説明

電動機等のクランクシャフトへの組付構造

【課題】クランクシャフトの一端に電動機、クラッチ、プーリー等を組付ける組付構造に関し、電動機、クラッチ、プーリー等の軸方向寸法をコンパクトにすること。
【解決手段】クランクシャフトの一端にクラッチを介してモータ・ジェネレータが組付けられ、モータ・ジェネレータのロータハブ17にプーリーが組付けられ、モータ・ジェネレータのロータハブ17が、第1ベアリング18を介してモータカバー22に回転自在に支持されるとともに、第2ベアリング19を介してクラッチロータ4に相対回転自在に支持された、組付構造。モータカバー22に形成された軸受ハウジングに第1ベアリング18が内嵌圧入され、モータ・ジェネレータのロータハブ17が第1ベアリング18に内嵌圧入され、第2ベアリング19がモータ・ジェネレータのロータハブ17の軸穴に内嵌圧入され、クラッチロータ4が第2ベアリング19に内嵌圧入されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトの一端に電動機、クラッチ、プーリー等を組付けた組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の構造は、たとえば特許文献1に開示されている。同文献には、エンジンのクランクシャフトの一端にクランクプーリが組付けられ、その内部に、当該クランクプーリとクランクシャフトとの動力伝達を断接する電磁クラッチが組付けられている。クランクプーリは、その軸線がクランクシャフトの軸線に対して傾かないように、複数のベアリングで支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3853707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クランクシャフトの端部にクランクシャフトと同軸回転する回転装置(電動機、クラッチ等)を取り付ける場合、当該回転装置の軸線がクランクシャフトの軸線に対して傾かないよう、回転装置を支持するベアリングを軸方向に間隔をおいて2つ設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、軸方向に2つのベアリングを設けると、回転装置の軸方向寸法をコンパクトにすることが難しくなる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、クランクシャフトの一端に電動機、クラッチ、プーリー等を組付ける組付構造に関し、電動機、クラッチ等の回転装置の軸方向寸法をコンパクトにすることができる、電動機等のクランクシャフトへの組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電動機等のクランクシャフトへの組付構造は、クランクシャフトの一端にクラッチを介して電動機が組付けられ、前記電動機のロータハブにプーリーが組付けられ、前記電動機のロータハブが、第1ベアリングを介して前記電動機のカバーに回転自在に支持されるとともに、第2ベアリングを介して前記クラッチのロータに相対回転自在に支持された、組付構造を前提とするものであって、前記電動機のカバーに形成された軸受ハウジングに前記第1ベアリングが内嵌圧入され、前記電動機のロータハブが前記第1ベアリングに内嵌圧入され、前記第2ベアリングが前記電動機のロータハブの軸穴に内嵌圧入され、前記クラッチのロータが前記第2ベアリングに内嵌圧入されたことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成を備える電動機等のクランクシャフトへの組付構造によれば、第1ベアリングおよび第2ベアリングの内外周に対する嵌め合いが圧入による締り嵌めとなっているので、嵌合部の隙間がなくなり、クラッチロータが片持ち構造であっても確実に保持できる。これにより、クランクシャフト1からプーリーに至るまでの回転装置(電動機、クラッチ、プーリー等)の軸方向寸法をコンパクトにできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動機、クラッチ、プーリー等の回転装置の軸方向寸法をコンパクトにすることができる。また、電動機のカバー、クラッチのロータ等のモジュール化が図られ、クランクシャフトへの組付け性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンジンのクランクシャフトの一端部周辺の構造を示す図であって、本発明の実施の形態に係る電動機等のクランクシャフトへの組付構造を示す図である。
【図2】モータカバー、クラッチロータ等のモジュールを組み上げる際の手順を示す工程図である。
【図3】モジュール化されたモータカバー、クラッチロータ等をクランクシャフトに組付ける際の組付手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る電動機等のクランクシャフトへの組付構造100について説明する。図1は、本実施形態における、エンジンのクランクシャフト1の一端部周辺の構造を示している。
【0012】
図1に示すように、クランクシャフト1には、クラッチ2を介してモータ・ジェネレータ3が組付けられている。クラッチ2は、本実施形態では電磁クラッチであるがワンウェイクラッチであってもよい。本実施形態におけるクラッチ2は、クランクシャフト1にスプライン嵌合されたスチール材からなるクラッチロータ4と、タイミングチェーン5を覆うチェーンカバー7に固定されたクラッチコア部8とで構成されている。クランクシャフト1の一端部内の軸線上には雌ねじ9が形成され、この雌ねじ9に芯出し部材10の一端側に形成されたボルト部12が螺着されている。芯出し部材10の他端側には、クランクシャフト1の軸線に一致する中心線を有する円柱部13が形成されており、この円柱部13はクラッチロータ4の軸穴14に内嵌されている。
【0013】
モータ・ジェネレータ3は、ロータ15とステータ16とからなり、ロータ15は、ロータハブ17を有している。このロータハブ17は、スチール材からなり、第1ベアリング18を介して後述するモータカバー(電動機のカバー)22に回転自在に支持されるとともに、第2ベアリング19を介してクラッチロータ4のボス部20に相対回転自在に支持されている。
【0014】
ロータハブ17の端面23には、プーリー24が組付けられ、ロータハブ17とプーリー24とは互いにビス25にて固定されている。これにより、モータ・ジェネレータ3のロータ15とプーリー24とが常時一体回転する。なお、プーリー24は、無端ベルト26を介して図外の補機類に動力を伝達する。
【0015】
タイミングチェーン5を覆うチェーンカバー7には、モータ・ジェネレータ3のステータ16を固定するためのステータ取付座27と、このステータ取付座27の外周にクランク軸に平行に立設されたカバー接合壁28とが形成されている。このカバー接合壁28にモータカバー22の外周部22cがボルト締結されている。
【0016】
モータカバー22は、アルミ合金からなるカバー本体22a(上記外周部22cを含む)と、スチール材からなるリテーナ22bとで構成され、モータ・ジェネレータ3全体を覆う構造となっている。リテーナ22bは、第1ベアリング18を内嵌する軸受ハウジングを有し、インロー構造により、カバー本体22aの中央開口部に嵌めこまれ、ビス29にて相互に締結されている。
【0017】
なお、符号30はエンジンの回転検出器としてのレゾルバである。このレゾルバ30のロータ31は、モータ・ジェネレータ3のロータ15に回転一体となるよう外嵌されており、レゾルバ30のステータ32は、モータカバー22に図示しないビスにて締結されている。
【0018】
次に、電動機等のクランクシャフトへの組付構造100についての組付手順について説明する。
【0019】
先ず、図2(a)に示すように、第1ベアリング18をリテーナ22b(モータカバー22)の軸受ハウジングに内嵌圧入する。この圧入は油圧プレス等を用いて行われる。後述する圧入も油圧プレス等を用いて行われる。
【0020】
つぎに、図2(b)に示すように、リテーナ22bをカバー本体22aの中央開口部に嵌め込み、ビス29にて相互に締結する。
【0021】
つぎに、図2(c)に示すように、レゾルバ30の外周部をビス33にてモータカバー22のカバー本体22aの内側面に固定する。
【0022】
つぎに、図2(d)に示すように、モータ・ジェネレータ3のロータハブ17を第1ベアリング18に内嵌圧入する。
【0023】
つぎに、図2(e)に示すように、第2ベアリング19をモータ・ジェネレータ3のロータハブ17の軸穴に内嵌圧入する。
【0024】
そして、図2(f)に示すように、クラッチロータ4のボス部20を第2ベアリング19に内嵌圧入する。これまでの組付手順により、モータカバー22、クラッチロータ4等がモジュール化される。以下、このモジュール化されたものを「ロータアッセンブリ35」ともいう。
【0025】
その後、図3に示すように、クランクシャフト1の一端に螺着された芯出し部材12の円柱部13にロータアッセンブリ35内のクラッチロータ4の軸穴14を嵌め込みながら、ロータアッセンブリ35をクランクシャフト1側へ押し込み、クランクシャフト1とクラッチロータ4とをスプライン嵌合させる。
【0026】
最後に、ロータハブ17の端面23にプーリー24をビス25を用いて組付け、モータカバー22をカバー接合壁28にボルトにて締結する。
【0027】
以上に説明した電動機等のクランクシャフトへの組付構造100によれば、第1ベアリング18および第2ベアリング19の内外部に対する嵌め合いが圧入による締り嵌めとなっているので、嵌合部の隙間がなくなり、クラッチロータ4が片持ち構造であっても確実に保持できる。これにより、モータカバー22、クラッチロータ4等のモジュール化が図られ、クランクシャフト1への組付け性が向上する。ベアリング18,19の内外の嵌合部に隙間があると、各部材が軸方向に勝手に動いてしまい、クランクシャフト1の先端に過度な荷重が掛かってしまうおそれが生じるが、本実施形態によれば、ベアリング18,19の内外の嵌合部の隙間が圧入によりなくなるのでそのような問題が解消される。また、ベアリング18,19の内外の嵌合部を圧入構造としたことで、ベアリング18,19のフレッティングが防止でき、軸方向の位置決めの際に用いるライナーなども不要になる。
【0028】
また、上記電動機等のクランクシャフトへの組付構造100によれば、モータカバー22、ロータハブ17およびクラッチロータ4がこれらの部材間に圧入されたベアリング18,19を介して一体的に組み上げられたことにより、プーリー24側のみのベアリング配置となる片持ち構造とでき、エンジン側にもベアリングを配置する両持ち構造を採用する必要がなくなることで、クランクシャフト1からプーリー24に至るまでの軸方向寸法をコンパクトにできる。
【0029】
また、上記電動機等のクランクシャフトへの組付構造100によれば、クランクシャフト1の端部に螺着した芯出し部材10により、クランクシャフト1とモータ・ジェネレータ3との芯ずれを抑制できる。
【0030】
また、上記電動機等のクランクシャフトへの組付構造100によれば、第1ベアリング18および第2ベアリング19のアウターレースおよびインナーレースを嵌入するハウジングが何れもスチール材からなるため、温度上昇があっても圧入嵌合が緩まない。モータカバー22については、第1ベアリング18が圧入されるリテーナ22bのみがスチール材とされ、その他の大部分を占めるカバー本体22aがアルミ合金からなるため、温度上昇による圧入嵌合の緩みを防止しつつも軽量化が図られている。
【0031】
<他の実施形態>
既述の実施形態においては、モータカバー22は、アルミ合金からなるカバー本体22aと、スチール材からなるリテーナ22bとで構成されているが、これらを一体ものとし、いずれもスチール材としてもよい。この場合、重量アップとなるが、クラッチロータ4が片持ち構造であっても確実に保持できるので、軸方向寸法をコンパクト化は図られる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、クランクシャフトの一端にモータ・ジェネレータ、クラッチ、プーリー等を組付けたエンジンに適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 クランクシャフト
2 クラッチ
3 モータ・ジェネレータ(電動機)
4 クラッチロータ(クラッチのロータ)
17 ロータハブ(電動機のロータハブ)
18 第1ベアリング
19 第2ベアリング
22 モータカバー(電動機のカバー)
22a カバー本体(電動機のカバー)
22b リテーナ(電動機のカバー)
100 電動機等のクランクシャフトへの組付構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの一端にクラッチを介して電動機が組付けられ、
前記電動機のロータハブにプーリーが組付けられ、
前記電動機のロータハブが、第1ベアリングを介して前記電動機のカバーに回転自在に支持されるとともに、第2ベアリングを介して前記クラッチのロータに相対回転自在に支持された、電動機等のクランクシャフトへの組付構造であって、
前記電動機のカバーに形成された軸受ハウジングに前記第1ベアリングが内嵌圧入され、
前記電動機のロータハブが前記第1ベアリングに内嵌圧入され、
前記第2ベアリングが前記電動機のロータハブの軸穴に内嵌圧入され、
前記クラッチのロータが前記第2ベアリングに内嵌圧入されたことを特徴とする電動機等のクランクシャフトへの組付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93978(P2013−93978A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234641(P2011−234641)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】