電動倍力装置
【課題】ボールねじ機構等に軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにでき、もって、異音の低減化、動作特性の向上等を図ることのできる電動倍力装置を提供する
【解決手段】ベース係合部23aと第1係合部18bとの相対位置、突出部係合部7と第2係合部17aとの相対位置、及び可動部係合部16aと第3係合部18aとの相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状を設定する。好ましくは、他の2つの変位可能な相対位置のうちの少なくとも1つは、その相対位置の変位軌跡が円弧等の曲線となるようにする。
【解決手段】ベース係合部23aと第1係合部18bとの相対位置、突出部係合部7と第2係合部17aとの相対位置、及び可動部係合部16aと第3係合部18aとの相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状を設定する。好ましくは、他の2つの変位可能な相対位置のうちの少なくとも1つは、その相対位置の変位軌跡が円弧等の曲線となるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置等に組み込むのに好適な倍力装置に係り、特に倍力源として電動モータ等のアクチュエータを用いた電動倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置に組み込まれる電動倍力装置として、特許文献1に所載のものがある。この電動倍力装置は、電動モータと、軸方向を拘束されて前記電動モータの出力軸に連結される回転部材に軸線回りの回転を拘束された軸方向移動部材が多数のボールを介して螺合されて成るボールねじ機構とを備え、マスタシリンダの押圧入力部材にブレーキ操作部材に連なる入力レバー及び前記軸方向移動部材が連結される電動倍力装置において、電動モータ及びボールねじ機構がマスタシリンダと平行な軸線をそれぞれ有してマスタシリンダに並列配置され、入力レバー及び軸方向移動部材が、電動モータの作動に伴う軸方向移動部材の前進方向への押圧力をマスタシリンダの押圧入力部材に及ぼし、ブレーキ液圧を発生させて所望の制動力を得る。
【0003】
そして、ブレーキペダルの操作量に対して、コントローラにより電動モータの出力を適宜調整することにより、いわゆる倍力比を変化させることができ、倍力制御、ブレーキアシスト制御、回生協調制御等の種々のブレーキ制御を実行することができる。このとき、回生協調制御等によって電動モータの出力が変動した場合でも、ブレーキペダルの操作量に対して、ストロークシミュレータによって一定の反力を付与しているので、運転者に違和感を与えることがない。
【0004】
また、万が一、電気系統等の失陥により、電動モータが作動不能になった場合には、ブレーキペダルに連結された入力レバーによって押圧入力部材を直接押圧することで、マスタシリンダのピストンを前進させることができ、制動機能を維持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3611386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に所載の電動倍力装置では、次のような解決すべき課題がある。すなわち、マスタシリンダとボールねじ機構が平行に配設される場合、マスタシリンダとボールねじ機構を繋ぐ杆に、杆を回転させるモーメントが発生し、ボールねじ機構の軸方向移動部材及びピストンに軸方向とは異なる方向に力が発生する。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、マスタシリンダ内部でピストンが傾くことがある。このような場合には、ピストンを進退動させるために必要な力をマスタシリンダ内の油圧による力よりも大きくする必要があり、電動倍力装置の動作特性を悪化させる要因となる。
【0007】
本発明は、上記問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、動作特性の向上等を図ることのできる電動倍力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電動倍力装置は、基本的には、ベースと、前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出してマスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する電動アクチュエータと、第1係合部、第2係合部、及び第3係合部とを有するレバー部材と、前記ベースに設けられたベース係合部と前記第1係合部とに係合して前記ベースと前記レバー部材とを係合させる第1のピンと、前記突出部に設けられた突出部係合部と前記第2係合部とに係合して前記突出部と前記レバー部材とを係合させる第2のピンと、前記可動部に設けられた可動部係合部と前記第3係合部とに係合して前記可動部と前記レバー部材とを係合させる第3のピンと、を備え、前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置、及び前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状が設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動倍力装置によれば、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにでき、そのため、異音の低減化、動作特性の向上等を図ることができる。
上記した以外の、課題、構成、及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電動倍力装置の一実施形態(第1実施例)を、それが適用された車両のブレーキ装置の一例と共に示す概略構成図。
【図2】第1実施例の電動倍力装置の主要部概略側面図。
【図3】第1実施例の電動倍力装置の主要部概略斜視図。
【図4】第1実施例における押圧入力部材の斜視図。
【図5】第1実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図6】第1実施例におけるピストン推力及びナット推力とナットストロークの関係の説明に供される図。
【図7】第1実施例におけるレバー形状と力点位置の関係説明図。
【図8】第1実施例におけるレバー形状と力点位置の関係説明図。
【図9】第1実施例におけるレバー形状と支点位置の関係説明図。
【図10】第1実施例におけるレバー形状と支点位置の関係説明図。
【図11】第1実施例におけるレバー形状とナットストロークの関係説明図。
【図12】第1実施例におけるレバー形状とナットストロークの関係説明図。
【図13】第1実施例におけるレバー形状とマスタシリンダ〜ボールねじ機構の距離の関係説明図。
【図14】第1実施例におけるレバー形状とマスタシリンダ〜ボールねじ機構の距離の関係説明図。
【図15】第2実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図16】第3実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図17】第4実施例のレバーを示す斜視図。
【図18】比較例としての第1実施例のレバーを示す斜視図。
【図19】第1実施例のレバーの応力解析結果の説明に供される図。
【図20】第4実施例のレバーの応力解析結果の説明に供される図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の電動倍力装置は、上記特許文献1に所載の電動倍力装置では、次のような課題を解決するものである。すなわち、マスタシリンダとボールねじ機構が平行に配設される場合、マスタシリンダとボールねじ機構を繋ぐ杆に、杆を回転させるモーメントが発生し、ボールねじ機構の軸方向移動部材及びピストンに軸方向とは異なる方向に力が発生する。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、マスタシリンダ内部でピストンが傾くことがある。このような場合には、ピストンを進退動させるために必要な力をマスタシリンダ内の油圧による力よりも大きくする必要があり、電動倍力装置の動作特性を悪化させる要因となる。
【0012】
このような課題を解消すべく、本実施形態においては、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにして、動作特性の向上を図るものとなっている。
【0013】
また、上記特許文献1に所載の電動倍力装置のように、ピストンに軸方向と異なる方向の力が加えられる場合、次のような課題もあり、本実施形態の電動倍力装置は、これを解決するものである。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、ボールと軸及びボールとナットの接触力が局部的に高くなり、局部摩耗や異音発生の要因となる場合がある。
【0014】
このような課題を解消すべく、本実施形態においては、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにして、異音の低減化を図るものとなっている。
【0015】
<第1実施例>
図1は、電動倍力装置の一実施形態(第1実施例)を、それが適用された車両のブレーキ装置の一例と共に示す概略構成図である。本実施例の電動倍力装置100は、車両のブレーキ制御系1のマスタシリンダ2に結合される。マスタシリンダ2はタンデム型であり、プライマリ及びセカンダリの二つの液圧ポート3,4を有し、液圧ポート3,4には2系統の液圧回路を有する液圧制御ユニット5を介して、4つの車輪にそれぞれ設けられた液圧式のブレーキ装置6が接続されている。ブレーキ装置6は、液圧によって制動力を発生するディスクブレーキあるいはドラムブレーキ等で構成される。
【0016】
なお、以下の説明において、前、後、左、右は、特に断りがない限り当該電動倍力装置100付きのブレーキ制御系1を備えた車両の前、後、左、右を指すものとする。
【0017】
タンデム型のマスタシリンダ2には、直列に配置されたプライマリ及びセカンダリの一対のピストン7(プライマリ側のみが図2に示されている)が挿入され、これらのピストン7の前進により、2つの液圧ポート3,4から同じ液圧を供給し、ピストン7の後退時には、ブレーキパッドの摩耗などに応じてリザーバ8から適宜ブレーキ液を補充する。そして、万一、2系統の液圧回路の一方が失陥した場合でも、他方の液圧回路に液圧が供給されるので、制動機能を維持することができる。
【0018】
液圧制御ユニット5は、液圧源である電動ポンプ及び増圧弁、減圧弁等の電磁制御弁を備え、各車輪のブレーキ装置6に供給する液圧を減圧する減圧モード、保持する保持モード及び増圧する増圧モードを適宜実行して以下の制御を行う。
【0019】
(1)各車輪の制動力を制御することにより、制動時に設置荷重などに応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御。
(2)制動時に各車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定制御。
【0020】
(3)走行中の車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御。
(4)坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御。
【0021】
(5)発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御。
(6)先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御。
(7)障害物との衝突を回避する障害物回避制御。
【0022】
電動倍力装置100は、エンジンルームと車室とを区画する隔壁であるダッシュパネル9を貫通して、マスタシリンダ2側がエンジンルーム内に、その反対側の入力ロッド10側が車室内に位置するようにスタッドボルト11によってダッシュパネル9に固定されている。入力ロッド10には、クレビス12を介しブレーキペダル13が連結されている。
【0023】
図2、図3は、それぞれ本実施例の電動倍力装置100の回転‐直動機構1Aの側面図、斜視図である。本実施例の回転‐直動機構1Aは、ねじ送り機構を構成するボールねじ機構16及び電動モータ14を有し、該ボールねじ機構16及び電動モータ14の中心軸線がマスタシリンダ2の中心軸線と平行に配置されている。ボールねじ機構16は、電動モータ14により歯車列15(歯車15a、15b、15c)を介して回転駆動されるがその軸方向移動は阻止されている雄ねじ部材16bと、該雄ねじ部材16bに多数のボールを介して螺合せしめられた可動ナット部材16aとからなっており、電動モータ14の回転に伴って可動ナット部材16aが雄ねじ部材16bのねじ送りにより前後方向に往復運動する。
【0024】
ボールねじ機構16の可動ナット部材16aの往復運動は、左右一対のレバー18、18及び押圧入力部材17を介してピストン7に伝達され、ピストン7がマスタシリンダ2内部を往復運動する。本実施例ではボールねじ機構16の可動ナット部材16aを挟むように左右一対のレバー18、18を配置したが、一つのレバー18で本機構を構成してもかまわない。電動モータ14は、例えば公知のDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等とすることができるが、電気部品の簡略化の観点から、本実施例ではDCモータを採用している。なお、電動モータ14はモータ以外のアクチュエータに代替しても同等の機能とすることができる。
【0025】
図4は、押圧入力部材17の外観を示す斜視図である。押圧入力部材17は、ピストン押圧部17c、入力ロッド10の受け部17b、レバー18の案内溝18c(後述)内を移動するローラ17aで構成されている。本実施例では、左右一対のレバー18、18に対応して押圧入力部材17の左右両端にそれぞれローラ17aが配置されている。そして、左右のローラ17a-17aを結ぶ直線が、ピストン押圧部17cと入力ロッド10の受け部17bを結ぶ直線と直交するように、ローラ(ピン)17a、17aが配置されている。かかる構成とすることでローラ17a-17aを結ぶ直線とマスタシリンダ2の中心軸線とが直交するため、押圧入力部材17はマスタシリンダ2の軸方向にピストン7を押動することができる。なお、本実施例では押圧入力部材17をピストン7と別部材としているが、押圧入力部材17とピストン7を一体化してもよい。
【0026】
上記レバー18は、図2、図5等を参照すればよくわかるように、その一端側に、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに設けられたピン16dを回転自在に支持する転がり軸受18aが設けられ、その他端側にローラ(ピン)18bが設けられ、レバー18上には、上記転がり軸受18a(又はピン16d)で構成される力点Qと、上記ローラ(ピン)18bで構成される可動支点Rと、案内溝18c内を相対移動する押圧入力部材17のローラ(ピン)17aで構成される作用点Pとが存在する。
【0027】
そして、ローラ18b(可動支点R)は、回転‐直動機構1Aに設けられ、マスタシリンダ2の中心軸線と直交する平面上である、固定部材23の転動面23aを転動する。本実施例では、電動モータ14を固定する部品が固定部材23と同一され、その一部にローラ18bの転動面23aが形成されている。なお、図示例では、可動ナット部材16a側にピン16dが設けられ、レバー18側に軸受18aが設けられているが、それとは逆に、可動ナット部材16a側に軸受を設け、レバー18側にピンを設けてもよい。また、レバー18に、固定部材23に設けたローラが転動する溝、長穴等を設けてもよい。
【0028】
次に、レバー18の案内溝18cの形状について説明する。レバー18はボールねじ機構16の可動ナット部材16aの推進力をピストン7に伝達すると同時に、マスタシリンダ2で発生する油圧をボールねじ機構16の可動ナット部材16aに伝達する。ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに力を伝達するとき、力のベクトル方向をボールねじ機構16の軸方向のみとしなければ、ボールねじ機構16の信頼性が低下する要因やボールねじ機構16での異音の発生要因となる。したがって、押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触により形成される力の方向をマスタシリンダ2の中心軸線と平行にしなければならない。
【0029】
図5は、上記条件を満たすレバー18の案内溝18cの形状を、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aとの連結部を原点とした二次元座標系で示した図である。ピストン7及びボールねじ機構16の可動ナット部材16aが上死点の位置にあり、ピストン7及びボールねじ機構16に力が発生しない状態において、マスタシリンダ2の中心軸線とボールねじ機構16の雄ねじ部材16bの距離をL_1(_の次の数字は下付添字を表わす)、可動支点Rの位置のx座標をL_2、力点に対する作用点の軸方向(マスタシリンダ2の軸方向)位置をL_3、力点に対する可動支点Rのy方向(マスタシリンダ2の軸方向)のシフト量をL_4とすると、作用点の軌跡は媒介変数θを用いて次の式であらわされ、押圧入力部材17のローラ17aの直径を併せて考慮することでレバー18の案内溝18cの形状を決定できる。
【0030】
【0031】
また、ピストン7のストロークδ1、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークδ2は媒介変数θを用いて次の式であらわされる。
【0032】
【0033】
図6は、以上の式を用いて作成した回転‐直動機構における、ピストン7の推力及び可動ナット部材16aの推力とボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークの関係である。本例のレバー18は、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aが移動すると可動支点Rがマスタシリンダ2の中心軸に近づく構造であるため、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aの位置により、可動支点R〜力点Q距離と可動支点R〜作用点P距離の比(可動支点R〜力点Q距離÷可動支点R〜作用点距離)であらわされるてこ比が変化する。
【0034】
そして、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aが上死点から移動するにつれて、てこ比が大きくなる特性がある。したがって、ピストン7に負荷する推力はてこ比が一定の場合と比べて大きくなる。また、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに負荷する可動ナット部材16a推力は極大値を持ち、極大値を超えると、ピストン7推力が増加するにもかかわらず、可動ナット部材16aの推力が下がる特性を持つ。
【0035】
次に、寸法パラメータとてこ形状の関係について説明する。図7及び図8は力点Q位置に対する可動支点R位置のシフト量を変化させ、マスタシリンダ2に対する可動ナット部材16aの動作開始位置を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図7は、ピストン7が上死点にあるときであり、図8はピストン7が下死点にあるときである。なお、図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図7と図8で同一である。図7及び図8を見ると、力点Qの動作開始位置がマスタシリンダ2から離れるほど、可動支点Rの動作範囲が短くなることが分かる。また、力点Qの動作開始位置がマスタシリンダ2から離れるほど、レバー18が大型化することが分かる。
【0036】
図9及び図10は、力点Q位置に対する可動支点R位置のシフト量を変化させ、マスタシリンダ2に対する可動支点Rの位置を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図9はピストン7が上死点にあるときであり、図10はピストン7が下死点にあるときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図9と図10で同一である。図9及び図10を見ると、可動支点Rの位置〜作用点Pの位置の軸方向距離が少ないほど、可動支点Rの動作範囲が長くなることが分かる。
【0037】
図11及び図12はボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークを変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図11はピストン7が上死点のときであり、図12はピストン7が下死点のときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図11と図12で同一である。図11及び図12を見ると、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aストロークが増加すると、レバー18の可動支点R付近の形状が変化し、レバー18が大型化することが分かる。
【0038】
図13及び図14はマスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図13はピストン7が上死点にあるときであり、図14はピストン7が下死点にあるときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図13と図14で同一である。なお、ボールねじ機構16の軸は、マスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が最も狭い場合のみ図示してある。図13及び図14を見ると、マスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が増加すると可動支点Rの移動距離が増加することが分かる。一方、レバー18の外形はマスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が増加してもあまり変化しないことが分かる。
【0039】
以上より、図6によりレバー18の案内溝18cの形状を決定し、図7〜図14を用いて、回転‐直動機構1Aに使用できる空間容積を満足するレバー18の外形を決定した。また、使用する電動モータ14と図6を勘案することで、電動モータ14とボールねじ機構16を繋ぐ歯車列15を構成する歯車15a、歯車15b、歯車15cの径を決定した。
【0040】
以上のように構成した本実施例の動作及び作用効果について説明する。
通常の制動時には、図1に示すように、運転者により、ブレーキペダル13が操作されると、その操作量をセンサ36によって検出し、コントローラにより、ブレーキペダル13の操作量に応じて、出力を監視しながら、電動モータ14の回転駆動を制御する。そして、電動モータ14によって歯車列15を介してボールねじ機構16を駆動し、レバー18を介して、押圧入力部材17によってピストン7を押圧してマスタシリンダ2に液圧を発生させ、液圧制御ユニット5を介して各車輪のブレーキ装置6に液圧を供給して制動力を発生させる。
【0041】
このとき、ブレーキペダル13には、その操作量に応じてストロークシミュレータの反力バネのバネ力による一定の反力が付与されるので、運転者は、ブレーキペダル13の操作量を調整することにより、所望の制動力を発生させることができる。
【0042】
また、コントローラが、ブレーキペダル13の操作量に対する電動モータ14の制御量を変化させることにより、ハイブリッド自動車や電気自動車において減速時に車輪の回転によって発電機を駆動して、運動エネルギーを電力として回収する回生制動時に回生制動分だけマスタシリンダ2の液圧を減圧して所望の制動力を得る回生協調制御を実行することができる。この場合にも、ブレーキペダル13には、その操作量に応じてストロークシミュレータの反力バネのバネ力による一定の反力が付与されるので、運転者に違和感を与えることがない。
【0043】
また、ボールねじ機構16に負荷される力は軸方向のみとなり、ボールねじ機構16で異音を発生することなく、また長期信頼性を満足する。
【0044】
<第2実施例>
本第2実施例では、第1実施例と異なる形態のレバー18を使用した回転‐直動機構の例を説明する。
【0045】
図15は、第2実施例の回転‐直動機構1Bを示す構成例を示す。図1の電動倍力装置100のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第2実施例では、レバー18はボールねじ機構16の可動ナット部材16aと連結される転がり軸受18aで構成される力点Qと、ローラ18bで構成される可動支点Rと、作用点Pとなる押圧入力部材17のローラ17aが摺動回転自在に嵌挿される案内溝18cとを備える。また、電動モータ(図示せず)はレバー18に挟まれた状態でボールねじ機構16の隣に設置されている。また、レバー18の案内溝18cの形状は実施例1と同様の手法により算出し、押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触により形成される力のベクトル方向をマスタシリンダ2の中心軸と平行となるようにされている。
以上の構成により、第1実施例と同様な作用効果を得ることができる。
【0046】
<第3実施例>
本第3実施例では、レバー18の案内溝18cの形状を実施例1と異なるものとした例を説明する。
【0047】
図16は、本第3実施例におけるレバー18の案内溝18cの形状を示している。前述した図1に示される各部と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第3実施例では、第1実施例で計算された案内溝18cの形状を近似した円弧により形成した例である。案内溝18cの形状を近似曲線で形成する場合、第1実施例で計算された案内溝18cの形状とのずれが大きいほど、ボールねじ機構16に径方向の力が作用し、異音の発生要因や信頼性の低下要因となる。また、可動ナット部材16aのストローク位置が小さいほどボールねじ機構16に加わる力は小さくなり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は小さくなる。また、可動ナット部材16aのストローク位置が大きいほどボールねじ機構16に加わる力は大きくなり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は大きくなる。
【0048】
したがって、第1実施例のレバー18の案内溝18cの形状を近似曲線で形成するためには、可動ナット部材16aのストローク位置が大きいほど高精度に近似すれば良い。図16は実施例1の案内溝18cの形状を円弧で近似した例であり、ピストン7が上死点にあるときの作用点位置が、実施例1の案内溝18cの形状からのずれ量が大きくなっている。しかし、ピストン7が上死点のときの押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触位置とマスタシリンダ2の中心軸のずれ量は1度程度であり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は非常に小さい。
【0049】
以上のレバー18の案内溝18cの形状を用いた回転‐直動機構1Cにより構成される本第3実施例の電動倍力装置においても、第1実施例と略同様な作用効果が得られる。なお、本実施例では円弧によりレバー18の案内溝18cの形状を近似したが、二次曲線等の高次の曲線で近似しても同等の作用効果が得られる。
【0050】
<第4実施例>
本第4実施例では、実施例1と異なる形態のレバー18を使用した回転‐直動機構の例を説明する。
【0051】
図17は、第4実施例におけるレバー18の斜視図である。前述した図1に示される各部と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第4実施例では、第1実施例で計算された案内溝18cの形状を有するレバー18を補強した例である。
【0052】
図18に、比較のため、第1実施例のレバー18を示す。第1実施例のレバー18においては、案内溝18cの位置によっては肉厚が薄くなる部分が生じる。図19は、第1実施例のレバー18が最大負荷の位置で、マスタシリンダ2内部の圧力が24.5MPaの場合に相当する負荷を受けた場合の応力解析結果である。図19に示されるように、レバー18の肉厚の薄い部分に最大応力が発生することがわかる。したがって、レバー18の肉厚の薄い部分の最大応力が疲労限以下となるようにレバー18の形状を決めなければならない。
【0053】
図17に示される本第4実施例のレバー18では、レバー18の一側面に、案内溝18c部分を覆うように補強用側壁部18dを設け、レバー18に発生する応力を低減した。図20は、側壁部18dの厚さを2mmとし、図19と同じ条件で強度解析した結果である。第1実施例の場合の最大応力が850MPa程度である一方で、本第4実施例の場合の最大応力は300MPa程度であり、応力が半分以下に低減されていることがわかる。
【0054】
補強されたレバー18を用いた回転‐直動機構1Dにより構成される電動倍力装置においては、レバー18に用いる材料を低強度のものとすることができ、低コスト化を図れる。なお、本実施例では底板18dを一体で設けているが、底板18dをレバー18と別体とし、ボルト等によりレバー18に締結する構造としても同等とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
100 電動倍力装置
2 マスタシリンダ
3 液圧ポート
4 液圧ポート
5 液圧制御ユニット
6 ブレーキ装置
7 ピストン
8 リザーバ
9 ダッシュパネル
13 ブレーキペダル
14 電動モータ
15 歯車列
16 ボールねじ機構
17 押圧入力部材
18 レバー
18c 案内溝
P 作用点
Q 力点
R 支点
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置等に組み込むのに好適な倍力装置に係り、特に倍力源として電動モータ等のアクチュエータを用いた電動倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置に組み込まれる電動倍力装置として、特許文献1に所載のものがある。この電動倍力装置は、電動モータと、軸方向を拘束されて前記電動モータの出力軸に連結される回転部材に軸線回りの回転を拘束された軸方向移動部材が多数のボールを介して螺合されて成るボールねじ機構とを備え、マスタシリンダの押圧入力部材にブレーキ操作部材に連なる入力レバー及び前記軸方向移動部材が連結される電動倍力装置において、電動モータ及びボールねじ機構がマスタシリンダと平行な軸線をそれぞれ有してマスタシリンダに並列配置され、入力レバー及び軸方向移動部材が、電動モータの作動に伴う軸方向移動部材の前進方向への押圧力をマスタシリンダの押圧入力部材に及ぼし、ブレーキ液圧を発生させて所望の制動力を得る。
【0003】
そして、ブレーキペダルの操作量に対して、コントローラにより電動モータの出力を適宜調整することにより、いわゆる倍力比を変化させることができ、倍力制御、ブレーキアシスト制御、回生協調制御等の種々のブレーキ制御を実行することができる。このとき、回生協調制御等によって電動モータの出力が変動した場合でも、ブレーキペダルの操作量に対して、ストロークシミュレータによって一定の反力を付与しているので、運転者に違和感を与えることがない。
【0004】
また、万が一、電気系統等の失陥により、電動モータが作動不能になった場合には、ブレーキペダルに連結された入力レバーによって押圧入力部材を直接押圧することで、マスタシリンダのピストンを前進させることができ、制動機能を維持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3611386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に所載の電動倍力装置では、次のような解決すべき課題がある。すなわち、マスタシリンダとボールねじ機構が平行に配設される場合、マスタシリンダとボールねじ機構を繋ぐ杆に、杆を回転させるモーメントが発生し、ボールねじ機構の軸方向移動部材及びピストンに軸方向とは異なる方向に力が発生する。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、マスタシリンダ内部でピストンが傾くことがある。このような場合には、ピストンを進退動させるために必要な力をマスタシリンダ内の油圧による力よりも大きくする必要があり、電動倍力装置の動作特性を悪化させる要因となる。
【0007】
本発明は、上記問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、動作特性の向上等を図ることのできる電動倍力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電動倍力装置は、基本的には、ベースと、前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出してマスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する電動アクチュエータと、第1係合部、第2係合部、及び第3係合部とを有するレバー部材と、前記ベースに設けられたベース係合部と前記第1係合部とに係合して前記ベースと前記レバー部材とを係合させる第1のピンと、前記突出部に設けられた突出部係合部と前記第2係合部とに係合して前記突出部と前記レバー部材とを係合させる第2のピンと、前記可動部に設けられた可動部係合部と前記第3係合部とに係合して前記可動部と前記レバー部材とを係合させる第3のピンと、を備え、前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置、及び前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状が設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動倍力装置によれば、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにでき、そのため、異音の低減化、動作特性の向上等を図ることができる。
上記した以外の、課題、構成、及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電動倍力装置の一実施形態(第1実施例)を、それが適用された車両のブレーキ装置の一例と共に示す概略構成図。
【図2】第1実施例の電動倍力装置の主要部概略側面図。
【図3】第1実施例の電動倍力装置の主要部概略斜視図。
【図4】第1実施例における押圧入力部材の斜視図。
【図5】第1実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図6】第1実施例におけるピストン推力及びナット推力とナットストロークの関係の説明に供される図。
【図7】第1実施例におけるレバー形状と力点位置の関係説明図。
【図8】第1実施例におけるレバー形状と力点位置の関係説明図。
【図9】第1実施例におけるレバー形状と支点位置の関係説明図。
【図10】第1実施例におけるレバー形状と支点位置の関係説明図。
【図11】第1実施例におけるレバー形状とナットストロークの関係説明図。
【図12】第1実施例におけるレバー形状とナットストロークの関係説明図。
【図13】第1実施例におけるレバー形状とマスタシリンダ〜ボールねじ機構の距離の関係説明図。
【図14】第1実施例におけるレバー形状とマスタシリンダ〜ボールねじ機構の距離の関係説明図。
【図15】第2実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図16】第3実施例のレバー形状の説明に供される図。
【図17】第4実施例のレバーを示す斜視図。
【図18】比較例としての第1実施例のレバーを示す斜視図。
【図19】第1実施例のレバーの応力解析結果の説明に供される図。
【図20】第4実施例のレバーの応力解析結果の説明に供される図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の電動倍力装置は、上記特許文献1に所載の電動倍力装置では、次のような課題を解決するものである。すなわち、マスタシリンダとボールねじ機構が平行に配設される場合、マスタシリンダとボールねじ機構を繋ぐ杆に、杆を回転させるモーメントが発生し、ボールねじ機構の軸方向移動部材及びピストンに軸方向とは異なる方向に力が発生する。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、マスタシリンダ内部でピストンが傾くことがある。このような場合には、ピストンを進退動させるために必要な力をマスタシリンダ内の油圧による力よりも大きくする必要があり、電動倍力装置の動作特性を悪化させる要因となる。
【0012】
このような課題を解消すべく、本実施形態においては、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにして、動作特性の向上を図るものとなっている。
【0013】
また、上記特許文献1に所載の電動倍力装置のように、ピストンに軸方向と異なる方向の力が加えられる場合、次のような課題もあり、本実施形態の電動倍力装置は、これを解決するものである。ボールねじ機構に軸方向と異なる方向の力が加えられると、ボールと軸及びボールとナットの接触力が局部的に高くなり、局部摩耗や異音発生の要因となる場合がある。
【0014】
このような課題を解消すべく、本実施形態においては、ボールねじ機構等を有する電動アクチュエータに軸方向とは異なる方向に力が加えられないようにして、異音の低減化を図るものとなっている。
【0015】
<第1実施例>
図1は、電動倍力装置の一実施形態(第1実施例)を、それが適用された車両のブレーキ装置の一例と共に示す概略構成図である。本実施例の電動倍力装置100は、車両のブレーキ制御系1のマスタシリンダ2に結合される。マスタシリンダ2はタンデム型であり、プライマリ及びセカンダリの二つの液圧ポート3,4を有し、液圧ポート3,4には2系統の液圧回路を有する液圧制御ユニット5を介して、4つの車輪にそれぞれ設けられた液圧式のブレーキ装置6が接続されている。ブレーキ装置6は、液圧によって制動力を発生するディスクブレーキあるいはドラムブレーキ等で構成される。
【0016】
なお、以下の説明において、前、後、左、右は、特に断りがない限り当該電動倍力装置100付きのブレーキ制御系1を備えた車両の前、後、左、右を指すものとする。
【0017】
タンデム型のマスタシリンダ2には、直列に配置されたプライマリ及びセカンダリの一対のピストン7(プライマリ側のみが図2に示されている)が挿入され、これらのピストン7の前進により、2つの液圧ポート3,4から同じ液圧を供給し、ピストン7の後退時には、ブレーキパッドの摩耗などに応じてリザーバ8から適宜ブレーキ液を補充する。そして、万一、2系統の液圧回路の一方が失陥した場合でも、他方の液圧回路に液圧が供給されるので、制動機能を維持することができる。
【0018】
液圧制御ユニット5は、液圧源である電動ポンプ及び増圧弁、減圧弁等の電磁制御弁を備え、各車輪のブレーキ装置6に供給する液圧を減圧する減圧モード、保持する保持モード及び増圧する増圧モードを適宜実行して以下の制御を行う。
【0019】
(1)各車輪の制動力を制御することにより、制動時に設置荷重などに応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御。
(2)制動時に各車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定制御。
【0020】
(3)走行中の車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御。
(4)坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御。
【0021】
(5)発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御。
(6)先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御。
(7)障害物との衝突を回避する障害物回避制御。
【0022】
電動倍力装置100は、エンジンルームと車室とを区画する隔壁であるダッシュパネル9を貫通して、マスタシリンダ2側がエンジンルーム内に、その反対側の入力ロッド10側が車室内に位置するようにスタッドボルト11によってダッシュパネル9に固定されている。入力ロッド10には、クレビス12を介しブレーキペダル13が連結されている。
【0023】
図2、図3は、それぞれ本実施例の電動倍力装置100の回転‐直動機構1Aの側面図、斜視図である。本実施例の回転‐直動機構1Aは、ねじ送り機構を構成するボールねじ機構16及び電動モータ14を有し、該ボールねじ機構16及び電動モータ14の中心軸線がマスタシリンダ2の中心軸線と平行に配置されている。ボールねじ機構16は、電動モータ14により歯車列15(歯車15a、15b、15c)を介して回転駆動されるがその軸方向移動は阻止されている雄ねじ部材16bと、該雄ねじ部材16bに多数のボールを介して螺合せしめられた可動ナット部材16aとからなっており、電動モータ14の回転に伴って可動ナット部材16aが雄ねじ部材16bのねじ送りにより前後方向に往復運動する。
【0024】
ボールねじ機構16の可動ナット部材16aの往復運動は、左右一対のレバー18、18及び押圧入力部材17を介してピストン7に伝達され、ピストン7がマスタシリンダ2内部を往復運動する。本実施例ではボールねじ機構16の可動ナット部材16aを挟むように左右一対のレバー18、18を配置したが、一つのレバー18で本機構を構成してもかまわない。電動モータ14は、例えば公知のDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等とすることができるが、電気部品の簡略化の観点から、本実施例ではDCモータを採用している。なお、電動モータ14はモータ以外のアクチュエータに代替しても同等の機能とすることができる。
【0025】
図4は、押圧入力部材17の外観を示す斜視図である。押圧入力部材17は、ピストン押圧部17c、入力ロッド10の受け部17b、レバー18の案内溝18c(後述)内を移動するローラ17aで構成されている。本実施例では、左右一対のレバー18、18に対応して押圧入力部材17の左右両端にそれぞれローラ17aが配置されている。そして、左右のローラ17a-17aを結ぶ直線が、ピストン押圧部17cと入力ロッド10の受け部17bを結ぶ直線と直交するように、ローラ(ピン)17a、17aが配置されている。かかる構成とすることでローラ17a-17aを結ぶ直線とマスタシリンダ2の中心軸線とが直交するため、押圧入力部材17はマスタシリンダ2の軸方向にピストン7を押動することができる。なお、本実施例では押圧入力部材17をピストン7と別部材としているが、押圧入力部材17とピストン7を一体化してもよい。
【0026】
上記レバー18は、図2、図5等を参照すればよくわかるように、その一端側に、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに設けられたピン16dを回転自在に支持する転がり軸受18aが設けられ、その他端側にローラ(ピン)18bが設けられ、レバー18上には、上記転がり軸受18a(又はピン16d)で構成される力点Qと、上記ローラ(ピン)18bで構成される可動支点Rと、案内溝18c内を相対移動する押圧入力部材17のローラ(ピン)17aで構成される作用点Pとが存在する。
【0027】
そして、ローラ18b(可動支点R)は、回転‐直動機構1Aに設けられ、マスタシリンダ2の中心軸線と直交する平面上である、固定部材23の転動面23aを転動する。本実施例では、電動モータ14を固定する部品が固定部材23と同一され、その一部にローラ18bの転動面23aが形成されている。なお、図示例では、可動ナット部材16a側にピン16dが設けられ、レバー18側に軸受18aが設けられているが、それとは逆に、可動ナット部材16a側に軸受を設け、レバー18側にピンを設けてもよい。また、レバー18に、固定部材23に設けたローラが転動する溝、長穴等を設けてもよい。
【0028】
次に、レバー18の案内溝18cの形状について説明する。レバー18はボールねじ機構16の可動ナット部材16aの推進力をピストン7に伝達すると同時に、マスタシリンダ2で発生する油圧をボールねじ機構16の可動ナット部材16aに伝達する。ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに力を伝達するとき、力のベクトル方向をボールねじ機構16の軸方向のみとしなければ、ボールねじ機構16の信頼性が低下する要因やボールねじ機構16での異音の発生要因となる。したがって、押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触により形成される力の方向をマスタシリンダ2の中心軸線と平行にしなければならない。
【0029】
図5は、上記条件を満たすレバー18の案内溝18cの形状を、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aとの連結部を原点とした二次元座標系で示した図である。ピストン7及びボールねじ機構16の可動ナット部材16aが上死点の位置にあり、ピストン7及びボールねじ機構16に力が発生しない状態において、マスタシリンダ2の中心軸線とボールねじ機構16の雄ねじ部材16bの距離をL_1(_の次の数字は下付添字を表わす)、可動支点Rの位置のx座標をL_2、力点に対する作用点の軸方向(マスタシリンダ2の軸方向)位置をL_3、力点に対する可動支点Rのy方向(マスタシリンダ2の軸方向)のシフト量をL_4とすると、作用点の軌跡は媒介変数θを用いて次の式であらわされ、押圧入力部材17のローラ17aの直径を併せて考慮することでレバー18の案内溝18cの形状を決定できる。
【0030】
【0031】
また、ピストン7のストロークδ1、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークδ2は媒介変数θを用いて次の式であらわされる。
【0032】
【0033】
図6は、以上の式を用いて作成した回転‐直動機構における、ピストン7の推力及び可動ナット部材16aの推力とボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークの関係である。本例のレバー18は、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aが移動すると可動支点Rがマスタシリンダ2の中心軸に近づく構造であるため、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aの位置により、可動支点R〜力点Q距離と可動支点R〜作用点P距離の比(可動支点R〜力点Q距離÷可動支点R〜作用点距離)であらわされるてこ比が変化する。
【0034】
そして、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aが上死点から移動するにつれて、てこ比が大きくなる特性がある。したがって、ピストン7に負荷する推力はてこ比が一定の場合と比べて大きくなる。また、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aに負荷する可動ナット部材16a推力は極大値を持ち、極大値を超えると、ピストン7推力が増加するにもかかわらず、可動ナット部材16aの推力が下がる特性を持つ。
【0035】
次に、寸法パラメータとてこ形状の関係について説明する。図7及び図8は力点Q位置に対する可動支点R位置のシフト量を変化させ、マスタシリンダ2に対する可動ナット部材16aの動作開始位置を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図7は、ピストン7が上死点にあるときであり、図8はピストン7が下死点にあるときである。なお、図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図7と図8で同一である。図7及び図8を見ると、力点Qの動作開始位置がマスタシリンダ2から離れるほど、可動支点Rの動作範囲が短くなることが分かる。また、力点Qの動作開始位置がマスタシリンダ2から離れるほど、レバー18が大型化することが分かる。
【0036】
図9及び図10は、力点Q位置に対する可動支点R位置のシフト量を変化させ、マスタシリンダ2に対する可動支点Rの位置を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図9はピストン7が上死点にあるときであり、図10はピストン7が下死点にあるときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図9と図10で同一である。図9及び図10を見ると、可動支点Rの位置〜作用点Pの位置の軸方向距離が少ないほど、可動支点Rの動作範囲が長くなることが分かる。
【0037】
図11及び図12はボールねじ機構16の可動ナット部材16aのストロークを変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図11はピストン7が上死点のときであり、図12はピストン7が下死点のときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図11と図12で同一である。図11及び図12を見ると、ボールねじ機構16の可動ナット部材16aストロークが増加すると、レバー18の可動支点R付近の形状が変化し、レバー18が大型化することが分かる。
【0038】
図13及び図14はマスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離を変化させた場合のレバー18の形状変化を示した図である。図13はピストン7が上死点にあるときであり、図14はピストン7が下死点にあるときである。図中において、レバー18を重ねて描くことでレバー18の形状変化を示してあり、レバー18を重ねる順序は図13と図14で同一である。なお、ボールねじ機構16の軸は、マスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が最も狭い場合のみ図示してある。図13及び図14を見ると、マスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が増加すると可動支点Rの移動距離が増加することが分かる。一方、レバー18の外形はマスタシリンダ2〜ボールねじ機構16の軸の距離が増加してもあまり変化しないことが分かる。
【0039】
以上より、図6によりレバー18の案内溝18cの形状を決定し、図7〜図14を用いて、回転‐直動機構1Aに使用できる空間容積を満足するレバー18の外形を決定した。また、使用する電動モータ14と図6を勘案することで、電動モータ14とボールねじ機構16を繋ぐ歯車列15を構成する歯車15a、歯車15b、歯車15cの径を決定した。
【0040】
以上のように構成した本実施例の動作及び作用効果について説明する。
通常の制動時には、図1に示すように、運転者により、ブレーキペダル13が操作されると、その操作量をセンサ36によって検出し、コントローラにより、ブレーキペダル13の操作量に応じて、出力を監視しながら、電動モータ14の回転駆動を制御する。そして、電動モータ14によって歯車列15を介してボールねじ機構16を駆動し、レバー18を介して、押圧入力部材17によってピストン7を押圧してマスタシリンダ2に液圧を発生させ、液圧制御ユニット5を介して各車輪のブレーキ装置6に液圧を供給して制動力を発生させる。
【0041】
このとき、ブレーキペダル13には、その操作量に応じてストロークシミュレータの反力バネのバネ力による一定の反力が付与されるので、運転者は、ブレーキペダル13の操作量を調整することにより、所望の制動力を発生させることができる。
【0042】
また、コントローラが、ブレーキペダル13の操作量に対する電動モータ14の制御量を変化させることにより、ハイブリッド自動車や電気自動車において減速時に車輪の回転によって発電機を駆動して、運動エネルギーを電力として回収する回生制動時に回生制動分だけマスタシリンダ2の液圧を減圧して所望の制動力を得る回生協調制御を実行することができる。この場合にも、ブレーキペダル13には、その操作量に応じてストロークシミュレータの反力バネのバネ力による一定の反力が付与されるので、運転者に違和感を与えることがない。
【0043】
また、ボールねじ機構16に負荷される力は軸方向のみとなり、ボールねじ機構16で異音を発生することなく、また長期信頼性を満足する。
【0044】
<第2実施例>
本第2実施例では、第1実施例と異なる形態のレバー18を使用した回転‐直動機構の例を説明する。
【0045】
図15は、第2実施例の回転‐直動機構1Bを示す構成例を示す。図1の電動倍力装置100のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第2実施例では、レバー18はボールねじ機構16の可動ナット部材16aと連結される転がり軸受18aで構成される力点Qと、ローラ18bで構成される可動支点Rと、作用点Pとなる押圧入力部材17のローラ17aが摺動回転自在に嵌挿される案内溝18cとを備える。また、電動モータ(図示せず)はレバー18に挟まれた状態でボールねじ機構16の隣に設置されている。また、レバー18の案内溝18cの形状は実施例1と同様の手法により算出し、押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触により形成される力のベクトル方向をマスタシリンダ2の中心軸と平行となるようにされている。
以上の構成により、第1実施例と同様な作用効果を得ることができる。
【0046】
<第3実施例>
本第3実施例では、レバー18の案内溝18cの形状を実施例1と異なるものとした例を説明する。
【0047】
図16は、本第3実施例におけるレバー18の案内溝18cの形状を示している。前述した図1に示される各部と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第3実施例では、第1実施例で計算された案内溝18cの形状を近似した円弧により形成した例である。案内溝18cの形状を近似曲線で形成する場合、第1実施例で計算された案内溝18cの形状とのずれが大きいほど、ボールねじ機構16に径方向の力が作用し、異音の発生要因や信頼性の低下要因となる。また、可動ナット部材16aのストローク位置が小さいほどボールねじ機構16に加わる力は小さくなり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は小さくなる。また、可動ナット部材16aのストローク位置が大きいほどボールねじ機構16に加わる力は大きくなり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は大きくなる。
【0048】
したがって、第1実施例のレバー18の案内溝18cの形状を近似曲線で形成するためには、可動ナット部材16aのストローク位置が大きいほど高精度に近似すれば良い。図16は実施例1の案内溝18cの形状を円弧で近似した例であり、ピストン7が上死点にあるときの作用点位置が、実施例1の案内溝18cの形状からのずれ量が大きくなっている。しかし、ピストン7が上死点のときの押圧入力部材17のローラ17aとレバー18の案内溝18cの接触位置とマスタシリンダ2の中心軸のずれ量は1度程度であり、ボールねじ機構16の径方向に作用する分力は非常に小さい。
【0049】
以上のレバー18の案内溝18cの形状を用いた回転‐直動機構1Cにより構成される本第3実施例の電動倍力装置においても、第1実施例と略同様な作用効果が得られる。なお、本実施例では円弧によりレバー18の案内溝18cの形状を近似したが、二次曲線等の高次の曲線で近似しても同等の作用効果が得られる。
【0050】
<第4実施例>
本第4実施例では、実施例1と異なる形態のレバー18を使用した回転‐直動機構の例を説明する。
【0051】
図17は、第4実施例におけるレバー18の斜視図である。前述した図1に示される各部と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本第4実施例では、第1実施例で計算された案内溝18cの形状を有するレバー18を補強した例である。
【0052】
図18に、比較のため、第1実施例のレバー18を示す。第1実施例のレバー18においては、案内溝18cの位置によっては肉厚が薄くなる部分が生じる。図19は、第1実施例のレバー18が最大負荷の位置で、マスタシリンダ2内部の圧力が24.5MPaの場合に相当する負荷を受けた場合の応力解析結果である。図19に示されるように、レバー18の肉厚の薄い部分に最大応力が発生することがわかる。したがって、レバー18の肉厚の薄い部分の最大応力が疲労限以下となるようにレバー18の形状を決めなければならない。
【0053】
図17に示される本第4実施例のレバー18では、レバー18の一側面に、案内溝18c部分を覆うように補強用側壁部18dを設け、レバー18に発生する応力を低減した。図20は、側壁部18dの厚さを2mmとし、図19と同じ条件で強度解析した結果である。第1実施例の場合の最大応力が850MPa程度である一方で、本第4実施例の場合の最大応力は300MPa程度であり、応力が半分以下に低減されていることがわかる。
【0054】
補強されたレバー18を用いた回転‐直動機構1Dにより構成される電動倍力装置においては、レバー18に用いる材料を低強度のものとすることができ、低コスト化を図れる。なお、本実施例では底板18dを一体で設けているが、底板18dをレバー18と別体とし、ボルト等によりレバー18に締結する構造としても同等とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
100 電動倍力装置
2 マスタシリンダ
3 液圧ポート
4 液圧ポート
5 液圧制御ユニット
6 ブレーキ装置
7 ピストン
8 リザーバ
9 ダッシュパネル
13 ブレーキペダル
14 電動モータ
15 歯車列
16 ボールねじ機構
17 押圧入力部材
18 レバー
18c 案内溝
P 作用点
Q 力点
R 支点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出してマスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、
前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する
電動アクチュエータと、
第1係合部、第2係合部、及び第3係合部を有するレバー部材と、
前記ベースに設けられたベース係合部と前記第1係合部とに係合して前記ベースと前記レバー部材とを係合させる第1のピンと、
前記突出部に設けられた突出部係合部と前記第2係合部とに係合して前記突出部と前記レバー部材とを係合させる第2のピンと、
前記可動部に設けられた可動部係合部と前記第3係合部とに係合して前記可動部と前記レバー部材とを係合させる第3のピンと、を備え、
前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置、及び前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状が設定されていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項2】
前記他の2つの相対位置のうちの少なくとも1つは、前記相対位置の変位軌跡が曲線であることを特徴とする請求項1に記載の電動倍力装置。
【請求項3】
前記曲線が円弧であることを特徴とする請求項2に記載の電動倍力装置。
【請求項4】
前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置の変位軌跡は直線とされ、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置の変位軌跡は曲線とされ、前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置は変位不能とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動倍力装置。
【請求項5】
前記マスタシリンダの前記突出部の移動方向と前記電動アクチュエータの前記可動部の移動方向とが平行となるように前記マスタシリンダ本体と前記固定部は前記ベースに固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項6】
前記第2のピンと前記第2係合部とは、前記突出部の移動方向にて接触するようにされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項7】
前記第3のピンと前記第3係合部とは、前記可動部の移動方向にて接触するようにされていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項8】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出して前記マスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、
前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する電動アクチュエータと、
前記突出部と前記可動部と前記ベースとにそれぞれ係合するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、前記突出部との間で該突出部の移動方向にのみ力が加えられることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項9】
前記レバー部材は、前記可動部との間で該可動部の可動方向にのみ力が加えられることを特徴とする請求項8に記載の電動倍力装置。
【請求項10】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と、
該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出して前記マスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部と、
前記ベースに固定されボールねじを回動させるアクチュエータ本体と、
前記ボールねじの回動により前記突出部の突出方向と平行に直動する可動部と、
前記突出部と前記可動部と前記ベースとにそれぞれ係合するレバー部材と、
前記ベースに対し前記突出部材の突出方向と直交する方向に移動可能に設けられると共に、前記レバー部材に相対移動不能に嵌挿された第1のピンと、
前記突出部に相対移動不能に設けられると共に、前記レバー部材に形成された曲線状の案内溝内を移動可能に遊挿された第2のピンと、
前記可動部と前記レバー部材とを相対変位不能かつ相対回転可能に連結する第3のピンと、を備えていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項11】
前記曲線状の案内溝は、前記第2のピンが前記案内溝に対して前記突出部材の突出方向にのみ力が加えられるように前記第2のピンに接触する形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項12】
前記曲線状の案内溝は、前記マスタシリンダ本体側を中心とする円弧形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項13】
前記曲線状の案内溝は、前記第3のピンの中心を原点としたx-y座標系であらわすと、前記ボールねじの中心軸線と前記マスタシリンダの中心軸線との間の距離をL_1(_の次の数字は下付添字を表わす)、前記マスタシリンダ内部の油圧が大気圧と等しいときの前記第2のピンと前記第3のピンとの、前記マスタシリンダの中心軸線と同一方向の距離をL_2としたとき、レバーの傾き量θを媒介変数として、以下の式で表される形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項14】
前記レバー部材の一側面に、前記溝部分を覆うように補強用側壁部が設けられていることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出してマスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、
前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する
電動アクチュエータと、
第1係合部、第2係合部、及び第3係合部を有するレバー部材と、
前記ベースに設けられたベース係合部と前記第1係合部とに係合して前記ベースと前記レバー部材とを係合させる第1のピンと、
前記突出部に設けられた突出部係合部と前記第2係合部とに係合して前記突出部と前記レバー部材とを係合させる第2のピンと、
前記可動部に設けられた可動部係合部と前記第3係合部とに係合して前記可動部と前記レバー部材とを係合させる第3のピンと、を備え、
前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置、及び前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置のうちのいずれか1つの相対位置は変位不能かつ回転可能で、他の2つの相対位置は変位可能となるように各部の寸法形状が設定されていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項2】
前記他の2つの相対位置のうちの少なくとも1つは、前記相対位置の変位軌跡が曲線であることを特徴とする請求項1に記載の電動倍力装置。
【請求項3】
前記曲線が円弧であることを特徴とする請求項2に記載の電動倍力装置。
【請求項4】
前記ベース係合部と前記第1係合部との相対位置の変位軌跡は直線とされ、前記突出部係合部と前記第2係合部との相対位置の変位軌跡は曲線とされ、前記可動部係合部と前記第3係合部との相対位置は変位不能とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動倍力装置。
【請求項5】
前記マスタシリンダの前記突出部の移動方向と前記電動アクチュエータの前記可動部の移動方向とが平行となるように前記マスタシリンダ本体と前記固定部は前記ベースに固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項6】
前記第2のピンと前記第2係合部とは、前記突出部の移動方向にて接触するようにされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項7】
前記第3のピンと前記第3係合部とは、前記可動部の移動方向にて接触するようにされていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電動倍力装置。
【請求項8】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出して前記マスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部とを有するマスタシリンダと、
前記ベースに固定された固定部と該固定部に対して直動する可動部とを有する電動アクチュエータと、
前記突出部と前記可動部と前記ベースとにそれぞれ係合するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、前記突出部との間で該突出部の移動方向にのみ力が加えられることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項9】
前記レバー部材は、前記可動部との間で該可動部の可動方向にのみ力が加えられることを特徴とする請求項8に記載の電動倍力装置。
【請求項10】
ベースと、
前記ベースに固定されたマスタシリンダ本体と、
該マスタシリンダ本体の一端から伸縮可能に突出して前記マスタシリンダ本体内を摺動するピストンに接続された突出部と、
前記ベースに固定されボールねじを回動させるアクチュエータ本体と、
前記ボールねじの回動により前記突出部の突出方向と平行に直動する可動部と、
前記突出部と前記可動部と前記ベースとにそれぞれ係合するレバー部材と、
前記ベースに対し前記突出部材の突出方向と直交する方向に移動可能に設けられると共に、前記レバー部材に相対移動不能に嵌挿された第1のピンと、
前記突出部に相対移動不能に設けられると共に、前記レバー部材に形成された曲線状の案内溝内を移動可能に遊挿された第2のピンと、
前記可動部と前記レバー部材とを相対変位不能かつ相対回転可能に連結する第3のピンと、を備えていることを特徴とする電動倍力装置。
【請求項11】
前記曲線状の案内溝は、前記第2のピンが前記案内溝に対して前記突出部材の突出方向にのみ力が加えられるように前記第2のピンに接触する形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項12】
前記曲線状の案内溝は、前記マスタシリンダ本体側を中心とする円弧形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項13】
前記曲線状の案内溝は、前記第3のピンの中心を原点としたx-y座標系であらわすと、前記ボールねじの中心軸線と前記マスタシリンダの中心軸線との間の距離をL_1(_の次の数字は下付添字を表わす)、前記マスタシリンダ内部の油圧が大気圧と等しいときの前記第2のピンと前記第3のピンとの、前記マスタシリンダの中心軸線と同一方向の距離をL_2としたとき、レバーの傾き量θを媒介変数として、以下の式で表される形状であることを特徴とする請求項10に記載の電動倍力装置。
【請求項14】
前記レバー部材の一側面に、前記溝部分を覆うように補強用側壁部が設けられていることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の電動倍力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−43546(P2013−43546A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182512(P2011−182512)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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