説明

電力変換装置

【課題】ダイオードを含む半導体素子を複数個並列に接続した素子群の、各素子間を流れる電流に不平衡が生じないようにする。
【解決手段】例えば複数のダイオード31,32,33が並列接続された、ダイオード群3におけるトランス2側の端子aとb,c,d間、または出力側端子hとe,f,g間をそれぞれ1点分岐接続し、それぞれの配線導体長さを等しくすることにより、各ダイオード31,32,33を流れる電流に互いに不平衡が生じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、整流ダイオードを含む半導体素子を複数個並列に接続して交流から直流、または別の直流、さらにはその逆の変換を行なう電力変換装置、特にその配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換用半導体素子を導体により複数個接続した半導体素子群を持つ電力変換装置の配線構造には、各素子への配線インダクタンス,配線抵抗によるばらつきを少なくするために種々の工夫がなされている。
図5は例えば特許文献1に開示されている、この種の従来例である。
これは、接続配線(11,12)を、中間に絶縁物(15)を挟んで近接配置された1対の幅広平行導体で形成するようにしたものである。
【0003】
また、図6は例えば特許文献2に開示されている、この種の別の従来例である。
図6に示すものは、スイッチング半導体素子(3〜12:スイッチング素子とダイオードの逆並列接続回路)を並列接続する並列接続導体(17〜19)により、2点分岐接続とすることで配線インダクタンスを均等化し、素子(3〜12)に流れる電流分担を均等化するものである。
この他に、各素子から見た配線インダクタンスを均等化して、分担電流の均等化を図るものが例えば特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−038507号公報
【特許文献2】特開平07−007958号公報
【特許文献3】特開平05−083954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなラミネート状の構造では、各ダイオードの端子間に存在する物理的な距離が異なるため、最小の配線インピーダンスを呈するダイオードに電流が集中し、ダイオード間で電流不平衡が発生する。また、特許文献2,3では、水平方向に延びる一体構成の配線金具が必要となるが、これは容量が大きくなり並列数が多くなるとその数も増え、装置全体が大型化するという問題がある。
【0006】
したがって、この発明の課題は、簡単な構造で配線インダクタンス,配線抵抗のばらつきを考慮し、複数のダイオードを含む半導体素子間で電流不平衡が生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、半導体素子を複数個並列に接続して交流から直流、または別の直流、さらにはその逆の変換を行なう電力変換装置において、
前記各半導体素子の主電流が流れる第1端子,第2端子の第1端子どうし,第2端子どうしをそれぞれ導体を介して1点分岐接続するとともに、前記導体の分岐から各素子までの距離をそれぞれ等しくすることにより、電流経路の配線インピーダンスの均等化を図ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数個並列に接続されるダイオードを含む各半導体素子の対応する端子どうしを導体を介して1点分岐接続し、導体の分岐から各素子までの距離を互いに等しくなるようにしたので、電流経路の配線インピーダンスを同じにすることができ、電流不平衡を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態を説明するための回路図。
【図2】図1のダイオード群の構成を示す斜視図。
【図3】図1のダイオード群の構成を示す上面図。
【図4】図1のダイオード群の構成を示す側面図。
【図5】第1の従来例を示す構成図。
【図6】第2の従来例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明の実施の形態を示す回路図である。これは、直流入力端子P1,N1間に接続されたスイッチング半導体1により直流を交流に変換し、その交流をトランス2を介してダイオード群3,4に与え、ここで再び直流に変換して出力端子P2,N2から出力するものである。ここで、例えばダイオード群3のトランス2の二次側の電流経路としては、端子a−b間、端子a−c間、端子a−d間と、端子e−h間、端子f−h間、端子g−h間があるが、端子a−b間、端子a−c間、端子a−d間の各距離と、端子e−h間、端子f−h間、端子g−h間の各距離とを互いに等しくすることにより、電流分担を等しくすることができる。
【0011】
具体的には図2〜図4(図3は図1のダイオード群の構成を示す上面図、図4は同じく側面図)に示すように、ダイオード31〜33を例えばX方向に並列に等間隔に配置し、ダイオード32の分岐端子a(h)からダイオード31,33へ、並列接続導体101(102)により1点分岐方式で接続する。このとき、並列接続導体101(102)の長さを互いに等しくすることにより、電流分担を等しくすることができる。
【0012】
なお、図2では導体101(102)をZ方向に折り曲げている(分岐端子a,hを他の端子に比べて高くしている)が、必ずしもこのようにする必要はなく、ダイオード31〜33を同一平面上に並べて接続するようにしても良い。また、以上ではダイオード群3について説明したが、ダイオード群4についても同様に構成するのは言うまでも無い。さらに、この発明はダイオードに限らず、主電流が流れる第1端子,第2端子および制御端子を持つ半導体素子一般に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0013】
1…スイッチング半導体素子、2…トランス、3,4…ダイオード群、31,32,33…ダイオード、101,102…並列接続導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を複数個並列に接続して交流から直流、または別の直流、さらにはその逆の変換を行なう電力変換装置において、
前記各半導体素子の主電流が流れる第1端子,第2端子の第1端子どうし,第2端子どうしをそれぞれ導体を介して1点分岐接続するとともに、前記導体の分岐から各素子までの距離をそれぞれ等しくすることにより、電流経路の配線インピーダンスの均等化を図ることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19586(P2012−19586A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154667(P2010−154667)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】