電圧センサ素子
【課題】取り付け位置精度が低くても十分な外部磁界遮蔽性能が得られ、単純な構造で、小型かつ高精度な電圧センサ素子を提供する。
【解決手段】電圧センサ素子100は、磁性材料からなる円環状のコア3と、コア3に巻回された1次巻線2Aおよび2次巻線2Bとを備え、コア3を通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線2Aに印加される交流電圧を2次巻線2Bの出力電圧として出力するものであって、磁気遮蔽板1が、コア3の側面側を除いて、コア3の上主面側および下主面側の一方または両方に配置されている。
【解決手段】電圧センサ素子100は、磁性材料からなる円環状のコア3と、コア3に巻回された1次巻線2Aおよび2次巻線2Bとを備え、コア3を通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線2Aに印加される交流電圧を2次巻線2Bの出力電圧として出力するものであって、磁気遮蔽板1が、コア3の側面側を除いて、コア3の上主面側および下主面側の一方または両方に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと1次巻線および2次巻線を備えた電圧センサ素子に関し、特に、外部磁界に対する遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧センサなど、磁気を利用したセンサの遮蔽方法は、磁気センサを2枚のシールド板により挟み込み、一方のシールド板に磁界検出用の穴を設けた構造にすることにより、少ない部品点数で外部磁界を遮蔽しながら、測定対象の磁界を検出している(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、トロイダル・トランスから生じる漏れ磁束に対する遮蔽として、トランスの表裏面から側面にわたる縦方向に磁気遮蔽用の帯状のシールド板を複数枚配置している。(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−49185号公報(要約、図2)
【特許文献2】特開平6−5426号公報(要約、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気を利用したセンサにおいて外部磁界の影響を低減するためには、一般に、センサの周辺部に磁性材料からなる磁気遮蔽体を配置する。センサを小型化した場合、一般には、センサ出力が低下して外部磁界の影響を受けやすくなる。この場合、高精度な磁気センサを実現するには、通常、センサの周囲を磁気遮蔽体で覆う必要がある。
【0006】
また、特許文献1で開示されたシールド構造は、センサの周囲全体が磁気遮蔽体で覆われていないものの、測定対象である電流がつくる磁界をセンサに印加するために、遮蔽板の一部に穴を設ける必要がある。そのため、磁気センサの位置と遮蔽板に開ける磁界検出用の穴の位置がずれると、検出する磁界の強度が変化するため、検出感度が変化してしまうという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の遮蔽方法にあっては、センサの周囲全てがシールド板で覆われているわけではないが、センサの側面に多数の遮蔽体が存在するため、遮蔽体を含めた全体寸法を小型化することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、取り付け位置精度が低くても十分な外部磁界遮蔽性能が得られ、単純な構造で、小型かつ高精度な電圧センサ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電圧センサ素子は、磁性材料からなる円環状のコアと、該コアに巻回された1次巻線および2次巻線とを備え、コアを通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線に印加される交流電圧を2次巻線の出力電圧として出力するものであって、
磁気遮蔽体が、コアの側面側を除いて、コアの第1主面側および第2主面側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気遮蔽体を、コアの側面側には配置せずに、コアの第1主面側および第2主面側の一方または両方に配置することによって、磁気遮蔽体の位置精度が低くても充分な外部磁気遮蔽性能が得られる。その結果、電圧センサ素子の小型化、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A’線に沿った中央断面図である。
【図3】本発明に係る電圧センサ素子の等価回路図である。
【図4】磁気遮蔽体が無い状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図5】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図6】磁気遮蔽体をコアの側面側に配置した状態の水平断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図8】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図10】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図11】磁気遮蔽板の分割形状の各種例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った中央断面図である。電圧センサ素子100は、磁気遮蔽板1と、巻線2と、コア3と、ケース4などで構成される。コア3は、高透磁率の磁性材料からなり、矩形状や円形状の断面を有する円環状に形成されている。
【0013】
コア3の周方向の全部または一部には、1次巻線2Aおよび2次巻線2Bを含む巻線2が巻回されている。図2では、コア3、1次巻線2A、2次巻線2Bの順に配置した例を示しているが、コア3、2次巻線2B、1次巻線2Aの順に配置してもよく、あるいは、1次巻線2Aを巻回する部分と2次巻線2Bを巻回する部分を別個にしてもよい。
【0014】
ケース4は、非磁性の電気絶縁材料からなり、コア3、1次巻線2A、2次巻線2Bを包囲するように、円柱状に形成されている。
【0015】
磁気遮蔽板1は、高透磁率の磁性材料からなり、円柱状ケース4の外径と等しい又はそれより小さい直径を有する円板状に形成されている。磁気遮蔽板1は、その中心がコア3の中心軸10とほぼ一致するように、コア3の上主面側および下主面側の一方または両方に配置される。即ち、図2では、磁気遮蔽板1をケース4の上面に設置した例を示しているが、ケース4の上面および下面の両方に設置してもよい。
【0016】
図3は、電圧センサ素子100の等価回路図である。1次巻線2Aと2次巻線2Bは、コア3とともに変圧器を構成している。1次巻線2Aと並列にインピーダンスR1が存在し、2次巻線2Bと並列にインピーダンスR2が存在する。測定対象である交流電圧V1が1次巻線2Aに印加されると、1次巻線2Aを流れる電流に比例した磁束がコア3を通過する。2次巻線2Bでは、電磁誘導効果によって磁束密度の時間微分に比例した電流が流れ、両端に出力電圧V2が誘起される。誘起した出力電圧V2は、電圧計(不図示)などで計測される。
【0017】
電圧センサ素子100は、コア3を通過する磁束の増減により電圧を検出する原理を利用している。そのため外部に磁場があればコア3内の磁束が影響を受け、検出値である出力電圧V2が変動して正確な値を得ることができなくなる。特に、センサを小型化する場合、コアの体積や巻線の巻数を減らすことになるため、外部磁場の影響をより多く受けやすくなり、高精度な測定を確保することがより困難になる。こうした外部磁界の対策として、一般には、電圧センサ素子100の周囲を磁気遮蔽体で完全に覆う手法が考えられる。
【0018】
本実施形態では、磁気遮蔽体を、コア3の側面側を除いて、コア3の両主面側の少なくとも一方に配置することによって、センサを小型化した場合でも十分な磁気遮蔽性能を得ることができる。以下、その根拠について詳細に説明する。
【0019】
図4は、磁気遮蔽体が無い状態での外部磁界の影響を示す説明図である。電圧センサでは、巻線に流れる電流により、コア3の内部にベクトルAで示す磁束密度が形成される。一方、ベクトルBで示す外部磁界による磁束密度がコア3の主面と平行に存在する場合、磁束密度Bは、コア3の側面から侵入して時計方向および反時計方向にそれぞれ通過した後、反対側から外部へ抜け出る。このときコア3の内部には、巻線電流による磁束密度Aおよび外部磁場により誘起された磁束密度B’の合成ベクトルである磁束密度A+B’が形成される。
【0020】
図4に示す磁束密度Bの方向は最も影響が現れる方向であり、電圧センサの検出精度に最も影響の出やすい位置関係である。コア内の磁束密度A+B’の大きさは、周方向の位置によって異なる。例えば、図4の領域Cと領域Dでは、外部磁場による磁束密度B’は双方とも同一であるが、巻線電流による磁束密度Aの方向が異なる。
【0021】
1次巻線2Aがコア3の全周に渡って均一な巻線密度で巻かれている場合、周方向のどの位置でも一様である磁束密度Bは相殺される。従って、巻線密度が全周に渡って一様であれば、原理的には外部磁界の影響は受けずに正しい出力が得られる。しかし、現実には巻線の粗密のアンバランスを無くすことは製造上、非常に困難である。もし、領域CとDで巻線密度に差があれば、外部磁界の有無により出力に差が生じることになり、測定精度に影響が出ることになる。
【0022】
図5は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。この場合、外部磁界による磁束密度Bの大部分が磁気遮蔽板1を通過し、コア3には殆ど通過しなくなる。その結果、コア内部の磁束密度の方向および強度は、巻線電流による磁束密度Aによって形成されるため、外部磁界の有無による差は殆ど生じない。従って、磁気遮蔽板1をコア上面に配置することによって外部磁界を遮蔽できるため、高精度センサを実現することが可能となる。
【0023】
図6は、磁気遮蔽体をコア3の側面側に配置した状態の水平断面図である。磁気遮蔽体をコア側面に配置すると、磁気遮蔽性能が得られないばかりではなく、逆に、大きな誤差要因になることを以下に説明する。
【0024】
外部磁界の磁束密度Bにより、電圧センサの側面(周辺部)に配置された遮蔽体には、図6に示すように、電圧センサの周囲を迂回するように磁束密度B”が誘起される。この迂回する磁束が、コア3に巻かれている巻線に誘導電流を発生させ、その方向は領域Cと領域Dでは全く逆になる。例えば、領域Cでは磁束密度B’により、その右ねじの方向に誘導電流が発生するので、巻線には紙面に対して奥から手前の方向に電流が誘起される。逆に、領域Dでは、巻線には紙面に対して手前から奥の方向に電流が誘起される。ここで、巻線密度が全周に渡って均一であれば、電圧センサの出力は全周の積分値であるので誘導電流による効果は相殺され、誤差は生じない。しかし、現実には、巻線密度の不均一は製造上ほぼ避けることができないため、アンバランスが生じることになる。これにより、コア3の側面側に遮蔽体を配置することにより外部磁界による誤差が増大する。
【0025】
以上により、コア側面側には磁気遮蔽体を配置せず、コア主面側にのみ磁気遮蔽体を配置することにより、十分な磁気遮蔽性能を得ることができる。また、コア側面側に部材を配置しないため、センサの小型化が図られる。さらに、磁気遮蔽体の組付け精度もあまり重要ではなく、磁気遮蔽に要するコストを削減できる。
【0026】
なお、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【0027】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図8は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。本実施形態は、磁気遮蔽板1の中央に円形状の穴5を設けている点以外は、実施の形態1と同様であるため、重複説明を省略する。
【0028】
磁気遮蔽板1が穴5を有する場合であっても、外部磁界Bにより磁気遮蔽板1の内部に誘起される磁束密度B”およびコア内の磁束密度Aは、図5とほぼ同様な挙動を示すようになり、外部磁界による磁束密度Bの大部分は磁気遮蔽板1を通過し、コア3には殆ど通過しなくなる。
【0029】
しかし、穴5の大きさが極端に大きくなると、図6に示したように、遮蔽体内磁場による誘導電流による誤差が現れるようになる。この影響を少なくするには、穴5の大きさは巻線2の内径より小さいことが好ましい。こうした穴5を設けることにより、センサの軽量化、使用材料の節約が図られる。
【0030】
ここでは、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図10は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。本実施形態は、磁気遮蔽板1を複数の領域に分割し、各領域間に電気絶縁材料を介在させることによって互いに電気的に絶縁した構成とした点以外は、実施の形態1と同様であるため、重複説明を省略する。
【0032】
通常、磁気遮蔽板1に外部磁場が印加すると、磁気遮蔽板1の内部にも相当の磁束が貫通する。このとき外部磁場が交流の場合、磁気遮蔽板1の内部に渦電流が発生し、遮蔽を妨げる要因となる。磁気遮蔽の性能を低下させないようにするには、磁気遮蔽板1内に発生する渦電流量を極力少なくすることが有効である。図9および図10に示す磁気遮蔽板1は、電気絶縁材料の介在によって電気的に絶縁された、複数のストライプ状の領域に分割されているため、遮蔽板全体として渦電流6に対する電気抵抗値が大きくなっている。その結果、渦電流量が減少して、遮蔽性能を高めることができる。
【0033】
なお、渦電流6が流れる方向は外部磁界の方向に対して垂直方向である。本発明による電圧センサでは、外部磁界の影響を最も受ける方向は図10の矢印B”で示す方向である。したがって、ストライプ領域の長手方向と外部磁界の方向がほぼ一致し、ストライプ領域の幅方向に渦電流6が流れるように磁気遮蔽板1を配置することが好ましく、これによって渦電流を低く抑えることができる。
【0034】
磁気遮蔽板1の分割形状は、図10のような場合に限らず、遮蔽板の面内方向を分割する構成にすればよく、例えば、図11に示すような分割形状でも渦電流の抑制が可能である。図11(a)は、単位セルが矩形状である格子状の分割形状を示す。図11(b)は、複数のリングからなる同心円状の分割形状を示す。図11(c)は、複数の扇形からなる分割形状を示す。
【0035】
このような磁気遮蔽板の構成により、交流の外部磁場に対する遮蔽をさらに高めることができる。ここでは、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 磁気遮蔽板、 2 巻線、 2A 1次巻線、 2B 2次巻線、 3 コア、
4 ケース、 5 穴、 6 渦電流、 10 中心軸、
100、101 電圧センサ素子、
A 巻線電流がつくる磁束密度、 B 外部磁界の磁束密度、
B’ 外部磁界によりコア内に誘起された磁束密度、
B” 磁気遮蔽板内に誘起される磁束密度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと1次巻線および2次巻線を備えた電圧センサ素子に関し、特に、外部磁界に対する遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧センサなど、磁気を利用したセンサの遮蔽方法は、磁気センサを2枚のシールド板により挟み込み、一方のシールド板に磁界検出用の穴を設けた構造にすることにより、少ない部品点数で外部磁界を遮蔽しながら、測定対象の磁界を検出している(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、トロイダル・トランスから生じる漏れ磁束に対する遮蔽として、トランスの表裏面から側面にわたる縦方向に磁気遮蔽用の帯状のシールド板を複数枚配置している。(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−49185号公報(要約、図2)
【特許文献2】特開平6−5426号公報(要約、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気を利用したセンサにおいて外部磁界の影響を低減するためには、一般に、センサの周辺部に磁性材料からなる磁気遮蔽体を配置する。センサを小型化した場合、一般には、センサ出力が低下して外部磁界の影響を受けやすくなる。この場合、高精度な磁気センサを実現するには、通常、センサの周囲を磁気遮蔽体で覆う必要がある。
【0006】
また、特許文献1で開示されたシールド構造は、センサの周囲全体が磁気遮蔽体で覆われていないものの、測定対象である電流がつくる磁界をセンサに印加するために、遮蔽板の一部に穴を設ける必要がある。そのため、磁気センサの位置と遮蔽板に開ける磁界検出用の穴の位置がずれると、検出する磁界の強度が変化するため、検出感度が変化してしまうという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の遮蔽方法にあっては、センサの周囲全てがシールド板で覆われているわけではないが、センサの側面に多数の遮蔽体が存在するため、遮蔽体を含めた全体寸法を小型化することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、取り付け位置精度が低くても十分な外部磁界遮蔽性能が得られ、単純な構造で、小型かつ高精度な電圧センサ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電圧センサ素子は、磁性材料からなる円環状のコアと、該コアに巻回された1次巻線および2次巻線とを備え、コアを通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線に印加される交流電圧を2次巻線の出力電圧として出力するものであって、
磁気遮蔽体が、コアの側面側を除いて、コアの第1主面側および第2主面側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気遮蔽体を、コアの側面側には配置せずに、コアの第1主面側および第2主面側の一方または両方に配置することによって、磁気遮蔽体の位置精度が低くても充分な外部磁気遮蔽性能が得られる。その結果、電圧センサ素子の小型化、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A’線に沿った中央断面図である。
【図3】本発明に係る電圧センサ素子の等価回路図である。
【図4】磁気遮蔽体が無い状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図5】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図6】磁気遮蔽体をコアの側面側に配置した状態の水平断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図8】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。
【図10】磁気遮蔽板をコアの上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。
【図11】磁気遮蔽板の分割形状の各種例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った中央断面図である。電圧センサ素子100は、磁気遮蔽板1と、巻線2と、コア3と、ケース4などで構成される。コア3は、高透磁率の磁性材料からなり、矩形状や円形状の断面を有する円環状に形成されている。
【0013】
コア3の周方向の全部または一部には、1次巻線2Aおよび2次巻線2Bを含む巻線2が巻回されている。図2では、コア3、1次巻線2A、2次巻線2Bの順に配置した例を示しているが、コア3、2次巻線2B、1次巻線2Aの順に配置してもよく、あるいは、1次巻線2Aを巻回する部分と2次巻線2Bを巻回する部分を別個にしてもよい。
【0014】
ケース4は、非磁性の電気絶縁材料からなり、コア3、1次巻線2A、2次巻線2Bを包囲するように、円柱状に形成されている。
【0015】
磁気遮蔽板1は、高透磁率の磁性材料からなり、円柱状ケース4の外径と等しい又はそれより小さい直径を有する円板状に形成されている。磁気遮蔽板1は、その中心がコア3の中心軸10とほぼ一致するように、コア3の上主面側および下主面側の一方または両方に配置される。即ち、図2では、磁気遮蔽板1をケース4の上面に設置した例を示しているが、ケース4の上面および下面の両方に設置してもよい。
【0016】
図3は、電圧センサ素子100の等価回路図である。1次巻線2Aと2次巻線2Bは、コア3とともに変圧器を構成している。1次巻線2Aと並列にインピーダンスR1が存在し、2次巻線2Bと並列にインピーダンスR2が存在する。測定対象である交流電圧V1が1次巻線2Aに印加されると、1次巻線2Aを流れる電流に比例した磁束がコア3を通過する。2次巻線2Bでは、電磁誘導効果によって磁束密度の時間微分に比例した電流が流れ、両端に出力電圧V2が誘起される。誘起した出力電圧V2は、電圧計(不図示)などで計測される。
【0017】
電圧センサ素子100は、コア3を通過する磁束の増減により電圧を検出する原理を利用している。そのため外部に磁場があればコア3内の磁束が影響を受け、検出値である出力電圧V2が変動して正確な値を得ることができなくなる。特に、センサを小型化する場合、コアの体積や巻線の巻数を減らすことになるため、外部磁場の影響をより多く受けやすくなり、高精度な測定を確保することがより困難になる。こうした外部磁界の対策として、一般には、電圧センサ素子100の周囲を磁気遮蔽体で完全に覆う手法が考えられる。
【0018】
本実施形態では、磁気遮蔽体を、コア3の側面側を除いて、コア3の両主面側の少なくとも一方に配置することによって、センサを小型化した場合でも十分な磁気遮蔽性能を得ることができる。以下、その根拠について詳細に説明する。
【0019】
図4は、磁気遮蔽体が無い状態での外部磁界の影響を示す説明図である。電圧センサでは、巻線に流れる電流により、コア3の内部にベクトルAで示す磁束密度が形成される。一方、ベクトルBで示す外部磁界による磁束密度がコア3の主面と平行に存在する場合、磁束密度Bは、コア3の側面から侵入して時計方向および反時計方向にそれぞれ通過した後、反対側から外部へ抜け出る。このときコア3の内部には、巻線電流による磁束密度Aおよび外部磁場により誘起された磁束密度B’の合成ベクトルである磁束密度A+B’が形成される。
【0020】
図4に示す磁束密度Bの方向は最も影響が現れる方向であり、電圧センサの検出精度に最も影響の出やすい位置関係である。コア内の磁束密度A+B’の大きさは、周方向の位置によって異なる。例えば、図4の領域Cと領域Dでは、外部磁場による磁束密度B’は双方とも同一であるが、巻線電流による磁束密度Aの方向が異なる。
【0021】
1次巻線2Aがコア3の全周に渡って均一な巻線密度で巻かれている場合、周方向のどの位置でも一様である磁束密度Bは相殺される。従って、巻線密度が全周に渡って一様であれば、原理的には外部磁界の影響は受けずに正しい出力が得られる。しかし、現実には巻線の粗密のアンバランスを無くすことは製造上、非常に困難である。もし、領域CとDで巻線密度に差があれば、外部磁界の有無により出力に差が生じることになり、測定精度に影響が出ることになる。
【0022】
図5は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。この場合、外部磁界による磁束密度Bの大部分が磁気遮蔽板1を通過し、コア3には殆ど通過しなくなる。その結果、コア内部の磁束密度の方向および強度は、巻線電流による磁束密度Aによって形成されるため、外部磁界の有無による差は殆ど生じない。従って、磁気遮蔽板1をコア上面に配置することによって外部磁界を遮蔽できるため、高精度センサを実現することが可能となる。
【0023】
図6は、磁気遮蔽体をコア3の側面側に配置した状態の水平断面図である。磁気遮蔽体をコア側面に配置すると、磁気遮蔽性能が得られないばかりではなく、逆に、大きな誤差要因になることを以下に説明する。
【0024】
外部磁界の磁束密度Bにより、電圧センサの側面(周辺部)に配置された遮蔽体には、図6に示すように、電圧センサの周囲を迂回するように磁束密度B”が誘起される。この迂回する磁束が、コア3に巻かれている巻線に誘導電流を発生させ、その方向は領域Cと領域Dでは全く逆になる。例えば、領域Cでは磁束密度B’により、その右ねじの方向に誘導電流が発生するので、巻線には紙面に対して奥から手前の方向に電流が誘起される。逆に、領域Dでは、巻線には紙面に対して手前から奥の方向に電流が誘起される。ここで、巻線密度が全周に渡って均一であれば、電圧センサの出力は全周の積分値であるので誘導電流による効果は相殺され、誤差は生じない。しかし、現実には、巻線密度の不均一は製造上ほぼ避けることができないため、アンバランスが生じることになる。これにより、コア3の側面側に遮蔽体を配置することにより外部磁界による誤差が増大する。
【0025】
以上により、コア側面側には磁気遮蔽体を配置せず、コア主面側にのみ磁気遮蔽体を配置することにより、十分な磁気遮蔽性能を得ることができる。また、コア側面側に部材を配置しないため、センサの小型化が図られる。さらに、磁気遮蔽体の組付け精度もあまり重要ではなく、磁気遮蔽に要するコストを削減できる。
【0026】
なお、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【0027】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図8は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。本実施形態は、磁気遮蔽板1の中央に円形状の穴5を設けている点以外は、実施の形態1と同様であるため、重複説明を省略する。
【0028】
磁気遮蔽板1が穴5を有する場合であっても、外部磁界Bにより磁気遮蔽板1の内部に誘起される磁束密度B”およびコア内の磁束密度Aは、図5とほぼ同様な挙動を示すようになり、外部磁界による磁束密度Bの大部分は磁気遮蔽板1を通過し、コア3には殆ど通過しなくなる。
【0029】
しかし、穴5の大きさが極端に大きくなると、図6に示したように、遮蔽体内磁場による誘導電流による誤差が現れるようになる。この影響を少なくするには、穴5の大きさは巻線2の内径より小さいことが好ましい。こうした穴5を設けることにより、センサの軽量化、使用材料の節約が図られる。
【0030】
ここでは、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る電圧センサ素子の外観を示す斜視図である。図10は、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した状態での外部磁界の影響を示す説明図である。本実施形態は、磁気遮蔽板1を複数の領域に分割し、各領域間に電気絶縁材料を介在させることによって互いに電気的に絶縁した構成とした点以外は、実施の形態1と同様であるため、重複説明を省略する。
【0032】
通常、磁気遮蔽板1に外部磁場が印加すると、磁気遮蔽板1の内部にも相当の磁束が貫通する。このとき外部磁場が交流の場合、磁気遮蔽板1の内部に渦電流が発生し、遮蔽を妨げる要因となる。磁気遮蔽の性能を低下させないようにするには、磁気遮蔽板1内に発生する渦電流量を極力少なくすることが有効である。図9および図10に示す磁気遮蔽板1は、電気絶縁材料の介在によって電気的に絶縁された、複数のストライプ状の領域に分割されているため、遮蔽板全体として渦電流6に対する電気抵抗値が大きくなっている。その結果、渦電流量が減少して、遮蔽性能を高めることができる。
【0033】
なお、渦電流6が流れる方向は外部磁界の方向に対して垂直方向である。本発明による電圧センサでは、外部磁界の影響を最も受ける方向は図10の矢印B”で示す方向である。したがって、ストライプ領域の長手方向と外部磁界の方向がほぼ一致し、ストライプ領域の幅方向に渦電流6が流れるように磁気遮蔽板1を配置することが好ましく、これによって渦電流を低く抑えることができる。
【0034】
磁気遮蔽板1の分割形状は、図10のような場合に限らず、遮蔽板の面内方向を分割する構成にすればよく、例えば、図11に示すような分割形状でも渦電流の抑制が可能である。図11(a)は、単位セルが矩形状である格子状の分割形状を示す。図11(b)は、複数のリングからなる同心円状の分割形状を示す。図11(c)は、複数の扇形からなる分割形状を示す。
【0035】
このような磁気遮蔽板の構成により、交流の外部磁場に対する遮蔽をさらに高めることができる。ここでは、磁気遮蔽板1をコア3の上主面側に配置した場合を詳細に説明したが、コア3の上主面側および下主面側の両方に配置してもよく、これにより小型化を確保しつつ、遮蔽性能をさらに強化することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 磁気遮蔽板、 2 巻線、 2A 1次巻線、 2B 2次巻線、 3 コア、
4 ケース、 5 穴、 6 渦電流、 10 中心軸、
100、101 電圧センサ素子、
A 巻線電流がつくる磁束密度、 B 外部磁界の磁束密度、
B’ 外部磁界によりコア内に誘起された磁束密度、
B” 磁気遮蔽板内に誘起される磁束密度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる円環状のコアと、
該コアに巻回された1次巻線および2次巻線とを備え、
コアを通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線に印加される交流電圧を2次巻線の出力電圧として出力する電圧センサ素子であって、
磁気遮蔽体が、コアの側面側を除いて、コアの第1主面側および第2主面側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする電圧センサ素子。
【請求項2】
前記磁気遮蔽体は、コアの第1主面側および第2主面側の両方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電圧センサ素子。
【請求項3】
前記磁気遮蔽体は、中央に穴を有することを特徴とする請求項1または2記載の電圧センサ素子。
【請求項4】
前記磁気遮蔽体は、複数の領域に分割され、各領域は互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1または2記載の電圧センサ素子。
【請求項1】
磁性材料からなる円環状のコアと、
該コアに巻回された1次巻線および2次巻線とを備え、
コアを通過する磁束の電磁誘導により、1次巻線に印加される交流電圧を2次巻線の出力電圧として出力する電圧センサ素子であって、
磁気遮蔽体が、コアの側面側を除いて、コアの第1主面側および第2主面側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする電圧センサ素子。
【請求項2】
前記磁気遮蔽体は、コアの第1主面側および第2主面側の両方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電圧センサ素子。
【請求項3】
前記磁気遮蔽体は、中央に穴を有することを特徴とする請求項1または2記載の電圧センサ素子。
【請求項4】
前記磁気遮蔽体は、複数の領域に分割され、各領域は互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1または2記載の電圧センサ素子。
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2010−160130(P2010−160130A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113740(P2009−113740)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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