電力用半導体素子の異常検出装置
【課題】半田層の熱疲労や、必要に応じて過電流状態も迅速に検出可能として半導体素子を確実に保護するようにした電力用半導体素子の異常検出装置を低コストにて提供する。
【解決手段】センスエミッタ端子を備えると共に半田層の表面にチップの電極が接合されるIGBT等の異常検出装置であって、センスエミッタ端子に流れる電流を検出してIGBTに対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置に関する。IGBTチップ101Cに形成された複数のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の差を求める減算器133と、これらの差を所定の基準値と比較して半田層110の熱疲労によるクラック発生を検出するコンパレータ134,135、オア回路136等を備える。
【解決手段】センスエミッタ端子を備えると共に半田層の表面にチップの電極が接合されるIGBT等の異常検出装置であって、センスエミッタ端子に流れる電流を検出してIGBTに対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置に関する。IGBTチップ101Cに形成された複数のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の差を求める減算器133と、これらの差を所定の基準値と比較して半田層110の熱疲労によるクラック発生を検出するコンパレータ134,135、オア回路136等を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置等に用いられる電力用半導体素子を高温等による破壊から保護するための異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、電力変換装置の一例として直流−交流変換を行うインバータの主回路構成を示している。
図7において、1は直流電源、2は電動機等の負荷、3は直流電圧を所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換するインバータ部である。なお、図示されていないが、直流電源1は、一般的に、交流電源電圧をダイオード整流器と大容量の電解コンデンサとにより整流、平滑して構成される。
【0003】
また、インバータ部3において、4は電力用半導体素子としてのIGBT、5はIGBT4に逆並列接続された還流ダイオードであり、これらが三相の上下アームに合計6個接続されている。
6はIGBT4の駆動・保護回路であり、一般にIGBT4及び駆動・保護回路6を一体化したモジュールをIPM(インテリジェントパワーモジュール)と呼んでいる。なお、20は上記駆動・保護回路6との間で信号を授受して各IGBT4をオンオフ制御する制御回路である。
ここで、駆動・保護回路6は、IGBT4を駆動するだけでなく、IGBT4を過電流や過熱から保護する保護動作も行っている。
【0004】
図8は、過電流保護及び過熱保護機能を有する駆動・保護回路6の内部構成図である。なお、7はIGBT4の過電流を検出するための電流検出用端子としてのセンスエミッタ端子であり(この場合のIGBT4をセンス機能付きIGBTとも呼ぶ)、このセンスエミッタ端子7はIGBTチップ4C内に形成されている。
【0005】
図8に示す駆動・保護回路6において、8はゲート駆動回路であり、前記制御回路20からの制御信号を受けてIGBT4をオン、オフするためのものである。10はIGBTチップ4Cに内蔵されている温度検出用のダイオードであり、駆動・保護回路6内の電流源11から電流を流し、ダイオード10の電流−温度特性(通常は負特性)を利用して、IGBTチップ4Cの温度が基準電圧13に対応する温度以上か否かをコンパレータ12にて判断する。そして、ダイオード10による検出温度が設定値以下になった場合には、オア回路18を介して図7の制御回路20等にアラーム信号を出力すると共に、ゲート駆動回路8側にも信号を出力してIGBT4を強制的に遮断する。
【0006】
また、15はセンスエミッタ端子7と直列に接続された電流検出用の抵抗であり、この抵抗15の両端電圧が基準電圧16以上になるとIGBT4に過電流が流れていると判断し、コンパレータ17及びオア回路18を介してアラーム出力及びIGBT4の強制遮断を実行する。
なお、アラーム信号が出力された場合には、制御回路20側でも装置の強制停止を行うのが普通である。
【0007】
次に、図9は、上述したIGBT4及び駆動・保護回路6を一体化したIPMの概略断面図であり、主としてIGBTチップ4C及び還流ダイオードチップ5Cの実装構造を示したものである。
図9において、191は銅ベース、192は絶縁材、193,194は銅箔パターン(絶縁材192及び銅箔パターン193,194をまとめて絶縁基板という)であり、IGBTチップ4C及び還流ダイオードチップ5Cは銅箔パターン193,194上にそれぞれ半田付けされている。195,196は半田層を示す。また、197はケースである。
ここでは、駆動・保護回路6の実装構造については図示及び説明を省略してある。
【0008】
一般にIPMが長期にわたって使用されると、半田層195,196と銅箔パターン193,194との熱膨張率の相違によって半田層195,196が熱疲労を起こし、その結果、図10に示すようにクラック198が入り始める
クラック198が入ると、例えばIGBTチップ4Cと絶縁基板との間の熱抵抗が急激に高くなり、IGBTチップ4Cの温度上昇率も急激に高くなる。このため、前述した図8におけるダイオード10、コンパレータ12、オア回路18等による温度検出動作が間に合わず、最終的にIGBTチップ4Cの破壊を招くおそれがあった。また、半田層195,196にクラック198が入った場合、IPMとしてはもはや寿命であり、電力変換装置としては早期にIPMを交換する必要がある。
【0009】
図11は、半田層195の周辺部にクラック198が入った場合にIGBTチップ4Cの内部に流れる電流の模式図を示している。図11において、41はコレクタ電極、42はP層、43はN層、44はP層、45はN層、46は端部のエミッタ電極、47は中央部のエミッタ電極、48はゲート電極である(実際のIGBTチップの構造は更に複雑であるが、便宜上、構造を簡略化している)。
ここでは半田層195の周辺部にクラック198が入っているため、銅箔パターン193からコレクタ電極41に流れる電流は概ね半田層195の中央部を流れる。コレクタ電極41に流入した電流は拡散しようとするが、コレクタ電極41の中央部に比べてその周囲はコレクタ電極41の水平方向の抵抗分41Rによってインピーダンスが高いため、コレクタ電流の大部分は、図に太線で示すようにIGBTチップ4Cの中央部を通ってエミッタ電極47方向に流れることになる。
【0010】
図11のように半田層195にクラック198が発生すると、前述したごとくIGBTチップ4Cの温度が急激に上昇するため温度検出が不可能な場合もある。また、クラック198の位置によってIGBTチップ4Cの各部を流れる電流の大きさも異なるので、図8のようにセンスエミッタ端子7を一カ所にだけ配置して電流を検出する構造では、クラック198を正確に検出できないおそれもある。
【0011】
なお、従来技術として、電力用半導体素子の表裏にそれぞれ設けられた電極の温度を熱電対により検出し、前記半導体素子と各電極とを接合する半田の劣化によるクラック発生を検出するようにした半導体装置の異常検出装置が、特許文献1に記載されている。
【0012】
また、センス機能付きIGBTに複数のカレントセンシング部(センスエミッタ端子)を設け、これらのカレントセンシング部による検出電流に対応する電圧を主電流オフ指令回路及び主電流制限回路にそれぞれ別個に入力することにより、IGBTの過大電流検出レベルと短絡電流検出レベルとをそれぞれ独立に設定可能としてIGBTを大電流による破壊から適切に保護するようにした半導体装置が、特許文献2に記載されている。
【0013】
更に、メイントランジスタ部の周囲に複数のセンストランジスタ部(センスエミッタ端子)を配置してこれらのセンストランジスタ部のエミッタを一括接続し、過渡的な熱等に起因して電流の面内分布が変化した場合でも、全てのセンストランジスタ部を流れる電流の和であるセンス電流が一定であることを利用して高精度に電流検出を行うようにした電流検出機能付トランジスタが、特許文献3に記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2003−172760号公報([0071]〜[0084]、図1〜図3等)
【特許文献2】特開平6−164344号公報([0014]〜[0022]、図1、図2等)
【特許文献3】特開平5−74802号公報([0007]〜[0013]、図1〜図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した特許文献1記載の従来技術では、熱電対により温度を検出しているため、応答が遅く、半田層のクラックを迅速に検出して保護動作を行うのが困難であるという問題がある。
また、特許文献2記載の従来技術では、複数のセンストランジスタ部を用いて異なる保護レベルをそれぞれ設定しようとするものであり、半田層の熱疲労に着目した保護動作については特に開示されていない。
更に、特許文献3記載の従来技術では、チップの四隅等に配置した複数のセンストランジスタ部を流れる電流の合計値と主電流との比が一定であることを利用して電流検出精度を向上させているが、複数のセンストランジスタ部を均一に配置する必要があるため、製造上の制約が多く、コスト高になるという問題があった。
【0016】
そこで本発明の解決課題は、半田層の熱疲労や、必要に応じて過電流状態も迅速に検出可能として半導体素子を確実に保護するようにした電力用半導体素子の異常検出装置を低コストにて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、図11によって説明したように、熱疲労により半田層にクラックが入ると、電力用半導体素子の電極からクラックを介して電流が通流する位置に配置されたセンスエミッタ端子には電流が流れにくくなり、その電流検出値が他のセンスエミッタ端子による電流検出値よりも小さくなる(クラックがない状態では、センスエミッタ端子の位置によらず各センスエミッタ端子による電流検出値は概ね等しくなる)ことに着目したものである。
すなわち、請求項1に記載した発明は、電流検出用端子を備えると共に導電体の表面に素子チップの電極が接合される電力用半導体素子の異常検出装置であって、前記電流検出用端子に流れる電流を検出して前記半導体素子に対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記素子チップに形成された複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段と、これらの差または比率を所定の基準値と比較して前記導電体の熱疲労を検出する手段と、を備えたものである。
【0018】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
前記導電体は、銅箔パターンの表面に前記電極を接合するための半田層であり、この半田層の熱疲労を検出する手段は、熱疲労によるクラックを検出するものである。
【0019】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2において、
複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段は、前記電流検出値を電圧にそれぞれ変換して差または比率を求める手段であることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3の何れか1項において、
前記電流検出用端子を、前記電極に接合する前記導電層の形状に対応させて複数配置したものである。
【0021】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記電流検出用端子による電流検出値が過電流検出レベルを超えたときに前記半導体素子の過電流状態を検出する手段を備えたものである。
【0022】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項による熱疲労検出時、または、請求項5による過電流検出時に、前記半導体素子を構成要素とする電力変換装置を異常時制御アルゴリズムに従って制御するものである。
【0023】
請求項7に記載した発明は、請求項6において、前記異常時制御アルゴリズムは、前記半導体素子を直ちに遮断して前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むものである。
【0024】
請求項8に記載した発明は、請求項6において、前記異常時制御アルゴリズムは、所定時間経過後に、または予め設定された運転パターンの実行後に、前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むものである。
【0025】
請求項9に記載した発明は、請求項6〜8の何れか1項において、
前記異常時制御アルゴリズムは、外部へアラーム信号を出力させる制御動作を含むものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、IGBT等の電力用半導体素子を内蔵したIPM等における熱疲労現象や過電流状態を的確に検出することができ、これらの寿命推定が可能である。特に本発明では、熱電対等により温度を測定するのではなく、複数の電流検出用端子(センスエミッタ端子)による電流検出値の差や比に基づいて半導体素子の過熱状態を推定し、所定の保護動作を行うため、温度検出回路等の動作上の遅れもなく、迅速な異常検出、保護動作が可能になる。
これにより、熱疲労等に起因した半導体素子や電力変換装置の破壊を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態を示すもので、IPMのうち主としてIGBTチップの実装部分を示した平面図(図1(a))及び回路図(図1(b))である。なお、IPMに内蔵された駆動・保護回路の構成については後述する。
【0028】
図1(a)において、101CはIGBTチップ、110はIGBTチップ101Cを銅箔パターン120の表面に接合する半田層であり、銅箔パターン120は前記図9と同様に絶縁材の表面に固着されている。
IGBTチップ101C上面の活性領域のほぼ中央部には、電流検出用端子としての第1のセンスエミッタ端子101xが配置されており、四隅のうちの一角には電流検出用端子としての第2のセンスエミッタ端子101yが配置されている。また、図1(b)はIGBTチップ101Cを電気的に示したIGBT101の回路図であり、Gはゲート電極、Cはコレクタ電極、Eはエミッタ電極である。なお、これらの各電極G,C,Eについては、図1(a)における図示を省略してある。
【0029】
図2は、上記IGBT101の駆動・保護回路の構成図である。
この駆動・保護回路130Aは、前述した図7の制御回路20からの制御信号に基づいてIGBT101を駆動するゲート駆動回路131と、センスエミッタ端子101x,101yにそれぞれ接続された検出用抵抗132x,132yと、これらの検出用抵抗132x,132yの両端電圧が図示の符号で入力される減算器133と、この減算器133の出力が非反転入力端子に入力され、かつ反転入力端子に基準電圧134rが加えられた第1のコンパレータ134と、前記減算器133の出力が反転入力端子に入力され、かつ非反転入力端子に基準電圧135rが加えられた第2のコンパレータ135と、第1,第2のコンパレータ134,135の出力信号が入力されるオア回路136とを備えている。
【0030】
次に、この実施形態の動作を説明する。
図1の半田層110が熱疲労しておらず、クラックが発生していない場合には、前述した図11の説明から明らかなように、IGBTチップ101Cの中央部を通って第1のセンスエミッタ端子101xにより検出される電流検出値と、IGBTチップ101Cの端部を通って第2のセンスエミッタ端子101yにより検出される電流検出値との差は余り生じない。このため、図2のコンパレータ134,135の基準電圧134r,135rを適宜な値に設定しておけば、減算器133の出力電圧は基準電圧134rよりも小さく、かつ基準電圧135rより大きくなるため、コンパレータ134,135及びオア回路136からは出力信号が発生しない。
【0031】
一方、例えば第2のセンスエミッタ端子101yの下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が小さくなり、減算器133の出力電圧が大きくなる。この出力電圧が第1のコンパレータ134の基準電圧134rを超えれば、コンパレータ134及びオア回路136を介して信号が出力される。
従って、この信号を半田層110の熱疲労検出信号として制御回路20に与え、ゲート駆動回路131の動作を即座に停止させたり、ある設定時間経過後または所定の運転パターン実行後に停止させて保護動作を行うことができる。また、オア回路136の出力信号に基づいてアラームを発生させても良い。
【0032】
更に、第1のセンスエミッタ端子101xの下方近傍、すなわちIGBTチップ101Cの中央部の下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が大きくなり、減算器133の出力電圧が負方向に大きくなる。この出力電圧が第2のコンパレータ135の基準電圧135rを下回ることにより、コンパレータ135及びオア回路136を介して信号が出力されるため、前記同様に所定の保護動作を行わせることが可能である。
なお、オア回路136の出力信号を図8と同様にゲート駆動回路131に入力し、ゲート駆動回路131の動作を直接停止させても良い。
【0033】
上記のように、図2の回路構成によれば、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の差が一定値以上になった場合に半田層110の熱疲労検出信号を出力させることができ、所定の保護動作を行うことが可能である。
【0034】
次いで、図3は駆動・保護回路の他の構成図である。なお、図2と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
図3に示す駆動・保護回路130Bは、図2における減算器133の代わりに除算器137を接続すると共に、第2のコンパレータ135の基準電圧135rの極性を図2とは逆にしたものであり、除算器137は第1のセンスエミッタ端子101xの電流による検出用抵抗132xの両端電圧を第2のセンスエミッタ端子101yの電流による検出用抵抗132yの両端電圧によって除算するように構成されている。
【0035】
この実施形態では、半田層110にクラックが発生していない場合には、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値と第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値とがほぼ等しく、除算器137の出力はほぼ1である。このため、第1,第2のコンパレータ134,135の基準電圧134r,135rを適宜な値に設定しておけば、コンパレータ134,135及びオア回路136からは出力信号が発生しない。
【0036】
しかし、例えば第2のセンスエミッタ端子101yの下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が小さくなるので、除算器137の出力電圧が大きくなり、この出力電圧が第1のコンパレータ134の基準電圧134rを超えればコンパレータ134及びオア回路136を介して信号が出力される。
また、IGBTチップ101Cの中央部の下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が大きくなるので、除算器137の出力電圧が小さくなり、この出力電圧が第2のコンパレータ135の基準電圧135rを下回るとコンパレータ135及びオア回路136を介して信号が出力される。
従って、オア回路136の出力信号を熱疲労検出信号として利用することにより、前記同様に所定の保護動作を行わせることができる。
【0037】
なお、図1に示した第1実施形態では、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yの下方近傍におけるクラックの発生に対しては有効であるが、例えば図1においてセンスエミッタ端子101yが配置されていない隅部3箇所の下方近傍の半田層110にクラックが発生したような場合には、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値にそれほど差が生じず、上記クラックの発生を検出できないおそれもある。
そこで、本発明の第2実施形態では、これらの箇所におけるクラックの発生も検出できるようにした。
【0038】
すなわち、図4は、第2実施形態においてIGBTチップの実装部分を示した平面図(図4(a))及び回路図(図4(b))である。この実施形態では、図4(a)に示すようにIGBTチップ102Cの中央部にセンスエミッタ端子101xが配置されると共に、四隅にセンスエミッタ端子101zがそれぞれ配置されている。なお、図4(b)はIGBTチップ102Cを電気的に示したIGBT102の回路図である。
【0039】
本実施形態において、回路構成は図示しないが、例えば四隅のセンスエミッタ端子101zによる電流検出値(図2,図3における検出用抵抗の両端電圧値)同士を比較し、その中の代表値(例えば最小の電流検出値)と中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値とを図2の減算器133や図3の除算器137に入力し、これらの出力電圧をコンパレータ134,135により基準電圧134r,135rとそれぞれ比較すれば、第1実施形態と同様に熱疲労検出信号を得ることができる。
【0040】
このようにすれば、仮に四隅のセンスエミッタ端子101zのうち何れか1個の下方近傍の半田層110にクラックが発生していれば、そのセンスエミッタ端子101zによる電流検出値は中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも小さくなるので、コンパレータ134,135及びオア回路136を介してクラックの発生を検出することができる。
なお、半田層110でのクラックの発生により半田層110の抵抗値が大きくなり、半田層110やIGBT102の温度上昇によってセンスエミッタ端子101x,101zによる電流検出値が全体的に変化することが予想されるが、四隅のセンスエミッタ端子101zによる電流検出値の代表値と中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値との大小関係は相対的に変わらないため、特に問題にはならない。
図示は省略するが、検出精度を上げるために、図4(a)のセンスエミッタ端子101zの相互間に更に別のセンスエミッタ端子を追加しても良い。
【0041】
次に、図5は本発明の第3実施形態に係る駆動・保護回路の構成図であり、前述した第1実施形態におけるIGBT101の過電流検出・保護を行うためのものである。
図5に示す駆動・保護回路130Cでは、検出用抵抗132x、132yの両端電圧がセレクタ138に入力され、その出力電圧が過電流検出用のコンパレータ139の非反転入力端子に入力されていると共に、コンパレータ139の出力信号がオア回路140の一方の入力端子に加えられている。
ここで、セレクタ138は入力電圧のうち最大値を選択して出力する機能を持っている。また、139rはコンパレータ139の反転入力端子に加えられている基準電圧であり、過電流検出レベルに相当する。
【0042】
なお、オア回路140の他方の入力端子に、例えば図2や図3におけるオア回路136の出力信号を入力することにより、オア回路140の出力信号から過電流検出信号と熱疲労検出信号との双方を得ることが可能である。この場合、センスエミッタ端子101x,101yは、過電流検出及び熱疲労検出を行う電流検出用端子として共用することができると共に、電流検出用抵抗132x,132yも共用可能である。
【0043】
本実施形態では、センスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の中で最大値をセレクタ138により選択し、その電流検出値に相当する電圧をコンパレータ139にて過電流検出レベルの基準電圧139rと比較することで、IGBT101の過電流状態を検出することができる。そして、過電流検出時には、熱疲労検出時と同様に制御回路20によりゲート駆動回路131の動作を停止させたり、アラーム信号等を出力させればよい。
【0044】
通常、センスエミッタ端子の位置によって電流検出値は異なるものであり、1カ所だけの電流検出ではIGBTを実際に流れている電流を正確に検出できず、過電流検出に支障をきたすおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、図8のように単一のセンスエミッタ端子により1カ所の電流を検出する方法に比べて、確実かつ安全サイドに過電流検出及び保護動作を行うことが可能となる。
【0045】
次いで、図6は電力変換装置の制御回路20における制御アルゴリズムを示している。
電力変換装置の運転指令201に対して、前述した各実施形態による熱疲労検出信号205がない場合は、論理ゲート202を介して通常時制御アルゴリズム203を有効とし、このアルゴリズム203をオア回路204を介して実行させる。
一方、熱疲労検出信号205が発生した場合には、論理ゲート206を介して異常時制御アルゴリズム207を有効とし、このアルゴリズム207をオア回路204を介して実行させる。
【0046】
ここで、通常時制御アルゴリズム203は、電力変換装置から所定の大きさ及び周波数の電圧を出力させるために各IGBTをオンオフする制御動作に必要なアルゴリズムであり、異常時制御アルゴリズムは、各IGBTの全ゲートオフ動作により電力変換装置の運転を直ちに停止させるようなアルゴリズムを意味する。
但し、場合によっては、半田層110にクラック等が発生していても、IGBTチップの温度が絶対最大定格温度以下であれば即破壊に至るおそれは少ないため、ある設定された所定の運転シーケンスの実行後に電力変換装置の運転を停止させても良い。
また、図6では熱疲労検出信号205を利用したアルゴリズムとして説明したが、熱疲労検出信号205の代わりに、図5のオア回路140の出力である過電流検出信号を用いても良い。
【0047】
なお、上記各実施形態では、熱疲労の検出や過電流の検出をIPM内の駆動・保護回路130A〜130Cにより行うものとしているが、電力変換装置の制御回路20内で行っても良いのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態におけるIGBTチップの実装部分を示した平面図(図1(a))及び回路図(図1(b))である。
【図2】第1実施形態における駆動・保護回路の構成図である。
【図3】第1実施形態における駆動・保護回路の他の構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるIGBTチップの実装部分を示した平面図(図4(a))及び回路図(図4(b))である。
【図5】本発明の第3実施形態における駆動・保護回路の構成図である。
【図6】電力変換装置の制御回路における制御アルゴリズムを示す図である。
【図7】インバータの主回路構成図である。
【図8】図7における駆動・保護回路の内部構成図である。
【図9】IPMの概略断面図である。
【図10】半田層にクラックが発生した場合のIPMの概略断面図である。
【図11】半田層にクラックが発生した場合におけるIGBTチップ内の電流経路を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:直流電源
2:負荷
3:インバータ部
20:制御回路
101,102:IGBT
101C,102C:IGBTチップ
101x,101y,101z:センスエミッタ端子
110:半田層
120:銅箔パターン
130A,130B,130C:駆動・保護回路
131:ゲート駆動回路
132a,132b:検出用抵抗
133:減算器
134,135,139:コンパレータ
134r,135r,139r:基準電圧
136,140:オア回路
137:除算器
138:セレクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置等に用いられる電力用半導体素子を高温等による破壊から保護するための異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、電力変換装置の一例として直流−交流変換を行うインバータの主回路構成を示している。
図7において、1は直流電源、2は電動機等の負荷、3は直流電圧を所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換するインバータ部である。なお、図示されていないが、直流電源1は、一般的に、交流電源電圧をダイオード整流器と大容量の電解コンデンサとにより整流、平滑して構成される。
【0003】
また、インバータ部3において、4は電力用半導体素子としてのIGBT、5はIGBT4に逆並列接続された還流ダイオードであり、これらが三相の上下アームに合計6個接続されている。
6はIGBT4の駆動・保護回路であり、一般にIGBT4及び駆動・保護回路6を一体化したモジュールをIPM(インテリジェントパワーモジュール)と呼んでいる。なお、20は上記駆動・保護回路6との間で信号を授受して各IGBT4をオンオフ制御する制御回路である。
ここで、駆動・保護回路6は、IGBT4を駆動するだけでなく、IGBT4を過電流や過熱から保護する保護動作も行っている。
【0004】
図8は、過電流保護及び過熱保護機能を有する駆動・保護回路6の内部構成図である。なお、7はIGBT4の過電流を検出するための電流検出用端子としてのセンスエミッタ端子であり(この場合のIGBT4をセンス機能付きIGBTとも呼ぶ)、このセンスエミッタ端子7はIGBTチップ4C内に形成されている。
【0005】
図8に示す駆動・保護回路6において、8はゲート駆動回路であり、前記制御回路20からの制御信号を受けてIGBT4をオン、オフするためのものである。10はIGBTチップ4Cに内蔵されている温度検出用のダイオードであり、駆動・保護回路6内の電流源11から電流を流し、ダイオード10の電流−温度特性(通常は負特性)を利用して、IGBTチップ4Cの温度が基準電圧13に対応する温度以上か否かをコンパレータ12にて判断する。そして、ダイオード10による検出温度が設定値以下になった場合には、オア回路18を介して図7の制御回路20等にアラーム信号を出力すると共に、ゲート駆動回路8側にも信号を出力してIGBT4を強制的に遮断する。
【0006】
また、15はセンスエミッタ端子7と直列に接続された電流検出用の抵抗であり、この抵抗15の両端電圧が基準電圧16以上になるとIGBT4に過電流が流れていると判断し、コンパレータ17及びオア回路18を介してアラーム出力及びIGBT4の強制遮断を実行する。
なお、アラーム信号が出力された場合には、制御回路20側でも装置の強制停止を行うのが普通である。
【0007】
次に、図9は、上述したIGBT4及び駆動・保護回路6を一体化したIPMの概略断面図であり、主としてIGBTチップ4C及び還流ダイオードチップ5Cの実装構造を示したものである。
図9において、191は銅ベース、192は絶縁材、193,194は銅箔パターン(絶縁材192及び銅箔パターン193,194をまとめて絶縁基板という)であり、IGBTチップ4C及び還流ダイオードチップ5Cは銅箔パターン193,194上にそれぞれ半田付けされている。195,196は半田層を示す。また、197はケースである。
ここでは、駆動・保護回路6の実装構造については図示及び説明を省略してある。
【0008】
一般にIPMが長期にわたって使用されると、半田層195,196と銅箔パターン193,194との熱膨張率の相違によって半田層195,196が熱疲労を起こし、その結果、図10に示すようにクラック198が入り始める
クラック198が入ると、例えばIGBTチップ4Cと絶縁基板との間の熱抵抗が急激に高くなり、IGBTチップ4Cの温度上昇率も急激に高くなる。このため、前述した図8におけるダイオード10、コンパレータ12、オア回路18等による温度検出動作が間に合わず、最終的にIGBTチップ4Cの破壊を招くおそれがあった。また、半田層195,196にクラック198が入った場合、IPMとしてはもはや寿命であり、電力変換装置としては早期にIPMを交換する必要がある。
【0009】
図11は、半田層195の周辺部にクラック198が入った場合にIGBTチップ4Cの内部に流れる電流の模式図を示している。図11において、41はコレクタ電極、42はP層、43はN層、44はP層、45はN層、46は端部のエミッタ電極、47は中央部のエミッタ電極、48はゲート電極である(実際のIGBTチップの構造は更に複雑であるが、便宜上、構造を簡略化している)。
ここでは半田層195の周辺部にクラック198が入っているため、銅箔パターン193からコレクタ電極41に流れる電流は概ね半田層195の中央部を流れる。コレクタ電極41に流入した電流は拡散しようとするが、コレクタ電極41の中央部に比べてその周囲はコレクタ電極41の水平方向の抵抗分41Rによってインピーダンスが高いため、コレクタ電流の大部分は、図に太線で示すようにIGBTチップ4Cの中央部を通ってエミッタ電極47方向に流れることになる。
【0010】
図11のように半田層195にクラック198が発生すると、前述したごとくIGBTチップ4Cの温度が急激に上昇するため温度検出が不可能な場合もある。また、クラック198の位置によってIGBTチップ4Cの各部を流れる電流の大きさも異なるので、図8のようにセンスエミッタ端子7を一カ所にだけ配置して電流を検出する構造では、クラック198を正確に検出できないおそれもある。
【0011】
なお、従来技術として、電力用半導体素子の表裏にそれぞれ設けられた電極の温度を熱電対により検出し、前記半導体素子と各電極とを接合する半田の劣化によるクラック発生を検出するようにした半導体装置の異常検出装置が、特許文献1に記載されている。
【0012】
また、センス機能付きIGBTに複数のカレントセンシング部(センスエミッタ端子)を設け、これらのカレントセンシング部による検出電流に対応する電圧を主電流オフ指令回路及び主電流制限回路にそれぞれ別個に入力することにより、IGBTの過大電流検出レベルと短絡電流検出レベルとをそれぞれ独立に設定可能としてIGBTを大電流による破壊から適切に保護するようにした半導体装置が、特許文献2に記載されている。
【0013】
更に、メイントランジスタ部の周囲に複数のセンストランジスタ部(センスエミッタ端子)を配置してこれらのセンストランジスタ部のエミッタを一括接続し、過渡的な熱等に起因して電流の面内分布が変化した場合でも、全てのセンストランジスタ部を流れる電流の和であるセンス電流が一定であることを利用して高精度に電流検出を行うようにした電流検出機能付トランジスタが、特許文献3に記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2003−172760号公報([0071]〜[0084]、図1〜図3等)
【特許文献2】特開平6−164344号公報([0014]〜[0022]、図1、図2等)
【特許文献3】特開平5−74802号公報([0007]〜[0013]、図1〜図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した特許文献1記載の従来技術では、熱電対により温度を検出しているため、応答が遅く、半田層のクラックを迅速に検出して保護動作を行うのが困難であるという問題がある。
また、特許文献2記載の従来技術では、複数のセンストランジスタ部を用いて異なる保護レベルをそれぞれ設定しようとするものであり、半田層の熱疲労に着目した保護動作については特に開示されていない。
更に、特許文献3記載の従来技術では、チップの四隅等に配置した複数のセンストランジスタ部を流れる電流の合計値と主電流との比が一定であることを利用して電流検出精度を向上させているが、複数のセンストランジスタ部を均一に配置する必要があるため、製造上の制約が多く、コスト高になるという問題があった。
【0016】
そこで本発明の解決課題は、半田層の熱疲労や、必要に応じて過電流状態も迅速に検出可能として半導体素子を確実に保護するようにした電力用半導体素子の異常検出装置を低コストにて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、図11によって説明したように、熱疲労により半田層にクラックが入ると、電力用半導体素子の電極からクラックを介して電流が通流する位置に配置されたセンスエミッタ端子には電流が流れにくくなり、その電流検出値が他のセンスエミッタ端子による電流検出値よりも小さくなる(クラックがない状態では、センスエミッタ端子の位置によらず各センスエミッタ端子による電流検出値は概ね等しくなる)ことに着目したものである。
すなわち、請求項1に記載した発明は、電流検出用端子を備えると共に導電体の表面に素子チップの電極が接合される電力用半導体素子の異常検出装置であって、前記電流検出用端子に流れる電流を検出して前記半導体素子に対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記素子チップに形成された複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段と、これらの差または比率を所定の基準値と比較して前記導電体の熱疲労を検出する手段と、を備えたものである。
【0018】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
前記導電体は、銅箔パターンの表面に前記電極を接合するための半田層であり、この半田層の熱疲労を検出する手段は、熱疲労によるクラックを検出するものである。
【0019】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2において、
複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段は、前記電流検出値を電圧にそれぞれ変換して差または比率を求める手段であることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3の何れか1項において、
前記電流検出用端子を、前記電極に接合する前記導電層の形状に対応させて複数配置したものである。
【0021】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記電流検出用端子による電流検出値が過電流検出レベルを超えたときに前記半導体素子の過電流状態を検出する手段を備えたものである。
【0022】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項による熱疲労検出時、または、請求項5による過電流検出時に、前記半導体素子を構成要素とする電力変換装置を異常時制御アルゴリズムに従って制御するものである。
【0023】
請求項7に記載した発明は、請求項6において、前記異常時制御アルゴリズムは、前記半導体素子を直ちに遮断して前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むものである。
【0024】
請求項8に記載した発明は、請求項6において、前記異常時制御アルゴリズムは、所定時間経過後に、または予め設定された運転パターンの実行後に、前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むものである。
【0025】
請求項9に記載した発明は、請求項6〜8の何れか1項において、
前記異常時制御アルゴリズムは、外部へアラーム信号を出力させる制御動作を含むものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、IGBT等の電力用半導体素子を内蔵したIPM等における熱疲労現象や過電流状態を的確に検出することができ、これらの寿命推定が可能である。特に本発明では、熱電対等により温度を測定するのではなく、複数の電流検出用端子(センスエミッタ端子)による電流検出値の差や比に基づいて半導体素子の過熱状態を推定し、所定の保護動作を行うため、温度検出回路等の動作上の遅れもなく、迅速な異常検出、保護動作が可能になる。
これにより、熱疲労等に起因した半導体素子や電力変換装置の破壊を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態を示すもので、IPMのうち主としてIGBTチップの実装部分を示した平面図(図1(a))及び回路図(図1(b))である。なお、IPMに内蔵された駆動・保護回路の構成については後述する。
【0028】
図1(a)において、101CはIGBTチップ、110はIGBTチップ101Cを銅箔パターン120の表面に接合する半田層であり、銅箔パターン120は前記図9と同様に絶縁材の表面に固着されている。
IGBTチップ101C上面の活性領域のほぼ中央部には、電流検出用端子としての第1のセンスエミッタ端子101xが配置されており、四隅のうちの一角には電流検出用端子としての第2のセンスエミッタ端子101yが配置されている。また、図1(b)はIGBTチップ101Cを電気的に示したIGBT101の回路図であり、Gはゲート電極、Cはコレクタ電極、Eはエミッタ電極である。なお、これらの各電極G,C,Eについては、図1(a)における図示を省略してある。
【0029】
図2は、上記IGBT101の駆動・保護回路の構成図である。
この駆動・保護回路130Aは、前述した図7の制御回路20からの制御信号に基づいてIGBT101を駆動するゲート駆動回路131と、センスエミッタ端子101x,101yにそれぞれ接続された検出用抵抗132x,132yと、これらの検出用抵抗132x,132yの両端電圧が図示の符号で入力される減算器133と、この減算器133の出力が非反転入力端子に入力され、かつ反転入力端子に基準電圧134rが加えられた第1のコンパレータ134と、前記減算器133の出力が反転入力端子に入力され、かつ非反転入力端子に基準電圧135rが加えられた第2のコンパレータ135と、第1,第2のコンパレータ134,135の出力信号が入力されるオア回路136とを備えている。
【0030】
次に、この実施形態の動作を説明する。
図1の半田層110が熱疲労しておらず、クラックが発生していない場合には、前述した図11の説明から明らかなように、IGBTチップ101Cの中央部を通って第1のセンスエミッタ端子101xにより検出される電流検出値と、IGBTチップ101Cの端部を通って第2のセンスエミッタ端子101yにより検出される電流検出値との差は余り生じない。このため、図2のコンパレータ134,135の基準電圧134r,135rを適宜な値に設定しておけば、減算器133の出力電圧は基準電圧134rよりも小さく、かつ基準電圧135rより大きくなるため、コンパレータ134,135及びオア回路136からは出力信号が発生しない。
【0031】
一方、例えば第2のセンスエミッタ端子101yの下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が小さくなり、減算器133の出力電圧が大きくなる。この出力電圧が第1のコンパレータ134の基準電圧134rを超えれば、コンパレータ134及びオア回路136を介して信号が出力される。
従って、この信号を半田層110の熱疲労検出信号として制御回路20に与え、ゲート駆動回路131の動作を即座に停止させたり、ある設定時間経過後または所定の運転パターン実行後に停止させて保護動作を行うことができる。また、オア回路136の出力信号に基づいてアラームを発生させても良い。
【0032】
更に、第1のセンスエミッタ端子101xの下方近傍、すなわちIGBTチップ101Cの中央部の下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が大きくなり、減算器133の出力電圧が負方向に大きくなる。この出力電圧が第2のコンパレータ135の基準電圧135rを下回ることにより、コンパレータ135及びオア回路136を介して信号が出力されるため、前記同様に所定の保護動作を行わせることが可能である。
なお、オア回路136の出力信号を図8と同様にゲート駆動回路131に入力し、ゲート駆動回路131の動作を直接停止させても良い。
【0033】
上記のように、図2の回路構成によれば、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の差が一定値以上になった場合に半田層110の熱疲労検出信号を出力させることができ、所定の保護動作を行うことが可能である。
【0034】
次いで、図3は駆動・保護回路の他の構成図である。なお、図2と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
図3に示す駆動・保護回路130Bは、図2における減算器133の代わりに除算器137を接続すると共に、第2のコンパレータ135の基準電圧135rの極性を図2とは逆にしたものであり、除算器137は第1のセンスエミッタ端子101xの電流による検出用抵抗132xの両端電圧を第2のセンスエミッタ端子101yの電流による検出用抵抗132yの両端電圧によって除算するように構成されている。
【0035】
この実施形態では、半田層110にクラックが発生していない場合には、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値と第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値とがほぼ等しく、除算器137の出力はほぼ1である。このため、第1,第2のコンパレータ134,135の基準電圧134r,135rを適宜な値に設定しておけば、コンパレータ134,135及びオア回路136からは出力信号が発生しない。
【0036】
しかし、例えば第2のセンスエミッタ端子101yの下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が小さくなるので、除算器137の出力電圧が大きくなり、この出力電圧が第1のコンパレータ134の基準電圧134rを超えればコンパレータ134及びオア回路136を介して信号が出力される。
また、IGBTチップ101Cの中央部の下方近傍において半田層110にクラックが発生すると、第1のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも第2のセンスエミッタ端子101yによる電流検出値の方が大きくなるので、除算器137の出力電圧が小さくなり、この出力電圧が第2のコンパレータ135の基準電圧135rを下回るとコンパレータ135及びオア回路136を介して信号が出力される。
従って、オア回路136の出力信号を熱疲労検出信号として利用することにより、前記同様に所定の保護動作を行わせることができる。
【0037】
なお、図1に示した第1実施形態では、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yの下方近傍におけるクラックの発生に対しては有効であるが、例えば図1においてセンスエミッタ端子101yが配置されていない隅部3箇所の下方近傍の半田層110にクラックが発生したような場合には、第1,第2のセンスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値にそれほど差が生じず、上記クラックの発生を検出できないおそれもある。
そこで、本発明の第2実施形態では、これらの箇所におけるクラックの発生も検出できるようにした。
【0038】
すなわち、図4は、第2実施形態においてIGBTチップの実装部分を示した平面図(図4(a))及び回路図(図4(b))である。この実施形態では、図4(a)に示すようにIGBTチップ102Cの中央部にセンスエミッタ端子101xが配置されると共に、四隅にセンスエミッタ端子101zがそれぞれ配置されている。なお、図4(b)はIGBTチップ102Cを電気的に示したIGBT102の回路図である。
【0039】
本実施形態において、回路構成は図示しないが、例えば四隅のセンスエミッタ端子101zによる電流検出値(図2,図3における検出用抵抗の両端電圧値)同士を比較し、その中の代表値(例えば最小の電流検出値)と中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値とを図2の減算器133や図3の除算器137に入力し、これらの出力電圧をコンパレータ134,135により基準電圧134r,135rとそれぞれ比較すれば、第1実施形態と同様に熱疲労検出信号を得ることができる。
【0040】
このようにすれば、仮に四隅のセンスエミッタ端子101zのうち何れか1個の下方近傍の半田層110にクラックが発生していれば、そのセンスエミッタ端子101zによる電流検出値は中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値よりも小さくなるので、コンパレータ134,135及びオア回路136を介してクラックの発生を検出することができる。
なお、半田層110でのクラックの発生により半田層110の抵抗値が大きくなり、半田層110やIGBT102の温度上昇によってセンスエミッタ端子101x,101zによる電流検出値が全体的に変化することが予想されるが、四隅のセンスエミッタ端子101zによる電流検出値の代表値と中央部のセンスエミッタ端子101xによる電流検出値との大小関係は相対的に変わらないため、特に問題にはならない。
図示は省略するが、検出精度を上げるために、図4(a)のセンスエミッタ端子101zの相互間に更に別のセンスエミッタ端子を追加しても良い。
【0041】
次に、図5は本発明の第3実施形態に係る駆動・保護回路の構成図であり、前述した第1実施形態におけるIGBT101の過電流検出・保護を行うためのものである。
図5に示す駆動・保護回路130Cでは、検出用抵抗132x、132yの両端電圧がセレクタ138に入力され、その出力電圧が過電流検出用のコンパレータ139の非反転入力端子に入力されていると共に、コンパレータ139の出力信号がオア回路140の一方の入力端子に加えられている。
ここで、セレクタ138は入力電圧のうち最大値を選択して出力する機能を持っている。また、139rはコンパレータ139の反転入力端子に加えられている基準電圧であり、過電流検出レベルに相当する。
【0042】
なお、オア回路140の他方の入力端子に、例えば図2や図3におけるオア回路136の出力信号を入力することにより、オア回路140の出力信号から過電流検出信号と熱疲労検出信号との双方を得ることが可能である。この場合、センスエミッタ端子101x,101yは、過電流検出及び熱疲労検出を行う電流検出用端子として共用することができると共に、電流検出用抵抗132x,132yも共用可能である。
【0043】
本実施形態では、センスエミッタ端子101x,101yによる電流検出値の中で最大値をセレクタ138により選択し、その電流検出値に相当する電圧をコンパレータ139にて過電流検出レベルの基準電圧139rと比較することで、IGBT101の過電流状態を検出することができる。そして、過電流検出時には、熱疲労検出時と同様に制御回路20によりゲート駆動回路131の動作を停止させたり、アラーム信号等を出力させればよい。
【0044】
通常、センスエミッタ端子の位置によって電流検出値は異なるものであり、1カ所だけの電流検出ではIGBTを実際に流れている電流を正確に検出できず、過電流検出に支障をきたすおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、図8のように単一のセンスエミッタ端子により1カ所の電流を検出する方法に比べて、確実かつ安全サイドに過電流検出及び保護動作を行うことが可能となる。
【0045】
次いで、図6は電力変換装置の制御回路20における制御アルゴリズムを示している。
電力変換装置の運転指令201に対して、前述した各実施形態による熱疲労検出信号205がない場合は、論理ゲート202を介して通常時制御アルゴリズム203を有効とし、このアルゴリズム203をオア回路204を介して実行させる。
一方、熱疲労検出信号205が発生した場合には、論理ゲート206を介して異常時制御アルゴリズム207を有効とし、このアルゴリズム207をオア回路204を介して実行させる。
【0046】
ここで、通常時制御アルゴリズム203は、電力変換装置から所定の大きさ及び周波数の電圧を出力させるために各IGBTをオンオフする制御動作に必要なアルゴリズムであり、異常時制御アルゴリズムは、各IGBTの全ゲートオフ動作により電力変換装置の運転を直ちに停止させるようなアルゴリズムを意味する。
但し、場合によっては、半田層110にクラック等が発生していても、IGBTチップの温度が絶対最大定格温度以下であれば即破壊に至るおそれは少ないため、ある設定された所定の運転シーケンスの実行後に電力変換装置の運転を停止させても良い。
また、図6では熱疲労検出信号205を利用したアルゴリズムとして説明したが、熱疲労検出信号205の代わりに、図5のオア回路140の出力である過電流検出信号を用いても良い。
【0047】
なお、上記各実施形態では、熱疲労の検出や過電流の検出をIPM内の駆動・保護回路130A〜130Cにより行うものとしているが、電力変換装置の制御回路20内で行っても良いのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態におけるIGBTチップの実装部分を示した平面図(図1(a))及び回路図(図1(b))である。
【図2】第1実施形態における駆動・保護回路の構成図である。
【図3】第1実施形態における駆動・保護回路の他の構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるIGBTチップの実装部分を示した平面図(図4(a))及び回路図(図4(b))である。
【図5】本発明の第3実施形態における駆動・保護回路の構成図である。
【図6】電力変換装置の制御回路における制御アルゴリズムを示す図である。
【図7】インバータの主回路構成図である。
【図8】図7における駆動・保護回路の内部構成図である。
【図9】IPMの概略断面図である。
【図10】半田層にクラックが発生した場合のIPMの概略断面図である。
【図11】半田層にクラックが発生した場合におけるIGBTチップ内の電流経路を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:直流電源
2:負荷
3:インバータ部
20:制御回路
101,102:IGBT
101C,102C:IGBTチップ
101x,101y,101z:センスエミッタ端子
110:半田層
120:銅箔パターン
130A,130B,130C:駆動・保護回路
131:ゲート駆動回路
132a,132b:検出用抵抗
133:減算器
134,135,139:コンパレータ
134r,135r,139r:基準電圧
136,140:オア回路
137:除算器
138:セレクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出用端子を備えると共に導電体の表面に素子チップの電極が接合される電力用半導体素子の異常検出装置であって、前記電流検出用端子に流れる電流を検出して前記半導体素子に対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記素子チップに形成された複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段と、これらの差または比率を所定の基準値と比較して前記導電体の熱疲労を検出する手段と、
を備えたことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記導電体は、銅箔パターンの表面に前記電極を接合するための半田層であり、
この半田層の熱疲労を検出する手段は、熱疲労によるクラックを検出することを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段は、前記電流検出値を電圧にそれぞれ変換して差または比率を求める手段であることを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記電流検出用端子を、前記電極に接合する前記導電層の形状に対応させて複数配置したことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記電流検出用端子による電流検出値が過電流検出レベルを超えたときに前記半導体素子の過電流状態を検出する手段を備えたことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項による熱疲労検出時、または、請求項5による過電流検出時に、前記半導体素子を構成要素とする電力変換装置を異常時制御アルゴリズムに従って制御することを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、前記半導体素子を直ちに遮断して前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項8】
請求項6に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、所定時間経過後に、または予め設定された運転パターンの実行後に、前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、外部へアラーム信号を出力させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項1】
電流検出用端子を備えると共に導電体の表面に素子チップの電極が接合される電力用半導体素子の異常検出装置であって、前記電流検出用端子に流れる電流を検出して前記半導体素子に対する保護動作を行う電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記素子チップに形成された複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段と、これらの差または比率を所定の基準値と比較して前記導電体の熱疲労を検出する手段と、
を備えたことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記導電体は、銅箔パターンの表面に前記電極を接合するための半田層であり、
この半田層の熱疲労を検出する手段は、熱疲労によるクラックを検出することを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
複数の電流検出用端子による電流検出値の差または比率を求める手段は、前記電流検出値を電圧にそれぞれ変換して差または比率を求める手段であることを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記電流検出用端子を、前記電極に接合する前記導電層の形状に対応させて複数配置したことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記電流検出用端子による電流検出値が過電流検出レベルを超えたときに前記半導体素子の過電流状態を検出する手段を備えたことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項による熱疲労検出時、または、請求項5による過電流検出時に、前記半導体素子を構成要素とする電力変換装置を異常時制御アルゴリズムに従って制御することを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、前記半導体素子を直ちに遮断して前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項8】
請求項6に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、所定時間経過後に、または予め設定された運転パターンの実行後に、前記電力変換装置の運転を停止させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載した電力用半導体素子の異常検出装置において、
前記異常時制御アルゴリズムは、外部へアラーム信号を出力させる制御動作を含むことを特徴とする電力用半導体素子の異常検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−40817(P2007−40817A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224942(P2005−224942)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
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