説明

電圧変換素子及び該素子を用いた装置

【課題】 回路素子の構成を単純化させることができる電圧変換素子を提供する。
【解決手段】 電圧変換素子100は、電気−機械エネルギー変換素子としての圧電部材1と、機械−電気エネルギー変換素子としての圧電部材2と、圧電部材1に接続された第1の端子としての電極3と、圧電部材1及び圧電部材2の接合部に接続された電極4と、圧電部材2に接続された第2の端子としての電極5とを備える。電極1に電力を供給すると圧電部材1に歪みを生じ、この歪みを受けた圧電部材2が電極1に供給された電圧とは異なる電圧を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換素子及び該素子を用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪みを与えると電圧を発生する圧電効果を利用した圧電部材を備えるデバイスには、発振子、アクチュエータ、スピーカ、センサなどの回路素子があり、これらは集積回路(IC)に用いられている。
【0003】
発振子には、水晶振動子やセラミック振動子があり、能動素子と組み合わせた圧電部材を用いた発振子は、集積回路における動作クロックの発振回路として多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スピーカは、電圧を加えると圧電部材が歪むことを利用して振動を直接的に音に変換する素子であり、ブザーや小型のスピーカなどに用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
アクチュエータには、圧電部材を加振源として弾性体を共振させることによって発生させた大きな振動の振動エネルギーを利用したものや(例えば、特許文献3参照)、圧電部材を積層して低電圧で大きな歪みを得ることができる非共振型のものが実用化されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、ICなどで用いられる微細な回路素子には、小さな電流で大きな出力電流を制御するトランジスタや、電圧で出力電流を制御するFET(Field Effect Transistor)があり、これらは反転増幅素子として用いられている。
【0007】
また、圧電部材に物理的に与えられた歪みを圧電効果に応じた電圧出力として取り出すことにより、各種物理量を測定するためのセンサとしても用いられている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
ところで、最近、圧電部材の分野では、点欠陥のナノ秩序の対称性という性質を用いて、可逆的な巨大電歪を生み出すことが研究されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
電気分極方向が異なるドメイン(領域)を有する圧電材料に電場を加えると、分極方向が電圧方向に沿うようにドメイン変換が生じ、低い対称性を持つ強誘電相の長軸方向と短軸方向が交換されることになる。このとき得られる歪みの大きさは長軸と短軸の差であり、通常の圧電効果よりも数十倍以上大きいものとなる。
【0010】
ある点欠陥の周り(ナノメートル範囲)におけるほかの点欠陥の占有率は、平衡時、結晶の対称性に一致し、常誘電相での点欠陥対称性は高く、強誘電相での点欠陥対称性は結晶の対称性と同様に低くなる。また、強誘電相の点欠陥による点欠陥の分極も自発分極と一致する。
【0011】
これを利用し、常誘電相状態の圧電材料を冷却して強誘電状態とすると、圧電材料は点欠陥の対称性を常誘電相の対称性を引き継ぐため不安定な状態となる。時効にともなって点欠陥の拡散によって各ドメインの点欠陥の対称性がドメインの結晶対称性に一致して安定する。この状態の圧電材料に電場を加えると、上述したドメイン変換が発生し、電場を除去すると元のドメイン状態に戻る。
【0012】
このような構成からなる点欠陥電歪材料によれば、例えばチタン酸ジルコニウム酸鉛材料の圧電素子の電歪効果と比べ、低電圧で40倍という大きな電歪効果を得る高性能圧電材料を得ることができる。
【特許文献1】特開平08−130437号公報
【特許文献2】特開平10−277484号公報
【特許文献3】特開平11−215861号公報
【特許文献4】特開2004−048984号公報
【特許文献5】特開2002−107374号公報
【非特許文献1】Xiaobing Ren、“Large electric-field-induced strain in ferroelectric crystals by point-defect-mediated reversible domain switching”、Nature Materials、Nature Publishing Group、2004年2月1日、第3巻、p.91−94、及び、[online]、平成16年1月11日、インターネット<URL:www.nature.com/naturematerials>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の圧電部材を備えた発振子は、これを発振させるための能動素子が必要であるので、集積回路の構成が複雑化する。
【0014】
また、スピーカやアクチュエータなどを振動させるためには、圧電部材に供給する交流電圧を発生させる交流電圧発生素子を用いるか、又は自励発振回路を構成する必要があり、集積回路の構成が複雑化する。
【0015】
上記反転増幅素子は、電流を出力するので、これを電圧に変換するためには抵抗が必要であるだけでなく、非反転増幅回路を構成するためには、2段直列に接続する必要があり、集積回路の構成が複雑化する。
【0016】
また、上記センサは、発生した歪みを圧電効果に応じた電圧出力として取り出すことが可能であるが、歪みがなくなると電圧が0に戻るので、単発の現象、例えば小さな歪みの発生を検出するのが困難である。したがって、このような単発の現象を検出するためには、全ての出力信号を常にモニタするか、又は常に記録する必要があるので、ユーザビリティが低い。
【0017】
本発明の目的は、回路素子の構成を単純化させることができる電圧変換素子及び該素子を用いた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の端子に接続された電気−機械エネルギー変換素子と、第1の端子とは異なる第2の端子に接続された機械−電気エネルギー変換素子を備え、機械−電気エネルギー変換素子は電気−機械エネルギー変換素子によって生じた歪みを受けて歪みを発生し、機械−電気エネルギー変換素子が歪むことによって前記第2の端子に発生した電圧が電気−機械エネルギー変換素子が前記機械−電気エネルギー変換素子と同じ量だけ歪みを発生するために前記第1の端子に入力される電圧とは異なることを特徴とする電圧変換素子を提供するものである。
【0019】
また、上記の電圧変換素子を用いた装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電圧変換素子によれば、第1の区画が、その電圧値が所定の値以上になると急峻に増大する歪み特性を有すると共に電圧値が0であるときに実質的に歪み特性を有しないので、ディジタル的な電圧変換が可能で、1つの電圧変換素子で電圧から電圧に直接変換する各種論理デバイスを構成することができ、回路構成を単純化させることができる。また、電圧値に応じて歪み特性を制御可能に構成することにより、ユーザビリティが高いセンサに有用な電圧変換素子を用いた装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電圧変換素子の構成を概略的に示す図である。
【0023】
図1において、本実施の形態に係る電圧変換素子100は、第1の区画を構成する反強誘電性の圧電部材1と、第2の区画を構成する強誘電性の圧電部材2と、反強誘電性の圧電部材1に接続された第1の端子としての電極3と、反強誘電性の圧電部材1及び強誘電性の圧電部材2の接合部に接続された電極4と、強誘電性の圧電部材2に接続された第2の端子としての電極5とを備える。
【0024】
圧電部材1と圧電部材2は、板状体又は膜状体から成り、互いに層状に重なるように配置されており、圧電効果を利用した圧電体を構成する。反強誘電性の圧電部材1は、印加電圧の極性に関係なく電圧を印加した方向に伸びる特性を有する。
【0025】
図2は、上記非特許文献1の高性能圧電材料の特性を参照して模式的に表した、圧電材料の電界強度に対する歪みの量(歪量)を表す図で、電界強度0での歪み量を0として歪み量の変化を表している。実線は点欠陥のナノ秩序の対称性という性質を用いて、可逆的な巨大電歪を発生する圧電材料の特性を示しており、点線はピエゾ等の強誘電性の圧電材料の特性を示している。
【0026】
図2の実線で示した特性は、非常に大きな歪みであることを示しているが、一定以上の電界強度で急激に歪みが増大する傾向や電界強度を0にすると歪みが元の状態に戻ること、また大きなヒステリシスを持つ等の特徴を有し、特性的には反強誘電性の圧電材料の特性と類似している。
【0027】
以下の説明では、このような特性を持つ電気−機械エネルギー変換手段として反強誘電性の圧電部材を例にとって説明を行うが、図2に実線で示すような特性の電気―機械エネルギー変換手段であれば反強誘電性の圧電部材に限られるものではない。同様に機械−電気エネルギー変換素子手段として強誘電性の圧電部材を例にとって説明を行うが、図2に点線で示すような特性の機械−電気エネルギー変換素子であれば強誘電性の圧電部材に限られるものではない。
【0028】
図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1は、電界強度が所定の値、例えば20kV/mm以上に大きくなると急峻に歪みが増大する歪み特性を有すると共に、電界強度が0になると、実際には歪みが多少残る場合もあるが、実質的に0になる(言い換えれば、電界強度0で毎回ほぼ同じ歪み量になる)。また、反強誘電性の圧電部材1は、図2に示すように、大きなヒステリシス特性を有する。強誘電性の圧電部材2は、電界強度に対して歪み量が比例する特性を有していると共に、歪みに対して比例した電荷を発生する性質を備えている。
【0029】
図1の電圧変換素子100によれば、反強誘電性の圧電部材1に飽和電圧を印加することによって大きな歪みを発生させ、これにともなって、反強誘電性の圧電部材1に隣接する圧電部材2に大きな歪みを発生させて、圧電部材2は、圧電効果によって歪みに応じた電圧を電極5に出力するので、単純な回路構成でそれぞれの圧電部材の厚みや積層枚数、電極面積等に応じた増幅率で印加された電圧を増幅して高電圧を取り出すことができる。また、電流を電圧に変換することなく、電圧から電圧に直接的に変換することができる。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電圧変換素子としての増幅素子の構成を示す回路図であり、図4は、図3の増幅素子の各部の信号波形を示す図である。
【0031】
本実施の形態に係る電圧変換素子としての増幅素子は、図1の電圧変換素子100と同様の構成を有するので、同一の構成及び要素には同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0032】
図3において、反強誘電性の圧電部材1は、入力電圧Vinの極性が正負どちらの極性でもほぼ同じ歪みを発生する。反強誘電性の圧電部材2としては、小さな電界強度で大きな歪みを発生するものを利用するのが好ましい。電極3には、電極3に略三角波(図4)の入力信号Vinが入力される。電極4にはアースが接続されており、基準電圧0Vを規定する。電極5からは、増幅された略矩形の波形(図4)の出力電圧Voutが出力される。
【0033】
出力電圧Voutの波形は、反強誘電性の圧電部材1の図2に実線で示す歪みのヒステリシスに影響されており、具体的には、入力電圧Vinが所定の値になるまでは圧電部材1の歪みが少なく、所定の値以上になると急峻に圧電部材1が歪み、さらに入力電圧が0近傍になると圧電部材1の歪みが急峻に開放されるというヒステリシスに影響されている。
【0034】
また、反強誘電性の圧電部材2として小さな電界強度で大きな歪みを発生するものを利用することにより、大きな増幅率を持つ増幅素子300を構成することができると共に、増幅素子300は、上述したようなヒステリシスを有するので、ノイズの発生を抑制することができる。
【0035】
なお、反強誘電性の圧電部材1は、入力電圧Vinの極性が正負どちらの極性でもほぼ同じ歪みを発生するので、増幅素子300において交流信号を増幅するためにはオフセット電圧を与える必要がある。
【0036】
なお、本実施の形態において、圧電部材2の分極方向を切り替えてもよい。これにより、逆極性の増幅素子を簡単に構成することができる。
【0037】
また、圧電部材1のヒステリシス領域を用いないようにすることにより、増幅素子300をアナログ的な増幅器として利用してもよい。
【0038】
さらには、本実施の形態では、電極3に入力電圧Vinを印加すると共に電極4を基準電圧としたが、電極4に入力電圧Vinを印加すると共に電極3を基準電圧としてもよい。この場合、電極5への出力電圧には入力電圧Vinが重畳される。
【0039】
図5は、図3の増幅素子300の変形例の構成を概略的に示す回路図である。
【0040】
図3の増幅素子300の変形例としての増幅素子は、図3の増幅素子300の入出力間を絶縁したものであるので、増幅素子300と同一の構成及び要素には同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0041】
図5において、増幅素子500は、圧電部材1と圧電部材2の間を電気的に絶縁する絶縁部材7と、絶縁部材7と圧電部材2の間の接合部に接続された電極6とを備える。電極4は、絶縁部材7と圧電部材2の間の接合部に接続されていると共にアースに接続され、基準電位0Vを規定する。電極6には、基準電位0Vを規定する他のアース(不図示)に接続される。
【0042】
増幅素子500は、絶縁部材7により圧電部材1と圧電部材2の間が電気的に絶縁されているので、圧電部材1と圧電部材2とで異なる基準電圧を設けて信号を伝達することができる。これにより、例えば、電極4を不図示のアースに接続し、電極6を不図示の所定の直流電圧源に接続して異なる基準電圧間で信号を伝達する絶縁型のバッファ素子や反転素子として利用することができる。このような素子は、例えばNチャンネルのMOSFETをブリッジ回路のハイサイド(電源側)に用いる場合に用いられる公知のハイサイドNチャンネルMOSFETドライバ(ハイサイドドライバ)として用いることができる。通常このようなハイサイドドライバはチャージポンプ回路等複雑な回路が必要であるが、本デバイスを用いれば1つの素子で実現できる。
【0043】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての発振素子の構成を概略的に示す回路図である。
【0044】
本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた発振素子において、電圧変換素子100と同一の構成及び要素には同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0045】
図6において、発振素子600は、非反転の増幅素子においてその出力電圧が正帰還するように構成されたものであり、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材8と、強誘電性の圧電部材9と、圧電部材8と圧電部材9の間に設けられた接合部に接続された電極10と、圧電部材9に接続された電極11と、電極10、電極4、及び出力端子に接続すると共にアースに接続する抵抗12と、圧電部材1と圧電部材8の間に設けられた接合部に接続された電極3と、電極3に接続されたアースとの間に配置された抵抗13とを備える。電極3は、不図示の直流電源に接続されている。また、電極11は、基準電位を規定するアースに接続されている。圧電部材8の電界強度に対する歪み特性は図2の実線で示されたものと同様であり、圧電部材9の電界強度に対する歪み特性は、図2の点線で示されたものと同様である。
【0046】
図6において、直流電源から発振素子600に印加された電源電圧Vccは、電極3を介して電圧V3として入力され、出力電圧Voutとして取り出される。なお、圧電部材2及び圧電部材9は、電源電圧Vccと同極性の電圧を発生するように構成されている。
【0047】
図6の発振素子600によれば、直流電圧を印加するだけで発振させることができる。
【0048】
図7は、図6の発振素子600における各電極の電圧波形を示す図である。
【0049】
図7に示すように、発振素子600に電源からの電源電圧Vccが印加されていない状態では、電極3の電位V3及び電極4,10の電位Voutは、基準電圧0Vである。電極4及び電極10は抵抗12を介してアースに接続されており、且つ電極3は抵抗13を介してアースに接続されているので、圧電部材1,2,8,9には歪みが生じていないからである。
【0050】
電極3へ直流電源からの電源電圧Vccが発振素子600に印加されると、圧電部材1と圧電部材8に歪みが発生する。この電源電圧Vccが圧電部材1及び圧電部材8の飽和電圧以上であるときは、圧電部材1と圧電部材8に大きな歪みが発生し、図2に示したように圧電部材2及び圧電部材9にも大きな歪みが発生し、その結果、圧電部材2及び圧電部材9の歪みの大きさに応じて電極4及び電極10に電圧が発生する。
【0051】
ここで、圧電部材2及び圧電部材9が電源電圧Vccと同極性の電圧を発生するように構成されているので、それらの歪みが大きくなるにしたがって圧電部材1及び圧電部材8への印加電圧は小さくなる。この圧電部材1及び圧電部材8への印加電圧が0に近づくと、圧電部材1及び圧電部材8の歪み量が急に0になり、これにともなって、圧電部材2と圧電部材9の歪み量も0になると共に、電極4と電極10に出力されていた電圧も実質的に0になって電源電圧Vccを印加した瞬間の電圧に戻る。
【0052】
したがって、発振素子600には、電源電圧Vccが印加されている間は、電極4及び電極10における電圧の発生及び戻りを繰り返す発振現象が発生することになり、もって、発振素子600は、電極4及び電極10からの出力信号Voutは高周波で振動する波形を有する。
【0053】
このように、図6の発振素子600によれば、電源電圧Vccを印加するだけで高周波を発振することができる。
【0054】
また、図6に示すように、圧電部材1,2と圧電部材8,9が圧電部材1,8間の接合部を中心にして対称的に配置されているので、圧電部材1,2と圧電部材8,9に対称的な振動を発生させることができ、その結果、電極3の近傍で発生する振動を抑制することができる。これにより、例えば、圧電部材1,2と圧電部材8,9の振動を妨害することなく、不図示の支持部材を用いて電極3の近傍の位置で圧電部材1,2,8,9を支持することができる。
【0055】
なお、本実施の形態において、抵抗12は、その抵抗値が変更可能な可変抵抗から構成されていてもよく、これにより、この発振現象の発振周波数を容易に変化させることができる。このような可変抵抗として、例えばFET、又はアナログスイッチと抵抗を組み合わせたものを用いることにより、その抵抗値をアクティブに変更可能にすることができ、もって発振周波数を外部信号で切り替えることが可能となる。
【0056】
また、上記支持部材は、電源供給用の端子(不図示)であってもよい。これにより、発振素子600の構成をより単純化させることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、反強誘電性の圧電部材1,8を強誘電性の圧電部材2,9内側に配置するように構成したが、これに代えて、反強誘電性の圧電部材1,8の内側に強誘電性の圧電部材2,9を配置するように構成してもよい。これにより、強誘電性の圧電部材2,9を両側、即ち圧電部材1,8の側から歪ませて、大きな歪みを発生させることができる。
【0058】
図8(a)は、図6の発振素子600の第1の変形例の構成を示す回路図である。
【0059】
なお、図6の発振素子600の変形例としての増幅素子は、図1の電圧変換素子100と同様の構成を有するので、電圧変換素子100と同一の構成及び要素には同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0060】
図8(a)において、発振素子800は、電極3と基準電圧0Vを規定するアースの間に配置された抵抗12と、電極3と電極5の間に配置された抵抗13とを備える。また、電極4は不図示の直流電源からの電源電圧Vccに接続されている。
【0061】
図8(a)において、圧電部材2からの出力電圧は、電極5を介して出力信号Voutが出力されると共に、抵抗13を介して電極3に正帰還されている。電極5に出力される電圧を分圧した値が電源電圧Vccの値とほぼ同一となるようにすべく、抵抗12と抵抗13による分圧比の逆数αが、例えば1.5となるように制御されている。
【0062】
図9は、図8(a)の発振素子800における各電極の電圧波形を示す図である。
【0063】
図9に示すように、直流の電源電圧Vccが0Vであるときは、圧電部材1及び圧電部材2はそれらの歪みの大部分が開放されており、歪み量は実質的に0である。
【0064】
電極4に印加される電源電圧Vccが圧電部材1の飽和電圧以上になると、圧電部材1は大きく歪み、これにともなって、圧電部材2も大きく歪んで、電極5に極性が正の大きな電圧が発生する。
【0065】
ここで、電極5で発生する電圧を分圧した値が電源電圧Vccの値とほぼ同一となるように抵抗12と抵抗13による分圧比の逆数αが制御されているので、圧電部材2に大きな歪みが生じると、圧電部材1に印加される電圧が0Vとなって圧電部材1の歪みが開放され、これにともなって、圧電部材2の歪みも開放されて歪みが実質的に0となり、電源電圧Vccを印加した瞬間の状態に戻る。
【0066】
したがって、発振素子800は、電源電圧Vccが印加されている間は、電極5における電圧の発生及び戻りを繰り返す発振現象が発生することになり、もって、電極5からの出力信号Voutは高周波で振動する波形を有する。なお、発振信号としては、電極5の出力信号Voutに限られることはなく、電極3の出力信号V3を利用してもよい。
【0067】
なお、本変形例において、分圧比を変えないように抵抗12と抵抗13の抵抗値を同じ比率で変更してもよく、これにより、上記発振現象の周波数を容易に変更することができる。また、発振現象の周波数の変更は、電極3と電極4の間にコンデンサ(不図示)を挿入することによって行ってもよい。
【0068】
図8(b)は、図6の発振素子600の第2の変形例の構成を示す回路図である。
【0069】
図6の発振素子600の第2の変形例としての発振素子は、図8(a)の発振素子800と同様の構成を有するので、発振素子800と同一の構成及び要素には同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0070】
図8(b)において、発振素子900は、電極5及び出力端子の間に設けられた、図3の増幅素子300と同様の電圧変換素子900bを備える。この電圧変換素子900bは、強誘電性の圧電部材2の出力電圧が印加される図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材8と、強誘電性の圧電部材9とを備え、圧電部材1,2から構成される第1の電圧変換素子900aに直列に接続されている。圧電部材9からの出力電圧Voutは、反強誘電性の圧電部材1に正帰還される。
【0071】
図8(b)の発振素子900によれば、第2の電圧変換素子900bを備えるので、例えば発振周波数が低い発振器を容易に構成することができる。なお、第1の電圧変換素子900aに直列に接続されるのは、第2の電圧変換素子900bだけでなく、1つ以上の他の電圧変換素子であってもよい。
【0072】
図10は、本発明の第4の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての構成を概略的に示す回路図である。
【0073】
図10において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた記録装置1000は、リフレッシュ信号(RF信号)及びDin信号が入力されるセレクタ21と、セレクタ21に接続されたAND回路16と、AND回路16に接続された第1の電圧変換素子1000aと、第2の電圧変換素子1000bと、第1の電圧変換素子及び第2の電圧変換素子に1000bに接続された第3の電圧変換素子1000cと、RF信号及びEn信号が入力されるOR回路22と、セレクタ21に反転回路18を介して接続されたAND回路17とを備える。第2の電圧変換素子1000bは電極4を介してV4信号をセレクタ21に入力する。また、第3の電圧変換素子1000cは、電極14aを介して出力信号Voutを出力する。
【0074】
第2の電圧変換素子1000bは、電極3と電極5がグランド電圧を規定するアースに接続されており、圧電部材1,2間の接合部材に接続された電極4に入力される信号を記憶する記憶素子として構成されている。圧電部材2の出力電圧は、電源電圧の極性と同じになるように構成されている。
【0075】
また、第1の電圧変換素子1000aと第2の電圧変換素子1000bの電極4の間にはトランジスタ23が配置され、第2の電圧変換素子1000bの電極4と第3の電圧変換素子1000cの間にはトランジスタ24が配置され、アースと第2の電圧変換素子1000bの電極4の間にはグランド電圧で電極4の電圧をクランプするトランジスタ20が配置されている。
【0076】
圧電部材1,8,14は図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性材料から成り、圧電部材2,9,15は強誘電性材料から成る。
【0077】
図11は、図10の記録装置1000における各電極の電圧波形を示す図である。
【0078】
図11において、まず、En信号がハイ(Hi)でRF信号がロー(Lo)になるとセレクタ21がDin信号を選択して出力する。Din信号がHiの場合、AND回路16の出力電圧がHiになり、第1の電圧変換素子1000aでは、強誘電性の圧電部材9がダイオード23を介して電源電圧Vccより大きさが大きく極性が正の電圧を電極4に出力すると共に、ダイオード24を介して第3の電圧変換素子1000cの強誘電性の圧電部材15に出力する。圧電部材15にも電荷が流入するので圧電部材15の出力電圧も電源電圧Vccとほぼ等しくなる。一方、Din信号がLoの場合、AND回路17の出力電圧がHiになり、第3の電圧変換素子1000cでは、強誘電性の圧電部材15が電源電圧Vccより大きさが大きく極性が負の電圧を電極4に向かって出力する。これにより、電極4の電圧は、ダイオード20によってグランド電圧でクランプされほぼ0Vとなる。
【0079】
図11における時刻T1,T2では、第2の電圧変換素子1000bによるDin信号の記憶動作が行われる。
【0080】
具体的には、時刻T1ではDin信号がHiであるので、第2の電圧変換素子1000bでは、反強誘電性の圧電部材1に電源電圧Vccよりも大きな電圧が印加される。すると、圧電部材1は大きく歪み、これにともなって、圧電部材2も大きく歪む。圧電部材2の出力電圧は、電源電圧Vccの極性と同じになるように構成されているので、電極4には電源電圧Vccより大きな電圧が第2の電圧変換素子1000bから入力される。
【0081】
このとき、第3の電圧変換素子1000cをオフ(OFF)にすると、第3の電圧変換素子1000cからの出力電圧が0Vとなりダイオード23がオフになる。したがって、電極4には、第2の電圧変換素子1000bから印加された電源電圧Vccより大きな電圧が残留することになる。さらに、この残留した電圧は、電源電圧Vccがグランド電圧になっても放電されることがない。これにより、第2の電圧変換素子1000bは、この残留した電圧に対応する信号を記憶する不揮発性の記憶素子を構成することができる。例えば、このような記憶素子をセンサとして用いた場合には、全ての出力信号を常にモニタしたりすることなく、単発の現象、例えば小さな歪みの発生を容易に検出することができる。
【0082】
次に、時刻T2では、Din信号がLoであるので電極4の電圧が最終的に0Vとなる。これにより、圧電部材1の歪みが開放されて、圧電部材2の歪みも開放されることによって、第2の電圧変換素子1000bの出力電圧が0Vとなる。
【0083】
時刻T3から時刻T4までの時間においては、セレクタ21は、入力されたRF信号に応じてDin信号及びV4信号のいずれか一方の信号に切り替えて、切り替えた信号をAND回路16及び反転回路18の双方に出力している。セレクタ21はRF信号がLoのときにDin信号を出力し、RF信号がHiのときにV4信号を出力するように構成されており、第2の電圧変換素子1000bは、RF信号又はEn信号がHiのときにセレクタ21の出力信号を記憶する記憶動作を行う。すなわち、第2の電圧変換素子1000bは、時刻T3,T4では、En信号がLoであるため、RF信号がHiになるタイミングでV4信号を記憶しなおす動作を行うことになる。
【0084】
図10の記録装置1000によれば、圧電部材2に発生した歪みに応じた電圧を記憶すると共に、長い時間が経過することにより記憶した電圧が完全に放電する前に記憶された内容を再度記憶することができる。
【0085】
図12(a)〜図12(f)は、本発明の第5の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての論理素子の構成を概略的に示す回路図である。
【0086】
図12(a)に示す論理素子1200aは、反転素子として構成されている。
【0087】
論理素子1200aは、図5の増幅素子500と同様の構成を有するので、増幅素子500と同一の構成及び要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。なお、電極6には電源電圧Vccが印加され、電極4にはアースが接続されている。また、電極5には負の極性の電圧が出力されるように構成されている。
【0088】
また、論理素子1200aは、電極5と出力端子Voutの間において、電極5の出力電圧からの出力電圧Voutが電源電圧とグランド電圧の間で制限されるようにクリッピングするダイオード19,20(クリッピング回路)を備える。
【0089】
以下、論理素子1200aの反転動作について説明する。
【0090】
圧電部材1の電極3に飽和電圧を印加した場合には、圧電部材1が大きく歪み、圧電部材2が大きく歪む。ここで、電極5には負の極性の電圧が出力されるので、圧電部材2の歪みが0のときには電極5に電源電圧Vccと等しい電圧が出力され、圧電部材2の歪みが大きいときには電極5にほぼ0Vの出力がされる。
【0091】
したがって、電極3に0Vの電圧を印加した場合には、圧電部材1の歪みが開放され、圧電部材2の歪みも開放されて、電極6と電極5の間の電位差が0Vとなり、電極5に電源電圧Vccと等しい電圧が出力される。
【0092】
なお、本実施の形態では反転素子を構成したが、圧電部材2の出力電圧Voutの極性を逆にすると共に電極6にグランド電圧を規定するアースを接続することにより、バッファ素子を構成できる。
【0093】
図12(b)に示す論理素子1200bは、XOR回路として構成されている。
【0094】
論理素子1200bは、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1と、強誘電性の圧電部材2と、入力信号が入力される電極3及び電極4と、出力信号Voutを出力する電極5と、グランド電圧を規定するアースに接続されている電極6とを備える。
【0095】
以下、論理素子1200bの作動を説明する。
【0096】
電極3及び電極4に入力される2つの入力信号が示す論理が同じ場合には、圧電部材1が歪まないので圧電部材2も歪まずに、もって、電極5の出力信号Voutは0Vとなる。
【0097】
一方、電極3及び電極4のいずれか一方の入力端における電圧が電源電圧と等しくなった場合には、圧電部材1に飽和電圧が印加され大きな歪みが発生する。ここで、反強誘電性の圧電部材1は電圧を印加した方向に伸びる特性を有するので、その結果、圧電部材2は圧電部材1と同じ方向に伸びる。ここで、圧電部材2が伸びたときに電極5の出力電圧が正極性の電圧となるように構成しておくことにより、電極5には正極性の電圧が出力される。通常は、電極5の出力電圧は電源電圧とほぼ等しくなるように圧電部材2の材質、寸法などが設計される。
【0098】
図12(c)に示す論理素子1200cは、3入力のOR回路として構成されている。
【0099】
論理素子1200cは、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1,25,26と、強誘電性の圧電部材2と、圧電部材1の電極3と、圧電部材25の電極27と、圧電部材26の電極28とを備える。
【0100】
電極3、電極27、及び電極28のうち少なくとも1つの電極に電源電圧を印加すると、該電極に接続された圧電部材の飽和電圧を越えるので大きな歪みが発生し、これにともなって、圧電部材2にも大きな歪みが発生する。ここで、3つの反強誘電性の圧電部材1,25,26のうち少なくとも1つの圧電部材に飽和電圧による大きな歪みが発生したときに、圧電部材2が電源電圧以上の大きさの電圧を発生するように構成することにより、電極5の出力電圧Voutが電源電圧よりも大きくなる。
【0101】
図12(d)に示す論理素子1200dは、3入力のAND回路として構成されている。
【0102】
論理素子1200dは、図12(c)の論理素子1200cと同様の構成を有し、同一の構成及び要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0103】
論理素子1200dは、電極4に電源電圧Vccが印加されるように構成されている。ここで、電極3、電極27、及び電極28のうち少なくとも1つの電極の電圧を0Vにすると、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた3つの反強誘電性の圧電部材1,25,26のうち少なくとも1つの圧電部材には、飽和電圧が印加されて大きな歪みが発生する。ここで、少なくとも1つの反強誘電性の圧電部材に飽和電圧による大きな歪みが発生したときに、圧電部材2が電源電圧Vccの極性と逆極性で電源電圧Vcc以上の大きさの電圧を発生するように構成することにより、電極5の出力電圧が0V以下となる。
【0104】
図12(e)に示す論理素子1200eは、一方の入力が負論理になっているNOR回路として構成されている。
【0105】
論理素子1200eは、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1,25と、強誘電性の圧電部材2と、圧電部材1,25と圧電部材2の間に設けられ電極4と電極6の間を電気的に絶縁する絶縁部材7と、圧電部材1の電極3と、圧電部材1と絶縁部材7の間に設けられた接合部に接続された電極4と、圧電部材25の電極27と、圧電部材2の電極5と、圧電部材1,25と圧電部材2の間に設けられた接合部に接続された電極6とを備える。
【0106】
圧電部材1の電極3は正論理の入力端Aに接続されており、圧電部材25の電極27は負論理の入力端Bに接続されている。また、電極4はグランド電圧を規定するアースに接続されており、電極6には電源電圧Vccが印加される。
【0107】
正論理の入力端Aを介して所定の飽和電圧以上の電圧が電極3に印加されると、圧電部材1に大きな歪みを発生する。電極27にグランド電圧を印加すると、圧電部材25に大きな歪みが発生する。圧電部材2は、圧電部材1及び圧電部材25の少なくとも一方の歪みに応じて歪むと出力電圧Voutが0V以下となる。一方、圧電部材2は、圧電部材1及び圧電部材25の双方が歪まない場合は、電極6を介して印加された電源電圧Vccを出力する。
【0108】
図12(f)に示す論理素子1200fは、シュミットトリガ入力の反転素子として構成されている。
【0109】
論理素子1200fは、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材1と強誘電性の圧電部材2から成る反転素子と、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材8と強誘電性の圧電部材9から成るバッファ素子とを備える。バッファ素子は、圧電部材8が大きく歪んだときに圧電部材9の出力電圧が電源電圧Vccよりも大きくなるように、その増幅率が大きくなるように構成されていると共に、バッファ素子には、圧電部材9の出力電圧が電源電圧Vccとグランド電圧の間でクランプされるようにダイオード19,20が設けられている。
【0110】
論理素子1200fによれば、バッファ素子で入力電圧を増幅することができるので、電極3からの圧電部材1への入力電圧が圧電部材1の飽和電圧より低い電圧であっても飽和電圧にまで増幅することができる。すなわち、バッファ素子の増幅率を大きくすることにより、圧電部材1に大きな歪みを発生させるために必要な入力電圧を低くすることができる。
【0111】
また、ダイオード19を介して圧電部材9の出力電圧をクランプするので、バッファ素子の増幅率の大きさを変えることにより、ヒステリシス量を変化させることが可能な反転素子を提供することができる。例えば、バッファ素子の増幅率の大きさに応じて圧電部材1の歪みを開放するために必要な電圧を高くすることができる。また、図12(a)の1200aの出力のみダイオード19、20によるクリッピング回路を設けたが、図12(b)〜図12(f)の電圧変換素子を用いた論理素子1200b〜1200fの出力にもこのようなクリッピング回路を設けてもよい。
【0112】
図13は、図12(a)〜図12(f)に示したような論理素子の出力電荷をリフレッシュ(再充電)するためのリフレッシュ回路の構成を概略的に示す回路図である。
【0113】
図13において、リフレッシュ回路1300は、上述したような論理素子の出力電荷をリフレッシュ(再充電)するためのものであり、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材1,強誘電性の圧電部材2から成るバッファ素子と、リフレッシュ信号(RF信号)及びバッファ素子の正転入力が入力されるAND回路16と、AND回路16に接続された図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材8,強誘電性の圧電部材9から成る第1の電圧変換素子と、バッファ素子の出力端に接続されたダイオード23と、バッファ素子の入力を反転する反転素子18と、RF信号及びバッファ素子の反転入力が入力されるAND回路17と、AND回路17に接続された図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材14,強誘電性の圧電部材15から成る第2の電圧変換素子と、第2の電圧変換素子の出力端に接続されたダイオード24と、バッファ素子の出力電圧を電源電圧Vccとグランド電圧にクランプするダイオード19,20とを備える。
【0114】
以下、リフレッシュ回路1300の作動を説明する。圧電部材1,8および14は上述した高性能圧電材料から成り、圧電部材2,9および15は強誘電性材料から成る。
【0115】
図13において、まず、RF信号がHiになると、AND回路16,17の出力信号がバッファ素子の出力信号に応じてアクティブになる。
【0116】
具体的には、バッファ素子の出力信号、即ち電極5の電圧がHiの場合には、AND回路16がアクティブになる。これに応じて、上記バッファ素子は、電源電圧Vccより大きな正極性の電圧をダイオード23を介して出力することによって、電極5の電圧のHiレベルをさらに増強するように動作する。
【0117】
一方、電極5の電圧がLoレベルの場合には、反転素子18の作用によりAND回路17がアクティブになる。これに応じて、上記電圧変換素子が負極性の電源電圧Vccより大きな電圧を出力し、ダイオード24を介して電極5のLoレベルをさらに増強するように動作する。
【0118】
リフレッシュ回路1300によれば、圧電部材2の出力電荷が浮遊抵抗によって放電されたり、圧電部材2の出力電圧が焦電効果によってドリフトしたりしても、圧電部材2の出力電圧を定期的にリセットすることができ、もってバッファ素子の誤動作を防止することができる。
【0119】
また、このリフレッシュ回路1300は、バッファ素子の出力に接続される素子の数が多い場合などにおいて、バッファ素子が出力すべき電荷量が不足しているときに、強誘電性の圧電部材2の電荷を補うための電荷補充回路として機能させることも可能である。
【0120】
なお、上記リフレッシュ回路1300は、バッファ素子に限られず、他の電圧変換素子から成る素子に適用してもよい。
【0121】
上述した各実施の形態による電圧変換素子および電圧変換素子を用いた装置は、圧電部材の分極方向や配線の配置に応じて所定の機能を有する様々な回路素子を構成することができる。圧電部材2は、電荷を発生させる電荷発生手段であると共に、電荷を電圧に変換するコンデンサでもあるので、圧電部材を並列に接続するだけで、複数の圧電部材2に発生した歪みの総量を電圧に変換することができる。これにより、複数の圧電部材1に発生した歪みの総量を圧電部材2の出力電荷の合計として検出したり、この電荷を容易に電圧に変換したりすることが簡単な構成で達成することができる。
【0122】
さらには、上述したように、各実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置によれば、発振素子、記憶素子、電源電圧Vcc以上の電圧に増幅する増幅素子などを構成することができるので、これらを利用して複雑な集積回路を構成することができる。また、上記電圧変換素子を用いた装置は、素子数が少なく回路構成が簡単であるだけでなく、電荷の発生と消滅で基本的に機能することから無駄な電力の損失を少なくすることができる。その結果、これらの電圧変換素子を用いた装置から構成された集積回路であっても、その構成を簡略化することができるだけでなく、消費電力を少なくすることができる。
【0123】
また、これらの電圧変換素子を用いた装置を高速で振動させることが可能である。この場合には、各電圧変換素子を用いた装置間に緩衝部材を設けたり、電極部材などの支持部材により圧電部材を浮かして支持したりするなどの対策を施すことが好ましい。また、支持部材を中心として圧電部材を対称的に配置して、支持部材を振動の中立部に配置することが好ましい。これにより、不要な振動の伝達を抑制することができる。
【0124】
また、各電圧変換素子を用いた装置は、その圧電部材に発生した歪みを利用してマイクロアクチュエータとして用いることも可能である。例えば、多数の光学素子を微小変位させることで、多チャンネルの光スイッチを構成することも可能である。また、電圧変換素子を歪みセンサとして利用することにより、ジャイロ機能、圧力センサ、指紋センサなどに応用することができる。
【0125】
これらの電圧変換素子を用いた装置のうち2つ以上を接続した集積回路について説明する。
【0126】
これらの電圧変換素子を用いた装置は、電力の増幅を行うことができないので、複数個の電圧変換素子を用いた装置を直列に接続した集積回路では、電荷量が不足して信号の伝達を正確に行うことが困難となる場合が考えられる。これを回避するためには、徐々に小さい電荷容量の論理素子を直列に接続するように構成したり、論理素子の間に電荷補充のための電荷増幅回路を配置したりする必要がある。
【0127】
また、上述した各種電圧変換素子を用いた装置には、出力電流を制御することが可能な電流制御手段であるトランジスタやFETなどを組み合わせて適用することが可能であるので、それぞれの特徴を生かした集積回路を設計することが好ましい。このうち、FETは入力インピーダンスが非常に高いので、圧電デバイ電圧変換素子を用いた装置と相性が良く、特に好ましい。
【0128】
図14は、本発明の第6の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての集積回路の構成を概略的に示す図である。
【0129】
図14において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた集積回路1400は、所定の基板上に形成されたLSI(large scale integration)29と、LSI29の外周縁部に設けられた分極用電圧入力ピン30と、分極用電圧入力ピン30に接続された分極制御部31と、LSI29上に設けられた複数の分極電圧専用配線32と、回路素子間を接続する複数の配線34と、配線34に接続された配線制御部33とを備える。
【0130】
集積回路1400では、分極制御部31から分極電圧供給用専用配線32を介して各回路素子に外部信号が出力される。複数の配線34を介して接続されている複数の回路素子は、それぞれ、圧電部材の分極の有無及び当該分極の方向から成る分極に関する情報、並びに他の回路素子との接続に関する情報に基づいて外部信号に応じた機能を実現する。配線制御部33は、これらの複数の機能を組み合わせることにより複雑なプログラムを構築するように構成されている。回路素子には、最終的な集積回路1400の構成や回路の情報を記憶する必要最低限度の容量の記憶素子を含むことが好ましい。これにより、集積回路1400に大容量の記憶装置を予め設ける必要をなくすことができる。
【0131】
以下、集積回路1400の製造方法を説明する。
【0132】
まず、例えばシリコンやセラミックから成る基板上に、必要な半導体デバイスを形成する。次に図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材を形成する。続いて、強誘電性の圧電部材を形成し、最後に配線を行う。圧電部材の分極処理は製造時に行っても、後からプログラムしても構わない。
【0133】
製造時に分極を行う場合、分極方向の異なるデバイスを予め用意し、分極電圧専用配線32や配線34を介してこれらのデバイスのいずれか一方に選択的に接続するように構成したり、予め初期状態の回路となるように分極状態をプログラムしておいてもよい。
【0134】
図15は、本発明の第7の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのスピーカの構成を概略的に示す回路図である。
【0135】
図15において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのスピーカ1500は、圧電ブザーを構成するものであり、その駆動回路は図3の増幅素子300と同様の発振回路を構成する。
【0136】
スピーカ1500は、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材35と、強誘電性の圧電部材36と、所定の発振周波数で振動することにより発音する発音体と電極を兼ねた弾性部材37と、給電用の電極38,39とを備える。
【0137】
スピーカ1500の作動を説明する。
【0138】
まず、電極38及び電極39の間に直流電圧を印加すると圧電部材35が大きく歪み弾性部材37が歪む。続いて、圧電部材36が歪んで、弾性部材37に電源電圧Vccに近い電圧が発生する。これにより、圧電部材35への印加電圧がほぼ0Vになり、圧電部材35の歪みが開放される。次に、弾性部材37の歪みが開放されると、圧電部材36は、歪みが開放されてその出力電圧が0Vになる。続いて、圧電部材35が再度歪んで、上述した動作を繰り返す。したがって、発音体としての弾性体37は、電源電圧Vccを圧電部材35に供給している間に、歪みの発生及び開放の繰り返しによって発生した振動に基づいてブザー音を発音することになる。
【0139】
なお、上記実施の形態において、発音体の一部をなす圧電部材35に電源電圧を印加し、圧電部材36からの電圧を圧電部材35に帰還するように構成してもよい。これにより、発音体を所定の発振周波数で振動させることができる。さらには、スピーカ1500は、圧電部材35に帰還させるべき圧電部材36からの電圧を弾性体37と電極39を不図示の抵抗で接続するなどしてフィルタリングするフィルタを備えてもよい。
【0140】
図16は、本発明の第8の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての振動型アクチュエータの構成を概略的に示す回路図である。
【0141】
図16において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての振動型アクチュエータ1600は、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材40と、強誘電性の圧電部材41と、電極42,43,44と、上部に突部45aのある弾性体45と、弾性体45の突部45aに加圧的に当接する回転体46とを備える。電極44と弾性体45は電気的に接続されており、弾性体45はグランド電圧を規定するアースに接続されている。
【0142】
振動型アクチュエータ1600の駆動回路は、上記図15のスピーカ1500と同様であり、以下、その作動を概略的に説明する。
【0143】
まず、電極42と電極44の間に直流電圧を印加すると、圧電部材40と圧電部材41が発振現象を繰り返し、これにより、弾性体45が撓み振動を繰り返すことで、弾性体45の突部45aが回転体46の周方向に振動して、回転体46が所定の方向に回転する。
【0144】
回転体46の回転速度は、電極42と電極44の間への電圧の印加をON−OFFし、そのON−OFFの周期やデューティ比を変化させることにより、変化させることができる。突部45aの振動の振幅が電源電圧Vccによらずほとんど一定であるからである。
【0145】
また、電極43とグランド電圧との間に可変抵抗手段を接続し、抵抗値を変化させたりすることにより、突部45aの発振周波数(弾性体45の発振周波数)を変化させてもよい。これにより、回転体46の回転速度をより正確に制御することができる。
【0146】
なお、本実施の形態では、電圧変換素子を用いた装置の発振機能を利用して振動型アクチュエータを構成したが、電圧変換素子を用いた装置の記憶機能を利用して積層アクチュエータを構成してもよい。積層アクチュエータは、複数の積層された圧電部材の必要な区画のみを切り替えて飽和電圧を印加することにより、歪み量をディジタル的に制御できるだけでなく、それぞれの層に歪みを記憶させることができ電圧の供給を停止しても歪みが長時間安定化させることができる。
【0147】
図17は、本発明の第9の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのセンサの構成を概略的に示す回路図である。
【0148】
図17において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのセンサ1700は、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1と、外力によって歪みが発生する強誘電性の圧電部材2と、グランド電圧を規定するアースに接続された電極3,5と、圧電部材2の歪みに応じた正極性の電圧が印加される電極4とを備える。
【0149】
センサ1700では、まず、外力によって圧電部材2に歪みが発生すると、圧電部材2の歪みに応じた正極性の電圧が電極4に発生する。電極4に発生した電圧が圧電部材1の飽和電圧を超えると圧電部材1に大きな歪みが発生し、これにともなって、圧電部材2に更に歪みが発生する。これにより、外力を取り去っても、センサ1700は、圧電部材2の歪みが記憶された状態となるので、電極4に出力された正極性の出力電圧Voutが外力の大きさが所定の閾値を超えたかどうかを示すセンサとして機能する。
【0150】
なお、このようなセンサ1700を平面的に複数個配置することにより、複数個の圧電部材2に発生した歪みの面圧分布を記憶してもよい。また、歪みとして記憶される外力の大きさを変えた複数のセンサを用いることにより、記憶された歪みの大きさを検知してもよい。
【0151】
図18は、本発明の第8の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのディジタル/アナログ変換回路の構成を概略的に示す回路図である。
【0152】
図18において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのディジタル/アナログ(D/A)変換回路1800は、2ビットのD/A変換回路から成り、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性の圧電部材1,25と、強誘電性の圧電部材2と、電極3,4,5,27と、電極5を介して出力される電圧のゲインを調整するためのコンデンサ47とを備える。圧電部材1,25と圧電部材2の間の接合部材には電極4が接続されており、電極4はグランド電圧を規定するアースに接続されている。
【0153】
圧電部材1には、電極3を介してD1信号が入力される。圧電部材25には、電極27を介してD0信号が入力される。圧電部材25は、その電極面積が圧電部材1の、例えば半分である。圧電部材1及び圧電部材25は、同じ入力値で同じ歪み量が発生するように構成されている。圧電部材25の電極面積が圧電部材1の半分であるので、圧電部材1と圧電部材25に同じ歪み量が発生しても、圧電部材25が圧電部材2に入力する電荷量は、圧電部材1が圧電部材2に入力する電荷量の半分である。
【0154】
D/A変換回路1800においては、D0信号及びD1信号に応じて圧電部材2に発生した電荷は電極5に電圧として印加される。圧電部材2とコンデンサ47から成る並列回路の静電容量はほとんど変化しないので、発生した電荷量に応じた出力電圧Voutを取り出すことができる。
【0155】
本実施の形態では、2ビットのD/A変換回路を構成したが、1ビット以上のD/A変換回路を構成することができる。
【0156】
図19は、本発明の第9の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのアナログ/ディジタル変換回路の構成を概略的に示す回路図である。
【0157】
図19において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのアナログ/ディジタル(A/D)変換回路1900は、図18の2ビットのD/A変換回路1800における圧電部材1,2,25から成る第1の電圧変換素子1900aと、強誘電性の圧電部材48,49から成る第2の電圧変換素子1900bと、第1の電圧変換素子1900aと第2の電圧変換素子1900bの間に設けられた電極5に接続されたコンデンサ47と、第1の電圧変換素子1900aを制御するD/A変換制御部50とを備える。
【0158】
電極Vinを介して圧電部材48にアナログ電圧を入力すると、これに比例した電荷が電極5に出力される。ここで、D/A変換制御部50によって第1の電圧変換素子1900aを制御して圧電部材2を歪ませると、アナログ電圧に比例した電荷と第1の電圧変換素子1900aの出力電荷の差に応じた電圧がコンデンサ47に発生する。このとき、D/A変換制御部50は、コンデンサ47に発生した電圧の符号を検出し、この電圧が0Vに近づくように第1の電圧変換素子1900aに入力すべきディジタル信号を変化させる。これにより、第1の電圧変換素子1900aに入力されたディジタル信号の値は、アナログ電圧をディジタル信号に変換した値と等しくなる。
【0159】
なお、本実施の形態では、アナログ電圧に応じて圧電部材48に発生した歪みを圧電部材49で電圧に変換したが、これに代えて、外力に応じて圧電部材49に歪みを発生させてその歪みを電圧に変換してもよい。これにより、外力の大きさをディジタル信号に変換することができる。
【0160】
本実施の形態では、2ビットのD/A変換回路を構成したが、1ビット以上のD/A変換回路を構成することができる。
【0161】
図20は、本発明の第10の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての蓄電素子の構成を概略的に示す回路図である。
【0162】
図20において、本実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての蓄電素子2000は、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた圧電部材1、及び強誘電性材料からなる圧電部材2から成る記憶素子と、グランド電圧を規定するアースに接続された電極3,5と、充電用端子に接続されたダイオード19と、ダイオード19及び記憶素子を接続する電極4とを備える。また、電極4は電圧出力に接続されている。
【0163】
充電用端子からダイオード19を介して電極4へ所定以上の大きさの電圧を印加すると、圧電部材1に大きな歪みが発生し、これにともなって、圧電部材2が歪んで、電極4を介して電圧出力から電圧が出力される。圧電部材1は、そのヒステリシス特性によって歪みの大きさが決まっていることから、圧電部材2から出力される電圧の大きさはほぼ安定している。
【0164】
蓄電素子2000の出力電圧特性としては、電流が出力されることによって充電された電荷が減少した場合に、圧電部材1のヒステリシス特性によって電極4の電圧が所定レベル以下となって急激に圧電部材1の歪みが開放され、その結果、出力電圧が0Vとなるなお、場合によっては、出力電圧が負極性の電圧となることがあるので、ダイオードを用いた保護回路を電圧出力端子に設けることが好ましい。
【0165】
図20の蓄電装置2000によれば、小さな充電電圧で大きな出力電圧を取り出すことができる。また、固体で構成されているので液漏れなどの心配をなくすことができる。
【0166】
なお、蓄電素子2000の電荷容量を増大させるために、複数個の記憶素子を並列に接続したり、電極面積が大きい圧電部材1,2を用いて薄く構成したり、これを円柱状に巻いて構成したりしてもよい。
【0167】
また、電圧出力の端子にコンデンサを並列に接続してもよい。これにより、電圧を容易に変更することができる。さらには、圧電部材1,2から成るは記憶素子を不図示の筐体に収納してもよい。外部から歪みに対抗するような圧力を予め与えておくことで、圧電部材1に発生した歪みを圧電部材2へ効率良く伝達して蓄電効率を向上させることができる。
【0168】
また、本実施の形態では、電圧変換素子を用いて蓄電装置200を構成したが、直流電圧で発振する発振素子を構成したり、これらを組み合わせて交流電源を構成したりしてもよい。
【0169】
また、上記の実施の形態では、説明を容易にするために、図2の実線に示すヒステリシス特性を備えた反強誘電性材料から成る圧電部材と、強誘電性材料から成る圧電部材とを隣接させた電圧変換素子を例に挙げたが、上述したように、一方の部材が電気−機械エネルギー変換素子であって他方の部材が機械−電気エネルギー変換素子であれば、必ずしも上記の圧電部材で構成される必要はない。
【0170】
なお、上記非特許文献1で述べられている点欠陥電歪材料は、従来の反強誘電性の圧電材料と同じヒステリシス特性(電界強度に対する歪み量の特性)を有するが、従来の一般的な反強誘電性の圧電材料と比較して数十〜百分の一の電界強度で同等の歪みを発生することが可能である。そのため、低電圧で大きな歪みを発生する圧電部材が利用できるようになり、様々な用途への適用が検討されるようになってきた。
【0171】
なお、これらの電圧変換素子は、電圧変換素子を構成する圧電部材に発生する歪みが大きいがゆえに、歪みによる電極の剥離や破断に対する対策が必要になる。本発明は、電気―機械エネルギー変換手段である反強誘電性の圧電部材にて大きな歪みを発生させ、これに隣接する機械−電気エネルギー変換素子である強誘電性の圧電部材で電圧に変換するため、この隣接の界面に大きな応力がかかる可能性がある。そこで界面の応力を緩和する方法について、以下に例を挙げる。
【0172】
第1の方法として、界面の電極を複数の領域に分け、複数の領域を互いに適当な距離をおいて配置する方法がある。複数の領域が界面に平行に配置されることにより、電気力線の界面と平行となる方向の成分が大きくなる。厚さ方向の電界で厚さが増加する方向の歪みが生じる場合、ポアソン比分の収縮が厚さ方向と直行する方向に働くが、ここで電気力線が厚さ方向と直行する界面と平行な方向の成分を設けることで、厚さ方向と直行する方向へ伸張する歪みが加わり、界面と平行な方向の歪みを緩和することができる。この方法は、歪みの伝達率を変えることになるので、上記電圧変換素子のゲイン調整に使うことも可能である。
【0173】
第2目の方法として、圧電部材と電極の接触面に生じた細かい凹凸を、高誘電率のゲル又は導電性のゲルで満たす方法がある。この場合、歪みを効率的に伝達するために電圧変換素子に圧力をかける必要がある。
【0174】
第3の方法として、電極自体にやわらかい材質を用いる方法がある。
【0175】
これらのような工夫を施すことで、電圧変換素子を破損させることなく実用化することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の実施の形態に係る電圧変換素子は、電気−機械エネルギー変換効果および機械−電気エネルギー変換効果を利用した素子を備えるデバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電圧変換素子の構成を概略的に示す図である。
【図2】点欠陥のナノ秩序の対称性という性質を用いて可逆的な電歪を有する圧電部材及び強誘電性の圧電部材の歪み特性を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る電圧変換素子としての増幅素子の構成を示す回路図である。
【図4】図3の増幅素子の各部の信号波形を示す図である。
【図5】図3の増幅素子の変形例の構成を概略的に示す回路図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての発振素子の構成を概略的に示す回路図である。
【図7】図6の発振素子における各電極の電圧波形を示す図である。
【図8】(a)は、図6の発振素子の第1の変形例の構成を示す回路図であり、(b)は、図6の発振素子の第2の変形例の構成を示す回路図である。
【図9】図8(a)の発振素子における各電極の電圧波形を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての構成を概略的に示す回路図である。
【図11】図10の電圧変換素子を用いた装置における各電極の電圧波形を示す図である。
【図12】(a)〜(f)は、本発明の第5の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての論理素子の構成を概略的に示す回路図である。
【図13】図12(a)〜図12(f)に示したような論理素子の出力電荷をリフレッシュするためのリフレッシュ回路の構成を概略的に示す回路図である。
【図14】本発明の第6の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての集積回路の構成を概略的に示す図である。
【図15】本発明の第7の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのスピーカの構成を概略的に示す回路図である。
【図16】本発明の第8の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての振動型アクチュエータの構成を概略的に示す回路図である。
【図17】本発明の第9の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのセンサの構成を概略的に示す回路図である。
【図18】本発明の第8の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのディジタル/アナログ変換素子の構成を概略的に示す回路図である。
【図19】本発明の第9の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としてのアナログ/ディジタル変換素子の構成を概略的に示す回路図である。
【図20】本発明の第10の実施の形態に係る電圧変換素子を用いた装置としての蓄電素子の構成を概略的に示す回路図である。
【符号の説明】
【0178】
1 電気−機械エネルギー変換素子である反強誘電性の圧電部材
2 機械−電気エネルギー変換素子である強誘電性の圧電部材
3,4,5 電極
100 電圧変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子に接続された電気−機械エネルギー変換素子と、前記第1の端子とは異なる第2の端子に接続された機械−電気エネルギー変換素子を備え、前記機械−電気エネルギー変換素子は前記電気−機械エネルギー変換素子によって生じた歪みを受けて歪みを発生し、前記機械−電気エネルギー変換素子が歪むことによって前記第2の端子に発生した電圧が前記電気−機械エネルギー変換素子が前記機械−電気エネルギー変換素子と同じ量だけ歪みを発生するために前記第1の端子に入力される電圧とは異なることを特徴とする電圧変換素子。
【請求項2】
前記電気−機械エネルギー変換素子は、入力としての電界強度と出力としての歪み量との関係においてヒステリシスを有することを特徴とする請求項1記載の電圧変換素子。
【請求項3】
前記電気−機械エネルギー変換素子は、前記ヒステリシスを有するにもかかわらず、歪み量が飽和するよりも低い所定の電界強度にて単一の歪み量を有することを特徴とする請求項2記載の電圧変換素子。
【請求項4】
前記所定の電界強度は0であることを特徴とする請求項3記載の電圧変換素子。
【請求項5】
前記電気−機械エネルギー変換素子は反強誘電性の圧電材料から成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項6】
前記機械−電気エネルギー変換素子は分極処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項7】
前記機械−電気エネルギー変換素子は強誘電性の圧電材料から成ることを特徴とする請求項6記載の電圧変換素子。
【請求項8】
前記電気−機械エネルギー変換素子と前記機械−電気エネルギー変換素子が隣接して配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項9】
前記電気−機械エネルギー変換素子と前記機械−電気エネルギー変換素子が絶縁部材を挟んで隣接して配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項10】
前記電気−機械エネルギー変換素子と前記機械−電気エネルギー変換素子の両方に接続された第3の端子を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項11】
前記第2の端子に発生した電圧は、前記第1の端子に入力される電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電圧変換素子。
【請求項12】
請求項10記載の電圧変換素子と、前記第1の端子と前記第3の端子の間に所定の電圧を供給し前記第2の端子から電圧を取り出す電圧制御回路を有することを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子を用いた論理回路から成ることを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子を用いた発振回路から成ることを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項15】
前記発振回路は、前記第2の端子に基準電位を印加する基準電位供給手段を有し、前記第1の端子に電圧を供給し、前記第3の端子から出力することを特徴とする請求項14記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項16】
前記発振回路は、前記第3の端子に接続された抵抗を備えることを特徴とする請求項15記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項17】
前記発振回路は、前記第1の端子又は前記第3の端子に接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗と前記第2の端子を接続する第2の抵抗とを備えることを特徴とする請求項15記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項18】
請求項10記載の電圧変換素子を備え、前記第3の端子を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を供給して前記電気−機械エネルギー変換素子に歪みを発生させ、前記電気−機械エネルギー変換素子に発生した歪みを受けて前記機械−電気エネルギー変換素子にて発生した電圧を保持することを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項19】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子を備え、前記電気−機械エネルギー変換素子は複数に分割され、当該分割された電気−機械エネルギー変換素子のそれぞれに少なくとも1ビットのディジタル信号を入力し、前記機械−電気エネルギー変換素子にて発生した電圧を前記第2の端子より出力することによりディジタル/アナログ変換を行うことを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項20】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子から成る第1の電圧変換素子と第2の電圧変換素子を備え、
前記第1の電圧変換素子における電気−機械エネルギー変換素子は複数に分割され、当該分割された電気−機械エネルギー変換素子のそれぞれに少なくとも1ビットのディジタル信号を入力し、前記機械−電気エネルギー変換素子にて発生した電圧を前記第2の端子より出力するものであって、
前記第2の電圧変換素子の第1端子及び第2の端子の一方を前記第1の電圧変換素子の第2の端子に接続し、他方にアナログ電圧を供給し、
前記第2の電圧変換素子に歪みが生じないように前記第1の電圧変換素子の電気−機械エネルギー変換素子に入力されるディジタル信号を制御することによってアナログ/ディジタル変換を行うことを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項21】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を供給する電圧制御手段と、前記第2の端子の電圧を前記第1の端子に帰還させることで前記電気−機械エネルギー変換素子に発生した所定の発振周波数の振動に基づいて発音する発音体とを備えることを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項22】
前記第1の端子に帰還させるべき前記第2の端子からの電圧をフィルタリングするフィルタを備えることを特徴とする請求項21記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項23】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を供給する電圧制御手段と、前記第2の端子の電圧を前記第1の端子に帰還させることで前記電気−機械エネルギー変換素子に発生した所定の発振周波数の振動によって駆動される被移動体とを備えることを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項24】
前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を印加すべき周期及びデューティ比を変化させることにより前記被移動体の移動速度を制御する移動速度制御手段を備えることを特徴とする請求項23記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項25】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子を備え、前記第2の端子の電圧を前記第1の端子に帰還させることで、前記機械−電気エネルギー変換素子から得られる電圧より前記機械−電気エネルギー変換素子に発生した歪みの大きさを検出することを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項26】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電圧変換素子を回路素子として複数備え、複数の前記回路素子間には緩衝部材を配置して集積回路を形成することを特徴とする電圧変換素子を用いた装置。
【請求項27】
前記電圧変換素子の分極の有無及び当該分極の方向から成る分極に関する情報、並びに前記複数の回路素子間の接続に関する情報のうち、少なくとも前記分極に関する特性を組み合わせることによりプログラムを構築するように構成されていることを特徴とする請求項26記載の電圧変換素子を用いた装置。
【請求項28】
前記機械−電気エネルギー変換素子の出力電荷を再充電するリフレッシュ回路を備えることを特徴とする請求項26又は27記載の電圧変換素子を用いた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−140850(P2006−140850A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329788(P2004−329788)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】