説明

電動車両

【課題】電動車両において、アンダーカバー内に残存した雪氷の移動に起因する異音の発生を抑制して、静粛性を向上させる。
【解決手段】車体フロア30の下方に配置されたアンダーカバー82を備える電動車両1であって、アンダーカバー82は、車体フロア30を車体前方側から車体後方側まで被覆する略平板状のカバー本体83と、車体フロア30とカバー本体83との間に入り込んだ雪氷を排出するための排出部83cと、排出部83cよりも車体前方側に配置され車体幅方向に延在しカバー本体83を含む平面から上方に突出するように形成された上方突出部85と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関する。
【0002】
現在、燃料電池やバッテリ等の電源を車両の駆動源として採用した電動車両が提案され、実用化されている。電動車両は、電源から供給される電力により電動機を駆動し、この電動機の回転力により駆動輪を回転させて車両の走行を実現させるものであり、エンジンを搭載した車両と比較して優れた静粛性を有している。
【0003】
近年においては、このような電動車両に搭載した各種機器(例えば燃料電池等)が路上の障害物と干渉するのを防止したり、電動車両の空気抵抗を低減させたりする目的で、電動車両の車体フロアの下方にアンダーカバーを配置する技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−335212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記した特許文献1に記載されたような従来の技術を採用すると、アンダーカバー内(車体フロアとアンダーカバーとの間の空間)に入り込んだ雪氷が、停車した際の衝撃や下り斜面走行時に車体前方側に移動し、車体後方側から排出され難くなる。このようにアンダーカバー内に侵入した雪氷が排出されずに残存すると、残存する雪氷の移動により異音が発生して、電動車両の静粛性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電動車両において、アンダーカバー内に残存した雪氷の移動に起因する異音の発生を抑制して、静粛性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る電動車両は、車体フロアの下方に配置されたアンダーカバーを備える電動車両であって、アンダーカバーは、車体フロアを車体前方側から車体後方側まで被覆する略平板状のカバー本体と、車体フロアとカバー本体との間に入り込んだ雪氷を排出するための排出部と、排出部よりも車体前方側に配置され車体幅方向に延在しカバー本体を含む平面から上方に突出するように形成された上方突出部と、を有するものである。
【0007】
かかる構成を採用すると、アンダーカバーに排出部及び上方突出部が設けられているため、車体フロアとカバー本体との間に入り込んだ雪氷が車体前方側に移動することを抑制し、かつ、車体後方側への雪氷の排出を促進することができる。従って、アンダーカバー内における異音の発生を抑制して、静粛性を向上させることができる。
【0008】
前記電動車両において、車体フロアとカバー本体との間に配置され車体幅方向に延在するリテーナを備えることができる。かかる場合に、リテーナよりも車体前方側に上方突出部を配置することが好ましい。また、カバー本体を含む平面から車体後方及び上方に延在するように形成された傾斜部と、この傾斜部の上端からカバー本体を含む平面へと垂下するように形成された垂下部と、から構成される上方突出部を採用することが好ましい。
【0009】
かかる構成を採用すると、アンダーカバーの上方突出部が、リテーナよりも車体前方側に配置されており、なおかつ、カバー本体を含む平面から車体後方及び上方に延在するように形成された傾斜部を有しているので、車体前方から侵入した雪氷を、上方突出部の傾斜部に乗り上げさせて車体後方及び上方に誘導することができる。従って、車体前方から侵入した雪氷がリテーナを乗り越えて車体後方へと移動し易くなる。
【0010】
また、前記電動車両において、カバー本体の車体前方端部近傍に配置され車体フロアとカバー本体との間を遮蔽する遮蔽部材を備えることが好ましい。
【0011】
かかる構成を採用すると、車体フロアとカバー本体との間に雪氷が侵入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動車両において、アンダーカバー内に残存した雪氷の移動に起因する異音を抑制して、静粛性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動車両について説明する。本実施形態においては、電動車両の一例として、燃料電池から供給される電力を駆動源とする燃料電池車両1を挙げて説明することとする。
【0014】
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る燃料電池車両1の全体構成について説明する。燃料電池車両1は、車体10、乗員を着座させる座席20、座席20の下方に配置されたフロアフレーム30、走行用の車輪(前輪40及び後輪50)、前輪40近傍に配置された図示していないサスペンションメンバーを下方から覆う前方アンダーカバー60、後輪50近傍に配置された図示していない水素タンクを下方から覆う後方アンダーカバー70、フロアフレーム30を下方から覆うフロアアンダーカバー80等を備えている。
【0015】
フロアフレーム30は、本発明における車体フロアに相当するものである。フロアアンダーカバー80は、図2に示すように、車体幅方向中央部に配置される中央アンダーカバー81と、車体幅方向両端部に配置されるサイドアンダーカバー82と、から構成されている。
【0016】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態に係る燃料電池車両1のサイドアンダーカバー82の構成について説明する。
【0017】
サイドアンダーカバー82は、図3に示すように、フロアフレーム30の車体幅方向両端部を車体前方側から車体後方側まで被覆する略平板状のカバー本体83と、フロアフレーム30とカバー本体83との間に配置され車体幅方向に延在するリテーナ84と、リテーナ84の車体前方側に配置された上方突出部85と、を有している。
【0018】
カバー本体83は、図3に示すように、車体前後方向に長く車体幅方向に短い長尺狭幅の平板状部材である。カバー本体83の車体前方端部83aの近傍には、遮蔽部材86が設けられている。遮蔽部材86は、フロアフレーム30とカバー本体83との間を遮蔽して、車体前方側からサイドアンダーカバー82内(フロアフレーム30とカバー本体83との間の空間)に雪氷が侵入することを抑制するものである。遮蔽部材83は、ゴム材料、樹脂材料、これらの発泡体等で構成することができる。
【0019】
一方、カバー本体83の車体後方端部83bの近傍には、フロアフレーム30とカバー本体83との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられておらず、排水孔83cが設けられている。また、カバー本体83を含むサイドアンダーカバー82全体は、図1に示すように、車体後方側になるに従って下方に傾斜するように配置されており、カバー本体83の車体後方端部83bは車体前方端部83aよりも鉛直方向下方に位置している。このため、車体前方からサイドアンダーカバー82内に侵入した雪氷は、カバー本体83の車体後方端部83bに設けられた排水孔83cから外部に排出されることとなる。すなわち、カバー本体83の排水孔83cは、本発明における排出部に相当するものである。
【0020】
上方突出部85は、図3に示すように、カバー本体83の車体前後方向略中間部よりも若干車体前方側に配置され、カバー本体83を含む平面から上方に突出するように、かつ、車体幅方向に延在するように形成されている。上方突出部85は、図4に示すように、カバー本体83を含む平面から車体後方及び上方に延在するように形成された傾斜部85aと、この傾斜部85aの上端からカバー本体83を含む平面へと垂下するように形成された垂下部85bと、から構成されている。また、上方突出部85は、リテーナ84の車体前方側に近接して配置されている。このため、車体前方からサイドアンダーカバー82内に侵入した雪氷Sを、上方突出部85の傾斜部85aに乗り上げさせて車体後方及び上方に誘導することができる。
【0021】
続いて、本実施形態に係る燃料電池車両1のサイドアンダーカバー82内に雪氷が侵入した場合における雪氷排出作用について説明する。
【0022】
従来の燃料電池車両においては、雪道走行中の前輪の巻上げにより、アンダーカバー内に雪氷が入り込む。そして、このようにアンダーカバー内に入り込んだ雪氷は、停車した際の衝撃や下り斜面走行時に車体前方側に移動して車体後方側から排出され難くなる。このため、アンダーカバー内に残存した雪氷の移動により異音が発生することがあった。
【0023】
これに対し、本実施形態に係る燃料電池車両1においては、雪道走行中に前輪40が雪氷を巻き上げても、サイドアンダーカバー82の車体前方側に、フロアフレーム30とカバー本体83との間を遮蔽する遮蔽部材86が設けられているため、サイドアンダーカバー82内への雪氷の侵入を抑制することができる。また、サイドアンダーカバー82内に雪氷が侵入した場合においても、雪氷を上方突出部85の傾斜部85aにより車体後方及び上方に誘導してリテーナ84を乗り越えさせ、車体後方側へと移動させることができる。そして、最終的に、雪氷をカバー本体83の排水孔83cから外部に排出することができる。
【0024】
以上説明した実施形態に係る燃料電池車両1においては、サイドアンダーカバー82に排水孔83c及び上方突出部85が設けられているため、フロアフレーム30とカバー本体83との間に入り込んだ雪氷が車体前方側に移動することを抑制し、かつ、車体後方側への雪氷の排出を促進することができる。従って、サイドアンダーカバー82内における異音の発生を抑制して、静粛性を向上させることができる。
【0025】
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池車両1においては、サイドアンダーカバー82の上方突出部85が、リテーナ84よりも車体前方側に配置されており、なおかつ、カバー本体83を含む平面から車体後方及び上方に延在するように形成された傾斜部85aを有しているので、車体前方から侵入した雪氷を、上方突出部85の傾斜部85aに乗り上げさせて車体後方及び上方に誘導することができる。従って、車体前方から侵入した雪氷がリテーナ84を乗り越えて車体後方側へと移動し易くなる。
【0026】
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池車両1においては、サイドアンダーカバー82のカバー本体83の車体前方端部83a近傍に、フロアフレーム30とカバー本体83との間を遮蔽する遮蔽部材86が設けられているので、サイドアンダーカバー82内に雪氷が侵入することを抑制することができる。
【0027】
なお、以上の実施形態においては、フロアアンダーカバー80の車体幅方向両端部に配置されるサイドアンダーカバー82に本発明を適用した例を示したが、フロアアンダーカバー80の中央部に配置される中央アンダーカバー81に本発明を適用することもできる。
【0028】
また、以上の実施形態においては、傾斜部85aと垂下部85bとから構成される上方突出部85を採用した例を示したが、上方突出部85の形状はこれに限られるものではない。すなわち、車体前方からサイドアンダーカバー82内に侵入した雪氷が車体後方側に移動し易く、かつ、車体後方側に移動した雪氷が車体前方側に戻り難くなるような形状であれば、いかなる形状の上方突出部を採用してもよい。
【0029】
また、以上の実施形態においては、本発明を燃料電池車両に適用した例を示したが、燃料電池車両以外の電動車両(電気自動車やハイブリッド車両等)に本発明を適用することもできる。また、電動車両でなくても、車体フロアの下方に配置されたアンダーカバーを備える車両であれば本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両(燃料電池車両)の側面図である。
【図2】図1に示した燃料電池車両の底面図である。
【図3】図1に示した燃料電池車両のサイドアンダーカバーの斜視図である。
【図4】図3に示したサイドアンダーカバーのIV−IV部分における断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…燃料電池車両(電動車両)、10…車体、30…フロアフレーム(車体フロア)、82…サイドアンダーカバー、83…カバー本体、83c…排水孔(排出部)、84…リテーナ、85…上方突出部、85a…傾斜部、85b…垂下部、86…遮蔽部材、S…雪氷。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアの下方に配置されたアンダーカバーを備える電動車両であって、
前記アンダーカバーは、前記車体フロアを車体前方側から車体後方側まで被覆する略平板状のカバー本体と、前記車体フロアと前記カバー本体との間に入り込んだ水分を排出するための排出部と、前記排出部よりも車体前方側に配置され車体幅方向に延在し前記カバー本体を含む平面から上方に突出するように形成された上方突出部と、を有するものである、
電動車両。
【請求項2】
前記車体フロアと前記カバー本体との間に配置され車体幅方向に延在するリテーナを備え、
前記上方突出部は、前記リテーナよりも車体前方側に配置されるとともに、前記カバー本体を含む平面から車体後方及び上方に延在するように形成された傾斜部と、この傾斜部の上端から前記カバー本体を含む平面へと垂下するように形成された垂下部と、から構成されるものである、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記カバー本体の車体前方端部近傍に配置され前記車体フロアと前記カバー本体との間を遮蔽する遮蔽部材を備える、
請求項1又は2に記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78635(P2009−78635A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247988(P2007−247988)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】