説明

電子カメラ

【課題】スルーモードにおいて画面の端部に高輝度被写体が入り込んでも適切なクランプ処理を施すことが出来る電子カメラを提供する。
【解決手段】本発明に係る電子カメラは、CCD3から出力される撮像信号の内、有効エリアに隣接して設けられている光学的黒エリアからの撮像信号に基づいて黒レベルを算出する黒レベル算出回路45と、その黒レベルを基準として撮像信号をクランプするクランプ回路42とを具え、有効エリアの内、光学的黒エリアに近接して設けられている特定評価エリアの輝度レベル若しくはスミアの発生レベルを評価値として、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れを予測し、評価値が所定の閾値を越えている期間では、評価値が所定の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルに基づいてクランプ処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラの如く、CCD等の撮像素子から出力される撮像信号を黒レベルでクランプして映像を生成する電子カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラにおいては、図2に示す如くCCD(3)の有効エリアに隣接して光学的黒エリア(OB部)が設けられており、シャッタボタンが押下されると、CCD(3)がプリ露光され、これによってCCD(3)から得られる撮像信号の内、光学的黒エリアからの撮像信号のレベル(黒レベル)が取得され、その黒レベルに基づいて撮像信号をクランプする、クランプ処理が施される。そして、クランプ処理の施された撮像信号に基づいて1画面分の映像信号が生成される。これによって、被写体像の輝度が適正に評価されて、露光量が最適値に設定されるのである。
【0003】
ところが、CCDに高輝度の光が照射されると、有効エリアから光学的黒エリアへ電荷が漏れ込み、黒レベルが変動することになる。そこで、従来のデジタルカメラ(特許文献1参照)においては、シャッタボタンが押下されると、1回目のプリ露光によってクランプ処理の施された撮像信号から輝度評価値が求められ、更に2回目のプリ露光によってクランプ処理の施された撮像信号から輝度評価値が求められる。そして、この2つの輝度評価値の差分に基づいてクランプ期間が光学的黒期間及び空送り期間の何れか一方に設定される。この結果、最終プリ露光によって得られる撮像信号のクランプレベルの変動が防止される。
【特許文献1】特開2000−278613号公報[H04N5/335]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルカメラにおいては、シャッタボタンを押下する前、即ち本露光若しくはプリ露光を行なっていない状態では、CCDから得られる撮像信号に基づいて、モニタ画面にはリアルタイムで画像(スルー画)が表示される(スルーモード)。
この様なスルー画の表示状態で、画面の右側若しくは左側の端部に太陽などの高輝度被写体が入り込むと、従来のデジタルカメラではシャッタボタン押下後の対応を行なうものに過ぎないので、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生して、黒レベルが変動することになり、スルー画が異常なものとなる。又、撮影モードにおいても、被写体が暗いものと判断されて、露出オーバー(白とび)の画像となる問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、スルーモードにおいて画面の端部に高輝度被写体が入り込んでも適切なクランプ処理を施すことが出来る電子カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子カメラは、撮像素子から出力される撮像信号の内、有効エリアに隣接して設けられている光学的黒エリアからの撮像信号に基づいて黒レベルを算出し、その黒レベルを基準として撮像信号をクランプするクランプ処理を施し、クランプ処理の施された撮像信号に基づいて1画面分の映像信号を生成するものであって、
前記有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生する際に変化することとなる評価値を取得する評価値取得手段と、
取得された評価値が所定の閾値を越えている期間では、評価値が所定の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルを、前記クランプ処理に固定値として供する黒レベル固定手段
とを具えている。
【0007】
前記評価値取得手段による評価値としては、前記有効エリアの内、前記光学的黒エリアに近接して設けられている特定評価エリアの輝度レベルや、特定評価エリアにおけるスミアの発生レベルを採用することが出来る。
尚、特定評価エリアの輝度レベルやスミアの発生レベルは、従来のデジタルカメラにおいても絞り量の調整やスミア補正のために利用されている値であるので、本発明の実施のために特別に検出する必要はない。
【0008】
上記本発明の電子カメラにおいては、スルー画の表示状態で、画面の右側若しくは左側の端部に太陽などの高輝度被写体が入り込むと、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生することになるが、この電荷の漏れが発生する直前に、評価値となる特定評価エリアの輝度レベルやスミアの発生レベルが上昇することになる。
そこで、評価値が所定の閾値を上回った時点で、その直後に有効エリアから光学的黒エリアへの電荷漏れが発生するものと予測し、以後は、評価値が所定の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルをクランプ処理に供する。
【0009】
従って、その直後に有効エリアから光学的黒エリアへの電荷漏れが発生したとしても、クランプ処理に用いられる黒レベルは、電荷漏れが発生する直前の値であり、電荷漏れの影響を受けていないので、該黒レベルを用いたクランプ処理によって、撮像信号の直流成分が安定し、正常なスルー画像が得られる。又、撮影モードにおいても、被写体の明るさが正確に判断されて、適正な露出が得られる。
その後、画面から高輝度被写体が消失すると、評価値が所定の閾値を下回ることになるので、クランプ処理に用いる黒レベルの固定を中断し、光学的黒エリアから実時間で得られる撮像信号の黒レベルに基づいて通常のクランプ処理を実行する。
【0010】
尚、前記黒レベル固定手段による黒レベルの固定においては、第1の閾値と第2の閾値を用いることが出来る。この場合、取得された評価値が第1の閾値を上回ったとき、評価値が第1の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルを固定値としてクランプ処理に供し、取得された評価値が第2の閾値を下回った後は、光学的黒エリアから実時間で得られる撮像信号の黒レベルをクランプ処理に供する。
ここで、第1の閾値よりも第2閾値を小さく設定すれば、電荷漏れの虞が完全に無くなった時点で黒レベルの固定を解除することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子カメラによれば、スルーモードにおいて画面の端部に高輝度被写体が入り込んでも適切なクランプ処理を施すことが出来、これによって撮像信号の黒レベルが安定して、高画質の映像を生成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をデジタルカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るデジタルカメラにおいては、図1に示す如く、光学レンズ(1)から絞りユニット(2)を経てCCD(3)に映像光が照射され、これによってCCD(3)から得られる撮像信号が1チップIC(4)を経て1チップASIC(5)へ供給され、映像信号が生成される。
【0013】
この様にして生成された映像信号は、カードI/F(9)を経てメモリカード(10)に記録され、或いはビデオエンコーダ(11)をモニタ(12)に供給されて、画面に表示される。
1チップASIC(5)にはCPU(7)が接続されており、該CPU(7)は、メモリ(8)を用いた所定の演算処理を実行して、1チップIC(4)に対して種々のデータを供給すると共に、絞りユニット(2)を制御するための制御信号をドライバ(15)へ供給する。
【0014】
又、CPU(7)にはシステムコントローラ(13)が接続されており、システムコントローラ(13)は、シャッタボタン(14)からの操作信号を受けて、CPU(7)へ撮影指令を送出する。
【0015】
1チップASIC(5)には、シグナルジェネレータ(56)が設けられており、シグナルジェネレータ(56)からタイミングジェネレータ(55)へ垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncが供給される。これに応じてタイミングジェネレータ(55)は電荷読み出しパルス、垂直転送パルス、水平転送パルス及びクランプパルスを生成する。
【0016】
CCD(3)で生成された1画面分の電荷は、タイミングジェネレータ(55)からの電荷読み出しパルス、垂直転送パルス及び水平転送パルスによって読み出され、撮像信号として1チップIC(4)へ出力される。
尚、CCD(3)の受光面には、図2に示す様に、有効エリアに隣接して光学的黒エリア(OB部)が設けられており、CCD(3)から出力される撮像信号には、有効エリアからの撮像信号成分と、光学的黒エリア(OB部)からの撮像信号成分とが含まれている。
【0017】
図1の如くCCD(3)から出力される撮像信号は、CDS回路(41)による相関2重サンプリング処理を経てクランプ回路(42)へ供給される。クランプ回路(42)は、タイミングジェネレータ(55)からのクランプパルスに応答して、撮像信号にクランプをかけるものである。リアルタイムに動画(スルー画)を表示するスルーモードにおいては、タイミングジェネレータ(55)は撮像信号の光学的黒期間にクランプパルスを発生し、これによって撮像信号は光学的黒レベルでクランプされる。
【0018】
クランプ処理の施された撮像信号は、AGC回路(43)でゲイン調整が施された後、A/D変換器(44)を経てデジタル信号(撮像データ)に変換される。
A/D変換器(44)から得られる撮像データは黒レベル算出回路(45)へ供給されて、タイミングジェネレータ(55)は光学的黒期間にクランプパルスを発生し、これによって黒レベル算出回路(45)はメモリ(46)を用いて光学的黒エリアの黒レベルを算出し、その結果をクランプ回路(42)へ供給する。
【0019】
1チップASIC(5)の第1信号処理回路(51)は、1チップIC(4)から供給される撮像データに基づいてRGBデータ及びYデータを生成し、これらのデータを第2信号処理回路(52)へ供給する。第2信号処理回路(52)は、RGBデータ及びYデータをYUVデータに変換し、YUVデータをメモリ(6)を経てビデオエンコーダ(11)に出力する。これによって所定のエンコード処理を受けた映像データがモニタ(12)に供給されて、モニタ画面にスルー画が表示される。
【0020】
この様なスルー画の表示期間中、第1信号処理回路(51)から出力されるYデータは積分回路(53)へ供給される。積分回路(53)は、Yデータを所定の領域に亘って積分し、それによって得られた積分値をCPU(7)へ出力する。ここで積分の対象となる領域は、図2に示す有効エリア内に設定された通常評価エリアであって、撮影モード及びスルーモードにおいて輝度評価が行なわれる領域である。そして、この通常評価エリア内においてOB部に隣接する一部の領域が特定評価エリアとして設定され、この特定評価エリアが電荷漏れの予測における評価の対象となる。
【0021】
スルーモードにおいて、図1に示すシャッタボタン(14)が押下されると、撮影モードに移行して、本撮影が行なわれる。1チップASIC(5)のレジスタ(54)には、スルーモードにおける露光時間が保持されており、タイミングジェネレータ(55)は、レジスタ(54)に保持されている露光時間に従ってCCD(3)にプリ露光を行なわせる。
【0022】
タイミングジェネレータ(55)はまた、黒レベル算出回路(45)から出力される黒レベルがクランプ回路(42)に入力されるタイミングでクランプパルスを生成し、クランプ回路(42)へ供給する。これによってクランプ回路(42)は撮像信号を黒レベルでクランプする。この結果、第1信号処理回路(51)は、クランプされた撮像信号に基づいてYデータを生成し、生成されたYデータは、積分回路(53)により通常評価エリアに亘って積分され、これによって通常評価エリアの平均輝度が求められる。
【0023】
CPU(7)は、積分回路(53)から平均輝度値を取り込み、その値をメモリ(8)に書き込むと共に、平均輝度値に基づいて最適絞り量及び最適露光時間を算出する。そして、その算出結果を示す絞り量データをドライバ(15)に与える。これによって絞りユニット(2)の絞り量が調整される。
【0024】
露光時間の更新及び絞り量の調整が完了すると、タイミングジェネレータ(55)は、レジスタ(54)に設定された最適露光時間データに従ってCCD(3)の本露光を行なうと共に、クランプパルスをクランプ回路(42)に供給する。本露光によって生成された撮像信号は、クランプ回路(42)によって黒レベルでクランプされる。クランプされた撮像信号は、AGC回路(43)によるAGC処理を経て撮像データに変換され、その後、第1信号処理回路(51)及び第2信号処理回路(52)にて上述と同様の処理が施される。この結果、本露光に基づくYUVデータが生成され、UYVデータはカードI/F(9)を経てメモリカード(10)に記録される。
【0025】
CPU(7)は、上述のスルーモード及び撮影モードにおいて具体的には図3及び図5に示す手続きを実行する。
デジタルカメラの電源が投入されると、先ず図3のステップS1では、スルーモードの設定、シャッタースピード及び絞り値の設定、OBクランプ位置の設定、OBクランプレベル(黒レベル)の設定等の初期設定が行なわれる。
【0026】
次にステップS2では、通常評価エリアの輝度情報を取得し、ステップS3では、通常評価エリアの輝度レベルを算出する。そして、ステップS4にて、黒レベルを算出し、その結果を図1に示すメモリ(46)に書き込む。
【0027】
続いて図3のステップS5では、算出された黒レベルに基づいてOBクランプレベルを設定し、ステップS6では、シャッタースピード及び絞り値の設定を行なった後、ステップS7に移行する。
ステップS7では、通常評価エリアの輝度情報を取得し、ステップS8では、通常評価エリアの輝度レベルを算出する。更にステップS9では、特定評価エリアの輝度レベルを算出する。尚、特定評価エリアの輝度レベルの算出は、ステップS7で取得された輝度情報を利用して行なうことが出来る。
【0028】
その後、ステップS10では、OBクランプレベル(黒レベル)が固定されているか否かを判断し、ノーの場合はステップS11に移行して、特定評価エリアの輝度レベルが所定の第1の閾値TH1を越えているか否かを判断する。ここで、ノーと判断されたときは、ステップS15に移行して、OBクランプ位置の設定を行ない、ステップS16では、黒レベルを算出してその結果をメモリに書き込んだ後、ステップS5に戻る。
【0029】
以上の処理の繰り返しの過程で、特定評価エリアの中に太陽などの高輝度被写体が入り込んだ場合、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生する直前に、特定評価エリアの輝度レベルが上昇することになる。
この結果、図3のステップS11にて輝度レベルが第1の閾値TH1を越えることとなって、ステップS12に移行する。ステップS12では、図1に示すメモリ(46)から黒レベルを読み出して、クランプ回路(42)へ供給する。これによって、輝度レベルが第1の閾値TH1を越える直前の黒レベルに基づいて、クランプ処理が実行されることになる。
即ち、図3のステップS12からステップS5に移行して、OBクランプレベルの設定(黒レベルの固定)が行なわれる。
【0030】
その後、ステップS10でイエスと判断されて、ステップS13へ移行し、特定評価エリアの輝度レベルが、第1の閾値TH1よりも小さな第2の閾値TH2を越えているか否かが判断される。このとき、特定評価エリアに依然として高輝度被写体が存在していれば、ステップS13ではイエスと判断され、ステップS14にて、図1に示すメモリ(46)から黒レベルが読み出され、その黒レベルに基づいてクランプ処理が実行される。
【0031】
特定評価エリアから高輝度被写体が消失して、特定評価エリアの輝度レベルが低下した場合は、ステップS13でノーと判断され、ステップS15へ移行する。ステップS15では、新たにOBクランプ位置の設定が行なわれ、ステップS16では、図1に示す黒レベル算出回路(45)がその時点で得られる撮像データから黒レベルを算出し、その結果をメモリ(46)に書き込むと共に、クランプ回路(42)へ供給する。この結果、図3のステップS5にてOBクランプレベルの設定(黒レベル固定の解除)が行なわれ、通常のクランプ処理に戻ることになる。
【0032】
上述の処理によれば、スルー画の表示状態で、画面の右側の端部に太陽などの高輝度被写体が入り込むと、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生することになるが、この電荷の漏れが発生する直前に、特定評価エリアの輝度レベルが上昇することになるので、図3のステップS11の判断により、通常のクランプ処理から、特定評価エリアの輝度レベルが第1の閾値を越える直前の黒レベルに基づくクランプ処理に移行する。
【0033】
従って、その直後に有効エリアから光学的黒エリアへの電荷漏れが発生したとしても、クランプ処理に用いられる黒レベルは、電荷漏れが発生する直前の値であり、電荷漏れの影響を受けていないので、該黒レベルを用いたクランプ処理によって、映像再生処理の基準となる黒レベルが安定し、正常なスルー画像が得られる。又、撮影モードにおいても、被写体の明るさが正確に判断されて、適正な露出が得られることになる。
【0034】
その後、特定評価エリアから高輝度被写体が消失する場合、特定評価エリアの輝度レベルが低下することになるので、図3のステップS13の判断により、固定された黒レベルに基づくクランプ処理から通常のクランプ処理に戻ることになる。この際、第2の閾値は第1の閾値よりも小さく設定されているので、電荷漏れの虞が完全に無くなった時点で黒レベルの固定を解除することが出来る。
尚、第1の閾値と第2の閾値を同じ値に設定することも可能である。
【0035】
上述のスルーモードにおける処理中に、図1に示すシャッタボタン(14)が押下されると、撮影モードに移行して、図5に示す処理が実行される。
先ずステップS21にて、OBクランプレベルを設定値に維持し、ステップS22ではプリ露光を行なった後、ステップS23にて、撮影用評価値の算出を行ない、その結果に基づいてステップS24ではシャッタースピード及び絞り値の設定を行なう。
その後、ステップS25にて本露光を行ない、ステップS26では本露光によって得られた映像データの圧縮処理を実行し、ステップS27では、これによって得られた圧縮映像データをメモリカードに記録する。
【0036】
尚、スルーモードにおいては、図3に示す処理に替えて、図4に示す処理を採用することが出来る。
図4に示す処理においては、図3のステップS9に替えて、ステップS9′では、スミアのレベルを表わす情報を取得し、ステップS9″では、その情報に基づいてスミアレベルを算出する。そして、ステップS11′では、スミアレベルを第1の閾値TH1′と比較する一方、ステップS13′では、スミアレベルを第2の閾値TH2′と比較する。ここでも、第2の閾値TH2′は第1の閾値TH1′よりも小さく設定される。
【0037】
図4に示す処理によっても同様に、スルー画の表示状態で、画面の右側の端部に太陽などの高輝度被写体が入り込むと、有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生することになるが、この電荷の漏れが発生する直前に、特定評価エリアにおけるスミアレベルが上昇することになるので、図4のステップS11′の判断により、通常のクランプ処理から、特定評価エリアの輝度レベルが第1の閾値を越える直前の黒レベルに基づくクランプ処理に移行する。
【0038】
従って、その直後に有効エリアから光学的黒エリアへの電荷漏れが発生したとしても、クランプ処理に用いられる黒レベルは電荷漏れの影響を受けていないので、該黒レベルを用いたクランプ処理によって、映像再生処理の基準となる黒レベルが安定し、正常なスルー画像が得られる。
その後、特定評価エリアから高輝度被写体が消失する場合には、特定評価エリアの輝度レベルが低下することになるので、図4のステップS13′の判断により、固定された黒レベルに基づくクランプ処理から通常のクランプ処理に戻ることになる。
【0039】
上述の如く本発明に係るデジタルカメラによれば、スルーモードにおいて画面の端部に高輝度被写体が入り込んだ場合であっても、黒レベルの固定によって適切なクランプ処理を施すことが出来るので、撮像信号の黒レベルが安定し、高画質の映像を生成することが出来る。
【0040】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、光学的黒エリアが画面の左側に設けられている場合、特定評価エリアはその光学的黒エリアに隣接して、画面の左側の端部に設定される。又、撮像素子としては、CCD(3)に替えてCMOS型のイメージセンサーを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るデジタルカメラの構成を表わすブロック図である。
【図2】CCDの有効アリアと光学的黒エリアを示す図である。
【図3】本発明に係るデジタルカメラのスルーモードにおける処理を表わすフローチャートである。
【図4】スルーモードにおける他の処理例を表わすフローチャートである。
【図5】撮影モードにおける処理を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
(1) 光学レンズ
(2) 絞りユニット
(3) CCD
(42) クランプ回路
(45) 黒レベル算出回路
(46) メモリ
(55) タイミングジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から出力される撮像信号の内、有効エリアに隣接して設けられている光学的黒エリアからの撮像信号に基づいて黒レベルを算出し、その黒レベルを基準として撮像信号をクランプするクランプ処理を施し、クランプ処理の施された撮像信号に基づいて1画面分の映像信号を生成する電子カメラにおいて、
前記有効エリアから光学的黒エリアへの電荷の漏れが発生する際に変化することとなる評価値を取得する評価値取得手段と、
取得された評価値が所定の閾値を越えている期間では、評価値が所定の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルを、前記クランプ処理に固定値として供するクランプ値固定手段
とを具えていることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記評価値取得手段によって取得すべき評価値は、前記有効エリアの内、前記光学的黒エリアに近接して設けられている特定評価エリアを対象として算出される請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記評価値取得手段は、前記有効エリアの内、前記光学的黒エリアに近接して設けられている特定評価エリアの輝度レベルを、前記評価値として採用している請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項4】
前記評価値取得手段は、前記有効エリアの内、前記光学的黒エリアに近接して設けられている特定評価エリアにおけるスミアの発生レベルを、前記評価値として採用している請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項5】
前記クランプ値固定手段は、第1の閾値と第2の閾値を有し、取得された評価値が第1の閾値を上回ったときは、評価値が第1の閾値を越える直前の撮像信号の黒レベルを固定値として前記クランプ処理に供し、取得された評価値が第2の閾値を下回った後は、光学的黒エリアから実時間で得られる撮像信号の黒レベルを前記クランプ処理に供するものである請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−44615(P2009−44615A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209314(P2007−209314)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】