説明

電力敷設構造及び電力線通信方法

【課題】屋内配線の分岐数を制限することなく安定な通信を確保できる。
【解決手段】通信必要コンセント41に向かう配線にのみ分岐する分岐部においては分岐部31のように単純に配線を分岐させ、通信不要コンセント42のみに向かう配線に分岐する分岐部においては分岐回路32を設ける。分岐回路32は、端子32a及び32b間では通信周波数帯域にて通過特性を有し、端子32a及び32c間、並びに、端子32
b及び32c間では通信周波数帯域にて抑圧特性を有する。通信不要コンセント42のみに向かう配線は端子32cに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力敷設構造及び電力線通信方法、特に、複数の配線に分岐する屋内配線を用いた電力線通信に係る電力敷設構造及び電力線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力線通信に用いる電力線の配線において、メイン線路から分岐する分岐線路が存在すると、その分岐線路がスタブ回路となり、メイン線路における伝送特性に影響を与えて、安定な通信を妨げることがある。そこで、例えば特許文献1では、分岐線路の末端にインピーダンスを整合するための終端回路を設けることで、メイン線路の伝送特性に対する分岐線路の影響を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−174546号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電力線の配線における各分岐線路は、例えば終端することで安定な通信速度を確保できるようになる一方で、分岐線路の数が増大すると、分岐線路への分波が多くなる。これにより通信電力が減少して通信情報のS/N比が悪化し、通信速度が低下するおそれがある。そこで、一定の通信速度を確保するために、電力線の配線における最大分岐数を制限することが考えられる。しかし、分岐数を制限することは、屋内での電力供給に用いるコンセントの数を制限することを意味する。したがって、屋内で電力を供給するのに必要なだけのコンセント数が確保できなくなるおそれが生じる。
【0005】
つまり、通信速度を確保するために分岐数を制限すると必要なコンセント数が確保できず、逆に、電力供給に必要なコンセント数を確保しようとすると、一定の通信速度を確保できる最大分岐限界数を超えてしまい、通信が不安定になるという問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、屋内配線の分岐数を制限することなく安定な通信を確保できる電力線敷設構造及び電力線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力線敷設構造は、末端に向かって複数の配線に分岐する屋内配線を用いて行われる電力線通信用の電力線敷設構造であって、第1の末端に向かう第1の配線のみに分岐すると共に、前記第1の配線間の全てにおいて、電力線通信に用いられる通信周波数帯域に関して通過特性を有する第1の分岐部と、第2の末端のみに向かう第2の配線と前記第1の配線とに分岐すると共に、前記第1の配線間においては前記通信周波数帯域に関して通過特性を有し、前記第1の配線と前記第2の配線との間においては前記通信周波数帯域に関して抑圧特性を有する第2の分岐部とを備えている。
【0008】
また、本発明の電力線通信方法は、末端に向かう複数の配線に分岐する屋内配線を用いて行われる電力線通信方法であって、第1の末端に向かう第1の配線のみに分岐する分岐部においては、前記第1の配線間の全てにおいて、電力線通信に用いられる通信周波数帯域に関して信号を通過させ、第2の末端のみに向かう第2の配線と前記第1の配線とに分岐する分岐部においては、前記第1の配線間では前記通信周波数帯域に関して信号を通過させると共に、前記第1の配線と前記第2の配線との間では前記通信周波数帯域に関して信号を抑圧する。
【0009】
本発明の電力線敷設構造及び電力線通信方法によると、第1の分岐部及び第2の分岐部を使い分けることにより、第1の末端に向かう場合は通信周波数帯域に関して信号を通過させると共に、第2の末端に向かう場合は通信周波数帯域に関して信号を抑圧する。このため、第1の末端同士では通信が可能であると共に、第2の末端へは信号を抑圧するため、分波が少なくなり、通信電力が確保される。したがって、配線の分岐数を制限することなく安定な通信を確保することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記第1の末端間を結ぶ通信経路のインピーダンスを整合する終端回路が当該通信経路の少なくとも一端に設けられていることが好ましい。これによると、通信経路のインピーダンスを整合する終端回路が設けられているので、分岐線路によるメイン線路への影響が抑制され、安定な通信が可能となる。
【0011】
また、本発明においては、前記第1の分岐部より後段の分岐部にでは、前記第1の配線にのみ分岐する場合には前記第1の分岐部が設けられ、前記第2の配線への分岐を含む場合には前記第2の分岐部が設けられており、前記第2の分岐部から分岐した前記第1の配線からの分岐部にでは、前記第1の配線にのみ分岐する場合には前記第1の分岐部が設けられ、前記第2の配線への分岐を含む場合には前記第2の分岐部が設けられており、前記第2の分岐部から分岐した前記第2の配線からの分岐部にでは、前記第1の分岐部が設けられていることが好ましい。これによると、第1の分岐部と第2の分岐部とを多段に配置することにより、メイン線路からの分岐が多段に及ぶ場合にも、第2の末端への分岐線路によるメイン線路への影響を適切に抑制できる。
【0012】
また、本発明においては、前記通信周波数帯域が、屋内配線による電力供給における周波数帯域より高い周波数帯域であり、前記第2の分岐部に、前記通信周波数帯域の下限周波数以上の帯域を抑圧すると共に、前記電力供給における周波数帯域の上限周波数以下の帯域を通過させるフィルタ回路が設けられていてもよい。これによると、第2の分岐部において、通信周波数帯域は抑圧すると共に電力供給における周波数帯域は通過させるので、通信と電力供給との両方を適切に確保できる。
【0013】
また、本発明においては、前記第2の分岐部に、前記通信周波数帯域を抑圧するフィルタ回路が設けられていてもよい。これによると、第2の分岐部が簡易な構成で実現する。
【0014】
また、本発明においては、前記第2の分岐部において前記第2の配線に分岐する配線に、インダクタが直列に挿入されていてもよい。これによると、第2の分岐部において、インダクタにより低い周波数帯域のみを通過させることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記第2の分岐部において前記第2の配線に分岐する配線に、インダクタ及びキャパシタを有する並列共振回路が直列に挿入されていてもよい。これによると、第2の分岐部を、特定の通信周波数帯域のみを抑圧するフィルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である第1の実施形態に係る電力線通信システムの配線構成を示すブロック図である。
【図2】図1の分岐回路の構成を示す回路図である。
【図3】図2のフィルタ回路の具体例を示す回路図である。
【図4】図1の分岐回路の変形例を示す回路図である。
【図5】図1の通信必要コンセントに設けられる終端回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の別の一実施形態である第2の実施形態に係る電力線通信システムの配線構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第1の実施形態に係る電力線通信システム1について説明する。本実施形態の電力線通信システム1は、屋内に構築された、図1に示すような電力線敷設構造を有している。この電力線敷設構造は、屋内に設けられた複数のコンセントに向かって複数の配線に分岐している。具体的には、メイン線路である単相3線式の基幹配線10と、この基幹配線10から分岐した分岐線路である分岐線21〜25とが設けられている。分岐線21〜25はいずれも基幹配線10と同相に接続されている。本電力線通信システム1は、この電力線敷設構造を通信経路として用いて通信する。
【0018】
分岐線21〜25のそれぞれには、電気機器に電力を供給する複数のコンセントが接続されている。各コンセントは、本電力線通信システム1の電力線敷設構造において配線の末端に相当する。これらのコンセントには、通信機器を接続して通信するためのコンセント(以下、「通信必要コンセント」とする)41と、通信に用いないコンセント(以下、「通信不要コンセント」とする)42とが含まれている。通信必要コンセント41(第1の末端)には、通信機器51や通信機器52のような互いに通信可能な通信機器が接続される。通信必要コンセント41に接続された通信機器は、電力線敷設構造を通じ、所定の通信周波数帯域を用いて互いに通信する。通信不要コンセント41及び通信不要コンセント42(第2の末端)に接続された電気機器には電力が供給される。
【0019】
分岐線21、23及び25のそれぞれには通信必要コンセント41のみが複数接続されており、分岐線22及び24のそれぞれには通信不要コンセント42のみが複数接続されている。つまり、分岐線21、23及び25は、基幹配線10から通信必要コンセント41のみへと分岐する配線であり、分岐線22及び24は、基幹配線10から通信不要コンセント42のみへと分岐する配線である。分岐線21、23及び25のように、通信必要コンセント41同士を結ぶ経路を構成する配線は、通信必要コンセント41に接続された電気機器に電力を供給する配線であるのみならず、通信必要コンセント41に接続された通信機器同士の通信に関わる配線である。このような配線を以下において「通信配線」と呼称する。通信配線でない分岐線22及び24のような配線は、以下において「非通信配線」と呼称する。
【0020】
分岐線21、23及び25のそれぞれは、図1の分岐部31において、基幹配線10に含まれる2本の配線と直接接続されている。図1のA〜Cの3方向から分岐部31に接続された配線をそれぞれ配線A〜配線Cとしたとき、分岐部31は、配線Aを配線B及びCへと分岐させている。分岐部31ではいずれの配線間においても信号が通過可能となっている。つまり、配線A及び配線B間を信号が通過することも、配線A及び配線C間を信号が通過することも、配線B及び配線C間を信号が通過することも可能である。図1の左から1つ目の分岐部31において、配線B及びCは、後段側の通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)である。図2の左から2つ目及び3つ目の分岐部31において、配線Aは、前段側の通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)であり、配線B及びCも、後段側の通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)である。
【0021】
一方、分岐線22及び24のそれぞれは、図1の分岐回路32を介して基幹配線10に接続されている。分岐回路32は、端子32a〜32cを有している。端子32aには基幹配線10の前段側(送電元側)が接続され、端子32bには基幹配線10の後段側(送電元とは反対側)が接続され、端子32cには分岐線22又は24が接続されている。なお、以下において、「前段」とは電力線敷設構造において送電元に近い側の要素を示し、「後段」とは電力線敷設構造において送電元から遠い側の要素を示すものとする。
【0022】
分岐回路32は、端子32aに接続された配線を端子32bに接続された配線と端子32cに接続された配線とに分岐させている。端子32aに接続された配線は、前段側の通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)である。端子32bに接続された基幹配線10は、後段側の通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)である。端子32cに接続された分岐線22及び24は、通信不要コンセント42のみへと分岐する非通信配線(第2の配線)である。
【0023】
そして、分岐回路32は、端子32a及び32b間における信号の伝送特性が、本電力線通信システム1における所定の通信周波数帯域において通過特性となるように構成されている。したがって、通信必要コンセント41に接続された通信機器同士で所定の通信周波数帯域を用いて通信する際、端子32a及び32b間を通じた通信が可能である。
【0024】
一方、分岐回路32は、端子32a及び32b側から端子32c側を見たインピーダンスが上記所定の通信周波数帯域において高インピーダンス特性を有するように、すなわち、端子32a及び32c間、並びに、端子32b及び32c間における信号の伝送特性がいずれも抑圧特性となるように構成されている。上記の通り、端子32cには非通信配線が接続されている。したがって、通信不要コンセント42へ向かう非通信配線である分岐線22及び24は、通信必要コンセント41間を結ぶ通信経路から遮断されている。
【0025】
図2は分岐回路32の構成例である。この構成例は、端子32a及び32b間を結ぶ配線61及び62と、配線61及び62から端子32cに向かって分岐した配線63及び64とを有している。配線63及び64はローパスフィルタ65を介して端子32cに接続されている。ローパスフィルタ65は、通信周波数帯域の下限周波数以上の帯域(例えば、いわゆる高速PLC通信では2MHz以上の帯域)をブロックすると共に、電力供給に用いられる周波数帯域の上限周波数以下の帯域(例えば、電力をACで供給する場合は60kHz以下の帯域、DCで供給する場合はDCの帯域)を通過させるように構成されている。
【0026】
ローパスフィルタ65の具体例としては、図3に示すように、インダクタンスの大きさが適切に設定されたインダクタ65a及び65bが用いられてもよい。インダクタ65aは配線63に直列に挿入されており、インダクタ65bは配線64に直列に挿入されている。インダクタ65a及び65bのインダクタンスの大きさを適切に設定することで、所望の周波数以下の帯域のみを通過させるローパスフィルタ65が実現する。
【0027】
以上のように分岐回路32を構成することで、通信周波数帯域における端子32a及び32b間の伝送ロスを低減することができ、端子32cに接続された分岐線からの影響を低減することができる。また、端子32cに接続された分岐線への電力供給を確保できる。
【0028】
なお、図2及び図3の構成例ではローパスフィルタが用いられているが、このような分岐回路32の代わりに、通信周波数帯域(いわゆる高速PLC通信では2〜30MHz)のみを抑圧するフィルタが用いられていてもよい。図4は、このようなフィルタが用いられた分岐回路132の構成例である。分岐回路132は、端子132a及び132b間を結ぶ配線161及び162と、配線161及び162から端子132cに向かって分岐した配線163及び164とを有している。端子132a〜132cは、分岐回路32における端子32a〜32cに対応している。配線163及び164は、LC共振回路165及び166を介して端子132cに接続されている。LC共振回路165はインダクタ165a及びコンデンサ165bが並列に接続された回路であり、LC共振回路166はインダクタ166a及びコンデンサ166bが並列に接続された回路である。
【0029】
LC共振回路165及び166は、インダクタ165a及び166aのインダクタンスとコンデンサ165b及び166bの容量とを適切に調整することにより、通信周波数帯域のみを抑圧するように構成されている。これにより、分岐回路132は、端子132a及び132c間、並びに、端子132b及び132c間で通信周波数帯域のみに関して抑圧特性を有することとなる。
【0030】
通信必要コンセント41には、図5に示すように終端回路70が接続されている。図5において、端子41aは分岐線21、23又は25と接続されている端子であり、端子41bは電気機器や通信機器と接続される端子である。終端回路70は、2本の配線間を跨いで接続されており、2つのコンデンサ71及び73と抵抗器72とを有している。これらの素子は、コンデンサ71及び73が抵抗器72を挟むように互いに直列に接続されている。終端回路70のインピーダンスは、通信必要コンセント41同士を結ぶ通信経路の特性インピーダンスと整合するように調整されている。通信必要コンセント41は、終端回路70により、通信機器が接続されているか否かに関わらず終端されている。一方、通信不要コンセント42には、このような終端回路70が設けられていない。
【0031】
以上説明した本実施形態によると、以下の効果が奏される。屋内のコンセントに接続する機器は、必ずしもすべての機器で通信が必要なわけではない。そこで、本実施形態のように、屋内に設けるコンセントを通信必要コンセント41と通信不要コンセント42に区分する。そして、通信必要コンセント41へは分岐部31のように分岐線を単純に分岐させる一方で、通信不要コンセント42へは分岐回路32を介して分岐線を分岐させる。分岐回路32は、基幹配線10に接続された端子32a及び32b間では通信周波数帯域で通過特性を有するが、分岐線が接続された端子32cと端子32a又は32bとの間では通信周波数帯域で抑圧特性を有するように構成されている。
【0032】
このような構成にすることで、通信に用いられる周波数帯域において、通信必要コンセント41への分岐は生じるが、通信不要コンセント42への分岐は見えなくなる。このため、電力供給用の配線経路としては分岐数が増加しても、電力線通信用の配線経路としては分岐数が増加する要因とはならない。従って、通信が必要なコンセントへの分岐数は安定な通信が可能な分岐数までとしつつ、通信が不要なコンセントへの分岐は配線の電力限界まで自由に分岐数を増やすことが可能となる。
【0033】
また、通信必要コンセント41には、通信必要コンセント41同士を結ぶ通信経路のインピーダンスを整合する終端回路70が設けられている。これにより、通信必要コンセント41に接続された通信機器同士の通信に各通信必要コンセント41が影響を与えるのが抑制され、通信が安定化する。一方で、通信不要コンセント42は、分岐回路32により、通信周波数帯域において通信経路との接続が遮断されている。したがって、終端回路70が設けられていなくても通信必要コンセント41に接続された通信機器同士の通信に影響を与えることがないため、終端回路70の設置が不要となっている。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る他の一実施形態である第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、屋内配線を多段に分岐させた多段配線とする場合に関わる。このような多段配線をする場合は、図6のように通信不要コンセント42への分岐があるたびに分岐回路32を設ければよい。また、通信不要コンセント42のみに向かう配線内では、通信必要コンセント41への分岐が必要ないため、分岐部31によって配線を分岐させることで簡素な構成となる。なお、図6においては各配線を複数本の線で示すべきところ、1本の線で表現している。
【0035】
具体的には次のとおりである。図6中左方の送電元からの配線はまず、1つの通信必要コンセント41とそれ以外のコンセントに向かう配線とに分岐している。この分岐部では、分岐線が通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)であるため、分岐部31が用いられている。次に、この分岐部31からの配線は、さらに通信不要コンセント42のみへと向かう非通信配線(第2の配線)と通信必要コンセント41へと向かう通信配線(第1の配線)とに分岐する。このため、2つ目の分岐部では分岐回路32が用いられている。この分岐回路32を便宜上、分岐回路32xと呼ぶこととする。
【0036】
分岐回路32xは、通信不要コンセント42のみに向かう非通信配線が端子32cに接続されており、その他の後段に向かう通信配線が端子32bに接続されている。端子32cに接続された非通信配線は、分岐部31によって分岐され、2つの通信不要コンセント42と接続されている。このように、分岐回路32の端子32cに接続された非通信配線をさらに分岐させる際は、通信不要コンセント42のみに分岐させればよいため、分岐部31によって分岐されることとなっている。これにより、分岐回路32をさらに使用することなく、簡素な構成で配線を分岐させることができる。
【0037】
分岐回路32xの端子32bには、通信必要コンセント41に向かう2本の通信配線が接続されている。このように、分岐回路32の端子に複数の配線が直接接続されることにより、1本の配線が分岐回路32によって直接、3本以上の配線に分岐するようになっていてもよい。分岐回路32xの端子32bに接続された一方の通信配線は、分岐部31を介して2つの通信必要コンセント41に向かっている。このように、後段に通信必要コンセント41のみが配置された分岐部においては、分岐部31を使用して配線を分岐させればよい。
【0038】
分岐回路32xの端子32bに接続されたもう1本の通信配線は、分岐部31を介して1つの通信必要コンセント41へと分岐していると共に、もう1つの分岐回路32の端子32aに接続されている。この分岐回路32を便宜上、分岐回路32yと呼ぶこととする。分岐回路32yは、1つの通信不要コンセント42へと配線を分岐させるために設けられている。分岐回路32yの端子32cはこの通信不要コンセント42のみへと向かう非通信配線に接続されており、端子32bには分岐部31を介して2つの通信必要コンセント41へと向かう通信配線が接続されている。
【0039】
以上のように、分岐回路32x及び32yのいずれも、端子32a及び32bが通信必要コンセント41へと向かう通信配線と接続されている。これにより、通信必要コンセント41に接続された通信機器同士が端子32a及び32b間を経由して通信可能である。一方、分岐回路32x及び32yのいずれも、端子32cが通信不要コンセント42のみへと向かう非通信配線と接続されている。これにより、通信不要コンセント42へ向かう分岐線が通信必要コンセント41間を結ぶ通信経路から遮断されている。
【0040】
このように構成されることにより、第2の実施形態も第1の実施形態と同様、電力線通信用の配線経路における分岐の増加を抑えつつ、電力供給用の配線経路における分岐の数を増加させて、電力供給に使用できるコンセントの数を増加できる。
【0041】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、通信必要コンセント41には終端回路70が設けられており、通信不要コンセント42には終端回路70が設けられていない。このように、通信必要コンセント41と通信不要コンセント42とが異なる構成を有している。しかし、通信必要コンセント41と通信不要コンセント42とが異なる構成を有していなくてもよい。例えば、通信必要コンセント41のみならず、通信不要コンセント42にも終端回路70が設けられていてもよいし、通信必要コンセント41及び通信不要コンセント42のいずれにも終端回路70が設けられていなくてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、主に単相3線式の電力線を用いて電力線通信を行う場合であって、同相での通信を行う場合が想定されている。しかし、異相での通信を含む場合が想定されてもよいし、電力線として単相3線式以外の方式が用いられてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、屋内配線において主に1本の配線が2本の配線に分岐する分岐部が設けられる場合が想定されているが、1本の配線が3本以上の配線に分岐する分岐部が設けられる場合が想定されてもよい。また、分岐回路32は2つの端子32a及び32bが通信配線に、1つの端子32cが非通信配線に接続されるように構成されている。しかし、分岐回路32が、通信配線に接続する3つ以上の端子や、非通信配線に接続される2つ以上の端子を有していてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 電力線通信システム
10 基幹配線
21〜25 分岐線
32,132 分岐回路
41 通信必要コンセント
42 通信不要コンセント
51,52 通信機器
65 ローパスフィルタ
65a,65b インダクタ
70 終端回路
165,165 LC共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に向かって複数の配線に分岐する屋内配線を用いて行われる電力線通信用の電力線敷設構造であって、
第1の末端に向かう第1の配線のみに分岐すると共に、前記第1の配線間の全てにおいて、電力線通信に用いられる通信周波数帯域に関して通過特性を有する第1の分岐部と、
第2の末端のみに向かう第2の配線と前記第1の配線とに分岐すると共に、前記第1の配線間においては前記通信周波数帯域に関して通過特性を有し、前記第1の配線と前記第2の配線との間においては前記通信周波数帯域に関して抑圧特性を有する第2の分岐部とを備えていることを特徴とする電力線敷設構造。
【請求項2】
前記第1の末端間を結ぶ通信経路のインピーダンスを整合する終端回路が当該通信経路の少なくとも一端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電力線敷設構造。
【請求項3】
前記第1の分岐部より後段の分岐部においては、前記第1の配線にのみ分岐する場合には前記第1の分岐部が設けられ、前記第2の配線への分岐を含む場合には前記第2の分岐部が設けられており、
前記第2の分岐部から分岐した前記第1の配線からの分岐部においては、前記第1の配線にのみ分岐する場合には前記第1の分岐部が設けられ、前記第2の配線への分岐を含む場合には前記第2の分岐部が設けられており、
前記第2の分岐部から分岐した前記第2の配線からの分岐部においては、前記第1の分岐部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力線敷設構造。
【請求項4】
前記通信周波数帯域が、屋内配線による電力供給における周波数帯域より高い周波数帯域であり、
前記第2の分岐部に、前記通信周波数帯域の下限周波数以上の帯域を抑圧すると共に、前記電力供給における周波数帯域の上限周波数以下の帯域を通過させるフィルタ回路が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力線敷設構造。
【請求項5】
前記第2の分岐部に、前記通信周波数帯域を抑圧するフィルタ回路が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力線敷設構造。
【請求項6】
前記第2の分岐部において前記第2の配線に分岐する配線に、インダクタが直列に挿入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力線敷設構造。
【請求項7】
前記第2の分岐部において前記第2の配線に分岐する配線に、インダクタ及びキャパシタを有する並列共振回路が直列に挿入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力線敷設構造。
【請求項8】
末端に向かう複数の配線に分岐する屋内配線を用いて行われる電力線通信方法であって、
第1の末端に向かう第1の配線のみに分岐する分岐部においては、前記第1の配線間の全てにおいて、電力線通信に用いられる通信周波数帯域に関して信号を通過させ、
第2の末端のみに向かう第2の配線と前記第1の配線とに分岐する分岐部においては、前記第1の配線間では前記通信周波数帯域に関して信号を通過させると共に、前記第1の配線と前記第2の配線との間では前記通信周波数帯域に関して信号を抑圧することを特徴とする電力線通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−229020(P2011−229020A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98119(P2010−98119)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】