説明

電力変換回路

【課題】低出力域において損失の低い、変換効率のよい電力変換装置を提供する。
【解決手段】各アームに複数の半導体スイッチングデバイスを備え、入力直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換する電力変換回路であって、入力直流電圧を半分の電圧に分割する電圧中点と、半導体スイッチングデバイスの片側アームの中点との間に、逆阻止能力を有す双方向スイッチを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体スイッチングデバイスを用いた電力変換装置の回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチングデバイス、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)などの素子の高速スイッチング機能を利用して電力変換を行う装置は、産業・インフラ用の大出力のものから、家庭用の小容量のものまで幅広く存在している。
産業、インフラ用の機器は比較的容量が大きく、直流電圧を単相の交流電圧に変換する回路形式として、特許文献1に示されるようなフルブリッジ型の電力変換回路が良く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−228881号公報(図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入力の直流電圧が固定されているハードスイッチング型の高周波インバータもしくはDC−DCコンバータにおいて、低出力域に掛かるとスイッチング素子のオン時間(オンパルス)が短くなる。図5に示す従来の回路(図5はインバータの場合を示す)では、オンパルスのきわめて短い低出力域において、所望の出力が得にくくなったり、最悪の場合、要求される出力を与えるパルス幅で回路のスイッチング素子を駆動できなくなったりするという問題があった。
【0005】
上記課題を解決する手段としては、入力の直流電圧を制御する方法が考えられる。
ところが、それを行うためには入力直流電圧の前段に更に電力変換回路が必要となり、
装置の大型化、高価化という別の課題が発生する。
本発明は上記の課題を、安価かつ簡便に解決する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、フルブリッジ型の電力変換回路の片側アームの中点と、何らかの手段によって2分割された入力直流電圧の中間電圧との間を、逆耐圧を持たせた双方向スイッチを介して接続させる。
そして、高出力時においては、該双方向スイッチは作動せず、1対の上下アームが作動するフルブリッジ運転を行う。
また、低出力時においては、双方向スイッチが接続されたアームのスイッチングデバイスを作動させず、双方向スイッチを全導通状態にすることで、ハーフブリッジ回路を構成する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ハーフブリッジ回路では同一出力条件において、オンパルスがフルブリッジ回路の2倍になるため、低出力域におけるオンパルスの極小化による悪影響を回避することが可能になる。この結果、高出力域までの全領域において、総合的に高効率の電力変換を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す回路図
【図2】この発明の第2の実施形態を示す回路図
【図3】この発明の第3の実施形態を示す回路図
【図4】この発明の第4の実施形態を示す回路図
【図5】従来のフルブリッジ回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、図2に本明細書において提案する電力変換回路を示す。図1はインバータ、図2はDC−DCコンバータとして構成した例である。もちろん、半導体スイッチング素子後段の負荷側の構成は図1、図2に示した方法に限るものではない。
ここでは、スイッチングアームと逆阻止能力を有す双方向スイッチング素子を一つのモジュールにパッケージングしたデバイスを用いることにより、所要のスイッチングモジュールを最小限に抑えることが可能となり、低コスト化はもちろん、低損失で安価に発明を実施することが可能である。
【0010】
図1に本発明の第1の実施形態を示す。図1の回路は、直流入力電圧をスイッチングして交流電圧を出力するインバータ回路である。ここで、高出力時においては、双方向スイッチ5をオフし、1対の上下アームのスイッチング素子1〜4が作動するフルブリッジによる電力変換を行う。一方、低出力時においては、双方向スイッチ5が接続されたアームの半導体スイッチング素子1、2が作動せず、双方向スイッチ5を全導通状態にする。
【0011】
図2に本発明の第2の実施形態を示す。図2の回路は、直流入力電圧をスイッチングして交流電圧に変換し、ダイオードにて構成される整流回路6によって、再度所望の直流電圧に変換するDC−DC変換回路である。もちろん、交流から直流への再変換部は図2に示す形態に限定されるものではない。この例においても、高出力時においては、双方向スイッチ5をオフし、1対の上下アームのスイッチング素子1〜4が作動するフルブリッジによる電力変換を行い、低出力時においては、双方向スイッチ5が接続されたアームの半導体スイッチング素子1、2が作動させず、双方向スイッチ5を全導通状態とする。
図3には、図1の回路の亜種としての、出力部に変圧器7を挿入して入力と出力とを絶縁した回路を示す。
【0012】
また図4には、図2の回路の亜種としての、インバータ部とダイオード整流器6との間に変圧器7を挿入して入力と出力とを絶縁した回路を示す。本実施例においても、交流から直流への再変換部は図4に示す形態に限定されるものではない。
いずれの形態においても、高出力時と低出力時に双方向スイッチのオン・オフを切替えるものであるが、この切替えにあたっては、例えば出力電圧などの指令値を、予め定めた基準値と比較する等、様々な手段が考えられる。
【符号の説明】
【0013】
1、2、3、4…半導体スイッチング素子、5…双方向スイッチ、6…整流器、7…変圧器絶縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各アームに複数の半導体スイッチングデバイスを備え、入力直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換する電力変換回路であって、
入力直流電圧を半分の電圧に分割する電圧中点と半導体スイッチングデバイスの片側アームの中点との間に、逆阻止能力を有す双方向スイッチを接続したことを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
各アームに複数の半導体スイッチングデバイスを備え、入力直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換し、その交流電圧を整流器により直流電圧に再変換するDC−DC変換回路であって、
入力直流電圧を半分の電圧に分割する電圧中点と半導体スイッチングデバイスの片側アームの中点との間に、逆阻止能力を有す双方向スイッチを接続したことを特徴とする電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65429(P2012−65429A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206876(P2010−206876)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】