説明

電力線通信システム

【課題】データ信号及び電力を複数の通信機器に供給する際の構成を簡素化することができる電力線通信システムを提供する。
【解決手段】電力線通信装置2と集線装置3とが配線ダクト4に装着され、通信ケーブル1b及び電源ケーブル1cで電力線通信装置2及び通信機器5と集線装置3とが接続されると、集線装置3が、電力線通信装置2から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器5に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線ダクトに装着され、データ信号及び電力を通信機器に供給する電力線通信装置を有する電力線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給電用の導体を内側に備えた配線ダクトにコンセントプラグを取り付けて照明器具などの電気機器に電力を供給する配線ダクトシステムが知られている(特許文献1参照)。また、電力線を通信回線として利用するPLC(Power Line Communication)を応用し、配線ダクトに装着され、パーソナルコンピュータやネットワークカメラなどの通信機器にデータ信号及び電力を供給する電力線通信装置をもちいた電力線通信システムが考案されている。
【特許文献1】特開昭53−84195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の電力線通信装置には、通常、通信差込口及び電源差込口が一対しか設けられていない。このため、データ信号及び電力を複数の通信機器に供給する際には、通信機器と同じ台数分の電力線通信装置をもちいる必要があり、電力線通信システムのコストが高くなってしまう。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、データ信号及び電力を複数の通信機器に供給する際の構成を簡素化することができる電力線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電力線通信装置は、上記の課題を解決するために、給電用の導体を内側に備えた配線ダクトを有する電力線通信システムにおいて、配線ダクトを介して通信信号を送受信する電力線通信手段と、通信機器との間でデータ信号を送受信する端末通信手段と、電力線通信手段により受信される所定形式の通信信号をデータ信号に復調するとともに、端末通信手段により受信されるデータ信号を所定形式の通信信号に変調する変復調手段と、配線ダクトの電力を通信機器に出力する電源手段とを備えた、配線ダクトに装着された電力線通信装置と、電力線通信装置と通信機器との間に設けられ、電力線通信装置から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器に供給する、配線ダクトに装着された集線装置とを有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る電力線通信装置は、上記に加え、集線装置が、通信機器を取り付ける取付手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力線通信装置と通信機器との間に設けられ、配線ダクトに装着された集線装置が、電力線通信装置から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器に供給するので、通信機器と同じ台数分の電力線通信装置をもちいる必要が無くなり、データ信号及び電力を複数の通信機器に供給する際の構成を簡素化することができ、ひいては、電力線通信システムのコストを抑えることができる。
【0008】
また、本発明によれば、上記集線装置が、通信機器を取り付ける取付手段を有するので、通信機器と集線装置とを同時に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる電力線通信システムについて図1〜10を参照しながら説明する。
【0010】
[電力線通信システムの構成]
図1は、本発明を適用した電力線通信システム1の主要構成を模式的に示す構成図である。
【0011】
電力線通信システム1は、電力線1aで分電盤6と導通可能に接続された配線ダクト4と、この配線ダクト4に装着された電力線通信装置2及び集線装置3とで構成されている。
【0012】
配線ダクト4は、図2に示す2極又は多極の導体4aを内側に備えたものであって、電力線通信装置2に分電盤6からの電力を供給する。具体的には、配線ダクト4は、分電盤6からの電圧100Vの交流電力を供給する。なお、この電力には、通信回線として電力線を利用するPLC(Power Line Communication)を応用した通信信号が重畳されている。
【0013】
電力線通信装置2は、配線ダクト4と導通可能に接続されるとともに、通信ケーブル1b及び電源ケーブル1cで集線装置3と導通可能に接続され、通信信号が重畳された配線ダクト4の電力をもとにデータ信号及び電力を集線装置3に供給する。
【0014】
集線装置3は、パーソナルコンピュータやネットワークカメラなどの通信機器5及び電力線通信装置2と通信ケーブル1b及び電源ケーブル1cで導通可能に接続され、電力線通信装置2から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器5に供給する。
【0015】
以降、上記電力線通信システム1の電力線通信装置2及び集線装置3について詳しく説明する。
【0016】
電力線通信装置2は、図3に示すように、箱形状のハウジング2aと、ハウジング2aの上部に設けられた接続支持部2bと、ハウジング2aの底面に設けられた電源差込口2cと、ハウジング2aの側面に設けられた通信差込口2dとで構成されている。
【0017】
接続支持部2bは、配線ダクト4に脱着自在に装着され、図4に示す、配線ダクト4の導体4aと導通可能に接続される。
【0018】
電源差込口2cは、集線装置3に接続される電源ケーブル1cが差し込まれるものであって、集線装置3と導通可能に接続される。具体的には、電源差込口2cは、JIS(JIS C 8303 2)などに規定されたものである。
【0019】
通信差込口2dは、集線装置3に接続される通信ケーブル1bが差し込まれるものであって、集線装置3と導通可能に接続される。具体的には、通信差込口2dは、ツイストペアケーブルのコネクタ(RJ-45)などに対応するものである。
【0020】
図4は、電力線通信装置2の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0021】
電力線通信装置2は、電力線通信部21と、端末通信部23と、電力線通信部21及び端末通信部23と接続された変復調部22と、電力線通信部21、変復調部22、及び端末通信部23と接続された制御部24とで構成されている。
【0022】
電力線通信部21は、接続支持部2bと接続され、配線ダクト4を介して通信信号を送受信する。具体的には、電力線通信部21は、PLCを実現する所定の通信方式に準拠した処理をすることで通信信号を送受信する。なお、接続支持部2bは、電源差込口2cとも接続されており、配線ダクト4の電力は、電源差込口2cに差し込まれる電源ケーブル1cを介して集線装置3に供給される。
【0023】
端末通信部23は、通信差込口2dと接続され、この通信差込口2dに差し込まれる通信ケーブル1bにつながる集線装置3を介して一又は複数の通信機器5との間でデータ信号を送受信する。具体的には、端末通信部23は、100BASE−TXのイーサネット(Ethernet:登録商標)などの規格に準拠した処理をすることでデータ信号を送受信する。
【0024】
変復調部22は、電力線通信部21により受信される所定形式の通信信号をデータ信号に復調し、端末通信部23により受信されるデータ信号を所定形式の通信信号に変調する。具体的には、変復調部22は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式の通信信号をデータ信号に復調し、OFDM方式の通信信号にデータ信号を変調する。
【0025】
制御部24は、電力線通信部21と変復調部22と端末通信部23とを制御することで配線ダクト4を介したデータ通信を制御する。
【0026】
つぎに、電力線通信システム1の集線装置3について詳しく説明する。
【0027】
集線装置3は、図5に示すように、箱形状の支持体3aと、支持体3aの上部に設けられた接続支持部3bと、支持体3aに嵌め込まれた収納部3cとで構成されている。
【0028】
支持体3aは、図6に示すように、開口部3dを側方に有するとともに、ネジ孔3g1を底部に有する。
【0029】
接続支持部3bは、電力線通信装置2と同様に配線ダクト4に脱着自在に装着される。
【0030】
収納部3cは、図6に示すように、上方に開口する箱形状のものであって、ネジ孔3g2を底面に有し、支持体3aの開口部3d内に摺動自在に嵌め込まれ、支持体3aにネジ3fで固定される。また、収納部3cは、支持体3aに収容された際に露呈するU字状の切欠部3eを正面に有する。
【0031】
図7は、集線装置3の内部構成を模式的に示す構成図である。
【0032】
集線装置3は、電源分岐接続器31と、通信分岐接続器32とで構成されている。
【0033】
電源分岐接続器31は、電力線通信装置2及び通信機器5に接続される電源ケーブル1cが差し込まれるものであって、電力線通信装置2及び通信機器5と導通可能に接続される複数の電源差込口31aを有し、電力線通信装置2から供給される電力を分岐することで一又は複数の通信機器5にこの電力を供給する。具体的には、電源分岐接続器31は、コンセントから離れた場所の、複数の電気器具に電源を供給する電源タップ(テーブルタップ)などに代表されるものである。
【0034】
通信分岐接続器32は、電力線通信装置2及び通信機器5に接続される通信ケーブル1bが差し込まれるものであって、電力線通信装置2及び通信機器5と導通可能に接続される複数の通信差込口32aを有し、電力線通信装置2から供給されるデータ信号を分岐することで一又は複数の通信機器5にこのデータ信号を供給する。具体的には、通信分岐接続器32は、100BASE−TXのイーサネットで利用されるハブ(Hub)などに代表されるものである。
【0035】
以上、集線装置3について説明したが、集線装置3は、上記形状のほかに、図8〜10に示す形状のものでもよく、また、図9及び10に示すように、通信機器5が取り付けられる取付部3mを支持体3aの底部に有してもよい。
【0036】
図8に示す集線装置3は、下方に向かってL字状に両端が折り曲げられた蓋形状の支持体3aと、支持体3aの上部に設けられた接続支持部3bと、支持体3aに嵌め込まれる収納部3cとで構成されている。
【0037】
支持体3aは、抜止突起3h及びネジ孔3g1を折り曲げられた両側端に有する。
【0038】
接続支持部3bは、電力線通信装置2と同様に配線ダクト4に脱着自在に装着される。
【0039】
収納部3cは、上方に開口する箱形状のものであって、抜止溝3i及びネジ孔3g2を両側面上方に有し、支持体3aの抜止突起3hと脱着自在に嵌合され、支持体3aに嵌め込まれるとともに、支持体3aにネジ3fで固定される。また、収納部3cは、支持体3aに嵌め込まれた際に露呈するU字状の切欠部3eを正面に有する。
【0040】
また、図9に示す集線装置3は、上下に逆L字状に成形された支持体3aと、支持体3aの上部に設けられた接続支持部3bと、支持体3aに嵌め込まれる収納部3cとで構成されている。
【0041】
支持体3aは、ガイド支持部3jを上部内側に有するとともに、通信機器5が取り付けられる取付部3mを底部に有する。
【0042】
接続支持部3bは、電力線通信装置2と同様に配線ダクト4に脱着自在に装着される。
【0043】
収納部3cは、上方に開口する箱形状のものであって、両側面上縁に摺動溝3kを有し、支持体3aのガイド支持部3jと摺動自在に滑合され、支持体3aに嵌め込まれる。また、収納部3cは、支持体3aに嵌め込まれた際に露呈するU字状の切欠部3eを正面に有する。
【0044】
さらに、図10に示す集線装置3は、上下に逆L字状に成形された支持体3aと、支持体3aの上部に設けられた接続支持部3bと、支持体3aに嵌め込まれる収納部3cとで構成されている。
【0045】
支持体3aは、通信機器5が取り付けられる取付部3mを底部に有するとともに、蝶番3nを底部端縁に有し、さらに、ネジ孔3g1を上部先端に有する。
【0046】
接続支持部3bは、電力線通信装置2と同様に配線ダクト4に脱着自在に装着される。
【0047】
収納部3cは、上方に開口する箱形状のものであって、蝶番3nを底面端縁に有するとともに、正面上方にネジ孔3g2を有し、支持体3aの蝶番3nと回動自在に接合され、支持体3aに嵌め込まれ、支持体3aにネジ3fで固定される。また、収納部3cは、支持体3aに嵌め込まれた際に露呈するU字状の切欠部3eを正面に有する。
【0048】
[電力線通信システムの動作]
以上の構成によって、本発明を適用した電力線通信システム1では、電力線通信装置2と集線装置3とが配線ダクト4に装着され、通信ケーブル1b及び電源ケーブル1cで電力線通信装置2及び通信機器5と集線装置3とが接続されると、集線装置3が、電力線通信装置2から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器5に供給する。
【0049】
[電力線通信システムの効果]
本発明の一実施形態によれば、電力線通信装置2と集線装置3とが配線ダクト4に装着され、通信ケーブル1b及び電源ケーブル1cで電力線通信装置2及び通信機器5と集線装置3とが接続されると、集線装置3が、電力線通信装置2から供給されるデータ信号及び電力を分岐することでこのデータ信号及び電力を一又は複数の通信機器5に供給するので、通信機器5と同じ台数分の電力線通信装置2をもちいる必要が無くなり、データ信号及び電力を複数の通信機器5に供給する際の構成を簡素化することができ、ひいては、電力線通信システム1のコストを抑えることができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態によれば、集線装置3が、通信機器5を取り付けられる取付部3mを支持体3aの底部に有するので、通信機器5と集線装置3とを同時に設置することができる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した一実施形態について説明したが、この実施形態による開示の一部をなす論述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者などによってなされる、ほかの実施形態、実施例、及び運用技術などは、本発明の範囲にすべて含まれることをつけ加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用した電力線通信システムの主要構成を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明を適用した電力線通信システムを構成する、配線ダクトの内部構造を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図3】本発明を適用した電力線通信システムを構成する電力線通信装置の外観を示す斜視図である。
【図4】本発明を適用した電力線通信システムを構成する電力線通信装置の、主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の構造(収容型)を示す構造図である。
【図7】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の内部構成を模式的に示す構成図である。
【図8】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の構造(嵌合型)を示す構造図である。
【図9】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の構造(スライド型)を示す構造図である。
【図10】本発明を適用した電力線通信システムを構成する集線装置の構造(蝶番型)を示す構造図である。
【符号の説明】
【0053】
1 電力線通信システム
1a 電力線
1b 通信ケーブル
1c 電源ケーブル
2 電力線通信装置
2a ハウジング
2b 接続支持部
2c 電源差込口
2d 通信差込口
21 電力線通信部
22 変復調部
23 端末通信部
24 制御部
3 集線装置
3a 支持体
3b 接続支持部
3c 収納部
3d 開口部
3e 切欠部
3f ネジ
3g1 ネジ孔
3g2 ネジ孔
3h 抜止突起
3i 抜止溝
3j ガイド支持部
3k 摺動溝
3m 取付部
3n 蝶番
31 電源分岐接続器
31a 電源差込口
32 通信分岐接続器
32a 通信差込口
4 配線ダクト
4a 導体
5 通信機器
6 分電盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電用の導体を内側に備えた配線ダクトを有する電力線通信システムにおいて、
前記配線ダクトを介して通信信号を送受信する電力線通信手段と、通信機器との間でデータ信号を送受信する端末通信手段と、前記電力線通信手段により受信される所定形式の通信信号をデータ信号に復調するとともに、前記端末通信手段により受信されるデータ信号を所定形式の通信信号に変調する変復調手段と、前記配線ダクトの電力を前記通信機器に出力する電源手段とを備えた、前記配線ダクトに装着された電力線通信装置と、
前記電力線通信装置と前記通信機器との間に設けられ、前記電力線通信装置から供給されるデータ信号及び電力を分岐することで該データ信号及び電力を一又は複数の通信機器に供給する、前記配線ダクトに装着された集線装置とを有することを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
前記集線装置が、前記通信機器を取り付ける取付手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−95191(P2009−95191A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265634(P2007−265634)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】