説明

電力変換装置

【課題】ケーブルから放射されるノイズを低減可能な電力変換装置を得ること。
【解決手段】本発明にかかる電力変換装置は、三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路11と、整流回路11の出力端にケーブル9を介して一端が接続されたDCリアクトル5と、DCリアクトル5の他端にケーブル9を介して接続され、直流電圧を平滑する平滑回路12と、平滑回路12から出力された直流電圧をスイッチング制御により負荷駆動用の三相交流電圧に変換するスイッチング回路13と、を備え、ケーブル9を束ねて囲むようにコア6を装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機などの負荷を駆動するための電力を生成する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された車両用電力変換装置は、フィルタコンデンサや三相ブリッジ回路などを備え、直流電力を負荷駆動用の三相交流電力に変換する。フィルタコンデンサおよび三相ブリッジ回路はユニット化されており、その前段にはユニットへの入力電流を平滑化するためのリアクトルが設けられている。また、ユニット内の入力側および出力側にコアを設けてノイズの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−187368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品として販売される電力変換装置には、力率改善を目的とするDCリアクトル、すなわち、電力変換を行う回路への入力電流を平滑化するためのリアクトルが設けられていないものを基本構成とし、接続される負荷の仕様などに応じてDCリアクトルを追加できるように構成されたものが存在する。このような構成では、追加でDCリアクトルを取り付ける場合、基板に直接取り付けるのではなく、ケーブルなどを介して取り付ける(接続する)構成となっている。また、DCリアクトルが標準で取り付けられている構成の場合でも、基板や部品、筐体などを共通化する目的やDCリアクトルの交換を可能化する目的などにより、ケーブルなどを介してDCリアクトルを取り付ける構成が一般的となっている。しかし、DCリアクトルをケーブル接続する構成とした場合にはケーブルがアンテナとして働き、ノイズが放射されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、力率改善のためのDCリアクトルが接続されているケーブルから放射されるノイズを低減可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電力変換装置は、三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路の出力端に第1のケーブルを介して一端が接続されたリアクトルと、前記リアクトルの他端に第2のケーブルを介して接続され、直流電圧を平滑する平滑回路と、前記平滑回路から出力された直流電圧をスイッチング制御により負荷駆動用の三相交流電圧に変換するスイッチング回路と、を備え、前記第1のケーブルおよび前記第2のケーブルを束ねて囲むようにコアを装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リアクトルの接続ケーブルから放射されるコモンモードノイズを効率的に抑制できるとともに、機器の小型化を実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態1の電力変換装置の要部構成を示す図である。
【図2】図2は、電力変換装置の回路構成例を示す図である。
【図3】図3は、電力変換装置の全体の外観を示す図である。
【図4】図4は、コアの周波数特性の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2の電力変換装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる電力変換装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の電力変換装置の要部構成を示す図である。この電力変換装置は、外部の電源から供給される三相交流電圧を変換して外部の負荷が必要とする電圧を生成するものである。図2は、電力変換装置の回路構成例を示す図であり、外部の電源(商用電源)および負荷(モータ)も併せて記載している。なお、図1および図2において、同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0011】
本実施の形態の電力変換装置は、商用電源から供給された三相交流電圧を変換して負荷に対する供給電圧を生成する電力変換回路1と、ケーブル7を介して商用電源が接続される電源入力導体2と、ケーブル8を介してモータ等の負荷が接続される電圧出力導体3と、ケーブル9を介してDCリアクトル5が接続されるDCリアクトル接続導体4aおよび4bと、DCリアクトル5と、DCリアクトル5のケーブル9に装着された、放射ノイズを低減するためのコア6と、を備えている。コア6は、フェライトなどで構成されている。また、電力変換回路1は、商用電源から供給された交流電圧を直流電圧に変換する整流回路11と、整流回路11によって変換された直流電圧を平滑する平滑回路12と、平滑後の直流電圧をスイッチング制御により三相交流電圧に変換して負荷へ供給するスイッチング回路13と、を備えている。
【0012】
スイッチング回路13は、複数のスイッチング素子を備えて構成されている(図2参照)。スイッチング素子は、例えばSiトランジスタである。また、よりバンドギャップが大きい半導体、具体的には、炭化珪素(SiC:Silicon Carbide)や窒化ガリウム(GaN:Gallium Nitride)、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いてスイッチング素子を形成してもよい。
【0013】
ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。また、電力損失が低いため、スイッチング素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
【0014】
上記の各導体のうち、電源入力導体2は整流回路11に接続されている。電圧出力導体3は、スイッチング回路13に接続されている。DCリアクトル接続導体4aは整流回路11の正極側(正極側出力端)に接続されている。DCリアクトル接続導体4bは平滑コンデンサである平滑回路12の正極側に接続されている。
【0015】
図3は、電力変換装置の全体の外観を示す図であり、DCリアクトル5、コア6およびケーブル7〜9の接続関係を示している。図1〜図3に示したように、本実施の形態の電力変換装置は、DCリアクトル5の両端に接続されている2本のケーブル9を束ね、そこにコア6を装着している。具体的には、2本のケーブルを取り囲むようにコア6を装着している。電力変換装置が動作するとこれらの2本のケーブル9には逆方向の電流が流れるため、互いに磁束を打ち消し合うこととなる。なお、以降の説明においては、便宜上、この装着方法を「コモンモード接続」と呼ぶ。上述したように、コア6をコモンモード接続した場合には磁束を打ち消しあうように作用するので、ケーブルに対してコアを個別に装着する場合(以降、この接続方法を「ノーマルモード接続」と呼ぶ)と比較して、小型のコアを使用可能となる。すなわち、ノーマルモード接続を行う場合と比較してより小型のコアで同様のノイズ抑制効果を実現でき、機器の小型化が可能となる。
【0016】
図4は、コア6の周波数特性の一例を示す図である。図示した特性のコアをコア6として使用する場合、30MHzにおけるインピーダンスが70Ω以上となっており、放射ノイズが問題となる30MHz以上の範囲において十分なインピーダンス(50Ω以上)が確保される。この結果、放射ノイズが抑制される。
【0017】
このように、本実施の形態の電力変換装置は、DCリアクトルの両端に接続されているケーブルを束ね、そこにコアを装着する構成(コモンモード接続)とした。これにより、ケーブルから放射されるコモンモードノイズを抑制できる。また、ケーブルを束ねずにコアを装着した場合(ノーマルモード接続の場合)と比較して、磁気飽和を回避しつつより多くの電流を流すことが可能となる。すなわち、同様のノイズ抑制効果を実現したい場合に、ノーマルモード接続でコアを装着する場合と比較してより小体積のコアが使用可能となるので、効率的にノイズを抑制できるとともに、機器の小型化を実現できる。
【0018】
なお、DCリアクトルは整流回路11および平滑回路12の正極側に接続することとしたが、負極側に接続する構成としてもよい。
【0019】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2の電力変換装置の要部構成を示す図である。図示したように、本実施の形態の電力変換装置は、実施の形態1の電力変換装置に対してコア10を追加したものである。その他の部分については実施の形態1と同様であるため説明は省略する。
【0020】
ケーブル7およびケーブル8には、3本のケーブルを取り囲むようにコア10が装着されている。コア10は、各ケーブルに同一方向の電流が流れる通常の接続方法(上述したノーマルモード接続に相当)でケーブル7および8にそれぞれ装着されており、ケーブル7および8から放射されるノイズ(ノーマルモードノイズ)を抑制する。ケーブル7および8のいずれか一方のみにコア10を装着するようにしてもよい。
【0021】
このように、本実施の形態の電力変換装置は、DCリアクトル接続用ケーブルに加えて、電源接続用ケーブルおよび負荷接続用ケーブルの少なくとも一方に対して、ノーマルモードノイズを抑制するためのコアを装着することとした。これにより、ケーブルから放射されるノーマルモードノイズについても抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明は、DCリアクトルの接続ケーブルから放射されるコモンモードノイズを小型のコアを用いて抑圧可能な電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0023】
1 電力変換回路
2 電源入力導体
3 電圧出力導体
4a,4b DCリアクトル接続導体
5 DCリアクトル
6,10 コア
7,8,9 ケーブル
11 整流回路
12 平滑回路
13 スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路の出力端に第1のケーブルを介して一端が接続されたリアクトルと、
前記リアクトルの他端に第2のケーブルを介して接続され、直流電圧を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路から出力された直流電圧をスイッチング制御により負荷駆動用の三相交流電圧に変換するスイッチング回路と、
を備え、
前記第1のケーブルおよび前記第2のケーブルを束ねて囲むようにコアを装着したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記整流回路には交流電源を接続するためのケーブル群が接続され、かつ前記スイッチング回路には負荷を接続するためのケーブル群が接続され、当該交流電源を接続するためのケーブル群および負荷を接続するためのケーブル群の少なくとも一方にコアを装着したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記スイッチング回路は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウムまたはダイヤモンドであることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93947(P2013−93947A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233693(P2011−233693)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】