説明

電動過給機

【課題】回転電機の冷却能力に優れた電動過給機を提供する。
【解決手段】電動過給機は、ロータ212と、ロータ212を支持するためのシャフト210と、オイルを微細化するためのノズル235とを備える。ロータ212は、端面212a,212bを有する円筒形状に形成されている。ノズル235は、端面212a,212bの径方向の外周部に配置されている。電動過給機は、オイルがシャフト210に沿って端面212a,212bに供給されるように形成されている。電動過給機は、オイルの少なくとも一部が端面212a,212bを伝ってノズル235に向かうように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の内燃機関には自然吸気式エンジンと過給式エンジンとがある。過給式エンジンの過給機構としては、ターボチャージャと呼ばれる排気タービン駆動式のものと、スーパチャージャと呼ばれる機械駆動式のものとが実用化されている。ターボチャージャは、排気ガスのエネルギでタービンを回転させ、タービンと直結したコンプレッサで吸入空気を圧縮してエンジンに供給するものである。
【0003】
ターボチャージャは、内燃機関の排気ガスを利用するため、内燃機関の回転数が低い排気エネルギが小さい状態では、十分な過給を行なうことができない。このため、電動機を配置して、電動機を併用してコンプレッサを回転させることにより、低回転域の過給圧を強制的に上昇させる電動過給機が検討されている。
【0004】
実開平3−104132号公報においては、エンジンの排気ガスで駆動するタービンおよびエンジンに過給空気を供給するコンプレッサを取付けた回転軸を支持する軸受けと、コンプレッサからの過給空気と過給空気圧の作用で送り出されるオイルによってオイルミストを発生させるミスト発生器と、ミスト発生器で発生したオイルミストを軸受けに供給する通路とを有するターボチャージャの潤滑装置が開示されている。
【0005】
特開2004−180479号公報においては、モータケース内に配置したステータと、ステータの内周において回転するロータと、モータケースの内部空間に冷媒をミスト状にして導入するミスト発生器と、ロータの回転軸に取付けた羽根車とを備えるモータの冷却構造が開示されている。
【特許文献1】実開平3−104132号公報
【特許文献2】特開2004−180479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンプレッサを回転させるための回転電機を備える電動過給機は、タービンの羽根車であるタービンホイールと、コンプレッサの羽根車であるコンプレッサホイールとを備える。タービンホイールおよびコンプレッサホイールは、シャフトに取り付けられている。回転電機は、このシャフトを回転するように取り付けられている。
【0007】
回転電機に電気を供給することにより、回転電機が電動機となって駆動する。コンプレッサホイールに回転力が付与される。この結果、内燃機関に対してより多くの空気を供給することができる。たとえば、自動車の発進時や追い越し加速時などには、エンジンの回転数が低い状態から高い状態に移行する。エンジンの回転数が低い状態においても回転電機が駆動することにより十分な過給を行なうことができて加速性が向上する。
【0008】
回転電機は、電気を供給して駆動することにより発熱する。または、回転電機は、電気を供給しないときにおいても発電機となって発熱する。さらに、シャフトは、たとえば、1分間に数万回転〜数十万回転で回転する。このため、シャフトを支持する軸受けは発熱する。このように、電動過給機の回転電機は、発熱が大きいという問題があった。
【0009】
上記の実開平3−104132号公報においては、オイルミストを発生させるために、エンジンの過給空気を用いる。このため、過給空気の圧力損失が生じるという問題がある。また、オイルミスト発生器にオイルを供給するためのオイルのタンクが必要となり、電動過給機に必要な潤滑油の量が多くなってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、回転電機の冷却能力に優れた電動過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における電動過給機は、ロータと、上記ロータを支持するためのシャフトと、潤滑油を微細化するためのノズルとを備える。上記ロータは、端面を有する円筒形状に形成されている。上記ノズルは、上記端面の径方向の外周部に配置されている。上記潤滑油が上記シャフトに沿って上記端面に供給されるように形成されている。上記潤滑油の少なくとも一部が上記端面を伝って上記ノズルに向かうように形成されている。
【0012】
上記発明において好ましくは、上記ロータは、上記端面に溝部を有する。上記溝部は、上記シャフトの表面から上記ノズルに向かって延びている。
【0013】
上記発明において好ましくは、上記ロータと対向するように配置されたステータを備える。上記ロータおよび上記ステータを内部に配置するための筐体とを備える。上記筐体に支持され、上記シャフトを回転可能に支持するための軸受けを備える。上記軸受けに上記潤滑油が供給されるように形成されている。上記軸受けに供給された上記潤滑油が上記シャフトを伝って上記端面に導かれるように形成されている。
【0014】
上記発明において好ましくは、上記ノズルは、噴出し口を有する。上記噴出し口は、上記ロータの径方向の外側を向くように形成されている。
【0015】
上記発明において好ましくは、上記ロータと対向するように配置されたステータを備える。上記ノズルは、噴出し口を有する。上記噴出し口は、上記ロータと上記ステータとの間の隙間に上記潤滑油を噴出するように指向している。
【0016】
上記発明において好ましくは、上記ロータは、表面に配置され、上記潤滑油を攪拌するための攪拌部材を含む。
【0017】
上記発明において好ましくは、上記ロータは、表面に形成され、上記潤滑油を攪拌するための凹部を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転電機の冷却能力に優れた電動過給機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1から図6を参照して、実施の形態1における電動過給機について説明する。本実施の形態における電動過給機は、自動車のエンジンシステムに搭載されている。
【0020】
図1は、本実施の形態におけるエンジンシステムの概略構成図である。本実施の形態におけるエンジンシステムは、内燃機関としてのエンジン100と、電動過給機200とを備える。また、本実施の形態におけるエンジンシステムは、インタークーラ162と、ECU(Electronic Control Unit)190とを備える。
【0021】
ECU190は、車両に搭載された各種センサからの情報およびメモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行なう。ECU190は、エンジン100および電動過給機200が所望の運転状態となるように制御を行なう。制御装置としては、この形態に限られず、エンジン100を制御するエンジンECUと、エンジンECUと双方向で通信可能に接続され、電動過給機200を制御する過給機ECUとを含んでいても構わない。
【0022】
吸気口150から吸入される空気は、エアクリーナ152を通る。エアクリーナ152は、空気をろ過する。エアクリーナ152によりろ過された空気は、吸気通路156を介して電動過給機200に流入する。電動過給機200に流入した空気はコンプレッサ202において圧縮された後に、吸気通路160を通ってインタークーラ162に流入する。
【0023】
インタークーラ162は、コンプレッサ202において圧縮されて温度が上昇した空気を冷却する。具体的には、インタークーラ162は、外部の空気と熱交換することにより内部を流通する空気の温度を低下させる。冷却された空気の体積は、冷却前に比べて小さくなるため、より多くの空気がエンジン100に送り込まれる。インタークーラ162により冷却された空気は、吸気通路102を通ってエンジン100に吸入される。
【0024】
吸気通路102の途中には、吸気通路102に流通する空気の流量を調整するスロットルバルブ166が配置されている。スロットルバルブ166は、スロットルモータ168により駆動される。スロットルモータ168は、ECU190から受信する制御信号に応じて駆動する。
【0025】
エンジン100は、複数の気筒を備える。それぞれの気筒内には、紙面上下方向に摺動可能にピストン114が設けられている。ピストン114は、コンロッド116を介してクランクシャフト120に連結される。ピストン114、コンロッド116およびクランクシャフト120によりクランク機構が形成される。
【0026】
ピストン114の上部においては、燃焼室108が形成されている。燃焼室108に向けて点火プラグ110と燃料噴射インジェクタ(図示せず)とが配置されている。点火プラグ110は、ECU190の制御信号の受信に応じて点火する。
【0027】
シリンダヘッドには、吸気通路102と排気通路130とがそれぞれ燃焼室108に接続するように設けられている。吸気通路102と燃焼室108との間には、吸気バルブ104が設けられる。排気通路130と燃焼室108との間には、排気バルブ128が設けられる。吸気バルブ104および排気バルブ128は、クランクシャフト120と連動して回転するカムシャフトにより駆動される。
【0028】
吸気通路102を流通する空気は、ピストン114が下降するときに、吸気バルブ104が開かれて燃焼室108に吸引される。燃焼室108に流入する空気は、燃料噴射インジェクタから噴射された燃料と混合される。吸気バルブ104が閉じて、ピストン114が上死点付近まで上昇したときに点火プラグ110が点火して、空気と混合された燃料が燃焼する。燃焼による圧力によりピストン114が押し下げられる。このとき、ピストン114の上下運動がクランク機構を介してクランクシャフト120の回転運動に変換される。
【0029】
ピストン114が下死点付近まで下降したときに、排気バルブ128が開く。ピストン114が再び上昇するときに、燃焼室108内で燃焼した空気、すなわち、排気ガスは、排気通路130に流入する。排気通路130に流入した空気は、電動過給機200のタービン204を駆動させた後に、排気管180を流通して触媒182に導かれる。排気ガスは、触媒182により浄化された後に車外に排出される。
【0030】
電動過給機200は、筐体としてのハウジング250を備える。本実施の形態におけるハウジング250は、内部空間252を有する円筒形状である。内部空間252には、ロータ212およびステータ214が配置されている。
【0031】
電動過給機200は、コンプレッサ202を備える。コンプレッサ202は、コンプレッサハウジングを含む。コンプレッサ202は、コンプレッサハウジング内に配置されているコンプレッサホイール206を含む。コンプレッサホイール206は、羽根車形状に形成されている。コンプレッサホイールは、コンプレッサロータ、またはコンプレッサブレードなどとも呼ばれる。コンプレッサホイール206は、回転することによりエアクリーナ152によりろ過された空気を圧縮(過給)するように形成されている。
【0032】
電動過給機200は、タービン204を備える。タービン204は、タービンハウジングを含む。タービン204は、タービンハウジング内に配置されているタービンホイール208を含む。タービンホイール208は、羽根車形状に形成されている。タービンホイール208は、タービンロータ、またはタービンブレードなどとも呼ばれる。タービンホイール208は、エンジン100の排気ガスにより回転するように形成されている。
【0033】
電動過給機200は、シャフト210を備える。シャフト210は、ハウジング250を貫通するように設けられる。シャフト210は、ハウジング250に固定された軸受けとしてのベアリング222,224により回転自在に支持されている。シャフト210の両端には、コンプレッサホイール206とタービンホイール208とがそれぞれ配置されている。電動過給機200は、排気ガスによりタービンホイール208が回転するとコンプレッサホイール206も回転するように形成されている。
【0034】
電動過給機200は、回転電機216を備える。回転電機216は、たとえば、ブラシレスDCモータである。回転電機216は、電気を供給することにより回転力を出力して電動機になるように形成されている。また、回転電機216は、逆に回転力が入力されることにより回生運動を行なって発電機になるように形成されている。回転電機216は、コンプレッサ202とタービン204との間に配置されている。回転電機216は、シャフト210を回転させるように形成されている。
【0035】
回転電機216は、ロータ212とステータ214とを含む。ステータ214は、コイル214aを含む。ロータ212は、シャフト210に固定されている。ステータ214は、ハウジング250に固定されている。回転電機216には、インバータ193から電力が供給される。インバータ193は、ECU190の制御信号に応じてバッテリからの直流の電気を交流の電気に変換する。ロータ212およびステータ214は、磁界を形成してシャフト210に回転力を付与する。
【0036】
コンプレッサホイール206とベアリング224との間には、シール(図示せず)が配置される。シールは、ハウジング250に固定されている。シールは、内部空間252に存在するオイルまたはオイル供給通路218からベアリング224に供給されるオイルがコンプレッサホイール206の配置されている空間に漏出することを防止する。
【0037】
また、タービンホイール208とベアリング222との間には、シール(図示せず)が配置される。シールは、ハウジング250に固定されている。シールは、内部空間252に存在するオイルまたはオイル供給通路220からベアリング222に供給されたオイルがタービンホイール208の配置されている空間に漏出することを防止する。
【0038】
ハウジング250は、オイル供給通路218,220を含む。ベアリング222,224の作動部分には、オイル供給通路218,220を介して潤滑油としてのオイルが供給される。オイルは、ベアリング222,224の潤滑および回転電機216の温度を低下させる冷却媒体として機能する。オイルは、電動ポンプ170により供給される。電動ポンプ170は、ECU190の制御信号を受信して作動する。
【0039】
ベアリング222,224に供給されるオイルは、ハウジング250の内部空間252から排油通路221を通して排油される。排油通路221は、内部空間252の底部に接続されている。オイルは、排油通路221に接続されている循環通路を介して電動ポンプ170まで流通する。この後に、オイルは、電動ポンプ170により、再びオイル供給通路218,220を介してベアリング222,224に供給される。
【0040】
エンジン100で、燃料と混合された空気が燃焼された後に生じる排気ガスは、排気通路130からタービン204に導かれる。排気ガスは、タービン204でタービンホイール208を回転させ、回転力がシャフト210に伝達される。
【0041】
一方、エアクリーナ152によってろ過された空気は、吸気通路156を流通して、コンプレッサ202に導かれる。空気は、シャフト210と一体となって回転するコンプレッサホイール206によって圧縮(過給)されて、インタークーラ162に送られる。
【0042】
ECU190は、エンジン100の低回転域において、コンプレッサ202が圧縮する空気が所望の過給圧に到達しない場合(たとえば、エンジン100の回転数が予め定められた回転数以下である場合)に、インバータ193を介して回転電機216を駆動するように制御を行なう。回転電機216が駆動することにより、コンプレッサ202の過給圧が強制的に上昇する。電動ポンプ170は、ECU190から受信する制御信号に応じて作動して、ベアリング222,224に対してオイルを供給する。
【0043】
図2に、本実施の形態における電動過給機の拡大概略断面図を示す。ハウジング250のほぼ中央部分には、挿通穴が形成されている。この挿通穴には、ベアリング222,224が配置されている。この挿通穴には、シャフト210が挿通している。シャフト210は、回転軸400を回転中心にして回転するように形成されている。シャフト210は、ベアリング222,224を介してハウジング250に支持されている。
【0044】
ロータ212は、シャフト210に固定されている。本実施の形態におけるロータ212は、円筒形状に形成されている。ロータ212は、円筒形状の延びる方向が回転軸400に沿うように配置されている。ロータ212は、端面212a,212bを有する。端面212aは、ベアリング224に対向している。端面212bは、ベアリング222に対向している。
【0045】
本実施の形態におけるシャフト210は、スペーサ210cを含む。スペーサ210cは、シャフト210本体のコンプレッサ側の端部に配置されている。スペーサ210cは、円筒状に形成されている。シャフト210は、タービン側の端部に当接部210bを有する。当接部210bは、ベアリング222が当接する部分である。スペーサ210cは、当接部210aを有する。当接部210aは、ベアリング224が当接する部分である。シャフト210の当接部210a,210bの表面は、ロータ212の端面212a,212bに向かって延びている。
【0046】
ハウジング250には、ベアリング222,224に潤滑油を供給するためのオイル供給通路218,220が形成されている。オイルは、矢印300に示すように、オイル供給通路218,220を通してベアリング222,224に供給される。
【0047】
本実施の形態における電動過給機は、ベアリング222,224に供給されたオイルが、矢印301に示すように内部空間252に進むように形成されている。電動過給機は、オイルがシャフト210の回転軸400に沿った向きに進行するように形成されている。電動過給機は、オイルがシャフト210を伝ってロータ212の端面212a,212bに向かうように形成されている。
【0048】
図3に、本実施の形態におけるロータの端部の拡大概略斜視図を示す。図3は、コンプレッサ側の端部の斜視図である。
【0049】
本実施の形態におけるシャフト210のコンプレッサ側の端部には、スペーサ210cが配置されている。本実施の形態におけるロータ212の端面212aには、曲面部212dが形成されている。曲面部212dは、断面形状が円弧状に形成されている。ロータ212の端面212aは、シャフト210の表面を伝って流れるオイルが、矢印306に示すように向きを変えるように形成されている。
【0050】
本実施の形態におけるロータ212は、端面212aに溝部213が形成されている。溝部213は、端面212aから凹むように形成されている。溝部213は、ロータ212の径方向に延びるように形成されている。
【0051】
本実施の形態における電動過給機は、オイルを微細化するためのノズル235を備える。ノズル235は、端面212aの径方向の外周部に配置されている。溝部213は、シャフト210の表面からノズル235に向かって延びている。
【0052】
本実施の形態における電動過給機は、オイルがシャフト210に沿って端面212aに到達するように形成されている。端面212aうち溝部213に到達したオイルは、溝部213の内部を流れてノズル235に到達する。このように、本実施の形態における電動過給機は、オイルの少なくとも一部が端面212aを伝わってノズル235に向かうように形成されている。
【0053】
図4に、本実施の形態におけるロータの端部の概略断面図を示す。図4は、コンプレッサ側の端部の概略断面図である。溝部213は、ロータ212の端面212aの形状に沿って形成されている。溝部213は、向きを変えてロータの径方向の外側に向かうように形成されている。ノズル235は、溝部213の先端に配置されている。ノズル235は、溝部213に嵌め込まれている。
【0054】
本実施の形態におけるノズル235は、噴出し口235aが形成されている端面がロータ212の外周面を延在するように形成されている。ノズル235は、噴出し口235aが形成されている端面とロータ212の外周面とが同一の曲面状になるように形成されている。
【0055】
図5に、本実施の形態におけるノズルの拡大概略断面図を示す。ノズル235は、噴出し口235aを有する。ノズル235は、オイルが加圧されて流入することにより、矢印302に示すように、噴出し口235aから噴出するように形成されている。噴出し口235aは、オイル260を微細化するように形成されている。ノズル235は、オイルを噴霧化することができるように形成されている。
【0056】
図6に、本実施の形態におけるロータを軸方向に沿って見たときの概略正面図を示す。ロータ212は、矢印307に示す向きに回転するように形成されている。ノズル235は、噴出し口235aがロータ212の径方向の外側を向くように形成されている。本実施の形態においては、ロータ212の一の端面に、2個の溝部213と2個のノズル235が形成されている。ノズル235は、ロータ212の径方向において互いに離反する向きに配置されている。
【0057】
図2を参照して、本実施の形態においては、ロータ212のタービン側の端部においては、スペーサの部分が一体的に形成されている点を除いて、コンプレッサ側の端部と同様の構成を有する。ロータ212のタービン側の端面212bにおいても曲面部が形成され、オイルの向きが変わるように形成されている。また、ロータ212のタービン側の端部においても、端面212bに溝部が形成され、溝部の先端にノズルが配置されている。
【0058】
本実施の形態においては、ロータの一の端面に2個のノズルが配置されているが、この形態に限られず、ノズルは1個配置されていても構わない。または、3個以上のノズルが配置されていても構わない。
【0059】
矢印300に示すようにベアリング222,224に流入するオイルは、ベアリング222,224で熱を奪う。ベアリング222,224を冷却したオイルは、矢印301に示すようにシャフト210の表面を伝って、ロータ212の端面212a,212bに向かう。このときに、オイルは、シャフト210の熱を奪うことができる。
【0060】
図3および図4を参照して、オイルは、矢印306に示すように、ロータ212の端面212aの曲面部212dで向きを変える。ベアリング224から排出されたオイルは、シャフト210の回転軸方向に沿って進行した後に曲面部212dに沿って向きを変える。オイルは、90°向きを変えてロータ212の半径方向の外側に向かう。このときにオイルは、ロータ212の熱を奪うことができる。
【0061】
シャフト210の表面を流れるオイルのうち一部のオイルは、溝部213に流れ込み、溝部213に沿って進行する。溝部213に流入したオイルはノズル235に向かう。
【0062】
ロータ212は、ハウジング250の内部で回転するために冷却が難しい。しかしながら、本実施の形態においては、ベアリングを冷却した排油を用いてロータ212を効果的に冷却することができる。
【0063】
図4および図5を参照して、溝部213を進行するオイルは、ロータ212の遠心力により、外縁に近づくほど加圧される。オイルは、大気圧よりも高い圧力でノズル235に進入する。オイルは、矢印302に示すようにノズル235の噴出し口235aから噴出されるときに微細化される。オイル260は、オイルミストとなって内部空間252に放出される。
【0064】
図6を参照して、ノズル235からオイルミストが放出される一方で、溝部213に流入しなかったオイルは、矢印309に示すように、ロータ212の周方向の外側に向かって放出される。
【0065】
図2を参照して、ノズル235から放出されたオイルミストは、ハウジング250の内部空間252に滞留する。内部空間252は、オイルミストの雰囲気となる。内部空間252の空気の断熱性が緩和されて伝熱性が向上する。このため、ハウジング内の部品の表面からの伝熱が促進されて、冷却効果が向上する。内部空間252にオイルミストが滞留することにより、コイル214aを含むステータ214、ロータ212、およびシャフト210が冷却される。熱を奪ったオイルミストは、矢印303に示すように、微細化されていないオイルとともに排油通路221から排出される。
【0066】
このように、本実施の形態における電動過給機は、オイルを微細化することにより、効果的に回転電気の冷却を行なうことができる。また、オイルミストを貯留しておくためのタンク等が不要である。さらに、コンプレッサにより過給した空気の一部をオイルミストの生成のために用いる必要もない。また、簡易な構成で内部空間にオイルミストを筐体の内部に充満させることができる。
【0067】
また、ロータを冷却するために直接的に冷却油などを多量にかけると、ロータが回転するときの抵抗となってしまう。本実施の形態における電動過給機は、ノズルによって微細化したオイルミストによりロータを冷却するために、このような引き摺り抵抗による損失を抑制することができる。すなわち、冷却性の向上と低引き摺り損失との両立を図ることができる。
【0068】
本実施の形態における電動過給機は、ロータ212の端面212aに溝部213が形成されている。この構成により、より多くのオイルをノズルに導くことができる。本実施の形態における溝部は、線状に延びるように形成されているが、この形態に限られず、面状に広がる溝部が形成されていても構わない。または、ロータの端面に溝部が形成されていなくても構わない。
【0069】
また、本実施の形態における電動過給機は、シャフト210を支持するベアリング222,224に供給されたオイルが、シャフト210を伝ってロータ212の端面212aに導かれるように形成されている。この構成により、ベアリング222,224を潤滑するためのオイルを用いてオイルミストを形成することができる。オイルの供給については、この形態に限られず、たとえば、ロータの端面に直接的にオイルを供給するように形成されていても構わない。
【0070】
本実施の形態においては、ノズルの噴出し口が形成されている端面がロータの外周面を延在するように形成されているが、この形態に限られず、ノズルは、噴出し口が形成されている端面がロータの外周面から突出するように形成されていても構わない。この構成により、オイルに加わる遠心力を大きくすることができ、微細化を促進することができる。または、ノズルは、噴出し口を有する端面がロータの外周面よりも内側に配置されていても構わない。
【0071】
本実施の形態においては、オイルがロータの端面に到達して向きを変える部分に曲面部が形成されているが、この形態に限られず、シャフトおよびロータは、オイルがノズルに向かうように形成されていれば構わない。
【0072】
本実施の形態においては、ロータの端面の溝部にノズルが嵌め込まれているが、この形態に限られず、ノズルは、ロータの端面を加工することにより端面と一体的に形成されていても構わない。
【0073】
本実施の形態における駆動装置は、エンジンのうち直噴エンジンを例に取り上げて説明したが、直噴エンジンに限定されるものではない。エンジンは、たとえば、ポート噴射型のエンジンであっても、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0074】
また、本実施の形態における駆動装置は、ガソリンエンジンであるが、この形態に限られず、ディーゼルエンジンなどの任意のエンジンに対して本発明を適用することができる。また、駆動装置としてモータおよびエンジンを備えるいわゆるハイブリッド自動車にも本発明を適用することができる。
【0075】
(実施の形態2)
図7および図8を参照して、実施の形態2における電動過給機について説明する。本実施の形態における電動過給機は、ノズルの構成が実施の形態1と異なる。
【0076】
図7に、本実施の形態における電動過給機のロータの端部の拡大概略断面図を示す。図7は、コンプレッサ側の端部の概略断面図である。本実施の形態における電動過給機は、ノズル236を有する。ノズル236は、ロータ212の端面212aの外周部に配置されている。本実施の形態におけるロータ212は、端面212aに形成された溝部213を有する。
【0077】
本実施の形態におけるノズル236は、ロータ212の外周面から突出するように形成されている。ノズル236は、噴出し口236aを有する。噴出し口236aは、ロータ212とステータ214との間の隙間にオイルを噴出するように指向している。噴出し口236aは、ロータ212とステータ214との間の隙間に向かうように形成されている。
【0078】
図8に、本実施の形態における電動過給機の概略断面図を示す。本実施の形態の電動過給機においては、ロータ212のコンプレッサ側の端面212aおよびタービン側の端面212bのそれぞれにノズル236が配置されている。ノズル236は、ロータ212の軸方向の外側から内側に向かってオイルミストを噴出するように配置されている。
【0079】
図7および図8を参照して、溝部213に進入したオイルは、ノズル236に流入する。ノズル236に流入したオイルは、矢印308に示すように噴出し口236aから噴出される。オイルは、ミスト化されて噴出し口236aから噴出される。
【0080】
本実施の形態においては、ロータ212とステータ214との間に向かってオイルミストが噴出される。このため、ロータ212およびステータ214を効果的に冷却することができる。ロータ212は、筐体の内部に回転可能に支持されているために冷却が難しいが、本実施の形態における電動過給機は、効果的にロータ212を冷却することができる。特に、ロータの軸方向においては、中央部分の温度が高くなるが、本実施の形態においては、ロータ212の軸方向の中央部分も効果的に冷却することができる。
【0081】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰り返さない。
【0082】
(実施の形態3)
図9から図15を参照して、実施の形態3における電動過給機について説明する。本実施の形態における電動過給機は、ロータにオイルミストを攪拌するための撹拌部材が形成されている。または、ロータにオイルミストを攪拌するための凹部が形成されている。
【0083】
図9に、本実施の形態における第1の電動過給機の概略断面図を示す。図10に、本実施の形態における第1の電動過給機のロータの端部の概略斜視図を示す。第1の電動過給機のロータ212は、撹拌部材としての撹拌板271を含む。
【0084】
撹拌板271は、板状に形成されている。撹拌板271は、ロータ212の周方向の外面に配置されている。撹拌板271は、ロータ212の周方向に沿って、ほぼ等間隔に形成されている。撹拌板271は、面積が最大となる面積最大面がロータ212の径方向とほぼ平行になるように配置されている。本実施の形態においては、コンプレッサ側に配置されている撹拌板272とタービン側に配置されている撹拌板272とは、互いに対称になるように配置されている。
【0085】
図11に、本実施の形態における第2の電動過給機の概略断面図を示す。図12に、本実施の形態における第2の電動過給機のロータの端部の概略斜視図を示す。第2の電動過給機のロータ212は、攪拌部材としての撹拌板272を含む。
【0086】
撹拌板272は、板状に形成されている。撹拌板272は、ロータ212の端面212a,212bに配置されている。攪拌板272は、ロータ212の端面212a,212bから、回転軸400の外側に向かって突出するように形成されている。撹拌板272は、面積が最大となる面積最大面が、ロータ212の回転軸400とほぼ平行になるように配置されている。本実施の形態においては、端面212aに配置されている撹拌板272と端面212bに配置されている撹拌板272は、互いに対称になるように配置されている。
【0087】
図13に、本実施の形態における第3の電動過給機の概略断面図を示す。図14に、本実施の形態における第3の電動過給機のロータの端部の概略斜視図を示す。第3の電動過給機のロータ212は、攪拌部材としての撹拌板273を含む。
【0088】
撹拌板273は、板状に形成されている。撹拌板273は、長手方向を有し、長手方向がロータ212の回転軸400とほぼ平行になるように配置されている。撹拌板273は、ロータ212の表面とステータ214との間に配置されている。撹拌板273は、ロータ212の周方向に沿って互いにほぼ等間隔を空けて配置されている。
【0089】
本実施の形態の第1の電動過給機、第2の電動過給機および第3の電動過給機においては、ロータの表面に攪拌部材が形成されている。ロータが回転することにより、筐体の内部空間に滞留するオイルミストを効果的に撹拌することができて冷却効果が向上する。
【0090】
本実施の形態における攪拌部材は、板状に形成されているが、この形態に限られず、攪拌部材は、任意の形状を採用することができる。たとえば、円柱の攪拌部材がロータに形成されていても構わない。
【0091】
図15に、本実施の形態における第4の電動過給機のロータの端部の概略斜視図を示す。第4の電動過給機のロータ212は、端部に凹部274が形成されている。凹部274は、ロータ212の周方向に延びる表面のうち軸方向の端部に形成されている。凹部274は、ロータ212の表面から直方体状に凹むように形成されている。凹部274は、ロータ212の周方向に沿って、互いにほぼ等間隔に形成されている。
【0092】
本実施の形態においては、ロータのタービン側の端部およびコンプレッサ側の端部に凹部が形成されている。タービン側の凹部およびコンプレッサ側の凹部は、互いに対称になるように形成されている。
【0093】
本実施の形態の第4の電動過給機においては、ロータの表面に凹部が形成されている。ロータが回転することにより筐体の内部空間に滞留するオイルを効果的に撹拌することができて冷却効果が向上する。
【0094】
本実施の形態における凹部は、直方体状に凹むように形成されているが、この形態に限られず、凹部は、任意の形状を採用することができる。また、本実施の形態における凹部は、ロータの周方向に沿う表面に形成されているが、この形態に限られず、凹部はロータの端面に形成されていても構わない。
【0095】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1または2と同様であるのでここでは説明を繰り返さない。
【0096】
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。また、上記のそれぞれの実施の形態の特徴部分を互いに組み合わせても構わない。
【0097】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施の形態1におけるエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】実施の形態1における電動過給機の概略断面図である。
【図3】実施の形態1における電動過給機のロータの端部の概略斜視図である。
【図4】実施の形態1における電動過給機のロータの端部の概略断面図である。
【図5】実施の形態1におけるノズルの拡大概略断面図である。
【図6】実施の形態1におけるロータの端部の概略正面図である。
【図7】実施の形態2における電動過給機のロータの端部の概略断面図である。
【図8】実施の形態2における電動過給機の概略断面図である。
【図9】実施の形態3における第1の電動過給機の概略断面図である。
【図10】実施の形態3における第1の電動過給機のロータの端部の概略斜視図である。
【図11】実施の形態3における第2の電動過給機の概略断面図である。
【図12】実施の形態3における第2の電動過給機のロータの端部の概略斜視図である。
【図13】実施の形態3における第3の電動過給機の概略断面図である。
【図14】実施の形態3における第3の電動過給機のロータの端部の概略斜視図である。
【図15】実施の形態3における第4の電動過給機のロータの端部の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
100 エンジン、102 吸気通路、104 吸気バルブ、108 燃焼室、110 点火プラグ、114 ピストン、116 コンロッド、120 クランクシャフト、128 排気バルブ、130 排気通路、150 吸気口、152 エアクリーナ、156 吸気通路、160 吸気通路、162 インタークーラ、166 スロットルバルブ、168 スロットルモータ、170 電動ポンプ、180 排気管、182 触媒、193 インバータ、200 電動過給機、202 コンプレッサ、204 タービン、206 コンプレッサホイール、208 タービンホイール、210 シャフト、210a,210b 当接部、210c スペーサ、212 ロータ、212a,212b 端面、212d 曲面部、213 溝部、214 ステータ、214a コイル、216 回転電機、218,220 オイル供給通路、221 排油通路、222,224 ベアリング、235,236 ノズル、235a,236a 噴出し口、250 ハウジング、252 内部空間、260 オイル、271〜273 攪拌板、274 凹部、300〜303,306〜309 矢印、400 回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータを支持するためのシャフトと、
潤滑油を微細化するためのノズルと
を備え、
前記ロータは、端面を有する円筒形状に形成され、
前記ノズルは、前記端面の径方向の外周部に配置され、
前記潤滑油が前記シャフトに沿って前記端面に供給されるように形成され、
前記潤滑油の少なくとも一部が前記端面を伝って前記ノズルに向かうように形成されている、電動過給機。
【請求項2】
前記ロータは、前記端面に溝部を有し、
前記溝部は、前記シャフトの表面から前記ノズルに向かって延びている、請求項1に記載の電動過給機。
【請求項3】
前記ロータと対向するように配置されたステータと、
前記ロータおよび前記ステータを内部に配置するための筐体と、
前記筐体に支持され、前記シャフトを回転可能に支持するための軸受けと
を備え、
前記軸受けに前記潤滑油が供給されるように形成され、
前記軸受けに供給された前記潤滑油が前記シャフトを伝って前記端面に導かれるように形成されている、請求項1または2に記載の電動過給機。
【請求項4】
前記ノズルは、噴出し口を有し、
前記噴出し口は、前記ロータの径方向の外側を向くように形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の電動過給機。
【請求項5】
前記ロータと対向するように配置されたステータを備え、
前記ノズルは、噴出し口を有し、
前記噴出し口は、前記ロータと前記ステータとの間の隙間に前記潤滑油を噴出するように指向している、請求項1から4のいずれかに記載の電動過給機。
【請求項6】
前記ロータは、表面に配置され、前記潤滑油を攪拌するための攪拌部材を含む、請求項1から5のいずれかに記載の電動過給機。
【請求項7】
前記ロータは、表面に形成され、前記潤滑油を攪拌するための凹部を含む、請求項1から5のいずれかに記載の電動過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−128112(P2008−128112A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314481(P2006−314481)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】