電動車両
【課題】路面が左右に傾いている場合でも安定して走行することができる電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両1は、ジョイント部8により回動可能な前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bを有するフレーム体2を備えている。前フレーム9A,9Bの下端部には、モータ10A,10Bにより回転駆動される前輪3A,3Bが設けられ、後フレーム7A,7Bの下端部には、モータにより回転駆動される後輪4A,4Bが設けられている。ジョイント部8には、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させるモータ12A,12Bが設けられている。また、電動車両1は、路面に対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定し、フレーム体2のロール姿勢が目標ロール姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御するコントローラを備えている。
【解決手段】電動車両1は、ジョイント部8により回動可能な前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bを有するフレーム体2を備えている。前フレーム9A,9Bの下端部には、モータ10A,10Bにより回転駆動される前輪3A,3Bが設けられ、後フレーム7A,7Bの下端部には、モータにより回転駆動される後輪4A,4Bが設けられている。ジョイント部8には、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させるモータ12A,12Bが設けられている。また、電動車両1は、路面に対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定し、フレーム体2のロール姿勢が目標ロール姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御するコントローラを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより車輪を回転駆動させる電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両の一つに歩行補助装置がある。従来の歩行補助装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、フレーム構造の本体と、この本体に回転可能に支持された4つの車輪とを備え、4つの車輪のうち2つの後輪をモータにより回転駆動される駆動輪としたものが知られている。
【特許文献1】特開平10−216183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、歩行補助装置の走行時には、路面が水平面に対して傾いているために歩行補助装置が左右に傾いた状態となることが考えられる。しかし、上記従来技術においては、そのような左右に傾いた路面での走行については何ら考慮されていない。
【0004】
本発明の目的は、路面が左右に傾いている場合でも安定して走行することができる電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動車両は、左右1対の前フレーム及び左右1対の後フレームを有する車体と、各前フレームの下端部に回転可能に支持された左前輪及び右前輪と、各後フレームの下端部に回転可能に支持された左後輪及び右後輪と、各前フレームと各後フレームとを回動自在に連結するジョイント部と、前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動させる複数の駆動モータと、左前輪と左後輪との間の距離、右前輪と右後輪との間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段と、車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段と、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような本発明の電動車両においては、車体のロール姿勢状態を推定し、そのロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する。ここで、ホイールベース変更手段は、左側のホイールベース(左前輪と左後輪との間の距離)と右側のホイールベース(右前輪と右後輪との間の距離)とをそれぞれ独立に変更可能であるため、左右両側でホイールベースを異なるように設定することができる。そこで、路面が水平面に対して傾いているために車体が左右に傾いた状態となる場合には、左側のホイールベース及び右側のホイールベースの何れか一方を他方よりも長くすることで、車体の傾きを抑えることができる。これにより、路面が水平面に対して左右に傾いている場合でも、電動車両を安定して走行させることができる。
【0007】
好ましくは、ホイールベース変更手段は、左側の前フレームと左側の後フレームとを相対的に回動させる第1回動モータと、右側の前フレームと右側の後フレームとを相対的に回動させる第2回動モータとを有し、姿勢制御手段は、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるように第1回動モータ及び第2回動モータの少なくとも一方を制御する。このように2つの回動モータを使用することにより、左右両側のホイールベースを簡単に且つスムーズに変更することができる。
【0008】
このとき、姿勢推定手段は、第1回動モータにかかるトルクを検出する第1トルク検出手段と、第2回動モータにかかるトルクを検出する第2トルク検出手段とを有し、第1トルク検出手段及び第2トルク検出手段の検出値を用いて車体のロール姿勢状態を推定することが好ましい。この場合には、特に荷重センサや傾斜センサ等を用いなくても、電動車両の各部の寸法が分かっていれば、第1トルク検出手段及び第2トルク検出手段の検出値から車体のロール姿勢状態を推定することが可能となる。
【0009】
また、好ましくは、目標ロール姿勢は、ジョイント部の回動軸が水平路面に対して実質的に平行となるような姿勢である。なお、実質的に平行とは、完全に平行だけでなく、略平行も含む概念である。この場合には、路面が水平面に対して左右に傾いていても、水平面に対する車体の傾きが殆ど無い状態となるため、電動車両をより安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動車両によれば、路面が左右に傾いている場合でも安定して走行することができる。これにより、操作性や安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる電動車両の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わる電動車両の一実施形態として歩行補助装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示した歩行補助装置の側面図である。各図において、本実施形態の歩行補助装置1は、歩行者の歩行を補助する電動手押し車である。
【0013】
歩行補助装置1は、フレーム体2と、このフレーム体2の左右両側に設けられた前輪3A,3B及び後輪4A,4Bとを備えている。フレーム体2は、歩行補助装置1の車両本体(車体)を構成している。
【0014】
フレーム体2は、歩行者が握るハンドル部5と、このハンドル部5の両端部から前側斜め下方にそれぞれ延びる左右1対のメインフレーム6A,6Bと、各メインフレーム6A,6Bから分岐して後側斜め下方にそれぞれ延びる左右1対の後フレーム7A,7Bとを有している。メインフレーム6A,6Bの略中央部には、後フレーム7A,7Bをメインフレーム6A,6Bに対して回動(開閉)自在に連結するジョイント部8が連結されている。メインフレーム6A,6Bのうちジョイント部8よりも前側(下側)の部分は、前フレーム9A,9Bを構成している。
【0015】
左側の前フレーム9Aの下端部には、左前輪3Aが回転可能に支持され、右側の前フレーム9Bの下端部には、右前輪3Bが回転可能に支持されている。これらの前輪3A,3Bは、インホイールモータ10A,10Bによって回転駆動される。左側の後フレーム7Aの下端部には、左後輪4Aが回転可能に支持され、右側の後フレーム7Bの下端部には、右後輪4Bが回転可能に支持されている。これらの後輪4A,4Bは、インホイールモータ11A,11B(図3参照)によって回転駆動される。
【0016】
ジョイント部8には、後フレーム7Aを前フレーム9Aに対して回動させるジョイントモータ12Aと、後フレーム7Bを前フレーム9Bに対して回動させるジョイントモータ12Bとが設けられている。また、ジョイント部8には、荷物を収容するための荷室を兼ね備えた電源ユニット13が吊り下げられている。
【0017】
また、歩行補助装置1は、図3に示すように、角度センサ14A,14Bと、トルクセンサ15A,15Bと、コントローラ16とを更に備えている。
【0018】
角度センサ14Aは、前フレーム9Aと後フレーム7Aとのなす角度(左側フレーム9A,7Aの開き角度)を検出し、角度センサ14Bは、前フレー9Bと後フレーム7Bとのなす角度(右側フレーム9B,7Bの開き角度)を検出する。トルクセンサ15Aは、ジョイントモータ12Aにかかるトルクを検出し、トルクセンサ15Bは、ジョイントモータ12Bにかかるトルクを検出する。なお、ジョイントモータ12A,12Bにかかるトルクは、ジョイントモータ12A,12Bの信号(電流及び電圧等)から求めることもできる。
【0019】
コントローラ16は、例えばハンドル部5に加わる押し力に応じてインホイールモータ10A〜11Bを制御すると共に、角度センサ14A,14B及びトルクセンサ15A,15Bの検出値を入力し、所定の処理を行い、フレーム体2が所望の姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御する。なお、コントローラ16は、ハンドル部5に内蔵されていても良いし、電源ユニット13に設けられていても良い。
【0020】
コントローラ16のメモリ(図示せず)には、歩行補助装置1に関する寸法やスペック等のデータが予め記憶されている。寸法データとしては、図4に示すように、前フレーム9A,9Bの長さ(ジョイント部8の中心と前輪3A,3Bの中心との間の長さ)pf、後フレーム7A,7Bの長さ(ジョイント部8の中心と後輪4A,4Bの中心との間の長さ)pr、前輪3A,3Bの半径rf、後輪4A,4Bの半径rr、ジョイントモータ12A,12B間の距離t(図8参照)等がある。
【0021】
図5は、コントローラ16により実行される姿勢制御処理手順を示すフローチャートである。同図において、まずトルクセンサ15A,15Bの検出値に基づいて、歩行補助装置1が平坦な路面で停止した状態において車輪3A〜4Bにかかる全体の重量及び左右の重量配分を推定する(図5の手順S101)。本推定処理は、以下のようにして行う。
【0022】
即ち、図4に示すように、左側フレーム9A,7Aの開き角度をθaL、右側フレーム9B,7Bの開き角度をθaRとしたときに、
θaL=θaR=θa
とする。また、図6に示すように、路面Rと前フレーム9Aとのなす角度をθb、路面Rと後フレーム7Aとのなす角度をθcとすると、これらの角度θb,θcは、コントローラ16のメモリ(前述)に記憶された前フレーム9Aの長さpf及び後フレーム7Aの長さpr、上記の角度θaから計算することができる。
【0023】
そして、左側のジョイントモータ12AにかかるトルクTL及び角度θb,θcを用いて、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる荷重(質量)mLgを下記式により算出する。なお、ジョイントモータ12AにかかるトルクTLは、トルクセンサ15Aより得られる。
【数1】
【0024】
また、上記と同様にして、右側のジョイントモータ12BにかかるトルクTR(図4参照)及び角度θb,θcを用いて、右前輪3B及び右後輪4Bにかかる荷重(質量)mRgを下記式により算出する。なお、ジョイントモータ12BにかかるトルクTRは、トルクセンサ15Bより得られる。
【数2】
【0025】
そして、車輪3A〜4Bにかかる全体質量mg(=mLg+mRg)と、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる質量と右前輪3B及び右後輪4Bにかかる質量との配分比(mL:mR)とを算出する。
【0026】
このとき、トルクセンサ15A,15Bの検出値と歩行補助装置1の寸法データとを利用することで、特に荷重センサを使用しなくても、全体質量mg及び左右輪質量配分比(mL:mR)を取得することができる。
【0027】
次いで、トルクセンサ15A,15Bの検出値に基づいて、歩行補助装置1が走行している状態における路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定する(図5の手順S102)。
【0028】
具体的には、まず上記の手順S101と同様にして、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる荷重mL’g、右前輪3B及び右後輪4Bにかかる荷重mR’gを算出する。このとき、例えば図7に示すように、路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合には、ジョイントモータ12AにかかるトルクをTL’、 ジョイントモータ12BにかかるトルクをTR’とすると、TL’>TL、TR’<TRとなる。よって、この場合には、mL’g>mLg、mR’g<mRgとなる。
【0029】
そして、フレーム体2のロール姿勢状態を走行路面Rに対するロール角として算出する。フレーム体2のロール角は、地球の水平路面を基準にした車体の横方向の傾き角のことであり、水平路面Qに対する走行路面Rの傾斜角度φとして取得される。
【0030】
ここで、図8に示すように、路面Rに鉛直な方向の力の釣り合いより、
mgcosφ=mL’g+mR’g …(A)
となる。
【0031】
また、ジョイントモータ12A,12B間の距離をt(前述)、ジョイントモータ12A,12Bと路面Rとの間の距離をhとすると、図示A点回りのモーメントの釣り合いより、
mg(t/2+htanφ)=mL’g・t …(B)
となる。なお、距離hは、前フレーム9Aの長さpf、後フレーム7Aの長さpr、左側フレーム9A,7Aの開き角度θaLから求められる。
【0032】
そして、上記の(A)式及び(B)式から、走行路面Rの傾斜角度φが幾何的に算出される。これにより、歩行補助装置1の走行状態における走行路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態が得られることとなる。このとき、歩行補助装置1の停止状態及び走行状態における左右輪質量配分比を比較・利用することで、ジャイロ等の角度検出用センサを用いずに、フレーム体2のロール姿勢状態を推定することができる。
【0033】
次いで、手順S102で推定されたフレーム体2のロール姿勢状態から、フレーム体2の目標ロール姿勢を算出する(図5の手順S103)。目標ロール姿勢としては、図9(b)に示すように、ジョイント部8の回動軸が水平路面Qに対して平行となる、つまり水平路面Qに対するフレーム体2のロール角が0度となるように設定される。なお、この時のフレーム体2のロール角を目標ロール角とする。
【0034】
このとき、例えば走行路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合(図9参照)には、図10に示すように、右側フレーム9B,7Bの開き角度θaRを大きくし、左側フレーム9A,7Aの目標開き角度θaLを小さくする。これにより、フレーム体2の右側ホイールベース(右前輪3Bの中心軸と右後輪4Bの中心軸との間の距離)が長くなり、フレーム体2の左側ホイールベース(左前輪3Aの中心軸と左後輪4Aの中心軸との間の距離)が短くなると共に、フレーム体2の右側が下がり、フレーム体2の左側が持ち上がるようになる。
【0035】
なお、走行路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合には、フレーム体2の左側ホイールベースはそのまま変えずに、フレーム体2の右側ホイールベースを長くするだけでも良く、或いはフレーム体2の右側ホイールベースはそのまま変えずに、フレーム体2の左側ホイールベースを短くするだけでも良い。
【0036】
フレーム体2の目標ロール姿勢の算出は、以下のようにして行う。即ち、図11に示すように、ジョイントモータ12Aと路面Rとの距離をhL、ジョイントモータ12Bと路面Rとの距離をhRとすると、φ度だけ傾いた左下がりの傾斜面において水平路面Qに対するフレーム体2のロール角を0度にするには、幾何学的関係より、
hR+t・tanφ=hL …(C)
となる。
【0037】
ここで、フレーム体2の右側ホイールベースのみを長くする場合には、図12に示すように、右側ホイールベースをWb、右側フレーム9B,7Bの目標開き角度をθRtargetとすると、余弦定理により、
Wb2=pf2+pr2−2pf・pr・cos(θRtarget)
となる。よって、下記式が得られる。
【数3】
【0038】
また、上記(C)式より、
hR=hL−t・tanφ …(E)
となる。従って、(D)式=(E)式となるような目標開き角度θRtargetを求めれば良い。
【0039】
次いで、角度センサ14A,14Bの検出値に基づいて、フレーム体2のロール姿勢が手順S103で得られた目標ロール姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御して、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させる(手順S104)。つまり、角度センサ14A,14Bで検出された左側フレーム9A,7Aの開き角度及び右側フレーム9B,7Bの開き角度が目標開き角度となるように、ジョイントモータ12A,12Bを制御する。
【0040】
これにより、歩行補助装置1が左右に傾斜する路面を走行する場合でも、歩行補助装置1が傾くことが無く、ハンドル部5が水平面Qに対して平行な状態となるため、水平面Qを走行する場合と同じ姿勢で走行することとなる。
【0041】
以上において、ジョイントモータ12A,12Bは、左前輪3Aと左後輪4Aとの間の距離、右前輪3Bと右後輪4Bとの間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段を構成する。トルクセンサ15A,15B及びコントローラ16の上記手順S101,102は、車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段を構成する。角度センサ14A,14B及びコントローラ16の上記手順S103,104は、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段を構成する。
【0042】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1においては、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させるジョイントモータ12A,12Bを設け、フレーム体2の左側ホイールベース及び右側ホイールベースを独立して設定変更可能な構成としている。そして、走行路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定し、水平路面Qに対するフレーム体2のロール角が0度になるような目標ロール姿勢を算出し、フレーム体2のロール姿勢が目標ロール姿勢になるようにジョイントモータ12A,12Bの少なくとも一方を制御するので、走行路面Rが左右に傾斜している場合でも、安定性良く走行することができる。
【0043】
また、車輪3A〜4Bにかかる荷重を検出する荷重センサや歩行補助装置1の傾きを検出する傾斜センサ等を使用せずに、歩行補助装置1のホイールベース可変機構を巧みに利用して、歩行補助装置1を所望のロール姿勢となるように制御するので、部品点数を削減して低コスト化を図りつつ、歩行補助装置1を安定して走行させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ジョイントモータ12A,12Bにより左右両側のホイールベースを設定変更する構成としたが、インホイールモータ10A〜11Bによりホイールベースを変更することも可能である。具体的には、前輪3A,3B及び後輪4A,4Bの回転方向を逆にすることで、ホイールベースを長くしたり短くすることができる。よって、この場合には、インホイールモータ10A〜11Bがホイールベース変更手段となる。
【0045】
また、上記実施形態では、ジョイント部8が前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bに直接連結された構造となっているが、前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bにそれぞれ異なるジョイント部を取り付け、それらのジョイント部を連結フレームで連結した構造としても良い。
【0046】
また、本実施形態の電動車両は、歩行者の歩行を補助する歩行補助装置であるが、本発明は、可変ホイールベース機構を有する他の電動車両、例えば1人乗りロボット車両等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係わる電動車両の一実施形態として歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した歩行補助装置の側面図である。
【図3】図1に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】図1に示した歩行補助装置の主要部を示す部分斜視図及び部分側面図である。
【図5】図3に示したコントローラにより実行される姿勢制御処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した歩行補助装置のフレーム体によって形成される角度パラメータを示す部分側面図である。
【図7】図1に示した歩行補助装置が傾斜した路面を走行している状態を示す部分背面図である。
【図8】図7に示した路面の傾斜角度を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【図9】図1に示した歩行補助装置が傾斜した路面を走行する際に、フレーム体のロール姿勢が目標ロール姿勢となるように制御される前後の状態を示す部分背面図である。
【図10】図9に示したフレーム体の姿勢が制御された後の状態を示す部分斜視図である。
【図11】図9に示した目標ロール姿勢を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【図12】図9に示した目標ロール姿勢を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【符号の説明】
【0048】
1…歩行補助装置(電動車両)、2…フレーム体(車体)、3A…左前輪、3B…右前輪、4A…左後輪、4B…右後輪、7A,7B…後フレーム、8…ジョイント部、9A,9B…前フレーム、10A,10B…インホイールモータ(駆動モータ)、11A,11B…インホイールモータ(駆動モータ)、12A…ジョイントモータ(第1回動モータ、ホイールベース変更手段)、12B…ジョイントモータ(第2回動モータ、ホイールベース変更手段)、14A,14B…角度センサ(姿勢制御手段)、15A…トルクセンサ(第1トルク検出手段、姿勢推定手段)、15B…トルクセンサ(第2トルク検出手段、姿勢推定手段)、16…コントローラ(姿勢推定手段、姿勢制御手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより車輪を回転駆動させる電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両の一つに歩行補助装置がある。従来の歩行補助装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、フレーム構造の本体と、この本体に回転可能に支持された4つの車輪とを備え、4つの車輪のうち2つの後輪をモータにより回転駆動される駆動輪としたものが知られている。
【特許文献1】特開平10−216183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、歩行補助装置の走行時には、路面が水平面に対して傾いているために歩行補助装置が左右に傾いた状態となることが考えられる。しかし、上記従来技術においては、そのような左右に傾いた路面での走行については何ら考慮されていない。
【0004】
本発明の目的は、路面が左右に傾いている場合でも安定して走行することができる電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動車両は、左右1対の前フレーム及び左右1対の後フレームを有する車体と、各前フレームの下端部に回転可能に支持された左前輪及び右前輪と、各後フレームの下端部に回転可能に支持された左後輪及び右後輪と、各前フレームと各後フレームとを回動自在に連結するジョイント部と、前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動させる複数の駆動モータと、左前輪と左後輪との間の距離、右前輪と右後輪との間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段と、車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段と、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような本発明の電動車両においては、車体のロール姿勢状態を推定し、そのロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する。ここで、ホイールベース変更手段は、左側のホイールベース(左前輪と左後輪との間の距離)と右側のホイールベース(右前輪と右後輪との間の距離)とをそれぞれ独立に変更可能であるため、左右両側でホイールベースを異なるように設定することができる。そこで、路面が水平面に対して傾いているために車体が左右に傾いた状態となる場合には、左側のホイールベース及び右側のホイールベースの何れか一方を他方よりも長くすることで、車体の傾きを抑えることができる。これにより、路面が水平面に対して左右に傾いている場合でも、電動車両を安定して走行させることができる。
【0007】
好ましくは、ホイールベース変更手段は、左側の前フレームと左側の後フレームとを相対的に回動させる第1回動モータと、右側の前フレームと右側の後フレームとを相対的に回動させる第2回動モータとを有し、姿勢制御手段は、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるように第1回動モータ及び第2回動モータの少なくとも一方を制御する。このように2つの回動モータを使用することにより、左右両側のホイールベースを簡単に且つスムーズに変更することができる。
【0008】
このとき、姿勢推定手段は、第1回動モータにかかるトルクを検出する第1トルク検出手段と、第2回動モータにかかるトルクを検出する第2トルク検出手段とを有し、第1トルク検出手段及び第2トルク検出手段の検出値を用いて車体のロール姿勢状態を推定することが好ましい。この場合には、特に荷重センサや傾斜センサ等を用いなくても、電動車両の各部の寸法が分かっていれば、第1トルク検出手段及び第2トルク検出手段の検出値から車体のロール姿勢状態を推定することが可能となる。
【0009】
また、好ましくは、目標ロール姿勢は、ジョイント部の回動軸が水平路面に対して実質的に平行となるような姿勢である。なお、実質的に平行とは、完全に平行だけでなく、略平行も含む概念である。この場合には、路面が水平面に対して左右に傾いていても、水平面に対する車体の傾きが殆ど無い状態となるため、電動車両をより安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動車両によれば、路面が左右に傾いている場合でも安定して走行することができる。これにより、操作性や安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる電動車両の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わる電動車両の一実施形態として歩行補助装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示した歩行補助装置の側面図である。各図において、本実施形態の歩行補助装置1は、歩行者の歩行を補助する電動手押し車である。
【0013】
歩行補助装置1は、フレーム体2と、このフレーム体2の左右両側に設けられた前輪3A,3B及び後輪4A,4Bとを備えている。フレーム体2は、歩行補助装置1の車両本体(車体)を構成している。
【0014】
フレーム体2は、歩行者が握るハンドル部5と、このハンドル部5の両端部から前側斜め下方にそれぞれ延びる左右1対のメインフレーム6A,6Bと、各メインフレーム6A,6Bから分岐して後側斜め下方にそれぞれ延びる左右1対の後フレーム7A,7Bとを有している。メインフレーム6A,6Bの略中央部には、後フレーム7A,7Bをメインフレーム6A,6Bに対して回動(開閉)自在に連結するジョイント部8が連結されている。メインフレーム6A,6Bのうちジョイント部8よりも前側(下側)の部分は、前フレーム9A,9Bを構成している。
【0015】
左側の前フレーム9Aの下端部には、左前輪3Aが回転可能に支持され、右側の前フレーム9Bの下端部には、右前輪3Bが回転可能に支持されている。これらの前輪3A,3Bは、インホイールモータ10A,10Bによって回転駆動される。左側の後フレーム7Aの下端部には、左後輪4Aが回転可能に支持され、右側の後フレーム7Bの下端部には、右後輪4Bが回転可能に支持されている。これらの後輪4A,4Bは、インホイールモータ11A,11B(図3参照)によって回転駆動される。
【0016】
ジョイント部8には、後フレーム7Aを前フレーム9Aに対して回動させるジョイントモータ12Aと、後フレーム7Bを前フレーム9Bに対して回動させるジョイントモータ12Bとが設けられている。また、ジョイント部8には、荷物を収容するための荷室を兼ね備えた電源ユニット13が吊り下げられている。
【0017】
また、歩行補助装置1は、図3に示すように、角度センサ14A,14Bと、トルクセンサ15A,15Bと、コントローラ16とを更に備えている。
【0018】
角度センサ14Aは、前フレーム9Aと後フレーム7Aとのなす角度(左側フレーム9A,7Aの開き角度)を検出し、角度センサ14Bは、前フレー9Bと後フレーム7Bとのなす角度(右側フレーム9B,7Bの開き角度)を検出する。トルクセンサ15Aは、ジョイントモータ12Aにかかるトルクを検出し、トルクセンサ15Bは、ジョイントモータ12Bにかかるトルクを検出する。なお、ジョイントモータ12A,12Bにかかるトルクは、ジョイントモータ12A,12Bの信号(電流及び電圧等)から求めることもできる。
【0019】
コントローラ16は、例えばハンドル部5に加わる押し力に応じてインホイールモータ10A〜11Bを制御すると共に、角度センサ14A,14B及びトルクセンサ15A,15Bの検出値を入力し、所定の処理を行い、フレーム体2が所望の姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御する。なお、コントローラ16は、ハンドル部5に内蔵されていても良いし、電源ユニット13に設けられていても良い。
【0020】
コントローラ16のメモリ(図示せず)には、歩行補助装置1に関する寸法やスペック等のデータが予め記憶されている。寸法データとしては、図4に示すように、前フレーム9A,9Bの長さ(ジョイント部8の中心と前輪3A,3Bの中心との間の長さ)pf、後フレーム7A,7Bの長さ(ジョイント部8の中心と後輪4A,4Bの中心との間の長さ)pr、前輪3A,3Bの半径rf、後輪4A,4Bの半径rr、ジョイントモータ12A,12B間の距離t(図8参照)等がある。
【0021】
図5は、コントローラ16により実行される姿勢制御処理手順を示すフローチャートである。同図において、まずトルクセンサ15A,15Bの検出値に基づいて、歩行補助装置1が平坦な路面で停止した状態において車輪3A〜4Bにかかる全体の重量及び左右の重量配分を推定する(図5の手順S101)。本推定処理は、以下のようにして行う。
【0022】
即ち、図4に示すように、左側フレーム9A,7Aの開き角度をθaL、右側フレーム9B,7Bの開き角度をθaRとしたときに、
θaL=θaR=θa
とする。また、図6に示すように、路面Rと前フレーム9Aとのなす角度をθb、路面Rと後フレーム7Aとのなす角度をθcとすると、これらの角度θb,θcは、コントローラ16のメモリ(前述)に記憶された前フレーム9Aの長さpf及び後フレーム7Aの長さpr、上記の角度θaから計算することができる。
【0023】
そして、左側のジョイントモータ12AにかかるトルクTL及び角度θb,θcを用いて、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる荷重(質量)mLgを下記式により算出する。なお、ジョイントモータ12AにかかるトルクTLは、トルクセンサ15Aより得られる。
【数1】
【0024】
また、上記と同様にして、右側のジョイントモータ12BにかかるトルクTR(図4参照)及び角度θb,θcを用いて、右前輪3B及び右後輪4Bにかかる荷重(質量)mRgを下記式により算出する。なお、ジョイントモータ12BにかかるトルクTRは、トルクセンサ15Bより得られる。
【数2】
【0025】
そして、車輪3A〜4Bにかかる全体質量mg(=mLg+mRg)と、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる質量と右前輪3B及び右後輪4Bにかかる質量との配分比(mL:mR)とを算出する。
【0026】
このとき、トルクセンサ15A,15Bの検出値と歩行補助装置1の寸法データとを利用することで、特に荷重センサを使用しなくても、全体質量mg及び左右輪質量配分比(mL:mR)を取得することができる。
【0027】
次いで、トルクセンサ15A,15Bの検出値に基づいて、歩行補助装置1が走行している状態における路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定する(図5の手順S102)。
【0028】
具体的には、まず上記の手順S101と同様にして、左前輪3A及び左後輪4Aにかかる荷重mL’g、右前輪3B及び右後輪4Bにかかる荷重mR’gを算出する。このとき、例えば図7に示すように、路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合には、ジョイントモータ12AにかかるトルクをTL’、 ジョイントモータ12BにかかるトルクをTR’とすると、TL’>TL、TR’<TRとなる。よって、この場合には、mL’g>mLg、mR’g<mRgとなる。
【0029】
そして、フレーム体2のロール姿勢状態を走行路面Rに対するロール角として算出する。フレーム体2のロール角は、地球の水平路面を基準にした車体の横方向の傾き角のことであり、水平路面Qに対する走行路面Rの傾斜角度φとして取得される。
【0030】
ここで、図8に示すように、路面Rに鉛直な方向の力の釣り合いより、
mgcosφ=mL’g+mR’g …(A)
となる。
【0031】
また、ジョイントモータ12A,12B間の距離をt(前述)、ジョイントモータ12A,12Bと路面Rとの間の距離をhとすると、図示A点回りのモーメントの釣り合いより、
mg(t/2+htanφ)=mL’g・t …(B)
となる。なお、距離hは、前フレーム9Aの長さpf、後フレーム7Aの長さpr、左側フレーム9A,7Aの開き角度θaLから求められる。
【0032】
そして、上記の(A)式及び(B)式から、走行路面Rの傾斜角度φが幾何的に算出される。これにより、歩行補助装置1の走行状態における走行路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態が得られることとなる。このとき、歩行補助装置1の停止状態及び走行状態における左右輪質量配分比を比較・利用することで、ジャイロ等の角度検出用センサを用いずに、フレーム体2のロール姿勢状態を推定することができる。
【0033】
次いで、手順S102で推定されたフレーム体2のロール姿勢状態から、フレーム体2の目標ロール姿勢を算出する(図5の手順S103)。目標ロール姿勢としては、図9(b)に示すように、ジョイント部8の回動軸が水平路面Qに対して平行となる、つまり水平路面Qに対するフレーム体2のロール角が0度となるように設定される。なお、この時のフレーム体2のロール角を目標ロール角とする。
【0034】
このとき、例えば走行路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合(図9参照)には、図10に示すように、右側フレーム9B,7Bの開き角度θaRを大きくし、左側フレーム9A,7Aの目標開き角度θaLを小さくする。これにより、フレーム体2の右側ホイールベース(右前輪3Bの中心軸と右後輪4Bの中心軸との間の距離)が長くなり、フレーム体2の左側ホイールベース(左前輪3Aの中心軸と左後輪4Aの中心軸との間の距離)が短くなると共に、フレーム体2の右側が下がり、フレーム体2の左側が持ち上がるようになる。
【0035】
なお、走行路面Rが左下がりの傾斜面となっている場合には、フレーム体2の左側ホイールベースはそのまま変えずに、フレーム体2の右側ホイールベースを長くするだけでも良く、或いはフレーム体2の右側ホイールベースはそのまま変えずに、フレーム体2の左側ホイールベースを短くするだけでも良い。
【0036】
フレーム体2の目標ロール姿勢の算出は、以下のようにして行う。即ち、図11に示すように、ジョイントモータ12Aと路面Rとの距離をhL、ジョイントモータ12Bと路面Rとの距離をhRとすると、φ度だけ傾いた左下がりの傾斜面において水平路面Qに対するフレーム体2のロール角を0度にするには、幾何学的関係より、
hR+t・tanφ=hL …(C)
となる。
【0037】
ここで、フレーム体2の右側ホイールベースのみを長くする場合には、図12に示すように、右側ホイールベースをWb、右側フレーム9B,7Bの目標開き角度をθRtargetとすると、余弦定理により、
Wb2=pf2+pr2−2pf・pr・cos(θRtarget)
となる。よって、下記式が得られる。
【数3】
【0038】
また、上記(C)式より、
hR=hL−t・tanφ …(E)
となる。従って、(D)式=(E)式となるような目標開き角度θRtargetを求めれば良い。
【0039】
次いで、角度センサ14A,14Bの検出値に基づいて、フレーム体2のロール姿勢が手順S103で得られた目標ロール姿勢となるようにジョイントモータ12A,12Bを制御して、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させる(手順S104)。つまり、角度センサ14A,14Bで検出された左側フレーム9A,7Aの開き角度及び右側フレーム9B,7Bの開き角度が目標開き角度となるように、ジョイントモータ12A,12Bを制御する。
【0040】
これにより、歩行補助装置1が左右に傾斜する路面を走行する場合でも、歩行補助装置1が傾くことが無く、ハンドル部5が水平面Qに対して平行な状態となるため、水平面Qを走行する場合と同じ姿勢で走行することとなる。
【0041】
以上において、ジョイントモータ12A,12Bは、左前輪3Aと左後輪4Aとの間の距離、右前輪3Bと右後輪4Bとの間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段を構成する。トルクセンサ15A,15B及びコントローラ16の上記手順S101,102は、車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段を構成する。角度センサ14A,14B及びコントローラ16の上記手順S103,104は、車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるようにホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段を構成する。
【0042】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1においては、後フレーム7A,7Bを前フレーム9A,9Bに対して回動させるジョイントモータ12A,12Bを設け、フレーム体2の左側ホイールベース及び右側ホイールベースを独立して設定変更可能な構成としている。そして、走行路面Rに対するフレーム体2のロール姿勢状態を推定し、水平路面Qに対するフレーム体2のロール角が0度になるような目標ロール姿勢を算出し、フレーム体2のロール姿勢が目標ロール姿勢になるようにジョイントモータ12A,12Bの少なくとも一方を制御するので、走行路面Rが左右に傾斜している場合でも、安定性良く走行することができる。
【0043】
また、車輪3A〜4Bにかかる荷重を検出する荷重センサや歩行補助装置1の傾きを検出する傾斜センサ等を使用せずに、歩行補助装置1のホイールベース可変機構を巧みに利用して、歩行補助装置1を所望のロール姿勢となるように制御するので、部品点数を削減して低コスト化を図りつつ、歩行補助装置1を安定して走行させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ジョイントモータ12A,12Bにより左右両側のホイールベースを設定変更する構成としたが、インホイールモータ10A〜11Bによりホイールベースを変更することも可能である。具体的には、前輪3A,3B及び後輪4A,4Bの回転方向を逆にすることで、ホイールベースを長くしたり短くすることができる。よって、この場合には、インホイールモータ10A〜11Bがホイールベース変更手段となる。
【0045】
また、上記実施形態では、ジョイント部8が前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bに直接連結された構造となっているが、前フレーム9A,9B及び後フレーム7A,7Bにそれぞれ異なるジョイント部を取り付け、それらのジョイント部を連結フレームで連結した構造としても良い。
【0046】
また、本実施形態の電動車両は、歩行者の歩行を補助する歩行補助装置であるが、本発明は、可変ホイールベース機構を有する他の電動車両、例えば1人乗りロボット車両等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係わる電動車両の一実施形態として歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した歩行補助装置の側面図である。
【図3】図1に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】図1に示した歩行補助装置の主要部を示す部分斜視図及び部分側面図である。
【図5】図3に示したコントローラにより実行される姿勢制御処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した歩行補助装置のフレーム体によって形成される角度パラメータを示す部分側面図である。
【図7】図1に示した歩行補助装置が傾斜した路面を走行している状態を示す部分背面図である。
【図8】図7に示した路面の傾斜角度を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【図9】図1に示した歩行補助装置が傾斜した路面を走行する際に、フレーム体のロール姿勢が目標ロール姿勢となるように制御される前後の状態を示す部分背面図である。
【図10】図9に示したフレーム体の姿勢が制御された後の状態を示す部分斜視図である。
【図11】図9に示した目標ロール姿勢を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【図12】図9に示した目標ロール姿勢を算出するための寸法パラメータを示すモデル図である。
【符号の説明】
【0048】
1…歩行補助装置(電動車両)、2…フレーム体(車体)、3A…左前輪、3B…右前輪、4A…左後輪、4B…右後輪、7A,7B…後フレーム、8…ジョイント部、9A,9B…前フレーム、10A,10B…インホイールモータ(駆動モータ)、11A,11B…インホイールモータ(駆動モータ)、12A…ジョイントモータ(第1回動モータ、ホイールベース変更手段)、12B…ジョイントモータ(第2回動モータ、ホイールベース変更手段)、14A,14B…角度センサ(姿勢制御手段)、15A…トルクセンサ(第1トルク検出手段、姿勢推定手段)、15B…トルクセンサ(第2トルク検出手段、姿勢推定手段)、16…コントローラ(姿勢推定手段、姿勢制御手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対の前フレーム及び左右1対の後フレームを有する車体と、
前記各前フレームの下端部に回転可能に支持された左前輪及び右前輪と、
前記各後フレームの下端部に回転可能に支持された左後輪及び右後輪と、
前記各前フレームと前記各後フレームとを回動自在に連結するジョイント部と、
前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方を回転駆動させる複数の駆動モータと、
前記左前輪と前記左後輪との間の距離、前記右前輪と前記右後輪との間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段と、
前記車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段と、
前記車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるように前記ホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記ホイールベース変更手段は、左側の前記前フレームと左側の前記後フレームとを相対的に回動させる第1回動モータと、右側の前記前フレームと右側の前記後フレームとを相対的に回動させる第2回動モータとを有し、
前記姿勢制御手段は、前記車体のロール姿勢状態が前記目標ロール姿勢となるように前記第1回動モータ及び前記第2回動モータの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記姿勢推定手段は、前記第1回動モータにかかるトルクを検出する第1トルク検出手段と、前記第2回動モータにかかるトルクを検出する第2トルク検出手段とを有し、前記第1トルク検出手段及び前記第2トルク検出手段の検出値を用いて前記車体のロール姿勢状態を推定することを特徴とする請求項2記載の電動車両。
【請求項4】
前記目標ロール姿勢は、前記ジョイント部の回動軸が水平路面に対して実質的に平行となるような姿勢であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電動車両。
【請求項1】
左右1対の前フレーム及び左右1対の後フレームを有する車体と、
前記各前フレームの下端部に回転可能に支持された左前輪及び右前輪と、
前記各後フレームの下端部に回転可能に支持された左後輪及び右後輪と、
前記各前フレームと前記各後フレームとを回動自在に連結するジョイント部と、
前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方を回転駆動させる複数の駆動モータと、
前記左前輪と前記左後輪との間の距離、前記右前輪と前記右後輪との間の距離をそれぞれ独立に変更するホイールベース変更手段と、
前記車体のロール姿勢状態を推定する姿勢推定手段と、
前記車体のロール姿勢状態が目標ロール姿勢となるように前記ホイールベース変更手段を制御する姿勢制御手段とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記ホイールベース変更手段は、左側の前記前フレームと左側の前記後フレームとを相対的に回動させる第1回動モータと、右側の前記前フレームと右側の前記後フレームとを相対的に回動させる第2回動モータとを有し、
前記姿勢制御手段は、前記車体のロール姿勢状態が前記目標ロール姿勢となるように前記第1回動モータ及び前記第2回動モータの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記姿勢推定手段は、前記第1回動モータにかかるトルクを検出する第1トルク検出手段と、前記第2回動モータにかかるトルクを検出する第2トルク検出手段とを有し、前記第1トルク検出手段及び前記第2トルク検出手段の検出値を用いて前記車体のロール姿勢状態を推定することを特徴とする請求項2記載の電動車両。
【請求項4】
前記目標ロール姿勢は、前記ジョイント部の回動軸が水平路面に対して実質的に平行となるような姿勢であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−22435(P2010−22435A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184149(P2008−184149)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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