説明

電子カメラ

【課題】撮影者による撮影指示動作に対して生じる、撮影処理及び記録タイミングの遅れを補償する。
【解決手段】制御部107は、所定の操作によって撮影準備動作を開始し先行撮影し、メモリ200に、撮影指示の前に連続的に複数の画像取り込みを行わせる。EVF用液晶パネル200は、前記取り込まれた画像に基づき作成された表示画像を、ファインダ画像として表示する。前記撮影指示を受けときに前記EVF用液晶パネル200により表示出力されているファインダ画像と同一タイミングに取り込まれた画像を、メモリ200から取出しメモリカード400に記録する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば固体撮像素子(CCD)を用いた電子カメラに関するもので、特にユーザが操作する撮影タイミングと撮影した映像データの処理時間との時間的なずれを補償することができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】近年の電子カメラにおいては、半導体技術の進歩によりDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリ)等の低価格化、画像処理プロセッサの高速化により、高速かつ十分な枚数の連写が可能な電子カメラが提供されるようになっている。
【0003】しかしながら、たとえ連写速度が速くなり、連写可能な枚数が多くなっても、撮影者の撮影タイミングが間に合わない場合には、意図する画像を取得できない(人的要因による遅れ)。また、撮影タイミングが合っていると思った場合でも、カメラの露出や、CCDの画像読み出しタイミングの遅れにより、撮影開始時点が撮影者の意図したタイミングよりも後ろにずれることも多い(ハードウエア的要因による遅れ(以下、ハードウエア遅れという))。
【0004】また、近年覗き込みファインダや背面の再生表示用液晶パネルからEVF(電子ビューファインダ)画像を表示させ、ユーザは、このEVF表示を見ながら撮影操作を行う電子カメラも増えている。しかしながら、EVF画像は、一度、露出及びCCD読出し処理等を行った後の画像を表示しているため、このようなカメラでは上記ハードウエア的要因による遅れの影響がますます大きくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような事情から本出願人は、撮影者が望む画像を確実に取得できるようにするため、いわゆるシャッタタイミングとなるセカンドレリーズ前から次々と画像取り込みを開始し、記録することができる先行撮影の技術を考えている。そしてシャッタタイミングにもっとも近い時点の画像を選択できるようにするのである。
【0006】しかしながら、先行撮影技術は、セカンドレリーズに対応するハードウエア遅れを防止するものではなく、単にセカンドレリーズよりも前のタイミングの画像を保険として取得しておくにすぎない。一方で、先行撮影技術では一度のレリーズで多数の画像を記録することになるので、メモリカード等の記録媒体の容量が少ない場合にはその利用が困難となることがある。
【0007】したがって、セカンドレリーズに対するハードウエア遅れを本質的に防止し、単写や通常の連写の場合であっても、ハードウエア的要因による撮影タイミングの遅れが生じることのない技術が求められる。
【0008】本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、撮影者による撮影指示動作に対して生じる、撮影処理及び記録タイミングの遅れを補償することができる電子カメラを提供することをその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的を達成するために、所定の操作によって撮影準備動作が開始されるとともに、少なくとも前記撮影準備動作開始後の撮影指示に対応して撮像画像が記録される半導体撮像素子を用いた電子カメラにおいて、前記半導体撮像素子により撮像された画像を複数枚保持可能な画像保持部と、前記撮影準備動作の完了後であって前記撮影指示の前に連続的な画像取り込みを開始させ、前記画像保持部に撮影画像を保持させる撮影制御手段と、前記撮影制御手段により取り込まれた画像に基づき作成された表示画像を、ファインダ画像として表示出力する電子ビューファインダ表示手段と、前記撮影指示を受けたときに前記電子ビューファインダ表示手段により表示出力されているファインダ画像と同一タイミングに取り込まれた画像を、前記画像保持部から取出し記録媒体に記録する記録制御手段とを備えるものである。
【0010】これにより、次のようなことが得られる。即ち、セカンドレリーズに対するタイミング遅れには、撮影者の反応遅れとカメラの撮影処理に基づく遅れ(ハードウエア遅れ)がある。本発明は、このうちハードウエア遅れをなくすものである。このためにまず最終的な画像として記録され得る画像を一旦バッファに格納し、このバッファ内画像から電子ビューファインダ(EVF)画像を生成表示するようにする。さらにセカンドレリーズに対応して、撮影処理(CCD露出、出力、A/D等)を行うのではなく、予めバッファに蓄えられた画像の中からタイミングの合うものを選択して記録媒体(スマートメディア)に記録する。このようにすれば、上記したハードウエア遅れを全くなくすことができる。
【0011】またこの発明では、取り込み画像を画像処理する画像処理手段を備え、前記撮影制御手段は、前記取り込み画像を前記画像処理手段に処理させて、前記画像保持部にその処理画像を保持させるものである。従って、前記電子ビューファインダ表示手段により表示される表示画像は、前記画像保持部に保持されている画像から生成される。
【0012】またこの発明では、前記撮影制御部は、前記撮影指示が連写指示である場合には、連続的な画像取り込み及び画像処理並びに前記画像保持部への保持動作を継続させることによりに連続撮影を実現するとともに、前記記録制御手段は、前記撮影指示が連写指示である場合には、前記電子ビューファインダ表示手段により表示出力されている画像を先頭画像として連写記録を行うことができる。これにより、撮影タイミングのずれに対しても、撮影指示後の画像を記録することができ、当該ずれをカバーできることになる。
【0013】またこの発明では、前記記録制御手段は、前記撮影指示に対応して前記記録媒体に記録される画像を基準画像とするときに、当該基準画像よりも前に前記画像保持部に保持された画像も前記記録媒体に記録することができる。これにより、セカンドレリーズを基準として、それ以前の画像をも記録する、いわゆる先行撮影を行うことで、シャッタタイミングが遅れても確実に欲しい画像を取得できることになる。
【0014】またこの発明では、前記撮影制御手段は、前記画像保持部に撮影画像保持用の空き領域がない場合には、最新の撮影画像を最も古い撮影画像に上書きさせるよう制御することができる。これにより、先行連写を安定して実現させることになる。
【0015】又この発明では、前記電子ビューファインダ表示手段は、前記半導体撮像素子により撮像された画像をそのままファインダ表示用に画像処理させて作成した第1の表示画像と、前記画像保持部に保持される前記画像処理された画像に基づいて作成された第2の表示画像とのうち、予め設定された何れか一方をファインダ画像として表示出力するとともに、前記第1の表示画像に対応して前記撮影指示が出された場合には、前記撮影制御手段は前記撮影指示の後に前記記録媒体に対して記録可能な状態に画像取り込み及び画像処理を開始させ、前記記録制御手段は前記撮影指示の後に画像取り込み及び画像処理された画像を前記記録媒体に記録することができる。
【0016】これにより、電子ビューファインダを覗いての撮影に関して、セカンドレリーズタイミングに合致した通常の撮影画像取り込みと、上述したセカンドレリーズタイミングの撮影タイミングずれを補償した撮影画像取り込みとを選択的に利用できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0018】図1はこの発明の電子カメラの全体的な構成を示すブロック図である。図1において、被写体からの光束がレンズ系11を介してCCD12に入射され、CCD12の各素子に電荷が蓄積される。
【0019】CCD12には、撮像プロセス部13が接続されている。撮像プロセス部13によって、CCD12から読み出した信号が画像としての信号に変換される。ここで、CCD12からのデータ読み出しタイミングは、タイミング生成器15によって生成される。この読み出しタイミング制御により読み出し画素数を変えることも可能である。16は、レンズ系を制御するための自動アイリス(AE),自動フォーカス(AF)部(以下AEAF部と示す)であり、後述するシステムコントローラ300から制御信号を与えられる。
【0020】上記の撮像プロセス部13からの出力は、アナログデジタル(A/D)変換器14でデジタル信号に変換され、撮影処理プロセッサ100のデータバス101を介してDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリ)からなるメモリ200の作業領域201に格納される。
【0021】撮影処理プロセッサ100は、データバス101に、A/D変換器14とのインターフェース102、画像処理部103、圧縮伸長部104、記録/再生インターフェース105及び表示制御部106が接続され、さらに、撮影処理並びに記録再生処理を制御する制御部107が設けられて構成される。
【0022】なおデータバス101は、メモリ200及びシステムコントローラ300に対しても図示しないインターフェースを介して接続される。
【0023】メモリ200の作業領域201に格納された画像は、画像処理部103によって、絵作りが施され、さらに圧縮伸長部104により圧縮処理(例えばJPEG方式による圧縮処理)されて、メモリ内の撮影画像保持領域202に格納される。この保持領域202は、圧縮後の画像を一時的に格納するものであり、n枚の画像を記録可能に構成される。この記録可能枚数は、画素数及び圧縮率で決まる画質により異なってくる。この領域では、最も古い画像の上に最新の画像が順次上書きされるようになっている。
【0024】撮影画像保持領域202に記録された画像は、そのまま記録/再生インターフェース105を介し、フラッシュメモリを用いた着脱可能なメモリカード400に格納される。このメモリカード400としては、光磁気ディスクや磁気ディスク等の他の記録媒体を用いてもよい。
【0025】メモリカード400に記録された画像は、操作キー502による操作に従い、記録/再生インターフェース105を介してメモリカード400から読み出されて表示可能である。このとき、読み出し画像はメモリ200の作業領域201に一旦格納された後、圧縮伸長部104により伸長され、さらに表示制御部106によりカメラ背面の表示用液晶パネル(TFTパネル)600に供給されてから表示出力される。
【0026】なお、画像処理部103は、色マトリックス処理、ホワイトバランス処理、カラー処理、ガンマ補正、シャープネス調整等を行う。
【0027】また、画像処理部103は、入力される画像を動画像処理し、表示制御部131を介してEVF用の画像としてEVF用液晶パネル132に提供する。このEVF表示用の画像の処理には2種類がある。
【0028】まず、第1は、最初からEVF用の画像としてタイミング生成器15により読み出されたスルー画像をそのままEVF表示用の画像に処理する場合(通常のEVF)と、第2は、記録撮影画像として一旦撮像画像保持領域202に保持された画像をEVF表示用の画像に変換して出力する場合(先行記録EVF)とである。後者の場合(先行記録EVF)には画像の間引き処理等が必要である。
【0029】また、圧縮伸長部104は、指定画質に対応した圧縮率で圧縮処理を実行する。画質は、タイミング生成器15によって決まる読み出し画像の画素数と圧縮伸長部104による圧縮率で決まる。
【0030】EVF用液晶パネル132は、本カメラに設けられる覗き込み型EVF表示用液晶である。このEVF(電子ビューファインダ)は、OVF(光学的ビューファインダ)に代えて設けられる。なお表示用液晶パネル600は、カメラ背面に設けられる大型の液晶である。これら各液晶パネル132、600は、取り付け位置、サイズ、主たる使用目的には相違はあるが、双方ともEVF表示や記録画像再生表示が可能となっている。
【0031】データバス101に接続されたAE/AF処理部130は、取り込んだ信号の状態を監視して、アイリス制御情報、フォーカス制御情報を生成するもので、この制御情報は、システムコントローラ300のAE/AF制御部301に取り込まれる。AE/AF制御部301は、制御情報に基づいて露出のための絞り制御及び合焦のためのフォーカスレンズ制御を行うとともに、露出終了及び合焦終了の旨を先行撮影通知部302に通知する。
【0032】なお、CCD12からの画像信号を低画素数で読み出す場合には、タイミング生成器15はCCD12の全ラインを読み出さないで、画素数に対応するようにラインをとばして読み出すようにタイミングを生成する。また、飛ばし読み出しを行っても縦方向の画素数は減らないので、縦方向については、画像処理部103において加算平均を行って画素数を減らすようにしている。したがって、画質制御は、タイミング生成器15、画像処理部103及び圧縮伸長部104への制御によって実現されることになる。
【0033】制御部107は、タイミング生成器15、撮像プロセス部13、A/D変換器14、画像処理部103、メモリ200、圧縮伸長部104などを制御することで撮影全体の処理を管理する。
【0034】また、メモリ200、圧縮伸長部104、記録/再生インターフェース105、表示制御部106等を制御することで画像の記録及び再生処理を管理する。また、通常の単写撮影や連写撮影のみならず、先行モード撮影(先行連写)を実現する。
【0035】また、この装置では、制御部107にEVF制御部134が設けられているが、このEVF制御部134についてはさらに後で説明することにする。またこの装置では、システムコントローラ300にヘッダ生成部331、先行記録EVF設定部332が設けられているが、この部分についても後述することにする。
【0036】図2は、撮影動作例を説明する図である。同図(A)は先行連写時を示し、同図(B)は通常の連写時を示す。
【0037】本発明のカメラの先行連写は、ファースト(1st)レリーズによる合焦が終了すると、セカンド(2nd)レリーズの有無にかかわらずメモリ200への画像記録を開始し、画像処理及び画像圧縮の終了した画像を順次撮影画像保持領域201に保持していくモード(撮影開始前の撮影準備動作)がある。撮影画像保持領域202にn枚の画像が保持可能な場合、その1枚目、2枚目、… n枚目と順次保持され、n枚目までくると1枚目に戻って(1枚目に上書きされ)、画像保持が継続される。
【0038】このような状態でセカンドレリーズ(撮影指示)されると、このセカンドレリーズに対応する画像を基準画像とし、また、設定されたプレコマ数(基準画像から何コマさかのぼって記録を開始するかを決めるコマ数)前の画像を記録開始画像として、メモリカード400への画像記録が開始される。よって、記録開始画像はセカンドレリーズ時点よりも、プレコマ数分過去に撮影された画像である。また、最大連写数はnコマとなり、記録開始画像が撮影画像保持領域202におけるx枚目であったとすると、最大連写を行った場合にはx枚目からx−1枚目までの画像がメモリカード400に格納される。
【0039】図2においては、撮影画像保持領域202に5枚分の画像を確保できる場合を示している。この例では、セカンドレリーズがあると、基準画像(セカンドレリーズのタイミングに対応する撮影画像)(+−0)に先行する1枚の画像がメモリカード400に記録されるように設定した例を示している。
【0040】図2(A)の(a1)は、ファーストレリーズがあると、自動フォーカス制御期間があり、CCDの露出、データ読み出しが繰り替えされている状況を示している。また図2(A)の(a2)は、メモリ200への画像書き込みタイミングを示す。このタイミング図からわかるように、セカンドレリーズに先行して3枚の画像が撮影されており、セカンドレリーズが行われた後に4枚目、5枚目、1枚目(2回目)、2枚目(2回目)の画像が順次撮影されている。この例では、基準画像(+−0)に先行する1枚の画像がメモリカード400に記録されるように設定されているので、実際にメモリカード400に記録される画像は、図2(A)の(a3)に示すように、先行する3枚目の画像(−1)、基準画像(4枚目の画像(+−0)),5枚目の画像(+1)、1枚目の画像(2回目)、…、と記録され合計5枚の画像が記録されることになる。つまり、最大連写数n=5、プレコマ数=1であり、このとき記録開始画像は−1コマである。また、基準画像は±0コマであり、以降+1,+2コマとなる。
【0041】また図2(B)に示す通常の連写や単写では、ファーストレリーズ後、合焦しても画像記録は開始されず、セカンドレリーズされて初めて画像記録が開始されるようになっている。図2(B)の(b1)はCCDの露出、データ読み出しが繰り替えされている状況を示している。また図2(B)の(b2)は、メモリ200への画像書き込みタイミングを示す。また、図2(B)の(b3)はメモリカード400への記録タイミングを示している。
【0042】さて、図1の撮影処理プロセッサ100における制御部107は、先行撮影制御部111、先行記録制御部112及びEFV制御部134を備える。
【0043】先行撮影制御部111は、システムコントローラ300から先行連写のための設定指令、プレコマ数及び画質変更制御の有無の情報を受けると、撮影モードを先行撮影に設定し、レリーズ操作や合焦状態に対応して撮影画像を撮影画像保持領域202に一時記憶させるまでの一連の撮影制御を受け持つ。具体的には、測光終了信号及びファーストレリーズ後の合焦済み信号をシステムコントローラ300から受けると、タイミング生成器15に対して本撮影と同じ撮影条件で画像取り込みを開始するように制御信号を出力する(先行撮影スタート)。そしてさらに先行撮影制御部11は、画像処理部103及び圧縮伸長部104を制御して、撮影画像をメモリ200の撮影画像保持領域202に格納させる。
【0044】また、制御部107がシステムコントローラ300から受け取る測光終了信号について言えば、スポット測光モードで測光をロックするタイプの場合には、ファーストレリーズ前に露出は終了している(露出終了信号受け取り済)。また、ファーストレリーズに応じて自動露出(AE)を行うタイプの場合には、ファーストレリーズがなされた以降にシステムコントローラ300から測光終了信号を受け取る。
【0045】先行撮影制御部111は、セカンドレリーズ終了又は撮影画像保持領域202への画像格納が限界に達した時点で画像保持動作を終了させる。また撮影画像保持領域202への格納限界は、セカンドレリーズ開始に対応する基準画像と、設定されたプレコマ数とで決まる記録開始画像、および連写可能数を基準に決定する。
【0046】先行記録制御部112は、システムコントローラ300から先行連写の設定指令を受けると、先行撮影制御部111と同様、撮影モードを先行撮影に設定する。そして、連写により撮影画像保持領域202に一時記憶された画像をメモリカード400に記録するための制御を受け持つ。具体的には、先行連写時においてセカンドレリーズにより記録開始画像が決定されると、その開始画像の保持情報を先行撮影制御部111から受け取る。そして、メモリ200及び記録/再生インターフェース105を制御し、この記録開始画像をスタートとして先行連写が終了するまでの画像を順次メモリカード400に記録させる。
【0047】EVF制御部134は、画像処理部103や表示制御部131等を制御することで先に述べた2種類のEVFを実現する。なお上記した先行記録のしくみは、先行記録EVFを実現させる上で利用される。即ち,先行記録EVFが設定されている場合には、ファーストレリーズに対応して本撮影と同等な画像を撮影画像保持領域202に対して連続的に保持する。そして保持画像に基づいてEVF表示が実現される。
【0048】図3は、通常のEVFと先行記録EVFの処理の流れを示す。両者の違いを箇条書きで示すと、以下のようになる。
【0049】1)CCD12からの読出時において、通常のEVFでは最初からビデオ表示(640×400画素)に適合するように間引き読み出しされ、そのままスルー画像処理(撮影画像保持領域200を経由しない)されて、EVF表示される。つまり図3(A)に示すように、露出(ステップa1),CD出力(ステップa2),A/D変換(ステップa3)、画像処理(表示用)(ステップa4)、EVF出力(ステップa5)の工程で処理される。これであると、表示用の画像処理(ステップa4)と撮影画像保持領域200への記録保持処理(ステップa4’)が平行する。ただし記録されてもよいし、記録されなくてもよい。
【0050】2)これに対し、先行記録EVFでは、撮影用に指定された画質で撮影画像として読み出された画像が一旦撮影画像保持領域200に格納され、この記録用の画像が間引き処理等されてビデオ表示用の画像に変換される。すなわち、露出(ステップb1)、CCD出力(ステップb2)、A/D変換(ステップb3)、画像処理(記録用)(ステップb4)、メモリ200への格納(ステップb5)、画像処理(表示用)(ステップb6)、EVE出力(ステップb7)の工程で処理される。
【0051】なお、上記説明では、撮影画像保持領域200への保持は画像圧縮後に行われるので、EVF用に使用するためには一旦伸長処理が必要になる(図3(B)では省略)。しかし、変形例として非圧縮のまま撮影画像保持領域200に保持させ、EVFに利用し、カード記録に際して圧縮するようにしてもよい。
【0052】3)通常のEVFと先行記録EVFでは、EVF用の元となる画像間に上記の違いがあるため、撮影者による撮影指令(セカンドレリーズ)に対する撮影動作が異なる。
【0053】通常のEVFではそもそも撮影用の画像を取得しているわけではないので、指定された条件で改めて露出、CCD読出、…の各工程の処理を行う必要がある。したがって、EVF表示処理及び露出タイミングのずれによって、セカンドレリーズから少なくとも2コマ以上遅れた画像(EVF画像読出による1コマ分の遅れ、セカンドレリーズ時点の次の周期しか撮影できないことによる1コマ分の遅れ)が撮影される。
【0054】これに対して、先行記録EVFでは、撮影画像保持領域にカード記録可能な画像がすでに保持されているので、セカンドレリーズに対応する保持画像をそのままカード記録する。したがって、ハードウエア的なタイミング遅れは全く生じない(図4参照)。ただし、現実の世界とEVF世界では若干の時間遅れが生じる。
【0055】図4(A)は、現実のシーンS1,S2,S3,…の時間経過を示している。図4(B)は、CCDの動作であり、露出期間と読み出し期間を示している。図4(C)は、通常のEVF表示が行われたときのシーンの様子を示している。また図4(D)は、電子ビューファインダーを覗いているユーザが、ねらったシーンを見たときに、セカンドレリーズを行ったタイミングと、実際にメモリカード400に撮影記録されるシーンとの関係を示している。この例では、ユーザがシーンS2を見てセカンドレリーズを行っても、記録されるシーンはシーンS4となる。
【0056】しかし、4(E)、図4(F)に示すように本発明による先行記録EVFであると、シーンS2をユーザがねらってセカンドレリーズを行うと、そのシーンS2の撮影画像がメモリカード400に記録されることになる。
【0057】システムコントローラ300は、カメラ内の各部(AE/AF機構、撮影処理プロセッサ等)を制御する。また、各種の操作ボタン(レリーズボタン501、操作キー502、確定ボタン503等)からの各種操作入力を受け付け、その入力に応じた制御を各部に実行させる。また、撮影モードや条件、残撮影可能枚数等の各種情報をコントロールパネル(図示せず)に表示させる。
【0058】さらに、システムコントローラ300は、AE/AF制御部301と、先行撮影通知部302と、ヘッダ生成部331と、先行記録EVF設定部332と、図示していないがコマ割り計算部を備える。
【0059】AE/AF制御部301は、A/D変換器14の出力に基づいて露出のための絞り制御及び合焦のためのフォーカスレンズ制御を行うとともに、露出終了及び合焦終了の旨を先行撮影通知部302に通知する。
【0060】先行撮影通知部302は、表示用液晶パネル600のメニュー画面に表示された項目を指定する操作キー502及び確定ボタン503の操作に応じて、先行撮影モードの設定を受け付ける。そして、先行撮影モードへの設定指令、そのときのプレコマ数及び画質制御先行連写を行うか否かの指示を撮影処理プロセッサ100の制御部107に通知する。先行撮影通知部302は、設定種別によってはプレコマ数をコマ割り計算部に計算させる。また、画質が変更されたときは、その画質に対応する最大連写可能数に基づきプレコマ数をコマ割り計算部に再計算させ、新たなプレコマ数を制御部107に通知する。
【0061】また、先行撮影通知部302は、先行連写のタイミングを取るために、ファースト(1st)レリーズ、セカンド(2nd)レリーズ、露出終了、合焦終了を制御部107に通知する。
【0062】コマ割振計算部は、先行撮影通知部302の依頼により、プレコマ数を計算する。
【0063】先行記録EVF設定部332は、操作キーと確定ボタンを用いた操作により、(表示用)液晶パネル600に表示されるメニュー画面における、先に説明した通常のEVFモードと先行記録EVFモードとの設定切り替えを受け付け、設定内容を制御部107に通知する。
【0064】なお、操作キー502は、各種の操作入力を行うためのものであり、例えば十字式の入力キーで左右上下にカーソル移動入力できるように構成される。各種操作は、操作キー502により、画像表示用液晶パネル600で表示されるメニュー画面の項目からカーソルによる機能選択が行われ、確定ボタン503によりその機能が選択確定される。レリーズボタンを押すことにより撮影が実行される。
【0065】[動作]次に、本発明の電子カメラにおいて重要な動作について説明する。
【0066】本発明は、単写、通常の連写、先行連写(TM連写)のすべてに対して適用される。図2においては先行連写で実現される動作タイミングを示した。また、図3においては、通常のEVFモードと先行記録EVFモードとの信号処理工程の相違を示した。また図4においては、通常のEVFモードと先行記録EVFモードとでのセカンドレリーズ後の取得画像の違いを説明した。
【0067】図5は、先行連写モードが指定されており、先行連写が行われたときの動作をフローチャートで示している。ファーストレリーズが行われ、露出、合焦が終了すると先行撮影及び記録がスタートする(ステップA1,A2,A3,A4)。そして基準画像前の画像(プレコマ)の撮影と、メモリ200への記録が実行される(ステップA5)。つぎに先行記録EVFが設定されているかどうかの判定が行われ(ステップA6)、設定されている場合には先行記録EVFに基く動作に切り替わる(電子ビューファインダに対しては、一端メモリ200に保持された画像が表示制御部131を介して電子ビューファインダに表示される)(ステップA7)。
【0068】次にセカンドレリーズが行われたかどうかの判定(ステップA8)が行われ、セカンドレリーズが行われた場合は、基準画像よりも設定プレコマ数前の画像(記録開始画像)からメモリカード400への記録が開始される(ステップA9)。そして基準画像以降の画像の撮影及びメモリ200への記録が実行され(ステップA10),記録開始画像以降の画像で撮影保持領域202が一杯(n枚)になったかどうかの判定が行われ(ステップA11)る。一杯になっていない場合には、レリーズボタンが離されたかどうかを判定し(ステップA12)、一杯になっている場合、及びレリーズボタンが離されている場合には、ステップA13に移行して先行記録EVFモードから通常のEVFモードに切換える。ステップA12でレリーズボタンが離されていない場合には、ステップA10に戻り、基準画像以降の画像の撮影、及びメモリ200への記録が続行される。
【0069】ステップA13の次は、記録開始画像以降の画像をメモリカード400に記録し終わったかどうかの判定が行われ(ステップA14)、終わっていれば終了する。
【0070】図6は、通常の連写或いは単写撮影モードが指定されており、通常の連写或いは単写が行われた場合の動作をフローチャートで示している。
【0071】ファーストレリーズが行われ、露出、合焦が終了すると(ステップB1,B2,B3)、先行記録EVFが設定されているかどうかの判定が行われ(ステップB4)る。先行記録EVFが設定されている場合には、先に説明したように先行撮影及び記録がスタートし、実行される(ステップB5,B6)。
【0072】しかし先行記録EVFが設定されていない場合には、ステップB7に移行し、セカンドレリーズが行われているかどうかを判定し(ステップB7)、セカンドレリーズが行われている場合には、単写撮影または通常の連続撮影(連写)が実行される(ステップB8)。次に先行記録EFVの状態になっているかどうかの判定が行われ(ステップB9),先行記録EVFの状態でない場合には、画像をメモリカード400に記録する(ステップB11)。
【0073】しかしステップB9で先行記録EFVの状態に設定されている場合には、先行記録EFVから通常のEVFに切換え、画像をメモリカード400に格納する(ステップB11)。
【0074】上記のように本発明は、単写、通常の連写、先行連写のすべてに対して適用される。
【0075】この発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0076】上記したように先行記録EVFを実行した場合、撮影者による視認によるセカンドレリーズが行われたときの画像と、実際に記録される画像とのハードウエア的タイムラグが無い。また、先行記録EVFと通常のEVFの組み合わせ、いずれのモードでも撮影記録が実行される装置とした場合、通常のEVFは電力消費が比較的少ないので適宜使い分けすることで電源の消耗を防ぐことができる。
【0077】図7(A)、図7(B)はさらにこの発明の他の実施の形態を示している。
【0078】図7(A)は、媒体記録用の画像処理をする前にメモリ(画像保持領域200)にA/D変換出力を保持する。この場合、EVF表示の高速化を図ることができ、また不必要な画像処理は行わなくてすむが、圧縮前なので多くの画像を保持するようにするには、メモリ200の容量として大きなものが必要となる。
【0079】つまり、図3(B)の例では、露出(ステップb1)、CCD出力(ステップb2)、A/D変換(ステップb3)、画像処理(記録用)(ステップb4)、メモリ200への格納(ステップb5)、画像処理(表示用)(ステップb6)、EVE出力(ステップb7)の工程で処理された。しかし、図7(A)の処理工程では、ステップb4の記録用の画像処理(実際には画像圧縮処理)が省略されているので、未圧縮の画像がメモリc4を通して表示用の画像処理ステップ(c5)に転送されることになる。この結果、EVF表示の高速化を得ることができる。しかし、メモリカード400へ記録する段階になったときは、ステップc7で記録用の画像処理を行いメモリカード400へ転送することになる。
【0080】すなわち、図7(A)の実施形態では、露出(ステップc1)、CCD出力(ステップc2)、A/D変換(ステップc3)、メモリ200への格納(ステップc4)、画像処理(表示用)(ステップc5)、EVE出力(ステップc6)の工程で処理される。
【0081】図7(B)の処理工程は、EVF用の画像処理と媒体記録用の画像処理を並列処理する。この場合、EVF表示を極めて速くすることができ、スムーズなファインダ表示が可能になる。ただし、信号処理プロセッサの負担は大きくなる。
【0082】すなわち、露出(ステップd1)、CCD出力(ステップd2)、A/D変換(ステップd3)、画像処理(表示用)(ステップd4)、EVE出力(ステップd5)の工程と、ステップd3から分岐して画像処理(記録用)(ステップd6),メモリ200への画像記録(ステップd7)の工程が存在する。
【0083】なお、ファーストレリーズ、セカンドレリーズの操作は、撮影者が具体的な被写体に対して撮影実行を意識して行う動作であるが、クレームにいう撮影準備の操作はこのような場合に限られない。例えばレリーズ付近に指センサを設け、撮影者の撮影意図とは関係なく指センサの検知で撮影準備動作を開始するような場合をも含む。また例えばカメラの電源オンにより上記撮影準備動作を行うようになっていてもよい。また、撮影準備動作としては、合焦動作や露出動作等がある。
【0084】実施形態では、画像の画素数はタイミング生成器15に基づくCCD読み出しタイミングにより決まるとしたが、発明はこの場合に限られない。例えばCCDからは全画素読み出しを行い、後に画像処理部によって全画素読み出しデータに対する加算平均が施されて、指定された画質(SQ,HQ,SHQ等)に対応した画素数となるように、画素数変換が行われてもよい。
【0085】実施形態では、先行撮影モードを連写の場合で説明しているが、この先行撮影は、連写撮影に限られるものではない。例えばブランケット撮影等に対しても適用できる。
【0086】
【発明の効果】上記したように本発明の電子カメラによれば、撮影者による撮影指示動作に対して生じる、撮影処理及び記録タイミングの遅れを補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態を示すブロック図。
【図2】この発明の電子カメラの基本動作を説明するために示したタイミングチャート。
【図3】この発明の電子カメラの電子ビューファインダへの画像提供処理工程を通常のEVFモードと先行記録EVFモードとを比較して説明するために示した説明図。
【図4】この発明の電子カメラの撮影動作例を説明するために示したタイミングチャート。
【図5】同じくこの発明の電子カメラの撮影動作例を説明するために示したフローチャート。
【図6】同じくこの発明の電子カメラの他の撮影動作例を説明するために示したフローチャート。
【図7】同じくこの発明の電子カメラの電子ビューファインダへの画像提供処理工程の他の例を説明するために示した説明図。
【符号の説明】
11…レンズ系、12…CCD、13…撮像プロセス部、14…A/D変換器、15…タイミング生成器、16…自動アイリス自動フォーカス部、100…撮影処理プロセッサ、101…データバス、102…インターフェース、103…画像処理部、104…圧縮伸長部、105…記録再生インターフェース、106…表示制御部、107…制御部、111…先行撮影制御部、112…先行記録制御部、200…メモリ、201…作業領域、202…撮影画像保持領域、300…システムコントローラ、301…AE/AF制御部、302…先行撮影通知部、400…メモリカード、501…レリーズボタン、502…操作キー、503…確定ボタン、600…表示用液晶パネル、131…表示制御部、132…EVF用液晶パネル、134…EVF制御部、332…先行記録EVF設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の操作によって撮影準備動作が開始されるとともに、少なくとも前記撮影準備動作開始後の撮影指示に対応して撮像画像が記録される半導体撮像素子を用いた電子カメラにおいて、前記半導体撮像素子により撮像された画像を複数枚保持可能な画像保持部と、前記撮影準備動作の完了後であって前記撮影指示の前に連続的な画像取り込みを開始させ、前記画像保持部に撮影画像を保持させる撮影制御手段と、前記撮影制御手段により取り込まれた画像に基づき作成された表示画像を、ファインダ画像として表示出力する電子ビューファインダ表示手段と、前記撮影指示を受けときに前記電子ビューファインダ表示手段により表示出力されているファインダ画像と同一タイミングに取り込まれた画像を、前記画像保持部から取出し記録媒体に記録する記録制御手段とを備えたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】 取り込み画像を画像処理する画像処理手段を備え、前記撮影制御手段は、前記取り込み画像を前記画像処理手段に処理させて、前記画像保持部にその処理画像を保持させることを特徴とする請求項1記載の電子カメラ。
【請求項3】 前記撮影制御部は、前記撮影指示が連写指示である場合には、連続的な画像取り込み及び画像処理並びに前記画像保持部への保持動作を継続させることによりに連続撮影を実現するとともに、前記記録制御手段は、前記撮影指示が連写指示である場合には、前記電子ビューファインダ表示手段により表示出力されている画像を先頭画像として連写記録を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の電子カメラ。
【請求項4】 前記記録制御手段は、前記撮影指示に対応して前記記録媒体に記録される画像を基準画像とするときに、当該基準画像よりも前に前記画像保持部に保持された画像も前記記録媒体に記録することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電子カメラ。
【請求項5】 前記撮影制御手段は、前記画像保持部に撮影画像保持用の空き領域がない場合には、最新の撮影画像を最も古い撮影画像に上書きさせるよう制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電子カメラ。
【請求項6】 前記電子ビューファインダ表示手段は、前記半導体撮像素子により撮像された画像をそのままファインダ表示用に画像処理させて作成した第1の表示画像と、前記画像保持部に保持される前記画像処理された画像に基づいて作成された第2の表示画像とのうち、予め設定された何れか一方をファインダ画像として表示出力するとともに、前記第1の表示画像に対応して前記撮影指示が出された場合には、前記撮影制御手段は前記撮影指示の後に前記記録媒体に対して記録可能な状態に画像取り込み及び画像処理を開始させ、前記記録制御手段は前記撮影指示の後に画像取り込み及び画像処理された画像を前記記録媒体に記録することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れかに記載の電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−313865(P2001−313865A)
【公開日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−132674(P2000−132674)
【出願日】平成12年5月1日(2000.5.1)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】