説明

電動車両の駆動車輪支持構造

【課題】車体のコンパクト化、車体レイアウトの自由度向上に貢献できる電動車両の駆動車輪支持構造を提供する。
【解決手段】電動一輪車両の駆動輪支持構造は、左右一対のアーム部5L,5Rを有し該アーム部5L,5Rにより車軸11を支持するフォーク3と、車軸11に回転可能に軸支された駆動車輪2と、駆動車輪2のハブ16と車軸11との間に設けられた駆動用の電動モータ30と、電動モータ30に電力を供給するバッテリ42と、電動モータ30を制御するモータドライバを含む制御ユニット50と、を備え、フォーク3の一方のアーム部5Lの内部にバッテリ42を配置し、フォーク3の他方のアーム部5Rの内部に制御ユニット50を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両の駆動車輪支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより駆動車輪を駆動する鞍乗り型電動車両には、電動モータに電力を供給するバッテリや、電動モータを制御するモータドライバを含む制御ユニット等が搭載される。従来は、これらバッテリや制御ユニット等を車体フレームに設置している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−337780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バッテリや制御ユニット等を車体フレームに設置するとなると、それらの格納スペースを車体フレームに確保しなければならないため、車体が大型化してしまうという課題がある。また、車体レイアウトの自由度が下がるという課題もある。
【0005】
そこで、この発明は、車体のコンパクト化、車体レイアウトの自由度向上に貢献できる電動車両の駆動車輪支持構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、
左右一対の支柱(5L,5R)を有し該支柱(5L,5R)により車軸(11)を支持するフォーク(3)と、
前記車軸(11)に回転可能に軸支された駆動車輪(2,110,123)と、
前記駆動車輪(2,110,123)のハブ(16)と前記車軸(11)との間に設けられた駆動用の電動モータ(30)と、
前記電動モータ(30)に電力を供給するバッテリ(42)と、
前記電動モータ(30)を制御するモータドライバを含む制御ユニット(50)と、
を備え、前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)のうちの一方の支柱(5L)の内部に前記バッテリ(42)が配置され、他方の支柱(5R)の内部に前記制御ユニット(50)が配置されていることを特徴とする電動車両(1,100)の駆動車輪支持構造である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記電動モータ(30)は、前記フォーク(3)の前記一方の支柱(5L)よりも前記他方の支柱(5R)に近い位置に偏位して配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記フォーク(3)の前記一方の支柱(5L)は外側に開いたコ字形断面をなし、このコ字形断面の凹部(24)に前記バッテリ(42)が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、前記バッテリ(42)の装着状態にて、前記一方の支柱(5L)の前記凹部(24)における開放側の端部が前記バッテリ(42)よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記電動車両(1)は、
前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)が連結される連結部(6)に接続され、上端部にハンドル(65)を有し、該ハンドル(65)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(66R)が設けられたハンドルシャフト(4)と、
前記車軸(11)と同軸上に前記フォーク(3)に設置された足載せ部(70)と、
を備える一輪車両(1)であることを特徴とする
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記電動車両(100)は、
前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)が連結される連結部(6)に接続され、上端部にハンドル(65)を有し、該ハンドル(65)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(66R)が設けられたハンドルシャフト(4)と、
前記ハンドルシャフト(4)を挿通させて回動可能に支持するヘッドパイプ(105)を前方上部に有するメインフレーム(101)および該メインフレーム(101)の後方に連結されたシートフレーム(102)を有する車体フレーム(104)と、
前記車体フレーム(104)の後部に揺動可能に取り付けられたスイングアーム(113)と、
前記スイングアーム(113)に軸支された1つ以上の後輪(112)と、
前記車体フレーム(104)と前記後輪(112)との間に設けられた後輪緩衝器(114)と、
を備える複数車輪車両(100)であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記電動車両(100)は、
前輪(123)を回転可能に支持し、前記前輪(100)を操向するハンドル(125)を上端部に有し、該ハンドル(125)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(126)が設けられたハンドルシャフト(124)と、
前記ハンドルシャフト(124)を挿通させて回動可能に支持するヘッドパイプ(105)を前方上部に有するメインフレーム(101)および該メインフレーム(101)の後方に連結されたシートフレーム(102)を有する車体フレーム(104)と、
を備え、後輪(121)を前記駆動車輪として軸支する前記フォーク(3)が前記車体フレーム(104)の後部に揺動可能に取り付けられ、前記車体フレーム(104)と前記後輪(121)との間に後輪緩衝器(114)が設けられた複数車輪車両(100)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、バッテリ(42)をフォーク(3)の一方の支柱(5L)の内部に配置し、制御ユニット(50)を他方の支柱(5R)の内部に配置しているので、フォーク(3)の内部のデッドスペースを有効に利用して、電動車両(1,100)をコンパクトに構成することができる。また、バッテリ(42)および制御ユニット(50)を車体フレーム(4)に設置しないので、車体レイアウトの自由度が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、電動モータ(30)を、重量の大きいバッテリ(42)が配置されている一方の支柱(5L)よりも、重量の小さい制御ユニット(50)が配置されている他方の支柱(5R)に近い位置に偏位して配置しているので、重量バランスを左右でほぼ均等にすることができる。
請求項3に係る発明によれば、バッテリ(42)の着脱を容易に行うことができる。
請求項4に係る発明によれば、フォーク(3)に外方から物がぶつかった場合にも、支柱(5L)によってバッテリ(42)を保護することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、電動一輪車両をコンパクトに構成することができる。
請求項6に係る発明によれば、前輪駆動型の電動複数車輪車両をコンパクトに構成することができるとともに、車体レイアウトの自由度が向上する。。
請求項7に係る発明によれば、後輪駆動型の電動複数車輪車両をコンパクトに構成することができるとともに、車体レイアウトの自由度が向上する。。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造を採用した電動一輪車両の外観斜視図である。
【図2】前記電動一輪車両における駆動車輪支持部の断面図である。
【図3】前記電動一輪車両の使用状態を示す斜視図である。
【図4】この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造を採用した前輪駆動型の電動二輪車両の概略側面図である。
【図5】この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造を採用した後輪駆動型の電動二輪車両の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造の実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る電動車両の駆動車輪支持構造を採用した電動一輪車両の外観斜視図である。
電動一輪車両1は、駆動車輪2と、駆動車輪2を支持するフォーク3と、フォーク3に連結され上部にハンドル65を有するハンドルシャフト4と、を主要構成として備えている。
図2に示すように、フォーク3は、正面視において、左右一対のアーム部(支柱)5L,5Rがその上部を連結部6によって互いに連結させた逆U字状をなしている。
また、フォーク3は、左側のアーム部5Lおよび連結部6の左半分を形成する第1部材7と、右側のアーム部5Rを形成する第2部材8と、連結部6の右半分を形成する第3部材9とから構成されており、第3部材9に第1部材7および第2部材8を連結固定して前記した逆U字状のフォーク3が形成される。
【0018】
第1部材7と第2部材8の下端部、すなわちアーム部5L,5Rの下端部には、それぞれ車軸固定用のフランジ部10が互いに対向して設けられている。
アーム部5L,5Rのフランジ部10には、駆動車輪2を回転可能に軸支する車軸11が架け渡されて固定されている。
中空軸で構成された車軸11は、その両端部がアーム部5L,5Rのフランジ部10を貫通し、さらに筒状のステップ70の端部を貫通しており、車軸11の先端部に形成された雄ねじ部にナット12を螺合することにより、車軸11はアーム部5L,5Rに固定されている。また、これにより、足載せ部となる左右のステップ70が車軸11と同軸上に配置されて共締めされ、フランジ部10から外方に突出した状態で固定される。
【0019】
駆動車輪2は、車軸11に取り付けられるハブ16と、タイヤ17が取り付けられるリム18と、ハブ16とリム18とを連結する複数本のスポーク19とを備えている。
ハブ16は、径方向の内側を開いた断面U字形で環状をなし、径方向内側の左右の端部が軸受20,20を介して車軸11に回転可能に取り付けられている。ハブ16は、車軸11において左側のアーム部5Lよりも右側のアーム部5Rに近い位置に偏位して取り付けられている。一方、タイヤ17が取り付けられたリム18は、左右のアーム部5L,5Rのほぼ中央に配置されており、そのためにスポーク19は径方向外側に進むにしたがって左側のアーム部5Lに接近するように屈曲形成されている。
また、ハブ16は、リム18およびスポーク19と一体に形成された第1ハブ部16aと、第1ハブ部16aにボルト16cにより連結固定された第2ハブ部16bとから構成されており、第1ハブ部16aと第2ハブ部16bの径方向内側の端部に前記した軸受20がそれぞれ配置されている。
【0020】
ハブ16と車軸11との間に駆動車輪2を駆動する電動モータ30が設けられている。電動モータ30は、所謂アウターロータ型の三相交流モータであり、車軸11に固定されたステータ31と、ステータ31の外側に配置されて回転するロータとから構成されていて、駆動車輪2のハブ16がロータとなっている。ステータ31は、車軸11に固定された環状のヨーク部から放射状に延びる複数のティース33と、各ティース33に巻回されたコイル34とを備えている。ロータとしてのハブ16においてティース33と対向する内周面には、複数のマグネット35が周方向等間隔に固定されている。ステータ31のコイル34に三相交流電流を通電し回転磁界を発生させると、ハブ16が回転し、その結果、駆動車輪2が回転駆動される。
【0021】
コイル34に電力を供給する三相ケーブル36は、ハブ16内に位置する車軸11に形成された挿通孔11aから車軸11内に引き込まれ、ハブ16の外側であって右側のアーム部5Rに近い側に位置する車軸11に形成された挿通孔11bから車軸11の外に引き出され、コネクタ37に接続されている。なお、挿通孔11bには封水用のブッシュ38が取り付けられている。
【0022】
フォーク3において左側のアーム部5Lの内部にはバッテリユニット40が配置されている。
バッテリユニット40は、一側を開放させた樹脂製の矩形箱形のケース41を備え、ケース41内にバッテリ42とバッテリ42の充放電状況を管理する図示しないBMU(battery managing unit)が設置されている。ケース41の開口41aから露出するバッテリ42の表面には端子43a,43bが設けられている。ケース41の下壁部41bには、略円錐状の係止突部44が下方に向けて突出しており、ケース41の上壁部41cには、係止孔45が設けられるとともに、この係止孔45を跨ぎ断面コ字状に形成されたグリップ46が設けられている。グリップ46は、バッテリユニット40を持ち運ぶ際に手で把持する部分となる。
【0023】
フォーク3の第1部材7において前述したフランジ部10よりも上方部分は、横断面形状が外側に開いた略コ字形に形成されていて、右側のアーム部5Rに対向して配置される背板部21と、背板部21の前後端部から外側に延出する一対の側板部22,22とを備えており、両側板部22,22の下縁が底板部23によって接続されている。そして、背板部21と両側板部22,22と底板部23とに囲まれて、前記バッテリユニット40を収容するための凹部24が形成されている。なお、両側板部22,22間の離間寸法は、バッテリユニット40の幅寸法より若干大きい寸法に設定されており、凹部24に対するバッテリユニット40の挿脱をスムーズに行うことができ、且つ幅方向(図2における紙面に垂直な方向)に殆どがたつかないように設定されている。
【0024】
底板部23の略中央には、前記バッテリユニット40のケース41の係止突部44が挿入可能な嵌合孔23aが形成されている。
第1部材7の背板部21において左側のアーム部5Lに対応する位置には開口部21aが形成されており、開口部21aより上位に位置する背板部21からフック25が外方に向かって延設されている。
バッテリユニット40は、第1部材7の底板部23とフック25との間に収容されており、バッテリユニット40のケース41の係止突部44を底板部23の嵌合孔23aに嵌入し、ケース41の係止孔45にフック25の係止爪25aを係止させることによって、左側のアーム部5Lの内部に取り付けられている。この取り付け状態において、バッテリユニット40の端子43a,43bは第1部材7の開口部21a内に位置する。また、このバッテリユニット40は、係止爪25aを係止孔45から離脱し、係止突部44を嵌合孔23aから離脱することによって、アーム部5Lから取り外すことができる。つまり、バッテリユニット40は左側のアーム部5Lに着脱可能に取り付けられている。
【0025】
このバッテリユニット40を左側のアーム部5Lに装着した状態において、第1部材7の両側板部22,22の外端部がバッテリユニット40の外縁よりも外側に位置するように寸法設定されている。つまり、バッテリユニット40のケース41が左側のアーム部5Lから外方に突出しないようにされており、これにより外方から左側のアーム部5Lに物がぶつかった場合にも、側板部22によってバッテリユニット40を保護することができる。なお、第1部材7の側板部22,22間を塞ぎバッテリユニット40を覆うように、第1部材7に蓋体を着脱可能に取り付けることも可能である。
【0026】
第1部材7の背板部21の内側には、開口部21aを塞ぐように端子板47が固定されている。端子板47には、端子47a,47bが開口部21aに臨んで形成されており、バッテリユニット40を装着したときに、この端子47a,47bとバッテリユニット40の端子43a,43bがそれぞれ接続されるようになっている。
【0027】
第1部材7の上端部は第3部材9の左端部に連結されており、第1部材7の上端部と第3部材9によって連結部6が構成されている。この連結部6の上部中央には軸線を上下方向に延ばす円筒状の支持筒部26が設けられており、支持筒部26の左半分は第1部材7に、右半分は第3部材9に形成されている。第3部材9において支持筒部26が形成された左側端部には、複数のボルト座部27が設けられており、ボルト座部27には図示しないボルト挿通孔が形成されている。一方、第1部材7において支持筒部26が形成された右側端部には複数のボルト受台28が設けられており、ボルト受台28には図示しないねじ孔が形成されている。
【0028】
支持筒部26にはハンドルシャフト4のシャフト本体64の下端部が差し込まれており、第3部材9のボルト座部27のボルト挿通孔に挿通させたボルト29を、第1部材7のボルト受台28のねじ孔に螺合し締め付けることにより、第1部材7と第3部材9がシャフト本体64を挟んで一体的に連結されるとともに、ハンドルシャフト4がフォーク3に固定される。シャフト本体64の中心軸の延長線は車軸11のほぼ中央に位置しており、つまり、シャフト本体64のほぼ真下に駆動車輪2が位置している。
【0029】
図1に示すように、ハンドルシャフト4は、シャフト本体64の上部に左右方向へ延びるハンドル65を有し、ハンドル65は左右端部にグリップ66L,66Rを備えている。右グリップ66Rはハンドル65に対して回動可能に取り付けられてアクセルとなっており、右グリップ66Rの回転角度が図示しないアクセルセンサによって検出可能となっている。前記アクセルセンサの出力信号を送信する信号ケーブル56は、ハンドル65およびシャフト本体64に沿って配線され、後述する制御ユニット50に接続されている。
【0030】
第3部材9の右側端部に第2部材8の左上端部が連結されている。第2部材8の上端部には上部フランジ部13が形成されており、上部フランジ部13には図示しない複数のボルト挿通孔が設けられている。一方、第3部材9の右上端部には肉厚部14が設けられており、肉厚部14には図示しない複数のねじ孔が設けられている。そして、第2部材8の上部フランジ部13のボルト挿通孔に挿通させたボルト15を、第3部材9の肉厚部14のねじ孔に螺合することにより、第2部材8と第3部材9が連結固定される。
【0031】
第2部材8において下側のフランジ部10と上部フランジ部13との間は、横断面形状が内側に開いた略コ字形に形成されていて、その内部に制御ユニット50が収容されている。ここで、第2部材8はフォーク3の右側のアーム部5Rを構成しているので、制御ユニット50は、右側のアーム部5Rの内部に配置されることとなる。
第2部材8の内部には制御ユニット取付用ブラケット60が設けられており、このブラケット60に制御ユニット50の基板51が取り付けられている。基板51には、電動モータ30のモータドライバであるPDU(power driver unit)と一体化されたECU(electric control unit)、メインスイッチと連動するコンタクタ、DC−DCコンバータ(いずれも図示略)等が実装されており、その実装面は樹脂モールド52により被覆されている。
【0032】
制御ユニット50の機能は、バッテリ42からの電力を前記コンタクタを介して前記PDUに供給し、該PDUにて直流から三相電流に変換して、電動モータ30に電力を供給する。また、バッテリ42の電圧を前記DC−DCコンバータにより降圧して前記ECUに供給する。さらに、前記ECUにはハンドル65に設けられた前記アクセルセンサからの出力信号(要求出力)が入力され、要求出力に応じて前記ECUが前記PDUを介して電動モータ30の駆動制御(出力制御)を行う。
【0033】
また、基板51は、その下部側に出力コネクタ53を備え、その上部側に入力コネクタ54を備えている。
出力コネクタ53には前述したコネクタ37が接続され、制御ユニット50により制御された三相電流が三相ケーブル36を介して電動モータ30のコイル34に供給される。
入力コネクタ54には、電力ケーブル55および信号ケーブル56を備えるコネクタ57が接続されている。
電力ケーブル55は、連結部6の支持筒部26およびハンドルシャフト4のシャフト本体64を貫通し、さらに第1部材7の背板部21を貫通して、端子板47に接続されており、バッテリ42の直流電力を制御ユニット50に供給する。
信号ケーブル56は、第2部材8の上端部を貫通して外部に引き出され、ハンドルシャフト4に沿って配線されて前記アクセルセンサに接続されており、該アクセルセンサの出力信号を制御ユニット50に送信する。
【0034】
このように構成された電動一輪車両1の使用者は、図3に示すように、左右の足を左右のステップ70に載せ、左右の手で左右のグリップ66L,66Rを握り、車両のバランスを取りながら右グリップ66Rを初期位置から回転させることによって、電動モータ30の駆動力(出力)を調整し、走行速度を調整する。また、使用者は、右グリップ66Rを前記初期位置に戻すことによって電動モータ30を回生ブレーキとして機能させて、速度を落とす。
【0035】
この電動一輪車両1においては、バッテリユニット40をフォーク3の左側のアーム部5Lの内部に配置し、制御ユニット50を右側のアーム部5Rの内部に配置しているので、フォーク3の内部のデッドスペースを有効に利用して、電動一輪車両1をコンパクトにまとめることができる。
また、電動モータ30を、重量の大きいバッテリユニット40が配置されている左側のアーム部5Lから遠ざけ、重量の小さい制御ユニット50が配置されている右側のアーム部5Rに接近させて配置したので、電動一輪車両1の重量バランスを左右でほぼ均等にすることができる。
バッテリユニット40を、第1部材7の両側板部22,22間に形成された外側に開いた凹部24内に収容しているので、バッテリユニット40の着脱を容易に行うことができる。
第1部材7の両側板部22,22の外端部がバッテリユニット40の外縁よりも外側に突出しているので、外方から左側のアーム部5Lに物がぶつかった場合にも、側板部22によってバッテリユニット40を保護することができる。
【0036】
図4は、この発明の駆動車輪支持構造を採用した電動二輪車両の一例を示す概略側面図である。
この電動二輪車両100は、側面視略矩形のメインフレーム101と、メインフレーム101の後部上側に連結されたシートフレーム102と、メインフレーム101の後部下側とシートフレーム102とを連結するサポートフレーム103とから構成された車体フレーム104を備えており、メインフレーム101の前部上側にヘッドパイプ105が設けられ、シートフレーム102の上にシート106が設けられている。
【0037】
また、この電動二輪車両100は前輪駆動型であり、前輪(駆動車輪)110の支持部111が前記した電動一輪車両1と同じ構成となっている。そして、ヘッドパイプ105に、ハンドルシャフト4のシャフト本体64が回動可能に取り付けられている。
そして、後輪112を回転可能に軸支したスイングアーム113がメインフレーム101の後部下側に揺動可能に取り付けられ、サポートフレーム103とスイングアーム113の間、換言すると車体フレーム104と後輪112との間に、サスペンション(後輪緩衝器)114が設けられている。
【0038】
このように構成された前輪駆動型の電動二輪車両100においても、バッテリユニット40をフォーク3の左側のアーム部5Lの内部に配置し、制御ユニット50を右側のアーム部5Rの内部に配置しているので、フォーク3の内部のデッドスペースを有効に利用して、電動二輪車両100をコンパクトにまとめることができる。また、バッテリユニット40および制御ユニット50を車体フレーム4等に設置しないので、車体レイアウトの自由度が向上する。
【0039】
なお、図示を省略するが、車体フレーム104に補助バッテリを装着し、補助バッテリからも制御ユニット50を介して電動モータ30に電力を供給可能に構成してもよい。
なお、後輪112を2つ設けて、電動三輪車両とすることも可能である。
【0040】
また、この発明の駆動車輪支持構造を、後輪駆動型の電動二輪車両の後輪支持部に適用することも可能である。
例えば、図5に示すように、駆動車輪としての後輪121を回転可能に軸支する後輪支持部122を、車体フレーム104におけるメインフレーム101の後部下側に揺動可能に取り付け、シート106を支持するシートフレーム102をメインフレーム101の後部上側に連結し、サポートフレーム103と後輪支持部122の間にサスペンション114を設け、メインフレーム101のヘッドパイプ105に、前輪123を回転可能に軸支したハンドルシャフト124を回動可能に取り付け、ハンドルシャフト124の上部にハンドル125を設け、ハンドル125の左右にグリップ126を設け、一方のグリップ126をアクセルとし、アクセルセンサ(図示略)を装備する。そして、後輪支持部122を、この発明に係る駆動車輪支持構造で構成する。すなわち、フォークの左右一対のアーム部(支柱)により車軸を介して後輪121を軸支し、後輪121のハブと車軸との間に駆動用の電動モータを内蔵し、左右一対のアーム部のうちの一方のアーム部の内部にバッテリを配置し、他方のアーム部の内部に制御ユニットを配置し、前記アクセルセンサと前記制御ユニットを図示しないケーブルにより接続する。
【0041】
このように構成された後輪駆動型の電動二輪車両100においても、フォークの内部のデッドスペースを有効に利用して、電動二輪車両100をコンパクトにまとめることができる。また、バッテリユニット40および制御ユニット50を車体フレーム4等に設置しないので、車体レイアウトの自由度が向上する。
【符号の説明】
【0042】
1 電動一輪車両(電動車両)
2 駆動車輪
3 フォーク
4 ハンドルシャフト
5L,5R アーム部(支柱)
6 連結部
11 車軸
16 ハブ
24 凹部
30 電動モータ
42 バッテリ
50 制御ユニット
65 ハンドル
66R グリップ(アクセル)
70 ステップ(足載せ部)
100 電動二輪車両(電動車両)
101 メインフレーム
102 シートフレーム
104 車体フレーム
105 ヘッドパイプ
110 前輪(駆動車輪)
112 後輪
113 スイングアーム
114 サスペンション(後輪緩衝器)
121 後輪(駆動車輪)
122 後輪支持部
123 前輪
124 ハンドルシャフト
125 ハンドル
126 グリップ(アクセル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の支柱(5L,5R)を有し該支柱(5L,5R)により車軸(11)を支持するフォーク(3)と、
前記車軸(11)に回転可能に軸支された駆動車輪(2,110,123)と、
前記駆動車輪(2,110,123)のハブ(16)と前記車軸(11)との間に設けられた駆動用の電動モータ(30)と、
前記電動モータ(30)に電力を供給するバッテリ(42)と、
前記電動モータ(30)を制御するモータドライバを含む制御ユニット(50)と、
を備え、前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)のうちの一方の支柱(5L)の内部に前記バッテリ(42)が配置され、他方の支柱(5R)の内部に前記制御ユニット(50)が配置されていることを特徴とする電動車両(1,100)の駆動車輪支持構造。
【請求項2】
前記電動モータ(30)は、前記フォーク(3)の前記一方の支柱(5L)よりも前記他方の支柱(5R)に近い位置に偏位して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両(1,100)の駆動車輪支持構造。
【請求項3】
前記フォーク(3)の前記一方の支柱(5L)は外側に開いたコ字形断面をなし、このコ字形断面の凹部(24)に前記バッテリ(42)が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車両(1,100)の駆動車輪支持構造。
【請求項4】
前記バッテリ(42)の装着状態にて、前記一方の支柱(5L)の前記凹部(24)における開放側の端部が前記バッテリ(42)よりも外方に突出していることを特徴とする請求項3に記載の電動車両(1,100)の駆動車輪支持構造。
【請求項5】
前記電動車両(1)は、
前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)が連結される連結部(6)に接続され、上端部にハンドル(65)を有し、該ハンドル(65)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(66R)が設けられたハンドルシャフト(4)と、
前記車軸(11)と同軸上に前記フォーク(3)に設置された足載せ部(70)と、
を備える一輪車両(1)であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両(1)の駆動車輪支持構造。
【請求項6】
前記電動車両(100)は、
前記フォーク(3)の前記左右一対の支柱(5L,5R)が連結される連結部(6)に接続され、上端部にハンドル(65)を有し、該ハンドル(65)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(66R)が設けられたハンドルシャフト(4)と、
前記ハンドルシャフト(4)を挿通させて回動可能に支持するヘッドパイプ(105)を前方上部に有するメインフレーム(101)および該メインフレーム(101)の後方に連結されたシートフレーム(102)を有する車体フレーム(104)と、
前記車体フレーム(104)の後部に揺動可能に取り付けられたスイングアーム(113)と、
前記スイングアーム(113)に軸支された1つ以上の後輪(112)と、
前記車体フレーム(104)と前記後輪(112)との間に設けられた後輪緩衝器(114)と、
を備える複数車輪車両(100)であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両(100)の駆動車輪支持構造。
【請求項7】
前記電動車両(100)は、
前輪(123)を回転可能に支持し、前記前輪(100)を操向するハンドル(125)を上端部に有し、該ハンドル(125)に前記電動モータ(30)の出力を変更するアクセル(126)が設けられたハンドルシャフト(124)と、
前記ハンドルシャフト(124)を挿通させて回動可能に支持するヘッドパイプ(105)を前方上部に有するメインフレーム(101)および該メインフレーム(101)の後方に連結されたシートフレーム(102)を有する車体フレーム(104)と、
を備え、後輪(121)を前記駆動車輪として軸支する前記フォーク(3)が前記車体フレーム(104)の後部に揺動可能に取り付けられ、前記車体フレーム(104)と前記後輪(121)との間に後輪緩衝器(114)が設けられた複数車輪車両(100)であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両(100)の駆動車輪支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96595(P2012−96595A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243976(P2010−243976)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】