説明

電動作業機

【課題】複数のインバータの定格電圧がたとえ電力系統又は負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、電力系統又は負荷に対して必要な電圧を出力する回路構成を実現でき、これにより、蓄電池と電力系統又は負荷との間で電力の授受を行うことが可能な電動作業機を提供する。
【解決手段】電動作業機100aは、蓄電池BTと電力系統PW又は負荷との間で電力の授受を行う場合には、開閉手段SW1〜SW3により第1から第3インバータINV1〜INV3の直流側に対して蓄電池BTの正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、切替手段RY1〜RY3により第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側を電力系統PW又は負荷を介して直列接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池から直流電圧が供給されたインバータによりモータを駆動する電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の流れを供給側及び需要側の両方から制御して電力供給の最適化を実現するスマートグリッド(次世代送電網)技術の開発が進められている。かかる技術において、「V2G(Vehicle to Grid)」や「V2H(Vehicle to Home)」といった概念が注目されるようになってきている。
【0003】
「V2G」は、電気自動車等の電気車両に搭載された蓄電池と電力系統又は負荷との間で電力の授受(融通)を行う。また、「V2H」は、電気自動車等の電気車両に搭載された蓄電池の電力を宅内のバックアップ用として利用する。
【0004】
例えば、蓄電池と負荷とを接続する場合には、蓄電池から負荷へ電力を供給し、蓄電池と電力系統とを接続する場合には、蓄電池と電力系統との間で系統連系を行う。何れにしても、電気車両を移動手段として使わない時に、電気車両に搭載された大容量(例えば数kWh〜十数kWh)の蓄電池を電力源として利用する。
【0005】
ところで、蓄電池で駆動する芝刈り機やショベルカー等の電動作業機は、通常、蓄電池から直流電圧が供給されたインバータによりモータを駆動する構成とされている。
【0006】
このような電動作業機において、当該電動作業機に設けられたインバータを用いて、蓄電池と電力系統又は負荷との間で電力の授受(融通)を行うことが考えられるが、この場合、電動作業機に設けられたインバータの直流側の定格電圧(耐圧)は、一般的に、電力系統又は負荷に必要な交流電圧(例えばAC100V〜AC240Vのピーク電圧約141V〜約340V[=√2×(正弦波交流電圧の実効値)])よりも小さい電圧(例えばDC48やDC70Vといった140V未満の電圧)とされているために、単一のインバータでは、電力系統又は負荷に対して必要な電圧を出力することができない。
【0007】
この点に関し、インバータの直流側の定格電圧が電力系統又は負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、複数のインバータの交流側を直列接続することで、電力系統又は負荷に対して必要な電圧を出力することができる構成が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、複数のインバータの交流側を直列接続し、複数のインバータの中から選択された所定の組み合わせによる各発生電圧の総和により出力電圧を階調制御して負荷に電力供給する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−80414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、蓄電池で駆動する電動作業機においては、複数のモータが設けられていることが多い。例えば、従来の電動作業機では、車輪駆動用として2つのモータと、作業用として2つのモータ(具体的には、芝刈り機の場合、二つの芝刈り羽根を独立して回転駆動させるモータ)との合計4つのモータが設けられることがある。そして、複数のモータが設けられた電動作業機では、それらのモータをそれぞれ駆動するために、共通の蓄電池から直流電圧が供給される複数のインバータが設けられている。
【0011】
そこで、本発明は、共通の蓄電池から複数のインバータに直流電圧が供給されて複数のモータをそれぞれ駆動する電動作業機であって、前記複数のインバータの直流側の定格電圧がたとえ電力系統又は負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、電力系統又は負荷に対して必要な電圧を出力する回路構成を実現でき、これにより、前記蓄電池と前記電力系統又は前記負荷との間で電力の授受を行うことが可能な電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために、次の第1態様及び第2態様の電動作業機を提供する。
【0013】
(1)第1態様の電動作業機
複数のモータと、共通の蓄電池から直流電圧が供給されて前記複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータとを備えた電動作業機であって、前記複数のインバータのうち、第1のインバータ以外の第2のインバータの直流側に対して、前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断する開閉手段と、前記複数のインバータの交流側に対して、前記複数のモータにそれぞれ接続される配線と前記複数のインバータの交流側を電力系統又は負荷を介して直列接続させるための配線とを切り替える切替手段と、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する第1接続制御手段と、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側に対して前記複数のモータをそれぞれ接続する第2接続制御手段とを備えることを特徴とする電動作業機。
【0014】
本発明に係る第1態様の電動作業機によれば、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側に対して前記複数のモータをそれぞれ接続することで、前記蓄電池により前記複数のモータを駆動することができる。一方、前記蓄電池と電力系統又は負荷との間で電力の授受を行う場合には、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する。こうすることで、前記複数のインバータ個々の直流側の定格電圧がたとえ前記電力系統又は前記負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、前記電力系統又は前記負荷に対して必要な電圧を出力する回路構成を実現させることができる。これにより、前記蓄電池と前記電力系統又は前記負荷との間で電力の授受を行うことが可能となる。
【0015】
(2)第2態様の電動作業機
複数のモータと、共通の蓄電池から直流電圧が供給されて前記複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータとを備えた電動作業機であって、前記複数のインバータのうち、第1のインバータ以外の第2のインバータの直流側に対して、前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断する開閉手段と、終端を有する界磁巻線の前記終端に接続された出力端子を備え、かつ、前記複数のインバータの交流側にそれぞれ接続された前記複数のモータの前記出力端子に対して、前記複数のモータの前記界磁巻線の前記終端側を短絡させるための配線と前記複数のモータの前記界磁巻線を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続させるための配線とを切替える切替手段と、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のモータの前記界磁巻線を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する第1接続制御手段と、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記出力端子に対して前記複数のモータの前記界磁巻線を短絡する第2接続制御手段とを備えることを特徴とする電動作業機。
【0016】
本発明に係る第2態様の電動作業機によれば、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記出力端子に対して前記複数のモータの前記界磁巻線の前記終端側を短絡することで、前記蓄電池により前記複数のモータを駆動することができる。一方、前記蓄電池と電力系統又は負荷との間で電力の授受を行う場合には、前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のモータの前記界磁巻線を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する。こうすることで、前記複数のインバータ個々の直流側の定格電圧がたとえ前記電力系統又は前記負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、前記電力系統又は前記負荷に対して必要な電圧を出力する回路構成を実現させることができる。これにより、前記蓄電池と前記電力系統又は前記負荷との間で電力の授受を行うことが可能となる。
【0017】
本発明に係る第1及び第2態様の電動作業機において、前記第2のインバータの直流側の電圧値の総和が交流側電圧の最大値から前記蓄電池の電圧値を差し引いた電圧値になるように前記第2のインバータを制御する態様を例示できる。
【0018】
この特定事項では、前記複数のインバータ個々の直流側の定格電圧が前記電力系統又は前記負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、前記第2のインバータの直流側の電圧値の総和が交流側電圧の最大値から前記蓄電池の電圧値を差し引いた電圧値になるように前記第2のインバータを制御することで、前記電力系統又は前記負荷に対して必要な電圧を確実に出力することが可能となる。
【0019】
本発明に係る第1及び第2態様の電動作業機において、前記第1接続制御手段を実施するときに、前記複数のインバータのうち、一のインバータにおけるスイッチング素子のスイッチングパターンを他のインバータにおけるスイッチング素子のスイッチングパターンと入れ替える態様を例示できる。
【0020】
この特定事項では、前記複数のインバータの間でスイッチング素子の寿命の片寄りを抑制でき、ひいては、前記複数のインバータのそれぞれの寿命を延ばすことが可能となる。
【0021】
本発明に係る第1及び第2態様の電動作業機において、前記複数のインバータのうち、最大の定格電圧のインバータが前記第1のインバータとされている態様を例示できる。
【0022】
この特定事項では、前記蓄電池と前記電力系統又は前記負荷との間で電力の授受を行うときに前記複数のインバータのうち、最大の定格電圧のインバータを効率的に作動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る第1態様及び第2態様の電動作業機によると、共通の蓄電池から複数のインバータに直流電圧が供給されて複数のモータをそれぞれ駆動する電動作業機であって、前記複数のインバータの直流側の定格電圧がたとえ電力系統又は負荷に必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、前記電力系統又は前記負荷に対して必要な電圧を出力する回路構成を実現でき、これにより、前記蓄電池と前記電力系統又は前記負荷との間で電力の授受を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動作業機に設けられた電気駆動装置の概略構成を単線図で示す基本回路図である。
【図2】図1に示す基本回路図におけるインバータ部分の詳細を示す回路図である。
【図3】図1に示す基本回路図におけるインバータの交流側部分の詳細を示す回路図である。
【図4】第1から第nインバータの一例の概略構成を示す回路図である。
【図5】蓄電池により第1〜第nモータを駆動する場合と、蓄電池と電力系統との間で電力の授受を行う場合とでの第2及び第3インバータの第2及び第3スイッチにおけるスイッチ部並びに第1から第3切替リレーにおけるスイッチ部のオン状態又はオフ状態を示す表である。
【図6】第1実施形態の電気駆動装置において蓄電池と電力系統との間で電力の授受を行う場合に構成される電力授受用回路の回路図である。
【図7】図6に示す電力授受用回路によって電力系統に出力される第1から第3電圧を交流電圧の波形と共に示すグラフであって、(a)は、パルス幅変調(PWM)を行わない波形を示す図であり、(b)は、パルス幅変調(PWM)を行った波形を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る電動作業機に設けられた電気駆動装置の概略構成を単線図で示す基本回路図である。
【図9】図8に示す基本回路図におけるインバータ部分の詳細を中心に示す回路図である。
【図10】図8に示す基本回路図におけるインバータの交流側部分の詳細を中心に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動作業機100aに設けられた電気駆動装置10aの概略構成を単線図で示す基本回路図である。図2は、図1に示す基本回路図におけるインバータ部分の詳細を中心に示す回路図である。また、図3は、図1に示す基本回路図におけるインバータの交流側部分の詳細を中心に示す回路図である。
【0027】
図1から図3に示す電気駆動装置10aは、蓄電池BTと、第1から第nモータM1〜Mn(nは2以上の整数)と、第1から第nインバータINV1〜INVnと、第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnとを備えている。
【0028】
第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnは、それぞれ、一対のスイッチ部(S11,S12)〜(Sn1,Sn2)で構成されている。本第1実施形態では、第1から第nインバータINV1〜INVnの交流側が3相構成とされており、第1から第nモータM1〜Mnは、3相交流モータとされている。但し、それに限定されるものではなく、第1から第nインバータINV1〜INVnの交流側が単相構成とされ、第1から第nモータM1〜Mnが単相交流モータとされていてもよい。
【0029】
第1から第nインバータINV1〜INVnは、それぞれ、直流側の接続端子Q11〜Qn1(図2参照)に対して蓄電池BTの一方側の電極(例えば正電極)が第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnにおける一方のスイッチ部S11〜Sn1を介して接続されている。詳しくは、第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnにおいて、一方のスイッチ部S11〜Sn1の一端子QA11〜QAn1が第1から第nインバータINV1〜INVnの直流側の接続端子Q11〜Qn1に接続され、かつ、一方のスイッチ部S11〜Sn1の他端子QB11〜QBn1が蓄電池BTの一方側の電極(例えば正電極)に接続されている。
【0030】
また、第1から第nインバータINV1〜INVnは、それぞれ、直流側の接続端子Q12〜Qn2に対して蓄電池BTの他方側の電極(例えば負電極)が第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnにおける他方のスイッチ部S12〜Sn2を介して接続されている。詳しくは、第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnにおいて、他方のスイッチ部S12〜Sn2の一端子QA12〜QAn2が第1から第nインバータINV1〜INVnの直流側の接続端子Q12〜Qn2に接続され、かつ、他方のスイッチ部S12〜Sn2の他端子QB12〜QBn2が蓄電池BTの他方側の電極(例えば負電極)に接続されている。
【0031】
ここで、図1及び図2に示す第1から第nインバータINV1〜INVnのそれぞれに対して本発明の構成が適用されてもよいが、本第1実施形態では、第1から第nインバータINV1〜INVnのうちの第1から第3インバータINV1〜INV3に適用する構成とされている。
【0032】
従って、本第1実施形態では、第1から第n開閉スイッチSW1〜SWnのうち、第1インバータINV1が本発明の第1のインバータを構成し、第2及び第3インバータINV2,INV3が本発明の第2のインバータを構成している。そして、第1から第3インバータINV1〜INV3に対応する第1から第3開閉スイッチSW1〜SW3が本発明の開閉手段を構成している。よって、電気駆動装置10aの基本回路において、本発明の第2のインバータを構成するスイッチ以外のスイッチ(ここでは第4から第n開閉スイッチSW4〜SWn)(図1及び図2の想像線参照)に代えて、本発明の第2のインバータを構成するインバータ以外のインバータ(ここでは第4から第nインバータINV4〜INVn)の直流側を蓄電池BTに直接的に接続する構成とされている。勿論、第2から第nインバータINV2〜INVnの全てが本発明の第2のインバータを構成し、それに対応する第2から第n開閉スイッチSW2〜SWnの全てが、本発明の開閉手段を構成するようになっていてもよい。
【0033】
なお、本第1実施形態では、第1インバータINV1については、後述するように、蓄電池BTにより第1から第nモータM1〜Mnを駆動する場合、又は、蓄電池BTと電力系統又は負荷(ここでは電力系統PW)との間で電力の授受を行う場合に関わらず、常時接続状態となるため、電気駆動装置10aの基本回路図において、第1インバータINV1に対応する第1開閉スイッチSW1(スイッチ部S11,S12)(図1及び図2の想像線参照)を除去して、第1インバータINV1の直流側を蓄電池BTに直接的に接続する構成とされている。
【0034】
電気駆動装置10aは、本発明の構成を適用する第1から第3インバータINV1〜INV3に対応して第1から第3切替リレーRY1〜RY3(図1及び図3参照)をさらに備えている。なお、第1から第3切替リレーRY1〜RY3は、本発明の切替手段の一例である。
【0035】
第1から第3切替リレーRY1〜RY3は、それぞれ、コモン端子(QC11,QC12,QC13)〜(QC31,QC32,QC33)(図3参照)と一方側の切替端子(QA11,QA12,QA13)〜(QA31,QA32,QA33)とで一方側のスイッチ部S13,S23,S33(図1及び図3の実線参照)が構成され、かつ、コモン端子(QC11,QC12,QC13)〜(QC31,QC32,QC33)と他方側の切替端子(QB11,QB12,QB13)〜(QB31,QB32,QB33)とで他方側のスイッチ部S14,S24,S34(図1及び図3の破線参照)が構成されている。
【0036】
電気駆動装置10aは、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33(図2参照)に対して第1から第3モータM1〜M3、又は、電力系統PWがそれぞれ第1から第3切替リレーRY1〜RY3を介して接続される構成とされている。詳しくは、第1から第3切替リレーRY1〜RY3において、コモン端子(QC11,QC12,QC13),(QC21,QC22,QC23),(QC31,QC32,QC33)が第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子(Q131,Q132,Q133),(Q231,Q232,Q233),(Q331,Q332,Q333)と接続され、一方側のスイッチ部S13,S23,S33の切替端子(QA11,QA12,QA13),(QA21,QA22,QA23),(QA31,QA32,QA33)が第1から第3モータM1〜M3にそれぞれ接続される3相の配線(LA11,LA12,LA13),(LA21,LA22,LA23),(LA31,LA32,LA33)と接続され、さらに、他方側のスイッチ部S14,S24,S34の切替端子(QB11,QB12,QB13),(QB21,QB22,QB23),(QB31,QB32,QB33)が電力系統PWにそれぞれ接続される3相の配線(LB11,LB12,LB13),(LB21,LB22,LB23),(LB31,LB32,LB33)と接続されている。
【0037】
具体的には、第1切替リレーRY1に接続される一相の配線LB11と電力系統PWの一端とが接続され、第1切替リレーRY1に接続される他の一相の配線LB13と第2切替リレーRY2に接続される一相の配線LB21とが接続され、第2切替リレーRY2に接続される他の一相の配線LB23と第3切替リレーRY3に接続される一相の配線LB31とが接続され、第3切替リレーRY3に接続される他の一相の配線LB33と電力系統PWの他端とが接続される構成とされている。なお、第1から第3切替リレーRY1〜RY3に接続される残り一相の配線LB12,LB22,LB32は、本第1実施形態では、どこにも接続されていない構成とされている。よって、配線LB12,LB22,LB32を設けずに、端子QC12と端子QB12との間でのスイッチS14、端子QC22と端子QB22との間でのスイッチS24、端子QC32と端子QB32との間でのスイッチS34を省略するようになっていてもよい。
【0038】
なお、本第1実施形態のように、電力系統PWに接続される場合には、出力波形を目標とする正弦波の交流電圧Vacの波形(後述する図7参照)に可及的に近づけるという観点から、電力系統PWに対してインダクタLが直列に(ここでは配線LB11,LB33に)接続され、或いは/さらに、電力系統PWの接続ラインに対してキャパシタCが並列に(ここでは配線LB11と配線LB33との間のインダクタLよりも電力系統PW側に)接続されている。また、電力系統PWに代えて負荷を設ける場合、負荷の種類によっては、キャパシタC及び/又はインダクタLを設けてもよいし、キャパシタC及びインダクタLの双方を設けていなくてもよい。
【0039】
かかる構成を備えることにより、電気駆動装置10aでは、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3により、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側に対して、蓄電池BTの両電極をそれぞれ接続又は遮断することができる。また、第1から第3切替リレーRY1〜RY3により、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側に対して、第1から第3モータM1〜M3にそれぞれ接続される配線LA11,LA12,LA13〜LA31,LA32,LA33と、電力系統PWにそれぞれ接続される配線LB11,LB13〜LB31,LB33とを切り替えることができる。
【0040】
図4は、第1から第nインバータINV1〜INVnの一例の概略構成を示す回路図である。第1から第nインバータINV1〜INVnの構成は何れも同一構成とされている。よって、図4では第1から第nインバータINV1〜INVnを一つの図で示している。
【0041】
図4に示すように、第1から第nインバータINV1〜INVnは、第1から第6半導体スイッチ111〜116と、第1から第6ダイオード121〜126と、キャパシタ140とを備えている。
【0042】
第1から第6半導体スイッチ111〜116は、何れも一方向にのみ電流を流すことができる半導体デバイスである。第1から第6ダイオード121〜126は、それぞれ、第1から第6半導体スイッチ111〜116に対して電流を流すことができる方向を逆にしてそれぞれ並列接続されている。
【0043】
第1半導体スイッチ111に並列接続された第1ダイオード121のアノード側と、第2半導体スイッチ112に並列接続された第2ダイオード122のカソード側とが互いに接続されている。かかる接続構成とされた第1半導体スイッチ111及び第1ダイオード121と第2半導体スイッチ112及び第2ダイオード122とで第1レグ131を構成している。
【0044】
第3半導体スイッチ113に並列接続された第3ダイオード123のアノード側と、第4半導体スイッチ114に並列接続された第4ダイオード124のカソード側とが互いに接続されている。かかる接続構成とされた第3半導体スイッチ113及び第3ダイオード123と第4半導体スイッチ114及び第4ダイオード124とで第2レグ132を構成している。
【0045】
第5半導体スイッチ115に並列接続された第5ダイオード125のアノード側と、第6半導体スイッチ116に並列接続された第6ダイオード126のカソード側とが互いに接続されている。かかる接続構成とされた第5半導体スイッチ115及び第5ダイオード125と第6半導体スイッチ116及び第6ダイオード126とで第3レグ133を構成している。
【0046】
第1から第3レグ131〜133は、第1、第3及び第5ダイオード121,123,125のカソード側と、キャパシタ140の一端子とが互いに接続端子Q11〜Qn1に接続されている。また、第1から第3レグ131〜133は、第2、第4及び第6ダイオード122,124,126のアノード側と、キャパシタ140の他端子側とが互いに接続端子Q12〜Qn2に接続されている。
【0047】
また、電気駆動装置10aは、第1から第3開閉スイッチSW1〜SW3及び第1から第3切替リレーRY1〜RY3を自動的に作動させる構成とされている。
【0048】
電気駆動装置10aは、さらに制御装置20(図1参照)を備えている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部21と、記憶部22とを備えている。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶メモリを含み、各種制御プログラムや必要な関数およびテーブルや、各種のデータを記憶するようになっている。
【0049】
制御装置20は、第1接続制御手段P1と、第2接続制御手段P2とを備える構成とされている。第1接続制御手段P1は、蓄電池BTからの電力で第1から第nモータM1〜Mnを駆動することが可能なモータ駆動可能状態(電力系統PW又は負荷と蓄電池BTとの間で電力の授受を行わない状態)を検出した場合には、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3をオンにし、第1から第3切替リレーRY1〜RY3を第1から第3モータM1〜M3側に切り替える構成とされている。一方、第2接続制御手段P2は、電力系統PW又は負荷と蓄電池BTとの間で電力の授受を行うことが可能な電力授受可能状態(蓄電池BTからの電力で第1から第nモータM1〜Mnを駆動しない状態)を検出した場合には、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3をオフにし、第1から第3切替リレーRY1〜RY3を電力系統PW側に切り替える構成とされている。
【0050】
詳しくは、制御装置20は、電力系統PW又は負荷が接続されたことを検出する接続検出手段を備えている。この接続検出手段は、電力系統PW又は負荷が機械的に接続されたことを検知するセンサによって検出するようになっていてもよいし、電力系統PW又は負荷の電圧又は抵抗値を検知するセンサによって検出するようになっていてもよい。これにより、制御装置20は、モータ駆動可能状態又は電力授受可能状態を認識できるようになっている。
【0051】
かかる構成を備えた電気駆動装置10aでは、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3並びに第1から第3切替リレーRY1〜RY3を自動的に作動させることができ、それだけ使用者による操作性を向上させることができる。
【0052】
なお、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3並びに第1から第3切替リレーRY1〜RY3は、前記接続検出手段による自動動作にて作動するが、前記接続検出手段による自動動作に代えて、或いは、加えて、使用者の人為操作により、モータ駆動可能状態と電力授受可能状態とが人為的に切り替えられるようになっていてもよい。
【0053】
図5は、蓄電池BTにより第1〜第nモータM1〜Mnを駆動する場合(具体的には作業時)と、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合(具体的にはV2G/V2H時)とでの第2及び第3インバータINV2,INV3の第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3におけるスイッチ部(S21,S22),(S31,S32)並びに第1から第3切替リレーRY1〜RY3におけるスイッチ部(S13,S14),(S22,S24),(S33,S34)のオン状態又はオフ状態を示す表である。なお、図5において、蓄電池BTにより第1〜第nモータM1〜Mnを駆動する場合を「作業時」と表し、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合を「V2G/V2H時」と表している。また、図5において、「−」は、スイッチ部がオフ状態を示しており、「○」は、スイッチ部がオン状態を示している。
【0054】
制御装置20は、蓄電池BTにより第1〜第nモータM1〜Mnを駆動する場合(具体的には作業時)には、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3におけるスイッチ部(S21,S22),(S31,S32)をオンにすることにより、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の一端子Q21,Q31及び他端子Q22,Q32に対して蓄電池BTの両電極をそれぞれ接続する構成とされている。また、制御装置20は、蓄電池BTにより第1〜第nモータM1〜Mnを駆動する場合(具体的には作業時)には、第1から第3切替リレーRY1〜RY3の一方側のスイッチ部S13,S23,S33に切り替えて一方側のスイッチ部S13,S23,S33をオンにすることにより、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33に対して第1から第3モータM1〜M3をそれぞれ接続する構成とされている。
【0055】
このように、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33に対して第1から第3モータM1〜M3をそれぞれ接続することで、蓄電池BTにより第1〜第3モータM1〜M3を駆動させることができる。
【0056】
また、制御装置20は、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合には(具体的にはV2G又はV2H時)、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3におけるスイッチ部(S21,S22),(S31,S32)をオフにすることにより、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の一端子Q21,Q31及び他端子Q22,Q32に対して蓄電池BTの両電極との接続をそれぞれ遮断する構成とされている。また、制御装置20は、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合(具体的にはV2G又はV2H時)には、第1から第3切替リレーRY1〜RY3の他方側のスイッチ部S14,S24,S34に切り替えて他方側のスイッチ部S14,S24,S34をオンにすることにより、電力系統PWを介して第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33を直列接続する構成とされている。
【0057】
図6は、第1実施形態の電気駆動装置10aにおいて蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合に構成される電力授受用回路Aの回路図である。
【0058】
第1実施形態の電気駆動装置10aは、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合には、図6に示す電力授受用回路Aを構成し、特許文献1の如く第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側を直列接続することができる。
【0059】
すなわち、電気駆動装置10aでは、直流側で蓄電池BTに接続された第1インバータINV1と、直流側でキャパシタ140を含む第2インバータINV2と、直流側でキャパシタ140を含む第3インバータINV3とが、交流側で直列に接続されることで、第1から第3インバータINV1〜INV3が協働して蓄電池BTの電圧Vbat(例えば52V程度の電圧)を電力系統PWに必要な交流電圧Vac(例えばAC110V)に変換することができる。
【0060】
以上説明したように、本第1実施形態の電気駆動装置10aによれば、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行う場合には、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3におけるスイッチ部(S21,S22),(S31,S32)をオフにする。これにより、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の一端子Q21,Q31及び他端子Q22,Q32に対して蓄電池BTの両電極との接続をそれぞれ遮断する。そして、第1から第3切替リレーRY1〜RY3の他方側のスイッチ部S14,S24,S34に切り替えて他方側のスイッチ部S14,S24,S34をオンにする。これにより、電力系統PWを介して第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33を直列接続する。
【0061】
こうすることで、特許文献1の如く第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側を直列接続することができ、従って、第1から第3インバータINV1〜INV3個々の直流側の定格電圧がたとえ電力系統PWに必要な交流電圧Vac(例えばAC110V)のピーク電圧(例えば156V程度)よりも小さい電圧とされていても、電力系統PWに対して必要な電圧を出力する回路構成を実現させることができる。これにより、蓄電池BTと電力系統PWとの間で電力の授受を行うことが可能となる。本第1実施形態では、第1から第3インバータINV1〜INV3の直流側の定格電圧は、何れも電力系統PWに必要な交流電圧Vac(例えばAC110V)のピーク電圧(例えば156V程度)よりも小さい電圧とされている。なお、第1から第nインバータINV1〜INVnの直流側の定格電圧が何れも等しくなってもよいし、それぞれが互いに異なっていてもよい。或いは、第1から第nインバータINV1〜INVnにおいて、少なくとも二つの第1定格電圧が等しく、かつ、残りの少なくとも二つの第2定格電圧が等しくなっていて、該第1定格電圧と該第2定格電圧とが異なっている態様を例示できる。
【0062】
図7は、図6に示す電力授受用回路Aによって電力系統PWに出力される第1から第3電圧V1〜V3を交流電圧Vacの波形と共に示すグラフである。図7(a)は、パルス幅変調(PWM)を行わない波形を示しており、図7(b)は、パルス幅変調(PWM)を行った波形を示している。
【0063】
制御装置20は、第1から第3インバータINV1〜INV3のうち何れか一つ(図7の例では第1インバータINV1)に対して目標とする正弦波の交流電圧Vacの波形の半周期Ta,Tb(周期T/2)よりも短い第1時間T1に第1電圧V1を出力し、残り二つのインバータ(図7の例では第2及び第3インバータINV2,INV3)のうち何れか一つ(図7の例では第2インバータINV2)に対して第1時間T1よりも短い第2時間T2に第2電圧V2を出力し、残り一つのインバータ(図7の例では第3インバータINV3)に対して第2時間T1よりも短い第3時間T3に第3電圧V3を出力する構成とされている。
【0064】
さらに、制御装置20は、前半の半周期Taと後半の半周期Taとで電圧値の極性を逆転させ、かつ、第1から第3時間T1〜T3の中央の時間を交流電圧Vacの波形の電圧がピークとなる時間に一致させる構成とされている。これにより、図7(a)に示すように、電力系統PW(インダクタL及びキャパシタCで構成されたフィルタよりも上流側)に対して、擬似的な正弦波(正弦波に近似できる階段状の波形)の電圧を出力することができる。そして、インダクタL及びキャパシタCで構成されたフィルタよりも下流側では、出力される電圧波形を、交流電圧Vacの波形に対してさらに近い電圧波形にすることができる。
【0065】
具体的には、前半の半周期Taにおいて、第1インバータINV1を0.45T(第1時間T1)だけ51.9V(第1電圧V1)を出力し、第2インバータINV2を0.33T(第2時間T2)だけ51.9V(第2電圧V2)を出力し、第3インバータINV3を0.19T(第3時間T3)だけ51.9V(第3電圧V3)を出力し、後半の半周期Taにおいて、第1インバータINV1を0.45T(第1時間T1)だけ−51.9V(第1電圧V1)を出力し、第2インバータINV2を0.33T(第2時間T2)だけ−51.9V(第2電圧V2)を出力し、第3インバータINV3を0.19T(第3時間T3)だけ−51.9V(第3電圧V3)を出力し、第1から第3時間T1〜T3の中央の時間を交流電圧Vacの波形がピークとなる時間に一致させることで、インダクタL及びキャパシタCで構成されたフィルタよりも上流側でピーク電圧が155.7V(正弦波交流電圧の実効値が約110V)の擬似的な正弦波(正弦波に近似できる階段状の波形)の電圧を出力することができる。
【0066】
なお、第1から第3電圧V1〜V3は、ここでは、同じ値とされているが、第1から第3電圧V1〜V3の総和が正弦波交流電圧の実効値の√2倍程度であれば、第1から第3電圧V1〜V3の少なくとも二つが互いに異なっていてもよい。
【0067】
また、図7(b)に示す例では、交流電圧Vacの波形が各第1から第3電圧V1〜V3内に入っている時間t1〜t6において、パルス振変調(PWM)を行っている。
【0068】
詳しくは、第1及び第6変調時間t1,t6は、第1時間T1と第1電圧V1とで構成される第1矩形信号M1の前後の時間にパルス振変調(PWM)を行った時間であり、交流電圧Vacの波形が第1電圧V1内に入っている時間とされている。第2及び第5変調時間t2,t5は、第2時間T2と第2電圧V2とで構成される第2矩形信号M2の前後の時間にパルス振変調(PWM)を行った時間であり、交流電圧Vacの波形が第2電圧V2内に入っている時間とされている。第3及び第4変調時間t3,t4は、第3時間T3と第3電圧V3とで構成される第3矩形信号M3の前後の時間にパルス振変調(PWM)を行った時間であり、交流電圧Vacの波形が第3電圧V3内に入っている時間とされている。図7(b)の例では、第3変調時間t3と第4変調時間t4とは連続した時間とされている。但し、それに限定されるものではなく、第3変調時間t3と第4変調時間t4との間でパルス振変調(PWM)を行わない第3電圧V3を出力するように構成してもよい。
【0069】
なお、インダクタL及びキャパシタCで構成されたフィルタよりも下流側では、出力される電圧波形を、交流電圧Vacの波形に対してより一層近い電圧波形にすることができる。
【0070】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る電動作業機100bに設けられた電気駆動装置10bの概略構成を単線図で示す基本回路図である。図9は、図8に示す基本回路図におけるインバータ部分の詳細を示す回路図である。また、図10は、図8に示す基本回路図におけるインバータの交流側部分の詳細を示す回路図である。
【0071】
図8から図10に示す電気駆動装置10bは、図1から図3に示す電気駆動装置10aにおいて第1から第3モータM1〜M3に代えて第1から第3モータM1d〜M3dを設け、第1から第3モータM1d〜M3dを第1から第3切替リレーRY1〜RY3よりも第1から第3インバータINV1〜INV3側に設けた以外は図1から図3に示す電気駆動装置10aと同一構成とされている。
【0072】
図8から図10に示す電気駆動装置10bにおいて、図1から図3に示す電気駆動装置10aと同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
第1から第3モータM1d〜M3dは、入力側が第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の端子Q13,Q23,Q33に接続されている。第1から第3モータM1d〜M3dは、終端で途切れた3相の界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)と、界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)の終端が接続された出力端子(QM11,QM12,QM13),(QM21,QM22,QM23),(QM31,QM32,QM33)とを備えている。
【0074】
電気駆動装置10bは、第1から第3モータM1d〜M3dの出力端子(QM11,QM12,QM13),(QM21,QM22,QM23),(QM31,QM32,QM33)に対して3相の配線(LC11,LC12,LC13),(LC21,LC22,LC23),(LC31,LC32,LC33)、又は、電力系統PWがそれぞれ第1から第3切替リレーRY1〜RY3を介して接続される構成とされている。詳しくは、第1から第3切替リレーRY1〜RY3において、コモン端子(QC11,QC12,QC13),(QC21,QC22,QC23),(QC31,QC32,QC33)が第1から第3モータM1d〜M3dの出力端子(QM11,QM12,QM13),(QM21,QM22,QM23),(QM31,QM32,QM33)と接続され、一方側のスイッチ部S13,S23,S33の切替端子(QA11,QA12,QA13),(QA21,QA22,QA23),(QA31,QA32,QA33)が3相の配線(LC11,LC12,LC13),(LC21,LC22,LC23),(LC31,LC32,LC33)の一端と接続され、さらに、他方側のスイッチ部S14,S24,S34の切替端子(QB11,QB12,QB13),(QB21,QB22,QB23),(QB31,QB32,QB33)が電力系統PWにそれぞれ接続される3相の配線(LB11,LB12,LB13),(LB21,LB22,LB23),(LB31,LB32,LB33)と接続されている。そして、3相の配線(LC11,LC12,LC13),(LC21,LC22,LC23),(LC31,LC32,LC33)の他端は、互いに接続されている。
【0075】
かかる構成を備えることにより、電気駆動装置10bでは、第1から第3切替リレーRY1〜RY3により、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側にそれぞれ接続された第1から第3モータM1d〜M3dの界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)の出力端子(QM11,QM12,QM13),(QM21,QM22,QM23),(QM31,QM32,QM33)に対して、第1から第3モータM1d〜M3dの個々の界磁巻線の終端側を短絡させるための配線LC11,LC12,LC13〜LC31,LC32,LC33と、電力系統PWにそれぞれ接続される配線LB11,LB13〜LB31,LB33とを切り替えることができる。
【0076】
そして、図8から図10に示すように、制御装置20は、蓄電池BTにより第1〜第nモータM1〜Mnを駆動する場合には、第1から第3切替リレーRY1〜RY3の一方側のスイッチ部S13,S23,S33に切り替えて一方側のスイッチ部S13,S23,S33をオンにすることにより、第1から第3モータM1d〜M3dの界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)の出力端子(QM11,QM12,QM13),(QM21,QM22,QM23),(QM31,QM32,QM33)とは反対側に対して第1から第3モータM1d〜M3dの個々の界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)を短絡する構成とされている。
【0077】
以上説明したように、本第2実施形態の電気駆動装置10bによれば、第1実施形態の利点に加えて、第1実施形態のインダクタL(図1及び図3参照)の代わりに第1から第3モータM1d〜M3dの界磁巻線(K11,K12,K13),(K21,K22,K23),(K31,K32,K33)を利用することができる。
【0078】
なお、第2及び第3開閉スイッチSW2,SW3並びに第1から第3切替リレーRY1〜RY3は、前記接続検出手段による自動動作にて作動するが、前記接続検出手段による自動動作に代えて、或いは、加えて、使用者の人為操作により、モータ駆動可能状態と電力授受可能状態とが人為的に切り替えられるようになっていてもよい。
【0079】
(第1制御例)
第1及び第2実施形態の電気駆動装置10a,10bにおいて、制御装置20は、電力系統PWに対して必要な電圧を確実に出力するという観点から、第1から第3インバータINV1〜INV3を次のように制御する構成とされていることが好ましい。
【0080】
すなわち、制御装置20は、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の電圧値の総和が電力系統PWへの交流側の電圧(例えば約110V)の最大値(例えば155.7V)から蓄電池BTの電圧値を差し引いた電圧値になるように第2及び第3インバータINV2,INV3を制御することが好ましい。
【0081】
例えば、図7に示すように、第1から第3インバータINV1〜INV3の交流側の電圧値を何れも等しくする場合、制御装置20は、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の電圧値が交流側の電圧の最大値(例えば155.7V)から蓄電池BTの電圧値(例えば51.9V)を差し引いた電圧値(例えば103.8V)を第2及び第3インバータINV2,INV3の個数分(ここでは2)で割った値(例えば51.9V)になるように第2及び第3インバータINV2,INV3を制御することが好ましい。
【0082】
このように、第1から第3インバータINV1〜INV3個々の直流側の定格電圧が電力系統PWに必要な交流電圧のピーク電圧よりも小さい電圧とされていても、第2及び第3インバータINV2,INV3の直流側の電圧値の総和が電力系統PWへの交流側電圧の最大値(例えば155.7V)から蓄電池BTの電圧値(例えば51.9V)を差し引いた電圧値(例えば103.8V)になるように第2及び第3インバータINV2,INV3を制御することで、電力系統PWに対して必要な電圧を確実に出力することが可能となる。
【0083】
(第2制御例)
ところで、第1から第3インバータINVの交流側に接続される電力系統又は負荷によっては、一のインバータにおけるスイッチング素子の動作時間と、他のインバータにおけるスイッチング素子の動作時間との間で格差が生じてしまうことがある。このことは、負荷(例えば、モータや電灯のような負荷)に流れる電流が正弦波交流に近似した波形である場合、特に顕著となる。
【0084】
負荷に流れる電流が正弦波交流に近似した波形である場合には、図7に示すように、第1インバータINV1におけるスイッチング素子がどの周期においても最も長い時間駆動され、第3インバータINV3におけるスイッチング素子がどの周期においても最も短い時間駆動され、第2インバータINV2におけるスイッチング素子がどの周期においてもそれらの中間の時間駆動されることになる。そうすると、第1から第3インバータINV1〜INV3におけるスイッチング素子の寿命の片寄ってしまうという不都合を招く。
【0085】
かかる観点から、本第2制御例では、蓄電池BTと電力系統又は負荷(例えば、モータや電灯のような負荷)との間で電力の授受を行うときに、第1から第3インバータINV1〜INV3のうち、一のインバータ(例えばINV1)におけるスイッチング素子のスイッチングパターンを他のインバータ(例えばINV2又はINV3)におけるスイッチング素子のスイッチングパターンと入れ替える構成とされている。
【0086】
具体的には、制御装置20は、第1から第3インバータINV1〜INV3におけるスイッチング素子のスイッチングパターンを定期的にローテーションしてもよい。或いは、第1から第3インバータINV1〜INV3の温度を検出する温度検出手段(図示せず)を設け、前記温度検出手段にて所定期間毎に第1から第3インバータINV1〜INV3の温度をサンプリングし、サンプリングした温度の平均値が第1から第3インバータINV1〜INV3間で均一になるように、第1から第3インバータINV1〜INV3におけるスイッチング素子のスイッチングパターンを入れ替えてもよい。例えば、第1から第3インバータINV1〜INV3から所定期間毎に温度をサンプリングし、所定期間毎の温度の平均値を高い順と低い順とに並べ替え、最も高い温度のインバータと最も低い温度のインバータとでスイッチングパターンを入れ替え、次に高い温度のインバータと次に低い温度のインバータとでスイッチングパターンを入れ替え、これを順次行っていくようにしてもよい。また、第1から第3インバータINV1〜INV3におけるスイッチングパターンを制御する制御装置20のスイッチングパターン(制御パターン)から所定期間毎にデューティ比をサンプリングし、サンプリングしたディーティ比の平均値が第1から第3インバータINV1〜INV3間で均一になるように、第1から第3インバータINV1〜INV3におけるスイッチング素子のスイッチングパターンを入れ替えてもよい。例えば、第1から第3インバータINV1〜INV3へのスイッチングパターンから所定期間毎にデューティ比をサンプリングし、所定期間毎のディーティ比の平均値を大きい順と小さい順とに並べ替え、最も大きいデューティ比のインバータと最も小さいデューティ比のインバータとでスイッチングパターンを入れ替え、次に大きいデューティ比のインバータと次に小さいデューティ比のインバータとでスイッチングパターンを入れ替え、これを順次行っていくようにしてもよい。
【0087】
このように、第1から第3インバータINV1〜INV3のうち、一のインバータ(例えばINV1)におけるスイッチング素子のスイッチングパターンを他のインバータ(例えばINV2又はINV3)におけるスイッチング素子のスイッチングパターンと入れ替えることで、第1から第3インバータINV1〜INV3の間でスイッチング素子の寿命の片寄りを抑制でき、ひいては、第1から第3インバータINV1〜INV3のそれぞれの寿命を延ばすことが可能となる。
【0088】
(その他の実施形態)
ところで、蓄電池BTと電力系統又は負荷との間で電力の授受を行うときには、第1インバータINV1は蓄電池BTから常時電力が供給されることから、第2及び第3インバータINV2,INV3に比べて負担が大きくなる。
【0089】
かかる観点から、本第1及び第2実施形態では、第1から第3インバータINV1〜INV3のうちの最大の定格電圧のインバータ(例えば第1インバータINV1)が本発明の第1のインバータとして作用するインバータとされていることが好ましい。
【0090】
こうすることで、蓄電池BTと電力系統又は負荷との間で電力の授受を行うときに第1から第3インバータINV1〜INV3のうちの最大の定格電圧のインバータ(例えば第1インバータINV1)を効率的に作動させることが可能となる。
【0091】
なお、以上説明した電気駆動装置10は、トラクター、ショベルカー、ホイルローダやキャリヤ等の建設作業機、或いは、耕耘機や田植機等の農作業機といった、蓄電池で駆動する何れの電動作業機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 電気駆動装置
20 制御装置
100a,100b 電動作業機
BT 蓄電池
INV1 第1インバータ(第1のインバータの一例)
INV2,INV3 第2及び第3インバータ(第2のインバータの一例)
K11〜K13 界磁巻線
K21〜K23 界磁巻線
K31〜K33 界磁巻線
LA11〜LA13 配線
LA21〜LA23 配線
LA31〜LA33 配線
LB11〜LB13 配線
LB21〜LB23 配線
LB31〜LB33 配線
LC11〜LC13 配線
LC21〜LC23 配線
LC31〜LC33 配線
M1〜M3 第1から第3モータ
M1d〜M3d 第1から第3モータ
PW 電力系統
P1 第1接続制御手段
P2 第2接続制御手段
QM11〜QM13 出力端子
QM21〜QM23 出力端子
QM31〜QM33 出力端子
RY1〜RY3 第1から第3切替リレー(切替手段の一例)
SW2,SW3 第2及び第3開閉スイッチ(開閉手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、共通の蓄電池から直流電圧が供給されて前記複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータとを備えた電動作業機であって、
前記複数のインバータのうち、第1のインバータ以外の第2のインバータの直流側に対して、前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断する開閉手段と、
前記複数のインバータの交流側に対して、前記複数のモータにそれぞれ接続される配線と前記複数のインバータの交流側を電力系統又は負荷を介して直列接続させるための配線とを切り替える切替手段と、
前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する第1接続制御手段と、
前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記複数のインバータの交流側に対して前記複数のモータをそれぞれ接続する第2接続制御手段と
を備えることを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
複数のモータと、共通の蓄電池から直流電圧が供給されて前記複数のモータをそれぞれ駆動する複数のインバータとを備えた電動作業機であって、
前記複数のインバータのうち、第1のインバータ以外の第2のインバータの直流側に対して、前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断する開閉手段と、
終端を有する界磁巻線の前記終端に接続された出力端子を備え、かつ、前記複数のインバータの交流側にそれぞれ接続された前記複数のモータの前記出力端子に対して、前記複数のモータの前記界磁巻線の前記終端側を短絡させるための配線と前記複数のモータの前記界磁巻線を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続させるための配線とを切替える切替手段と、
前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側との接続をそれぞれ遮断し、前記切替手段により前記複数のモータの前記界磁巻線を前記電力系統又は前記負荷を介して直列接続する第1接続制御手段と、
前記開閉手段により前記複数のインバータの直流側に対して前記蓄電池の正極側及び負極側をそれぞれ接続し、前記切替手段により前記出力端子に対して前記複数のモータの前記界磁巻線を短絡する第2接続制御手段と
を備えることを特徴とする電動作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動作業機であって、
前記第2のインバータの直流側の電圧値の総和が交流側電圧の最大値から前記蓄電池の電圧値を差し引いた電圧値になるように前記第2のインバータを制御することを特徴とする電動作業機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の電動作業機であって、
前記第1接続制御手段を実施するときに、前記複数のインバータのうち、一のインバータにおけるスイッチング素子のスイッチングパターンを他のインバータにおけるスイッチング素子のスイッチングパターンと入れ替えることを特徴とする電動作業機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一つに記載の電動作業機であって、
前記複数のインバータのうち、最大の定格電圧のインバータが前記第1のインバータとされていることを特徴とする電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−186907(P2012−186907A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47775(P2011−47775)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】