説明

電圧検出装置及び誘導加熱装置

【解決課題】加熱コイルの形状や寸法によらずに、加熱コイルに高周波電力を投入することができる、電圧検出装置及びそれを備えた誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】二次側に加熱コイル1を接続し得る変成器13と、変成器13の一次側に整合器12を介在して接続されるインバータ11とを備えた誘導加熱装置10において、検出用変成器21を変成器13の二次側に加熱コイル1と並列に接続し、検出信号生成部22を検出用変成器21の二次側に接続する。検出信号生成部22により、変成器13の一次側に印加される電圧の大きさに対応するよう検出用変成器21からの信号を処理して検出信号として検出器14に出力する。検出器14は、検出信号生成部22から出力された検出信号が所定の範囲を超えると、インバータ11からの出力を抑制する制御信号を出力制御部15に対して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側から変成器に印加される電圧を検出する電圧検出装置と、それを備えた誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を行うに際し、交番電力を効率良く加熱コイルに供給するために、インバータと加熱コイルとの間に整合器及び変成器を介在してインピーダンス整合をとり、変成器により加熱コイルに流れる電流を大きくしている。すなわち、誘導加熱装置では、回路的に、インバータに整合器と変成器とが順に接続され、変成器の二次側である出力側に加熱コイルが接続される。誘導加熱により加熱コイルに必要な電力を投入する場合、加熱コイルに必要な電圧を印加して、必要な電流を流す必要がある。
【0003】
また、誘導加熱を行う際、被加熱材であるワークが加熱コイルと接触すると、ワークや加熱コイルが変形したり破損したり、誘導加熱装置における機械駆動系が通常の動作を行えないおそれがあるため、コイルタッチ検出装置が設けられている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−13682号公報
【特許文献2】特開平9−118917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、誘導加熱すべき被加熱材の形状や寸法が定まっている場合には、それに応じて加熱コイルを設計し、加熱コイル及び被加熱材との負荷に応じて整合器や変成器を選定すればよい。しかしながら、色々な形状、寸法の被加熱材を誘導加熱しようとする場合には、想定範囲を超えたインピーダンスを有する加熱コイルを選定してしまい、変成器の一次側が過電圧になり、変成器が本来の機能を十分発揮することができない。
【0006】
この点について詳細に説明する。加熱コイルの径が大きい場合やコイル幅が狭い場合には、加熱コイルの入力インピーダンスが大きくなり、インバータから大きい電圧を出力しても、加熱コイルに電流が流れ難くなる。変成器は、通常、一次コイルに大きな電圧を印加して二次コイルに電流を多く流すように、二次コイルに対する一次コイルの巻き数比が高い。加熱コイルに印加する電圧が大きくなると、二次側の巻き線には加熱コイルの電圧と同じ電圧が生じるため、一次側の巻き線に生じる電圧が極めて大きくなる。例えば、一次コイルと二次コイルの比率が1:7とすると、加熱コイルに生じる電圧が500Vの場合には一次コイルには約7倍の3500Vというきわめて高い電圧がインバータから整合器を経由して入力されることになる。これでは、変成器の一次側が過電圧になり、絶縁破壊やコアの磁気飽和を生じてしまい、変成器が本来の機能を果たさなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、被加熱材の形状や寸法によらずに、換言すれば、加熱コイルの形状や寸法によらずに、加熱コイルに交番電力を投入することができる、電圧検出装置及びそれを備えた誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電圧検出装置は、変成器の二次側に加熱コイルが接続されており、変成器の一次側に印加される電圧を検出する電圧検出装置であって、変成器の二次側に対して加熱コイルと並列に接続される検出用変成器と、変成器の一次側に印加される電圧の大きさに対応するよう検出用変成器からの信号を処理して検出信号として出力する検出信号生成部と、を備える。
【0009】
本発明の誘導加熱装置は、二次側に加熱コイルを接続し得る変成器と、変成器の一次側に整合器を介在して接続されるインバータと、インバータの出力を制御する出力制御部と、を備える誘導加熱装置において、変成器の二次側に加熱コイルと並列接続される検出用変成器と、変成器の一次側に印加される電圧の大きさに対応するよう検出用変成器からの信号を処理して検出信号として出力する検出信号生成部と、を備え、検出信号生成部から出力された検出信号が所定の範囲を超えると、インバータからの出力を抑制する制御信号を出力制御部に対して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変成器のうち加熱コイルが接続される二次側に検出用変成器の一次側を並列接続しており、検出用変成器の二次側に検出信号生成部を接続している。よって、変成器の一次側に加わる電圧を、その電圧の大きさよりも小さい信号として変成器の二次側から取り出すことができる。つまり、検出用変成器の耐圧を高く設定する必要がなくなる。さらに、検出信号生成部から出力された検出信号をモニターし、変成器が許容する電圧よりも大きい電圧が検出されると、インバータの出力を抑制することで、変成器に過電圧が加わる状態を回避することができ、結果として変成器を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す電圧検出装置の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は、特許請求の範囲に記載した範囲及びそれと均等な範囲において適宜変更して実施することができることは説明するまでもない。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す図である。誘導加熱装置10は、図1に示すように、インバータ11と、インバータ11の出力端に接続される整合器12と、一次側に整合器12を接続した変成器13と、変成器13の二次側に接続される電圧検出装置20と、電圧検出装置20から出力される検出信号を検出する検出器14と、インバータ11の出力を制御する出力制御部15と、を備えている。
【0014】
変成器13の二次側には、電圧検出装置20と並列接続となるよう、加熱コイル1が交換可能に接続されることができ、加熱コイル1に交番電流が流れることで、被加熱材であるワーク2に渦電流が生じ、その結果として、ワーク2が誘導加熱される。
【0015】
以下、誘導加熱装置10の各部の構成について、それに含まれる電圧検出装置20と共に詳細に説明する。
【0016】
インバータ11は、例えば交流電源17から入力された電力を一旦直流に変換し、その直流をパルス変換することで、交番電力を出力するものである。
【0017】
整合器12は例えば整合用のコンデンサを含んでおり、整合用のコンデンサと変成器13及び加熱コイル1に含まれるインダクタンスとで共振回路を構成している。
【0018】
変成器13は、インバータ11に対して整合器12を介して接続される一次コイル13aと、加熱コイル1と並列接続される二次コイル13bと、を含んでおり、一次コイル13aと二次コイル13bとの間に相互結合するための鉄心などを含んで構成されている。
【0019】
電圧検出装置20は検出用変成器21と検出信号生成部22とを少なくとも有する。検出用変成器21は、変成器13における二次コイル13bに対して加熱コイル1と並列に接続される。検出信号生成部22は、変成器13の一次コイル13aに印加される電圧の大きさに対応するよう検出用変成器21からの信号を処理して検出信号として出力する手段である。図1に示されている例では、電圧検出装置20と検出器14とは別体であるが、電圧検出装置20内に検出信号をモニターする機能を備えていても良い。
【0020】
電圧検出装置20について詳細に説明する。図2は図1に示す電圧検出装置20の一例を示す回路図である。検出用変成器21は一次コイル21aと二次コイル21bとが相互誘導で結合して構成されている。一次コイル21aに生じる電圧に対して二次コイル21bに生じる電圧が相対的に低くなるよう、一次コイル21a、二次コイル21bの形状、寸法及び巻き数が設定されることが好ましい。
【0021】
検出信号生成部22は二次コイル21bに接続され二次コイル21bに生じる電圧の信号を処理する手段であって、例えば図2に示す回路により整流作用を有する。具体的には、検出信号生成部22は、検出用変成器21の二次側に生じる電圧の信号波形を整形して、変成器13の一次コイル13aに生じる電圧の大きさに対応した信号、例えば比例した信号に変換する。
【0022】
検出信号生成部22は、図2に示すように、二次コイル21bに並列接続される第1のコンデンサ22aと、第1のコンデンサ22aに並列接続される第1の抵抗22bと、二次コイル21b、第1のコンデンサ22a及び第1の抵抗22bが並列接続されたものに対して直列接続される整流素子としてのダイオード22c、第2の抵抗22d及び第2のコンデンサ22eと、で構成される。すなわち、ダイオード22c、第2の抵抗22d及び第2のコンデンサ22eの直列接続に対し、二次コイル21b、第1のコンデンサ22a及び第1の抵抗22bがそれぞれ並列接続されている。
【0023】
二次コイル21b、第1のコンデンサ22a、第1の抵抗22bの各一端が接続された側に、ダイオード22cのアノードが接続される。ダイオード22cのカソード側に第2の抵抗22dの一端が接続される。第2の抵抗22dの他端に第2のコンデンサ22eの一端が接続される。第2のコンデンサ22eの他端が二次コイル21b、第1のコンデンサ22a、第1の抵抗22bの各他端に接続される。
【0024】
第2の抵抗22dと第2のコンデンサ22eとが直列接続された両端と二次コイル21bの両端との間に介在する回路は整流回路を含む。
【0025】
図2に示す電圧検出装置20では、ダイオード22cにおけるカソード側の一端とダイオード22cが接続されていない他端との間には、第2の抵抗22dと第2のコンデンサ22eとが直列接続されており、第2のコンデンサ22eの両端を、検出信号生成部22の出力端子としている。換言すれば、第2のコンデンサ22eの両端、即ち、二次コイル21bと第1のコンデンサ22aと第1の抵抗22bと第2のコンデンサ22eとの接続点と、第2のコンデンサ22eと第2の抵抗22dとの接続点と、を検出信号生成部22の出力端子としている。
【0026】
このように、第2のコンデンサ22eの両端は、電圧検出装置20の出力端として検出器14に接続されている。第2のコンデンサ22eは電圧検出装置20からの出力波形を成形するものである。第2の抵抗22dは、電圧検出装置20における出力端子間が短絡しても電圧検出装置20内の回路に大電流が流れないように防ぐためのものである。
【0027】
検出信号生成部22の回路構成としては、図2に示す場合のみならず、例えば二次コイル21bに生じる電圧のピーク値を検出信号とするピーク保持回路を含んでいても良い。
【0028】
検出器14は、電圧検出装置20から出力される検出信号を検出する。検出器14には、この検出信号と変成器13における一次コイル13aに生じる電圧との大きさとの関係を考慮して変成器13が許容する電圧の範囲が設定されており、検出した値が許容範囲を超えるとインバータ11からの出力を抑制する制御信号を出力制御部15に対して出力する。一例を挙げると、検出器14には、変成器13に加わる電圧が過電圧となる上限が設定されており、検出信号がこの上限を超えたと判断すると、出力制御部15に対し、インバータ11からの出力を抑制する制御信号を出力する。
【0029】
出力制御部15は、検出器14から上述の制御信号が入力されると、インバータ11に対して出力を抑制するよう指令する。
【0030】
次に、図1に示す誘導加熱装置10において、電圧検出装置20により変成器13の一次側の電圧をモニターする方法について説明する。
【0031】
被加熱材となるワーク2の形状や大きさ、加熱処理される部位の形状、大きさに応じて、加熱コイル1の設計又は選定がなされる。この加熱コイル1を変成器13の二次コイル13bに並列接続する。
【0032】
この加熱コイル1を含めて変成器13及び整合器12がインバータ11の出力インピーダンスと整合している場合、インバータ11からの出力電圧を大きくすると、それに比例して加熱コイル1に電流が流れ、ワーク2に対して誘導加熱処理を施すことができる。
【0033】
一方、設計、選定した加熱コイル1のインピーダンスが高い場合、インバータ11からの出力電圧を大きくすると、変成器13の一次コイル13aに過電圧が印加される。電圧検出装置20がこの過電圧印加状態を検出信号として検出器14に入力して検知器14が検出すると、検出器14は出力制御部15に対して制御信号を出力する。出力制御部15はこの制御信号を受けると、インバータ11からの出力を抑制する。これにより、変成器13の過電圧状態を解消することができる。
【0034】
本発明の第1の実施形態によれば、一次コイル13aと二次コイル13bとの巻き数比に応じて一次コイル13aに印加される電圧に基いて二次コイル13bに電圧が生じる。例えば、変成器13における一次コイル13aと二次コイル13bとの巻き数比に基いて変成器13の一次側に印加される電圧の値を二次コイル13bに生じる電圧から検出することができる。特に、誘導加熱においては大きな電圧を変成器13の一次コイル13aに入力して変成器13により大きな電流に変換し、ワーク2に渦電流を生じさせるため、一次コイル13aの電圧を検出するよりも二次コイル13bの電圧を検出する方が良い。例えば、一次コイル13aに数千ボルトの電圧が生じている場合には二次コイル13bに数百ボルトの電圧が生じる。本発明の第1の実施形態では、一次コイル13aの電圧を直接検出しておらず、二次コイル13bの電圧を検出するので、検出用変成器21の耐圧を抑制することができる。
【0035】
また、誘導加熱装置10において設計、選定した加熱コイル1のインピーダンスが高い場合、インバータ11からの出力を大きくすると、検出用変成器21の一次コイル21aに大きな電圧が加わり、その値が二次コイル21bの出力電圧、すなわち検出信号生成部22から検出信号として出力される。
【0036】
例えば、図2に示す検出信号生成部22の回路構成の場合にあっては、整流回路が二次コイル21bに生じる電圧をダイオード22cで整流し、第2のコンデンサ22eで波形整形する。第2の抵抗22dが第2のコンデンサ22eのダイオード22c側に直列に接続されていることにより、電圧検出装置20の出力が短絡した場合に回路に大きな短絡電流が流れないように防止することができる。もちろん検出信号生成部22は単に二次コイル21bに生じる電圧の信号に含まれるノイズをカットするフィルタのみで構成してもよいし、ピーク検出回路のみで構成しても良い。このように、検出信号生成部22から出力された検出信号を検出器14でモニタリングし、検出器14により検出信号の波形についての属性を検出して検出信号の振幅やピーク値などが許容範囲を超えない限り、インバータ11の出力を続け、そうでない場合には出力制御部15を経由してインバータ11の出力を低下し、場合によっては、インバータ11の出力を停止する。これより、変成器13に過電圧が印加されている状態を解消することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、変成器13の一次コイル13aに加わる電圧が許容範囲内か否かについて次のように判断される。すなわち、変成器13の二次コイル13bに生じる電圧を検出用変成器21で取り出し、検出信号生成部22により必要に応じて所定の波形整形を行って検出信号として出力し、検出器14において検出信号が許容範囲内に収まっているか否かとして判断される。変成器13の一次コイル13aに加わる電圧と検出器14で検出する検出信号との関係は一対一に対応するので、検出器14から出力制御部15へ制御信号を出力する判断基準として、変成器13の一次コイル13aに加わる電圧の許容範囲を設定しておけば、変成器13における一次コイル13aの過電圧状態を解消することができる。
【0038】
ここで、図1に示すように、加熱コイル1とワーク2との接触を検知するコイルタッチ検出器16を設けておいても良い。コイルタッチ検出器16の内部構成としては、特許文献1及び2などで既に知られているので、説明を省略する。図1に示すように、コイルタッチ検出器16の一端を加熱コイル1の何処に接続しても、電圧検出装置20は、内部に変成器21を有しているため、加熱コイル1の両端の電圧をモニターすることができる。
【0039】
つまり、図1に点線で示すように、コイルタッチ検出器16の一端を加熱コイル1の両端から同じ距離となる点に取り付け、加熱コイル1と二次コイル13bとの並列接続に対して検出用変成器21を介在させずに検出信号生成部22や検出器14を並列接続した場合には、検出器14は加熱コイル1に生じる電圧の半分の大きさしかモニターされない。これに対し、本発明の第1の実施形態では、検出用変成器21を介在しているので、コイルタッチ検出器16の取付位置に左右されないで、加熱コイル1に生じる電圧をモニターすることができる。
【0040】
ところで、ワークを誘導加熱する際、第1の実施形態のように一つの周波数を有する電力で誘導加熱を生じさせる場合よりも、複数の周波数を有する交番電力で誘導加熱を生じさせることにより高精度な熱処理を実現することができる。本発明は、複数の周波数を用いた交番電力によりワークを誘導加熱する場合にも適用することができる。高い周波数と低い周波数の二つの電力を用いてワークを同一の処理で加熱することで、ワークの表面からの焼入れの深さを調整したり、焼入れパターンの最適化を行うことができる。
【0041】
複数の周波数を用いるタイプには各種考えられており、例えば、時間軸に対して低周波と高周波とを同時に重畳する重畳合成方式と、時間軸に交互に低周波数と高周波数とを切り替える時分割方式とがある。本発明の実施形態は何れのタイプでも適用することができる。これらの各方式の回路構成については、以下の各実施形態において説明することにする。
【0042】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示している。図3に示す誘導加熱装置30では時分割方式を採用しており、例えば一つの商用電源37を用いて低周波と高周波を短時間で交互に切り替え、低周波の電力による加熱と高周波の電力による加熱とを交互に行ってワーク2を熱処理する。回路構成としては、例えば、インバータ31の入力側が商用電源37に接続され、整合器32がインバータ31の出力側に接続され、変成器33が整合器32の出力側に接続され、変成器33には加熱コイル1が交換可能に接続されている。ここで、インバータ31には、交流を直流に切り替える順変換回路31aとこの順変換回路31aから出力される直流をパルスの電力に変換する逆変換回路31bと、出力制御部35からの指令に基いて順変換回路31aと逆変換回路31bとを制御する制御部31cと、が設けられている。
【0043】
第2の実施形態に係る誘導加熱装置30は、図1に示す誘導加熱装置10と比べて、インバータ31の構成以外に次の点で相違している。
【0044】
図3に示すように、整合器32は、第1のトランス32Aと第2のトランス32Bとが並列接続されて、変成器33に対して第1の周波数を有する電力と第2の周波数を有する電力とを交互に投入することができるように構成されている。例えば、第1のトランス32A及び第2のトランス32Bは何れも一次コイル32a,32eと二次コイル32b,32fとが結合して構成されている。第1のトランス32A、第2のトランス32Bの一次側には一つのインバータ31が接続される。第1のトランス32A、第2のトランス32Bの一次側でインバータ31との間には、一次コイル32a,32eの巻き数を変えるために、切り替え部32c,32hがそれぞれ設けられている。整合器32の出力端子は第1の周波数用と第2の周波数用にそれぞれ対応して設けられており、各出力端子と二次コイル32b,32fとの間には、第2の周波数、第1の周波数の電力が変成器33を経由して反射しないよう、第1のフィルタ32d、第2のフィルタ32gがそれぞれ介在している。第1のフィルタ32d、第2のフィルタ32gとは、変成器33及び加熱コイル1のインダクタンスとで共振回路を構成しても良い。
【0045】
変成器33は、一次コイル33aと二次コイル33bとが結合して構成されており、一次コイル33aには整合器32の各出力端子と並列接続されている。変成器33の一次側には一次コイル33aの巻き数を変更できるよう切り替え部33cが設けられていても良い。第1のトランス32A、第2のトランス32B、変成器33は、それぞれ入力側で、二次側との巻き数比率を変更することができる。
【0046】
加熱コイル1が、第1の実施形態と同様、変成器33の出力側である二次コイル33bに接続され、電圧検出装置20が加熱コイル1と二次コイル33bとに並列に接続され、電圧検出装置20から出力される検出信号を検出器34で検出し、第1の実施形態と同様、検出信号が許容範囲を超えると出力制御部35に対して制御信号を出力する。
【0047】
よって、一つの交番電力によりワーク2を誘導加熱する場合と同様、二周波でワーク2を誘導加熱する場合にも、変成器33の一次コイル33aに加わる電圧の状態をモニターして、過電圧が印加されている状態を解消することができ、変成器33を保護することができる。第2の実施形態の場合でもコイルタッチ検出器36の加熱コイル1への取付位置によらず、加熱コイル1の電圧を検出することができる。
【0048】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図4は本発明の第3の実施形態に係る誘導加熱装置を示す。第3の実施形態に係る誘導加熱装置40のうち図3に示す構成とは電圧検出装置50の点で異なり、その他については第2の実施形態と同様である。以下では相違点を説明する。
【0049】
電圧検出装置50は、検出用変成器51と検出信号生成部52を備える点で図2に示す構成と同様であるが、検出用変成器51の二次側端子と検出信号生成部52との間にローパスフィルタ53が挿入されている点で異なる。ローパスフィルタ53は例えばRC積分回路で構成されている。RC積分回路は、コンデンサ53aと抵抗53bとを直列接続したものを検出用変成器51の出力側に接続し、かつ、コンデンサ53aの両端が検出信号生成部52の入力端に接続されて、構成される。
【0050】
第3の実施形態について第2の実施形態と比較しながらさらに説明する。第3の実施形態においても、変成器33から異なる周波数、例えば高周波と低周波とが交互に加熱コイル1に出力される。よって、ワーク2が誘導加熱されると同時に、電圧検出装置50には異なる周波数の電圧信号が入力される。通常の焼入れ処理では、高周波の方が低周波と比べて電圧が高い。そのため、インバータ31からの出力を抑制する基準値として低周波の電圧レベルVf1を検出器34で設定すると、図2に示す電圧検出装置20が誘導加熱装置30に組み込まれている場合(図3参照)には、高周波の電圧信号に対応した検出信号が基準値より通常高くなるため、インバータ31からの出力が抑制される。つまり、低周波の電圧を基準としてインバータ31からの出力を抑制したい場合であっても、第2の実施形態では実現することができない。
【0051】
そこで、第3の実施形態では、ローパスフィルタ53が検出用変成器51と検出信号生成部52との間に設けられている。検出用変成器51からローパスフィルタ53には高周波と低周波の何れの電圧信号も入力されるが、ローパスフィルタ53において高周波が減衰し、この減衰した高周波の検出電圧より高い低周波の検出電圧が検出信号生成部52に入力される。よって、低周波の電圧を基準としてインバータ31からの出力を抑えたり、停止したりすることができる。
【0052】
つまり、第3の実施形態では、加熱コイル1が変成器33の出力側、すなわち二次コイル33bに接続され、電圧検出装置50が加熱コイル1と二次コイル33bと並列に接続され、電圧検出装置50から出力される検出信号を検出器34で検出する。電圧検出装置50内のローパスフィルタ53で高周波が減衰するので、電圧検出装置50から検出器34に対して、減衰した高周波の検出電圧よりも高い低周波の検出電圧が入力される。そこで、予め低周波の電圧を基準とした許容範囲が検出器34に予め設定されていることで、検出器34は、許容範囲から検出信号が外れていると判断した場合、出力制御部35に対して制御信号を出力する。よって、低周波の電圧を基準としてインバータ31からの出力を抑制することで、変成器33の絶縁破壊やコアの磁気飽和を回避することができる。
【0053】
よって、二周波でワーク2を誘導加熱する場合にも、変成器33の一次コイル33aに加わる電圧の状態をモニターして、過電圧が印加されている状態を解消することができ、整合器32や変成器33を保護することができる。第3の実施形態の場合でもコイルタッチ検出器36の加熱コイル1への取付位置によらず、加熱コイル1の電圧を検出することができる。
【0054】
図3及び図4に示す構成は、時分割方式の二周波による誘導加熱装置であるが、本発明は、重畳合成方式による二周波等の多周波による誘導加熱装置においても適用することができる。
【0055】
図5は第4の実施形態に係る誘導加熱装置60を示すものである。第4の実施形態に係る誘導加熱装置60では重畳合成方式を採用しており、例えば二つの商用電源67a,67bを用いて低周波と高周波との双方の電力により同時にワーク2を熱処理する。回路構成としては、例えば、高周波用インバータ61Aが一方の商用電源67aに接続され、低周波用インバータ61Bが他方の商用電源67bに接続され、高周波用整合器62Aが高周波用インバータ61Aの出力側に接続され、低周波用整合器62Bが低周波用インバータ61Bに接続され、変成器63の入力側に高周波用整合器62Aと低周波用整合器62Bが並列接続され、変成器63の出力側に加熱コイル1と電圧検出装置50が並列に接続されている。この回路構成によれば、時間軸上で低周波と高周波とが重ね合わされ、ワーク2を同時に熱処理する。
【0056】
高周波用インバータ61Aは、交流を直流に切り替える順変換回路61aと、順変換回路61aから出力される直流をパルスの電力に変換する逆変換回路61bと、出力制御部65からの指令に基いて順変換回路61a及び逆変換回路61bをそれぞれ制御する制御部61cと、を備えている。同様に、低周波用インバータ61Bは、交流を直流に切り替える順変換回路61dと、順変換回路61dから出力される直流をパルスの電力に変換する逆変換回路61eと、出力制御部65からの指令に基いて順変換回路61dと逆変換回路61eとを制御する制御部61dと、を備えている。高周波用インバータ61Aと低周波用インバータ61Bとを合わせてインバータが構成されている。
【0057】
変成器63は、高周波用整合器62Aと低周波用整合器62Bとに並列接続される一次コイル63aと、加熱コイル1と並列接続される二次コイル63bと、を含んでおり、一次コイル63aと二次コイル63bとの間に相互結合するための鉄心などを含んで構成されている。変成器63の一次側には一次コイル63aの巻き数を変更できるよう切り替え部63cが設けられていても良い。
【0058】
電圧検出装置50の構成は第4の実施形態で説明したものと同じ構成であり、検出用変成器51と検出信号生成部52とローパスフィルタ53とを備えている。検出用変成器51が変成器63の二次側と加熱コイル1との間に並列接続されて取り付けられ、検出信号生成部52が検出器64に接続される。検出器64は検出信号生成部52から検出信号が入力され、その検出信号が予め設定されている範囲を超えた場合には、出力制御部65に対して制御信号を出力する。
【0059】
第4の実施形態では、電源系統が二周波を出力して、変成器63で低周波と高周波とが重畳して合成され、加熱コイル1に出力される。よって、第3の実施形態と同様、ワーク2が誘導加熱されると同時に、電圧検出装置50には異なる周波数の電圧信号が入力される。この場合でも、電圧検出装置50内のローパスフィルタ53により高周波が減衰し、この減衰した高周波の検出電圧より高い低周波の検出電圧が検出信号生成部52を経由して検出器64に入力される。従って、検出器64は電圧検出装置50から出力される検出信号を検出する。その際、電圧検出装置50内のローパスフィルタ53で高周波が減衰するので、電圧検出装置50から検出器64に入力される検出信号は、減衰した高周波の検出電圧よりも高い低周波の検出電圧となる。そこで、検出器64は、低周波の電圧を基準として検出信号が許容範囲を超えていると判断した場合、出力制御部65に対して制御信号を出力する。
【0060】
よって、二周波でワーク2を誘導加熱する場合にも、変成器63の一次コイル63aに加わる電圧の状態をモニターして、過電圧が印加されている状態を解消することができ、高周波用整合器62A,低周波用整合器62B及び変成器63を保護することができる。第4の実施形態の場合でもコイルタッチ検出器66の加熱コイル1への取付位置によらず、加熱コイル1の電圧を検出することができる。
【0061】
以上の説明においては、電圧検出装置50では検出用変成器51と検出信号生成部52との間にローパスフィルタ53を介在させたが、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ等の他のフィルタを介在させることで、任意の周波数の電圧についてインバータの出力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:加熱コイル
2:ワーク
10,30,40,60:誘導加熱装置
11,31:インバータ 12,32:整合器
13,33,63:変成器
13a,21a,32a,32e,33a,63a:一次コイル
13b,21b,32b,32f,33b,63b:二次コイル
14,34:検出器 15,35,65:出力制御部
16,36,66:コイルタッチ検出器
17,37,67a,67b:商用電源
20,50:電圧検出装置
21,51:検出用変成器
22,52:検出信号生成部
22a:第1のコンデンサ
22b:第1の抵抗
22c:ダイオード
22d:第2の抵抗
22e:第2のコンデンサ
31a,61a,61d:順変換回路
31b,61b,61e:逆変換回路
31c,61c,61f:制御部
32A:第1のトランス
32B:第2のトランス
32c,32h,33c,63c:切り替え部
32d:第1のフィルタ
32g:第2のフィルタ
53:ローパスフィルタ
53a:コンデンサ
53b:抵抗
61A:高周波用インバータ
61B:低周波用インバータ
62A:高周波用整合器
62B:低周波用整合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変成器の二次側に加熱コイルが接続されており、該変成器の一次側に印加される電圧を検出する電圧検出装置であって、
上記変成器の二次側に対して上記加熱コイルと並列に接続される検出用変成器と、
上記変成器の一次側に印加される電圧の大きさに対応するよう上記検出用変成器からの信号を処理して検出信号として出力する検出信号生成部と、
を備える、電圧検出装置。
【請求項2】
前記検出信号生成部は、前記検出用変成器の二次側に接続され、かつ前記検出用変成器の二次側に生じる電圧の信号を整流する、請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記検出用変成器と前記検出信号生成部との間にはローパスパスフィルタが介在されている、請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項4】
二次側に加熱コイルを接続し得る変成器と、該変成器の一次側に整合器を介在して接続されるインバータと、該インバータの出力を制御する出力制御部と、を備える誘導加熱装置において、
上記変成器の二次側に上記加熱コイルと並列接続される検出用変成器と、
上記変成器の一次側に印加される電圧の大きさに対応するよう上記検出用変成器からの信号を処理して検出信号として出力する検出信号生成部と、
を備え、
上記検出信号生成部から出力された検出信号が所定の範囲を超えると、上記インバータからの出力を抑制する制御信号を上記出力制御部に対して出力することを特徴とする、誘導加熱装置。
【請求項5】
さらに、ワークに前記加熱コイルが接触しているか否かを検出するコイルタッチ検出器を備え、
上記コイルタッチ検出器における配線の前記加熱コイルへの取付箇所によらず、前記加熱コイルに生じる電圧を検出することを特徴とする、請求項4に記載の誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−134614(P2011−134614A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293454(P2009−293454)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】