説明

電力変換装置

【課題】単相インバータ内の複数の半導体スイッチング素子の通電負担をバランスさせて各素子の発熱を均等化する。
【解決手段】単相インバータ3の短絡時において、P側母線36を経て短絡させるP側短絡経路36aと、N側母線37を経て短絡させるN側短絡経路37aとのそれぞれに対応する電流位相期間を、電流位相の1周期内で単相インバータ3内の複数のMOSFET、ダイオードの通電負担がバランスするように予め設定し、検出された電流位相に応じてP側短絡経路36aとN側短絡経路37aとを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関し、特に3レベル出力の単相インバータを備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置として、以下に示すように、複数の電圧補償回路の交流側を直列接続して成るインバータ回路を交流系統に接続し、系統の瞬低時等の電圧変動を補償する電圧変動補償装置がある。
電圧補償回路は、ダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子と充電コンデンサとを備え、充電コンデンサの電圧は半導体スイッチング素子のオンオフ制御により正負いずれかの極性で系統に接続される。系統電圧が瞬時低下したときには、複数の電圧補償回路を組み合わせてその出力電圧の総和で電圧補償する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3872370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電力変換装置では、直列接続された各単相インバータは、充電コンデンサを充電、放電あるいは短絡させて3レベルの電圧を発生し、電流極性および電流経路により各単相インバータ内の各半導体スイッチング素子の通電電流および通電期間が決定される。このため、通電によって発生する各スイッチング素子の発熱を均等化することは困難であった。また、冷却のための放熱装置を大きくしたり、発熱を均等化するために半導体スイッチング素子を並列接続するなど、装置構成が大型化してコストが増大するという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、単相インバータ内の複数のスイッチング素子の通電負担をバランスさせて発熱を均等化し、信頼性を高めると共に装置構成の小型化、低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による電力変換装置は、それぞれ複数の半導体スイッチング素子と直流電圧源とを有する複数の単相インバータの交流側を直列接続して成るインバータ回路と、上記各単相インバータを制御して該各単相インバータの正、負、0の3レベル出力を組み合わせて上記インバータ回路から所定の電圧を出力させる制御回路とを備える。また、上記インバータ回路の電流位相を検出する手段を備える。そして、上記制御回路は、上記各単相インバータの出力を0とするとき、正側母線を経て上記各単相インバータを短絡させる第1の短絡経路と、負側母線を経て上記各単相インバータを短絡させる第2の短絡経路とのいずれかを、検出された上記インバータ回路の電流位相に応じて選択し、電流位相の1周期内で上記各単相インバータ内の複数の上記半導体スイッチング素子の通電期間を制御するものである。
【0007】
またこの発明による電力変換装置は、複数の半導体スイッチング素子と直流電圧源とを有する単相インバータから成るインバータ回路と、上記単相インバータの正、負、0の3レベル出力を制御して上記インバータ回路から所定の電圧を出力させる制御回路とを備える。また、上記インバータ回路の電流位相を検出する手段を備える。そして、上記制御回路は、上記単相インバータの出力を0とするとき、正側母線を経て上記単相インバータを短絡させる第1の短絡経路と、負側母線を経て上記単相インバータを短絡させる第2の短絡経路とのいずれかを、検出された上記インバータ回路の電流位相に応じて選択し、電流位相の1周期内で上記単相インバータ内の複数の上記半導体スイッチング素子の通電期間を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明によると、単相インバータの短絡する2種の短絡経路を電流位相に応じて選択して、電流位相の1周期内で上記単相インバータ内の複数の半導体スイッチング素子の通電期間を制御するため、単相インバータ内の複数の半導体スイッチング素子の通電負担をバランスさせて各素子の発熱を均等化することができる。これにより、電力変換装置の信頼性を高めると共に、各素子の発熱を均等化できるため、放熱装置の小型化や半導体スイッチング素子の並列数の低減化が図れ、装置構成の小型化、低コスト化を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1による電圧変動補償装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電圧変動補償装置の動作を説明する電圧波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1による制御回路の動作を説明する制御ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1による単相インバータの構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による単相インバータの2種の短絡経路を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による単相インバータの2種の短絡経路と電流位相の対応を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による単相インバータの短絡時における各素子の通電負担を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2による単相インバータの2種の短絡経路と電流位相の対応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置としての電圧変動補償装置の構成図である。電圧変動補償装置は、補償回路であるインバータ回路10と、このインバータ回路10の出力制御をする制御回路15とを備え、交流電源1からトランス2を介して入力される交流電圧Vin(以下、入力電圧Vinと称す)に、インバータ回路10の出力電圧である補償電圧を重畳して所望の出力交流電圧Vac(以下、出力電圧Vacと称す)の交流電力を負荷5に供給する。
【0011】
図に示すように、インバータ回路10は、複数(この場合、2個)の単相インバータ3、4の交流側を直列接続して構成され、インバータ回路10の交流側が交流電源1にトランス2を介して直列接続される。各単相インバータ3、4は、それぞれ4個の半導体スイッチ回路31〜34、41〜44から成るフルブリッジインバータと、直流電圧源としての電力蓄積用のコンデンサ35、45とを備える。各半導体スイッチ回路31〜34、41〜44は、ダイオード31b〜34b、41b〜44bが逆並列接続された半導体スイッチング素子としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)31a〜34a、41a〜44aにて構成される。なお、ダイオードが逆並列に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やソース・ドレイン間にダイオードが内蔵されたMOSFETを各半導体スイッチ回路31〜34、41〜44に用いても良い。
【0012】
また、入力電圧Vinを検出する入力電圧検出器6と、出力電圧Vacを検出する出力電圧検出器7と、インバータ回路10を流れる電流Iinを検出する電流検出器8とを備える。制御回路15は、入力電圧検出器6、出力電圧検出器7および電流検出器8から各検出値を入力して、インバータ回路10内の各単相インバータ3、4のMOSFET31a〜34a、41a〜44aを駆動するゲート信号16a、16bを生成してインバータ回路10を出力制御する。各単相インバータ3、4では、コンデンサ35、36が外部から電圧供給されて所定の電圧まで充電され、各単相インバータ3、4は、制御回路15からのゲート信号16a、16bにより正、負、0の3レベルの出力電圧を発生する。
なお、36、37は、単相インバータ3のP側母線、N側母線であり、46、47は、単相インバータ4のP側母線、N側母線である。
【0013】
このように構成される電圧変動補償装置の動作について、図2に示す電圧波形図に基づいて説明する。
交流電源1からの入力はトランス2にて電圧変換および限流されて入力電圧Vinが電圧変動補償装置に入力されるが、交流電源1に瞬時的な電圧低下などが発生すると、入力電圧Vinは変動する。インバータ回路10は、各単相インバータ3、4の総和による補償電圧17を出力して入力電圧Vinに重畳し、電圧変動補償装置は所望の出力電圧Vacを出力する。なお、実際の制御では、検出された出力電圧Vacが目標電圧Vacとなるように、インバータ回路10が補償電圧17を出力して出力電圧Vacの電圧変動を補償する。
【0014】
図3は、制御回路15での動作を説明する制御ブロック図である。なお、制御回路15には、入力電圧検出器6、出力電圧検出器7および電流検出器8から各検出値である入力電圧Vin、出力電圧Vac、および電流Iinが入力される。
図3に示すように、予め設定された正弦波電圧である目標電圧Vacから出力電圧Vacを減算した差電圧21をフィードバック量としてPI制御した出力22を電流振幅として、入力電圧Vinの入力電圧位相と同期する電流指令Iinを生成する。次いで、電流指令Iinから電流Iinを減算した差23をフィードバック量としてPI制御して電圧指令24を演算する。
【0015】
一方、入力電圧Vinは電流極性判定器26に入力され、電流極性判定器26は電流極性信号26aを出力する。また、電流Iinの位相に基づいて短絡経路切換回路27は、所定の電流位相のタイミングで短絡経路切換信号27aを発生する。
制御回路15内のゲート信号生成回路25では、電圧指令24と共に、電流極性信号26aおよび短絡経路切換信号27aが入力され、各単相インバータ3、4の出力和が電圧指令24の電圧値となるように、各単相インバータ3、4を駆動するゲート信号16a、16bを生成して出力する。このとき、各単相インバータ3、4は、電流位相に応じて短絡経路が選択されて制御されるが、この短絡経路の選択については後述する。
【0016】
制御回路15は、階調制御により各単相インバータ3、4の出力の和電圧である階段状の電圧波形をインバータ回路10から出力する。上述したように、交流電源1からの入力電圧位相と同期する電流指令Iinを生成してインバータ回路10を制御するため、力率は改善されて概1になるように制御される。そして出力電圧Vacが目標電圧Vacとなるように、インバータ回路10から補償電圧17を出力する。
なお、複数の単相インバータ3、4の内の一部の単相インバータ4をPWM制御、あるいは全ての単相インバータ3、4をPWM制御しても良い。
【0017】
各単相インバータ3、4は、ゲート信号16a、16bにより、正、負、0のいずれかの電圧を出力するが、その際の電流経路について、図4、図5に基づいて以下に説明する。なお、単相インバータ3について説明するが、単相インバータ4も同様である。
図4に示すように、電流極性が正の場合、単相インバータ3の出力電圧が正の時は、MOSFET32a、33aをオンしてコンデンサ35の電圧を放電する。単相インバータ3の出力電圧が負の時は、MOSFET31a、34aをオンしてコンデンサ35に電圧を充電する。
また電流極性が負の場合、単相インバータ3の出力電圧が正の時は、MOSFET32a、33aをオンしてコンデンサ35に電圧を充電する。単相インバータ3の出力電圧が負の時は、MOSFET31a、34aをオンしてコンデンサ35の電圧を放電する。
【0018】
図5に示すように、単相インバータ3が短絡して出力を0とする時、MOSFET31a、33aをオンしてP側母線36を経る第1の短絡経路としてのP側短絡経路36aと、MOSFET32a、34aをオンしてN側母線37を経る第2の短絡経路としてのN側短絡経路37aとの2種の電流経路(短絡経路)がある。
図6は、単相インバータ3の2種の短絡経路と電流位相の対応を示す図である。また、図7は、単相インバータ3の短絡時における各素子の通電負担を示す図である。
図に示すように、電流極性が正の場合で単相インバータ3が短絡して出力を0とする時、電流位相が0〜π/2の期間では、MOSFET31a、33aをオンして電流IinをP側短絡経路36aに流し、電流位相がπ/2〜πの期間では、MOSFET32a、34aをオンして電流IinをN側短絡経路37aに流す。また、電流極性が負の場合で単相インバータ3が短絡して出力を0とする時、電流位相がπ〜3π/2の期間では、MOSFET32a、34aをオンして電流IinをN側短絡経路37aに流し、電流位相が3π/2〜2πの期間では、MOSFET31a、33aをオンとして電流IinをP側短絡経路37aに流す。
【0019】
P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとのそれぞれに対応する電流位相期間は、1周期内で単相インバータ3内の複数のMOSFET31a〜34a、ダイオード31b〜34bの通電負担がバランスするように予め設定され、制御回路15内では、その切替のタイミングで短絡経路切替信号27aが発生される。具体的には、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとの切替は、短絡経路切替信号27aと電流極性信号26aにより行われる。短絡経路切替信号27aは、電流位相が所定の位相、この場合、π/2、3π/2で発生されるように予め設定され、ゲート信号生成回路25では、入力される電流極性信号26aが正の時、短絡経路切替信号27aを受信するとP側短絡経路36aからN側短絡経路37aに切り替え、入力される電流極性信号26aが負の時、短絡経路切替信号27aを受信するとN側短絡経路37aからP側短絡経路36aに切り替える(図3参照)。
【0020】
電流極性が正で電流位相が0〜π/2の期間では、電流は半導体スイッチ回路31、33を流れるが、半導体スイッチ回路31内ではMOSFET31aとダイオード31bとの双方に通流し、半導体スイッチ回路33内ではMOSFET33aのみに通流する。このため、半導体スイッチ回路33の通過損失はMOSFET33aのオン抵抗の損失であるのに対し、半導体スイッチ回路31の通過損失は、MOSFET31aのオン抵抗とダイオード31bの抵抗との並列接続された抵抗での損失であり、半導体スイッチ回路31の方が半導体スイッチ回路33に比べて抵抗値が小さく損失(発熱)が小さい。MOSFET31aの通過損失は、言うまでもなくMOSFET33aよりも小さい。
電流極性が正で電流位相がπ/2〜πの期間では、電流は半導体スイッチ回路32、34を流れるが、半導体スイッチ回路32内ではMOSFET32aのみに通流し、半導体スイッチ回路34内ではMOSFET34aとダイオード34bとの双方に通流する。このため、半導体スイッチ回路32の通過損失はMOSFET32aのオン抵抗の損失であるのに対し、半導体スイッチ回路34の通過損失は、MOSFET34aのオン抵抗とダイオード34bの抵抗との並列接続された抵抗での損失であり、半導体スイッチ回路34の方が半導体スイッチ回路32に比べて抵抗値が小さく損失(発熱)が小さい。MOSFET34aの通過損失は、言うまでもなくMOSFET32aよりも小さい。
【0021】
電流極性が負で電流位相がπ〜3π/2の期間では、電流は半導体スイッチ回路34、32を流れるが、半導体スイッチ回路34内ではMOSFET34aのみに通流し、半導体スイッチ回路32内ではMOSFET32aとダイオード32bとの双方に通流する。このため、MOSFET32aの通過損失はMOSFET34aよりも小さく、また半導体スイッチ回路32の方が半導体スイッチ回路34に比べて抵抗値が小さく損失が小さい。
電流極性が負で電流位相が3π/2〜2πの期間では、電流は半導体スイッチ回路33、34を流れるが、半導体スイッチ回路33内ではMOSFET33aとダイオード33bとの双方に通流し、半導体スイッチ回路31内ではMOSFET31aのみに通流する。このため、MOSFET33aの通過損失はMOSFET31aよりも小さく、また半導体スイッチ回路33の方が半導体スイッチ回路31に比べて抵抗値が小さく損失が小さい。
このように電流位相1周期内で、各半導体スイッチ回路31〜34の損失は等しく、また各MOSFET31a〜34a間、各ダイオード31b〜34b間でも損失が均等である。
【0022】
以上、単相インバータ3の短絡時について説明したが、単相インバータ4についても同様である。このように、1周期内で各単相インバータ3、4内の各素子(MOSFET、ダイオード)の通電負担がバランスするように、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとを選択して短絡時における各素子の通電期間を制御するため、単相インバータ3、4内の各素子の発熱が均等化できるため、電力変動補償装置の信頼性が向上する。さらに、素子の発熱を均等化するためにMOSFETの並列数を増加させることが無く、また放熱装置の小型化が図れ、装置構成の小型化、低コスト化を促進できる。
【0023】
また、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとのそれぞれに対応する電流位相期間は、1周期内で各単相インバータ3、4内の複数のMOSFET、ダイオードの通電負担がバランスするように予め設定され、検出された電流位相に応じてP側短絡経路36aとN側短絡経路37aとを切り替えるため、容易に上記効果を実現できる。
また、1周期内でインバータ回路10の電流極性が正、負の各位相期間0〜π、π〜2πをそれぞれ連続する2つの位相期間に分けて、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとに対応する電流位相期間としたため、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとの切替回数が少なく、電流極性を検出して、電流極性信号26aと短絡経路切替信号27aとを用いて、さらに容易で確実に切り替えることができる。
【0024】
また、1周期内でインバータ回路10の電流極性が正、負の各位相期間0〜π、π〜2πをそれぞれ2等分にして、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとに対応する電流位相期間としたため、各半導体スイッチ回路内で短絡時にMOSFETのみ通電する期間とMOSFET、ダイオード双方に通電する期間とがそれぞれ1/4周期ずつとなり、各素子の通電負担がバランスする。
【0025】
実施の形態2.
上記実施の形態1の図1で示した電圧変動補償装置において、放熱装置の問題で各半導体スイッチ回路31〜34、41〜44の熱抵抗が均一に設計できない場合、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとに対応する電流位相期間を調整する。それ以外の制御は上記実施の形態1と同様である。
例えば、単相インバータ3において、P側短絡経路36a内の半導体スイッチ回路31、33が、N側短絡経路37a内の半導体スイッチ回路32、34に比べて熱抵抗が高い場合は、図8に示すように、P側短絡経路36aに対応する電流位相期間をN側短絡経路37aに対応する電流位相期間よりも短くする。これにより、短絡時における半導体スイッチ回路31、33の通電期間が半導体スイッチ回路31、33の通電期間よりも短くなり、各素子の発熱量を調整することで、放熱装置を介した各素子の発熱の均一化を図ることができる。
【0026】
この場合も、P側短絡経路36aとN側短絡経路37aとのそれぞれに対応する電流位相期間は、1周期内で各単相インバータ3、4内の複数のMOSFET、ダイオードの通電負担がバランスするように予め設定される。そして、このような通電負担のバランスは、各素子の発熱特性および周囲の放熱特性に応じて決定する。これにより、各素子の発熱を信頼性よく均等化でき、電圧変動補償装置の信頼性が向上する。
【0027】
なお、上記実施の形態1、2では、インバータ回路10から補償電圧17を出力して交流電圧Vinに重畳する電圧変動補償装置について示したが、複数の単相インバータ3、4を直列接続したインバータ回路10から正弦波電圧を出力するように制御する電力変換装置であっても、同様の効果が得られる。複数の単相インバータ3、4で電圧が分担できるため、各単相インバータ内の各素子は容量の小さい素子を用いているが、各素子の発熱の均等化が促進できることにより効果的に信頼性が向上する。
【0028】
また、複数の単相インバータを備えるものに限らず、1つの単相インバータをPWM制御して所定の電圧を出力する電力変換装置にも適用でき、単相インバータ内の各素子の発熱の均等化が同様に図れる。
【符号の説明】
【0029】
1 交流電源、3,4 単相インバータ、6 入力電圧検出器、7 出力電圧検出器、8 電流検出器、10 インバータ回路、15 制御回路、
16a,16b ゲート信号、17 補償電圧(インバータ回路出力)、
26a 電流極性信号、27a 短絡経路切替信号、
31a〜34a 半導体スイッチング素子としてのMOSFET、
31b〜34b ダイオード、35 直流電圧源としてコンデンサ、36 P側母線、
37 N側母線、36a 第1の短絡経路としてのP側短絡経路、
37a 第2の短絡経路としてのN側短絡経路、
41a〜44a 半導体スイッチング素子としてのMOSFET、
41b〜44b ダイオード、45 直流電圧源としてのコンデンサ、46 P側母線、
47 N側母線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の半導体スイッチング素子と直流電圧源とを有する複数の単相インバータの交流側を直列接続して成るインバータ回路と、上記各単相インバータを制御して該各単相インバータの正、負、0の3レベル出力を組み合わせて上記インバータ回路から所定の電圧を出力させる制御回路とを備えた電力変換装置において、
上記インバータ回路の電流位相を検出する手段を備え、
上記制御回路は、
上記各単相インバータの出力を0とするとき、正側母線を経て上記各単相インバータを短絡させる第1の短絡経路と、負側母線を経て上記各単相インバータを短絡させる第2の短絡経路とのいずれかを、検出された上記インバータ回路の電流位相に応じて選択し、電流位相の1周期内で上記各単相インバータ内の複数の上記半導体スイッチング素子の通電期間を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
複数の半導体スイッチング素子と直流電圧源とを有する単相インバータから成るインバータ回路と、上記単相インバータの正、負、0の3レベル出力を制御して上記インバータ回路から所定の電圧を出力させる制御回路とを備えた電力変換装置において、
上記インバータ回路の電流位相を検出する手段を備え、
上記制御回路は、
上記単相インバータの出力を0とするとき、正側母線を経て上記単相インバータを短絡させる第1の短絡経路と、負側母線を経て上記単相インバータを短絡させる第2の短絡経路とのいずれかを、検出された上記インバータ回路の電流位相に応じて選択し、電流位相の1周期内で上記単相インバータ内の複数の上記半導体スイッチング素子の通電期間を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
上記インバータ回路を交流電源に直列に接続して、上記交流電源からの電圧に上記インバータ回路の出力電圧を重畳した電圧を上記電力変換装置の出力交流電圧とし、
上記制御回路は、上記出力交流電圧の変動を抑制するように上記インバータ回路の出力電圧を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記インバータ回路の電流極性を検出する手段を備え、
上記制御回路は、検出された上記インバータ回路の電流位相、電流極性に応じて上記第1、第2の短絡経路のいずれかを選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記制御回路は、上記インバータ回路の電流位相の1周期内で上記単相インバータ内の複数の上記半導体スイッチング素子の通電負担がバランスするように、上記単相インバータを短絡させる上記第1、第2の短絡経路のそれぞれに対応する電流位相期間を予め設定し、該設定された電流位相期間に基づいて上記第1、第2の短絡経路のいずれかを選択することを特徴とする上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
1周期内で上記インバータ回路の電流極性が正、負の各位相期間0〜π、π〜2πをそれぞれ連続する2つの位相期間に分けて、上記第1、第2の短絡経路に対応する電流位相期間としたことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記各位相期間0〜π、π〜2πをそれぞれ2等分にして、上記第1、第2の短絡経路に対応する電流位相期間としたことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記第1、第2の短絡経路内の複数の上記半導体スイッチング素子における通電負担のバランスは、各素子の発熱特性および周囲の放熱特性に応じて判定することを特徴とする請求項5または6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
上記制御回路は、力率を改善するように電流指令を生成して、上記インバータ回路を出力制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項10】
上記単相インバータ内の上記複数の半導体スイッチング素子の個数は4個であり、該各半導体スイッチング素子は、ダイオードが逆並列接続されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−288360(P2010−288360A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139776(P2009−139776)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】