電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置
【課題】 電動工具、電池パック、及び、インバータ装置から構成される電動工具システムを提供する。
【解決手段】
電動工具システムは、交流電力により駆動されるACモータ31を有する電動工具3と、携帯式の電池パック2と、電池パック2が接続されている場合に電池パック2からの直流電力を交流電力に変換してACモータ31に供給可能なインバータ装置16と、を備えている。このような構成により、AC電源が利用できない場所でもACモータ31を備えた電動工具3を駆動することが可能となる。
【解決手段】
電動工具システムは、交流電力により駆動されるACモータ31を有する電動工具3と、携帯式の電池パック2と、電池パック2が接続されている場合に電池パック2からの直流電力を交流電力に変換してACモータ31に供給可能なインバータ装置16と、を備えている。このような構成により、AC電源が利用できない場所でもACモータ31を備えた電動工具3を駆動することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AC電源からACモータに直接供給された交流電力により駆動される電動工具、例えば芝刈り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AC電源により駆動される芝刈り機は、電源コードが届く範囲でしか作業ができないため作業効率が悪い。
【0005】
一方、電池パックからの直流電力により駆動される芝刈り機も知られている。このような芝刈り機の場合、芝刈り機(モータ)を起動させた際に電池パックに大電流が流れ、電池パックの寿命に悪影響を与えてしまう。
【0006】
本発明は、AC電源が利用できない場所でもACモータを備えた電動工具を駆動することのできる携帯可能な電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、交流電力により駆動されるACモータを有する電動工具と、携帯式の電池パックと、前記電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能な電源装置と、を備えたことを特徴とする電動工具システムを提供している。
【0008】
このような構成によれば、AC電源が利用できない場所でも、電池パック、電源装置及び電動工具を互いに接続することにより、移動しながら電動工具を駆動して作業を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記電動工具は、ユーザにより操作可能なトリガスイッチを備え、前記電源装置は、 前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、起動時にACモータに流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パックや電源装置にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0011】
また、前記電源装置は、 前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、を更に備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流によるインバータ回路への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させ寿命低下を抑制することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流による第1のスイッチング素子への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させることができる。
【0015】
また、前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流による第2のスイッチング素子への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させることができる。
【0017】
また、前記電源装置は、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、電池パックの過放電を防止することができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、電池パックの寿命の低下を更に抑制することができる。
【0021】
また、前記電源装置は、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、を更に備えたことが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、電流値が過電流閾値を上回った場合にインバータ回路からの交流電力の出力を停止させるので、インバータ回路が故障することを防止することができる。
【0023】
また、前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、インバータ回路からの交流電力の出力が停止された後、所定時間経過後にインバータ回路からの交流電力の出力を復帰させるので、インバータ装置の起動時にソフトスタートを実現させることができる。
【0025】
また、前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、高負荷時に停止及び解除動作を繰り返して電力を浪費することを防止することができる。
【0027】
また、前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、インバータ装置の起動時にソフトスタートを実現させることができる。
【0029】
また、本発明の別の観点によれば、交流電力により駆動されるACモータと、ユーザにより操作可能なトリガスイッチと、を有する電動工具に接続可能な電源装置であって、携帯式の電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能なインバータ回路と、前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする電源装置を提供している。
【0030】
また、前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、を更に備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0031】
また、前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0032】
また、前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0033】
また、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0034】
また、前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0035】
また、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、を更に備えたことが好ましい。
【0036】
また、前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことが好ましい。
【0037】
また、前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことが好ましい。
【0038】
また、前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の電源装置によれば、AC電源が利用できない場所でもACモータを備えた電動工具を駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1(a)】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置を搭載した電動工具の側面図。
【図1(b)】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置を電動工具から取り外した状態を説明する図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置と芝刈り機の回路図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるインバータの出力電圧のタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図6】本発明の第2の実施の形態による出力の停止制御について説明するタイムチャート
【図7】本発明の第2の実施の形態による出力の停止制御について説明するフローチャート
【図8】本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図9(a)】起動電流について説明するタイムチャート
【図9(b)】本発明の第3の実施の形態による起動時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図9(c)】本発明の第3の実施の形態による起動時のモータ回転数の変化について説明するタイムチャート
【図9(d)】本発明の第3の実施の形態による高負荷時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図10】本発明の第3の実施の形態によるインバータ回路の停止制御について説明するフローチャート
【図11】本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図12】本発明の第4の実施の形態によるFETがオンすることを防止する判定基準を示す説明図
【図13】本発明の第4の実施の形態による出力の停止制御について説明するフローチャート
【図14】本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図15】本発明の第5の実施の形態による出力の防止制御について説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1乃至図4を用いて、本発明の第1の実施の形態による電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置について説明する。第1の実施の形態による電動工具システムでは、本発明の電源装置としてのインバータ装置1によって、電池パック2からの直流電力を交流電力に変換して、電動工具3のACモータ31に供給するものとする。なお、本実施の形態では、電動工具として、芝刈り機を用いて説明するが、芝刈り機に限定されず、ヘッジトリマ、丸鋸、ジグソー、グラインダー、ドライバ等でも適用でき、トリガスイッチを有し交流電力で駆動されるものであればよい。
【0042】
図1(a)は、インバータ装置1が接続された電動工具3の側面図である。電動工具3には、ラッチにより着脱可能なインバータ装置1が搭載されている。作業者はハンドル5を把持し後述のトリガスイッチ32を操作することによって、電池パック2からの電力がインバータ装置1を介してモータ31に供給される。電動工具3には、進行方向前方側に設けられた前輪6と、後方側に設けられた後輪7が設けられ、移動可能に構成されている。また、電動工具3の進行方向後方側には、図示しない回転刃によって刈られた草等を集めるための集草バック8が着脱可能に設けられている。また、図1(b)に示すように、インバータ装置1は、電動工具3から取り外した状態で携帯可能とするための肩掛けベルト1Aを備えている。
【0043】
図2は、インバータ装置1の回路図である。本実施の形態では、電動工具3のトリガスイッチ32が操作されると、インバータ装置1は、電池パック2から供給された直流電力をインバータ装置1によって交流電力に変換し、電動工具3のACモータ31に供給する。インバータ装置1、電動工具3、及び、電池パック2は、それぞれ着脱可能であるが、以下では、それぞれが接続されているものとして説明する。
【0044】
インバータ装置1は、電池電圧検出部11と、電源部12と、昇圧回路13と、整流・平滑回路14と、昇圧電圧検出部15と、インバータ回路16と、電流検出抵抗17と、PWM信号出力部18と、制御部19と、電源スイッチ検出ダイオード10と、トリガ検出部9と、を備えている。
【0045】
電池電圧検出部11は、電池電圧検出抵抗111及び112を備えている。電池電圧検出抵抗111及び112は、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に直列に接続されており、電池パック2の電池電圧の、電池電圧検出抵抗111と電池電圧検出抵抗112とによる分圧電圧を制御部19に出力する。なお、図1に示す電池パック2は、3.6V/セルのリチウム電池セルが4本直列接続され、定格電圧14.4Vを出力する。
【0046】
電源部12は、電池パック2のプラス側端子21と制御部19との間に直列に接続された電源スイッチ121及び定電圧回路122を備えている。定電圧回路122は、三端子レギュレータ122aと、発振防止用コンデンサ122b及び122cと、を備えており、ユーザにより電源スイッチ121がオンされると、電池パック2からの電圧を所定の直流電圧(例えば5V)に変換し、制御部19に駆動電力として供給する。なお、電源スイッチ121がオフされると、制御部19に駆動電力が供給されなくなるので、インバータ装置1全体がオフされることとなる。
【0047】
昇圧回路13は、トランス131と、FET132と、を備えており、トランス131は、一次側巻線131aと、二次側巻線131bと、を備えている。一次側巻線131aは、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に接続されており、トランス131の一次側巻線131aとマイナス側端子22の間には、更に、FET132が配置されている。FET132のゲートには、FET132をオン・オフさせるための第1のPWM信号が制御部19から入力され、FET132のオン・オフにより、電池パック2からトランス131の一次側巻線131aに供給された直流電力は、一次側巻線131aと二次側巻線131bとの巻数比に応じて変圧されて二次側巻線131bから出力される。
【0048】
整流・平滑回路14は、整流ダイオード141及び142と、平滑コンデンサ143と、を備えており、これらにより、トランス131により昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力(例えば昇圧電圧140V)として出力する。
【0049】
昇圧電圧検出部15は、互いに直列接続された抵抗151及び152から構成されており、整流・平滑回路14から出力された直流の昇圧電圧(平滑コンデンサ電圧、例えば141V)を検出し、昇圧電圧の、抵抗151と抵抗152とによる分圧電圧を制御部19に出力する。
【0050】
インバータ回路16は、4つのFET161−164から構成されており、直列に接続されたFET161及び162と、直列に接続されたFET163及び164とが、平滑コンデンサ143に並列に接続されている。詳細には、FET161のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET161のソースは、FET162のドレインに接続されている。また、FET163のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET163のソースは、FET164のドレインに接続されている。
【0051】
更に、FET161のソース及びFET162のドレイン、FET163のソース及びFET164のドレインは、それぞれ、出力端子165、166と接続されており、出力端子165、166は、ACモータ31に接続されている。FET161−164のゲートには、FET161−164をオン・オフさせるための第2のPWM信号がPWM信号出力部18から入力され、FET161−164のオン・オフにより、整流・平滑回路14から出力された直流電力は交流電力に変換されて電動工具3(ACモータ31)に出力される。
【0052】
電流検出抵抗17は、FET162のソース及びFET164のソースと、電池パック2のマイナス側端子22との間に接続されており、電流検出抵抗17の高電圧側の端子は制御部19と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗17は、ACモータ31に流れる電流を検出し、電圧として制御部19に出力する。
【0053】
電源スイッチ検出ダイオード10は、アノードが電源スイッチ121の低圧側に接続され、カソードが電動工具3のACモータ31に出力端子165を介して接続されている。このような構成により、電源スイッチ121がオンされた場合には、ACモータ31に電池パック2からの電池電圧が印加されることとなる。また、電源スイッチ検出ダイオード10のカソードは、FET161のソースとも接続されているため、FET161がオンしている場合には、整流・平滑回路14から出力された昇圧された電力がACモータ31に印加されることとなる。
【0054】
なお、電源スイッチ検出ダイオード10を含み、電源スイッチ121がオンされた場合に電池電圧をACモータ31に印加する回路がバイパス回路を構成する。具体的には、電源スイッチ121の低圧側に接続され、電源スイッチ検出ダイオード10及びトリガスイッチ32を介してACモータ31に接続される回路をバイパス回路としている。このような構成により、電源スイッチ121がオンされない限り電池電圧はACモータ31側に印加されないため、インバータ装置1が駆動していない状態での電池パック2の無駄な電力消費を抑えることができる。
【0055】
トリガ検出部9は、FET164と並列に接続されている。詳細には、トリガ検出部9は、ACモータ31(すなわち、出力端子166)とFET164のソース(すなわち、GND)との間に直列に接続された抵抗91及び92から構成されており、トリガスイッチ32が操作された場合に、抵抗91と抵抗92による分圧電圧をトリガ検出信号として制御部19に出力する。すなわち、電池パック2の電池電圧は、バイパス回路を介してトリガスイッチ32の一端と接続されている。トリガスイッチ32がオンになると、電池パック2の電池電圧は、バイパス回路、トリガスイッチ32、ACモータ31を介してトリガ検出部9に印加される。この印加された電圧を抵抗91及び92により分圧することでトリガ検出信号として検出し、制御部19に出力する。
【0056】
また、本実施の形態では、バイパス回路をFET161のソース側に接続し、トリガ検出部9をFET164に並列に接続したが、バイパス回路をFET163のソース側に接続し、トリガ検出部9をFET162と並列に接続してもよい。
【0057】
制御部19は、昇圧電圧検出部15によって検出された昇圧電圧に基づき、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力する。また、制御部19は、目標実効値(例えば、100V)を有する交流電力がACモータ31に出力されるような第2のPWM信号をPWM信号出力部18を介してFET161−164のゲートに出力する。本実施の形態では、制御部19は、FET161とFET164(以降、第1のセット)と、FET162とFET163(以降、第2のセット)とを、それぞれ1セットとして、第1のセットと第2のセットをデューティ比100%で交互にオン・オフさせるような第2のPWM信号を出力する。
【0058】
また、制御部19は、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧に基づき、電池パック2の過放電を判別する。具体的には、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さい場合には、電池パック2に過放電が生じていると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0059】
また、電池パック2は、その内部に保護ICやマイコンを備え、自ら過放電を検出して過放電信号を制御部19に出力する機能を有しており、制御部19は、信号端子LDから過放電信号を受信した場合にも、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。このような構成により、電池パック2の寿命が短くなることを防止することができる。
【0060】
更に、本実施の形態の制御部19は、交流出力デューティ設定を行い、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させる、すなわち、ACモータ31への交流電力の供給を制限するような第2のPWM信号を出力する。
【0061】
ここで、図3のフローチャート、及び、図4の出力電圧のタイムチャートを用いて、制御部19による交流出力デューティ設定について説明する。
【0062】
図3のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0063】
まず、制御部19は、トリガ検出部9からトリガ検出信号が入力されたか否かを判断する(S101)。すなわち、電池パック2の電池電圧が電源スイッチ検出ダイオード10を含むバイパス回路を介してトリガ検出部9に印加されたか否かを判断する。トリガ検出信号が入力されていた場合には(S101:YES)、トリガスイッチ32がオンされたと判断し、第1のスイッチング素子となるFET132をオン・オフさせるための第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し、トランス131に昇圧動作を行わせる(S102)。
【0064】
続いて、昇圧電圧検出部15によって検出された昇圧電圧に基づき、昇圧電圧が目標電圧(140V)より大きいか否かを判断する(S103)。目標電圧より大きい場合には(S103:YES)、デューティを減少させた第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S104)、目標電圧以下の場合には(S103:NO)、デューティを増加させた第1のPWM信号をFET132のゲートに出力する(S105)。
【0065】
続いて、交流出力デューティ設定を行う。交流出力デューティ設定では、まず、ソフトスタート終了フラグが設定されているか否かを判断する(S106)。ソフトスタート終了フラグは、後述するS111で設定されるものなので、1回目の判断では、必ず“NO”となる。
【0066】
続いて、経過時間t=0であるか否かを判断する(S107)。1回目の判断では、t=0なので、S108において、交流出力デューティDをD0に設定した上で、tをt1に変更する。一方、2回目以降の判断では、t=0ではないので、S109において、交流出力デューティDをΔDだけ増加させ、ソフトスタートを行う。本実施の形態では、ΔD(デューティーの増加率ΔD/Δt)は33〜100(%/秒)に設定されている。すなわち、図4の出力電圧に示す所定時間Tの内のFETをオンする時間τを徐々に増加するように制御する。
【0067】
続いて、交流電圧デューティDが所定デューティDr以上であるか否かを判断する(S110)。所定デューティDr以上である場合には(S110:YES)、インバータ装置1の出力が定常状態となっているものと判断し、ソフトスタートを終了させ、S112に進む。なお、所定デューティは目標電圧に相当するものであり、本実施の形態における所定デューティDrは100%であるが、その他の値であってもよい。
【0068】
一方、所定デューティDrより小さい場合には(S110:NO)、まだインバータ装置1の出力は定常状態となっていないものと判断し、そのままS112に進む。
【0069】
続いて、インバータ回路16を構成する第2のスイッチング素子となるFET161−164をオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力し、ACモータ31に交流電圧を供給する(S112)。なお、第2のPWM信号は、PWM信号出力部18から各FET161−164のゲートに出力される。
【0070】
続いて、電池電圧検出部11によって電池電圧を検出し(S113)、検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S114)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S114:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、FET132及びFET161−164をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力して昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S115)。これにより、電池パック2からの電力の供給が停止される。
【0071】
また、電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S114:NO)、電池パック2から過放電信号が入力されたか否かを判断する(S116)。過放電信号が入力されていた場合には(S116:YES)、電池電圧が所定の過放電電圧より小さい場合(S114:YES)と同様に、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S115)。
【0072】
一方、過放電信号が入力されていなかった場合には(S116:NO)、トリガ検出部9からトリガ検出信号が入力されているか否かを再び判断する(S117)。トリガ検出信号が入力されていた場合には(S117:YES)、S103に戻り、上記動作を繰り返す。これにより、出力電圧及び出力電流は図4に示すように変化し、デューティDが所定デューティDr以上となった場合に(S110:YES)、定常状態となっているものと判断し、ソフトスタートを終了させる。一方、トリガ検出信号が入力されていなかった場合には(S117:NO)、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S118)。
【0073】
上記したように、本実施の形態によるインバータ装置1では、交流出力デューティ設定を行い、図4のDuty比増加の区間に示すように、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させるような第2のPWM信号を出力するので、PWM信号の増加に伴って、インバータ装置1の出力の実効値も増加する。従って、図4の出力電流に示すように、電池パック2、モータ31に流れる電流も徐々に増加することになるため、電動工具3を起動させた際に電池パック2に大電流が流れ、電池パックの寿命に悪影響を与えてしまうことを防止することができる。また、同時に、インバータ回路16、特にFET161−164に大電流が流れることも防止することができるので、インバータ回路16への悪影響も軽減させることもできる。
【0074】
また、本実施の形態による電動工具システムでは、AC電源が利用できない場所でも、電池パック2、インバータ装置1及び電動工具3を互いに接続することにより、移動しながら電動工具3を駆動して作業を行うことが可能となる。
【0075】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0076】
なお、上記実施の形態では、第2のPWM信号を変化させることにより、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させたが、第1のPWM信号を変化させることにより行ってもよい。この場合、第2のPWM信号は一定(デューティ100%)とし、第1のPWM信号(FET132)を徐々に増加させることで、コンデンサ143の電圧も徐々に増加することになる。これにより、電池パック2への大電流、インバータ回路16への大電流、昇圧回路13への大電流を防止することができ、各構成部への悪影響を軽減することができる。また、第1及び第2のPWM信号の両方を徐々に増加させるようにしても良い。
【0077】
また、電池パック2として電池電圧14.4Vのリチウム電池パックを説明したが、電池電圧或いは電池種類が異なる複数の電池パックを選択的に接続可能としても良い。電動工具は、種類や用途に応じて種々の電池パックが用意されている。従って、電池パックの種類に応じてソフトスタート制御を変更するようにすれば、電池パックの電力消費を抑え最適な制御が可能となる。
【0078】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0079】
一方、電動工具にも種々の種類が存在するが、交流電源で駆動する電動工具は、例えば、AC100Vで駆動するものが考えられる。この場合、インバータ装置1に接続される電池パック或いは電動工具の種類に応じて、インバータ装置1の出力を定常時で100Vとなるように昇圧回路13及びインバータ回路16をソフトスタート制御すれば、如何なる電池パック、電動工具が接続されても、それらに大電流が流れることを抑制することができ、寿命低下を抑制することができる。なお、外国のように交流電源の電圧が100V以外の場合には、その電圧となるようにソフトスタート制御すればよい。
【0080】
例えば、電池パックに電池電圧、電池種等の情報を有する識別手段(例えば、抵抗)を設け、制御部19はこの抵抗値を読み取ることにより接続された電池パックの種類を判別することができる。接続された電池パックに応じて、ソフトスタートの制御(FET132のスイッチングやFET161−164のデューティ比の増加割合)を変更する。更に、接続された電動工具の種類も同様に判別してソフトスタート制御を変更することも可能である。
【0081】
また、電池パック2以外から電力を供給される場合であっても、電源やインバータ回路16への悪影響は軽減させることができる。
【0082】
続いて、図5乃至図7を用いて、本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0083】
図5は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、電源スイッチ検出ダイオード10及びトリガ検出部9を備えていない点を除き、図2と同一の構成である。
【0084】
電動工具3は、適正範囲内の電圧によって動作するものであるのに対し、電動工具3(ACモータ31)に供給される電圧は、使用に伴う電池電圧の低下や、過負荷状態における電圧の低下によって低下する可能性がある。従って、インバータ装置1に接続された電動工具3は、適正範囲外の電圧が供給されることにより故障を生じる虞がある。
【0085】
そこで、本実施の形態による制御部19では、図6のタイムチャートに示すように、更に、昇圧回路13によって昇圧された電圧(平滑コンデンサ143の電圧であって、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧)が上限値(155V)と下限値(127V)とにより規定される所定範囲から外れた場合にも、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0086】
ここで、図7のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の停止制御について説明する。
【0087】
図7のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0088】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S201)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S202)。
【0089】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S202:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S203)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S202:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S204)。
【0090】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S205)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S205:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0091】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S205:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S206)。過放電信号が入力されていた場合には(S206:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0092】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S206:NO)、昇圧された電圧が所定の上限値(例えば、155V)より大きいか否かを判断する(S207)。大きい場合には(S207:YES)、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続したか否かを判断する(S208)。継続した場合には(S208:YES)、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0093】
ここで、昇圧電圧が所定の上限値より大きい状態が継続した場合、電動工具を使用すると、定格値以上の回転数でモータが回転しまうことがあるため、所定時間以上継続したらモータへの出力を停止することで電動工具の破損を防止している。また、インバータ装置1のインバータ回路16のFET等の部品の破損も同時に防止している。なお、通常時には昇圧電圧が所定の上限値より大きい状態になることは殆どないが、昇圧電圧を制御する制御部19や昇圧電圧検出部15が壊れた際に生じる場合があるため、このような制御は、インバータ装置1の保護に有効である。
【0094】
また、電圧は、ノイズ等によって一時的に上昇や低下する場合がある。このような場合にまでACモータ31への出力を停止させてしまうと電動工具3の使用に不都合をもたらしてしまう。従って、本実施の形態では、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続した場合に限り、ACモータ31への出力を停止させている。
【0095】
一方、昇圧された電圧が所定の上限値以下の場合(S207:NO)、又は、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続しなかった場合(S208:NO)には、昇圧された電圧が所定の下限値(127V)より小さいか否かを判断する(S209)。小さい場合には(S209:YES)、昇圧された電圧が所定の下限値より小さい状態が3.0秒以上継続したか否かを判断する(S210)。継続した場合には(S210:YES)、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0096】
一方、昇圧された電圧が所定の下限値以上の場合(S209:NO)、又は、昇圧された電圧が所定の下限値より小さい状態が3.0秒以上継続しなかった場合(S210:NO)には、S201へ戻る。
【0097】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、昇圧回路13によって昇圧された電圧(昇圧電圧検出部15によって検出された電圧)が上限値(155V)と下限値(127V)とにより規定される所定範囲から外れた場合に、ACモータ31への出力を停止させる。従って、電子機器に適正範囲外の電圧が供給されて故障することを防止することが可能となる。
【0098】
また、所定範囲から外れた場合でも、所定時間以上外れた状態が継続しなければACモータ31への出力を停止させないので、ノイズ等による一時的な電圧の上昇や低下によりACモータ31への出力が停止されることを防止することができる。
【0099】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号のいずれか一方の出力を停止すればACモータ31への出力を停止させることができる。なお、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の両出力を停止すれば、電池パック2の電力消費を抑制することができる。
【0100】
また、上記実施の形態では、所定範囲の上限値及び下限値として、155V及び127Vを用いたが、これらに限定されるものではない。
【0101】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0102】
また、図7のフローチャートにおける、S201−S204での昇圧電圧の制御、S205−S206での過放電の検出、及び、S207−S210での出力の停止の制御は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0103】
また、インバータ装置1は、昇圧回路によって昇圧された電圧が所定範囲から外れたことによりACモータ31への出力を停止した回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0104】
続いて、図8乃至図10を用いて、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0105】
図8は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、インバータ回路停止部20を備えている点を除き、図5と同一の構成である。
【0106】
インバータ回路停止部20は、基準電流入力部201と、検出電流入力部202と、比較回路203と、停止回路204と、を備えている。
【0107】
基準電流入力部201は、抵抗201a及び201bを備えており、三端子レギュレータ122aから出力された所定の直流電圧の、抵抗201aと抵抗201bとによる分圧電圧を基準電流として比較回路203に出力する。抵抗201a及び201bは、基準電流が過電流の閾値となるような値に設定されている。
【0108】
検出電流入力部202は、抵抗202a−202cと、オペアンプ202dと、を備えており、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)を増幅し、検出電流として比較回路203に出力する。
【0109】
比較回路203は、オペアンプ203aと、ダイオード203bと、放電用抵抗203cと、コンデンサ203dと、を備え、差動増幅回路として機能する。
【0110】
オペアンプ203aは、入力された基準電流と検出電流とを比較し、検出電流が基準電流以下の場合にはLレベルの信号を出力し、検出電流が基準電流より大きい場合にはHレベルの信号を出力する。Hレベルの信号が出力された場合、すなわち、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、ダイオード203bを介してコンデンサ203dに電荷が蓄えられる。
【0111】
停止回路204は、ダイオード204a及び204bと、FET204cと、を備えている。ダイオード204a及び204bのアノードは、制御部19からPWM信号出力部18へ第2のPWM信号を出力するラインのうち、FET162及び164のゲートへ第2のPWM信号を出力するラインとそれぞれ接続されており、ダイオード204a及び204bのカソードは、FET204cのドレインと接続されている。また、FET204cのゲートは、ダイオード203bのカソードと接続されており、ソースは、GNDと接続されている。
【0112】
このような構成により、コンデンサ203dに所定上の電荷が蓄えられている場合には、FET204cがオンすることとなる。FET204cがオンすると、FET162及び164のゲートへ出力されるはずの第2のPWM信号はFET204cを介してGNDへ流れ込むこととなるので、FET162及び164がオフし、インバータ回路16が停止されることとなる。このようにして、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、インバータ回路16が停止されるので、インバータ装置1、特に、インバータ回路16のFET161−164が故障することを防止することができる。
【0113】
なお、インバータ回路16が停止されると、電流検出抵抗17も電流(電圧)を検出しなくなる、すなわち電流検出抵抗17により検出される電流は小さくなるので、オペアンプ203aの出力は反転してLレベルの出力となり、コンデンサ203dに蓄えられた電圧はダイオード203bと並列に接続された放電用抵抗203cを介して放電される。これにより、FET204cは再びオフするので、過電流が解消された後には、インバータ回路16の強制停止が解除される。少なくともダイオード203b、放電用抵抗203c及びコンデンサ203dは本発明の復帰手段を構成する。
【0114】
ところで、図9(a)に示すように、起動時には、インバータ装置1に過電流となるような大きな起動電流が流れるが、起動電流に対してもインバータ回路16を停止させてしまっては、インバータ装置1を起動させることができなくなってしまう。
【0115】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、図9(b)に示すように、ACモータ31への交流電力の供給を制限することにより、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前に、インバータ回路16の停止を解除するという動作を繰り返す。このような構成により、本実施の形態によるインバータ装置1は、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、いわゆる、ソフトスタートを実現させている。
【0116】
ここで、図10のフローチャートを用いて、本実施の形態におけるソフトスタートについて説明する。
【0117】
図10のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0118】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S301)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S302)。
【0119】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S302:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S303)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S302:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S304)。
【0120】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S305)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S305:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0121】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S305:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S306)。過放電信号が入力されていた場合には(S306:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0122】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S306:NO)、インバータ回路停止部20によりソフトスタート制御が行われる。
【0123】
詳細には、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)に基づき、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きいか否かが判断され(S307)、大きい場合には(S307:YES)、FET162及びFET164を所定時間オフさせた後(S308)、S301へ戻る。なお、インバータ装置1を起動させるためには、前記所定時間は、インバータ回路16の停止からACモータ31の回転が停止するよりも前までの時間である必要があり、本実施の形態では、0.5msecに設定されている。
【0124】
このような制御により、インバータ装置1の起動時には、電流の大きさは、図9(b)に示すように変化し、ACモータ31の回転数は、図9(c)に示すように変化する。また、高負荷時には、電流の大きさは、図9(d)に示すように変化する。
【0125】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にはインバータ回路16を停止させる。従って、インバータ回路16、特に、FET161−164が故障することを防止することが可能となる。同時に、電池パック2に過電流が流れることも防止することができるので、電池パック2の寿命が短くなることも防止することができる。
【0126】
また、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前にインバータ回路16の停止を解除するので、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、ソフトスタートが実現されている。
【0127】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0128】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。
【0129】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にインバータ回路16の停止と解除を繰り返したが、高負荷時には過電流が解消される可能性が低いため、同様の制御を行うことは電力の浪費となる。従って、最初にインバータ回路16を停止させてから所定時間経過後に、依然として、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、解除動作を停止させることが好ましい。
【0130】
その場合、インバータ装置1は、解除動作を停止させた回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0131】
また、上記実施の形態では、インバータ回路停止部20がインバータ回路16を停止させたが、制御部19が、電流検出抵抗17によって検出された電流に基づき、FET162及びFET16をオフさせてインバータ回路16を停止させてもよい。なお、全てのFETをオフさせてもよい。
【0132】
また、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0133】
また、図3のフローチャートにおける、S301−S304での昇圧電圧の制御、S305−S306での過放電の検出、及び、S307での過電流の検出は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0134】
続いて、図11乃至図13を用いて、本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0135】
図11は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、温度検出部30を備えている点を除き、図5と同一の構成である。
【0136】
温度検出部30は、FET132に近接して配置されたサーミスタ30aと、サーミスタ30aに直列に接続された抵抗30bと、を備えており、三端子レギュレータ122aから出力された所定電圧の、サーミスタ30aと抵抗30bとによる分圧電圧を温度信号として制御部19に出力する。
【0137】
ところで、FETは過電流に弱いため、電流検出抵抗17に流れる電流が所定の過電流閾値を上回った場合にFET132をオフさせるという対策が考えられる。しかしながら、FETは、過電流閾値以下であっても所定以上の電流が長時間流れると破損する虞がある。また、FETに流れる電流が破損の可能性の小さなものである場合であっても、温度によっては破損する虞がある。
【0138】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、FET132がオンすることを防止する。
【0139】
図12は、本実施の形態におけるFET132がオンすることを防止する判定基準を示したものである。図12に示すように、本実施の形態では、過電流閾値を10Aに設定し、10A以上の電流が0.5秒以上インバータ装置1に流れた場合にFET132がオンすることを防止する(オフする)。また、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値10Aよりも小さい場合であっても、インバータ装置1に、8A以上10A未満の電流が1.0秒以上流れた場合、6A以上〜8A未満の電流が3.0秒以上流れた場合、及び、5A以上6A未満の電流が5.0秒以上流れた場合にFET132がオンすることを防止する。すなわち、インバータ装置1に流れる電流値に応じてFET132のオン時間を変えており、電流値が大きいほどFET132のオン時間を短くしている。
【0140】
更に、インバータ装置1に流れる電流が4A以上5A未満の場合であっても、FET132の温度100〜120度の範囲で5.0秒以上流れた場合、温度80〜100度の範囲で10.0秒以上流れた場合、及び、温度60〜80度で20.0秒以上流れた場合にもFET132がオンすることを防止する。このような構成により、FETが故障することを適切に防止することができる。すなわち、インバータ装置1に流れる電流値が小さい場合には、FET132の温度に応じてFET132のオン時間を変えており、温度が高いほどFET132のオン時間を短くしている。
【0141】
なお、電流値が4A未満の場合には、FET132の温度が急激に上昇することは考えにくいため、FET132は通常通り、周期的にオン・オフされる。また、電流値が4A以上5A未満の間でありFET132の温度が60度より低い場合にも、FET132が壊れる虞は低いため、FET132は通常通り、周期的にオン・オフされる。
【0142】
次に、図13のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の停止制御について説明する。
【0143】
図13のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0144】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S401)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S402)。
【0145】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S402:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S403)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S402:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S404)。
【0146】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S405)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S405:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S408)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0147】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S405:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S406)。過放電信号が入力されていた場合には(S406:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S408)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0148】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S406:NO)、電流検出抵抗17によって検出された電流及び温度検出部30によって検出された温度が図12に示す判定基準を満たすか否かを判断する(S407)。判定基準を満たす場合には(S407:YES)、FET132をオフさせる、すなわち、FET132がオンすることを防止するための第1のPWM信号を出力する(S408)。
【0149】
一方、判定基準を満たさない場合には(S407:NO)には、S401へ戻る。
【0150】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、FET132をオフさせる、すなわち、FET132がオンすることを防止する。従って、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することを適切に防止することが可能となる。
【0151】
また、図12に示すように、FET132がオンすることを防止するまで(FET132をオフするまで)のオン継続時間(許容継続時間)を電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて変化させるので、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することをより適切に防止することができる。
【0152】
また、図12に示すように、電流検出抵抗17によって検出された電流が5Aを上回った場合には、温度検出部30によって検出された温度に関わらずFET132をオフさせるので、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することをより適切に防止することができる。
【0153】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。
【0154】
また、上記実施の形態では、サーミスタ30aをFET132に近接して配置したが、FET161−164に近接して配置し、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、第2のPWM信号によりFET161−164をオフさせてもよい。
【0155】
インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0156】
また、図13のフローチャートにおける、S401−S404での昇圧電圧の制御、及び、S405−S406での過放電の検出、及び、S407での出力の停止の制御は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0157】
また、インバータ装置1は、ACモータ31への出力を停止した回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0158】
続いて、図14及び図15を用いて、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0159】
図14は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、電池パック2及び電源部12の構成を除き、図5と同一の構成である。
【0160】
本実施の形態による電池パック2は、二次電池からなる電池組21と、電池パック2の電池特性に応じた抵抗値を有する電池特性判別素子23と、電池特性判別端子24と、を備えており、インバータ装置1には、異なる特性の電池パック2が装着可能である。電池特性としては、電池組25の並列数、定格電圧、及び、種類等が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
また、本実施の形態による電源部12は、電源スイッチ121及び定電圧回路122の他に、電池特性判別抵抗123を備えている。電池特性判別抵抗123と電池パック2の電池特性判別素子22は、電池特性判別端子24を介して、レギュレータ122aと電池パック2のマイナス側端子22との間に直列に接続されており、レギュレータ122aから出力された所定電圧(5V)の、電池特性判別抵抗123と電池特性判別素子23とによる分圧電圧が制御部19に出力される。電池特性判別素子23は、電池パック2の電池特性に応じた異なる抵抗値を有しているため、制御部19は、入力された分圧電圧に基づき電池パック2の電池特性を判別し、電池特性(電池種)識別信号を出力する。
【0162】
ところで、本実施の形態には異なる特性の電池パック2が接続可能であるが、全ての電池パック2から同一の出力を得ようとすると、電池パック2の寿命や出力効率を著しく低下させてしまう虞がある。例えば、1並列タイプの電池パック2から2並列タイプの電池パック2と同一の電流を得ようとすると、1並列の電池パック2には2並列の電池パック2の2倍の電流が流れることとなり、1並列の電池パック2の寿命を低下させてしまう虞がある。また、電池パック2は、種類によって定格電流が異なるため、同様の理由により電池パック2の寿命を低下させてしまう虞がある。
【0163】
更に、通常、トランスの一次側巻線と二次側巻線との巻数比は、所定の電圧が入力された場合に最大の変換効率が得られるような値に設定されているため、所定以外の定格電圧を有する電池パック2がインバータ装置1に接続された場合には、トランス131における変換効率が著しく低下してしまう虞がある。また、この場合、温度上昇が生じるため、温度上昇を防止するために放熱フィン等が必要となり、インバータ装置1が大型化してしまう。
【0164】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、インバータ装置1から電動工具3のACモータ31への出力を制御、すなわち、FET132及びFET161−164がオン・オフすることを防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。
【0165】
ここで、図15のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の防止制御について説明する。
【0166】
図15のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0167】
また、本実施の形態によるインバータ装置1には、定格電圧14.4V、定格容量3.0Ah(2並列タイプ)の電池パック2から電力を供給されることに適した構成となっているものとする。
【0168】
まず、制御部19は、電池特性判別素子23及び電池特性判別抵抗123から電池特性識別信号を検出し(S501)、電池特性識別信号に基づき、インバータ装置1に接続された電池パック2の定格電圧が14.4Vであるか否かを判断する(S502)。14.4Vでない場合、例えば18Vの電池パックの場合には(S502:NO)、インバータ装置1からACモータ31への出力を防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWP信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が遮断される。この動作は、上記したように、定格電圧14.4Vの電池パック2が接続された際に最も出力効率が良いトランス131を設定しており、18.0Vの電池パックでは出力効率が低下し所望の出力が得られなくなる可能性があるため、ACモータ31への出力を遮断するようにしている。
【0169】
一方、14.4Vである場合には(S502:YES)、続いて、電池特性識別信号に基づき、インバータ装置1に接続された電池パック2の定格容量が3.0Ahであるか否かを判断する(S503)。3.0Ahでない場合には(S503:NO)、インバータ装置1からACモータ31への出力を防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWP信号の出力を停止する。この動作は、上記したように、定格容量3.0Ah(2並列タイプ)の電池パックに適した使用にしているためのものである。定格容量1.5Ah(1並列タイプ)の場合には、2並列タイプの電池パック接続時と同様の出力を得ようとして電流が2並列タイプの2倍流れることになり、電池パックの寿命を低下させたり、FET132を故障させてしまう虞がある。
【0170】
一方、3.0Ahである場合には(S503:YES)、本実施の形態によるインバータ装置1に適した電池パック2が接続されていることとなるので、ACモータ31への出力を開始させる。
【0171】
具体的には、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S504)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S505)。
【0172】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S505:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S506)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S505:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S507)。
【0173】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S508)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S508:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0174】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S508:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S509)。過放電信号が入力されていた場合には(S509:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0175】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S510:NO)、S501へ戻る。
【0176】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、昇圧回路13及びインバータ回路16が動作することを防止する。従って、インバータ装置1に適していない電池パック2がインバータ装置1に接続された場合に、電池パック2の寿命や出力効率が著しく低下することを防止することが可能となる。
【0177】
例えば、1並列タイプの電池パック2がインバータ装置1に接続された場合には、上記構成により、1並列タイプの電池パック2の寿命が低下することを防止することができる。
【0178】
また、所定の種類以外の電池パック2がインバータ装置1に接続された場合にも、上記構成により、電池パック2の寿命が低下することを防止することができる。
【0179】
更に、所定の定格電圧を有しない電池パック2(例えば18V)がインバータ装置1に接続された場合には、上記構成により、トランス131における変換効率が低下することを防止することができる。
【0180】
なお、上記実施の形態では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、FET132及びFET161−164がオンすることを防止したが、FET132及びFET161−164のいずれか一方のみがオンすることを防止してもよい。
【0181】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に接続された電池パック2の種類を、電池パック2内に設けられた電池特性判別素子23とインバータ装置1内に設けられた電池特性判別抵抗23により判別するように構成したが、判別の方法としてはこの構成に限るものではなく、インバータ装置1に使用できる電池パックと使用できない電池パックとを判別できればよい。
【0182】
例えば、電池パックとインバータ装置を接続する判別用端子の有無、すなわち、使用可能な電池パックには充放電用端子以外の端子(判別端子)を設け、使用不可能な電池パックには判別端子を設けないことで判別するようにしてもよい。或いは、種類によって電池パックの接続部やインバータ装置の電池接続部(インバータ装置と電池パックの接続部)を異なる形状にし、機械的に使用できない電池パックはインバータ装置に装着(接続)できないようにしてもよい。
【0183】
また、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックのいずれかの種類によって出力することを防止するようにしてもよいし、異なる電池電圧(例えば18V)の電池パックに最適な構成としてもよい。
【0184】
また、図15のフローチャートにおける、S504−S507での昇圧電圧の制御、及び、S508−S509での過放電の検出は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0185】
また、上記第1から第5の実施の形態をそれぞれ組み合わせてもよい。例えば、第1の実施の形態又は第3の実施の形態におけるソフトスタートを、第2の実施の形態における出力停止制御、第4の実施の形態における出力停止制御、第5の実施の形態における出力防止制御のいずれか、又は、それらの全てと組み合わせることで、インバータ装置1の信頼性を一層上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0186】
1 インバータ装置
2 電池パック
3 電動工具
19 制御部
16 インバータ回路
31 ACモータ
32 トリガスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AC電源からACモータに直接供給された交流電力により駆動される電動工具、例えば芝刈り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AC電源により駆動される芝刈り機は、電源コードが届く範囲でしか作業ができないため作業効率が悪い。
【0005】
一方、電池パックからの直流電力により駆動される芝刈り機も知られている。このような芝刈り機の場合、芝刈り機(モータ)を起動させた際に電池パックに大電流が流れ、電池パックの寿命に悪影響を与えてしまう。
【0006】
本発明は、AC電源が利用できない場所でもACモータを備えた電動工具を駆動することのできる携帯可能な電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、交流電力により駆動されるACモータを有する電動工具と、携帯式の電池パックと、前記電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能な電源装置と、を備えたことを特徴とする電動工具システムを提供している。
【0008】
このような構成によれば、AC電源が利用できない場所でも、電池パック、電源装置及び電動工具を互いに接続することにより、移動しながら電動工具を駆動して作業を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記電動工具は、ユーザにより操作可能なトリガスイッチを備え、前記電源装置は、 前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、起動時にACモータに流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パックや電源装置にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0011】
また、前記電源装置は、 前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、を更に備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流によるインバータ回路への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させ寿命低下を抑制することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流による第1のスイッチング素子への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させることができる。
【0015】
また、前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、インバータ回路部の出力を目標値まで段階的に増加させるので 大電流による第2のスイッチング素子への悪影響を軽減させることができる。更に、電源が電池パックの場合には、大電流による電池パックへの悪影響を軽減させることができる。
【0017】
また、前記電源装置は、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、電池パックの過放電を防止することができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、電池パックの寿命の低下を更に抑制することができる。
【0021】
また、前記電源装置は、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、を更に備えたことが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、電流値が過電流閾値を上回った場合にインバータ回路からの交流電力の出力を停止させるので、インバータ回路が故障することを防止することができる。
【0023】
また、前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、インバータ回路からの交流電力の出力が停止された後、所定時間経過後にインバータ回路からの交流電力の出力を復帰させるので、インバータ装置の起動時にソフトスタートを実現させることができる。
【0025】
また、前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、高負荷時に停止及び解除動作を繰り返して電力を浪費することを防止することができる。
【0027】
また、前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、インバータ装置の起動時にソフトスタートを実現させることができる。
【0029】
また、本発明の別の観点によれば、交流電力により駆動されるACモータと、ユーザにより操作可能なトリガスイッチと、を有する電動工具に接続可能な電源装置であって、携帯式の電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能なインバータ回路と、前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする電源装置を提供している。
【0030】
また、前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、を更に備え、前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0031】
また、前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0032】
また、前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることが好ましい。
【0033】
また、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0034】
また、前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることが好ましい。
【0035】
また、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、を更に備えたことが好ましい。
【0036】
また、前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことが好ましい。
【0037】
また、前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことが好ましい。
【0038】
また、前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の電源装置によれば、AC電源が利用できない場所でもACモータを備えた電動工具を駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1(a)】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置を搭載した電動工具の側面図。
【図1(b)】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置を電動工具から取り外した状態を説明する図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置と芝刈り機の回路図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるインバータの出力電圧のタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図6】本発明の第2の実施の形態による出力の停止制御について説明するタイムチャート
【図7】本発明の第2の実施の形態による出力の停止制御について説明するフローチャート
【図8】本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図9(a)】起動電流について説明するタイムチャート
【図9(b)】本発明の第3の実施の形態による起動時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図9(c)】本発明の第3の実施の形態による起動時のモータ回転数の変化について説明するタイムチャート
【図9(d)】本発明の第3の実施の形態による高負荷時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図10】本発明の第3の実施の形態によるインバータ回路の停止制御について説明するフローチャート
【図11】本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図12】本発明の第4の実施の形態によるFETがオンすることを防止する判定基準を示す説明図
【図13】本発明の第4の実施の形態による出力の停止制御について説明するフローチャート
【図14】本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図15】本発明の第5の実施の形態による出力の防止制御について説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1乃至図4を用いて、本発明の第1の実施の形態による電動工具システム及び電動工具システムに含まれる電源装置について説明する。第1の実施の形態による電動工具システムでは、本発明の電源装置としてのインバータ装置1によって、電池パック2からの直流電力を交流電力に変換して、電動工具3のACモータ31に供給するものとする。なお、本実施の形態では、電動工具として、芝刈り機を用いて説明するが、芝刈り機に限定されず、ヘッジトリマ、丸鋸、ジグソー、グラインダー、ドライバ等でも適用でき、トリガスイッチを有し交流電力で駆動されるものであればよい。
【0042】
図1(a)は、インバータ装置1が接続された電動工具3の側面図である。電動工具3には、ラッチにより着脱可能なインバータ装置1が搭載されている。作業者はハンドル5を把持し後述のトリガスイッチ32を操作することによって、電池パック2からの電力がインバータ装置1を介してモータ31に供給される。電動工具3には、進行方向前方側に設けられた前輪6と、後方側に設けられた後輪7が設けられ、移動可能に構成されている。また、電動工具3の進行方向後方側には、図示しない回転刃によって刈られた草等を集めるための集草バック8が着脱可能に設けられている。また、図1(b)に示すように、インバータ装置1は、電動工具3から取り外した状態で携帯可能とするための肩掛けベルト1Aを備えている。
【0043】
図2は、インバータ装置1の回路図である。本実施の形態では、電動工具3のトリガスイッチ32が操作されると、インバータ装置1は、電池パック2から供給された直流電力をインバータ装置1によって交流電力に変換し、電動工具3のACモータ31に供給する。インバータ装置1、電動工具3、及び、電池パック2は、それぞれ着脱可能であるが、以下では、それぞれが接続されているものとして説明する。
【0044】
インバータ装置1は、電池電圧検出部11と、電源部12と、昇圧回路13と、整流・平滑回路14と、昇圧電圧検出部15と、インバータ回路16と、電流検出抵抗17と、PWM信号出力部18と、制御部19と、電源スイッチ検出ダイオード10と、トリガ検出部9と、を備えている。
【0045】
電池電圧検出部11は、電池電圧検出抵抗111及び112を備えている。電池電圧検出抵抗111及び112は、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に直列に接続されており、電池パック2の電池電圧の、電池電圧検出抵抗111と電池電圧検出抵抗112とによる分圧電圧を制御部19に出力する。なお、図1に示す電池パック2は、3.6V/セルのリチウム電池セルが4本直列接続され、定格電圧14.4Vを出力する。
【0046】
電源部12は、電池パック2のプラス側端子21と制御部19との間に直列に接続された電源スイッチ121及び定電圧回路122を備えている。定電圧回路122は、三端子レギュレータ122aと、発振防止用コンデンサ122b及び122cと、を備えており、ユーザにより電源スイッチ121がオンされると、電池パック2からの電圧を所定の直流電圧(例えば5V)に変換し、制御部19に駆動電力として供給する。なお、電源スイッチ121がオフされると、制御部19に駆動電力が供給されなくなるので、インバータ装置1全体がオフされることとなる。
【0047】
昇圧回路13は、トランス131と、FET132と、を備えており、トランス131は、一次側巻線131aと、二次側巻線131bと、を備えている。一次側巻線131aは、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に接続されており、トランス131の一次側巻線131aとマイナス側端子22の間には、更に、FET132が配置されている。FET132のゲートには、FET132をオン・オフさせるための第1のPWM信号が制御部19から入力され、FET132のオン・オフにより、電池パック2からトランス131の一次側巻線131aに供給された直流電力は、一次側巻線131aと二次側巻線131bとの巻数比に応じて変圧されて二次側巻線131bから出力される。
【0048】
整流・平滑回路14は、整流ダイオード141及び142と、平滑コンデンサ143と、を備えており、これらにより、トランス131により昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力(例えば昇圧電圧140V)として出力する。
【0049】
昇圧電圧検出部15は、互いに直列接続された抵抗151及び152から構成されており、整流・平滑回路14から出力された直流の昇圧電圧(平滑コンデンサ電圧、例えば141V)を検出し、昇圧電圧の、抵抗151と抵抗152とによる分圧電圧を制御部19に出力する。
【0050】
インバータ回路16は、4つのFET161−164から構成されており、直列に接続されたFET161及び162と、直列に接続されたFET163及び164とが、平滑コンデンサ143に並列に接続されている。詳細には、FET161のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET161のソースは、FET162のドレインに接続されている。また、FET163のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET163のソースは、FET164のドレインに接続されている。
【0051】
更に、FET161のソース及びFET162のドレイン、FET163のソース及びFET164のドレインは、それぞれ、出力端子165、166と接続されており、出力端子165、166は、ACモータ31に接続されている。FET161−164のゲートには、FET161−164をオン・オフさせるための第2のPWM信号がPWM信号出力部18から入力され、FET161−164のオン・オフにより、整流・平滑回路14から出力された直流電力は交流電力に変換されて電動工具3(ACモータ31)に出力される。
【0052】
電流検出抵抗17は、FET162のソース及びFET164のソースと、電池パック2のマイナス側端子22との間に接続されており、電流検出抵抗17の高電圧側の端子は制御部19と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗17は、ACモータ31に流れる電流を検出し、電圧として制御部19に出力する。
【0053】
電源スイッチ検出ダイオード10は、アノードが電源スイッチ121の低圧側に接続され、カソードが電動工具3のACモータ31に出力端子165を介して接続されている。このような構成により、電源スイッチ121がオンされた場合には、ACモータ31に電池パック2からの電池電圧が印加されることとなる。また、電源スイッチ検出ダイオード10のカソードは、FET161のソースとも接続されているため、FET161がオンしている場合には、整流・平滑回路14から出力された昇圧された電力がACモータ31に印加されることとなる。
【0054】
なお、電源スイッチ検出ダイオード10を含み、電源スイッチ121がオンされた場合に電池電圧をACモータ31に印加する回路がバイパス回路を構成する。具体的には、電源スイッチ121の低圧側に接続され、電源スイッチ検出ダイオード10及びトリガスイッチ32を介してACモータ31に接続される回路をバイパス回路としている。このような構成により、電源スイッチ121がオンされない限り電池電圧はACモータ31側に印加されないため、インバータ装置1が駆動していない状態での電池パック2の無駄な電力消費を抑えることができる。
【0055】
トリガ検出部9は、FET164と並列に接続されている。詳細には、トリガ検出部9は、ACモータ31(すなわち、出力端子166)とFET164のソース(すなわち、GND)との間に直列に接続された抵抗91及び92から構成されており、トリガスイッチ32が操作された場合に、抵抗91と抵抗92による分圧電圧をトリガ検出信号として制御部19に出力する。すなわち、電池パック2の電池電圧は、バイパス回路を介してトリガスイッチ32の一端と接続されている。トリガスイッチ32がオンになると、電池パック2の電池電圧は、バイパス回路、トリガスイッチ32、ACモータ31を介してトリガ検出部9に印加される。この印加された電圧を抵抗91及び92により分圧することでトリガ検出信号として検出し、制御部19に出力する。
【0056】
また、本実施の形態では、バイパス回路をFET161のソース側に接続し、トリガ検出部9をFET164に並列に接続したが、バイパス回路をFET163のソース側に接続し、トリガ検出部9をFET162と並列に接続してもよい。
【0057】
制御部19は、昇圧電圧検出部15によって検出された昇圧電圧に基づき、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力する。また、制御部19は、目標実効値(例えば、100V)を有する交流電力がACモータ31に出力されるような第2のPWM信号をPWM信号出力部18を介してFET161−164のゲートに出力する。本実施の形態では、制御部19は、FET161とFET164(以降、第1のセット)と、FET162とFET163(以降、第2のセット)とを、それぞれ1セットとして、第1のセットと第2のセットをデューティ比100%で交互にオン・オフさせるような第2のPWM信号を出力する。
【0058】
また、制御部19は、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧に基づき、電池パック2の過放電を判別する。具体的には、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さい場合には、電池パック2に過放電が生じていると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0059】
また、電池パック2は、その内部に保護ICやマイコンを備え、自ら過放電を検出して過放電信号を制御部19に出力する機能を有しており、制御部19は、信号端子LDから過放電信号を受信した場合にも、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。このような構成により、電池パック2の寿命が短くなることを防止することができる。
【0060】
更に、本実施の形態の制御部19は、交流出力デューティ設定を行い、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させる、すなわち、ACモータ31への交流電力の供給を制限するような第2のPWM信号を出力する。
【0061】
ここで、図3のフローチャート、及び、図4の出力電圧のタイムチャートを用いて、制御部19による交流出力デューティ設定について説明する。
【0062】
図3のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0063】
まず、制御部19は、トリガ検出部9からトリガ検出信号が入力されたか否かを判断する(S101)。すなわち、電池パック2の電池電圧が電源スイッチ検出ダイオード10を含むバイパス回路を介してトリガ検出部9に印加されたか否かを判断する。トリガ検出信号が入力されていた場合には(S101:YES)、トリガスイッチ32がオンされたと判断し、第1のスイッチング素子となるFET132をオン・オフさせるための第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し、トランス131に昇圧動作を行わせる(S102)。
【0064】
続いて、昇圧電圧検出部15によって検出された昇圧電圧に基づき、昇圧電圧が目標電圧(140V)より大きいか否かを判断する(S103)。目標電圧より大きい場合には(S103:YES)、デューティを減少させた第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S104)、目標電圧以下の場合には(S103:NO)、デューティを増加させた第1のPWM信号をFET132のゲートに出力する(S105)。
【0065】
続いて、交流出力デューティ設定を行う。交流出力デューティ設定では、まず、ソフトスタート終了フラグが設定されているか否かを判断する(S106)。ソフトスタート終了フラグは、後述するS111で設定されるものなので、1回目の判断では、必ず“NO”となる。
【0066】
続いて、経過時間t=0であるか否かを判断する(S107)。1回目の判断では、t=0なので、S108において、交流出力デューティDをD0に設定した上で、tをt1に変更する。一方、2回目以降の判断では、t=0ではないので、S109において、交流出力デューティDをΔDだけ増加させ、ソフトスタートを行う。本実施の形態では、ΔD(デューティーの増加率ΔD/Δt)は33〜100(%/秒)に設定されている。すなわち、図4の出力電圧に示す所定時間Tの内のFETをオンする時間τを徐々に増加するように制御する。
【0067】
続いて、交流電圧デューティDが所定デューティDr以上であるか否かを判断する(S110)。所定デューティDr以上である場合には(S110:YES)、インバータ装置1の出力が定常状態となっているものと判断し、ソフトスタートを終了させ、S112に進む。なお、所定デューティは目標電圧に相当するものであり、本実施の形態における所定デューティDrは100%であるが、その他の値であってもよい。
【0068】
一方、所定デューティDrより小さい場合には(S110:NO)、まだインバータ装置1の出力は定常状態となっていないものと判断し、そのままS112に進む。
【0069】
続いて、インバータ回路16を構成する第2のスイッチング素子となるFET161−164をオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力し、ACモータ31に交流電圧を供給する(S112)。なお、第2のPWM信号は、PWM信号出力部18から各FET161−164のゲートに出力される。
【0070】
続いて、電池電圧検出部11によって電池電圧を検出し(S113)、検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S114)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S114:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、FET132及びFET161−164をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力して昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S115)。これにより、電池パック2からの電力の供給が停止される。
【0071】
また、電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S114:NO)、電池パック2から過放電信号が入力されたか否かを判断する(S116)。過放電信号が入力されていた場合には(S116:YES)、電池電圧が所定の過放電電圧より小さい場合(S114:YES)と同様に、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S115)。
【0072】
一方、過放電信号が入力されていなかった場合には(S116:NO)、トリガ検出部9からトリガ検出信号が入力されているか否かを再び判断する(S117)。トリガ検出信号が入力されていた場合には(S117:YES)、S103に戻り、上記動作を繰り返す。これにより、出力電圧及び出力電流は図4に示すように変化し、デューティDが所定デューティDr以上となった場合に(S110:YES)、定常状態となっているものと判断し、ソフトスタートを終了させる。一方、トリガ検出信号が入力されていなかった場合には(S117:NO)、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作を停止させる(S118)。
【0073】
上記したように、本実施の形態によるインバータ装置1では、交流出力デューティ設定を行い、図4のDuty比増加の区間に示すように、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させるような第2のPWM信号を出力するので、PWM信号の増加に伴って、インバータ装置1の出力の実効値も増加する。従って、図4の出力電流に示すように、電池パック2、モータ31に流れる電流も徐々に増加することになるため、電動工具3を起動させた際に電池パック2に大電流が流れ、電池パックの寿命に悪影響を与えてしまうことを防止することができる。また、同時に、インバータ回路16、特にFET161−164に大電流が流れることも防止することができるので、インバータ回路16への悪影響も軽減させることもできる。
【0074】
また、本実施の形態による電動工具システムでは、AC電源が利用できない場所でも、電池パック2、インバータ装置1及び電動工具3を互いに接続することにより、移動しながら電動工具3を駆動して作業を行うことが可能となる。
【0075】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0076】
なお、上記実施の形態では、第2のPWM信号を変化させることにより、インバータ装置1の出力を目標値まで段階的に増加させたが、第1のPWM信号を変化させることにより行ってもよい。この場合、第2のPWM信号は一定(デューティ100%)とし、第1のPWM信号(FET132)を徐々に増加させることで、コンデンサ143の電圧も徐々に増加することになる。これにより、電池パック2への大電流、インバータ回路16への大電流、昇圧回路13への大電流を防止することができ、各構成部への悪影響を軽減することができる。また、第1及び第2のPWM信号の両方を徐々に増加させるようにしても良い。
【0077】
また、電池パック2として電池電圧14.4Vのリチウム電池パックを説明したが、電池電圧或いは電池種類が異なる複数の電池パックを選択的に接続可能としても良い。電動工具は、種類や用途に応じて種々の電池パックが用意されている。従って、電池パックの種類に応じてソフトスタート制御を変更するようにすれば、電池パックの電力消費を抑え最適な制御が可能となる。
【0078】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0079】
一方、電動工具にも種々の種類が存在するが、交流電源で駆動する電動工具は、例えば、AC100Vで駆動するものが考えられる。この場合、インバータ装置1に接続される電池パック或いは電動工具の種類に応じて、インバータ装置1の出力を定常時で100Vとなるように昇圧回路13及びインバータ回路16をソフトスタート制御すれば、如何なる電池パック、電動工具が接続されても、それらに大電流が流れることを抑制することができ、寿命低下を抑制することができる。なお、外国のように交流電源の電圧が100V以外の場合には、その電圧となるようにソフトスタート制御すればよい。
【0080】
例えば、電池パックに電池電圧、電池種等の情報を有する識別手段(例えば、抵抗)を設け、制御部19はこの抵抗値を読み取ることにより接続された電池パックの種類を判別することができる。接続された電池パックに応じて、ソフトスタートの制御(FET132のスイッチングやFET161−164のデューティ比の増加割合)を変更する。更に、接続された電動工具の種類も同様に判別してソフトスタート制御を変更することも可能である。
【0081】
また、電池パック2以外から電力を供給される場合であっても、電源やインバータ回路16への悪影響は軽減させることができる。
【0082】
続いて、図5乃至図7を用いて、本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0083】
図5は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、電源スイッチ検出ダイオード10及びトリガ検出部9を備えていない点を除き、図2と同一の構成である。
【0084】
電動工具3は、適正範囲内の電圧によって動作するものであるのに対し、電動工具3(ACモータ31)に供給される電圧は、使用に伴う電池電圧の低下や、過負荷状態における電圧の低下によって低下する可能性がある。従って、インバータ装置1に接続された電動工具3は、適正範囲外の電圧が供給されることにより故障を生じる虞がある。
【0085】
そこで、本実施の形態による制御部19では、図6のタイムチャートに示すように、更に、昇圧回路13によって昇圧された電圧(平滑コンデンサ143の電圧であって、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧)が上限値(155V)と下限値(127V)とにより規定される所定範囲から外れた場合にも、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0086】
ここで、図7のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の停止制御について説明する。
【0087】
図7のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0088】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S201)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S202)。
【0089】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S202:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S203)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S202:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S204)。
【0090】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S205)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S205:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0091】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S205:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S206)。過放電信号が入力されていた場合には(S206:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0092】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S206:NO)、昇圧された電圧が所定の上限値(例えば、155V)より大きいか否かを判断する(S207)。大きい場合には(S207:YES)、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続したか否かを判断する(S208)。継続した場合には(S208:YES)、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0093】
ここで、昇圧電圧が所定の上限値より大きい状態が継続した場合、電動工具を使用すると、定格値以上の回転数でモータが回転しまうことがあるため、所定時間以上継続したらモータへの出力を停止することで電動工具の破損を防止している。また、インバータ装置1のインバータ回路16のFET等の部品の破損も同時に防止している。なお、通常時には昇圧電圧が所定の上限値より大きい状態になることは殆どないが、昇圧電圧を制御する制御部19や昇圧電圧検出部15が壊れた際に生じる場合があるため、このような制御は、インバータ装置1の保護に有効である。
【0094】
また、電圧は、ノイズ等によって一時的に上昇や低下する場合がある。このような場合にまでACモータ31への出力を停止させてしまうと電動工具3の使用に不都合をもたらしてしまう。従って、本実施の形態では、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続した場合に限り、ACモータ31への出力を停止させている。
【0095】
一方、昇圧された電圧が所定の上限値以下の場合(S207:NO)、又は、昇圧された電圧が所定の上限値より大きい状態が0.5秒以上継続しなかった場合(S208:NO)には、昇圧された電圧が所定の下限値(127V)より小さいか否かを判断する(S209)。小さい場合には(S209:YES)、昇圧された電圧が所定の下限値より小さい状態が3.0秒以上継続したか否かを判断する(S210)。継続した場合には(S210:YES)、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S211)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0096】
一方、昇圧された電圧が所定の下限値以上の場合(S209:NO)、又は、昇圧された電圧が所定の下限値より小さい状態が3.0秒以上継続しなかった場合(S210:NO)には、S201へ戻る。
【0097】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、昇圧回路13によって昇圧された電圧(昇圧電圧検出部15によって検出された電圧)が上限値(155V)と下限値(127V)とにより規定される所定範囲から外れた場合に、ACモータ31への出力を停止させる。従って、電子機器に適正範囲外の電圧が供給されて故障することを防止することが可能となる。
【0098】
また、所定範囲から外れた場合でも、所定時間以上外れた状態が継続しなければACモータ31への出力を停止させないので、ノイズ等による一時的な電圧の上昇や低下によりACモータ31への出力が停止されることを防止することができる。
【0099】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号のいずれか一方の出力を停止すればACモータ31への出力を停止させることができる。なお、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の両出力を停止すれば、電池パック2の電力消費を抑制することができる。
【0100】
また、上記実施の形態では、所定範囲の上限値及び下限値として、155V及び127Vを用いたが、これらに限定されるものではない。
【0101】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0102】
また、図7のフローチャートにおける、S201−S204での昇圧電圧の制御、S205−S206での過放電の検出、及び、S207−S210での出力の停止の制御は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0103】
また、インバータ装置1は、昇圧回路によって昇圧された電圧が所定範囲から外れたことによりACモータ31への出力を停止した回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0104】
続いて、図8乃至図10を用いて、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0105】
図8は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、インバータ回路停止部20を備えている点を除き、図5と同一の構成である。
【0106】
インバータ回路停止部20は、基準電流入力部201と、検出電流入力部202と、比較回路203と、停止回路204と、を備えている。
【0107】
基準電流入力部201は、抵抗201a及び201bを備えており、三端子レギュレータ122aから出力された所定の直流電圧の、抵抗201aと抵抗201bとによる分圧電圧を基準電流として比較回路203に出力する。抵抗201a及び201bは、基準電流が過電流の閾値となるような値に設定されている。
【0108】
検出電流入力部202は、抵抗202a−202cと、オペアンプ202dと、を備えており、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)を増幅し、検出電流として比較回路203に出力する。
【0109】
比較回路203は、オペアンプ203aと、ダイオード203bと、放電用抵抗203cと、コンデンサ203dと、を備え、差動増幅回路として機能する。
【0110】
オペアンプ203aは、入力された基準電流と検出電流とを比較し、検出電流が基準電流以下の場合にはLレベルの信号を出力し、検出電流が基準電流より大きい場合にはHレベルの信号を出力する。Hレベルの信号が出力された場合、すなわち、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、ダイオード203bを介してコンデンサ203dに電荷が蓄えられる。
【0111】
停止回路204は、ダイオード204a及び204bと、FET204cと、を備えている。ダイオード204a及び204bのアノードは、制御部19からPWM信号出力部18へ第2のPWM信号を出力するラインのうち、FET162及び164のゲートへ第2のPWM信号を出力するラインとそれぞれ接続されており、ダイオード204a及び204bのカソードは、FET204cのドレインと接続されている。また、FET204cのゲートは、ダイオード203bのカソードと接続されており、ソースは、GNDと接続されている。
【0112】
このような構成により、コンデンサ203dに所定上の電荷が蓄えられている場合には、FET204cがオンすることとなる。FET204cがオンすると、FET162及び164のゲートへ出力されるはずの第2のPWM信号はFET204cを介してGNDへ流れ込むこととなるので、FET162及び164がオフし、インバータ回路16が停止されることとなる。このようにして、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、インバータ回路16が停止されるので、インバータ装置1、特に、インバータ回路16のFET161−164が故障することを防止することができる。
【0113】
なお、インバータ回路16が停止されると、電流検出抵抗17も電流(電圧)を検出しなくなる、すなわち電流検出抵抗17により検出される電流は小さくなるので、オペアンプ203aの出力は反転してLレベルの出力となり、コンデンサ203dに蓄えられた電圧はダイオード203bと並列に接続された放電用抵抗203cを介して放電される。これにより、FET204cは再びオフするので、過電流が解消された後には、インバータ回路16の強制停止が解除される。少なくともダイオード203b、放電用抵抗203c及びコンデンサ203dは本発明の復帰手段を構成する。
【0114】
ところで、図9(a)に示すように、起動時には、インバータ装置1に過電流となるような大きな起動電流が流れるが、起動電流に対してもインバータ回路16を停止させてしまっては、インバータ装置1を起動させることができなくなってしまう。
【0115】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、図9(b)に示すように、ACモータ31への交流電力の供給を制限することにより、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前に、インバータ回路16の停止を解除するという動作を繰り返す。このような構成により、本実施の形態によるインバータ装置1は、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、いわゆる、ソフトスタートを実現させている。
【0116】
ここで、図10のフローチャートを用いて、本実施の形態におけるソフトスタートについて説明する。
【0117】
図10のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0118】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S301)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S302)。
【0119】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S302:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S303)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S302:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S304)。
【0120】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S305)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S305:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0121】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S305:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S306)。過放電信号が入力されていた場合には(S306:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0122】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S306:NO)、インバータ回路停止部20によりソフトスタート制御が行われる。
【0123】
詳細には、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)に基づき、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きいか否かが判断され(S307)、大きい場合には(S307:YES)、FET162及びFET164を所定時間オフさせた後(S308)、S301へ戻る。なお、インバータ装置1を起動させるためには、前記所定時間は、インバータ回路16の停止からACモータ31の回転が停止するよりも前までの時間である必要があり、本実施の形態では、0.5msecに設定されている。
【0124】
このような制御により、インバータ装置1の起動時には、電流の大きさは、図9(b)に示すように変化し、ACモータ31の回転数は、図9(c)に示すように変化する。また、高負荷時には、電流の大きさは、図9(d)に示すように変化する。
【0125】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にはインバータ回路16を停止させる。従って、インバータ回路16、特に、FET161−164が故障することを防止することが可能となる。同時に、電池パック2に過電流が流れることも防止することができるので、電池パック2の寿命が短くなることも防止することができる。
【0126】
また、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前にインバータ回路16の停止を解除するので、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、ソフトスタートが実現されている。
【0127】
更に、起動時にACモータ31に流れる電流を抑制することができるので、起動時に電池パック2やインバータ装置1にかかる負荷を低減することができる。よって、小型軽量であるが放電能力の低い携帯式の電池パックであっても、丸のこ、刈払機、芝刈機のように直径の大きな刃を回転させる電動工具や、ヘッジトリマのように複数の刃が互いに摺動する電動工具のような、起動時に大きな電流が継続して流れやすくなる電動工具を起動することが可能となる。
【0128】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。
【0129】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にインバータ回路16の停止と解除を繰り返したが、高負荷時には過電流が解消される可能性が低いため、同様の制御を行うことは電力の浪費となる。従って、最初にインバータ回路16を停止させてから所定時間経過後に、依然として、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、解除動作を停止させることが好ましい。
【0130】
その場合、インバータ装置1は、解除動作を停止させた回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0131】
また、上記実施の形態では、インバータ回路停止部20がインバータ回路16を停止させたが、制御部19が、電流検出抵抗17によって検出された電流に基づき、FET162及びFET16をオフさせてインバータ回路16を停止させてもよい。なお、全てのFETをオフさせてもよい。
【0132】
また、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0133】
また、図3のフローチャートにおける、S301−S304での昇圧電圧の制御、S305−S306での過放電の検出、及び、S307での過電流の検出は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0134】
続いて、図11乃至図13を用いて、本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0135】
図11は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、温度検出部30を備えている点を除き、図5と同一の構成である。
【0136】
温度検出部30は、FET132に近接して配置されたサーミスタ30aと、サーミスタ30aに直列に接続された抵抗30bと、を備えており、三端子レギュレータ122aから出力された所定電圧の、サーミスタ30aと抵抗30bとによる分圧電圧を温度信号として制御部19に出力する。
【0137】
ところで、FETは過電流に弱いため、電流検出抵抗17に流れる電流が所定の過電流閾値を上回った場合にFET132をオフさせるという対策が考えられる。しかしながら、FETは、過電流閾値以下であっても所定以上の電流が長時間流れると破損する虞がある。また、FETに流れる電流が破損の可能性の小さなものである場合であっても、温度によっては破損する虞がある。
【0138】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、FET132がオンすることを防止する。
【0139】
図12は、本実施の形態におけるFET132がオンすることを防止する判定基準を示したものである。図12に示すように、本実施の形態では、過電流閾値を10Aに設定し、10A以上の電流が0.5秒以上インバータ装置1に流れた場合にFET132がオンすることを防止する(オフする)。また、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値10Aよりも小さい場合であっても、インバータ装置1に、8A以上10A未満の電流が1.0秒以上流れた場合、6A以上〜8A未満の電流が3.0秒以上流れた場合、及び、5A以上6A未満の電流が5.0秒以上流れた場合にFET132がオンすることを防止する。すなわち、インバータ装置1に流れる電流値に応じてFET132のオン時間を変えており、電流値が大きいほどFET132のオン時間を短くしている。
【0140】
更に、インバータ装置1に流れる電流が4A以上5A未満の場合であっても、FET132の温度100〜120度の範囲で5.0秒以上流れた場合、温度80〜100度の範囲で10.0秒以上流れた場合、及び、温度60〜80度で20.0秒以上流れた場合にもFET132がオンすることを防止する。このような構成により、FETが故障することを適切に防止することができる。すなわち、インバータ装置1に流れる電流値が小さい場合には、FET132の温度に応じてFET132のオン時間を変えており、温度が高いほどFET132のオン時間を短くしている。
【0141】
なお、電流値が4A未満の場合には、FET132の温度が急激に上昇することは考えにくいため、FET132は通常通り、周期的にオン・オフされる。また、電流値が4A以上5A未満の間でありFET132の温度が60度より低い場合にも、FET132が壊れる虞は低いため、FET132は通常通り、周期的にオン・オフされる。
【0142】
次に、図13のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の停止制御について説明する。
【0143】
図13のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0144】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S401)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S402)。
【0145】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S402:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S403)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S402:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S404)。
【0146】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S405)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S405:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S408)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0147】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S405:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S406)。過放電信号が入力されていた場合には(S406:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S408)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0148】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S406:NO)、電流検出抵抗17によって検出された電流及び温度検出部30によって検出された温度が図12に示す判定基準を満たすか否かを判断する(S407)。判定基準を満たす場合には(S407:YES)、FET132をオフさせる、すなわち、FET132がオンすることを防止するための第1のPWM信号を出力する(S408)。
【0149】
一方、判定基準を満たさない場合には(S407:NO)には、S401へ戻る。
【0150】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、FET132をオフさせる、すなわち、FET132がオンすることを防止する。従って、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することを適切に防止することが可能となる。
【0151】
また、図12に示すように、FET132がオンすることを防止するまで(FET132をオフするまで)のオン継続時間(許容継続時間)を電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて変化させるので、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することをより適切に防止することができる。
【0152】
また、図12に示すように、電流検出抵抗17によって検出された電流が5Aを上回った場合には、温度検出部30によって検出された温度に関わらずFET132をオフさせるので、電動工具3の負荷が高い場合にFET132が故障することをより適切に防止することができる。
【0153】
なお、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。
【0154】
また、上記実施の形態では、サーミスタ30aをFET132に近接して配置したが、FET161−164に近接して配置し、電流検出抵抗17によって検出された電流と温度検出部30によって検出された温度の両方に基づいて、第2のPWM信号によりFET161−164をオフさせてもよい。
【0155】
インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0156】
また、図13のフローチャートにおける、S401−S404での昇圧電圧の制御、及び、S405−S406での過放電の検出、及び、S407での出力の停止の制御は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0157】
また、インバータ装置1は、ACモータ31への出力を停止した回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0158】
続いて、図14及び図15を用いて、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0159】
図14は、本実施の形態によるインバータ装置1の回路図であり、電池パック2及び電源部12の構成を除き、図5と同一の構成である。
【0160】
本実施の形態による電池パック2は、二次電池からなる電池組21と、電池パック2の電池特性に応じた抵抗値を有する電池特性判別素子23と、電池特性判別端子24と、を備えており、インバータ装置1には、異なる特性の電池パック2が装着可能である。電池特性としては、電池組25の並列数、定格電圧、及び、種類等が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
また、本実施の形態による電源部12は、電源スイッチ121及び定電圧回路122の他に、電池特性判別抵抗123を備えている。電池特性判別抵抗123と電池パック2の電池特性判別素子22は、電池特性判別端子24を介して、レギュレータ122aと電池パック2のマイナス側端子22との間に直列に接続されており、レギュレータ122aから出力された所定電圧(5V)の、電池特性判別抵抗123と電池特性判別素子23とによる分圧電圧が制御部19に出力される。電池特性判別素子23は、電池パック2の電池特性に応じた異なる抵抗値を有しているため、制御部19は、入力された分圧電圧に基づき電池パック2の電池特性を判別し、電池特性(電池種)識別信号を出力する。
【0162】
ところで、本実施の形態には異なる特性の電池パック2が接続可能であるが、全ての電池パック2から同一の出力を得ようとすると、電池パック2の寿命や出力効率を著しく低下させてしまう虞がある。例えば、1並列タイプの電池パック2から2並列タイプの電池パック2と同一の電流を得ようとすると、1並列の電池パック2には2並列の電池パック2の2倍の電流が流れることとなり、1並列の電池パック2の寿命を低下させてしまう虞がある。また、電池パック2は、種類によって定格電流が異なるため、同様の理由により電池パック2の寿命を低下させてしまう虞がある。
【0163】
更に、通常、トランスの一次側巻線と二次側巻線との巻数比は、所定の電圧が入力された場合に最大の変換効率が得られるような値に設定されているため、所定以外の定格電圧を有する電池パック2がインバータ装置1に接続された場合には、トランス131における変換効率が著しく低下してしまう虞がある。また、この場合、温度上昇が生じるため、温度上昇を防止するために放熱フィン等が必要となり、インバータ装置1が大型化してしまう。
【0164】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、インバータ装置1から電動工具3のACモータ31への出力を制御、すなわち、FET132及びFET161−164がオン・オフすることを防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。
【0165】
ここで、図15のフローチャートを用いて、本実施の形態における制御部19による出力の防止制御について説明する。
【0166】
図15のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121がオンされると、定電圧回路122により電池パック2の電池電圧から制御部19の駆動電圧が生成され、この駆動電圧により制御部19が駆動されることとなる。
【0167】
また、本実施の形態によるインバータ装置1には、定格電圧14.4V、定格容量3.0Ah(2並列タイプ)の電池パック2から電力を供給されることに適した構成となっているものとする。
【0168】
まず、制御部19は、電池特性判別素子23及び電池特性判別抵抗123から電池特性識別信号を検出し(S501)、電池特性識別信号に基づき、インバータ装置1に接続された電池パック2の定格電圧が14.4Vであるか否かを判断する(S502)。14.4Vでない場合、例えば18Vの電池パックの場合には(S502:NO)、インバータ装置1からACモータ31への出力を防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWP信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が遮断される。この動作は、上記したように、定格電圧14.4Vの電池パック2が接続された際に最も出力効率が良いトランス131を設定しており、18.0Vの電池パックでは出力効率が低下し所望の出力が得られなくなる可能性があるため、ACモータ31への出力を遮断するようにしている。
【0169】
一方、14.4Vである場合には(S502:YES)、続いて、電池特性識別信号に基づき、インバータ装置1に接続された電池パック2の定格容量が3.0Ahであるか否かを判断する(S503)。3.0Ahでない場合には(S503:NO)、インバータ装置1からACモータ31への出力を防止するための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWP信号の出力を停止する。この動作は、上記したように、定格容量3.0Ah(2並列タイプ)の電池パックに適した使用にしているためのものである。定格容量1.5Ah(1並列タイプ)の場合には、2並列タイプの電池パック接続時と同様の出力を得ようとして電流が2並列タイプの2倍流れることになり、電池パックの寿命を低下させたり、FET132を故障させてしまう虞がある。
【0170】
一方、3.0Ahである場合には(S503:YES)、本実施の形態によるインバータ装置1に適した電池パック2が接続されていることとなるので、ACモータ31への出力を開始させる。
【0171】
具体的には、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S504)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S505)。
【0172】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S505:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S506)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S505:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S507)。
【0173】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S508)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S508:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0174】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S508:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S509)。過放電信号が入力されていた場合には(S509:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S510)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0175】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S510:NO)、S501へ戻る。
【0176】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、昇圧回路13及びインバータ回路16が動作することを防止する。従って、インバータ装置1に適していない電池パック2がインバータ装置1に接続された場合に、電池パック2の寿命や出力効率が著しく低下することを防止することが可能となる。
【0177】
例えば、1並列タイプの電池パック2がインバータ装置1に接続された場合には、上記構成により、1並列タイプの電池パック2の寿命が低下することを防止することができる。
【0178】
また、所定の種類以外の電池パック2がインバータ装置1に接続された場合にも、上記構成により、電池パック2の寿命が低下することを防止することができる。
【0179】
更に、所定の定格電圧を有しない電池パック2(例えば18V)がインバータ装置1に接続された場合には、上記構成により、トランス131における変換効率が低下することを防止することができる。
【0180】
なお、上記実施の形態では、電池特性判別素子22から得られる電池特性識別信号に基づいて、FET132及びFET161−164がオンすることを防止したが、FET132及びFET161−164のいずれか一方のみがオンすることを防止してもよい。
【0181】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に接続された電池パック2の種類を、電池パック2内に設けられた電池特性判別素子23とインバータ装置1内に設けられた電池特性判別抵抗23により判別するように構成したが、判別の方法としてはこの構成に限るものではなく、インバータ装置1に使用できる電池パックと使用できない電池パックとを判別できればよい。
【0182】
例えば、電池パックとインバータ装置を接続する判別用端子の有無、すなわち、使用可能な電池パックには充放電用端子以外の端子(判別端子)を設け、使用不可能な電池パックには判別端子を設けないことで判別するようにしてもよい。或いは、種類によって電池パックの接続部やインバータ装置の電池接続部(インバータ装置と電池パックの接続部)を異なる形状にし、機械的に使用できない電池パックはインバータ装置に装着(接続)できないようにしてもよい。
【0183】
また、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックのいずれかの種類によって出力することを防止するようにしてもよいし、異なる電池電圧(例えば18V)の電池パックに最適な構成としてもよい。
【0184】
また、図15のフローチャートにおける、S504−S507での昇圧電圧の制御、及び、S508−S509での過放電の検出は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0185】
また、上記第1から第5の実施の形態をそれぞれ組み合わせてもよい。例えば、第1の実施の形態又は第3の実施の形態におけるソフトスタートを、第2の実施の形態における出力停止制御、第4の実施の形態における出力停止制御、第5の実施の形態における出力防止制御のいずれか、又は、それらの全てと組み合わせることで、インバータ装置1の信頼性を一層上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0186】
1 インバータ装置
2 電池パック
3 電動工具
19 制御部
16 インバータ回路
31 ACモータ
32 トリガスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力により駆動されるACモータを有する電動工具と、
携帯式の電池パックと、
前記電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能な電源装置と、
を備えたことを特徴とする電動工具システム。
【請求項2】
前記電動工具は、ユーザにより操作可能なトリガスイッチを備え、
前記電源装置は、
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、
前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記電源装置は、
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、
前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、
を更に備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項3に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、
前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項6】
前記電源装置は、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項8】
前記電源装置は、
前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項9】
前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の電動工具システム。
【請求項10】
前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことを特徴とする請求項9に記載の電動工具システム。
【請求項11】
前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項12】
交流電力により駆動されるACモータと、ユーザにより操作可能なトリガスイッチと、を有する電動工具に接続可能な電源装置であって、
携帯式の電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能なインバータ回路と、
前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする電源装置。
【請求項13】
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、
前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、
を更に備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項13に記載の電源装置。
【請求項15】
前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、
前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項16】
前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項18】
前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項19】
前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項18に記載の電源装置。
【請求項20】
前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことを特徴とする請求項19に記載の電源装置。
【請求項21】
前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項1】
交流電力により駆動されるACモータを有する電動工具と、
携帯式の電池パックと、
前記電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能な電源装置と、
を備えたことを特徴とする電動工具システム。
【請求項2】
前記電動工具は、ユーザにより操作可能なトリガスイッチを備え、
前記電源装置は、
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、
前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記電源装置は、
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、
前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、
を更に備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項3に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、
前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項6】
前記電源装置は、前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項8】
前記電源装置は、
前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項9】
前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の電動工具システム。
【請求項10】
前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことを特徴とする請求項9に記載の電動工具システム。
【請求項11】
前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の電動工具システム。
【請求項12】
交流電力により駆動されるACモータと、ユーザにより操作可能なトリガスイッチと、を有する電動工具に接続可能な電源装置であって、
携帯式の電池パックが接続されている場合に前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換して前記ACモータに供給可能なインバータ回路と、
前記トリガスイッチの操作に応じた交流電力を前記ACモータへ供給するよう前記インバータ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を制限することを特徴とする電源装置。
【請求項13】
前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子により変換された交流電力を変圧するトランスと、
前記変圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として前記インバータ回路に出力する整流平滑回路と、
を更に備え、
前記制御部は、前記トリガスイッチが操作されてから所定時間経過するまでの間は、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項13に記載の電源装置。
【請求項15】
前記インバータ回路は、前記ACモータと接続される複数の第2のスイッチング素子を備え、
前記制御部は、前記複数の第2のスイッチング素子のスイッチングのデューティを変化させることにより、前記ACモータへの交流電力の供給を目標値まで段階的に増加させることを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項16】
前記電池パックの電圧を検出する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池パックの電圧が所定値より小さい場合に、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記インバータ回路への電力の供給を停止させることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項18】
前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流値が所定値を上回った場合に前記ACモータへの交流電力の供給を停止させる停止手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項12に記載の電源装置。
【請求項19】
前記ACモータへの交流電力の供給が停止されてから第1の所定時間経過後に前記電流値が前記所定値以下に低下していた場合には、前記ACモータへの交流電力の供給を復帰させる復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項18に記載の電源装置。
【請求項20】
前記電流値が最初に前記所定値を上回ってから前記第1の所定時間より長い第2の所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が、前記所定値を再び上回っていた場合には、前記復帰手段による前記交流電力の供給の復帰を防止する防止手段を更に備えたことを特徴とする請求項19に記載の電源装置。
【請求項21】
前記停止手段は、少なくとも前記ACモータの起動時に動作することを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の電源装置。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図9(d)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図9(d)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−105633(P2012−105633A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66571(P2011−66571)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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