説明

電動機の冷却構造

【課題】コイルエンドの形状を複雑化させること無く、傾斜角度に依らず冷却性能を確保し得る電動機の冷却構造を提供する。
【解決手段】複数の環状鋼板61,62うちの少なくともステータ60の軸方向一端側を、第1折り返し部TP1からその径方向外側に突出した第2環状鋼板62とし、当該第2環状鋼板62によりオイル連通路12から供給されるオイルOを第1折り返し部TP1の周囲に沿わせて移動させている。これにより、従前のようにコイルエンド(折り返し部)の形状を複雑化させること無く、冷却構造を構築することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液供給部から供給される冷却液により電動機を冷却する電動機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機であるモータジェネレータを駆動源としたハイブリッド車両や電気自動車等の開発が進んでいる。これらの車両はリチウムイオン二次電池等の高電圧バッテリを搭載し、高電圧バッテリからモータジェネレータに駆動電流を供給することでモータジェネレータを高出力で回転駆動(力行駆動)し、これにより車両を走行させている。モータジェネレータは高出力で回転駆動されるため高温となり、モータジェネレータの性能保持のためにも、モータジェネレータの冷却効率を向上させることが重要である。
【0003】
モータジェネレータの冷却構造としては、例えば循環するオイル(冷却液)によってモータジェネレータを冷却するようにした、所謂油冷方式の冷却構造を採用した技術があり、回転駆動されるモータジェネレータにオイルを噴射または滴下することで、オイルを介してモータジェネレータの熱を外部に逃がすようにしている。このような油冷方式の冷却構造を採用した技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された回転電機(電動機)は、ステータコアにコイルを巻き付け、ステータコアの軸方向に沿う両端側にそれぞれコイルエンドを設けている。各コイルエンドはコイルの折り返しにより形成され、各コイルエンドにおいては、回転電機の回転駆動時において、特に他の部分に比して高温となる。そのため、特許文献1に記載された回転電機においては、各コイルエンドに対して各油供給ポート(冷却液供給部)から油(オイル)を噴射または滴下させ、これにより各コイルエンドを効率良く冷却し、ひいては回転電機の冷却効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−311750号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された電動機によれば、コイルエンドの成形時に、当該コイルエンドの周方向に沿う油路溝を形成し、当該油路溝にオイル(冷却液)を噴射または滴下させ、これにより多くのオイルをコイルエンドに接触させるようにしている。したがって、コイルエンドの形状が複雑化するばかりか、コイルエンドを成形するための作業工程が煩雑化し、ひいては歩留まりの悪化を招くという問題を生じ得る。
【0007】
さらには、例えば、車両側のレイアウト等の都合により、電動機をその軸芯が傾斜するよう車両に搭載する必要がある場合には、油路溝の深さが浅いため、当該油路溝からオイルがはみ出てしまうことが起こり得る。つまり、電動機の傾斜角度(車両への搭載角度)によっては、冷却効率が低下するようなことが起こり得る。そこで、例えば、油路溝の深さを深くして、これによりオイルがはみ出るのを抑制することも考えられるが、この場合にはコイルの巻き数を確保(モータ性能の確保)するためにコイルエンドが大型化し、ひいては電動機全体が大型化するという問題を生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、コイルエンドの形状を複雑化させること無く、傾斜角度に依らず冷却性能を確保し得る電動機の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動機の冷却構造は、冷却液供給部から供給される冷却液により電動機を冷却する電動機の冷却構造であって、前記電動機を、複数の環状鋼板を積層して形成され、コイルが巻き付けられるステータと、前記ステータから当該ステータの軸方向に向けて突出し、前記コイルを折り返して形成されるコイルエンドと、前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記コイルへの通電により回転するロータとから形成し、前記複数の環状鋼板うちの少なくとも前記ステータの軸方向一端側の環状鋼板を、前記コイルエンドからその径方向外側に突出した大径環状鋼板とし、当該大径環状鋼板により前記冷却液供給部から供給される前記冷却液を前記コイルエンドの周囲に沿わせて移動させることを特徴とする。
【0010】
本発明の電動機の冷却構造は、前記電動機を、前記ステータの軸方向一端側が上方側に位置し、前記ステータの軸方向他端側が下方側に位置するよう車両に搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動機の冷却構造によれば、複数の環状鋼板うちの少なくともステータの軸方向一端側の環状鋼板を、コイルエンドからその径方向外側に突出した大径環状鋼板とし、当該大径環状鋼板により冷却液供給部から供給される冷却液をコイルエンドの周囲に沿わせて移動させるので、従前のようにコイルエンドの形状を複雑化させること無く、冷却構造を構築することができる。また、出力やサイズ等が大きい仕様違いの電動機の環状鋼板を大径環状鋼板として用い、当該大径環状鋼板を他の環状鋼板とともに積層することもできる。これにより、部品の共通化を図って製造コストの上昇を抑えることができる。さらに、電動機を、ステータの軸方向一端側が上方側に位置し、ステータの軸方向他端側が下方側に位置するよう車両に搭載することもできる。この場合、大径環状鋼板はコイルエンドから径方向外側に突出しているので、コイルエンドに供給された冷却液は、コイルエンドからはみ出て大径環状鋼板を越えることが無く、冷却効率が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ハイブリッド車両の駆動系統の概略を示すブロック図である。
【図2】モータジェネレータの車両への搭載状態を示す斜視図である。
【図3】ステータコアを分解して示す分解斜視図である。
【図4】オイルの流れ状態を説明する部分断面図である。
【図5】オイルの流れ状態を説明する斜視図である。
【図6】第2実施の形態における図3に対応した分解斜視図である。
【図7】第2実施の形態における図4に対応した部分断面図である。
【図8】第2実施の形態における図5に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1はハイブリッド車両の駆動系統の概略を示すブロック図を、図2はモータジェネレータの車両への搭載状態を示す斜視図を、図3はステータコアを分解して示す分解斜視図を、図4はオイルの流れ状態を説明する部分断面図を、図5はオイルの流れ状態を説明する斜視図をそれぞれ表している。
【0015】
図1に示すハイブリッド駆動装置10は、図示しないハイブリッド車両(車両)の前方側に搭載され、エンジン(内燃機関)20および駆動機構30を備え、ドライブシャフト40を回転駆動するようになっている。駆動機構30は、エンジン20とドライブシャフト40との間に動力伝達可能に設けられ、駆動機構30は、トルクコンバータ31,クラッチ機構32,変速機33およびモータジェネレータ(電動機)50を備えている。
【0016】
トルクコンバータ31は、エンジン20とクラッチ機構32との間に設けられ、トルクコンバータ31内に充填された比較的粘度の低いオイル(図示せず)を作動媒体として、エンジン20の動力をクラッチ機構32に伝達するようになっている。
【0017】
クラッチ機構32は、トルクコンバータ31と変速機33との間に設けられ、トルクコンバータ31と変速機33との間の動力伝達経路を、正回転または逆回転で締結するようになっている。具体的には、シフト位置を前進(D)とすると正回転で締結され、シフト位置を後進(R)とすると逆回転で締結される。また、クラッチ機構32は、トルクコンバータ31と変速機33との間の動力伝達経路を開放するようになっており、シフト位置をニュートラル(N)とすることで動力伝達経路が開放される。
【0018】
変速機33は、クラッチ機構32とモータジェネレータ50との間に設けられ、トルクコンバータ31,クラッチ機構32を介して伝達されるエンジン20の回転数(動力)を変速するようになっている。変速機33は、例えば、プライマリプーリおよびセカンダリプーリ(いずれも図示せず)を備えた無段変速機により形成されている。プライマリプーリは入力側を、セカンダリプーリは出力側を形成し、プライマリプーリ側にはクラッチ機構32およびモータジェネレータ50が設けられ、セカンダリプーリ側にはドライブシャフト40が設けられている。これにより、セカンダリプーリの回転数を無段階で調整することで、ドライブシャフト40の回転数が無段階で調整される。
【0019】
ここで、モータジェネレータ50は、駆動モータおよび発電機として機能するようになっている。例えば、ハイブリッド車両を停車状態から加速させる場合には、モータジェネレータ50を力行駆動し、これにより大きな駆動トルクを発生してスムーズに加速させる。また、ハイブリッド車両が高速で巡航している場合においては、エンジン20のみの動力で燃費の良い駆動状態とする。さらに、ハイブリッド車両を減速させて停車状態とする場合においては、モータジェネレータ50を回生駆動し、これにより運動エネルギを電気エネルギに変換して減速させる。そして、変換した電気エネルギは車載バッテリ(図示せず)の充電により回収される。
【0020】
図2に示すように、モータジェネレータ50は、ハイブリッド駆動装置10の外郭を形成するケーシング11内に設けられている。ケーシング11は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することにより所定形状に形成され、放熱性に優れたものとなっている。図2においては、ハイブリッド駆動装置10の一部(モータジェネレータ50の部分)を示しており、モータジェネレータ50の前方側にはエンジン20(図1参照)が配置され、モータジェネレータ50の下方側にはドライブシャフト40が配置されている。
【0021】
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両の車体側に設けられたブラケットに、強化ゴム等よりなるマウントブッシュ(何れも図示せず)を介して取り付けられるようになっている。ここで、ハイブリッド駆動装置10は、ドライブシャフト40をハイブリッド車両の床下等に導けるようにするために、後方側に所定角度傾斜して搭載されている。つまり、モータジェネレータ50の軸芯Cの後方側は、モータジェネレータ50の軸芯Cの前方側に比して、低い位置(地面に近い位置)に配置されるようになっている。本実施の形態においては、モータジェネレータ50は後方側にα°(例えば5°〜10°)傾斜されている(図4参照)。
【0022】
モータジェネレータ50は、固定子としてのステータ60および回転子としてのロータ70を備えている。ステータ60は、磁性材料よりなる複数の第1環状鋼板61,61,・・・と1枚の第2環状鋼板62とを積層して形成され、複数の環状鋼板61,62のうちの第2環状鋼板62は、ステータ60の軸方向一端側(前方側)に設けられている。
【0023】
図3に示すように、各第1環状鋼板61は、環状本体部61aと、径方向内側に突出するよう一体に設けられた複数のティース部61bと、径方向外側に突出するよう一体に設けられた3つの固定片61cとを備えている。各固定片61cにはボルト孔61dが形成されており、各第1環状鋼板61を積層した状態のもとでボルト孔61dに固定ボルト(図示せず)を貫通させ、当該固定ボルトをケーシング11(図2参照)にネジ結合することにより、モータジェネレータ50をケーシング11内に固定することができる。
【0024】
第2環状鋼板62は、各第1環状鋼板61よりも大径に形成され、環状本体部62aと、径方向内側に突出するよう一体に設けられた複数のティース部62bとを備えている。第2環状鋼板62の直径寸法は、第1環状鋼板61の固定片61cの頂部(先端部)を結ぶ仮想円(図示せず)の直径寸法と同じ直径寸法に設定されている。環状本体部62にはボルト孔62cが形成されており、各第1環状鋼板61のボルト孔61dと同様に、ボルト孔62cにも固定ボルトが貫通するようになっている。ここで、第2環状鋼板62は、本発明における大径環状鋼板を構成しており、第2環状鋼板62は、後述するコイル63の一端側の第1折り返し部TP1の径方向外側に大きく突出している。
【0025】
各ティース部61b,62bには、図4に示すように、集中巻きまたは分布巻きによって、導電性に優れた銅線等よりなるコイル63が巻き付けられている。コイル63は、ステータ60の軸方向両側(前方側および後方側)で折り返されており、一端側の第1折り返し部TP1および他端側の第2折り返し部TP2は、ステータ60の軸方向両側に向けてそれぞれ突出している。コイル63は、絶縁材としてのプラスチック材料等によってモールドされており、これにより隣り合うティース部61bに巻き付けられたコイル63同士が短絡することは無い。ここで、モールドされたコイル63の各折り返し部TP1,TP2は、本発明におけるコイルエンドを構成している。
【0026】
図2に示すように、ロータ70は、磁性材料よりなる複数の環状鋼板71を積層して形成され、ステータ60の径方向内側に所定の隙間を介して回転自在に設けられている。各環状鋼板71の中心部分には、回転軸72が貫通して固定され、各環状鋼板71の回転軸72の周囲には、当該回転軸72の軸方向に沿うよう複数の棒状永久磁石(図示せず)が設けられている。これにより、コイル63(図4参照)に駆動電流を供給(通電)することで電磁力が発生し、当該電磁力によりロータ70がステータ60に対して回転するようになっている。
【0027】
ケーシング11には、冷却液としてのオイルO(図4参照)を、モータジェネレータ50に向けて噴射または滴下(供給)するオイル連通路(冷却液供給部)12が設けられている。オイル連通路12は、ケーシング11の肉厚部分を中空に成形する等して形成され、モータジェネレータ50の上方側で、かつモータジェネレータ50の軸芯Cに沿って延びている。
【0028】
オイル連通路12の軸方向両側には、図4に示すように、その直下に位置する各折り返し部TP1,TP2に対応して、一対の供給孔12a,12bがそれぞれ設けられている。そして、各供給孔12a,12bから噴射または滴下されたオイルOは、各折り返し部TP1,TP2に到達するようになっている。
【0029】
オイル連通路12の軸方向一端側には、オイル供給パイプ13の他端側が連結され、当該オイル供給パイプ13の一端側には、トランスミッション用オイルポンプ(図示せず)が連結されている。そして、トランスミッション用オイルポンプを駆動することで、オイル供給パイプ13,オイル連通路12および各供給孔12a,12bを介して、モータジェネレータ50にオイルOが供給される。なお、モータジェネレータ50に供給されたオイルOは、モータジェネレータ50の下方側にあるオイルパン(図示せず)に一旦溜められて、その後、コンタミネーション等を捕獲するためのフィルタ(図示せず)を介して循環するようになっている。
【0030】
次に、以上のように形成した第1実施の形態に係るモータジェネレータ50の冷却構造の動作について、図4および図5を用いて詳細に説明する。
【0031】
ハイブリッド車両を走行させる等してハイブリッド駆動装置10を作動させると、エンジン20の駆動力等によってトランスミッション用オイルポンプが作動する。すると、ケーシング11内のオイルパンに溜められたオイルOが、フィルタを介してオイル供給パイプ13およびオイル連通路12に供給され、その後、各供給孔12a,12bからモータジェネレータ50に向けて噴射または滴下される。
【0032】
各供給孔12a,12bから供給されたオイルOは、モータジェネレータ50の軸方向両側に突出して設けられた、上方側に位置する第1折り返し部TP1および下方側に位置する第2折り返し部TP2にそれぞれ到達する。
【0033】
ステータ60の軸方向他端側(下方側)に位置する第2折り返し部TP2に到達したオイルOは、図中実線矢印に示すように流れて、第2折り返し部TP2の周囲を伝って流れ落ちる。このとき、図5に示すように、モータジェネレータ50の軸芯Cを挟む両側にオイルOは分岐して流れ、そのため第2折り返し部TP2の周囲に満遍なくオイルOを行き渡らせることができ、高温となる第2折り返し部TP2を効率良く冷却することができる。
【0034】
一方、ステータ60の軸方向一端側(下方側)に位置する第1折り返し部TP1に到達したオイルOは、図中破線矢印に示すように流れて、第1折り返し部TP1の周囲を伝って流れ落ちる。ここで、第1折り返し部TP1の直径寸法と、第1環状鋼板61の環状本体部61aの直径寸法とは略同じ直径寸法となっているが、第2環状鋼板62の直径寸法の方が第1折り返し部TP1の直径寸法よりも大きく設定している。したがって、図4に示すように、第2環状鋼板62がオイルOの障壁として作用する。つまり、第1折り返し部TP1に到達したオイルOは、モータジェネレータ50が傾斜しているにも関わらず、第2環状鋼板62を越えて各第1環状鋼板61側には流れず第2環状鋼板62に沿って流れる。
【0035】
このように、第2環状鋼板62は、第1折り返し部TP1に到達したオイルOを、第1折り返し部TP1の周囲に沿わせて移動させるようになっている。また、図5に示すように、モータジェネレータ50の軸芯Cを挟む両側にオイルOは分岐して流れ、そのため第1折り返し部TP1の周囲に満遍なくオイルOを行き渡らせることができ、高温となる第1折り返し部TP1を効率良く冷却することができる。
【0036】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るモータジェネレータ50の冷却構造によれば、複数の環状鋼板61,62うちの少なくともステータ60の軸方向一端側を、第1折り返し部TP1からその径方向外側に突出した第2環状鋼板62とし、当該第2環状鋼板62によりオイル連通路12から供給されるオイルOを第1折り返し部TP1の周囲に沿わせて移動させている。これにより、従前のようにコイルエンド(折り返し部)の形状を複雑化させること無く、冷却構造を構築することができる。
【0037】
また、出力やサイズ等が大きい仕様違いのモータジェネレータの環状鋼板を大径環状鋼板として用い、当該大径環状鋼板を他の環状鋼板とともに積層することもできる。これにより、部品の共通化を図って製造コストの上昇を抑えることができる。
【0038】
さらに、モータジェネレータ50を、ステータ60の軸方向一端側が上方側に位置し、ステータ60の軸方向他端側が下方側に位置するようハイブリッド車両に搭載し、第2環状鋼板62を第1折り返し部TP1から径方向外側に突出させるので、第1折り返し部TP1に供給されたオイルOは、第1折り返し部TP1からはみ出て第2環状鋼板62を越えることが無く、冷却効率の低下を確実に防止できる。
【0039】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図6は第2実施の形態における図3に対応した分解斜視図を、図7は第2実施の形態における図4に対応した部分断面図を、図8は第2実施の形態における図5に対応した斜視図をそれぞれ表している。
【0041】
第2実施の形態に係るモータジェネレータ(電動機)80は、第1実施の形態に係るモータジェネレータ50に比して、ステータの形状およびオイル連通路の形状が異なっている。
【0042】
モータジェネレータ80を形成するステータ81は、複数の第1環状鋼板61を積層した第1環状鋼板積層群G1と、複数の第2環状鋼板62を積層した第2環状鋼板積層群G2とを、交互にさらに積層することにより形成されている。また、ステータ81においても、各環状鋼板61,62のうちのステータ81の軸方向一端側を、第2環状鋼板62としており、これにより第1実施の形態と同様に、高温となる第1折り返し部TP1を効率良く冷却できるようにしている。
【0043】
ステータ81には、複数の間隙Sが形成されている。各間隙Sは、第1環状鋼板積層群G1と第2環状鋼板積層群G2とを交互に積層したことにより、各環状鋼板積層群G1,G2間に形成されている。各間隙Sには、オイル連通路90の軸方向に沿って所定間隔で形成されたサブ供給孔91a〜91dが対向しており、これにより各サブ供給孔91a〜91dから供給されるオイルOは、各間隙Sに沿って流れ落ちるようになっている(図7,8の実線矢印および破線矢印参照)。ここで、オイル連通路90の軸方向両側に設けた一対の供給孔92a,92bは、第1実施の形態の各供給孔12a,12bと同様に、それぞれ各折り返し部TP1,TP2と対向している。
【0044】
以上のように形成した第2実施の形態に係るモータジェネレータ80の冷却構造においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏する。これに加え、第2実施の形態においては、各環状鋼板積層群G1,G2間に複数の間隙Sを形成し、当該各間隙SにオイルOを噴射または滴下させるため、モータジェネレータ80のステータ81を含む全体を効果的に冷却することが可能となる。
【0045】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ステータ60,81の軸方向一端側の第1折り返し部TP1に対応させて、当該第1折り返し部TP1よりも大径の第2環状鋼板62を設け、これによりオイルOを第1折り返し部TP1の周囲に沿わせているが、本発明はこれに限らない。つまり、モータジェネレータ50,80の傾斜方向が逆の場合には、ステータ60,81の軸方向他端側の第2折り返し部TP2に対応させて第2環状鋼板62を設ければ良い。要は、傾斜したモータジェネレータの軸方向両側のうちの高い位置側に、折り返し部よりも大径の環状鋼板を設ければ良い。
【0046】
また、上記各実施の形態においては、第2環状鋼板62の直径寸法を、第1環状鋼板61の固定片61cの頂部を結ぶ仮想円の直径寸法と同じ直径寸法としたが、本発明はこれに限らず、モータジェネレータ50,80の傾斜角度(搭載角度)やオイルOの供給量等に応じて、その直径寸法を任意に変更しても良い。
【0047】
さらに、上記第1実施の形態に係るモータジェネレータ50においては、第2環状鋼板62を1枚としたが、本発明はこれに限らず、第2環状鋼板62に必要とされる剛性等に応じて、第2環状鋼板62を2枚以上積層しても良い。
【0048】
また、上記第2実施の形態に係るモータジェネレータ80においては、複数の第2環状鋼板62を積層して第2環状鋼板積層群G2を形成したが、本発明はこれに限らず、第2環状鋼板積層群G2に換えて1枚の第2環状鋼板62を採用しても良い。この場合、間隙Sの幅寸法を大きくすることができ、モータジェネレータ全体をより効果的に冷却することが可能となる。
【0049】
さらに、上記各実施の形態においては、エンジン20およびモータジェネレータ50,80を有するハイブリッド車両に本発明を適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、駆動源としてモータジェネレータのみを有する電気自動車(EV)等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
12 オイル連通路(冷却液供給部)
50 モータジェネレータ(電動機)
60 ステータ
61 第1環状鋼板(環状鋼板)
62 第2環状鋼板(環状鋼板,大径環状鋼板)
63 コイル
70 ロータ
80 モータジェネレータ(電動機)
81 ステータ
90 オイル連通路(冷却液供給部)
TP1 第1折り返し部(コイルエンド)
TP2 第2折り返し部(コイルエンド)
O オイル(冷却液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液供給部から供給される冷却液により電動機を冷却する電動機の冷却構造であって、
前記電動機を、
複数の環状鋼板を積層して形成され、コイルが巻き付けられるステータと、
前記ステータから当該ステータの軸方向に向けて突出し、前記コイルを折り返して形成されるコイルエンドと、
前記ステータの径方向内側に回転自在に設けられ、前記コイルへの通電により回転するロータとから形成し、
前記複数の環状鋼板うちの少なくとも前記ステータの軸方向一端側の環状鋼板を、前記コイルエンドからその径方向外側に突出した大径環状鋼板とし、当該大径環状鋼板により前記冷却液供給部から供給される前記冷却液を前記コイルエンドの周囲に沿わせて移動させることを特徴とする電動機の冷却構造。
【請求項2】
請求項1記載の電動機の冷却構造において、前記電動機を、前記ステータの軸方向一端側が上方側に位置し、前記ステータの軸方向他端側が下方側に位置するよう車両に搭載することを特徴とする電動機の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−210027(P2012−210027A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72866(P2011−72866)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】