説明

電圧変換装置

【課題】太陽電池モジュールから電圧変換装置に流れ込む電流を調整して、太陽電池モジュール等の特性劣化や破壊を防止し、又は、発電動作を安定化する。
【解決手段】この電圧変換装置は、駆動信号に従ってオン/オフ動作を行うスイッチング素子を用いて、発電モジュールから電圧変換装置の入力端子に供給される直流電圧を昇圧又は降圧する並列接続された複数のDC/DCコンバータと、複数のDC/DCコンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータと、電圧変換装置の入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、少なくとも入力電圧検出回路の検出結果に基づいて、複数のDC/DCコンバータの内で稼動させるDC/DCコンバータを選択し、稼動させるDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相及びデューティを設定する制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール又は熱電発電モジュール等の発電モジュールから出力される直流電圧を交流電圧に変換して電力系統に供給する電圧変換装置(パワーコンディショナ)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽光発電システムにおいては、複数のソーラーセルによって太陽電池モジュールが構成され、太陽電池モジュールが電圧変換装置に接続されて使用される。電圧変換装置は、太陽電池モジュールから出力される直流電圧を必要に応じて昇圧又は降圧し、さらに、直流電圧を交流電圧に変換して電力系統に供給する。
【0003】
このような太陽光発電システムにおいては、太陽電池モジュールが屋上や屋根の上に設置されるのに対して、電圧変換装置は太陽電池モジュールから離れた屋内に設置される。この点から、太陽電池モジュール等の劣化や破壊を防止し、発電動作が長期的に安定で信頼できることが望ましい。
【0004】
ところで、電圧変換装置の入力端子には、入力電流のリップルを吸収して入力電圧を平滑するために、大容量のコンデンサが接続される場合がある。しかしながら、太陽電池モジュールを電圧変換装置に接続する場合に、太陽電池モジュールからコンデンサに突入電流が流れ込むので、突入電流が過大になると、太陽電池モジュール、電圧変換装置、又は、接続端子が劣化し、ときには破壊されてしまう。また、太陽電池モジュールの発電動作が不安定になってしまう。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、4個の半導体スイッチング素子からなり、太陽電池からの直流電力をリアクトルを介して受けるブリッジ形のスイッチング回路、及び、各半導体スイッチング素子にスイッチング制御信号を出力するパルス幅変調制御回路を有する電流形インバータ部を備え、この電流形インバータ部により太陽電池の直流電力を交流電力に変換して商用電力系統と連系する太陽光発電用電流形インバータ装置において、リアクトルの入力側で太陽電池と並列になるように平滑用コンデンサを接続することが開示されている。
【0006】
特許文献1によれば、太陽電池にリアクトルを介して接続されたスイッチング回路の入力側で太陽電池と並列に設けられた平滑用コンデンサにより、リアクトルに対する入力電流のリップルを吸収して電圧を安定化させる。その結果、入力電流リップル吸収の全てをリアクトルに依存していた従来の電流形インバータに比べて、リアクトルの値を小さくすることができる。しかしながら、特許文献1には、太陽電池モジュールから太陽光発電用電流形インバータ装置に流れ込む突入電流を小さくすることに関しては、特に開示されていない。
【0007】
また、特許文献2には、昇圧チョッパを並列に接続したブーストチョッパ回路のスイッチング素子を所定周期で順次遅らせて繰り返し動作させ、出力側の平滑コンデンサに流れる電流を平滑にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−324847号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平11−206112号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
太陽電池には、シリコン結晶型太陽電池の他に、アモルファス太陽電池や化合物半導体太陽電池等があり、個々に出力特性が異なる。これらに共通して、日照量が減ると発生電力も減り、内部インピーダンスは高まる。太陽電池の発生電圧は、内部インピーダンスを通して負荷に流れ、電圧降下してバランスする。日照量が少なければ内部インピーダンスが大きいから、パワーコンディショナ両端の入力電圧は小さくなる。即ち、曇天や朝夕の薄明時においては、太陽電池から電流を引き出すと太陽電池の出力電圧が低下し、パワーコンディショナに入力電力を供給できず、パワーコンディショナが動作しない。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、太陽電池モジュールから電圧変換装置に流れ込む電流を太陽電池の動作状況に応じて最適に調整し、過大な電流の流れ込みを抑えて太陽電池モジュール等の特性劣化や破壊を防止し、又は、太陽電池モジュールの発電動作を安定化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の1つの観点に係る電圧変換装置は、光又は熱に応じて発電を行う発電モジュールに接続される電圧変換装置であって、駆動信号に従ってオン/オフ動作を行うスイッチング素子を用いて、発電モジュールから電圧変換装置の入力端子に供給される直流電圧を昇圧又は降圧する並列接続された複数のDC/DCコンバータと、複数のDC/DCコンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータと、電圧変換装置の入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、少なくとも入力電圧検出回路の検出結果に基づいて、複数のDC/DCコンバータの内で稼動させるDC/DCコンバータを選択し、稼動させるDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相及びデューティを設定する制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1つの観点によれば、入力電圧検出回路の検出結果に基づいて、複数のDC/DCコンバータの内で稼動させるDC/DCコンバータを選択し、稼動させるDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相及びデューティを設定することにより、太陽電池モジュールから電圧変換装置に流れ込む電流を小さくして、太陽電池モジュール等の特性劣化や破壊を防止し、又は、太陽電池モジュールの発電動作を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電圧変換装置を用いる太陽光発電システムの構成を示す図である。
【図2】太陽電池モジュールの電圧対電流特性の温度による変化を模式的に示す図である。
【図3】太陽電池モジュールの電圧対電流特性の日射量による変化を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電圧変換装置の構成の一部を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電圧変換装置を用いる太陽光発電システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
本発明に係る電圧変換装置は、光に応じて発電を行う太陽電池モジュール、又は、熱に応じて発電を行う熱電発電モジュール等の発電モジュールに接続され、発電モジュールから出力される直流電圧を交流電圧に変換して電力系統に供給するものであり、以下の実施形態においては、太陽電池モジュール及び電圧変換装置等によって構成される太陽光発電システムを例として説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電圧変換装置を用いる太陽光発電システムの構成を示す図である。図1に示すように、この太陽光発電システムは、光に応じて発電を行う太陽電池モジュール1と、接続端子等を含む接続部2と、太陽電池モジュール1から出力される直流電圧を所望の交流電圧に変換する電圧変換装置(パワーコンディショナ)3とによって構成される。
【0016】
太陽電池モジュール1は、直列に接続された複数のソーラーパネルを含んでおり、各々のソーラーパネルは、直並列に接続された複数のソーラーセルを含んでいる。例えば、15枚のソーラーパネルを直列に接続し、さらに、そのような直列パネルの数列を並列に接続することによって構成された太陽電池モジュールは、出力電圧を生成する。
【0017】
図2は、太陽電池モジュールの電圧対電流特性の温度による変化を模式的に示す図である。図2に示すように、太陽電池モジュールの出力電圧は、温度の上昇に伴って低下する特性を有している。
【0018】
図3は、太陽電池モジュールの電圧対電流特性の日射量による変化を模式的に示す図である。図3に示すように、太陽電池モジュールの出力電流は、日射量の減少に伴って低下する特性を有している。
【0019】
再び図1を参照すると、電圧変換装置3は、電圧変換装置の入力端子4と入力端子5との間に接続されたコンデンサ10と、太陽電池モジュール1から入力端子4及び5に供給される直流電圧を昇圧又は降圧する並列接続された複数のDC/DCコンバータ(図1においては、4つのDC/DCコンバータ11〜14を示す)と、出力合成回路としてのダイオード31〜34と、DC/DCコンバータ11〜14から出力される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ40と、電力系統連係回路50と、入力電流検出回路61と、入力電圧検出回路62と、出力電流検出回路63と、出力電圧検出回路64と、制御部70とを有している。
【0020】
DC/DCコンバータ11は、1次側の交流電圧を昇圧又は降圧して2次側に出力するトランス20と、トランスの1次側巻線21に直列に接続され、パルス状の駆動信号に従ってオン/オフ動作を行うスイッチング素子24と、制御部70から供給される制御信号に基づいて、スイッチング素子24を駆動するための駆動信号を生成する駆動回路25と、トランスの2次側巻線22に発生する電圧を半波整流するダイオード26と、整流された電圧を平滑するコンデンサ27とを含んでいる。他のDC/DCコンバータ12〜14の構成も、DC/DCコンバータ11の構成と同様である。
【0021】
トランス20は、磁性体のコア23と、コア23に回巻された1次側巻線21及び2次側巻線22とを有している。なお、トランス20に付されたドットの記号は、巻線の極性を示している。トランスの1次側巻線21の一端は、電圧変換装置の第1の入力端子4に接続されている。スイッチング素子24は、例えば、MOSFETによって構成されており、スイッチング素子24のドレインが、トランスの1次側巻線21の他端に接続され、スイッチング素子24のソースが、電圧変換装置の第2の入力端子5に接続されている。スイッチング素子24は、駆動回路25からゲートに供給される駆動信号に従って、トランスの1次側巻線21に電流を流す。
【0022】
一般に、DC/DCコンバータにおいて、トランスの1次側から2次側への電力伝達方式としては、スイッチング素子がオンした時に1次側から2次側に電力を伝達するフォワード方式と、スイッチング素子がオフした時に1次側から2次側に電力を伝達するフライバック方式とがある。また、その他の電力伝達方式として、ハーフブリッジ方式、プッシュプル方式、フルブリッジ方式等がある。本実施形態においては、高い出力電圧を得ることができるフライバック方式を採用している。フライバック方式は、チョークコイルが不要で部品点数が少なく、回路が簡単になるというメリットを有しているが、小電力用であり、出力電圧のリップルも比較的大きい。
【0023】
それらのDC/DCコンバータに共通して、スイッチング素子のオン/オフ動作で発生するスイッチングリップルは、電圧波形や電流波形を乱し、高周波ノイズ源となるだけでなく、電力伝達効率を低下させる。そこで、異なる位相で動作する複数のDC/DCコンバータを並列接続することが有効となる。
【0024】
トランスの1次側巻線21に接続される回路と、トランスの2次側巻線22に接続される回路とは、フォトカプラ等の光信号伝送素子を用いることにより、互いにアイソレートされる。例えば、制御部70をトランスの1次側巻線21に接続する場合には、出力電流検出回路63及び出力電圧検出回路64から制御部70への信号経路の一部に光信号伝送素子が用いられる。一方、制御部70をトランスの2次側巻線22に接続する場合には、入力電流検出回路61及び入力電圧検出回路62から制御部70への信号経路の一部に光信号伝送素子が用いられると共に、制御部70から駆動回路25への信号経路の一部に光信号伝送素子が用いられる。なお、電流を電磁誘導による起電力に基づいて検出するタイプの電流検出回路については、アイソレートのための素子を設ける必要はない。
【0025】
図1に示すようなフライバック方式のDC/DCコンバータにおいては、トランスの1次側巻線21と2次側巻線22とが逆極性の関係となっており、スイッチング素子24がオンしている間は、トランス20の1次側電流は増加するが、トランス20の2次側においてはダイオード26で逆バイアスされているので2次側電流は流れない。トランス20は、スイッチング素子24がオンしている時に、コア24にエネルギーを蓄える。
【0026】
次に、スイッチング素子24がオフすると、磁場が電流を維持しようとするので、トランス20の電圧極性が反転して、トランス20の2次側において電流が流れる。トランス20の2次側電流は、トランスの2次側巻線22に直列接続されたダイオード26を介してコンデンサ27に充電されることにより、コンデンサ27の両端に直流電圧を発生させる。後で説明するように、DC/DCコンバータ11〜14は複数の異なる位相で動作するので、リップル電流も複数の異なる位相に分散され、その分、コンデンサ10の容量を小さくすることができる。
【0027】
ダイオード31〜34のアノードは、DC/DCコンバータ11〜14の出力端子にそれぞれ接続されており、ダイオード31〜34のカソードは、インバータ40の入力端子に接続されている。ダイオード31〜34によって、DC/DCコンバータ11〜14の出力電流が合成されると共に、出力電流の逆流が防止される。なお、ダイオード31〜34を省略して、DC/DCコンバータ11〜14の出力をインバータ40の入力端子に直接接続するようにしても良い。
【0028】
入力電流検出回路61は、電圧変換装置3の入力電流を検出し、入力電圧検出回路62は、電圧変換装置3の入力電圧を検出する。また、出力電流検出回路63は、インバータ40の出力電流を検出し、出力電圧検出回路64は、電圧変換装置3の出力電圧(電力系統の電圧)を検出する。
【0029】
制御部70は、制御信号等を生成するコントロールブロックを一体化して収めたDSP(digital signal processor:ディジタル信号処理装置)を含んでおり、DSPの内部又は外部において、ソフトウェア(制御プログラム)やデータを格納する不揮発性メモリ等の格納部71を含んでいる。格納部71は、LUT(ルックアップテーブル)を有しており、このLUTには、電圧変換装置3の動作を制御するために用いられる各種の設定値が格納されている。また、制御部70は、各種の検出回路から出力されるアナログの検出信号をディジタルの検出信号に変換する複数のD/Aコンバータを含んでいる。
【0030】
制御部70は、DC/DCコンバータ11〜14の電圧変換動作をパルス変調方式によるスイッチング素子のオン/オフ制御によって制御すると共に、インバータ40の電圧変換動作及び電力系統連係回路50の開閉動作を制御する。制御部70は、少なくとも入力電圧検出回路62によって検出される電圧変換装置3の入力電圧(太陽電池モジュール1の出力電圧)に基づいて、DC/DCコンバータ11〜14の内で稼動させるDC/DCコンバータを選択し、稼動させるDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相及びデューティを設定する。さらに、制御部70は、入力電圧検出回路62の検出結果に加えて、入力電流検出回路61、出力電流検出回路63、及び、出力電圧検出回路64の内の少なくとも1つの検出結果に基づいて、駆動信号の位相及びデューティを設定するようにしても良い。
【0031】
ここで、制御部70は、電圧変換装置3の入力電圧が所定の閾値よりも小さいときに、DC/DCコンバータ11〜14の内の1つ以外のDC/DCコンバータ(例えば、DC/DCコンバータ12〜14)の動作を停止させる。即ち、電圧変換装置3の入力電圧が可動範囲に入っても所定の閾値よりも小さいときには、DC/DCコンバータ11のみが稼動する。その際に、制御部70は、駆動信号のデューティを小さく設定し、あるいは、駆動信号における一部のパルスをマスクするスキッピングモードに移行するように、駆動回路25を制御する。これにより、太陽電池モジュール1から電圧変換装置3に流入する突入電流をさらに小さくすることができる。
【0032】
図3に示すように、太陽電池モジュールの出力電流は日射量の減少に伴って低下するが、その際に太陽電池モジュールから大きな電流を取り出そうとすれば、太陽電池モジュールの出力電圧が急激に低下してしまう。特に、曇天や朝夕において日照量が少ない場合には、僅かな電流を取り出すだけで、太陽電池モジュールの出力電圧が急激に低下する現象が顕著である。
【0033】
一方、商用AC電圧を生成するためには、例えば、600V〜700V程度の電圧をインバータに供給する必要がある。従って、曇天時に安定な起動をさせるためには、DC/DCコンバータの昇圧比を高めなければならないが、これは、晴天時に過大な電圧をインバータに印加することになり、効率も悪い。そこで、本実施形態によれば、太陽電池モジュールから取り出す電流を抑えながら、ある程度の電力(数mW程度)を供給可能な直流電圧を生成することができる。また、その直流電圧を、制御部70を動作させるローカル電源として利用することができる。
【0034】
さらに、制御部70は、電圧変換装置3の入力電圧が上昇するにつれて、複数のDC/DCコンバータ11〜14を順次稼動させる。これにより、太陽電池モジュールから取り出す電流量も徐々に増やすことができ、安定な起動を実現できる。しかも、太陽電池モジュールにかかるストレスを緩和して、動作を安定化することができる。ここで、制御部70は、複数のDC/DCコンバータを稼動させる際に、複数のDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相が互いに異なるようにする。これにより、複数のDC/DCコンバータが複数の異なる位相で動作するので、リップル電流が複数の異なる位相に分散され、リップル電圧(スイッチングノイズ)も低下する。
【0035】
次に、制御部が行う制御動作の例について説明する。本実施形態においては、複数の閾値が格納部71に格納されており、制御部70が、入力電圧検出回路62によって検出された入力電圧をそれらの閾値と比較する。以下において、第1の閾値Vth1〜第5の閾値Vth5の間に、0<Vth1<Vth2<Vth3<Vth4<Vth5の関係があるものとする。
【0036】
電圧変換装置3の入力電圧Vinが0Vである場合に、制御部70は、バックアップ電源で動作し、DC/DCコンバータ11〜14及びインバータ40の動作を停止させる。0<Vin<Vth1になると、制御部70は、簡易な昇圧コンバータを動作させて電源電圧を生成させるが、DC/DCコンバータ11〜14及びインバータ40の動作は停止させたままである。Vth1≦Vin<Vth2になると、制御部70は、DC/DCコンバータ11及びインバータ40のみを稼動させる。その際に、DC/DCコンバータ11の出力電圧が分圧されることにより、電源電圧が生成される。
【0037】
さらに、制御部70は、Vth2≦Vin<Vth3になると、DC/DCコンバータ12を追加稼動させ、Vth3≦Vin<Vth4になると、DC/DCコンバータ13を追加稼動させ、Vth4≦Vin<Vth5になると、全てのDC/DCコンバータ11〜14を稼動させる。あるいは、制御部70は、Vth2≦Vin<Vth5のときに、全てのDC/DCコンバータ11〜14を稼動させるようにしても良い。このように、複数のDC/DCコンバータ11〜14を順次稼動させることにより、太陽電池モジュール1から電圧変換装置3に流れ込む電流を小さくして、太陽電池モジュール1等の特性劣化や破壊を防止し、又は、太陽電池モジュール1の発電動作を安定化することができる。一方、Vin≧Vth5になると、制御部70は、過大入力であると判断し、安全のためにDC/DCコンバータ11〜14及びインバータ40の動作を停止させる。
【0038】
さらに、複数の入力電流の値に対応して複数の閾値を格納部71に格納することにより、制御部70が、入力電圧検出回路62によって検出された入力電圧を、入力電流検出回路61によって検出された入力電流の値に対応する複数の閾値と比較するようにしても良い。そのようにすれば、太陽電池モジュール1から電圧変換装置3への過大な電流の流れ込みを確実に防止することができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電圧変換装置の構成の一部を示す図である。第2の実施形態においては、図1に示す第1の実施形態におけるDC/DCコンバータ11〜14の替わりに、DC/DCコンバータ81〜84が用いられる。DC/DCコンバータ81は、複数の電圧変換回路(図4においては、2つの電圧変換回路81a及び81bを示す)によって構成される。他のDC/DCコンバータ82〜84の構成も、DC/DCコンバータ81の構成とDC/DCコンバータ81〜84の出力は並列接続され、それらの接続点に、コイル91とコンデンサ92とによって構成されるローパスフィルタ(LPF)90が接続される。
【0040】
このように、絶縁型の電圧変換回路(DC/DCコンバータ)を用いる場合には、複数の電圧変換回路の出力を直列に接続して、出力電圧を積み上げることができる。図4によれば、複数のDC/DCコンバータ81〜84が並列接続されると共に、各々のDC/DCコンバータは、入力が並列接続され出力が直列接続された2つの電圧変換回路を備えている。2つの電圧変換回路は、異なる位相を有する駆動信号で動作することが望ましい。この構成によれば、太陽電池モジュールの出力電圧が低い場合にも、電圧変換回路の昇圧比を高くすることなく、積み上げられた出力電圧を得ることができるので、日照量の少ないときでも効率低下を抑えることができる。
【0041】
以上においては、絶縁型のDC/DCコンバータを用いる場合について説明したが、非絶縁型のDC/DCコンバータ(昇圧チョッパ回路又は昇降圧チョッパ回路)を用いるようにしても良い。
【0042】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る電圧変換装置を用いる太陽光発電システムの構成を示す図である。第3の実施形態においては、図1に示す第1の実施形態におけるDC/DCコンバータ11〜14の替わりに、DC/DCコンバータ101〜104が用いられる。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0043】
DC/DCコンバータ101は、インダクタンス素子28と、スイッチング素子24と、駆動回路25と、ダイオード26と、コンデンサ27とを含んでいる。他のDC/DCコンバータ102〜104の構成も、DC/DCコンバータ101の構成と同様である。
【0044】
インダクタンス素子28は、第1の端子及び第2の端子を有し、インダクタンス素子28の第1の端子が、電圧変換装置の第1の入力端子4に接続されている。スイッチング素子24は、例えば、MOSFETによって構成されており、スイッチング素子24のドレインが、インダクタンス素子28の第2の端子に接続され、スイッチング素子24のソースが、電圧変換装置の第2の入力端子5に接続されている。スイッチング素子24は、駆動回路25からゲートに供給される駆動信号に従って、インダクタンス素子28に電流を流す。
【0045】
ダイオード26は、インダクタンス素子28の第2の端子に接続されたアノードを有し、インダクタンス素子28の第2の端子に発生する電圧を整流する。ダイオード26のカソードは、コンデンサ27の一端に接続されている。コンデンサ27は、ダイオード26によって整流された電圧を平滑する。このようにして、DC/DCコンバータ101は、太陽電池モジュール1から出力される直流電圧を昇圧又は降圧する。なお、上記説明において、DC/DCコンバータの出力電圧を直流電圧として説明しているが、脈流電圧も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、太陽電池モジュール又は熱電発電モジュール等の発電モジュールから出力される直流電圧を交流電圧に変換して電力系統に供給する電圧変換装置(パワーコンディショナ)において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 太陽電池モジュール
2 接続部
3 電圧変換装置
4 第1の入力端子
5 第2の入力端子
10 コンデンサ
11〜14、81〜84、101〜104 DC/DCコンバータ
20 トランス
21 1次側巻線
22 2次側巻線
23 コア
24 スイッチング素子
25 駆動回路
26 ダイオード
27 コンデンサ
28 インダクタンス素子
40 インバータ
50 電力系統連係回路
61 入力電流検出回路
62 入力電圧検出回路
63 出力電流検出回路
64 出力電圧検出回路
70 制御部
71 格納部
81a、81b 電圧変換回路
90 ローパスフィルタ(LPF)
91 コイル
92 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光又は熱に応じて発電を行う発電モジュールに接続される電圧変換装置であって、
駆動信号に従ってオン/オフ動作を行うスイッチング素子を用いて、前記発電モジュールから前記電圧変換装置の入力端子に供給される直流電圧を昇圧又は降圧する並列接続された複数のDC/DCコンバータと、
前記複数のDC/DCコンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータと、
前記電圧変換装置の入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、
少なくとも前記入力電圧検出回路の検出結果に基づいて、前記複数のDC/DCコンバータの内で稼動させるDC/DCコンバータを選択し、稼動させるDC/DCコンバータに供給される駆動信号の位相及びデューティを設定する制御手段と、
を具備する電圧変換装置。
【請求項2】
前記電圧変換装置の入力電圧が所定の閾値よりも小さいときに、前記制御手段が、前記複数のDC/DCコンバータの内の1つ以外のDC/DCコンバータの動作を停止させる、請求項1記載の電圧変換装置。
【請求項3】
前記電圧変換装置の入力電圧が上昇するにつれて、前記制御手段が、前記複数のDC/DCコンバータを順次稼動させる、請求項1又は2記載の電圧変換装置。
【請求項4】
前記複数のDC/DCコンバータの各々が、絶縁トランスを有する入力並列の複数の電力変換回路を有し、前記複数の電力変換回路の出力が直列接続されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の電圧変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213466(P2010−213466A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57401(P2009−57401)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(502135990)沖パワーテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】