説明

電圧制御発振器

【課題】可変周波数範囲を大きくするために設けたコンデンサがフローティング状態になることを防止して、発振周波数近傍の位相ノイズの悪化を改善できるようにする。
【解決手段】可変周波数範囲を大きくするために設けた並列コンデンサC3に対して並列に第2のスイッチングトランジスタP1を設け、周波数切り替えのために並列コンデンサC3に対して直列に接続された第1のスイッチングトランジスタN2がオフにされたときに、第2のスイッチングトランジスタP1がオンとなるようにすることにより、第1のスイッチングトランジスタN2がオフにされたときは、第2のスイッチングトランジスタP1のパスによって短絡されるようにして、並列コンデンサC3がフローティング状態になることを防ぐことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電圧制御発振器に関し、特に、発振周波数の切り替え機能を有する電圧制御発振器に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ラジオ受信機やテレビ受像機などの無線通信装置に代表される多くのアプリケーションでは、発振器が同調可能なこと、すなわち、発振周波数を制御電圧によって切り替え可能であることが要求される。そのための発振器として、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)が用いられる。例えば、発振周波数の高周波化に容易に対応でき、かつ周波数帯域を切り替えることができるようにした電圧制御発振器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−17936号公報
【0003】
図2は、従来の電圧制御発振器の構成例を示す図である。図2において、抵抗R1,R2、コンデンサC1,C2およびトランジスタN1により周知のコルピッツ発振回路が構成されている。このコルピッツ発振回路に対して可変容量ダイオード(バリキャップ)VCを接続することで、電圧制御発振器として利用できるようになる。
【0004】
また、図2の例では、可変周波数範囲を大きくするために、可変容量ダイオードVCに対してコンデンサC3が並列に接続され、当該コンデンサC3とグランド電位との間に、共振周波数帯域を切り替えるための制御信号CONT1が供給されるスイッチングトランジスタN2が接続されている。上述の特許文献1に記載の技術もこれと同様の構成を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2の構成において、スイッチングトランジスタN2をオンにした場合、並列コンデンサC3はスイッチングトランジスタN2を介してグランドに接続される。しかしながら、スイッチングトランジスタN2をオフにすると、並列コンデンサC3はフローティングの状態になる。そのため、発振周波数近傍の位相ノイズが悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、コルピッツ発振回路を用いた電圧制御発振器において、可変周波数範囲を大きくするために設けたコンデンサがフローティング状態になることを防止して、発振周波数近傍の位相ノイズの悪化を改善できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、可変周波数範囲を大きくするために設けた並列コンデンサに対して並列に第2のスイッチングトランジスタを設け、周波数切り替えのために並列コンデンサに対して直列に接続された第1のスイッチングトランジスタがオフにされたときに、第2のスイッチングトランジスタがオンとなるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、第1のスイッチングトランジスタがオフにされたときは、並列コンデンサに対して並列に接続された第2のスイッチングトランジスタがオンとなり、当該第2のスイッチングトランジスタのパスによって短絡されるので、並列コンデンサがフローティング状態になることを防ぐことができる。これにより、発振周波数近傍の位相ノイズの悪化を抑止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による電圧制御発振器の構成例を示す図である。図1において、抵抗R1,R2、コンデンサC1,C2およびトランジスタN1によりコルピッツ発振回路が構成されている。このコルピッツ発振回路のコンデンサC1,C2に対して可変容量ダイオードVCが並列に接続されている。なお、ここでは可変容量ダイオードVCを用いているが、これ以外の可変容量素子を用いても良い。
【0010】
また、図1の例では、可変周波数範囲を大きくするために、可変容量ダイオードVCに対してコンデンサC3が並列に接続されている。また、可変容量ダイオードVCに対して並列に、かつ並列コンデンサC3に対して直列に、共振周波数帯域を切り替えるための第1の制御信号CONT1がゲートに供給される第1のスイッチングトランジスタN2が接続されている。すなわち、第1のスイッチングトランジスタN2は、並列コンデンサC3とグランド電位との間に接続されている。
【0011】
本実施形態ではさらに、並列コンデンサC3に対して並列に、第2の制御信号CONT2がゲートに供給される第2のスイッチングトランジスタP1が接続されている。ここで、第1のスイッチングトランジスタN2はnMOSトランジスタで構成され、第2のスイッチングトランジスタP1はpMOSトランジスタで構成されている。そして、第1のスイッチングトランジスタN2がオフのときに、第2のスイッチングトランジスタP1がオンとなるように制御する。
【0012】
以上に示した本実施形態の電圧制御発振器は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスまたはBi−CMOS(Bipolar-CMOS)プロセスによって1つのICチップに集積化されている。
【0013】
ここで、上記のように構成した本実施形態による電圧制御発振器の動作を説明する。第1のスイッチングトランジスタN2のゲートに供給される第1の制御信号CONT1がLowレベルのとき、第1のスイッチングトランジスタN2はオフとなり、並列コンデンサC3は可変容量ダイオードVCに対して並列接続された状態にはならない。このとき、第2の制御信号CONT2をLowレベルにして、第2のスイッチングトランジスタP1をオンとする。
【0014】
このようにすることにより、第2のスイッチングトランジスタP1を通るパスによって短絡されるので、並列コンデンサC3がフローティング状態になることを防ぐことができる。これにより、発振周波数近傍の位相ノイズの悪化を抑止することができるようになる。シミュレーションしたところ、発振周波数からのオフセット周波数Δfが10kHzのときの位相ノイズを10dB以上改善することができた。
【0015】
なお、上記実施形態では、第1のスイッチングトランジスタN2としてnMOSトランジスタ、第2のスイッチングトランジスタP1としてpMOSトランジスタを用いる例について説明しているが、これは単なる一例に過ぎない。ただし、このように構成すると、第1の制御信号CONT1と第2の制御信号CONT2とを同じ信号とすることができ、制御系を簡素化することができる。
【0016】
また、上記実施形態では、可変容量ダイオードVCに対して1組のコンデンサC3および第1のスイッチングトランジスタN2を並列に接続する例について説明したが、可変容量ダイオードVCに対して複数組のコンデンサおよび第1のスイッチングトランジスタをそれぞれ並列に接続するようにしても良い。この場合、第2のスイッチングトランジスタは、例えば、複数の並列コンデンサに対してそれぞれ並列に接続する。
【0017】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、コルピッツ発振回路を用いた電圧制御発振器において、発振周波数の切り替え機能を有するものに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態による電圧制御発振器の構成例を示す図である。
【図2】従来の電圧制御発振器の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
C1,C2 コルピッツ発振回路を構成するコンデンサ
VC 可変容量ダイオード
C3 並列コンデンサ
N2 第1のスイッチングトランジスタ
P1 第2のスイッチングトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルピッツ発振回路と、
上記コルピッツ発振回路のコンデンサに対して並列に接続された可変容量素子と、
上記可変容量素子に対して並列に接続された並列コンデンサと、
上記可変容量素子に対して並列に、かつ上記並列コンデンサに対して直列に接続された第1のスイッチングトランジスタと、
上記並列コンデンサに対して並列に接続された第2のスイッチングトランジスタとを備え、
上記第1のスイッチングトランジスタがオフのときに、上記第2のスイッチングトランジスタがオンとなるようにしたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
上記第1のスイッチングトランジスタはnMOSトランジスタで構成され、上記第2のスイッチングトランジスタはpMOSトランジスタで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−98731(P2008−98731A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274971(P2006−274971)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(591220850)新潟精密株式会社 (77)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】