで変形させることのできる材料)であって、導電性を有する材料にて形成される。
【0077】
このように構成された超塑性合金シート40を、作業空間部5側から接合部14に配置し、その突部42を貫通孔12bに挿入させ、突部42を導電板12よりも設置面側に配置する。そして、図21(a)に示すように、各突部42に対して作業空間部5側から回転体43を配置し、この回転体43を回転させる。この回転体43の先端部43aは、図21(b)に示すように、突部42の内側形状に対応する方形状に形成されている。従って、回転体43を回転させることで、図21(c)(d)に示すように、先端部43aの4つの隅部を突起の側辺に押し当てて一定のひずみ速度で塑性変形させ、この側辺を水平方向外側に向けて拡張することができる。このように拡張された状態では、突部42の平面形状が貫通孔12bの平面形状よりも大きくなり、突部42が貫通孔12bから抜けなくなるので、超塑性合金シート40を接合部14に密着させ、導電板12同士を接合できる。この第3の変形例においては、超塑性合金シート40が特許請求の範囲における連結用部材及び金属板に対応する。
【0078】
この超塑性合金シート40を用いた接合方法では、特に、超塑性合金シート40を配置した時点で、導電板12同士を超塑性合金シート40を介して仮固定できると共に、超塑性合金シート40自体も導電板12に対して仮固定できるので、回転体43の力が加わっても、導電板12同士の接合状態を維持でき、安定かつ確実な接合を行うことができる。この接合に使用する金属板は、超塑性合金シート40に限らず、展性と剛性が両立するとともに拡散接合が可能な任意の金属性の板状態を用いることができ、例えば、アルミニウム板や銅板を用いてもよい。特に、回転体43によって金属板自体を導電板12に対して熱拡散させることが好ましく、このためには、導電板12と同じ材質にて金属板を形成することが好ましい。なお、実際には、貫通孔12bと突部42とを相互に位置合わせすることが難しい場合が考えられる。このため、例えば、導電板12に対する貫通孔12bの形成のみを工場で行い、この導電板12を施工現場に敷設する前後において、当該導電板12の貫通孔12bの位置や形状を画像処理等で認識し、この位置や形状に合致する突部42を、施工現場にて成型してもよい。
【0079】
(実施の形態6の効果)
このように実施の形態6によれば、各種方法にて接合を行うことが可能になり、実施環境に応じた多様な接合を行うことができる。
【0080】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0081】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0082】
(各実施の形態の組合せ)
各実施の形態に示した構成は、相互に組合せることができ、例えば、電力供給パネル30の複数の導電板31、32、33のうち、導電板31同士の接合を、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合にて行い、導電板32同士の接合や導電板33同士の接合を、実施の形態5に係る導電性テープ24にて行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明は、広範な給電対象平面に電力供給を行なう電力供給構造に有用であり、並設された複数の電力供給パネルの接合を簡易かつ迅速に行うことに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1に係る給電通信システムを適用した居室の斜視図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】図2の要部縦断面図である。
【図4】実施の形態1に係る接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。
【図5】摩擦攪拌接合を示す縦断面図である。
【図6】摩擦攪拌接合を示す斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。
【図8】実施の形態3に係る電力供給構造の要部縦断面図である。
【図9】実施の形態3に係る接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。
【図10】図9に続く図であり、実施の形態3に係る接合方法を時系列に沿って順次説明するための縦断面図である。
【図11】実施の形態4に係る接合方法を示す縦断面図である。
【図12】図11に続く図であり、実施の形態4に係る接合方法を示す縦断面図である。
【図13】図11(b)の接合部周辺の拡大図である。
【図14】実施の形態5に係る接合方法を示す縦断面図である。
【図15】図14に続く図であり、実施の形態5に係る接合方法を示す縦断面図である。
【図16】導電板の平面図である。
【図17】接合方法を順次示す導電板の斜視図である。
【図18】第2の変形例に係る接合方法を示す縦断面図である。
【図19】導電板の平面図である。
【図20】超塑性合金シートの斜視図である。
【図21】接合部の拡大図であり、(a)は接合前の要部縦断面図、(b)は接合前の要部平面図、(c)は接合後の要部縦断面図、(d)は接合後の要部平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 居室
2 床部
3 絶縁シート
4 仕上げ材
5 作業空間部
6、6A、6B 接合スペース
7 床構成パネル
8 直流電源
9 接続端子
9a 外部電極
9b 内部電極
10、30 電力供給パネル
11、12、31、32、33 導電板
12a、12b 貫通孔
13、34、35 絶縁層
14、16 接合部
15、17、18 連結用部材
15a、17a、17b、18a、18b 連結用絶縁層
15b、17c、18c 連結用導電板
20、43 回転体
21、42 突部
22 接合用導電板
23 インサート材
24 導電性テープ
25 固定ピン
40 超塑性合金シート
41 本体
43a 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電板と当該複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを備えて構成された電力供給パネルを同一の設置面上に複数並設し、当該複数の電力供給パネルを相互に隣接するパネル端部において相互に接合するための接合方法であって、
前記複数の電力供給パネルを、前記設置面上に並設する並設工程と、
前記並設工程の前又は後において、前記設置面に面する第1の前記導電板の接合側の端部を前記電力供給パネルに対して前記設置面と反対側に位置する作業空間部に露出させるように、当該第1の導電板における接合側の端部に対して当該第1の導電板以外の前記導電板及び前記絶縁層の接合側の端部を後退させることにより、前記相互に隣接する前記パネル端部の相互間に接合スペースを形成する形成工程と、
前記並設工程及び前記形成工程の後において、前記相互に隣接する前記パネル端部の前記第1の導電板同士を、前記作業空間部側から前記接合スペース内で相互に接合する第1接合工程と、
前記第1接合工程の後において、前記第1の導電板以外の前記導電板であって、前記複数の電力供給パネルの前記パネル端部において相互に隣接する前記導電板同士を、導電性連結手段を介して前記作業空間部側から相互に接合する第2接合工程と、
を備えたことを特徴とする電力供給パネルの接合方法。
【請求項2】
前記第2接合工程において、
前記第1接合工程において接合された前記第1の導電板における前記作業空間部側の面に、前記パネル端部において隣接する前記絶縁層の相互間に介在させる絶縁性連結手段を、前記作業空間部側から配置した後、
前記絶縁性連結手段における前記作業空間部側の面に、前記導電性連結手段を配置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項3】
前記形成工程において、前記接合スペースを、前記第1の導電板から前記作業空間部に至るに伴って幅広状となるように形成し、
前記第2接合工程において、前記接合スペースに対応する幅で形成された前記絶縁性連結手段を、幅の狭い方を先頭として前記絶縁層の相互間に挿入すること、
を特徴とする請求項2に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項4】
前記第2接合工程において、相互に一体に形成された前記絶縁性連結手段及び前記絶縁性連結手段を、前記絶縁性連結手段を先頭として前記絶縁層又は前記導電板の相互間に挿入すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項5】
前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、
前記導電性連結手段としての接合用導電板を、接合対象になる前記導電板の相互間において、これら導電板に対して突き合せ状に配置し、
これら導電板と接合用導電板との相互間の接合部に前記作業空間部側から回転体を圧接させることで、これら導電板と接合用導電板とを相互に摩擦攪拌接合すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項6】
前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、
前記導電性連結手段としての接合用導電板であって、その一方の面にインサート材を付けた接合用導電板を、接合対象になる前記導電板の相互間に前記作業空間部側から跨るように、かつ、前記インサート材を付けた側の面が当該導電板に接するように配置し、
前記インサート材に前記作業空間部側から回転体を圧接させることで、当該回転体と前記接合用導電板との摩擦熱によって前記インサート材を前記導電板に拡散させて、前記導電板同士を接合すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項7】
前記第1接合工程又は前記第2接合工程において、
前記導電性連結手段としての金属板であって、前記作業空間部側の面を開口部とする中空状の複数の突起を有する金属板を、接合対象になる前記導電板の相互間に前記作業空間部側から跨るように、かつ、前記突起と略同一平面形状の貫通孔であって当該導電板に形成した貫通孔に前記突起が挿入されるように配置し、
前記突起の側辺の内面に前記作業空間部側から回転体を圧接させて当該突起の側辺を拡張させることで、当該突起の平面形状を前記貫通孔の平面形状よりも拡大して、前記導電板同士を接合すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電力供給パネルの接合方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力供給パネルの接合方法にて接合されたこと、
を特徴とする電力供給パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−161978(P2009−161978A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58(P2008−58)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】