説明

電力変換装置

【課題】インバータの入力側の直流中間電圧の変動を抑制し蓄電手段への蓄電と直流中間電圧の制御とを効率よく行なう。
【解決手段】非停電時には、蓄電池8の実蓄電電圧BATと蓄電電圧指令値Sbatとの偏差である蓄電電圧偏差ΔBATと、直流中間回路3の実直流中間電圧DCと制御用直流中間電圧指令値SAdcとの偏差である直流中間電圧偏差ΔDCとを演算し、これらの偏差を偏差信号δVとしこの偏差信号δVに基づき昇降圧チョッパ7に対する昇降圧制御信号を生成し、実蓄電電圧BATと実直流中間電圧DCとのうちそれぞれの目標値に対する不足分が大きい方を優先して昇圧動作又は降圧動作を行なわせる。その際、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回るときには蓄電電圧偏差ΔBATを零相当の上限値Hbに制限し、直流中間電圧の制御を優先して行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流入力を整流して得た直流電力を蓄電手段に充電すると共に、整流して得た直流電力又は蓄電手段の蓄電エネルギを利用して負荷に電力供給を行なう電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電にて負荷に電力供給を行なう無停電電源装置として、例えば、図3に示すような無停電電源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図3において、1は交流電源、2はこの交流電源1からの交流電力を直流電力に変換する整流器、3は整流器2の直流出力に接続された直流中間回路、4は直流中間回路3の電圧を平滑するための直流コンデンサ、5は直流中間回路3からの直流電力を交流電力に変換するインバータ、6は負荷である。
【0003】
7は、直流中間回路3から蓄電池8への充電及び蓄電池8から直流中間回路3への放電を行なう昇降圧チョッパを示す。
この昇降圧チョッパ7は、直列に接続されたIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等で構成される第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bと、第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bのそれぞれに逆並列に接続されたフリーホイールダイオード7c及び7dと、第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bの接続点に一端が接続されたチョッパリアクトル7eと、チョッパリアクトル7eの他端及び第2のトランジスタ7bのエミッタ側との間に、第2のトランジスタ7bと並列に接続される平滑コンデンサ7f及び前記蓄電池8とを備えている。
【0004】
そして、直列に接続された第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bの両端が、直流コンデンサ4とインバータ5との間にこれらと並列に接続されている。
また、9は、昇降圧チョッパ7を降圧チョッパ動作させて蓄電池8を充電させると共に、昇降圧チョッパ7を昇圧チョッパ動作させて蓄電池8を直流電源として直流中間回路3に直流電力を供給するチョッパ制御回路を示す。
【0005】
このチョッパ制御回路9は、第1トランジスタ7aを駆動する第1ゲート駆動回路(GDU)9a、第2トランジスタ7bを駆動する第2ゲート駆動回路(GDU)9b、第1ゲート駆動回路9a及び第2ゲート駆動回路9bへゲートパルスを出力するパルス発生回路9cを備えている。第1ゲート駆動回路9a及び第2ゲート駆動回路9bは、パルス発生回路9cからのゲートパルスに応じて第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bにゲート駆動信号を供給し、ゲートパルスに応じて第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bをオン・オフ動作させる。
【0006】
また、10は交流電源1からの入力電圧を検出する電圧センサ、11は電圧センサ10の検出結果に基づき、交流電源1が停電状態にあることを検出する停電検出器、12は直流中間回路3の直流電圧を検出する電圧センサ、13は蓄電池8の蓄電電圧を検出する電圧センサである。これら停電検出器11、電圧センサ12及び13の検出結果は、パルス発生回路9cに入力される。そして、パルス発生回路9cは、これら検出結果に基づいて第1ゲート駆動回路9a及び第2ゲート駆動回路9bへのゲートパルスを生成する。
【0007】
このような構成において、通常、整流器2は、交流電源1からの交流電力を直流電力に変換して直流中間回路3に出力する。インバータ5は直流中間回路3からの直流電力を所定の交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷6に供給する。
このとき、交流電源1からの入力電圧を検出する電圧センサ10の検出結果に基づいて交流電源1の停電を検出する停電検出器11において停電が検出されておらず、且つ、電圧センサ12で検出される直流中間回路3の直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも高いときには、パルス発生回路9cは、第1トランジスタ7aがオン・オフ動作を繰り返すように第1ゲート駆動回路9aへゲートパルスを出力する。
【0008】
すなわち、パルス発生回路9cが、第1ゲート駆動回路9aを動作させ、第1ゲート駆動回路9aからのゲート駆動信号により第1トランジスタ7aをオンさせると、直流中間回路3、第1トランジスタ7a、チョッパリアクトル7e、蓄電池8、直流中間回路3の経路により蓄電池8へ充電電流が流れる。次いで、第1トランジスタ7aをオフさせると、チョッパリアクトル7eに流れていた電流は、チョッパリアクトル7e、蓄電池8、第2フリーホイールダイオード7d、チョッパリアクトル7eの経路で還流し、直流中間回路3を直流電源とした、第1トランジスタ7a、チョッパリアクトル7e、第2フリーホイールダイオード7dにより構成される周知の降圧チョッパとし動作し、蓄電池8を充電する。
【0009】
さらに、例えば負荷6の消費電力と蓄電池8への蓄電電力との和が制限したい交流電源1からの供給電力のしきい値を超えた状態であって、電圧センサ12で検出される直流中間回路3の直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも低いときには、パルス発生回路9cでは、まず、蓄電池8への充電を停止するように第1ゲート駆動回路9aへのゲートパルスを出力する。蓄電池8への充電を停止してもなお偏差がある場合、つまり蓄電池8への充電を停止すると、直流中間回路3の電圧は上昇するが、負荷6の消費電力が大きいためにそれでもなお直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも低い場合には、第2トランジスタ7bがオン・オフ動作を繰り返すように第2ゲート駆動回路9bへゲートパルスを出力して、後述の昇圧チョッパ動作を行なわせ、直流中間電圧が直流中間電圧指令値となるように動作する。これによって、交流電源1からの供給電力を、所望の入力電力に制限している。
【0010】
他方、交流電源1が停電した場合は、停電検出器11がパルス発生回路9cへ信号を出力し、これを受けてパルス発生回路9cは、第2トランジスタ7bがオン・オフ動作を繰り返すように第2ゲート駆動回路9bへゲートパルスを出力し、昇圧チョッパ動作を行なわせる。これによって、負荷6へ無停電で交流電力を供給する。
ここで、パルス発生回路9cが、第2ゲート駆動回路9bを動作させ、第2ゲート駆動回路9bからのゲート駆動信号により、第2トランジスタ7bをオンさせると、蓄電池8を直流電源にして、蓄電池8、チョッパリアクトル7e、第2トランジスタ7b、蓄電池8の経路で電流が増加しつつ流れる。
【0011】
次いで、第2トランジスタ7bをオフにすると、チョッパリアクトル7e、第1フリーホイールダイオード7c、直流中間回路3、インバータ5の経路で電流が流れ、蓄電池8を直流電源とした、第2トランジスタ7b、チョッパリアクトル7e、第1フリーホイールダイオード7cにより構成される周知の昇圧チョッパとして動作し、直流中間回路3へ直流電力を供給する。
【0012】
つまり、パルス発生回路9cは、図4に示すように、蓄電池8の蓄電電圧指令値と電圧センサ13で検出される蓄電池8の実蓄電電圧との偏差が零となるようにPI制御処理を行なうPI調節器14と、直流中間回路3の直流中間電圧指令値と電圧センサ12で検出される直流中間回路3の実直流中間電圧との偏差が零となるようにPI制御処理を行なうPI調節器15と、を備えており、昇降圧チョッパ7を昇圧チョッパとして動作させる場合と、降圧チョッパとして動作させる場合とで、蓄電電圧偏差に基づき調整を行なうPI調節器14と直流中間電圧偏差に基づき調整を行なうPI調節器15とを切り替えて制御を行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−186689号公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来の無停電電源装置においては、停電検出器11が停電を検出しておらず、且つ、電圧センサ12で検出される直流中間回路3の直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも低いときには、パルス発生回路9cでは、まず、蓄電池8への充電を停止し、それでもなお直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも低い場合には、昇降圧チョッパ7を昇圧チョッパ動作させることにより、直流中間電圧の回復を図っている。つまり、蓄電池8への充電を停止した時点から、蓄電池8の放電を開始するまでの間に、直流中間電圧が回復したかどうかを判定するための待機時間を設けている。
【0015】
このため、交流電源1に停電が生じた結果、直流中間電圧が直流中間電圧指令値よりも低下した場合には、速やかな直流中間電圧の回復が望まれるにも関わらず、実際に蓄電池8の放電が開始されるまでに時間がかかり、蓄電池8からの電力供給が遅くなるため、その結果、直流中間電圧の低下が進むことになる。蓄電池8からの電力供給が開始されるまでの間の直流中間電圧の低下を抑制するためには、その低下分に相当する容量の直流コンデンサを設置する必要があり、直流中間電圧の低下分が大きいときほど、直流コンデンサの容量を大きくする必要があり、これはすなわちコストの増加や、装置全体の体積増加にもつながる。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであって、交流電源に異常が発生した場合など、直流中間電圧を変動させる事象が発生した場合であっても直流中間電圧の低下を抑制することの可能な電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電力変換装置は、交流電源入力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成しこの負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータと、前記直流電力を蓄電する蓄電手段と、前記整流器と前記インバータとの間に接続され、入力される制御信号に応じて昇圧又は降圧動作を行い、前記整流器と前記インバータとの間の直流中間電圧を降圧して前記蓄電手段への充電を行なうと共に前記蓄電手段の蓄電エネルギを利用して前記直流中間電圧を昇圧する昇降圧回路と、を備えた電力変換装置であって、前記直流中間電圧を検出する直流中間電圧検出手段と、前記蓄電手段の蓄電電圧を検出する蓄電電圧検出手段と、前記直流中間電圧の目標値と前記直流中間電圧検出手段で検出される実直流中間電圧との偏差を演算する直流中間電圧偏差演算手段と、前記蓄電手段の蓄電電圧の目標値と前記蓄電電圧検出手段で検出される実蓄電電圧との偏差を演算する蓄電電圧偏差演算手段と、前記直流中間電圧偏差演算手段で演算される直流中間電圧偏差と前記蓄電電圧偏差演算手段で演算される蓄電電圧偏差とからこれらの偏差を演算し、この偏差が零となるように前記制御信号を生成する昇降圧制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に係る電力変換装置は、前記昇降圧制御手段は、前記交流電源入力が予め設定したしきい値以上であり且つ前記実直流中間電圧が予め設定した制限開始電圧より小さいときに、前記蓄電電圧偏差演算手段で演算された蓄電電圧偏差の最大値を制限する第1の制限手段を備えることを特徴としている。
また、請求項3に係る電力変換装置は、前記昇降圧制御手段は、前記整流器への入力電流を検出する入力電流検出手段と、前記交流電源入力が予め設定したしきい値以上であり且つ前記入力電流検出手段で検出される実入力電流が予め設定した制限開始電流以上であるときに、前記蓄電電圧偏差演算手段で演算された蓄電電圧偏差の最大値を制限する第2の制限手段を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4に係る電力変換装置は、前記インバータは、前記交流電源入力が予め設定したしきい値より小さいときには前記蓄電手段の蓄電エネルギを利用して前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置であって、前記交流電源入力が前記しきい値以上であるときには、前記整流器において前記直流電力に変換するときの直流電圧変換目標値から予め設定した規定値を減算した値を、前記直流中間電圧の目標値とし、前記交流電源入力が前記しきい値よりも小さいときには、前記直流電圧変換目標値を前記直流中間電圧の目標値とすることを特徴としている。
【0019】
また、請求項5に係る電力変換装置は、前記昇降圧制御手段は、前記直流中間電圧偏差と前記蓄電電圧偏差との偏差に対して比例−積分制御処理を行なって前記制御信号を生成することを特徴としている。
さらに、請求項6に係る電力変換装置は、前記交流電源入力のしきい値は、前記交流電源に停電が生じたとみなすことの可能な値に設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電力変換装置は、整流器とインバータとの間の電圧である直流中間電圧の目標値と実直流中間電圧との偏差と、蓄電手段の蓄電電圧の目標値と実蓄電電圧との偏差とからこれらの偏差を演算し、これらの偏差が零となるように制御信号を生成する。そして、この制御信号に応じて直流中間電圧がその目標値と一致するように、又は蓄電電圧がその目標値と一致するように、昇降圧回路を動作させるようにしたから、直流中間電圧と蓄電電圧とのうち、それぞれの目標値に対する不足分がより大きい方を優先して目標値に一致させるように昇降圧回路を動作させることができ、蓄電電圧に対する制御と直流中間電圧に対する制御との切り替えを的確に行うことができる。
【0021】
また、請求項2に係る電力変換装置によれば、交流電源入力がそのしきい値以上であり且つ実直流中間電圧が予め設定した制限開始電圧よりも小さいときには、蓄電電圧偏差演算手段で演算された蓄電電圧偏差の最大値を制限するようにしたため、例えば、制限開始電圧として、正常状態において直流中間電圧がとり得る値よりも小さく且つ交流電源入力がそのしきい値を下回るときの直流中間電圧のとり得る値よりも大きな値に設定することにより、交流電源入力がそのしきい値を下回る以前の、直流中間電圧が通常とり得る値を下回った時点で蓄電電圧偏差の最大値を制限することになり、この時点で蓄電電圧の制御よりも、直流中間電圧を目標値に一致させる制御が行なわれやすくなる。
【0022】
このため、交流電源入力がしきい値を下回ると、この交流電源入力が低下することに起因して直流中間電圧が低下する可能性があるが、交流電源入力がしきい値を下回る可能性があるとみなすことの可能な時点で、蓄電電圧の制御よりも直流中間電圧の制御を優先して行い直流中間電圧が目標値に一致させるための制御を開始するため、実際に交流電源入力がしきい値を下回った時点で、この交流電源入力の低下に伴って生じる直流中間電圧の低下を抑制することができる。
【0023】
また、請求項3に係る電力変換装置によれば、交流電源入力が前記しきい値以上であり且つ整流器に入力される入力電流が予め設定した制限開始電流以上であるときには、蓄電電圧偏差の最大値を制限するようにしたため、例えば前記交流入力電力が前記しきい値を下回る可能性があるとみなすことの可能な前記入力電流相当の値を制限開始電流として設定することにより、交流電源入力がそのしきい値を下回る以前の、しきい値を下回る可能性があると予測される時点で蓄電電圧偏差の最大値を制限するため、この時点で蓄電電圧の制御よりも、直流中間電圧を目標値に一致させる制御が行なわれやすくなる。
【0024】
このため、交流電源入力がしきい値を下回ると交流電源入力が低下することに起因して直流中間電圧が低下する可能性があるが、交流電源入力がしきい値を下回る可能性があるとみなすことの可能な時点で、蓄電電圧の制御よりも直流中間電圧の制御を優先し、直流中間電圧を目標値に一致させる制御を開始するため、実際に交流電源入力がしきい値を下回った時点における直流中間電圧の低下を抑制することができる。
【0025】
また、請求項4に係る電力変換装置によれば、交流電源入力がしきい値以上であるときには、整流器において直流電力に変換するときの直流電圧変換目標値から予め設定した規定値を減算した値を直流中間電圧の目標値としたため、例えば規定値として通常状態で直流中間電圧がとり得る変動分の最大値相当を設定することにより、通常生じ得る直流中間電圧の変動分相当だけ低い値となるように直流中間電圧が制御される。このため、直流中間電圧が通常とり得る直流中間電圧の変動分を超えて変動するときにのみこの変動を抑制するように動作させることができる。
【0026】
また、交流電源入力がしきい値よりも小さいときには、整流器において直流電力に変換するときの直流電圧変換目標値を直流中間電圧の目標値とするため、交流電源側から充分な電力供給が行なわれないときには、直流中間電圧がその目標値と一致するように制御を行ない、直流中間電圧を前以って真の目標値である直流中間電圧の目標値相当まで高めておくことによって、直流中間電圧を充分に上昇させることができない状態となり直流中間電圧が低下する状態となったときに、直流中間電圧が目標値を下回るタイミングを遅らせることができ、その分、負荷への電力供給を継続することができる。
【0027】
また、請求項5に係る電力変換装置は、前記直流中間電圧偏差と前記蓄電電圧偏差との偏差に対して比例−積分制御処理を行なって前記制御信号を生成するため、直流中間電圧の制御と蓄電電圧の制御とを両立させることの可能な制御信号を容易に生成することができる。
特に、請求項6に係る電力変換装置は、交流電源入力のしきい値として、交流電源に停電が生じたとみなすことの可能な値を設定したため、交流電源に停電が生じたことにより交流電源入力が低下した場合の、蓄電電圧に対する制御と直流中間電圧に対する制御との切り替えを的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した第1の実施の形態におけるパルス発生回路の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した第2の実施の形態におけるパルス発生回路の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用した無停電電源装置の一例を示すブロック図である。
【図4】従来のパルス発生回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
ここでは、本発明を無停電電源装置に適用した場合について説明する。この無停電電源装置の基本的な構成は、図3に示す従来の無停電電源装置と同一であって、図3に示す無停電電源装置において、パルス発生回路9cの構成が異なっている。
【0030】
図1は、本発明を適用したパルス発生回路9cの構成を示すブロック図である。
このパルス発生回路9cには、図3で説明したように、交流電源1が停電状態にあることを検出する停電検出器11の検出結果、電圧センサ12で検出した直流中間回路3の実直流中間電圧DC、電圧センサ13で検出した蓄電池8の実蓄電電圧BATが入力される。
【0031】
図1において、21は、蓄電電圧偏差ΔBATを演算する演算器、22は、演算器21で演算された蓄電電圧偏差ΔBATの最大値を制限する上限リミッタ、23は、上限リミッタ22での制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′から後述の直流中間電圧偏差ΔDC又は制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′を減算し、偏差信号δVを出力する演算器、24は、演算器23で演算した偏差信号δVをPI(比例−積分)制御処理し、昇降圧制御信号を生成するPI調節器、25は、PI調節器24で生成した昇降圧制御信号に基づいて公知の手順でPWM制御信号を生成するPWM信号生成部、26は、PWM信号生成部25で生成されたPWM制御信号と、このPWM制御信号を反転回路27で反転したPWM反転制御信号と、をもとに、第1ゲート駆動回路9a及び第2ゲート駆動回路9bへのゲートパルスを生成するデッドタイム生成部である。
【0032】
また、31は、モード判定部、32は、モード判定部31での判定結果に応じて、上限リミッタ22の上限値を選択する上限値選択部、33は、停電検出器11で交流電源1が停電状態にあることが検出されたとき、上限リミッタ22の上限値を零に設定する停電時上限値選択部である。
さらに、41は、停電検出器11の検出結果に応じてDC偏差を選択するDC偏差選択部、42は、直流中間電圧指令値Sdcに基づき制御用直流中間電圧指令値SAdcを演算する演算器、43は、制御用直流中間電圧指令値SAdcから実直流中間電圧DCを減算して直流中間電圧偏差ΔDCを演算する演算器、44は、停電検出器11での検出結果に応じて、直流中間電圧偏差ΔDCの出力先を切り替える切り替え部、45は、直流中間電圧偏差ΔDCの最小値を制限する下限リミッタである。
【0033】
演算器21は、蓄電池8の蓄電電圧の目標値として予め設定された蓄電電圧指令値Sbatから電圧センサ13で検出した実蓄電電圧BATを減算し、これを蓄電電圧偏差ΔBATとして出力する。前記実蓄電電圧BATは、蓄電電圧指令値Sbat以下の値をとるため、蓄電電圧偏差ΔBATは零以上の正値となる。
上限リミッタ22は、演算器21から入力される蓄電電圧偏差ΔBATの最大値を、上限値選択部32で選択された上限値Ha又はHb、或いは、停電時上限値選択部33で設定された上限値零に制限する。
【0034】
モード判定部31には、電圧センサ12からの実直流中間電圧DCと、整流器2において交流電力を直流電力に変換する際の直流電圧の目標値、すなわち直流中間回路3の直流中間電圧の目標値である直流中間電圧指令値Sdcと、制御用直流中間電圧指令値SAdcと、が入力される。この制御用直流中間電圧指令値SAdcは、直流中間電圧指令値SdcからDC偏差を減算した値である。
【0035】
そして、モード判定部31は、実直流中間電圧DCが、直流中間電圧指令値Sdc以上であるときには、上限値選択部32において上限値Haを選択する選択信号を出力する。また実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも小さいときには、上限値選択部32において上限値Hbを選択する選択信号を出力する。つまり、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdc以上であり且つ直流中間電圧指令値Sdcよりも小さいときには、上限値が変化しないようにすることでヒステリシスを設けており、これによって不要に上限値が変化することを防止している。
【0036】
上限値選択部32は、モード判定部31からの選択信号に応じて上限値HaとHbとのうちの何れかを選択し、これを上限リミッタ22の上限値として設定する。前記上限値Haは、上限値Hbよりも大きな値であって、交流電源1が非停電状態であるときに蓄電池8を充電する場合に、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22で制限されない値に設定され、例えば蓄電池8の充電電圧定格値相当に設定される。また、上限値Hbは、蓄電電圧偏差ΔBATに対する制御をどの程度行なうかを決定する値であって零以上の値に設定され、この値が小さいときほど、蓄電電圧偏差ΔBATに対する制御の割合が小さくなる。上限値Hbは、例えば零に設定される。
【0037】
停電時上限値選択部33は、停電検出器11で交流電源1が停電状態にあることが検出されたときには、上限リミッタ22の上限値として零を選択し、停電検出器11で交流電源1が非停電状態にあることが検出されたときには、上限リミッタ22の上限値として、上限値選択部32で設定された上限値Ha又はHbを選択する。
DC偏差選択部41は、停電検出器11で交流電源1が停電状態にあることが検出されるときにはDC偏差として零を選択し、非停電状態にあることが検出されるときには、DC偏差として予め設定した規定値εdcを選択する。この規定値εdcは、正の固定値であって、例えば、交流電源1が非停電状態であり且つ整流器2が正常に動作している状態で、負荷6の負荷量の急変により生じ得る直流中間電圧の低下量の最大値と同等程度に設定される。
【0038】
演算器42は、直流中間電圧指令値SdcからDC偏差選択部41で選択されたDC偏差を減算しこれを制御用直流中間電圧指令値SAdcとして演算器42に出力する。
演算器43は、演算器42で演算された制御用直流中間電圧指令値SAdcから電圧センサ12で検出された実直流中間電圧DCを減算しこれを直流中間電圧偏差ΔDCとして、切り替え部44に出力する。
【0039】
切り替え部44は、停電検出器11の検出結果に応じて動作し、停電検出器11で交流電源1が非停電状態にあることが検出されるときには直流中間電圧偏差ΔDCを下限リミッタ45に出力する。停電検出器11で交流電源1が停電状態にあることが検出されるときには直流中間電圧偏差ΔDCを演算器23に出力する。
下限リミッタ45は、切り替え部44から入力される直流中間電圧偏差ΔDCの最小値を、零に制限する。そして、この下限リミッタ45で制限された制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は、演算器23に減算入力される。
【0040】
PI調節器24は、演算器23から入力される偏差信号δVに対し、偏差信号δVが零となるように、公知のPI(比例−積分)制御処理を実行し、偏差信号δVが正値であればδV相当の蓄電池8への充電を行なう昇降圧制御信号を生成し、偏差信号δVが負値であれば蓄電池8からδV相当の放電を行なう昇降圧制御信号を生成し、これをPWM信号生成部25に出力する。
PWM信号生成部25はPI調節器24からの昇降圧制御信号に基づいて公知の手順でPWM信号を生成し、このPWM信号を直接、デッドタイム生成部26に出力すると共に、PWM信号を反転回路27に出力する。
【0041】
デッドタイム生成部26は、PWM信号生成部25からのPWM信号及び反転回路27からのPWM反転信号、さらに、演算器23からの偏差信号δVを入力し、PWM信号を第1ゲート駆動回路9aにより駆動される第1トランジスタ7a用のPWM信号、PWM反転信号を第2ゲート駆動回路9bにより駆動される第2トランジスタ7b用のPWM信号とし、第1トランジスタ7a及び第2トランジスタ7bの短絡を防ぐために、両トランジスタ7a、7bを共にオフとするデッドタイムを有する第1トランジスタ用PWM信号及び第2トランジスタ用PWM信号を生成する。
【0042】
そして、演算器23からの偏差信号δVが正値であるときには第1トランジスタ用PWM信号を第1ゲート駆動回路9aに出力して、昇降圧チョッパ7を降圧動作させる。このとき、第2ゲート駆動回路9bは駆動しない。逆に偏差信号δVが負値であるときには、第2トランジスタ用PWM信号を第2ゲート駆動回路9bに出力し、昇降圧チョッパ7を昇圧動作させる。このとき、第1ゲート駆動回路9aは駆動しない。
【0043】
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
まず、非停電時の動作を説明する。
通常、整流器2は、交流電源1からの交流電力を直流電力に変換して直流中間回路3に出力する。インバータ5は直流中間回路3からの直流電力を所定の交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷6に供給する。
そして、電圧センサ10の検出結果に基づいて停電検出器11で交流電源1が停電状態にあるかどうかを判定し、交流電源1が停電状態にない場合には、DC偏差選択部41において、DC偏差として正の固定値である規定値εdcが選択され、この規定値εdcを直流中間電圧指令値Sdcから減算した値が、制御用直流中間電圧指令値SAdcとなる。
【0044】
そして、電圧センサ12で検出される実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdc以上であるときには、モード判定部31での判定結果に基づき上限値選択部32では上限値Haを選択し、また、交流電源1が非停電状態であるため、停電時上限値選択部33が上限値選択部32で設定された上限値を選択するため、上限リミッタ22の上限値は上限値Haとなる。
そして、蓄電池8の実蓄電電圧BATと蓄電電圧指令値Sbatとの偏差である蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Haよりも小さいときには、蓄電電圧偏差ΔBATは制限を受けない。このため、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は、“蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT”となる。
【0045】
一方、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdc以上であり且つ、制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいときには、直流中間電圧偏差ΔDCは負値となるが、交流電源1が非停電状態にあるため、直流中間電圧偏差ΔDCは切り替え部44を介して下限リミッタ45に供給され、ここで零に制限される。このため、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は零となる。
したがって、演算器23で演算される偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=ΔBAT′となり、結果的に、“偏差信号δV=蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT”となる。
【0046】
そして、PI調節器24により、偏差信号δV(=蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT)を零に制御する昇降圧制御信号が生成され、これに応じたPWM信号がPWM信号生成部25で生成され、生成されたPWM信号と反転回路27で反転されたPWM反転信号とをもとにデッドタイム生成部26においてデッドタイム処理が行なわれる。
このとき、偏差信号δV(=ΔBAT′)は正値であって昇降圧チョッパ7を降圧動作させる必要があるため、PWM信号を第1ゲート駆動回路9aに出力し、第2ゲート駆動回路9bは駆動しない。
このため、第1トランジスタ7aのみがオン・オフ動作し、これに伴い、昇降圧チョッパ7は前述と同様に降圧動作を行い、これによって蓄電池8への充電が行なわれ、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatと一致するように制御されることになる。
【0047】
このとき、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatを大きく下回り、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Haを超えると、蓄電電圧偏差ΔBATは上限値Haに制限されることになる。このため、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は上限値Haとなるため、偏差信号δVは“上限値Ha”となり、上限値Ha相当の充電を行なうように降圧動作が行なわれることになる。また、上限値Haは、蓄電池8の充電電圧定格値相当に設定されているため、定格以上の充電が行なわれることを回避することができる。
【0048】
ここで、制御用直流中間電圧指令値SAdcは直流中間電圧指令値Sdcから規定値εdcを減算した値であって、規定値εdcは、非停電状態での通常動作時に負荷6の負荷量の急変により生じ得る直流中間電圧の低下量の最大値と同等程度に設定される。このため、制御用直流中間電圧指令値SAdcは、通常動作時に実直流中間電圧DCがとり得る最小値相当となり、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdc(=Adc−εdc)以上であれば、実直流中間電圧DCは正常とみなすことの可能な許容範囲にあるとみなすことができ、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回っていれば実直流中間電圧DCは異常とみなすことができる。
【0049】
したがって、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdc及び制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいときには、実直流中間電圧DCは通常とり得る範囲内の値をとっており、無停電電源装置は正常に動作していると判断することができる。また、実直流中間電圧DCは直流中間電圧指令値Sdcを上回っていることから、直流中間電圧の制御は行なわずに、蓄電電圧の制御のみを行い、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatと一致するように、昇降圧チョッパ7を降圧動作させる。
【0050】
次に、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdc以上である状態から、実直流中間電圧DCが低下すると、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きい間は、上限リミッタ22の上限値はHaに維持される。
また、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいため、直流中間電圧偏差ΔDCは負値となり、下限リミッタ45による制限を受け、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は零となる。
【0051】
一方、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatを下回り、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Haよりも小さいときには、蓄電電圧偏差ΔBATは制限を受けない。したがって、偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=ΔBAT′(=蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT)となり、蓄電電圧偏差ΔBAT′が零となるように降圧動作が行なわれる。これによって、蓄電池8への充電が行なわれ蓄電電圧が蓄電電圧指令値Sbatとなるように増加する。
【0052】
また、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Haよりも大きいときには、蓄電電圧偏差ΔBATは上限値Haに制限される。したがって、偏差信号δVはΔBAT′−ΔDC′=上限値Haとなり、蓄電電圧偏差ΔBAT′が零となるように降圧動作が行なわれる。
このように、実直流中間電圧DCが、直流中間電圧指令値Sdcよりも小さいが、制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいときには、直流中間電圧が通常とり得る範囲の値であるため、直流中間電圧の制御は行なわず、蓄電電圧の制御のみを行ない、昇降圧チョッパ7は降圧動作のみを行なう。
【0053】
そして、実直流中間電圧DCがさらに低下し制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回ると、上限リミッタ22の上限値はHbに変更される。
このとき、実直流中間電圧DCは制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも小さいため、直流中間電圧偏差ΔDCは正値となり下限リミッタ45の下限値零よりも大きいため、直流中間電圧偏差ΔDCは制限を受けず、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は、“制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC”となる。
【0054】
また、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Hb(=0)よりも大きいときには、蓄電電圧偏差ΔBATは上限値Hb(=0)に制限される。
このため、偏差信号δVは“上限値Hb(=0)−(制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC)”となり、昇降圧チョッパ7は、“制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC”が零となるように昇圧動作を行なう。
【0055】
このように、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回るときには、実直流中間電圧DCが通常とり得る範囲を超えて低下しており、直流中間電圧を変動させる何らかの事象が生じたと判断されることから、蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hb(=0)に制限することで蓄電池8への充電は行なわず、蓄電電圧の制御よりも直流中間電圧の制御を優先して昇圧動作を行ない、直流中間電圧の回復を図る。
【0056】
したがって、例えば、交流電源1が非停電状態であって正常に動作し、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdc以上となる状態では、直流中間電圧を制御する必要はないため、蓄電電圧の制御を優先して行ない、昇降圧チョッパ7は、蓄電電圧が蓄電電圧指令値Sbatと一致するように降圧動作を行なう。
この状態から、交流電源1側の異常により交流電源入力が低下すると、この低下に伴い実直流中間電圧DCが低下し、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きい状態では、直流中間電圧が通常とり得る範囲内の変動であるため、引き続き蓄電電圧の制御を優先して行なう。
【0057】
そして、実直流中間電圧DCがさらに低下し制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回る状態となると、蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hb(=0)以下に制限して、直流中間電圧の制御を優先し、昇降圧チョッパ7を昇圧動作させる。つまり、実直流中間電圧DCが、通常とり得る直流中間電圧の範囲を下回った時点で昇圧動作が開始され直流中間電圧の回復が図られることになる。
【0058】
このため、例えば、交流電源1に停電が生じた場合には、交流電源1が実際に停電状態に至る前の、交流電源電圧が低下し始めた初期の段階で、直流中間電圧の回復を図るように、昇圧動作を開始させることができる。このため、交流電源1が停電状態となった場合に、これに伴って直流中間電圧が低下することを抑制することができ、すなわち直流中間電圧の低下量を小さくすることができる。
【0059】
また、例えば、交流電源1が正常に動作している状態から負荷6の負荷量の一時的な変動により直流中間電圧が低下した場合、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdcを下回ったとしてもその低下量が通常生じ得る低下量であるときには、実直流中間電圧DCは制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きな値をとる。このため、直流中間電圧偏差ΔDCは、下限リミッタ45で零に制限され、引き続き蓄電電圧の制御が優先して行なわれる。そして、負荷量が通常の負荷量に戻り、これに伴い直流中間電圧が増加すると、実直流中間電圧DCは引き続き制御用直流中間電圧指令値SAdcを上回り、直流中間電圧偏差ΔDCが下限リミッタ45で零に制限されるため、引き続き蓄電電圧の制御が優先して行なわれる。したがって、負荷6の負荷量の一時的な許容範囲での変動に伴い、実直流中間電圧DCが変動した場合であってもこれに追従して、蓄電電圧の制御から直流中間電圧の制御に切り替わることを回避することができ、すなわち、蓄電池8への蓄電から蓄電池8からの放電に制御が切り替わることを回避することができる。
【0060】
次に、交流電源1が停電状態にある場合の動作について説明する。
停電検出器11で停電が検出されると、DC偏差選択部41においてDC偏差として零が選択されるため、制御用直流中間電圧指令値SAdcは直流中間電圧指令値Sdcとなる。また、停電状態であるため、切り替え部44では演算器43で演算された直流中間電圧偏差ΔDCは直接、演算器23に入力され、直流中間電圧偏差ΔDCは制限されない。また、停電状態であるため、停電時上限値選択部33では、上限リミッタ22の上限値を零に設定する。
このため、直流中間電圧偏差ΔDCは、“直流中間電圧指令値Sdc−実直流中間電圧DC”となり、偏差信号δV=ΔBAT′−ΔDC=−ΔDCであるため、実直流中間電圧DCが直流中間電圧指令値Sdcと一致するように、直流中間電圧の制御が行なわれることになる。
【0061】
したがって、直流中間電圧指令値Sdcよりも実直流中間電圧DCの方が小さいときには、昇降圧チョッパ7は蓄電池8をエネルギ源として昇圧動作を行ない、直流中間電圧を昇圧することによって、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持し、負荷6への電力供給を引き続き行なう。逆に、直流中間電圧指令値Sdcよりも実直流中間電圧DCの方が大きいときには、昇降圧チョッパ7は降圧動作を行なって蓄電池8への充電を行なうことにより直流中間電圧の低下を図る。これによって、直流中間電圧は直流中間電圧指令値Sdcに維持され、交流電源1が停電状態ではあるが、負荷6への電力供給が継続されることになる。
【0062】
このように、交流電源1が停電状態であるときには、蓄電電圧偏差ΔBATを零に制限し、蓄電電圧の制御は行なわず、直流中間電圧の制御を優先して行なうため、直流中間電圧を、より確実に直流中間電圧指令値Sdcと一致させることができる。
また、非停電状態の場合には、制御用直流中間電圧指令値SAdcではなく、直流中間電圧指令値Sdcと、実直流中間電圧DCとが一致するように制御を行なっているため、交流電源1が停電状態となったことに伴い整流器2による直流中間電圧の制御が行なわれない場合であっても、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持することができる。
【0063】
以上説明したように、交流電源1が非停電状態にある場合、また停電状態にある場合に限らず、実直流中間電圧DCの、直流中間電圧指令値Sdcからの低下を抑制することができ、その低下量を低減することができるため、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持するための直流コンデンサ4の容量を低減することができる。したがって、その分、装置の小型化を図ることができる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図2は、第2の実施の形態における無停電電源装置のパルス発生回路9cの構成を示すブロック図である。
この第2の実施の形態における無停電電源装置の基本的な構成は、図3に示す従来の無停電電源装置と同一であって、図3に示す無停電電源装置において、パルス発生回路9cの構成が異なっている。なお、上記第1の実施の形態の図1におけるパルス発生回路9cと同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
【0065】
第2の実施の形態におけるパルス発生回路9cは、図1に示す第1の実施の形態におけるパルス発生回路9cにおいて、モード判定部31に替えて、電流センサ51、振幅演算部52及び整流器状態判定部53を備えており、上限値選択部32では、モード判定部31に替えて、整流器状態判定部53の判定結果に基づき上限値Ha又はHbを選択する。
電流センサ51は、交流電源1と整流器2との間に設けられ、交流電源1から無停電電源装置への入力電流を検出する。
振幅演算部52は、電流センサ51からの検出信号をもとにその振幅を演算し、これを入力電流振幅Wiとして出力する。
【0066】
整流器状態判定部53は、振幅演算部52で演算した入力電流振幅Wiと、予め設定した振幅指令値SWiとを入力し、入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さいときには、充電定格電圧値相当の上限値Haを選択する信号を上限値選択部32に出力し、入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上であるときには、蓄電電圧偏差ΔBATに対する制御をどの程度行なうかを決定するための上限値Hb(例えば零)を選択する信号を上限値選択部32に出力する。前記振幅指令値SWiは、非停電状態で通常動作を行なっている状態で、入力電流の振幅が通常とり得る値相当に設定される。すなわち、入力電流の振幅から、直流中間電圧の低下をもたらす状況にあるかどうかを判定することの可能な値に設定される。
【0067】
次に、上記第2の実施の形態の動作を説明する。
まず、交流電源1が非停電状態にある場合の動作を説明する。
通常、整流器2は、交流電源1からの交流電力を直流電力に変換して直流中間回路3に出力する。インバータ5は直流中間回路3からの直流電力を所定の交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷6に供給する。
そして、停電検出器11で、交流電源1が非停電状態にあると判定されるときには、DC偏差選択部41において、DC偏差として正の固定値である規定値εdcが選択され、この規定値εdcを直流中間電圧指令値Sdcから減算した値が、制御用直流中間電圧指令値SAdcとなる。また、非停電状態であるため、切り替え部44は、演算器43で演算された直流中間電圧偏差ΔDCを下限リミッタ45に出力する。このため、直流中間電圧偏差ΔDCの下限値は、零に制限されることになる。また、停電時上限値選択部33では、上限リミッタ22の上限値として、上限値選択部32で選択された上限値Ha又はHbを選択する。
【0068】
今、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいときには、直流中間電圧偏差ΔDCは負値となるが、下限リミッタ45により零に制限され、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は零となる。
このとき、振幅演算部52で演算される入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さく、負荷6が安定して電力消費を行なっていると判断されるときには、上限リミッタ22の上限値として蓄電池8への充電定格電圧値相当の上限値Haが設定される。また、蓄電電圧偏差ΔBATが上限値Haよりも小さいときには、蓄電電圧偏差ΔBATは上限リミッタ22で制限を受けない。このため、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は、“蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT”となる。
【0069】
したがって、演算器23で演算される偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=(蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT)となる。
このため、PI調節器24により、偏差信号δV(=蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT)を零に制御する昇降圧制御信号が生成され、これに応じたPWM信号がPWM信号生成部25で生成され、生成されたPWM信号と、反転回路27で反転されたPWM反転信号とをもとにデッドタイム生成部26においてデッドタイム処理が行なわれる。そして、偏差信号δVは正値であるため、PWM信号を第1ゲート駆動回路9aに出力して降圧動作を行なわせ、第2ゲート駆動回路9bは駆動しない。
【0070】
このため、第1トランジスタ7aのみがオン・オフ動作し、これによって、上記と同様の降圧動作が行なわれ、蓄電池8が充電されて、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatに一致するように制御されることになる。
このとき、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatを大きく下回り、蓄電電圧偏差ΔBATが上限リミッタ22の上限値Haを超えると、蓄電電圧偏差ΔBATは上限値Haに制限される。このため、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は“上限値Ha”となるため、偏差信号δVは上限値Haとなり、上限値Ha相当の充電を行なうように降圧動作が行なわれることになる。ここで、上限値Haは、蓄電池8の充電電圧定格値相当に設定されているため、定格以上の充電が行なわれることを回避することができる。
【0071】
このように、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きく、且つ入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さいときには、実直流中間電圧DCが通常とり得る範囲内にあり、且つ直流中間電圧が低下する傾向にもないため、直流中間電圧の制御は行なわず、蓄電電圧の制御のみを行い昇降圧チョッパ7を降圧動作させて、蓄電池8への充電を図る。
【0072】
一方、振幅演算部52で演算される入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上であって、負荷6への供給電流が通常とり得る値よりも大きく直流中間電圧が低下すると予測されるときには、上限リミッタ22の上限値として上限値Hb(=0)が設定される。このため、蓄電電圧偏差ΔBATは、上限値Hb(=0)に制限される。
そして、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きいときには、直流中間電圧偏差ΔDCは負値となるため、下限リミッタ45で零に制限され、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は零となる。
したがって、演算器23で演算される偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=上限値Hb(=0)−0=0となり、昇降圧チョッパ7は駆動されない。
【0073】
このように、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも大きい状態ではあるが、入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上であって、実直流中間電圧DCが許容範囲内に収まってはいるが、入力電流振幅Wiが比較的大きく直流中間電圧が低下すると予測されるときには、蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hb(0)に制限して、降圧動作を行なわない。これによって、直流中間電圧が低下されると予測される状態で昇降圧チョッパ7を降圧動作させることにより、直流中間電圧の減少がさらにすすむことを回避することができる。
【0074】
一方、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも小さい場合には、直流中間電圧偏差ΔDCは正値となるため、下限リミッタ45による制限を受けず、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は、“制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC”となる。
このとき、振幅演算部52で演算される入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さい場合には、上限リミッタ22の上限値として蓄電池8への充電定格電圧値相当の上限値Haが設定される。このため、蓄電電圧偏差ΔBATが上限値Haよりも小さいときには上限リミッタ22で制限を受けず、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は、“蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT”となる。
【0075】
したがって、偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=(蓄電電圧指令値Sbat−実蓄電電圧BAT)−(制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC)となり、この偏差信号δVが零となるように制御が行なわれることになる。このため、蓄電電圧偏差ΔBAT′が直流中間電圧偏差ΔDC′よりも大きいときには、これらの差分相当の充電を行なうように昇降圧チョッパ7は降圧動作し、直流中間電圧偏差ΔDC′の方が大きいときには、これらの差分相当の放電を行なうように昇降圧チョッパ7は昇圧動作を行なう。これによって、実蓄電電圧BATが蓄電電圧指令値Sbatと一致するように制御されると共に、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcと一致するように制御されることになる。
【0076】
そして、この状態から、蓄電電圧偏差ΔBATが上限値Haよりも大きくなると、蓄電電圧偏差ΔBATは上限リミッタ22で制限を受け、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は上限値Haとなる。
このため、偏差信号δVは“上限値Ha−(制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC)”となり、上限値Haの方が直流中間電圧偏差ΔDC′よりも大きいときには、偏差信号δV相当の充電を行なうように昇降圧チョッパ7が降圧動作を行ない、直流中間電圧偏差ΔDC′の方が大きいときには、偏差信号δV相当の昇圧を行なうように昇降圧チョッパ7は昇圧動作を行なって直流中間電圧の昇圧を図る。
【0077】
このように、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回るときには、実直流中間電圧DCが通常とり得る範囲を超えて低下しているため、昇圧動作を行なって直流中間電圧の回復を図るが、入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さく直流中間電圧がさらに低下することはないと予測されるときには蓄電池8への充電も図り、直流中間電圧の昇圧を図りつつ、蓄電池8への充電を図る。
【0078】
一方、振幅演算部52で演算される入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上であって、負荷6への供給電流が通常よりも大きく直流中間電圧が低下する傾向にあると予測されるときには、上限リミッタ22の上限値として上限値Hb(=0)が設定される。
このため、蓄電電圧偏差ΔBATは上限リミッタ22で制限を受け、制限後の蓄電電圧偏差ΔBAT′は“上限値Hb”となる。
【0079】
そして、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも小さいときには、直流中間電圧偏差ΔDCは正値となるため、下限リミッタ45で制限を受けず、制限後の直流中間電圧偏差ΔDC′は“制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC”となる。
したがって、偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=上限値Hb(=0)−(制御用直流中間電圧指令値SAdc−実直流中間電圧DC)となるため、直流中間電圧偏差ΔDCが零となるように、昇降圧チョッパ7は昇圧動作を行なうことになる。
【0080】
このように、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcよりも小さく且つ入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上であって、実直流中間電圧DCが許容範囲を下回り、且つ入力電流振幅Wiが比較的大きく直流中間電圧がさらに低下すると予測されるときには、蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hb(=0)に制限し、蓄電電圧の制御は行なわず、直流中間電圧の制御を優先して行い、直流中間電圧の回復を図る。
【0081】
したがって、例えば、交流電源1が正常に動作し、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを上回る状態で動作している状態において、入力電流振幅Wiが振幅指令値SWiよりも小さいときには、実直流中間電圧DCが通常とり得る範囲にあり且つ直流中間電圧が低下する傾向にもないため、蓄電電圧の制御のみを行なって蓄電池8への充電を図る。
この状態から、例えば、負荷6の消費電力が増加したり、交流電源1からの供給電力の制限を行なったりすること等により、交流電源1からの入力電流が増加し、振幅演算部52で演算される入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi以上となると、上限リミッタ22の上限値がHb(=0)に変更される。
【0082】
これにより、蓄電電圧偏差ΔBATが上限値Hb(=0)に制限されて昇降圧チョッパ7の降圧動作が停止され、降圧動作及び昇圧動作は共に行なわれない。このため、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを上回る状態ではあるが、この後、直流中間電圧が低下すると予測される状態にあるときには蓄電池8への充電が停止され、この後に生じると予測される直流中間電圧の低下と、蓄電池8への充電を行なうことによる直流中間電圧の低下とが共に作用することが回避される。
【0083】
この状態から、さらに実直流中間電圧DCが低下し制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回ると、直流中間電圧偏差ΔDCが正値となり、このとき入力電流振幅Wiは振幅指令値SWi以上であって蓄電電圧偏差ΔBATが上限値Hb(=0)に制限されているため、蓄電電圧の制御は行なわず、直流中間電圧の制御が優先して行なわれ、実直流中間電圧DCの回復が図られることになる。
【0084】
したがって、入力電流振幅Wiに基づき、直流中間電圧が低下すると予測されるときには、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回る以前の段階で蓄電池8への充電を停止することにより直流中間電圧の低下の抑制が図られ、さらに、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回ったときには、直流中間電圧の制御を優先し昇降圧チョッパ7を昇圧動作させて直流中間電圧の昇圧を図っているため、直流中間電圧の変動の抑制をより早い段階から開始することができ、結果的に直流中間電圧の低下量を低減することができる。
【0085】
また、入力電流振幅Wiに基づき直流中間電圧が低下すると予測されない場合は、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを上回るときには蓄電電圧の制御を優先して蓄電池8への充電を図り、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回るときには蓄電電圧の制御と直流中間電圧の制御とを行なっているため、直流中間電圧の低下を抑制しつつ、蓄電池8への充電を行うことができる。
【0086】
また、この第2の実施の形態においても、実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdcを下回った時点で、昇降圧チョッパ7を昇圧動作させているため、例えば、交流電源1に停電が生じた場合には、交流電源1が実際に停電状態に至る前の、交流電源電圧が低下し始めた初期の段階で、直流中間電圧の回復を図るように昇圧動作を開始することができる。したがって、停電検出器11により、交流電源1が停電状態にあると判断された時点では、既に昇圧動作が行なわれているため、交流電源1が停電状態となった時点で直流中間電圧が低下することを抑制することができ、すなわち、直流中間電圧の低下量を低減することができる。
【0087】
次に、交流電源1が停電状態にある場合の動作を説明する。
停電検出器11で交流電源1が停電状態にあることが検出されると、DC偏差選択部41において、DC偏差として零が選択されるため、制御用直流中間電圧指令値SAdcは直流中間電圧指令値Sdcとなる。また、直流中間電圧偏差ΔDCは、切り替え部44により直接、演算器23に入力され、下限リミッタ45による制限はうけない。また、停電状態であるため、停電時上限値選択部33により上限値として零が選択されるため、上限リミッタ22の上限値は零となり、蓄電電圧偏差ΔBATは零に制限される。
このため、偏差信号δVは、ΔBAT′−ΔDC′=−ΔDC′=(直流中間電圧指令値Sdc−実直流中間電圧DC)となる。
【0088】
したがって、直流中間電圧指令値Sdcよりも実直流中間電圧DCの方が小さいときには、昇降圧チョッパ7は蓄電池8をエネルギ源として昇圧動作を行ない、直流中間電圧を昇圧することによって、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持し、負荷6への電力供給を引き続き行なう。逆に、直流中間電圧指令値Sdcよりも実直流中間電圧DCの方が大きいときには、昇降圧チョッパ7は降圧動作を行なって蓄電池8への充電を行なうことにより直流中間電圧の低下を図る。これによって、直流中間電圧は直流中間電圧指令値Sdcに維持され、交流電源1が停電状態ではあるが、負荷6への電力供給が継続されることになる。
【0089】
このように、交流電源1が停電状態であるときには、蓄電電圧偏差ΔBATを零に制限し、実蓄電電圧を蓄電電圧指令値Sbatに一致させるための制御は行なわず、実直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに一致させるための制御のみを行なうため、直流中間電圧を、より確実に直流中間電圧指令値Sdcと一致させることができる。
また、非停電状態の場合には、制御用直流中間電圧指令値SAdcではなく、直流中間電圧指令値Sdcと、実直流中間電圧DCとが一致するように制御を行なっているため、交流電源1が停電状態となったことに伴い整流器2による直流中間電圧の制御が行なわれない場合であっても、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持することができる。
【0090】
以上説明したように、交流電源1が非停電状態にある場合、また停電状態にある場合に限らず、実直流中間電圧DCの直流中間電圧指令値Sdcからの低下を抑制することができ、低下量を低減することができるため、この場合も、上記第1の実施の形態と同様に、直流中間電圧を直流中間電圧指令値Sdcに維持するための直流コンデンサ4の容量を低減することができる。したがって、その分、装置の小型化を図ることができる。
【0091】
なお、上記第2の実施の形態では、電流センサ51の検出信号に基づき入力電流の振幅を演算し、これに基づき直流中間電圧が低下するかどうかを予測する場合について説明したが、例えば、入力電流の平均値を演算し、この平均値が通常とり得る平均値を上回るか否かを判断することにより、直流中間電圧が低下するか否かを予測するようにしてもよい。
【0092】
また、上記各実施の形態においては、無停電電源装置に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、入力される交流電力を直流電力に変換した後、再度交流電力に変換して負荷6に電力供給を行なうモードと、入力される交流電力を用いず蓄電池8の蓄電エネルギを利用して負荷6に電力供給を行なうモードとを備えた電力変換装置であれば適用することができる。
【0093】
また、蓄電電圧偏差ΔBATと直流中間電圧偏差ΔDCとの偏差に対してPI制御処理を行なう場合について説明したが、これに限るものではなく、例えばPID制御等、実検出信号をその目標値に一致させるための制御方法であっても適用することができる。
また、昇降圧回路として図3に示す昇降圧チョッパ7を適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、昇降圧制御信号に応じて昇圧動作と降圧動作とを切り替えて行なうようになっている昇降圧回路であれば適用することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態において、蓄電池8が蓄電手段に対応し、昇降圧チョッパ7が昇降圧回路に対応し、演算器23、PI調節器24、PWM信号生成部25、デッドタイム生成部26、第1ゲート駆動回路9a、第2ゲート駆動回路9bが昇降圧制御手段に対応し、電圧センサ12が直流中間電圧検出手段に対応し、電圧センサ13が蓄電電圧検出手段に対応し、演算器43が直流中間電圧偏差演算手段に対応し、演算器21が蓄電電圧偏差演算手段に対応している。
【0095】
また、第1の実施の形態において、モード判定部31で実直流中間電圧DCが制御用直流中間電圧指令値SAdc(制限開始電圧)を下回ることを検出したときに上限値選択部32で上限値Hbを選択させ、これに応じて上限リミッタ22で蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hbに制限する処理が第1の制限手段に対応している。
また、第2の実施の形態において、電流センサ51が入力電流検出手段に対応し、電流センサ51の検出信号に基づき振幅演算部52で演算した入力電流振幅Wiが振幅指令値SWi(制限開始電流)以上であるときに上限値選択部32で上限値Hbを選択させ、これに応じて上限リミッタ22で蓄電電圧偏差ΔBATを上限値Hbに制限する処理が第2の制限手段に対応している。
【符号の説明】
【0096】
1 交流電源
2 整流器
3 直流中間回路
4 直流コンデンサ
5 インバータ
6 負荷
7 昇降圧チョッパ
7a 第1トランジスタ
7b 第2トランジスタ
8 蓄電池
9 チョッパ制御回路
9a 第1ゲート駆動回路
9b 第2ゲート駆動回路
10 電圧センサ
11 停電検出器
12、13 電圧センサ
22 上限リミッタ
31 モード判定部
32 上限値選択部
51 電流センサ
52 振幅演算部
53 整流器状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源入力を直流電力に変換する整流器と、
前記直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成しこの負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータと、
前記直流電力を蓄電する蓄電手段と、
前記整流器と前記インバータとの間に接続され、入力される制御信号に応じて昇圧又は降圧動作を行い、前記整流器と前記インバータとの間の直流中間電圧を降圧して前記蓄電手段への充電を行なうと共に前記蓄電手段の蓄電エネルギを利用して前記直流中間電圧を昇圧する昇降圧回路と、を備えた電力変換装置であって、
前記直流中間電圧を検出する直流中間電圧検出手段と、
前記蓄電手段の蓄電電圧を検出する蓄電電圧検出手段と、
前記直流中間電圧の目標値と前記直流中間電圧検出手段で検出される実直流中間電圧との偏差を演算する直流中間電圧偏差演算手段と、
前記蓄電手段の蓄電電圧の目標値と前記蓄電電圧検出手段で検出される実蓄電電圧との偏差を演算する蓄電電圧偏差演算手段と、
前記直流中間電圧偏差演算手段で演算される直流中間電圧偏差と前記蓄電電圧偏差演算手段で演算される蓄電電圧偏差とからこれらの偏差を演算し、この偏差が零となるように前記制御信号を生成する昇降圧制御手段と、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記昇降圧制御手段は、前記交流電源入力が予め設定したしきい値以上であり且つ前記実直流中間電圧が予め設定した制限開始電圧より小さいときに、前記蓄電電圧偏差演算手段で演算された蓄電電圧偏差の最大値を制限する第1の制限手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記昇降圧制御手段は、
前記整流器への入力電流を検出する入力電流検出手段と、
前記交流電源入力が予め設定したしきい値以上であり且つ前記入力電流検出手段で検出される実入力電流が予め設定した制限開始電流以上であるときに、前記蓄電電圧偏差演算手段で演算された蓄電電圧偏差の最大値を制限する第2の制限手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記インバータは、前記交流電源入力が予め設定したしきい値より小さいときには前記蓄電手段の蓄電エネルギを利用して前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置であって、
前記交流電源入力が前記しきい値以上であるときには、前記整流器において前記直流電力に変換するときの直流電圧変換目標値から予め設定した規定値を減算した値を、前記直流中間電圧の目標値とし、
前記交流電源入力が前記しきい値よりも小さいときには、前記直流電圧変換目標値を前記直流中間電圧の目標値とすることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記昇降圧制御手段は、前記直流中間電圧偏差と前記蓄電電圧偏差との偏差に対して比例−積分制御処理を行なって前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記交流電源入力のしきい値は、前記交流電源に停電が生じたとみなすことの可能な値に設定されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172105(P2010−172105A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11941(P2009−11941)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】