説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させること。
【解決手段】車載装置20はRSSI検出回路16が検出する要求信号Sro、Sriの信号強度の変化の態様に基づき電子キー10を携帯するユーザの動きの妥当性を判断する。ユーザの動きが妥当でないと判断した場合には、正規のユーザが実際に車両2付近にいるか否かが不明であるとして車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可しない。このように、IDコードの照合に加え、ユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムは、電子キー(携帯機)及び車両間でのIDコード(識別コード)を含む各種信号の送受信を通じてIDコードの照合が成立したときには車両ドア錠の施解錠、エンジン始動等が可能となる。例えば特許文献1に示される電子キーシステムにおいては、車両は、車内に通信エリアを形成する車内アンテナと、車両周辺に通信エリアを形成する車外アンテナと、を備える。車外通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合が成立したときには、ドアロックの施錠状態を切り替える制御がされる。一方、車内通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合が成立したときには、エンジンの始動が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−118886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の通信技術の発達により、車両から遠く離れた位置に存在するユーザが携帯する電子キーと車両との間で不正に通信がされるおそれがある。例えば、無線通信技術を利用して遠方に存在する電子キーがあたかも車室内外の通信エリアに存在するかのように偽装することが考えられる。この場合、ドア錠の解錠、あるいはエンジン始動許可等の車両側での制御が不正に実行されることが懸念される。こうした電子キーの偽装等の新たな不正手口に対する防犯対策の重要性が高まりつつある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させた電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯されて車両側からの無線信号である要求信号に応じて自身の識別コードを含む同じく無線信号である応答信号を送信する電子キーと、車両に搭載されて前記要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記応答信号を受信する車載機と、を備え、前記車載機において前記応答信号に含まれる識別コードの照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、前記車載機又は前記電子キーはこれらの間で送受信される前記無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を、備え、前記車載機は、前記信号強度検出手段が検出する前記無線信号の信号強度の変化の態様に基づき前記電子キーを携帯するユーザの動きの妥当性が確認された場合にのみ車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、車載機は信号強度検出手段が検出する無線信号の信号強度の変化の態様に基づき電子キーを携帯するユーザの動きの妥当性を判断する。ここで、無線信号の信号強度は電子キーが車載機に近づくほど強くなり、離間するほど弱くなる性質を有する。このため、例えば、電子キーを携帯するユーザが車両に乗り込むにあたって、電子キーは車外側から車両に近づいていくため、信号強度は強くなる。また、電子キーを携帯するユーザが静止したときには、電子キーは車両と一定距離を保つため、信号強度は一定となる。このような信号強度の変化の態様に基づき判断されるユーザの動き及び静止等を通じて車載機はユーザの動きの妥当性を判断する。ユーザの動きが妥当でないと判断した場合には、正規のユーザが実際に車両付近にいるか否かが不明であるとして車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可しない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、ユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載機は前記信号強度検出手段が検出した前記無線信号の信号強度の変化に基づき同車載機及び前記電子キー間での前記無線信号を介した通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までのユーザの車内側への動きの有無を判断し、前記通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までに前記無線信号の信号強度が増加していることをドアの解錠又はエンジン始動許可の条件とすることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、車両ドアが施錠されている状態の車両へのユーザの接近及び離間を信号強度検出手段により検出する。具体的には、車載機及び電子キー間の通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までの期間に無線信号の信号強度が増加する場合には、車内側への動きがあると判断される。また、上記期間において無線信号の信号強度が増加しない、すなわち減少する若しくは一定値である場合には、車内側への動きがないと判断される。そして、上記期間に車内側への動きがある場合には、ユーザの動きが妥当であるとして車両ドアの解錠又はエンジン始動が許可される。一方、上記期間に車内側への動きがない場合、ユーザの動きが妥当でないとして車両ドアの解錠又はエンジン始動が許可されない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、車載機及び電子キー間の通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までの期間においてユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載機は車両の外側に設けられる車外に要求信号を送信する車外送信装置を備え、前記信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出可能に前記電子キーに設けられ、前記車載機は前記電子キーにより受信される車外に送信される前記要求信号の信号強度が、車両ドアが開かれる時刻から前記電子キーを携帯するユーザが車両に乗り込んだ時刻までの期間において減少していることをエンジン始動許可の条件とすることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、電子キーに設けられる信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出する。ここで、車外に要求信号を送信する車外送信装置は車外側に設けられているところ、電子キーを携帯するユーザの車内への乗り込み動作に伴い、車外送信装置とユーザ(電子キー)との距離は離れていく。このため、ユーザが車両ドアを開閉して車内への乗り込み動作する期間においては電子キーが受ける車外に送信される要求信号の信号強度は減少していく。車載機は上記期間において信号強度の減少がみられなかったときには、ユーザに乗り込み動作がなく、すなわちユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、車両への乗り込み動作時におけるユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載機は車内に設けられる車内に要求信号を送信する車内送信装置を備え、前記信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出可能に前記電子キーに設けられ、前記車載機は前記電子キーにより受信される車内に送信される要求信号の信号強度が、車両ドアが開かれる時刻から前記電子キーを携帯するユーザが車両に乗り込んだ時刻までの期間において増加していることをエンジン始動許可の条件とすることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、電子キーに設けられる信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出する。ここで、車内に要求信号を送信する車内送信装置は車内に設けられているところ、電子キーを携帯するユーザの車内への乗り込み動作に伴い、車内送信装置とユーザ(電子キー)との距離は近づいていく。このため、ユーザが車両ドアを開いて車内への乗り込み動作をする期間においては電子キーが受ける車内に送信される要求信号の信号強度は増加していく。車載機は上記期間において信号強度の増加がみられなかったときには、ユーザに乗り込み動作がなく、すなわちユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、車両への乗り込み動作時におけるユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、エンジン始動許可状態でのスイッチ操作を通じてエンジンを始動させるエンジンスイッチを備え、前記車載機は、前記無線信号の前記信号強度検出手段により検出される信号強度に、前記エンジンスイッチの操作した時刻の以前及び以後の少なくとも一方において変動があることをエンジン始動許可の条件とすることをその要旨としている。
【0015】
電子キーを携帯するユーザがエンジンスイッチを操作する際には、エンジンスイッチを操作するために上半身を動かしたり、腕を延ばしたりする。また、エンジンスイッチの操作後においても、上記体位をもとに戻す動作を行う。上記構成によれば、エンジンスイッチを操作した時刻の以前及び以後の少なくとも一方において、ユーザのエンジンスイッチの操作に伴う動きに応じて信号強度に変動があるか否かでユーザの動きの妥当性の判断を行っている。車載機は上記時刻の前後において信号強度に変動がない場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、エンジンスイッチ操作時のユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】本実施形態における車両に設けられる車内外アンテナ及びそれらが形成する車内外通信エリアを示した概略図。
【図3】本実施形態における各時刻間での両要求信号のRSSIの推移を示したグラフ。
【図4】本実施形態におけるRSSIの推移の算出方法を示したグラフ。
【図5】本実施形態におけるエンジン始動制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図6】他の実施形態における所定時刻間での要求信号のRSSIの推移を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、車両2の運転者によって所持される電子キー10と、車両2に配設された車載装置20とを備えている。電子キー10と車載装置20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件として車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が制御される。
【0019】
<電子キー10>
電子キー10は、無線通信機能を有し、車載装置20との相互通信を通じて、車載装置20の制御を行う。電子キー10は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部11と、その電子キー制御部11に電気的に接続されてLF帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部13とからなる。
【0020】
LF受信部12は、車載装置20から送信されるLF帯の無線信号である要求信号を受信すると、同要求信号をパルス信号に復調し、復調された復調信号を電子キー制御部11へ出力する。
【0021】
LF受信部12にはRSSI検出回路16が備えられていて、RSSI検出回路16は要求信号の受信信号強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を検出して、その検出結果であるRSSI情報を電子キー制御部11へ出力する。
【0022】
電子キー制御部11には例えばEEPROM等からなる不揮発性のメモリ11aが設けられ、そのメモリ11aには電子キー10固有のIDコードが登録されている。電子キー制御部11は、LF受信部12から要求信号の復調信号が入力されると、受信データを読み取り、応答信号を生成する。当該応答信号にはメモリ11aに登録されたIDコード及び上記RSSI情報が付加される。そして、電子キー制御部11はIDコード及びRSSI情報を含む応答信号をUHF送信部13へ出力する。そして、UHF送信部13は応答信号をUHF帯の信号に変調して車載装置20へ送信する。
【0023】
<車載装置20>
車載装置20は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットを備えて構成されている。車載装置20は各種車載装置を制御する車載制御部21と、その車載制御部21に電気的に接続された車外送信部22と、車内送信部23と、車載受信部24とを備えている。
【0024】
車外送信部22は、車載制御部21から車外要求信号Sroが入力されると、その車外要求信号Sroを所定周波数(LF帯)の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車外送信アンテナ22aを介して車両2の周辺(車外)に送信する。具体的には、図2の円中に拡大して示すように、車外送信アンテナ22aは各車両ドア5のアウトサイドドアハンドル4に内蔵されていて、車外送信アンテナ22aを中心とした底辺が車両側方に沿う半円状の車外通信エリア30に車外要求信号Sroが送信される。車外送信部22及び車外送信アンテナ22aは車外送信装置に相当する。
【0025】
車内送信部23は、車載制御部21から車内要求信号Sriが入力されると、その車内要求信号Sriを所定周波数(LF帯)の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車内送信アンテナ23aを介して車両2の室内(車内)に送信する。車内送信部23及び車内送信アンテナ23aは車内送信装置に相当する。
【0026】
図2に示すように、車内送信アンテナ23aは、具体的には前部及び後部座席(図示略)の中央に配置されていて、両車内送信アンテナ23aを中心とする円形の車内通信エリア31に車内要求信号Sriが送信される。両車内通信エリア31によって室内の略全域をカバーするように車内通信エリア31は設定されている。
【0027】
車載受信部24は、電子キー10から送信される応答信号を受信する。そして、応答信号をパルス信号に復調して車載制御部21へ出力する。車載制御部21は例えばEEPROM等からなる不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード、後述するエンジン始動制御プログラム、ユーザの動きの妥当性の判断基準である基準推移等の各種情報が記憶されている。車載制御部21は、車外送信部22に対して車外要求信号Sro、車内送信部23に対して車内要求信号Sriを間欠的にそれぞれ異なるタイミングで出力する。この際、車載制御部21は、受信される応答信号が車外要求信号Sro又は車内要求信号Sriの何れに応答したものであるかに基づいて、電子キー10が車外及び車内のいずれに存在するかを判断する。
【0028】
そして、車載制御部21は、要求信号Sri,Sroに応答して電子キー10から送信された応答信号が車載受信部24によって受信されると、その応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとの照合を行う。IDコードの照合が成立すると、車載制御部21は応答信号に含まれるRSSI情報を認識する。車載制御部21はRSSI情報に基づきユーザの動きを判断し、所定時間(各時刻間)におけるユーザの動きの妥当性が認められたときに、車両ドアの解錠、エンジン始動を許可する。ユーザの動きの妥当性の判断については、後で詳述する。
【0029】
また、図1に示すように、車載制御部21には、ドアハンドルセンサ32と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン制御装置35と、着座センサ36と、カーテシスイッチ37とが電気的に接続されている。
【0030】
ドアハンドルセンサ32は図2の円中に拡大して示すように、アウトサイドドアハンドル4に設けられる。ドアハンドルセンサ32はユーザのアウトサイドドアハンドル4への接触を検出して、車載制御部21に出力する。
【0031】
ドアロック装置34は、車両ドア5が閉じた状態において車両ドア5を自動的に施解錠する装置である。ドアロック装置34は車外における電子キー10とのIDコード照合が成立した場合、車載制御部21から解錠信号が入力されて車両ドア5を解錠可能状態とする。この解錠可能状態において、ユーザがアウトサイドドアハンドル4に触れると、それをドアハンドルセンサ32が検出して、その検出結果を車載制御部21に出力する。これにより、車載制御部21は後述するユーザの動きの妥当性が確認できたうえでドアロック装置34を介して車両ドア5を解錠する。
【0032】
エンジン制御装置35は、図示しないセルモータに接続される。そして、後述するユーザの動きの妥当性が確認できたとき車載制御部21から駆動信号が入力され、エンジン始動許可状態とされる。このエンジン始動許可状態において、運転席近傍に設置されるエンジンスイッチ33が操作されると、車載制御部21はエンジン制御装置35のセルモータを駆動してエンジンを始動させる。また、エンジン制御装置35はエンジンの駆動状態を示すエンジン状態信号を車載制御部21へ出力する。
【0033】
着座センサ36は運転座席に埋設されて、ユーザの着座を検出し、車載制御部21へ出力する。カーテシスイッチ37は車両ドア5の側面に設けられ、同車両ドア5の開閉を検出する。カーテシスイッチ37の検出結果は車載制御部21に出力される。
【0034】
前述のように、車載制御部21はRSSI情報に基づき所定時間(各時刻間)におけるユーザの動きの妥当性を判断する。
図3には、電子キー10が車外通信エリア30に進入して返信される応答信号を車載制御部21が受信した時刻t1からユーザが車両2に乗り込んで車両ドア5が閉じられた時刻t6から一定時間経過後の時刻t7までにおけるRSSIの推移が示されている。
【0035】
RSSIの推移は、車両2側から所定周期毎に送信される要求信号Sri,Sroに応じた、所定周期毎に返信される電子キー10側からの応答信号に含まれるRSSI情報を車載制御部21のメモリ21aに蓄積していくことで認識可能となる。具体的には、図4に示すように、RSSI情報に含まれる所定周期毎(所定時間毎)のRSSIをプロットしていく。RSSIの推移は各プロットに対して近似直線を引くことで得られる。
【0036】
このRSSIの推移を通じて電子キー10の動きの方向を判断することが可能となる。RSSIは電子キー10及び車外送信アンテナ22a又は車内送信アンテナ23a間の距離に応じて大小が決まる。具体的には、電子キー10が両送信アンテナ22a,23aに近い場合にはRSSIは大きく、遠い場合にはRSSIは小さい。このような性質により、RSSIの推移が正の傾きを有する場合には、電子キー10は車外送信アンテナ22a又は車内送信アンテナ23a方向に動いていると判断でき、負の傾きを有する場合には、電子キー10は車外送信アンテナ22a又は車内送信アンテナ23aから離間する方向に動いていると判断できる。このユーザの動きの方向の判断に基づき後述するユーザの動きの妥当性を判断する。
【0037】
次に、車載制御部21による車両ドア5の解錠からエンジン始動までの処理手順をユーザの動きの妥当性の判断について言及しつつ図5のフローチャートを参照して説明する。当該フローチャートは、車載制御部21のメモリ21aに予め格納されたエンジン始動制御プログラムに従って実行される。なお、ユーザの動きの妥当性の判断については、図3及び図4を参照する。
【0038】
まず、車両ドア5が施錠されている状態においては、車載制御部21は車外送信アンテナ22aを介して車外通信エリア30に車外要求信号Sroを送信する。ユーザが携帯する電子キー10が車外通信エリア30に進入して返信される応答信号を車載装置20が受信したとき、車載制御部21は応答信号に含まれるIDコードの照合(車外照合)を行う(S101)。当該車外照合が成立したとき(S101でYES)には、車載制御部21はユーザの動きの妥当性、すなわち車両2側への動きの有無を判断する(S102)。一方、車外照合が成立しないとき(S101でNO)には、車載制御部21は車両ドア5の解錠を許可せずにエンジン始動制御プログラムを終了する。
【0039】
ユーザの車両2側への動きの有無の判断は図3に示すように、応答信号を受信した時刻t1からユーザのアウトサイドドアハンドル4への接触がドアハンドルセンサ32により検出される時刻t2までの間のRSSIの推移に基づきなされる。なお、時刻t2までの期間においては車外要求信号Sroのみ送信され、車内要求信号Sriは送信されない。
【0040】
時刻t1から時刻t2までは電子キー10を携帯するユーザは車外側から運手席側の車両ドア5(正確には、運転席側の車外送信アンテナ22a)に近づいていく。このため、図3の上段に示すように、車外要求信号SroのRSSIは漸増していくと想定され、RSSIの推移の傾きは正となる。すなわち、RSSIの推移の傾きが正となる場合には、車載制御部21はユーザに車両2側への動きがあると判断して(S102でYES)、ドアロック装置34を介して車両ドア5の解錠を行う(S103)。
【0041】
RSSIの推移の傾きが正でなく、ゼロ以下の場合には、車載制御部21はユーザに車両2側への動きがないと判断して(S102でNO)、車両ドア5を解錠せずにエンジン始動制御プログラムを終了する。これにより、車両2から離れた位置において、静止しているユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正な車外照合、ひいては車両ドア5の解錠が防止できる。
【0042】
車両ドア5が正規に解錠された場合には、ユーザはアウトサイドドアハンドル4の操作を通じて車両ドア5を開いて運転席に着座した後に、車両ドア5を閉じる。このとき、車載制御部21はカーテシスイッチ37を通じて車両ドア5の開閉を検出可能である。また、着座センサ36はユーザの運転席への着座を検出する。車載制御部21は図3に示すように、カーテシスイッチ37及び着座センサ36の検出結果に基づき車両ドア5が開いた時刻t3及びユーザが運転席に着座した時刻t5を認識する。ここで、車載制御部21はカーテシスイッチ37の検出結果を通じて車両ドア5が開いた時刻t3を認識する。アウトサイドドアハンドル4に接触した時刻t2から車両ドア5を開いた時刻t3までにおいては、ユーザは車外においてアウトサイドドアハンドル4を操作しているところ、RSSIの推移に変動はない。本実施形態においては、時刻t2から時刻t3までのRSSIの推移に対してはユーザの動きの妥当性の判断は行っていない。
【0043】
車載制御部21は車両ドア5が開いたと認識したとき、車外要求信号Sroに加え、車内要求信号Sriを送信する。そして、車載制御部21は着座が検出されたとき車外要求信号Sroの送信を停止する。すなわち、車載制御部21は時刻t3から時刻t5までは車外要求信号Sroに加えて車内要求信号Sriを送信し、両通信エリア30,31に要求信号Sri,Sroが送信される。
【0044】
ここで、車両ドア5を開いたときには、車内通信エリア31に送信される車内要求信号Sriは僅かに車外に漏れる。このため、電子キー10は局所的にではあるが両要求信号Sri,Sroを同時に受信することがある。このときには、電子キー10は車外送信アンテナ22aから発せられる車外要求信号Sroに応じた応答信号と、車内送信アンテナ23aから発せられる車内要求信号Sriに応じた応答信号とをそれぞれ返信する。よって、車載制御部21は、図3の上段に示される車外送信アンテナ22aから発せられる車外要求信号SroのRSSIと、図3の下段に示される車内送信アンテナ23aから発せられる車内要求信号SriのRSSIとの両方の推移を同期間において算出する。
【0045】
電子キー10を携帯するユーザは車両ドア5が開いた時刻t3から車内に乗り込んで運転席に着座する時刻t5までの期間に、車外送信アンテナ22aから離れる方向へ動く。このため、車外要求信号SroのRSSIは漸減していくと想定され、RSSIの推移の傾きは負となる。すなわち、車載制御部21はRSSIの推移の傾きに基づきユーザの車外送信アンテナ22aから離間方向へ動きの有無を判断する(S104)。
【0046】
RSSIの推移の傾きが負となる場合には、車載制御部21はユーザに車外送信アンテナ22aから離間する方向への動きがあるとして、ユーザの動きが妥当であると判断する(S104でYES)。これにより、エンジン始動許可状態とする第1の条件が満たされる。
【0047】
一方、RSSIの推移の傾きが負でなく、ゼロ以上の場合には、車載制御部21はユーザに車外送信アンテナ22aから離間する方向への動きがないとしてユーザの動きが妥当でないと判断する(S104でNO)。この場合には、エンジン始動許可状態とせずにエンジン始動制御プログラムを終了する。これにより、車両2から離れた位置において、静止しているユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動等が防止できる。
【0048】
また、図3に示すように、ユーザが携帯する電子キー10が車内通信エリア31に進入して返信した応答信号を車載装置20が受信したときを時刻t4とする。すなわち、車載制御部21は時刻t4以降の車内要求信号SriのRSSIの推移を認識可能となる。
【0049】
車載制御部21は時刻t4において受信した応答信号に含まれるIDコードの照合(車内照合)を行う(S105)。車内照合が成立した(S105でYES)ときには、車載制御部21は時刻t3から時刻t5までにおけるRSSIの推移を通じてユーザの車内送信アンテナ23a方向への動きの有無を判断する(S106)。一方、車載制御部21は車内照合が成立しない(S105でNO)場合には、エンジン始動許可状態とすることなく、エンジン始動制御プログラムを終了する。
【0050】
電子キー10を携帯するユーザは車両ドア5が開いた時刻t3から車内に乗り込んで運転席に着座する時刻t5までに車内送信アンテナ23a方向へ動くと想定される。そのため、車内要求信号SriのRSSIは漸増していくと想定され、RSSIの推移の傾きは正となる。従って、RSSIの推移の傾きが正となる場合には、車載制御部21はユーザに車内送信アンテナ23a方向への動きがあるとして、ユーザの動きが妥当であると判断する(S106でYES)。これにより、エンジン始動許可状態とする第2の条件が満たされる。一方、RSSIの推移の傾きが正でなく、ゼロ以下の場合には、車載制御部21はユーザに車内送信アンテナ23a方向への動きがなく、ユーザの動きが妥当でないと判断する(S106でNO)。この場合には、エンジン始動許可状態とせずにエンジン始動制御プログラムを終了する。これにより、車両2から離れた位置において、ユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動等が防止できる。
【0051】
図3に示すように、ユーザが着座した時刻t5から車両ドア5が閉じる時刻t6までは、ユーザの動きは不定である。このため、図3の下段に2点鎖線で示した時刻t5から時刻t6までの車内要求信号SriのRSSIの推移に対しては何らの判断も行われない。
【0052】
また、車両ドア5の閉じた時刻t6から時刻t7までの一定時間T1においては、ユーザに動きがないと想定される。ユーザは車両ドア5の閉じ操作を行うところ、車両ドア5の閉じた時刻t6においてはユーザが車内で動くことはできないと想定されるからである。なお、一定時間T1は極めて短く設定される。このため、時刻t6から時刻t7までに車内要求信号SriのRSSIは一定であると想定され、RSSIの推移の傾きはゼロとなる。
【0053】
図3の円中に拡大して示すように、時刻t6におけるRSSIを基準値41として、この基準値41を中心値として一定の許容範囲42を設定する。RSSIがこの許容範囲42内を推移する場合には、RSSIの推移の傾きはゼロと判断される。許容範囲42はシミュレーション等によって、検出誤差やユーザの微細な動きに伴い生じるRSSIの推移の傾きを含む範囲に設定されている。車載制御部21はRSSIの推移の傾きを通じて時刻t6から時刻t7までにユーザが静止している否かを判断する(S107)。
【0054】
RSSIの推移の傾きがゼロであると判断された場合には、車載制御部21はユーザが静止している(S107でYES)として、ユーザの動きが妥当であると判断する。これにより、エンジン始動許可状態とする第3の条件が満たされる。一方、RSSIの推移の傾きがゼロでないと判断された場合には、車載制御部21はユーザが静止していない(S107でNO)として、ユーザの動きが妥当でないと判断する。この場合には、車載制御部21はエンジン始動許可状態とせずにエンジン始動制御プログラムを終了する。これにより、車両2から離れた位置において、静止していないユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動等が防止できる。
【0055】
上記エンジン始動許可状態とする第1〜第3の条件が満たされた場合に、車載制御部21は、エンジン制御装置35を介してエンジン始動許可状態とする(S108)。さらに、車載制御部21は、エンジン始動許可状態において、ブレーキの踏み込みを検知した状態でエンジンスイッチ33から操作信号が入力された(S109)ことを条件として、エンジン制御装置35に対して駆動信号を出力してエンジンを始動させる(S110)。そして、車載制御部21はエンジン始動制御プログラムを終了させる。
【0056】
このように、ユーザの動きの妥当性が確認された場合にのみ、車両ドア5の解錠及びエンジンの始動が可能とされるため、車両2のセキュリティ性を向上させることができる。また、ユーザの動きの妥当性の判断に供される両要求信号Sri,SroはLF帯の無線信号であるところ、高周波数帯の無線信号に比べてRSSIの推移は安定する。このため、より精度の高いユーザの動きの判断を行うことができる。
【0057】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車載装置20はRSSI検出回路16が検出する要求信号Sro、Sriの信号強度の変化の態様に基づき電子キー10を携帯するユーザの動きの妥当性を判断する。ここで、要求信号Sro、SriのRSSIは電子キー10が車載装置20に近づくほど強くなり、離間するほど弱くなる性質を有する。このため、例えば、電子キー10を携帯するユーザが車両2に乗り込むにあたっては、電子キー10が車外側から車両2に近づいていくため、RSSIは強くなる。また、電子キー10を携帯するユーザが静止したときには、電子キー10は車両2と一定距離を保つため、RSSIは一定となる。このようなRSSIの変化の態様に基づき判断されるユーザの動き及び静止等を通じて車載装置20はユーザの動きの妥当性を判断する。ユーザの動きが妥当でないと判断した場合には、正規のユーザが実際に車両2付近にいるか否かが不明であるとして車両ドア5の解錠又はエンジンの始動を許可しない。このように、IDコードの照合に加え、ユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0058】
(2)車両ドア5が施錠されている状態の車両2へのユーザの接近及び離間をRSSI検出回路16により検出する。具体的には、電子キー10の応答信号受信した時刻t1から車両ドア5のドアハンドル4を操作した時刻t2までの期間に車外要求信号SroのRSSIが増加する場合には、車内側への動きがあると判断される。また、上記期間において車外要求信号SroのRSSIが増加しない場合には、車内側への動きがないと判断される。そして、車載装置20は上記期間において車内側への動きがある場合には、ユーザの動きが妥当であるとして車両ドア5の解錠が許可される。一方、車載装置20は上記期間において車内側への動きがない場合、ユーザの動きが妥当でないとして車両ドア5の解錠が許可されない。このように、IDコードの照合に加え、電子キー10の応答信号受信した時刻t1から車両ドア5のドアハンドル4を操作した時刻t2までのユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0059】
(3)電子キー10に設けられるRSSI検出回路16は車両2側からの要求信号Sro,SriのRSSIを検出する。ここで、車外要求信号Sroを送信する車外送信部22は車外側のドアハンドル4に設けられているところ、電子キー10を携帯するユーザの車内への乗り込み動作に伴い、車外送信部22とユーザ(電子キー10)との距離は離れていく。このため、車両ドア5が開く時刻t3からユーザが着座する時刻t5までのユーザの乗り込み動作期間(時刻t3から時刻t5)においては電子キー10が受ける車外要求信号SroのRSSIは減少していく。車載装置20はユーザの乗り込み動作期間においてRSSIの減少がみられなかったときには、ユーザに乗り込み動作がなく、すなわちユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、IDコードの照合に加え、車両2への乗り込み動作期間におけるユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0060】
(4)電子キー10に設けられるRSSI検出回路16は車両側からの要求信号Sro,SriのRSSIを検出する。ここで、車内要求信号Sriを送信する車内送信部23は車内に設けられているところ、電子キー10を携帯するユーザの車内への乗り込み動作に伴い、車内送信部23とユーザ(電子キー10)との距離は近づいていく。このため、ユーザの乗り込み動作期間(時刻t3から時刻t5)においては電子キー10が受ける車内要求信号SriのRSSIは増加していく。車載装置20は当該期間においてRSSIの増加がみられなかったときには、ユーザに乗り込み動作がなく、すなわちユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、IDコードの照合に加え、車両2への乗り込み動作時におけるユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、時刻t1及び時刻t2間、時刻t3及び時刻t5間における車外要求信号SroのRSSIの推移、及び時刻t3及び時刻t5間、時刻t6及び時刻t7間における車内要求信号SriのRSSIの推移に基づきユーザの動きの妥当性を判断していた。換言すると、図5のフローチャートに示すように、ステップS102、S104、S106及びS107の計4つの条件によりユーザの動きの妥当性が判断されていた。しかし、ユーザの動きの妥当性の判断のために課す条件(S102、S104、S106及びS107)の数及び組み合わせはこれに限定されない。例えば、ステップS102における時刻t1及び時刻t2間に車両側の動きがあるか否かのみをユーザの動きの妥当性の判断基準としてもよい。この場合には、エンジン始動制御プログラムにおいて、ステップS104、S106、S107の判断は行われない。同様にして、各条件を組み合わせて、例えばステップS102及びステップS104のみについてユーザの動きの妥当性を判断してもよい。この場合には、エンジン始動制御プログラムにおいて、ステップS106、S107の判断は行われない。
【0062】
・上記実施形態においては、電子キー10側においては、RSSI検出回路16の検出結果に対して何らの判断も加えることなく、RSSI情報として応答信号に含ませて車両2側に送信していた。しかし、電子キー10側にてユーザの動きの妥当性を判断してもよい。この場合には、車両2側からは各時刻t1〜t7となった旨の信号が電子キー10に送信され、電子キー制御部11は同信号に基づき各時刻t1〜t7を認識する。そして、電子キー制御部11は各時刻t1〜t7間におけるRSSIの推移に基づきユーザの動きの妥当性を判断する。この妥当性の判断結果は車両側に送信される。これにより、車両2側においてユーザの動きの妥当性を判断する必要がないため、車両2側の処理負担を低減することができる。
【0063】
・上記実施形態においては、図5のフローチャートに示すステップS102において、ユーザに車両側への動きがない場合には、車両ドア5を解錠せずに、エンジン始動制御プログラムを終了していた。しかし、ステップS102をエンジン始動許可状態とするための新たな条件として、ユーザに車両側への動きがない場合に、エンジン始動許可状態しないことにしてもよい。本処理によれば、ステップS102においてユーザに車両側への動きがない場合に車両ドア5は解錠しうるものの、エンジンの始動は許可されないため、ユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動等が防止できる。
【0064】
・上記実施形態においては、RSSI検出回路16は電子キー10のLF受信部12に設けられていた。しかし、RSSI検出回路16が設けられる位置はこれに限定されない。例えば、電子キー10側であれば、電子キー制御部11に設けられていてもよい。また、車載装置20に設けられていてもよい。この場合には、例えばRSSI検出回路16は車載受信部24に設けられて、応答信号のRSSIを検出することになる。この場合でも、電子キー10の車両2への接近及び離間に応じてRSSI検出回路16の検出するRSSIは変動するため、RSSIの推移を算出可能である。よって、上記実施形態と同様にユーザの動きの妥当性が判断できる。本構成においては、応答信号にRSSI情報を含ませる必要がないため、特に電子キー10側の処理負担を低減することができる。
【0065】
さらに、RSSI検出回路16は電子キー10及び車載装置20以外の位置に独立してRSSI検出装置として設けてもよい。この場合には、RSSI検出装置は例えば車両2の外側に設置されて、電子キー10及び車載装置20間の要求信号又は応答信号の信号強度を検出する。本構成においても、電子キー10及び車載装置20間の距離に応じたRSSIが検出される。RSSI検出装置の検出結果は電子キー10又は車載装置20に出力される。
【0066】
・上記実施形態においては、図3に2点鎖線で示した時刻t5から時刻t6までの車内要求信号SriのRSSIの推移は算出するものの、それに対しては何らの判断も行っていない。そこで、時刻t5から時刻t6までにおいては要求信号Sriの送信を停止してもよい。この場合には、上記実施形態のセキュリティ性の向上という効果を確保しつつ、さらに時刻t5から時刻t6までにおける要求信号Sriの送信及びRSSIの推移の認識は不要となるため、無駄な電力消費を低減できる。
【0067】
・上記実施形態においては、RSSIの推移の傾きに基づきユーザの動きの妥当性を判断していた。しかし、ユーザの動きの妥当性の判断はこの方法に限定されない。具体的には各時刻t1〜t7におけるRSSIの比較を通じてユーザの動きの妥当性を判断してもよい。例えば、時刻t1におけるRSSIと時刻t2におけるRSSIとを比較して、時刻t2におけるRSSIが時刻t1におけるRSSIより大きければ、ユーザは車両2に近づいているとしてユーザの動きは妥当であると判断する。この場合には、各時刻t1〜t7におけるRSSIの比較のみで妥当性の判断ができるので、妥当性の判断がいっそう容易となる。
【0068】
また、以下のような方法でユーザの動きの妥当性の判断をしてもよい。すなわち、シミュレーション等で想定されるユーザの動きに応じたRSSIの推移を基準推移として設定する。当該基準推移を中心値として一定の許容範囲を設定する。RSSIの推移が前記許容範囲内である場合にはユーザの動きは妥当であると判断し、RSSIの推移が前記許容範囲を外れる場合にはユーザの動きは妥当でないと判断する。この方法であっても、上記実施形態同様に、ユーザの動きの妥当性を判断できる。
【0069】
・上記実施形態においては、着座センサ36を設けて、ユーザの運転席への着座を検出していた。しかし、この着座センサ36を省略してもよい。この場合には、カーテシスイッチ37を介して検出した車両ドア5が閉じた時刻t6においてユーザは確実に着座していると判断して、時刻t3から時刻t6までのRSSIの推移に基づきユーザの動きの妥当性、具体的には、ユーザが運転席に乗り込んだか否かを判断する。
【0070】
・上記実施形態においては、第1〜第3の条件がエンジン始動許可状態とするために課せられていた。しかし、条件はこれらに限定されない。電子キー10を携帯するユーザがエンジンスイッチ33を操作する際には、エンジンスイッチ33を操作するために上半身を動かしたり、腕を延ばしたりする。このときに、電子キー10には何らかの動きが生じる。すなわち、図6に示すように、エンジンスイッチ33が操作された時刻t21から同時刻t21以前の時刻t20までの間において、車内要求信号SriのRSSIの推移の傾きがゼロでないことを条件に加えてもよい。この場合にも時刻t6及び時刻t7間と同様に許容範囲Bを設定して、RSSIの推移がこの許容範囲B内を外れない場合には、RSSIの推移の傾きはゼロと判断する。許容範囲Bはシミュレーション等によって、検出誤差やユーザのスイッチ操作でない微細な動きに伴い生じるRSSIの推移の傾きを含む範囲に設定されている。なお、エンジンスイッチ33の操作がされた時刻t21以後においても、例えば延ばした腕を戻す等のスイッチ操作に伴う動きがあるところ、時刻t20から時刻t21以後の一定時間までのRSSIの推移に基づきユーザの動きの妥当性の判断をしてもよい。
【0071】
上記条件を加える場合には、図5のフローチャートで示す2点鎖線のステップS150において示すように、車載制御部21はRSSIの推移を通じて時刻t20から時刻t21においてエンジンスイッチ33の操作に伴うユーザの動きの有無を判断する。
【0072】
RSSIの推移の傾きがゼロでない場合には、車載制御部21はユーザに動きがある(S150でYES)として、ユーザの動きが妥当であると判断する。一方、RSSIの推移の傾きがゼロである場合には、車載制御部21はユーザに動きがない(S150でNO)としてユーザの動きが妥当でないと判断する。この場合には、車載制御部21はエンジン始動許可状態とせずにエンジン始動制御プログラムを終了する。このように、新たな条件を課すことで、車両2のセキュリティ性をいっそう向上させることができる。
【0073】
・上記実施形態においては、アウトサイドドアハンドル4にドアハンドルセンサ32を設けて、ユーザのアウトサイドドアハンドル4の把持がドアハンドルセンサ32により検出されて、その検出されたときを時刻t2と認識していた。しかし、ユーザのアウトサイドドアハンドル4の把持が検出可能であれば、ドアハンドルセンサ32に限定されず、例えばアウトサイドドアハンドル4に操作スイッチを設けて、その操作がされたときを時刻t2と認識してもよい。
【0074】
・上記実施形態においては、電子キー制御部11はRSSI検出回路16の検出結果であるRSSI情報を応答信号に含ませて車両2側に送信していた。しかし、RSSI情報を応答信号とは別の新たな無線信号に含ませて車両2側に送信してもよい。この場合には、新たな無線信号にはIDコードを含ませる必要はないので、車載制御部21のID照合に係る処理を減らすことができる。
【0075】
・上記実施形態においては、時刻t2から時刻t3までのRSSIの推移に対してはユーザの動きの妥当性の判断は行っていないが、時刻t2から時刻t3までにおいてもユーザの動きの妥当性の判断を行ってもよい。すなわち、アウトサイドドアハンドル4に接触した時刻t2から車両ドア5を開いた時刻t3までにおいては、ユーザは車外においてアウトサイドドアハンドル4を操作しているところ、ユーザは他の動作はできない。そのため、時刻t2から時刻t3までにおいて、RSSIは一定であると想定され、RSSIの推移の傾きはゼロとなる。この場合には、前述した図6に示す時刻t6から時刻t7と同様に許容範囲42を設定することで、ユーザの動きの妥当性の判断をより正確に行える。
【0076】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載機は前記信号強度検出手段により検出される前記無線信号の信号強度が、車両ドアが閉じた時刻から一定時間以上に亘り一定値であることをエンジン始動許可の条件とする電子キーシステム。
【0077】
ユーザは車両ドアの閉じ操作を行うところ、車両ドアの閉じた時刻から一定時間において、ユーザは他の動作は出来ず静止していると想定される。上記構成によれば、車両ドアの閉じた時刻から一定時間においてユーザの静止の有無、すなわち信号強度が一定値である否かに基づき、ユーザの動きの妥当性の判断を行っている。車載機は上記時刻から一定時間において一定でない値の信号強度が検出された場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、車両ドア閉時のユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0078】
(ロ)請求項3〜5の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、運転席にはユーザの同運転席への着座の有無を検出する着座センサが備えられ、前記車載機は前記着座センサによりユーザが着座したことを検出した時刻を前記車両に乗り込んだ時刻とする電子キーシステム。
【0079】
同構成によれば、運転席に着座センサを設けることで、ユーザが車両に乗り込んだ時刻を正確に検出することができる。このため、ユーザの動きの妥当性の判断の精度を向上させることができる。
【0080】
(ハ)請求項2〜5の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車両ドアに設けられるアウトサイドドアハンドルにはユーザの同ハンドルの操作を検出するハンドル操作検出手段が設けられており、前記車載機は前記ハンドル操作検出手段が前記ハンドルの操作を検出した時刻以前を前記車両ドアのドアハンドル操作前とする電子キーシステム。
【0081】
同構成によれば、アウトサイドドアハンドルにハンドル操作検出手段を設けることで、車両ドアのドアハンドル操作前の時刻を正確に検出することができる。このため、ユーザの動きの妥当性の判断の精度を向上させることができる。
【0082】
(ニ)請求項3〜5の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車両ドアには同車両ドアの開閉を検出するカーテシスイッチが設けられ、前記車載機は前記カーテシスイッチの検出結果により車両ドアの開時及び閉時を認識する電子キーシステム。
【0083】
同構成によれば、車載機はカーテシスイッチを設けることで、車両ドアが開いた時刻及び車両ドアが閉じた時刻を認識することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、11a…メモリ、12…LF受信部、13…UHF送信部、16…RSSI検出回路(信号強度検出手段)、20…車載装置(車載機)、21…車載制御部(車載制御装置)、21a…メモリ、22…車外送信部、22a…車外送信アンテナ、23…車内送信部、23a…車内送信アンテナ、24…車載受信部、24a…受信アンテナ、32…ドアハンドルセンサ(ハンドル操作検出手段)、33…エンジンスイッチ、34…ドアロック装置、35…エンジン制御装置、36…着座センサ、37…カーテシスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯されて車両側からの無線信号である要求信号に応じて自身の識別コードを含む同じく無線信号である応答信号を送信する電子キーと、車両に搭載されて前記要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記応答信号を受信する車載機と、を備え、
前記車載機において前記応答信号に含まれる識別コードの照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、
前記車載機又は前記電子キーはこれらの間で送受信される前記無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を、備え、
前記車載機は、前記信号強度検出手段が検出する前記無線信号の信号強度の変化の態様に基づき前記電子キーを携帯するユーザの動きの妥当性が確認された場合にのみ車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載機は前記信号強度検出手段が検出した前記無線信号の信号強度の変化に基づき同車載機及び前記電子キー間での前記無線信号を介した通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までのユーザの車内側への動きの有無を判断し、前記通信開始時から車両ドアのドアハンドル操作前までに前記無線信号の信号強度が増加していることをドアの解錠又はエンジン始動許可の条件とする電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載機は車両の外側に設けられる車外に要求信号を送信する車外送信装置を備え、
前記信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出可能に前記電子キーに設けられ、
前記車載機は前記電子キーにより受信される車外に送信される前記要求信号の信号強度が、車両ドアが開かれる時刻から前記電子キーを携帯するユーザが車両に乗り込んだ時刻までの期間において減少していることをエンジン始動許可の条件とする電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載機は車内に設けられる車内に要求信号を送信する車内送信装置を備え、
前記信号強度検出手段は車両側からの要求信号の信号強度を検出可能に前記電子キーに設けられ、
前記車載機は前記電子キーにより受信される車内に送信される要求信号の信号強度が、車両ドアが開かれる時刻から前記電子キーを携帯するユーザが車両に乗り込んだ時刻までの期間において増加していることをエンジン始動許可の条件とする電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
エンジン始動許可状態でのスイッチ操作を通じてエンジンを始動させるエンジンスイッチを備え、
前記車載機は、前記無線信号の前記信号強度検出手段により検出される信号強度に、前記エンジンスイッチの操作した時刻の以前及び以後の少なくとも一方において変動があることをエンジン始動許可の条件とする電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−25714(P2011−25714A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170200(P2009−170200)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】