説明

電子カムコントローラ

【課題】 サーボモータ等を使用することなく従軸制御の位置決め精度の向上を図る。
【解決手段】 エンコーダ3の主軸パルスa,bに基づいてクロック信号c等を生成する信号生成部10と、クロック信号cを方向信号dが示す方向に計数して分周比可変可能に分周して従軸パルスfとして出力する従軸パルス生成部20と、クロック信号c及び方向信号dに基づき従軸パルス生成部20の分周比を制御する分周比制御部30とを備える。分周比制御部30は、メモリ部32に予め記録されたカム曲線データKに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づき従軸パルス生成部20の分周比を制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定されたカム曲線データに基づいて駆動対象部を駆動して電気的にカム動作を実現する電子カムコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子カムコントローラについては、主軸に取り付けられたエンコーダの出力信号を予め設定されたカム曲線データに従って分周して従軸パルスを生成し、従軸のステッピングモータ等の駆動を制御する構成となっており、カム曲線データの設定を変更すれば異なったカム動作が実現されることから、カム機構を有した各種機械に多用されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−073003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例による場合、主軸が様々な要因でハンチングすると、実際の主軸の進み量に対して従軸の進み量に誤差が発生し、これに伴って従軸制御の位置決め精度が低下する。もっとも、サーボモータ等を使用して最適制御を行ったときは、ハンチングが少なくなり上記問題が緩和されるが、制御装置全体の構成が複雑化してコスト高になるという別の問題を招来する。
【0005】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであって、その主たる目的とするところは、サーボモータ等を使用することなく従軸制御の位置決め精度の向上を図ることが可能な電子カムコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電子カムコントローラは、主軸用エンコーダの主軸パルスに基づいて少なくともクロック信号を生成する信号生成部と、当該クロック信号を方向信号が示す方向に計数して分周比可変可能に分周し少なくとも当該信号を当該主軸パルスに同期した従軸パルスとして出力する従軸パルス生成部と、クロック信号及び方向信号に基づいて従軸パルス生成部の分周比を制御する分周比制御部とを備えている。特に分周比制御部は、クロック信号及び方向信号に基づいてデータ切替信号及びデータ切替方向信号を生成するタイミング制御部と、カム曲線を主軸移動量と従軸移動量との関係を用いて表したカム曲線データが予め記憶されたメモリ部と、前記メモリ部上のカム曲線データを前記データ切替方向信号が示す方向を切り替えつつ前記データ切替信号が示すタイミングで順次選択して出力する切替部と、前記切替部から出力されたカム曲線データに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づいて前記従軸パルス生成部の分周比を変化させる分周比調節部とを有している。タイミング制御部は、前記データ切替信号がアクティブになると以後の前記クロック信号を前記方向信号が示す方向に計数するアップダウンカウンタと、当該計数値が切替部から出力された主軸移動量の分だけ変化したタイミングをデータ切替信号として出力する一方、方向信号が変化した直後にデータ切替信号が最初にアクティブになったタイミングで方向が反転するデータ切替方向信号を出力する信号出力部とを有している。
【0007】
この発明によると、主軸用エンコーダの主軸パルスが入力されると、信号生成部にて主軸パルスに基づきクロック信号が生成され、従軸パルス生成部にて方向信号が示す方向にクロック信号が計数され分周され、この信号が従軸パルスとして生成される。従軸パルス生成部の分周比については、分周比制御部にて予め用意されたカム曲線データに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づいて制御される。
【0008】
よって、主軸の回転量を示す主軸パルスと主軸の回転方向を示す方向信号を用いて従軸パルスが生成され、予め用意されたカム曲線データに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づいて制御されることから、主軸が様々な要因でハンチングしたとしても、実際の主軸の進み量に対して従軸の進み量に誤差が発生せず、これに伴って従軸制御の位置決め精度が低くなることがなくなる。しかもサーボモータ等を使用しないことから、低コスト化と高性能化との双方を図ることが可能になるという効果がある。
【0009】
好ましくは、複数種のカム曲線データが予め記憶されたカム曲線データ記憶部と、カム形状の種類を切り替えるためのカム切替情報が入力される入力部と、カム曲線データ記憶部上のカム曲線データを入力部を通じて入力されたカム切替情報の通りに読み出してカムデータ要求信号が示すタイミングで前記メモリ部に転送し、前記メモリ部上のカム曲線データを更新させるカムデータ管理部とを備えた構成にすると良い。この場合、切替部について、メモリ部からカム曲線データの最終データが選択されたことを示すカムデータ要求信号を出力する機能を有する構成のものを用いる。
【0010】
この下位概念の発明によると、入力部を通じてカム切替情報が入力されると、カム曲線
データ記憶部からカム切替情報に従ってカム曲線データが読み出され、メモリ部上の記録内容がカムデータ要求信号が示すタイミングで上記カム曲線データに更新される。
【0011】
よって、カム動作を停止することなくカム形状を連続して変更することができ、作業効率が向上するだけでなく、利用範囲の拡大化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子カムコントローラのブロック図である。
【図2】同コントローラのメモリ部に記録されたカム曲線データを示すグラフである。
【図3】同コントローラの信号生成部及び従軸パルス生成部等の基本動作を説明するための主要信号のタイミングチャートである。
【図4】同コントローラの分周比制御部の主軸正転時の基本動作を説明するための主要信号のタイミングチャートである。
【図5】同コントローラの分周比制御部の主軸の逆転時の基本動作を説明するための主要信号のタイミングチャートである。
【図6】同コントローラの分周比制御部の主軸が逆転から正転に移行する際の基本動作を説明するための主要信号のタイミングチャートである。
【図7】同コントローラの変形例を説明するための分周比制御部の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る電子カムコントローラを図1乃至図6を参照して説明する。なお、特許請求の範囲に記載された発明特定事項と同電子カムコントローラの構成要素との間で対応関係が不明なものについては後記する符合の説明の欄において併せて示すものとする。
【0014】
ここに例として挙げる電子カムコントローラAは、図1に示すように主軸駆動用のステッピングモータ3に連結された光学式2相パルス出力型のエンコーダ4から出力された主軸パルスa,bを入力として従軸パルスf等を生成し、従軸駆動用のステッピングモータ5をドライバBを通じて駆動させ、従軸2を主軸1に同期して回転させる構成となっている。図中10は信号生成部、20は従軸パルス生成部、30は分周比制御部であり、各部により電子カムコントローラAが構成されている。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0015】
信号生成部10については、主軸パルスa(又は主軸パルスb)を所定逓倍してクロック信号c(図3等参照)を生成するとともに、主軸パルスaと主軸パルスbとの間の位相差を検出して方向信号d(図3等参照)を生成する回路構成となっている。なお、方向信号dがHレベルであるときには主軸1が正転、Lレベルであるときには主軸1が逆転していることを各々示している。
【0016】
従軸パルス生成部20については、クロック信号cを方向信号dが示す方向に計数して分周比可変可能に分周する可変分周器を主とした回路構成であり、従軸パルスf及び方向信号kを生成して出力するようになっている。クロック信号cを分周する分周比については分周比制御部30にて生成された信号oに基づいて制御される。
【0017】
従軸パルスfは従軸駆動用ステッピングモータ5の回転角度を制御するための信号であって、主軸パルスaに同期した信号(図3等参照)となっている。方向信号kはステッピングモータ5の回転方向を制御するための信号である。従軸パルスf及び方向信号kの生成方法については後述する。
【0018】
分周比制御部30については、クロック信号c及び方向信号dに基づいて信号oを生成して従軸パルス生成部20の分周比を制御する回路である。本実施形態においては、タイミング制御部31、メモリ部32、切替部34及び分周比調節部35から構成されている。
【0019】
タイミング制御部31については、後記するデータ切替信号iがアクティブになると以後のクロック信号cを方向信号dが示す正負の方向に計数を開始するアップダウンカウンタ311と、アップダウンカウンタ311の計数値が切替部34から出力された主軸移動量MAIN(n)の分だけ変化するとこのタイミングをデータ切替信号iとして出力する一方、方向信号dが変化した直後にデータ切替信号iが最初にアクティブになったタイミングで方向が反転するデータ切替方向信号jを出力する信号出力部312とを有している。
【0020】
アップダウンカウンタ311については、信号生成部10から出力されたクロック信号c及び方向信号dが入力される一方、切替部34から出力された主軸移動量MAIN(n)に係る信号である主軸移動量データhが入力され、リセット/セット入力にはデータ切替信号iが入力されている。アップダウンカウンタ311の計数値はカウントデータgとして信号出力部312に出力されている。アップダウンカウンタ311の具体的な動作を図4乃至図6を参照して説明する。
【0021】
方向信号dがHレベルであるときにはクロック信号cの入力毎にカウントアップし、データ切替信号iがアクティブになる度にリセットされる。その後、図5に示すように方向信号dがHレベルからLレベルに変化したときは、その時点でカウントアップからカウントダウンに変化し、データ切替信号iがアクティブになるタイミングで主軸移動量データhがセットされる。そして、図6に示すように方向信号dがLレベルからHレベルに変化したときは、その時点でカウントダウンからカウントアップに変化する。以後は上記した動作の繰り返しである。
【0022】
信号出力部312については、アップダウンカウンタ311から出力されたカウントデータgと切替部34から出力された主軸移動量データhとを比較する比較器を主とした回路であり、その比較結果及び方向信号dに基づいてデータ切替信号i及びデータ切替方向信号jを生成する構成となっている。信号出力部312の具体的な動作を図4乃至図6を参照して説明する。
【0023】
データ切替信号iが所定期間アクティブ(本実施形態ではHレベル)になるのは、方向信号dがHレベルである状態では、カウントデータgが主軸移動量MAIN(n)に等しくなった時点(例えば、図4で示すt0、t1、t2、図6で示されたt8等)であり、方向信号がLレベルである状態では、カウントデータgの値が0に等しくなった時点(例えば、図5で示すt4、t5等)である。方向信号dがHレベルからLレベルに反転するのは、方向信号dがHレベルからLレベルに変化した直後にデータ切替信号iが最初にアクティブになった時点(例えば、図5で示すt4等)であり、方向信号dがLレベルからHレベルに反転するのは、方向信号dがLレベルからHレベルに変化した直後にデータ切替信号iが最初にアクティブになった時点(例えば,図6で示すt8等)である。このようなデータ切替信号i及びデータ切替方向信号jがアップダウンカウンタ311の他、切替部34のデータ制御部341に導かれている。
【0024】
メモリ部32については、カム曲線を主軸移動量と従軸移動量との関係を用いて表したカム曲線データKが予め記録された記憶部である。本実施形態においては、複数のレジスタを用いている。カム曲線データKについては、主軸移動量MAIN(n)と従軸移動量SUB(n)(n=1,2・・・α・・β: 1≦α<β)とのβ個のデータ対の集合であり、各データ対が後述するマルチプレクサ342により選択出力可能になっている。主軸移動量MAIN(n)及び従軸移動量SUB(n)については、主軸上、従軸上の各所定区間毎に始点と終点の変位量を正負の数値で各々表されている。図2にはカム曲線の一例を示している。メモリ部32に記録されたカム曲線データKは、主軸移動量MAIN(1) と従軸移動量SUB(1)、主軸移動量MAIN(2) と従軸移動量SUB(2),・・・・,主軸移動量MAIN(β)と従軸移動量SUB(β)の各データ対がカム曲線に沿って順番に配列されたデータ群となっている。
【0025】
切替部34については、データ制御部341及びマルチプレクサ342を有し、メモリ部32上のカム曲線データKに含まれる上記データ対をデータ切替方向信号jが示す方向に順次切り替えつつデータ切替信号iが示すタイミングで順次選択して出力するようになっている。
【0026】
例えば、メモリ部32上のカム曲線データKのうち切替部34により現在選択されているデータ対が主軸移動量MAIN(1)及び従軸移動量SUB(1)であるとする。データ切替方向信号jがHレベルである状態では、データ切替信号iがアクティブとなる毎にメモリ部32から主軸移動量MAIN(2)及び従軸移動量SUB(2)、主軸移動量MAIN(3)及び従軸移動量SUB(3)・・・が順次的に選択され出力される。データ切替信号iがアクティブにならなくてもデータ切替方向信号jがLレベルからHレベルに変化すると、このタイミングでメモリ部32上のカム曲線データKに含まれるデータ対の選択出力が上記と全く同様に切り替わる。なお、カム曲線データKの最終データである主軸移動量MAIN(β)及び従軸移動量SUB(β)が選択出力されると、その後は、再び元に戻り主軸移動量MAIN(1)及び従軸移動量SUB(1)が選択出力可能となっている。
【0027】
また、メモリ部32上のカム曲線データKのうち切替部34により現在選択されているデータ対が主軸移動量MAIN(β)及び従軸移動量SUB(β)であるとする。データ切替方向信号jがLレベルである状態では、データ切替信号iがアクティブとなる毎にメモリ部32から主軸移動量MAIN(β−1)及び従軸移動量SUB(β−1)、主軸移動量MAIN(β−2)及び従軸移動量SUB(β−2)・・・が順次的に選択され出力される。データ切替信号iがアクティブにならなくてもデータ切替方向信号jがHレベルからLレベルに変化すると、このタイミングでメモリ部32上のカム曲線データKに含まれるデータ対の選択出力が上記と全く同様に切り替わる。なお、カム曲線データKの最終データである主軸移動量MAIN(1)及び従軸移動量SUB(1)が選択出力されると、その後は、再び元に戻り主軸移動量MAIN(β)及び従軸移動量SUB(β)が選択出力可能となっている。
【0028】
データ制御部341については、データ切替信号i及びデータ切替方向信号jを入力としたn(メモリ部32に記録されたカム曲線データKに含まれるデータ対の個数に等しい値に設定)進カウンタである。即ち、データ切替方向信号jがHレベルである状態でデータ切替信号iがアクティブになると、その度にカウントアップされる。一方、データ切替方向信号jがLレベルである状態でデータ切替信号iがアクティブになると、その度にカウントダウンされる。このようなカウント値がデータ選択信号qとしてマルチプレクサ342の選択入力に出力されている。
【0029】
マルチプレクサ342については、メモリ部32上のカム曲線データKをデータ選択信号qに従って選択する選択器であり、選択されたカム曲線データKを従軸パルス生成部20及び信号出力部312に出力している。例えば、データ選択信号qがカウント値1を示しているときには、マルチプレクサ342によりメモリ部32上のカム曲線データKから主軸移動量MAIN(1)及び従軸移動量SUB(1)が選択して出力される。また、データ選択信号qがカウント値2を示しているときには、マルチプレクサ342によりメモリ部32上のカム曲線データKから主軸移動量MAIN(2)及び従軸移動量SUB(2)が選択して出力される。
【0030】
マルチプレクサ342から出力された主軸移動量MAIN(n)に係る信号を主軸移動量データhとして表し、従軸移動量SUB(n)に係る信号を従軸移動量データeとして表している。主軸移動量データhについては信号出力部312に出力され、主軸移動量データhと従軸移動量データeの双方については分周比調節部35に出力される。
【0031】
分周比調節部35については、切替部34から出力されたカム曲線データKに含まれる主軸移動量MAIN(n)と従軸移動量SUB(n)との比率(SUB(n)/MAIN(n)を演算し、この比率に基づいて従軸パルス生成部20の分周比を変化させるための信号oを生成する構成となっている。
【0032】
従軸パルス生成部20については、上記したように主軸パルスfを生成する他に、方向信号c及び従軸移動量SUB(n)に基づいて方向信号kを生成している。即ち、方向信号cが正転を示す状態で、従軸移動量SUB(n)が正値を示すときには方向信号kをHレベル(正転)とし、従軸移動量SUB(n)が負値を示すときには方向信号kをLレベル(逆転)としている。一方、方向信号cが逆転を示す状態で、従軸移動量SUB(n)が正値を示すときには方向信号kをLレベル(逆転)とし、従軸移動量SUB(n)が負値を示すときには方向信号kをHレベル(正転)としている。
【0033】
このようにして生成された主軸パルスf及び方向信号kがドライバBに出力され、ドライバBにて従軸駆動用のステッピングモータ5の各相励磁信号が生成される。
【0034】
上記のように構成された電子カムコントローラAの動作を図3乃至図6を参照して説明する。
【0035】
主軸1がステッピングモータ3により回転し、これに応じてエンコーダ4から主軸パルスa,bが入力される。主軸パルスa,bの入力に従って図3に示すようにクロック信号c及び方向信号dが作成されクロック信号cが分周され、その結果、従軸パルスfが生成される。クロック信号cの分周比はメモリ部32上のカム曲線データKに含まれる主軸移動量MAIN(n)と従軸移動量SUB(n)との比率に比例し、これに応じて従軸パルスfのパルス幅が変化する。このような従軸パルスf等がドライバBに出力され、ドライバBにて各相励磁信号が作成され、これに伴ってステッピングモータ5が駆動する。その結果、従軸2が主軸1に同期して回転する。従軸パルスfの作成に不可欠な主軸移動量MAIN(n)と従軸移動量SUB(n)については以下のようにして作成される。
【0036】
まず、図4に示すように方向信号dがHレベルである状態において、アップダウンカウンタ311が時間t0からクロック信号cの入力の度にカウントアップする。このカウントアップされている間、メモリ部32上のカム曲線データKのうちマルチプレクサ342にて選択出力されているデータ対は、主軸移動量MAIN(α)及び従軸移動量SUB (α)である。その後、アップダウンカウンタ311のカウント値がマルチプレクサ342から出力されている主軸移動量MAIN(α)の値‘l’に一致すると、時間t1でデータ切替信号iがアクティブとなる。これに伴ってアップダウンカウンタ311がリセットされ、マルチプレクサ342にて選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(α)及び従軸移動量SUB (α)から主軸移動量MAIN(α+1 )及び従軸移動量SUB (α+1 )に変化する。
【0037】
アップダウンカウンタ311が時間t1からクロック信号cの入力の度にカウントアップされ、アップダウンカウンタ311のカウント値がマルチプレクサ342から出力されている主軸移動量MAIN(α+1)の値‘m’に一致すると、時間t2でデータ切替信号iがアクティブとなる。これに伴ってアップダウンカウンタ311がリセットされ、マルチプレクサ342から出力される選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(α+1)及び従軸移動量SUB (α+1)から主軸移動量MAIN(α+2)及び従軸移動量SUB (α+2)に変化する。
【0038】
その後、図5に示すように時間t3にて方向信号dがHレベルからLレベルに変化すると、アップダウンカウンタ311がクロック信号cの入力の度にカウントダウンする。このときのマルチプレクサ342から選択出力されるデータ対が主軸移動量MAIN(β)及び従軸移動量SUB (β)であると仮定する。アップダウンカウンタ311が時間t4にてアンダーフローすると、データ切替方向信号jがHレベルからLレベルに変化し、マルチプレクサ342から選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(β)及び従軸移動量SUB (β)から主軸移動量MAIN(β−1)及び従軸移動量SUB (β−1)に変化する。と同時に、アップダウンカウンタ311が主軸移動量MAIN(β−1)の値‘l’にセットされる。
【0039】
アップダウンカウンタ311が時間t4からクロック信号cの入力の度にカウントダウンされ、時間t5で各々アンダーフローすると、データ切替信号iがアクティブとなり、マルチプレクサ342から選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(β−1)及び従軸移動量SUB (β−1)から主軸移動量MAIN(β−2)及び従軸移動量SUB (β−2)に変化する。図6に示す時間t6でも全く同様である。マルチプレクサ342から選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(β−2)及び従軸移動量SUB (β−2)から主軸移動量MAIN(β−3)及び従軸移動量SUB (β−3)に変化する。
【0040】
その後、時間t7にて方向信号dがLレベルからHレベルに変化すると、アップダウンカウンタ311がクロック信号cの入力の度にカウントアップし、アップダウンカウンタ311がオーバーフローすると、データ切替方向信号jがLレベルからHレベルに変化する。マルチプレクサ342から選択出力されるデータ対が、主軸移動量MAIN(β−3)及び従軸移動量SUB (β−3)から主軸移動量MAIN(β−2)及び従軸移動量SUB (β−2)に変化する。これ以後の動作については上記と全く同様である。
【0041】
このような電子カムコントローラAを用いた場合、主軸1の回転停止等の際に主軸1がハンチングしたとしても、主軸1の進み量に対して従軸2の進み量に誤差が発生せず、これに伴って従軸制御の位置決め精度が低くなることがなくなる。しかも非常にシンプルな構成となっているので、低コスト化及び高性能化を図ることが可能になる。
【0042】
次に、電子カムコントローラAの変形例を図7を参照して説明する。この変形例は、図1に示す分周比制御部30の構成に図7に示す入力部36、カム曲線データメモリ部37及びカム曲線データ管理部38が追加された内容になっている。
【0043】
ただ、分周比制御部30のデータ制御部341については上記と若干異なっている。即ち、データ制御部341は、上記したデータ切替信号i及びデータ切替方向信号jに基づいてデータ選択信号qを作成する機能に加えて、メモリ部32からカム曲線データKの最終データが選択されたことを示すカムデータ要求信号mを出力する機能を有している。ここで言うカム曲線データKの最終データとは、データ切替え方向信号jがHレベルであるときには主軸移動量MAIN(β)と従軸移動量SUB(β)のデータ対であり、データ切替方向信号jがLレベルであるときには主軸移動量MAIN(1)と従軸移動量SUB(1)のデータ対を指している。
【0044】
カム曲線データメモリ部37については、n種類のカム曲線データK1,K2・・・Knが予め記憶されている。カム曲線データK1は、カム形状を示す主軸移動量MAIN(n)と従軸移動量SUB(n)のデータ対の他、当該カム形状の特定情報、当該データ対の個数、当該データ対のメモリアドレス等の情報を含んでいる。カム曲線データK2・・・Knについても全く同様である。
【0045】
入力部36については、カム動作を切り替えるための外部信号入力端子又はスイッチ等である。具体的には、当該カム動作に係るカム形状の特定情報(カム曲線データK1,K2・・・Knの一を特定する情報)、順番(特定されたカム曲線データK1等を読み出す順番)及び回数(実現される基本カム動作の繰り返し回数)等を示すシーケンスデータが入力可能であり、入力されたシーケンスデータをカム切替信号pとして出力するようになっている。
【0046】
カム曲線データ管理部38については、カム曲線データメモリ部37に対するデータ再生回路とメモリ部32に対するデータ記録回路とを併有した回路部である。即ち、カム曲線データ記憶部37上のカム曲線データK1,K2・・・Knを入力部36を通じて入力されたカム切替信号pに係るシーケンスデータが示す通りに読み出し、カム曲線データK1等をカムデータ要求信号mが示すタイミングでメモリ部32にデータバスnを通じて転送し、メモリ部32上の記録内容を更新させるようになっている。
【0047】
この変形例による場合、入力部36を通じてシーケンスデータが入力されると、メモリ部32の記録内容が上記シーケンスデータが示す通り随時更新されることから、実現されるカム動作を停止することなく連続して変更することができる。よって、作業効率が向上するだけでなく、利用範囲の拡大化を図ることが可能になる。
【0048】
なお、本発明に係る電子カムコントローラは、主軸及び従軸の機構としての種類、従軸
の数、駆動モータの種類、主軸用エンコーダの種類等が上記実施形態に限定されない。主
軸用エンコーダの出力信号に方向信号が含まれているときは、この方向信号を利用すれば良い。また、分周比制御部等の機能をマイクロコンピュータを用いて実現してもかまわない。
【0049】
特に、信号生成部については、従軸パルスの生成に必要な少なくともクロック信号を生成する機能を有する限り、出力形態や逓倍比等が限定されず、主軸用エンコーダから出力された主軸パルスをそのままクロック信号として活用する形態であっても良い。
【0050】
メモリ部については、一般的なメモリを使用しても良く、切替部又はデータ制御部に応じてカム曲線データが読み出される形態でもかまわない。カム曲線データについては、主軸移動量と従軸移動量との関係が直接的又は間接的に示される形態であればどのような内容でも良く、例えば、主軸移動量と主軸速度に対する従軸速度の速度割合とのデータ対である場合、従軸移動量(主軸移動量×主軸速度に対する従軸速度の速度割合)の演算を行うようにすると、主軸移動量と従軸移動量とのデータ対に変換することが可能である。また、各区間(主軸/従軸の各移動量の区間)、当該区間で使用するカム曲線(正弦、サイクロイド、カム曲線等)の種類とのデータ対である場合、カム曲線を表す演算式を用いた演算により主軸移動量と従軸移動量とのデータ対に変換することも可能である。これは、カム曲線データメモリ部についても全く同様である。即ち、カム曲線データメモリ部に記録されたカム曲線データをカム曲線データ管理部にて読み出し、主軸移動量と従軸移動量とのデータ対に変換する形態であっても良い。
【0051】
切替部については、メモリ部上のカム曲線データをデータ切替方向信号が示す方向を切り替えつつデータ切替信号が示すタイミングで順次選択して出力する機能を有する限り、メモリ部や切替部に応じて適宜設計変更すれば良い。
【0052】
タイミング制御部については、データ切替信号がアクティブになると以後のクロック信号を方向信号が示す方向に計数するとともに、この計数値が切替部から出力された主軸移動量の分だけ変化したタイミングをデータ切替信号として出力する一方、方向信号が変化した直後にデータ切替信号が最初にアクティブになったタイミングで方向が反転するデータ切替方向信号を生成する機能を有する限り、適宜設計変更してもかまわない。
【0053】
分周比調節部については、切替部から出力されたカム曲線データに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づいて従軸パルス生成部の分周比を変化させる機能を有する限り、適宜設計変更してもかまわない。
【符号の説明】
【0054】
A 電子カムコントローラ
10 信号生成部
20 従軸パルス生成部
30 分周比制御部
31 タイミング制御部
311 アップダウンカウンタ
312 信号出力部
32 メモリ部
K カム曲線データ
34 切替部
35 分周比調節部
36 入力部
37 カム曲線データメモリ部
38 カム曲線データ管理部
B ドライバ
1 主軸
2 従軸
3 ステッピングモータ(主軸用のステッピングモータ)
4 エンコーダ(主軸用エンコーダ)
5 ステッピングモータ(従軸用のステッピングモータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸用エンコーダの主軸パルスに基づいて少なくともクロック信号を生成する信号生成部と、当該クロック信号を方向信号が示す方向に計数して分周比可変制御可能に分周し少なくとも当該信号を当該主軸パルスに同期した従軸パルスとして出力する従軸パルス生成部と、前記クロック信号及び方向信号に基づいて従軸パルス生成部の分周比を制御する分周比制御部とを備え、分周比制御部は、前記クロック信号及び方向信号に基づいてデータ切替信号及びデータ切替方向信号を生成するタイミング制御部と、カム曲線を主軸移動量と従軸移動量との関係を用いて表したカム曲線データが予め記憶されたメモリ部と、前記メモリ部上のカム曲線データを前記データ切替方向信号が示す方向を切り替えつつ前記データ切替信号が示すタイミングで順次選択して出力する切替部と、前記切替部から出力されたカム曲線データに含まれる主軸移動量と従軸移動量との比率に基づいて前記従軸パルス生成部の分周比を変化させる分周比調節部とを有し、前記タイミング制御部は、前記データ切替信号がアクティブになると以後の前記クロック信号を前記方向信号が示す方向に計数するアップダウンカウンタと、当該計数値が前記切替部から出力された主軸移動量の分だけ変化したタイミングをデータ切替信号として出力する一方、前記方向信号が変化した直後に前記データ切替信号が最初にアクティブになったタイミングで方向が反転するデータ切替方向信号を出力する信号出力部とを有していることを特徴とする電子カムコントローラ。
【請求項2】
前記切替部は、前記メモリ部からカム曲線データに含まれる最終データが選択して出力されたことを示すカムデータ要求信号を生成する機能を有した場合の請求項1記載の電子カムコントローラにおいて、複数種のカム曲線データが予め記憶されたカム曲線データ記憶部と、カム曲線の種類を切り替えるためのカム切替情報が入力される入力部と、カム曲線データ記憶部上のカム曲線データのうち前記入力部を通じて入力されたカム切替情報に対応したカム曲線データを読み出してカムデータ要求信号が示すタイミングで前記メモリ部に転送するとともに前記メモリ部の記憶内容を更新させるカムデータ管理部とを備えることを特徴とする電子カムコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221850(P2011−221850A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91415(P2010−91415)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(591124330)マイコム株式会社 (18)
【Fターム(参考)】