説明

電力供給回路の制御装置

【課題】高電圧のバッテリパックを複数個設けた電力供給回路の制御装置において、安全スイッチが一つでも切れていれば、全体的に高電圧回路の起動状態を阻止して、不用意な電源オン(ON)操作のようなうっかりミス等があっても、回路を起動しなくし、また、安全スイッチ一つのオフ(OFF)で全体的な給電を遮断して作業の利便性を良くすることにある。
【解決手段】バッテリパック(4−1〜4−n)に内部電圧を検知する電圧検知手段(9−1〜9−n)を設け、一つ以上の安全スイッチ(8−1〜8−n)の操作に基づく電圧変化を検出して、複数個並列に設けられたバッテリパック(4−1〜4−n)の全てのリレー(5−1〜5−n)を開成(OPEN)状態に保持することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給回路の制御装置に係り、特に電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載された電気的推進装置に設けられる電力供給回路において電力の供給遮断状態を管理する電力供給回路の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等で、環境に配慮した車両が注目されている。これらの環境対応の車両には、動力源である走行用モータに駆動電力を供給するためのバッテリが搭載されている。
このようなバッテリを搭載する車両において、バッテリの電力のみで走行する際に、バッテリの出力を最大に保ち、且つ走行距離を伸ばすための手段として、バッテリの容量を増大させるために、バッテリを複数個搭載することが検討されている。
一般的に、バッテリには、点検、整備等を行う際に高電圧回路を遮断し、作業時の安全性を確保するための安全スイッチが備えられている。そして、安全スイッチを切る(オフ)動作を行うことによって、リレー(メインリレー)が開成(OPEN)されるため、高電圧回路が遮断されるものである。同様に、イグニションスイッチをオフ(OFF)動作することによっても、リレーが開成(OPEN)され、高電圧回路が遮断されるものである。
例えば、高電圧作業中に、作業者が誤ってイグニションスイッチのオン(ON)動作を行ってしまった際も、安全スイッチがオフの場合に、高電圧回路を遮断することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3409774号公報
【0004】
特許文献1に係る電源制御装置、車両の始動方法および高電圧電源の使用方法は、高電圧電源(バッテリ)を備えた車両において、高電圧電源の出力を電源側で人為的に遮断する遮断部材を備えた電源を取り扱うものであり、複数の電池パックを直列接続として搭載し、いずれか一つの電池パックに設けられた安全プラグ(安全スイッチ)を開放すれば、回路全体が開放されることになり、遮断部材の操作検出によりリレー接点の閉成を禁止した上で、特に運転操作検出で禁止を解除するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来、バッテリを複数個搭載している車両においては、誤ってイグニションスイッチのオン(ON)動作を行ってしまった際、全ての安全スイッチをオフにしていなかった場合、高電圧回路が形成されてしまうという不都合があった。
即ち、上記の特許文献1のように、複数個の電池パックを並列接続して搭載する場合に、いずれか一つの電池パックに設けられた安全プラグ(安全スイッチ)を開放しても、他の電池パックに設けられた安全プラグ(安全スイッチ)が閉成(CLOSE)となっていれば、閉回路を形成することができてしまう。
これは、電池パックに蓄えられた電力を最大限に利用するといった面では有利とも考えられる一方で、サービス作業をする面では短絡や感電といったリスクが高くなるという不都合がある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、並列接続した複数個のバッテリパックにおけるサービス作業等での作業リスクを低くする電力供給回路の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、安全スイッチを備える高電圧のバッテリパックを複数個設け、これらのバッテリパックを互いに並列となるように接続する一方、前記バッテリパックからの電力供給を供給遮断可能なリレーを設け、前記安全スイッチの操作に基づいて前記リレーを開成する電力供給回路の制御装置において、前記バッテリパックは内部電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記複数の安全スイッチのうち一つ以上の安全スイッチの操作に基づく電圧変化を検出し、全ての前記リレーを開成状態に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電力供給回路の制御装置は、並列接続した複数個のバッテリパックにおけるサービス作業等での作業リスクを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は安全スイッチを含むセル電圧を監視する回路を利用した電圧の変化による検知するシステム構成図である。(実施例1)
【図2】図2は安全スイッチを含むセル電圧を監視する回路を利用した電圧の変化による検知のフローチャートである。(実施例1)
【図3】図3は安全スイッチを含むセル電圧を監視する回路を利用した電圧の変化による検知のタイムチャートである。(実施例1)
【図4】図4はバッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知(実車で実施済み)するシステム構成図である。(実施例2)
【図5】図5はバッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知(実車で実施済み)のフローチャートである。(実施例2)
【図6】図6はバッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知(実車で実施済み)のタイムチャートである。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、並列接続した複数個のバッテリパックにおけるサービス作業等での作業リスクを低くする目的を、一つ以上の安全スイッチの操作に基づく電圧変化を検出して、並列に設けられた複数個のバッテリパックの全てのリレーを開成状態に保持して実現するものである。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例1を示すものである。
図1において、1は電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載された電気的推進装置である。この電気的推進装置1には、電力供給回路2と、電子制御装置3とを設けている。
電力供給回路2は、高電圧のバッテリパックとして、複数個の第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nを設けるとともに、これら第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nを互いに並列となるように接続する一方、第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nからの電力供給を供給遮断可能な第1〜第nのリレー(メインリレー)5−1〜5−nを設けている。
【0012】
第1のバッテリパック4−1は、直列に接続された複数の第1の正極側バッテリセル(単位バッテリ)6−1とこの第1の正極側バッテリセル6−1とは並列であって且つ直列に接続された複数の第1の負極側バッテリセル(単位バッテリ)7−1とを備え、また、第1の正極側バッテリセル6−1と第1の負極側バッテリセル7−1とに連絡する第1の安全スイッチ8−1を備え、更に、第1の内部電圧(セル電圧)Vsds1を検出する第1の電圧検出手段9−1を備えている。
また、第1の正極側バッテリセル6−1には、インバータ等の機器に接続して第1のリレー5−1中の第1の正極側リレー10−1を備えた第1の正極側バス(母線)11−1が連絡している。第1の負極側バッテリセル7−1には、インバータ等の機器に接続した第1のリレー5−1中の第1の負極側リレー12−1を備えた第1の負極側バス(母線)13−1が連絡している。
【0013】
第2のバッテリパック4−2は、直列に接続された複数の第2の正極側バッテリセル(単位バッテリ)6−2とこの第2の正極側バッテリセル6−2とは並列であって且つ直列に接続された複数の第2の負極側バッテリセル(単位バッテリ)7−2とを備え、また、第2の正極側バッテリセル6−2と第2の負極側バッテリセル7−2とに連絡する第2の安全スイッチ8−2を備え、更に、第2の内部電圧(セル電圧)Vsds2を検出する第2の電圧検出手段9−2を備えている。
また、第2の正極側バッテリセル6−2には、第1の正極側バス11−1に接続して第2のリレー5−2中の第2の正極側リレー10−2を備えた第2の正極側バス(母線)11−2が連絡している。第2の負極側バッテリセル7−2には、第1の負極側バス13−1に接続して第2のリレー5−2中の第2の負極側リレー12−2を備えた第2の負極側バス(母線)13−2が連絡している。
【0014】
第nのバッテリパック4−nは、直列に接続された複数の第nの正極側バッテリセル(単位バッテリ)6−nとこの第nの正極側バッテリセル6−nとは並列であって且つ直列に接続された複数の第nの負極側バッテリセル(単位バッテリ)7−nとを備え、また、第nの正極側バッテリセル6−nと第nの負極側バッテリセル7−nとに連絡する第nの安全スイッチ8−nを備え、更に、第nの内部電圧(セル電圧)Vsdsnを検出する第nの電圧検出手段9−nを備えている。
また、第nの正極側バッテリセル6−nには、第1の正極側バス11−1に接続して第nのリレー5−n中の第nの正極側リレー10−nを備えた第nの正極側バス(母線)11−nが連絡している。第nの負極側バッテリセル7−nには、第1の負極側バス13−1に接続して第nのリレー5−n中の第nの負極側リレー12−nを備えた第nの負極側バス(母線)13−nが連絡している。
【0015】
電子制御装置3は、第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nに連絡する複数の第1〜第nの制御装置14−1〜14−nを備える。この第1〜第nの制御装置14−1〜14−nは、第1〜第nの連絡電線15−1〜15−nを介して第1〜第nのリレー5−1〜5−nに接続している。また、第1〜第nの制御装置14−1〜14−nは、第1〜第nの通信線16−1〜16−nで直接に接続し、相互に通信する。
第1〜第nの制御装置14−1〜14−nは、安全スイッチ(8−1〜8−n)を含む内部電圧(セル電圧)(Vsds1〜Vvsdsn)(V)をバッテリパック(4−1〜4−n)毎に監視する回路を利用した電圧の変化による検知のシステムを構成するものであり、第1〜第nの安全スイッチ8−1〜8−nの操作に基づいて第1〜第nのリレー5−1〜5−nを開閉(OPEN・CLOSE)制御するものである。
電子制御装置3においては、ある一つのバッテリパック、例えば、第1のバッテリパック4−1に連絡した第1の制御装置14−1が、自己の内部電圧(セル電圧)情報(vsds1)を他の第2〜第nのバッテリパック4−2〜4−nに連絡した第2〜第nの制御装置14−2〜14−nに送信し、この第2〜第nの制御装置14−2〜14−nから第2〜第nの電圧情報Vsds2〜Vsdsnを受信するように動作する。全ての第2〜第nの制御装置14−2〜14−nは、第1の制御装置14−1と同様に、動作する。
第1〜第nの制御装置14−1〜14−nは、第1〜第nの安全スイッチ8−1〜8−nのうち一つ以上の安全スイッチの操作に基づく電圧変化を検出して、複数並列に設けられた第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nの全ての第1〜第nのリレー(5−1〜5−n)を開成状態に保持する。
【0016】
この実施例1に係るバッテリパックを複数個並列に搭載した車両の安全スイッチの判定で、安全スイッチを含むセル電圧を監視する回路を利用した電圧の変化による検知においては、リレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)・閉成(CLOSE)という条件に関係なく、その回路を安全スイッチ(8−1〜8−n)の数分設け、安全スイッチ(8−1〜8−n)を含む内部電圧vsds(V)が、所定時間(判定時間:t1(s))以上、判定電圧V1(V)を下回ったことにより、安全スイッチ(8−1〜8−n)が切られたこと(オフ)を認識し、全てのリレー(5−1〜5−n)を開成(OPEN)させるよう構成する。また、リレー(5−1〜5−n)のオン前に、安全スイッチ(8−1〜8−n)が切られたこと(オフ)を認識した場合にも、全てのリレー(5−1〜5−n)が閉成(CLOSE)させないように構成する。
これにより、高電圧作業中、作業者が誤ってイグニションスイッチのオン(ON)動作を行ってしまった場合でも、複数の安全スイッチ(8−1〜8−n)中の1つの安全スイッチを切っていれば(オフ)、高電圧回路が遮断される。
【0017】
次に、安全スイッチを含む内部電圧(セル電圧)を監視する回路を利用した電圧の変化による検知について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
図2に示すように、プログラムがスタートすると(ステップA01)、第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nのいずれかで、内部電圧(セル電圧)Vsds<判定電圧(V1)か否かを判断する(ステップA02)。
このステップA02がYESの場合には、所定時間(判定時間)(s)継続したか否かを判断する(ステップA03)。
このステップA03がYESの場合には、全てのリレー(5−1〜5−n)を開成(OPEN)する(ステップA04)。
一方、前記ステップA02がNO、前記ステップA03がNOの場合には、全てのリレー(5−1〜5−n)を閉成(CLOSE)する(ステップA05)。
前記ステップA04の処理後、又は、前記ステップA05の処理後は、プログラムをリターンする(ステップA06)。
【0018】
次いで、この安全スイッチを含む内部電圧(セル電圧)を監視する回路を利用した電圧の変化による検知について、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、全てのリレー(5−1〜5−n)が閉成(CLOSE)状態で、安全スイッチ(8−1〜8−n)がオンからオフに切り替わると(時間t1)、内部電圧(セル電圧)(Vsds)が低くなり始め、そして、この安全スイッチ(8−1〜8−n)がオンからオフに切り替わった時(時間t1)から第1の時間T1が経過して内部電圧(Vsds)が判定電圧(V1)まで低下し(時間t2)、この内部電圧(Vsds)が判定電圧(V1)まで低下した時(時間t2)から所定時間(判定時間)としての第2の時間(T2)(s)継続すると(時間t3)、全てのリレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)して高電圧回路が遮断され、その後も、内部電圧(Vsds)が低下し続け、第3の時間T3経過した時に(時間t4)、内部電圧(Vsds)が零になる。
また、リレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)の際、時間t3で安全スイッチ(8−1〜8−n)をオフ(OFF)にした場合に、時間t2から所定時間である第2の時間T2以上、判定電圧V1以下が継続すると、時間t3以降も、リレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)して閉成(CLOSE)しないことになる。
なお、この図3においては、時間t1〜時間t4まで、内部電圧(Vsds)に勾配があり、減衰時間があるようにしているが、その減衰時間が存在しないようにして、実質的に内部電圧(Vsds)を零としても良く、あるいは、意図的に所定時間T2を変更することも可能である。
【0019】
この結果、一つ以上の安全スイッチの操作に基づく電圧変化を検出して、複数個並列に設けられたバッテリパック(4−1〜4−n)全てのリレー(5−1〜5−n)を開成(OPEN)状態に保持することから、安全スイッチ(8−1〜8−n)が一つでも切れて(オフ)いれば、全体的に高電圧回路の起動状態が阻止されるので、不用意な電源ON操作のようなうっかりミス等があっても、回路が起動されることがない。また、安全スイッチ(8−1〜8−n)の一つのオフ(OFF)で全体的な給電を遮断することができるので、作業の利便性も良くなる。
また、夫々のバッテリパック(4−1〜4−n)は安全スイッチ(8−1〜8−n)を含む部分回路の電圧を検出する部分電圧検出手段(9−1〜9−n)を備え、部分電圧が所定の判定電圧V1を超えない状態が所定時間(判定時間:T2)継続した場合に、全てのリレー(5−1〜5−n)を開成状態に保持することから、バッテリパック(4−1〜4−n)の部分電圧のみの検出によって、安全スイッチ(8−1〜8−n)の状態を確実に検知することができ、その回路構成を簡素化できる。
更に、複数個並列に設けられたバッテリパック(4−1〜4−n)は夫々制御装置(14−1〜14−n)に連絡し、自他の電圧情報(Vsds)を相互に通信してなることから、バッテリパック(4−1〜4−n)の総数変更が、単一の制御装置で行う場合と比べ比較的容易となり、また、車両として容量の異なるオプション設定に対応できる。
【実施例2】
【0020】
図4〜図6は、この発明の実施例2を示すものである。
この実施例2においては、上述の実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を伏して説明する。
この実施例2の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、図4に示すように、バッテリパックを複数個並列に搭載した自動車の安全スイッチ判定において、バッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知では、リレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)しているという条件の下、既存回路の区間aの測定電圧Va(V)とバッテリセル間の総電圧Vb(V)から算出した区間aの電圧Vba(V)を比較し、所定時間(判定時間)(s)以上、差(D)が生じたことにより、複数あるうちの1つの安全スイッチが切られたことを認識し、全てのリレー(5−1〜5−n)を閉成(CLOSE)させない構造とする。
【0021】
このため、図4に示すように、第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nは、実総電圧を検出する第1〜第nの実総電圧検出手段17−1〜17−nと、部分回路の実部分電圧を検出する第1〜第nの実部分電圧検出手段18−1〜18−nとを備えている。
また、第1〜第nの制御装置14−1〜14−nは、第1〜第nの実総電圧検出手段18−1〜18−nにより検出された実総電圧の部分回路の部分電圧を算出する第1〜第nの部分電圧算出手段19−1〜19−nを備えて、第1〜第nの実部分電圧検出手段18−1〜18−nにより検出された第1〜第nの実部分電圧を部分電圧算出手段19−1〜19−nにより算出された実部分電圧の所定範囲に対応する判定電圧範囲(図6に示す誤差係数下限値(Vba×α)と誤差係数上限値(Vba×β)との間)から外れる状態が所定時間(図2のT2で示す)継続した場合に、全てのリレー(5−1〜5−n)を開成状態に保持する。
【0022】
この図4においては、抵抗器Ra、抵抗器Rbを含む既存回路の区間aの測定電圧Vaと、バッテリ総電圧Vbから算出された区間aの電圧Vbaを監視している。
バッテリ総電圧Vbから算出された区間aの電圧Vbaは、
Vba=Vb×Ra/(Ra十Rb)
で算出される。
バッテリ総電圧Vbは、セル電圧の総和とするように、
Vb=Vcn×Cn
で算出される。
ここで、Vcn:あるセルの電圧
Cn:各バッテリ内のセル数
である。
また、安全スイッチ(8−1〜8−n)が切られたことを、
Va<Vba×α
Va>Vba×β
で検出する。
ここで、
Va:区間aの測定電圧(V)
Vba:Vbから算出した区間aの電圧(V)
α:誤差係数下限電圧値(0<α<1)
β:誤差係数上限電圧値(1<β<2)
である。
また、Vba(Vbから算出した区間aの電圧)が誤差係数下限電圧値(Vba×α)と誤差係数上限電圧値(Vba×β)との範囲では、安全スイッチ(8−1〜8−n)をオンに維持する。
【0023】
次に、バッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
図5に示すように、プログラムがスタートすると(ステップB01)、セル電圧の総和から求められるバッテリ総電圧Vbと、そこから求められる区間aの電圧Vbaを算出する。
バッテリ総電圧(Vba)を、
Vba=Vb×Ra/(Ra+Rb)
で求め、
また、Vbを、
Vb=Vcn×Cn
で求める(ステップB02)。
そして、第1〜第nのバッテリパック4−1〜4−nのいずれかで、Va<Vba×α、又は、Va<Vba×βか否かを判断、つまり、Vbaに誤差係数(α、β)を乗じた電圧値と区間aの測定電圧Vaとを比較する(ステップB03)。
このステップB03がYESの場合には、所定時間(判定時間)継続したか否かを判断する(ステップB04)。
このステップB04がYESの場合には、全てのリレー(5−1〜5−n)を開成(OPEN)する(ステップB05)。
一方、前記ステップB03がNO、又は、前記ステップB04がNOの場合には、全てのリレー(5−1〜5−n)を閉成(CLOSE)する(ステップB06)。
前記ステップB05の処理後、又は、前記ステップB06の処理後は、プログラムをリターンする(ステップB07)。
【0024】
次いで、このバッテリ総電圧間にある回路を利用した電圧の変化による検知について、図6のタイムチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、全てのリレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)状態では、バッテリ総電圧Vbが所定値(Vcn×Cn)にあり、そして、安全スイッチ(8−1〜8−n)がオンからオフに切り替わり(時間t1)、第1の時間T1を経過し(時間t2)、その後、所定時間(判定時間)としての第2の時間T2を経過する時(時間t3)までの間で、Va<Vba×α、又は、Va<Vba×βを確認し、Vbaがこの範囲の場合には、リレー(5−1〜5−n)を閉成(CLOSE)しないで、開成(OPEN)として高電圧回路を遮断させる。。
この図6において、Vbはバッテリパック(4−1〜4−n)の内部電圧(セル電圧)の総和で算出されるため、Vbは時間に関係なく一定である。また、Vbから算出されるVbaについても、時間に関係なく一定である。
以上のように、安全スイッチを1つのみ切った場合でも、内部電圧の変化を検知することにより、全てのリレー(5−1〜5−n)が開成(OPEN)して、高電圧回路の遮断が可能になる。
【0025】
この結果、バッテリパック(4−1〜4−n)の総電圧に基づく部分電圧の検出によって、安全スイッチ(8−1〜8−n)の状態を確実に検知することができ、その回路構成によって判定精度に自由度を与えることができる。
また、複数個並列に設けられたバッテリパック(4−1〜4−n)は夫々制御装置(14−1〜14−n)に連絡し、自他の電圧情報(Vsds)を相互に通信してなる。これにより、バッテリパック(4−1〜4−n)の総数変更が、単一の制御装置で行う場合と比べ比較的容易となり、更に、車両として容量の異なるオプション設定に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明に係る電力供給回路の制御装置を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 電気的推進装置
2 電力供給回路
3 電子制御装置
4−1〜4−n バッテリパック
5−1〜5−n リレー
8−1〜8−n 安全スイッチ
9−1〜9−n 電圧検出手段
14−1〜14−n 制御装置
16−1〜16−n 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全スイッチを備える高電圧のバッテリパックを複数個設け、これらのバッテリパックを互いに並列となるように接続する一方、前記バッテリパックからの電力供給を供給遮断可能なリレーを設け、前記安全スイッチの操作に基づいて前記リレーを開成する電力供給回路の制御装置において、前記バッテリパックは内部電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記複数の安全スイッチのうち一つ以上の安全スイッチの操作に基づく電圧変化を検出し、全ての前記リレーを開成状態に保持することを特徴とする電力供給回路の制御装置。
【請求項2】
前記バッテリパックは前記安全スイッチを含む部分回路の部分電圧を検出する部分電圧検出手段を備え、この部分電圧検出手段により検出された部分電圧が所定の判定電圧を超えない状態で所定時間継続した場合に、全ての前記リレーを開成状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の電力供給回路の制御装置。
【請求項3】
前記バッテリパックは実総電圧を検出する実総電圧検出手段と部分回路の実部分電圧を検出する実部分電圧検出手段とを備え、前記実総電圧検出手段により検出された実総電圧の部分回路の部分電圧を算出する部分電圧算出手段を備えて、前記実部分電圧検出手段により検出された実部分電圧を前記部分電圧算出手段により算出された実部分電圧の所定範囲に対応する判定電圧範囲から外れる状態が所定時間継続した場合に、全ての前記リレーを開成状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の電力供給回路の制御装置。
【請求項4】
複数の前記バッテリパックは夫々の制御装置に連絡し、これらの制御装置は夫々連絡して自他の電圧情報を相互に通信してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力供給回路の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244581(P2011−244581A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113955(P2010−113955)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】