説明

電力消費装置および通信ユニット

【課題】プリンタなどの待機時の総消費電力を低減させること。
【解決手段】POSプリンタ1は、印刷待機状態が所定時間以上続いた場合には、低電力消費状態に移行する。低電力消費状態では、プリンタユニット10を省電力状態にすると共に、A/C電源ユニット30をスリープ状態にしてA/C電源ユニット30自体における電力消費が発生しないようにする。また、I/Fボード20は二次電池21を内蔵しており、低電力消費状態中は二次電池21の電力によってホスト装置2からの印刷データを受信可能な状態に維持される。I/Fボード20は、低電力消費状態中に印刷データを受信した場合には、A/C電源ユニット30を復帰させるためのトリガ信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、待機時に省電力状態に移行する電力消費装置、および、当該電力消費装置が備える通信ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタなどの電力消費装置では、ランニングコストの低減や環境破壊防止のために、ホストコンピュータ等からの印刷要求がない状態が一定時間以上続くと、印刷機構や駆動機構、あるいはプリンタ全体を制御するメインボードなどの電力を消費する各部を省電力状態(スリープモード)に移行させて、待機時における消費電力量の低減を図っている。
【0003】
本願出願人は、特許文献1において、印刷装置における待機時の消費電力を従来よりも低減させるための構成を提案している。特許文献1の印刷装置は電源切換回路を有しており、通常モードでは、商用電源からの電力を電源ユニットから装置内の各部に供給し、節電モード(省電力状態)では、二次電池に充電された電力をI/F回路や操作パネルなどに供給するように電源切換回路を制御している。このようにすると、節電モードにおいてI/F回路や操作パネルに供給される電力については二次電池に充電された電力でまかなうことができるので、節電モードにおける消費電力を低減させることができる。
【0004】
また、従来は、省電力状態にある各ユニットに起動用の電力を供給するため、プリンタ装置内の電源ユニットは、他のユニットが省電力状態に移行しても、通常どおり電力供給可能な状態に維持されていた。つまり、従来の省電力状態では、電源ユニットは省電力状態でないときと同様に動作しており、省電力状態でないときと同様に電力を消費していた。よって、省電力状態における電源ユニット自体の消費電力量を減らすことができず、待機時の消費電力量を大幅に減らすことができなかった。
【0005】
待機時における電源ユニットの消費電力量を減らす方策としては、例えば、一般的な電源ユニットであるスイッチング電源では、電源が無負荷状態に近づいたときには一次側電源回路におけるスイッチング素子を間欠発振させたり、スイッチング動作におけるオン期間を調整するなどの方法が用いられている。
【特許文献1】特開2007−62243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の印刷装置では、待機時における装置内各部への消費電力を二次電池の電力でまかなうことにより、待機時における見かけの消費電力量(装置外の商用電源などから供給される電力の消費量)を減らすことができるものの、電源切換回路を制御する制御部(IO制御ASIC)への電力供給を維持する必要があった。また、特許文献1では、待機時に電源ユニット自体を完全に停止させてスリープ状態にすること、例えば、電源ユニットのスイッチング動作などを完全に停止して電源ユニット自体が電力を消費しないようにすることにより、待機時における総電力消費量を減らすことや、スリープ状態になった電源ユニットを適切なタイミングで再起動して印刷ユニットへの電力供給を再び可能にすることは提案されていなかった。
【0007】
また、一次側電源回路におけるスイッチング素子の間欠発振やオン期間の調整により消費電力を減らす方法では、消費電力を減らすことはできるものの、電源ユニットをスリープ状態にして電源ユニット自体が電力を消費しないようにした場合と比べると、消費電力低減効果は小さかった。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、待機時には電源ユニットをスリープ状態にしてその消費電力を極小化することにより、待機時における装置全体の消費電力を低減させると共に、適切なタイミングで電源ユニットを再起動させて再び電力供給可能にすることができる電力消費装置、および、当該電力消費装置が備える通信ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電力消費装置は、
電力消費部と、
当該電力消費部に電力供給するための主電源と、
外部とのデータ通信を行うための通信部と、
補助電源とを有し、
前記主電源は、前記電力消費部への電力供給が可能な動作状態と、前記主電源自身の消費電力が前記動作状態よりも少ないスリープ状態に切り換え可能であり、
前記通信部は、前記スリープ状態において、前記補助電源の電力により外部からの通信を受け付け可能な状態に維持され、外部から所定のデータを受信すると、前記主電源を前記スリープ状態から前記動作状態に復帰させるためのトリガ信号を出力することを特徴とする。
【0010】
このように、本発明では、主電源それ自体をスリープ状態に切り換えることができる。また、スリープ状態では、主電源とは別個に設けられた補助電源によって通信部に電力を供給するので、主電源がスリープ状態であっても外部からのデータを受信できる。また、外部からのデータを受信したときは、通信部が、主電源を動作状態に復帰させるためのトリガ信号を出力できる。よって、電力消費部への電力供給が必要ないときには主電源をスリープ状態にして主電源における消費電力を減らすことができ、待機状態における電力消費装置の総消費電力を減らすことができる。また、電力供給が必要になったときには速やかに主電源を動作状態に復帰させることができる。
【0011】
本発明において、前記補助電源は充電可能であり、前記主電源が前記動作状態にあるときに、前記主電源から供給される電力によって充電されるようにするとよい。このようにすると、再充電により、補助電源を繰り返し電力を供給可能にすることができる。また、スリープ状態では充電しておいた電力を使用するので、見かけの消費電力を減らすことができる。
【0012】
本発明において、前記主電源は、前記スリープ状態においてその動作を停止するとよい。このようにすると、スリープ状態では主電源自体が電力を消費しないようにすることができるので、待機時における装置全体の消費電力を大幅に減らすことができる。
【0013】
本発明において、前記電力消費部はプリンタユニットであり、前記通信部は、外部から前記プリンタユニットへの印刷要求を受信したことに基づき、前記トリガ信号を出力するとよい。このようにすると、プリンタ装置における待機時の消費電力を減らすことができる。また、待機時でも通信ユニットがホスト装置などからの印刷要求を受信でき、主電源にトリガ信号を出力して主電源を動作状態に復帰させることができるので、印刷要求を受信したときには、プリンタユニットに起動用および印刷動作用の電力を速やかに供給して印刷動作を開始させることができる。
【0014】
本発明において、前記主電源は、外部からデータが受信されないなど前記プリンタユニットにおける印刷待機状態が所定時間以上続いた場合に、前記スリープ状態に移行するとよい。このようにすると、無駄な電力消費を減らすことができる。
【0015】
本発明において、前記電力消費部が搭載された装置本体を有し、前記通信部は、前記装置本体に着脱可能な通信用インターフェースボードであるとよい。このようにすると、既存の電力消費装置の構成を大幅に変更する必要がないので、待機時の消費電力が少ない電力消費装置を容易かつ廉価に提供できる。
【0016】
次に、本発明は、電力消費装置に設けられた通信ユニットであって、
補助電源を有し、当該補助電源の電力によって動作する状態と、外部電源からの電力供給によって動作する状態に切り換え可能であり、
前記補助電源の電力によって動作しているときに外部から所定のデータを受信すると、前記電力消費装置における主電源を、前記電力消費装置内に電力供給しない状態から、電力供給する状態に復帰させるためのトリガ信号を出力することを特徴とする。
【0017】
このように、本発明の通信ユニットは補助電源を有しているので、外部電源からの電力供給がなくても、データを受信することができる。また、外部からデータを受信したときには主電源にトリガ信号を出力することができるので、主電源を電力供給可能な状態に復帰させることができる。
【0018】
本発明において、前記補助電源は充電可能であるとよい。このようにすると、再充電により、補助電源に繰り返し電力を供給可能にすることができる。また、スリープ状態では充電しておいた電力を消費するので、見かけの消費電力を減らすことができる。
【0019】
本発明において、前記電力消費装置はプリンタユニットを備えており、外部から前記プリンタユニットへの印刷要求を受信したことに基づき、前記トリガ信号を出力するとよい。このようにすると、待機時でも通信ユニットがホスト装置などからの印刷要求を受信でき、主電源にトリガ信号を出力できるので、プリンタユニットに起動用および印刷動作用の電力を速やかに供給して印刷動作を開始させることができる。
【0020】
本発明の通信ユニットが、前記電力消費装置における装置本体に着脱可能であるとよい。このようにすると、既存の電力消費装置の構成を大幅に変更する必要がないので、待機時の消費電力が少ない電力消費装置を低コストで提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、通信部に主電源から電力供給していないときでも、補助電源の電力により、通信部(通信ユニット)が外部からのデータを受信できる。また、外部からのデータを受信したときは、通信部(通信ユニット)から、主電源を電力供給可能な状態に復帰させるためのトリガ信号を出力できる。よって、電力消費部への電力供給が必要ないときには主電源をスリープ状態にして主電源における消費電力を減らすことができ、待機状態における電力消費装置の総消費電力を減らすことができる。また、電力供給が必要になったら主電源を速やかに動作状態に復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(POSプリンタの構成)
図1は本実施形態のPOSプリンタのブロック図である。この図に示すように、POSプリンタ1(電力消費装置)は、印刷動作などを行うためのプリンタユニット10(電力消費部)と、ホスト装置2との間でデータの送受信を行うための通信用インターフェースボード20(通信部/通信ユニット:以下、I/Fボードという)と、商用電源などからの電力をPOSプリンタ1内の各部に供給するためのA/C電源ユニット30(主電源)を備えている。
【0023】
プリンタユニット10は、プリンタユニット10を含むPOSプリンタ1全体の制御を行う制御部11と、印刷機構や紙送り機構などの図示しない各種機構を備えている。制御部11は、プリンタユニット10や他ユニットの制御における各種処理を実行するCPUと、制御に必要な各種プログラムやデータを記憶しているROMおよび制御時にワークエリアとして使用されるRAMなどの記憶部と、CPUの制御に基づいて計時を行うタイマなどを備えている。
【0024】
制御部11は、A/C電源ユニット30からの電力供給によって各種処理を行う。例えば、制御部11は、ホスト装置2からI/Fボード20を介して印刷データ(印刷要求)を受信し、受信したデータに基づいて印刷処理を行う。印刷処理では、図示しない駆動用回路にCPUからの制御データを入力することにより、印刷機構や紙送り機構などを駆動する。また、制御部11は、POSプリンタ1本体に操作ボタンなどが設けられている場合には、操作ボタンなどからの入力に応じて各種処理を行うこともできる。例えば、電源ボタンのオンオフ操作に基づいて、POSプリンタ1の起動処理やシャットダウン処理を行うことができる。
【0025】
制御部11は、プリンタユニット10が所定時間以上に亘って印刷データを受信しないなどにより、印刷処理などを行っていない場合には、プリンタユニット10を省電力状態に移行させる。省電力状態は、例えば、制御部11を含むプリンタユニット10の処理あるいは動作が完全に停止されて電力供給も停止され、プリンタユニット10における電力消費が発生していない状態である。また、制御部11は、外部からI/Fボード20にデータの入力があった場合には、I/Fボード20などからの制御信号およびA/C電源ユニット30からの電力供給に基づき、省電力状態から復帰する。
【0026】
I/Fボード20は、POSプリンタ1とホスト装置2を接続する通信ケーブル、例えば、USBケーブルやRS−232Cケーブル、SCSIケーブル、あるいは、イーサネット(登録商標)ケーブルなどの各種通信規格に準拠したケーブルのいずれかを接続可能に構成されている。I/Fボード20は、これらの通信規格により規定されたプロトコルでデータの入出力を行う。すなわち、I/Fボード20は、通信プロトコル処理を行うためのDSPやCPUなどのプロセッサあるいはカスタムLSIなどの論理回路を内蔵している。I/Fボード20は、POSプリンタ1本体に着脱可能なユニット化された部品である。従って、POSプリンタ1は、使用すべき通信規格に対応したI/Fボード20を適宜差し替えて使用することができる。無線通信によりPOSプリンタ1とホスト装置2との通信を行うことができるようにするために、I/Fボード20に無線LANアダプタなどを接続できるようにしてもよい。
【0027】
I/Fボード20は、その内部にリチウムイオン電池などの二次電池21(補助電源)を内蔵している。二次電池21は充電可能であり、A/C電源ユニット30に接続可能である。よって、A/C電源ユニット30からの電力で二次電池21を充電することができる。I/Fボード20は、A/C電源ユニット30からの電力で動作するか、または、二次電池21の電力で動作するかを適宜切り換えることができる。I/Fボード20は、A/C電源ユニット30あるいは二次電池21から電力供給されているときは、外部からの通信データを受信することができる。なお、本実施形態では、A/C電源ユニット30とI/Fボード20は制御部11内の配線を経由して接続されているが、A/C電源ユニット30とI/Fボード20を、制御部11を経由せずに直接接続してもよい。
【0028】
A/C電源ユニット30は、交流の商用電源(AC電源)から直流電圧を生成してプリンタユニット10およびI/Fボード20に供給する。A/C電源ユニット30は、POSプリンタ1が電源オン状態にある間は、通常は、これらの電力供給先に電力を供給可能であるが、所定の電源スリープ条件が成立したことに基づき、プリンタユニット10やI/Fボード20への電力供給を行うことを停止するスリープ状態に移行する。本実施形態におけるスリープ状態とは、A/C電源ユニット30の動作を停止して電力供給を完全に停止し、これにより、A/C電源ユニット30自体が電力を消費しなくなった状態である。例えば、A/C電源ユニット30としてスイッチング電源を使用した場合には、そのスイッチング動作を完全に停止した状態である。なお、A/C電源ユニット30をスリープ状態にした場合でも、漏洩電流などによる電力損失は発生する。
【0029】
A/C電源ユニット30のスリープ状態への移行は、例えば、制御部11からの制御信号に基づいて行われる。また、A/C電源ユニット30は、I/Fボード20が出力したトリガ信号に基づき、スリープ状態から、プリンタユニット10およびI/Fボード20などに電力を供給可能な動作状態に復帰する。
【0030】
(POSプリンタの制御)
図2は、POSプリンタ1の状態遷移図である。この図に示すように、POSプリンタ1は、電源オン状態にあるときは、印刷待機状態S1、印刷状態S2、低消費電力状態S3、電源復帰状態S4の4つの状態間を遷移する。以下、これらの各状態およびその遷移時における各ユニットの制御について説明する。
【0031】
(1)印刷待機状態S1
POSプリンタ1は、電源投入により起動処理が行われた後、あるいは、後述するように既に受信した印刷データに基づく印刷処理が完了した後、印刷待機状態S1に移行する。印刷待機状態S1では、I/Fボード20が、外部から送信される印刷データを受信可能な状態にある。また、制御部11が、I/Fボード20からの印刷データなどの入力を常時受け付け可能な状態にある。
【0032】
印刷待機状態S1では、制御部11およびI/Fボード20への電力はA/C電源ユニット30から供給されている。また、印刷待機状態S1においてI/Fボード20が内蔵する二次電池21が充電完了していない場合には、A/C電源ユニット30からの電力供給により、二次電池21の充電が行われる。印刷待機状態S1では、プリンタユニット10およびI/Fボード20は待機状態にあって印刷に関する処理を開始していないので、A/C電源ユニット30からプリンタユニット10およびI/Fボード20への電力供給量は少ない。すなわち、印刷待機状態S1では、A/C電源ユニット30は電力供給可能な状態にあるものの、電力供給量が少ない低負荷状態にある。
【0033】
そこで、制御部11は、このような低負荷状態が所定時間以上続いた場合には、プリンタユニット10およびA/C電源ユニット30を自動的に省電力状態およびスリープ状態に移行させる。そのため、制御部11は、印刷待機中には、タイマによって印刷待機状態S1の継続時間を計時している。そして、制御部11は、印刷待機状態S1の継続時間が所定の長さに達した場合には、後述するように、低消費電力状態S3への移行を開始する。
【0034】
(2)印刷状態S2
印刷待機状態S1において、I/Fボード20に外部のホスト装置2などから印刷データなどの入力があると、制御部11は、POSプリンタ1を印刷状態S2に移行させる。印刷状態S2では、I/Fボード20がホスト装置2などから印刷データなどを受信し、内蔵するプロセッサなどによってホスト装置2から入力されたデータの解析を行い、解析内容に応じて、制御部11あるいは他のユニットに制御信号やデータを出力する。制御部11は、I/Fボード20からの入力内容に基づいて印刷処理などを開始する。制御部11は、印刷処理中にI/Fボード20が新たな印刷データを受信した場合には、当該データをバッファなどに格納しておき、現在実行中の印刷処理を終了した後に次のデータに基づく印刷処理を開始する。制御部11は、受け付けたデータに基づく処理を全て終了すると、POSプリンタ1を、印刷状態S2から再び印刷待機状態S1に移行させる。
【0035】
印刷状態S2では、プリンタユニット10およびI/Fボード20への電力供給は、A/C電源ユニット30により行われている。このとき、制御部11は印刷に関する制御を実行しており、また、印刷機構や紙送り機構などに駆動電力が供給されているので、印刷状態S2における電力消費量は印刷待機状態S1における電力消費量よりも大きい。従って、印刷状態S2では、A/C電源ユニット30は電力供給量が多い高負荷状態にある。なお、後述するように低消費電力状態S3から直接印刷状態S2に移行した場合には、印刷状態S2において二次電池21の充電を行うことができる。
【0036】
(3)低消費電力状態S3
低消費電力状態S3では、プリンタユニット10およびA/C電源ユニット30が省電力状態およびスリープ状態に移行する。(1)で説明したように、制御部11は、印刷待機状態S1の継続時間をタイマによって計時している。制御部11は、例えば、印刷待機状態S1の継続時間が所定の長さに達した場合にタイマ割込信号などを発生させ、このタイマ割込信号に基づき、プリンタユニット10の省電力状態への移行を開始する。例えば、制御部11は、今回の起動時あるいはその後の処理において各ワークエリアに展開されたデータのうち、次回起動処理に必要なデータ等を保存してプリンタユニット10のシャットダウン処理を行う。これにより、プリンタユニット10の処理が完全に停止され、制御部11がI/Fボード20などからの入力を受け付けない状態となる。
【0037】
制御部11は、プリンタユニット10が省電力状態への移行を開始することを条件として、あるいは、印刷待機状態S1の継続時間が所定の長さに達したことを条件として、A/C電源ユニット30に、スリープ状態に移行するための制御信号を出力する。これにより、A/C電源ユニット30がスリープ状態への移行を開始する。なお、A/C電源ユニット30のスリープ状態への移行は、プリンタユニット10のシャットダウン処理が終了してプリンタユニット10への電力供給が不要になってから行う。A/C電源ユニット30がスリープ状態に移行すると、A/C電源ユニット30の出力が停止して、A/C電源ユニット30からプリンタユニット10およびI/Fボード20への電力供給が停止される。
【0038】
本実施形態では、プリンタユニット10が省電力状態に移行している間は、I/Fボード20においてホスト装置2から入力されるデータを監視する。I/Fボード20は、A/C電源ユニット30がスリープ状態にあるときは、内蔵する二次電池21からの電力供給によって動作するように電源回路が切り換えられる。低消費電力状態S3では、このように、プリンタユニット10およびA/C電源ユニット30の両ユニットを停止して電力消費が発生しないようにしているので、低消費電力状態S3におけるPOSプリンタ1の消費電力は、I/Fボード20の消費電力を除けば、漏洩電流などによる電力損失のみとなっている。I/Fボード20を動作可能状態に維持するための電源は二次電池21に切り換えられているので、外部からPOSプリンタ1への電力供給量(見かけの消費電力)は非常に小さくなっている。
【0039】
(4)電源復帰状態S4
低消費電力状態S3においてホスト装置2などからI/Fボード20に印刷データなどのデータ入力があった場合には、POSプリンタ1は、電源復帰状態S4に移行する。電源復帰状態S4では、I/Fボード20は、ホスト装置2から受信したデータに基づき、制御部11に、プリンタユニット10の省電力状態を解除するための起動要求信号を出力する。また、I/Fボード20は、プリンタユニット10に起動用の電力を供給するために、A/C電源ユニット30に、スリープ状態から復帰させるためのトリガ信号を出力する。トリガ信号は割り込み処理用の信号でもよい。A/C電源ユニット30は、I/Fボード20からの制御信号に基づいて起動開始し、電力を供給可能な動作状態に復帰する。プリンタユニット10は、復帰したA/C電源ユニット30からの電力供給によって起動開始する。
【0040】
I/Fボード20は、プリンタユニット10が起動完了するまでの間、受信した印刷データをプリンタユニット10に送信しないで保持しており、起動完了後に印刷データをプリンタユニット10に受け渡す。これにより、POSプリンタ1は印刷状態S2に移行し、受信した印刷データに基づいて印刷処理などを開始する。電源復帰状態S4では、I/Fボード20における電力供給は、低消費電力状態S3と同様に二次電池21によって行われるが、A/C電源ユニット30が動作状態に復帰した後は、A/C電源ユニット30からの電力供給に切り換えて、二次電池21の再充電を行っても良い。
【0041】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態のPOSプリンタ1は、印刷待機状態S1が所定時間以上続いた場合に低消費電力状態S3に移行し、プリンタユニット10だけでなくA/C電源ユニット30をスリープ状態に切り換えて消費電力を減らすことができる。また、I/Fボード20に二次電池21からの電力を供給することにより、I/Fボード20を、低消費電力状態S3においても外部からのデータを受信可能な状態に維持している。これにより、POSプリンタ1は、印刷ジョブなどの負荷がないときはプリンタユニット10だけでなくA/C電源ユニット30についてもスリープ状態にして電力消費を発生させないようにし、待機状態におけるPOSプリンタ1の総消費電力を大幅に減らすことができる。よって、POSプリンタの運用コストを減らすことができる。
【0042】
また、低消費電力状態S3では、A/C電源ユニット30の出力を完全に停止させるので、A/C電源ユニット30の寿命を延ばすことができる。また、A/C電源ユニット30がPOSプリンタ1における各部品よりも長寿命化した場合には、A/C電源ユニット30を他の部品と同レベルの寿命の部品に置換することができるので、コストダウンを図ることができる。
【0043】
また、低消費電力状態S3においてI/Fボード20が印刷データなどを受信した場合には、受信したデータに基づいてI/Fボード20からA/C電源ユニット30にトリガ信号を出力できるので、A/C電源ユニット30を電力供給が必要なタイミングで動作状態に復帰させることができる。よって、印刷ジョブが発生したときには、速やかに印刷状態S2への移行を開始することができる。また、商用電源が停止するなどの異常が発生した時には二次電池21に充電された電力をPOSプリンタ1の各部に供給すれば、異常発生時におけるバックアップ印刷あるいは異常状態を示す印刷を行うことも可能である。
【0044】
また、本実施形態のPOSプリンタ1は、一般的な構成のPOSプリンタの通信ユニットに二次電池などの補助電源を追加するだけで実現できるので、既存の装置の構成を大幅に変更する必要がなく、低コストでの製造が可能である。また、I/Fボード20などの通信ユニットは着脱可能な部品であるので、既存POSプリンタからの構成部品の変更が容易である。
【0045】
(改変例)
(1)上記実施形態では、補助電源として充電可能な二次電池を用いていたが、ボタン電池などを補助電源として用いてもよい。また、大容量コンデンサやキャパシタなどの蓄電装置を補助電源として用いても良い。
【0046】
(2)上記実施形態では、I/Fボード20が二次電池21を内蔵していたが、二次電池21をPOSプリンタ1内のI/Fボード20とは異なる部位に設け、I/Fボード20をPOSプリンタ1に装着することにより二次電池21とI/Fボード20が接続されるようにしてもよい。
【0047】
(3)上記実施形態では、制御部11にタイマを設けて印刷待機状態S1の継続時間を計時していたが、A/C電源ユニット30にタイマを設け、A/C電源ユニット30の無負荷状態(プリンタユニット10等への電力供給がない状態)の継続時間を計時して、スリープ状態への移行開始条件としてもよい。また、ホスト装置2がPOSプリンタ1のステータスを監視している場合には、印刷待機状態S1の継続時間をホスト装置2で監視し、ホスト装置2から制御部11およびA/C電源ユニット30に、省電力状態およびスリープ状態への移行を開始させるための制御信号を送っても良い。
【0048】
(4)上記実施形態では、A/C電源ユニット30におけるスリープ状態をA/C電源ユニット30が完全に停止して電力消費が発生しなくなった状態にしたが、スリープ状態は、このような状態に限定されない。例えば、A/C電源ユニット30の出力電圧を印刷待機状態S1における出力電圧よりも低くした状態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るPOSプリンタのブロック図である。
【図2】本発明に係るPOSプリンタの状態遷移図である。
【符号の説明】
【0050】
1…POSプリンタ(電力消費装置)、2…ホスト装置、10…プリンタユニット(電力消費部)、11…制御部、20…I/Fボード(通信部/通信用インターフェースボード)、21…二次電池(補助電源)、30…A/C電源ユニット(主電源)、S1…印刷待機状態、S2…印刷状態、S3…低消費電力状態、S4…電源復帰状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力消費部と、
当該電力消費部に電力供給するための主電源と、
外部とのデータ通信を行うための通信部と、
補助電源とを有し、
前記主電源は、前記電力消費部への電力供給が可能な動作状態と、前記主電源自身の消費電力が前記動作状態よりも少ないスリープ状態に切り換え可能であり、
前記通信部は、前記スリープ状態において、前記補助電源の電力により外部からの通信を受け付け可能な状態に維持され、外部から所定のデータを受信すると、前記主電源を前記スリープ状態から前記動作状態に復帰させるためのトリガ信号を出力することを特徴とする電力消費装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力消費装置において、
前記補助電源は充電可能であり、前記主電源が前記動作状態にあるときに、前記主電源から供給される電力によって充電されることを特徴とする電力消費装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力消費装置において、
前記主電源は、前記スリープ状態においてその動作を停止することを特徴とする電力消費装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項に記載の電力消費装置において、
前記電力消費部はプリンタユニットであり、
前記通信部は、外部から前記プリンタユニットへの印刷要求を受信すると、前記トリガ信号を出力することを特徴とする電力消費装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力消費装置において、
前記主電源は、前記プリンタユニットにおける印刷待機状態が所定時間以上続いた場合に、前記スリープ状態に切り換わることを特徴とする電力消費装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の電力消費装置において、
前記電力消費部が搭載された装置本体を有し、
前記通信部は、前記装置本体に着脱可能な通信用インターフェースボードであることを特徴とする電力消費装置。
【請求項7】
電力消費装置に設けられた通信ユニットであって、
補助電源を有し、当該補助電源の電力によって動作する状態と、外部電源からの電力供給によって動作する状態に切り換え可能であり、
前記補助電源の電力によって動作しているときに外部から所定のデータを受信すると、前記電力消費装置における主電源を、前記電力消費装置内に電力供給しない状態から、電力供給する状態に復帰させるためのトリガ信号を出力することを特徴とする通信ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の通信ユニットにおいて、
前記補助電源は充電可能であることを特徴とする通信ユニット。
【請求項9】
請求項7または8に記載の通信ユニットにおいて、
前記電力消費装置はプリンタユニットを備えており、
外部から前記プリンタユニットへの印刷要求を受信すると、前記トリガ信号を出力することを特徴とする通信ユニット。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかの項に記載の通信ユニットにおいて、
前記電力消費装置における装置本体に着脱可能であることを特徴とする通信ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−172891(P2009−172891A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14572(P2008−14572)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】