説明

電力変換装置

【課題】簡便な構成で電力変換装置の冷却流路の目詰まりを抑制する。
【解決手段】冷媒が流通する冷却流路21を有する冷却器20と、スイッチング素子32が取り付けられたベースプレート31と、電力素子34の取り付けられた制御回路基板33と、冷却器20の冷却器下壁22の上にベースプレート31を固定すると共に、ベースプレート31と離間して制御回路基板33を支持する固定ピン40と、を含み、固定ピン40の一端は、ベースプレート31と冷却器下壁22とを貫通して冷却流路21の中に達し、その冷却器下壁22の貫通部分で冷却器下壁22と締結され、他端は、冷却器下壁22と反対方向に延びてその先端に制御回路基板33が固定され、固定ピン40は、冷却流路21の中に達した上端部分41に、冷媒の通流方向に貫通し、少なくとも内面53に磁石55を配置した異物除去機構50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドと車両や電気自動車等の電動車両では、200V程度の低電圧のバッテリからの直流電力を昇圧コンバータで600V程度まで昇圧し、その昇圧した高電圧の直流電力をインバータによって三相交流電力に変換してモータを駆動して走行するものが多い。昇圧コンバータは、低電圧のバッテリからの直流電力をリアクトルに蓄電し、その蓄電した電力をIGBT等のスイッチング素子によってスイッチングすることによって電圧を昇圧する形式のものが多く用いられている。また、スイッチング素子によってスイッチングすることによって200V程度のバッテリ電圧を補機駆動用の14V程度の電圧まで降圧するDC/DCコンバータも用いられている。このような昇圧コンバータやDC/DCコンバータのスイッチング素子は発熱が大きいので、スイッチング素子を冷却するために、例えば、スイッチング素子を固定したベース板を放熱フィンが設けられた放熱板に取り付けてスイッチング素子で発生した熱を放熱させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、冷却器によって電力変換装置を冷却する技術が用いられている。この冷却器は、冷媒流路に多くの放熱フィンを配置して、電力変換装置の熱を効率よく冷媒に伝達できるように構成されている。一方、冷媒中には何がしかの異物が含まれていることが多く、このため、フィンによって仕切られた冷却流路が目詰まりを起こしてしまい、冷却不良が発生するという問題があった。このため冷却流路の入口配管にフィルタを設けて異物を除去することが提案されているが、フィルタの圧力損失が大きくなってしまうという別の問題があった。そこで、冷却器の入口に冷媒の流れ方向に対向するように、袋状の異物除去部材を配置し、異物除去部材の内面に磁石を配置して異物を内部に溜めると共に金属製の異物を吸着することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−076257号公報
【特許文献2】特開2008−275190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の電力変換装置の大型化、集積化によって制御回路基板に搭載される電力素子や制御用素子を流れる電流も大きくなり、その発熱量が大きくなってくることにしたがって、電力変換装置を冷却する冷却器も大きなものとなってきている。このため、特許文献2に記載されたような異物除去のみを目的とする部材を冷却器の中に配置すると、その分だけ電力変換装置が大型化してしまう上、異物捕捉のみを目的とする異物除去部材を取り付けることは部品点数の増加となり、電力変換装置の構造を複雑にしてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、簡便な構成で電力変換装置の冷却流路の目詰まりを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力変換装置は、内部に冷媒が流通する冷却流路を有する冷却器と、スイッチング素子が取り付けられたベースプレートと、電力素子の取り付けられた制御回路基板と、前記冷却器の冷却流路壁の上に前記ベースプレートを固定すると共に、前記ベースプレートと離間して前記制御回路基板を支持する固定ピンと、を含む電力変換装置であって、前記固定ピンの一端は、前記ベースプレートと前記冷却流路壁とを貫通して冷却流路の中に達し、その冷却流路壁の貫通部分で冷却流路壁と締結され、他端は、前記冷却流路壁と反対方向に延びてその先端に前記制御回路基板が固定され、前記固定ピンは、前記冷却流路の中に達した部分に、冷媒の通流方向に貫通し、少なくとも貫通部に磁石を配置した異物除去機構を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、簡便な構成で電力変換装置の冷却流路の目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における電力変換装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態における電力変換装置の部分断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の電力変換装置100は、ロワーケース10、センターケース60、アッパーケース70の3つのケースを積み重ね、それぞれの間をボルト15,61で固定して一体としたものである。ロワーケース10の下部フランジ12はボルト13によってトランスアクスル80の上部に固定されている。
【0011】
ロワーケース10の上部には冷却器20が含まれている。冷却器20は、冷却器下壁22と冷却器上壁23とロワーケース10の側壁11とによって囲まれた冷却流路21と、冷却流路21に冷媒を流入させる冷媒入口24aと冷却流路21から冷媒を流出させる冷媒出口24bとが設けられている。冷却器下壁22は冷却流路壁である。スイッチング素子32が表面に取り付けられたベースプレート31は、固定ピン40によって冷却器下壁22の下面に固定されている。固定ピン40の上側の先端の上端は冷却流路21の中まで延びている。また、コイル、コンデンサ等の電力素子34が搭載された制御回路基板33は固定ピン40の下側に固定されている。スイッチング素子32の一部と制御回路基板33とはパワーモジュール部30を構成する。制御回路基板33とトランスアクスル80との間には、トランスアクスル80からの熱を遮断すると共に、異物がロワーケース10の中に入らないようにするためのアンダーカバー16がボルト17によって取り付けられている。また、図2(a)に示すように、制御回路基板33は、制御回路基板33を貫通するボルト35によって固定ピン40の下側に固定されている。
【0012】
図2(a)に示すように、固定ピン40は、冷却流路21の中に突出する上端部分41、冷却器下壁22を貫通している第1の貫通部分42、ベースプレート31を貫通する第2の貫通部分43、第1、第2の貫通部分42,43よりもその直径が大きい上部フランジ44、上部フランジ44よりも直径が小さく、上部フランジ44から下方向に伸びる支柱部分46、支柱部分46の下端に設けられ、支柱部分46よりもその直径が大きい下部フランジ47を備えている。第1の貫通部分42は冷却器下壁22に圧入され、第2の貫通部分43はベースプレート31に圧入されている。
【0013】
図2(b)に示す様に、上端部分41には異物除去機構50が設けられている。異物除去機構50は、冷媒の通流方向に向かう貫通穴で、その貫通部である内面53は冷媒入口51から冷媒出口52に向って直径が小さくなって行くテーパ形状となっている。冷媒入口51は、冷媒出口52よりも冷却器下壁22の表面から離れた位置に配置され、冷媒入口51から異物除去機構50に流入した冷媒は、内面53に沿って冷媒の流れの中心から冷却器下壁22に向って流れていく。つまり、冷媒の流れの中心から冷媒の流れの周辺部分に向って下向きに流れていく。図2(d)に示す様に、内面53の上辺53aと下辺53bとは、いずれも冷媒の重力方向斜め下に向かっており、内面53の少なくとも一部には磁石55が取りつけられている。また、下辺53bは冷媒出口52の直前の部分にトラップ54を有しており、このトラップ54から冷媒出口52に向って上方向に傾斜した形状となっている。また、図2(b)に示す冷媒出口52の縦方向長さd1、図2(c)に示す横方向長さd2は、図示しない電力変換装置の冷却流路のフィンの目のサイズよりも小さい寸法となっている。したがって、冷却流路のフィンの目のサイズが大きい場合には、冷媒出口52の縦方向長さd1と横方向長さd2は大き目で、フィンの目のサイズが小さい場合には、冷媒出口52の縦方向長さd1と横方向長さd2は小さ目となる。
【0014】
冷媒入口51から冷媒と共に異物除去機構50の中に流入した異物は、内面53に沿って斜め下方向に流れていく。金属製の異物は内面53の表面の磁石55に吸着される。磁石55に吸着されない異物は冷媒出口52に向って流れていく。そして、異物の大きさが図2(b)に示す冷媒出口52の縦方向長さd1、図2(c)に示す横方向長さd2よりも大きい場合には、異物は冷媒出口52から流出せず、内面53の下辺53bにあるトラップ54に溜まる。また、図2(d)に示す角度αが90度よりも大きく、内面53は下側に向って傾斜しているので、車両が停止して冷媒の流が停止した状態となっても、トラップ54に捕らえられた異物は冷却流路21の中に流出しない。また、大きさが図2(b)に示す冷媒出口52の縦方向長さd1、図2(c)に示す横方向長さd2よりも小さく、磁石に吸着されない異物は、冷媒と共に冷媒出口52から流出するが、この異物の大きさは、冷却流路のフィンの目よりもサイズが小さいので、冷却器のフィンの目詰まりをおこすことはない。
【0015】
本実施形態において、図2(d)に示す内面53の上辺53aの傾斜角度βは異物を異物除去機構50の中に誘い込むために必要な角度であればよく、異物の大きさなどに合わせて適宜変更してもよい。また、図2(d)に示す内面53aの下辺53bの傾斜角度α冷媒の流が停止した際に異物が冷却流路21に流出しない程度の角度であればよく、90度以上の適当な角度を選択することができる。
【0016】
以上説明したように本実施形態は、簡便な構成で冷媒中の異物を捕らえ、電力変換装置の冷却流路の目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。また、本実施形態の固定ピン40はベースプレート31と制御回路基板33を冷却器下壁22に固定する機能と、冷媒に接している上端部分41によってスイッチング素子32や電力素子34を冷却する機能と、上端部分41に設けられた異物除去機構50によって冷媒中の異物を除去する機能とを合わせ持っていることから、パワーモジュール部又は電力変換装置を小型化することができる。
【0017】
本実施形態では、異物除去機構50の内面53に沿って磁石を配置することとして説明したが、上端部分41全体を磁石によって構成するようにしてもよい。この場合、より簡便な構造で、異物を除去して冷却流路の目詰まりを抑制すことができる。
【符号の説明】
【0018】
10 ロワーケース、11 側壁、12 下部フランジ、13,15,17,35,61 ボルト、16 アンダーカバー、20 冷却器、21 冷却流路、22 冷却器下壁、23 冷却器上壁、24a,51 冷媒入口、24b,52 冷媒出口、30 パワーモジュール部、31 ベースプレート、32 スイッチング素子、33 制御回路基板、34 電力素子、40 固定ピン、41 上端部分、42 第1の貫通部分、43 第2の貫通部分、44 上部フランジ、46 支柱部分、47 下部フランジ、50 異物除去機構、53 内面、53a 上辺、53b 下辺、54 トラップ、55 磁石、60 センターケース、70 アッパーケース、80 トランスアクスル、100 電力変換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が流通する冷却流路を有する冷却器と、
スイッチング素子が取り付けられたベースプレートと、
電力素子の取り付けられた制御回路基板と、
前記冷却器の冷却流路壁の上に前記ベースプレートを固定すると共に、前記ベースプレートと離間して前記制御回路基板を支持する固定ピンと、を含む電力変換装置であって、
前記固定ピンの一端は、前記ベースプレートと前記冷却流路壁とを貫通して冷却流路の中に達し、その冷却流路壁の貫通部分で冷却流路壁と締結され、他端は、前記冷却流路壁と反対方向に延びてその先端に前記制御回路基板が固定され、
前記固定ピンは、前記冷却流路の中に達した部分に、冷媒の通流方向に貫通し、少なくとも貫通部に磁石を配置した異物除去機構を有すること、
を特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−27272(P2013−27272A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162892(P2011−162892)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】