説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させること。
【解決手段】ユーザは乗車後に車両ドア5の閉じ操作を行うところ、車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1経過後の時刻t2までの間、ユーザに他の動作はなく、静止していると想定される。そこで、車載装置20は、車両ドア5の閉じた時刻t1から時刻t2までの間におけるユーザの静止の有無に基づき、ユーザの動きの妥当性の判断を行う。このように、無線通信を通じたIDコードの照合に加え、乗車時における車両ドア5閉時のユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムは、電子キー及び車両間でのIDコードを含む各種信号の送受信を通じてIDコードの照合が成立したときには車両ドア錠の施解錠、エンジン始動等が可能となる。例えば特許文献1に示される電子キーシステムにおいては、車両は、車内に通信エリアを形成する車内アンテナと、車両周辺に通信エリアを形成する車外アンテナと、を備える。車外通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合が成立したときには、ドアロックの施錠状態を切り替える制御がされる。一方、車内通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合が成立したときには、エンジンの始動が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−118886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の通信技術の発達により、車両から遠く離れた位置に存在するユーザが携帯する電子キーと車両との間で不正に通信がされるおそれがある。例えば、無線通信技術を利用して遠方に存在する電子キーがあたかも車室内外の通信エリアに存在するかのように偽装することが考えられる。この場合、ドア錠の解錠、あるいはエンジン始動許可等の車両側での制御が不正に実行されることが懸念される。特に、不正にエンジン始動がされた場合には、車両盗難のおそれがある。こうした電子キーの偽装等の新たな不正手口に対する防犯対策の重要性が高まりつつある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させた電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯されて車両側からの無線信号である要求信号に応じて自身の識別コードを含む同じく無線信号である応答信号を送信する電子キーと、車両に搭載されて前記要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記応答信号を受信する車載機と、を備え、前記車載機は前記応答信号に含まれる識別コードの照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、ユーザの静止の有無を検出する動作検出手段を備え、前記車載機は前記動作検出手段の検出結果に基づき車両ドアが閉じた時刻から一定時間に亘りユーザが静止していることが認識されるときにのみエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0007】
ユーザは乗車後に車両ドアの閉じ操作を行うところ、車両ドアの閉じた時刻から一定時間内において、ユーザに他の動作はなく、静止していると想定される。上記構成によれば、車載機は車両ドアの閉じた時刻から一定時間経過するまでの間においてユーザの静止の有無に基づき、ユーザの動きの妥当性の判断を行う。すなわち、車載機は動作検出手段の検出結果に基づき上記時刻から一定時間に亘りユーザが静止していないと判断した場合には、ユーザの動きが妥当でないとして、たとえ識別コードの照合が成立したとしてもエンジンの始動を許可しない。一方、車載機は動作検出手段の検出結果に基づき上記時刻から一定時間に亘りユーザが静止していると判断した場合には、ユーザの動きが妥当であるとして、エンジンの始動を許可する。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、乗車時における車両ドア閉時のユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記動作検出手段は前記車載機及び前記電子キー間で送受信される前記無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を備え、前記車載機は前記信号強度検出手段により検出される前記無線信号の信号強度が、車両ドアが閉じた時刻から前記一定時間に亘り一定範囲内の値であるときユーザが静止しているとして、エンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、ユーザの静止の有無の判断は、信号強度検出手段により検出される信号強度が一定範囲内の値であるか否かに基づき行われる。車載機は車両ドアの閉じた時刻から一定時間経過するまでの間において一定範囲を超える値の信号強度が検出された場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。一方、車載機は車両ドアの閉じた時刻から一定時間に亘り一定範囲内の値の信号強度が検出された場合には、ユーザの動きが妥当であると判断し、エンジンの始動を許可する。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、乗車時における車両ドア閉時のユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記動作検出手段は前記電子キーを携帯するユーザの動きに伴う前記電子キーに働く加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記車載機は前記加速度検出手段により検出される加速度が、車両ドアが閉じた時刻から一定時間に亘りゼロを中心値とする一定範囲内であるときユーザが静止しているとして、エンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、ユーザの静止の有無の判断は、加速度検出手段により検出される加速度がゼロを中心値とする一定範囲内であるか否かに基づき行われる。車載機は車両ドアの閉じた時刻から一定時間内において一定範囲内を外れる加速度が検出された場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。一方、車載機は車両ドアの閉じた時刻から一定時間に亘り加速度が一定範囲内である場合には、ユーザの動きは妥当であると判断し、エンジンの始動を許可する。このように、無線通信を通じた識別コードの照合に加え、乗車時における車両ドア閉時のユーザ(電子キー)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キーの存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、無線技術を利用した電子キーの存在する位置の偽装等を困難とすることで、よりセキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1の実施形態における車両に設けられる車内外アンテナ及びそれらが形成する車内外通信エリアを示した概略図。
【図3】第1の実施形態におけるRSSIの推移の算出方法を示したグラフ。
【図4】第1の実施形態における時刻t1から時刻t2までの要求信号のRSSIの推移を示したグラフ。
【図5】第2の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図6】第2の実施形態における加速度センサにより検出される加速度の変化を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
図1に示されるように、電子キーシステム1は、車両2の運転者によって所持される電子キー10と、車両2に配設された車載装置20とを備えている。電子キー10と車載装置20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件として車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が制御される。
【0016】
<電子キー>
電子キー10は、無線通信機能を有し、車載装置20との相互通信を通じて、車載装置20の制御を行う。電子キー10は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部11と、その電子キー制御部11に電気的に接続されてLF帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部13とからなる。
【0017】
LF受信部12は、車載装置20から送信されるLF帯の無線信号である要求信号を受信すると、同要求信号をパルス信号に復調し、復調された復調信号を電子キー制御部11へ出力する。
【0018】
また、LF受信部12にはRSSI検出回路16が備えられている。RSSI検出回路16は要求信号の受信信号強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を検出して、その検出結果であるRSSI情報を電子キー制御部11へ出力する。なお、RSSI検出回路16は動作検出手段及び信号強度検出手段に相当する。
【0019】
電子キー制御部11には例えばEEPROM等からなる不揮発性のメモリ11aが設けられ、そのメモリ11aには電子キー10に固有のIDコードが登録されている。電子キー制御部11は、LF受信部12から要求信号の復調信号が入力されると、受信データを読み取り、応答信号を生成する。当該応答信号にはメモリ11aに登録されたIDコード及び上記RSSI情報が付加される。そして、電子キー制御部11はIDコード及びRSSI情報を含む応答信号をUHF送信部13へ出力する。そして、UHF送信部13は応答信号をUHF帯の信号に変調して車載装置20へ送信する。
【0020】
<車載装置>
車載装置20は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットを備えて構成されている。車載装置20は各種車載装置を制御する車載制御部21と、その車載制御部21に電気的に接続された車外送信部22と、車内送信部23と、車載受信部24とを備えている。
【0021】
車外送信部22は、車載制御部21から車外要求信号Sroが入力されると、その車外要求信号Sroを所定周波数(LF帯)の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車外送信アンテナ22aを介して車両2の周辺(車外)に送信する。具体的には、図2の円中に拡大して示すように、車外送信アンテナ22aは各車両ドア5のアウトサイドドアハンドル4に内蔵されていて、車外送信アンテナ22aを中心とした底辺が車両側方に沿う半円状の車外通信エリア30に車外要求信号Sroが送信される。
【0022】
車内送信部23は、車載制御部21から車内要求信号Sriが入力されると、その車内要求信号Sriを所定周波数(LF帯)の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車内送信アンテナ23aを介して車両2の室内(車内)に送信する。
【0023】
具体的には、図2に示すように、車内送信アンテナ23aは前部及び後部座席(図示略)の中央に配置されていて、両車内送信アンテナ23aを中心とする円形の車内通信エリア31に車内要求信号Sriが送信される。両車内通信エリア31によって室内の略全域をカバーするように車内通信エリア31の大きさは設定されている。
【0024】
図1に示すように、車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して電子キー10から送信される応答信号を受信する。そして、車載受信部24は、応答信号をパルス信号に復調して車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、例えばEEPROM等からなる不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード、ユーザの動きの妥当性の判断基準である許容範囲等の各種情報が記憶されている。車載制御部21は、車外送信部22に対して車外要求信号Sro、車内送信部23に対して車内要求信号Sriを間欠的にそれぞれ異なるタイミングで出力する。この際、車載制御部21は、受信される応答信号が車外要求信号Sro又は車内要求信号Sriの何れに応答したものであるかに基づいて、電子キー10が車外及び車内のいずれに存在するかを判断する。
【0025】
そして、車載制御部21は、車外要求信号Sroに応答して電子キー10から送信された応答信号が車載受信部24によって受信されると、その応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとの照合を行う(車外照合)。IDコードの照合が成立すると、車載制御部21は車両ドア5を解錠可能状態とする。
【0026】
また、車載制御部21は、車内要求信号Sriに応答して電子キー10から送信された応答信号が車載受信部24によって受信されると、その応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとの照合を行う(車内照合)。車内でのIDコードの照合が成立すると、車載制御部21は車内要求信号Sriに応じた応答信号に含まれるRSSI情報を認識する。車載制御部21はRSSI情報に基づきユーザの動きを判断する。具体的には、車載制御部21は車両ドア5が閉じた時刻から一定時間においてユーザの動きの妥当性が認められたとき、エンジンの始動を許可する。ユーザの動きの妥当性の判断については、後で詳述する。
【0027】
また、図1に示すように、車載制御部21には、ドアハンドルセンサ32と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン制御装置35と、カーテシスイッチ37とが電気的に接続されている。
【0028】
ドアハンドルセンサ32は、図2の円中に拡大して示すように、アウトサイドドアハンドル4に設けられる。ドアハンドルセンサ32はユーザのアウトサイドドアハンドル4への接触を検出して、検出結果を車載制御部21に出力する。
【0029】
ドアロック装置34は、車両ドア5が閉じた状態において車両ドア5を自動的に施解錠する装置である。ドアロック装置34は車外照合が成立した場合、車載制御部21から解錠信号が入力されて車両ドア5を解錠可能状態とする。この解錠可能状態において、車載制御部21はユーザがアウトサイドドアハンドル4に触れたとドアハンドルセンサ32を通じて検知したとき、ドアロック装置34を介して車両ドア5を解錠する。
【0030】
エンジン制御装置35は、図示しないセルモータに接続される。また、エンジン制御装置35は、後述するユーザの動きの妥当性が確認できたとき車載制御部21から駆動信号が入力され、エンジン始動許可状態とする。このエンジン始動許可状態において、運転席近傍に設置されるエンジンスイッチ33が操作されると、エンジン制御装置35はセルモータを駆動してエンジンを始動させる。また、エンジン制御装置35はエンジンの駆動状態を示すエンジン状態信号を車載制御部21へ出力する。
【0031】
ユーザの動きの妥当性はRSSIの推移の傾きにより判断される。RSSIの推移は、車両2側から所定周期毎に送信される車内要求信号Sriに応じた、所定周期毎に返信される電子キー10側からの応答信号に含まれるRSSI情報を車載制御部21のメモリ21aに蓄積していくことで認識可能となる。具体的には、図3に示すように、RSSI情報に含まれる所定周期毎(所定時間毎)のRSSIをプロットしていく。RSSIの推移は各プロットに対して近似直線を引くことで得られる。
【0032】
車載制御部21は、RSSIの推移を通じて電子キー10の動きを判断することが可能となる。RSSIは電子キー10及び車内送信アンテナ23a間の距離に応じて大小が決まる。このような性質により、RSSIの推移の傾きがゼロの場合には電子キー10は静止していると判断でき、傾きがゼロでない場合には電子キー10は動いていると判断できる。
【0033】
図4に示すように、車載制御部21は、車両ドア5が閉じた時刻t1から一定時間T1におけるRSSIの推移に基づきユーザの動きの妥当性を判断する。ここで言う、車両ドア5が閉じた時刻t1とは、車外照合成立後にユーザがアウトサイドドアハンドル4の操作を通じて車両ドア5を開いて乗車した後に、車両ドア5を閉じた時刻である。車載制御部21は、カーテシスイッチ37(図1参照)の検出結果に基づき車外照合成立後の車両ドア5の開閉を検出する。ここで、車両ドア5の閉じた時刻t1から時刻t2までの一定時間T1においてはユーザに動きがないと想定される。ユーザは、車両ドア5の閉じ操作を行って車両ドア5を閉じた時刻t1から時刻t2までにおいては、未だユーザは車両ドア5から手を離していないところ、ユーザが車内で動くことはないと想定されるからである。なお、一定時間T1は車両ドア5の閉じた時刻t1からエンジンスイッチ33を操作する時刻までに比較して極めて短く設定される。このため、時刻t1から時刻t2までの間の車内要求信号SriのRSSIは一定であり、RSSIの推移の傾きはゼロであると想定される。
【0034】
次に、RSSIの推移の傾きがゼロとなるか否かの判断基準について説明する。
図4に示すように、時刻t1におけるRSSIを基準値41として、この基準値41を中心値として一定の範囲値の許容範囲42を設定する。時刻t1から時刻t2までのRSSIの推移がこの許容範囲42内である場合には、RSSIの推移の傾きはゼロと判断される。許容範囲42はシミュレーション等によって、検出誤差やユーザの微細な動きに伴い生じるRSSIの推移の傾きを含む範囲に設定されている。車載制御部21は、RSSIの推移の傾きを通じて時刻t1から時刻t2までにユーザが静止している否かを判断する。
【0035】
RSSIの推移の傾きがゼロであると判断された場合には、車載制御部21はユーザが静止しているとして、ユーザの動きが妥当であると判断する。この場合には、車載制御部21はエンジン制御装置35に駆動信号を出力し、当該信号を受けたエンジン制御装置35はエンジン始動許可状態とする。さらに、エンジン制御装置35は、エンジン始動許可状態において、ブレーキの踏み込みを検知した状態でエンジンスイッチ33から操作信号が入力されたことを条件としてエンジンを始動させる。
【0036】
一方、RSSIの推移の傾きがゼロでないと判断された場合には、車載制御部21はユーザが静止していないとして、ユーザの動きが妥当でないと判断する。この場合には、車載制御部21はエンジン制御装置35に駆動信号を出力せず、エンジン始動許可状態としない。これにより、車両2から離れた位置において、静止していないユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動が防止できる。
【0037】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ユーザは乗車後に車両ドア5の閉じ操作を行うところ、車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1内において、ユーザに他の動作はなく、静止していると想定される。そこで、車載装置20は車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1経過するまでの間においてユーザの静止の有無に基づき、ユーザの動きの妥当性の判断を行う。具体的には、車載装置20はユーザの静止の有無の判断をRSSI検出回路16により検出されるRSSIが許容範囲42内の値である否かに基づき行う。車載装置20は車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1経過するまでの間において許容範囲42を外れるRSSIの推移が認識された場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。一方、車載装置20は車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1において許容範囲42内のRSSIの推移が認識された場合には、ユーザの動きが妥当であると判断し、エンジンの始動を許可する。このように、無線通信を通じたIDコードの照合に加え、乗車時における車両ドア5閉時のユーザ(電子キー10)の動きが適切であるかの認証を行うことで、電子キー10の存在する位置の偽装が困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0038】
また、RSSI検出回路16は電子キー10に設けられるところ、車内要求信号SriのRSSIを検出する。ここで、車内要求信号SriはLF帯の無線信号であるため、高周波数帯の無線信号に比べてRSSIは安定する。このため、より精度の高いユーザの静止の有無の判断を行うことができる。
【0039】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムの第2の実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。
【0040】
この実施形態の電子キーシステムは、ユーザの動きの妥当性の判断を電子キー10の加速度変化に基づき行う点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図5に示すように、この実施形態の電子キー10には加速度センサ19が設けられている。また、第1の実施形態と異なりRSSI検出回路16は省略されている。加速度センサ19は動作検出手段及び加速度検出手段に相当する。
【0041】
本実施形態における加速度センサ19は3軸方向(XYZ座標系における互いに直交するX軸、Y軸、Z軸)の加速度を検知可能であることが望ましい。加速度センサ19には機械式、光学式、半導体式のもの等があるが、電子キー10に内蔵可能であってユーザの動作に基づく加速度を検出できるものであれば何れであってもよい。
【0042】
電子キー制御部11は車外要求信号Sroを受信した時点で加速度センサ19を起動する。加速度センサ19は、図6に示すように、ユーザの動きに伴い生じる電子キー10の各軸(互いに直交するX軸、Y軸、Z軸)の加速度を電圧値として検出する。すなわち、電子キー10を携帯するユーザが動いたときには、それに応じた電圧変動がみられる。加速度センサ19の検出結果は電子キー制御部11に出力される。電子キー制御部11は当該検出結果を加速度情報として応答信号に付加して車両2側に送信する。車外照合が成立した後、車両ドア5が閉じた時刻t1からの一定時間T1において、車載制御部21は車内送信部23を介して受信した応答信号の加速度情報である加速度センサ19の検出結果に基づきユーザの動きの妥当性、具体的にはユーザが静止しているか否かを判断する。
【0043】
次に、ユーザが静止しているか否かの判断基準について説明する。
車載制御部21は、図6に示すように、各軸の加速度(電圧値)のゼロを中心値として一定の範囲値の許容範囲45を設定する。許容範囲45は、シミュレーション等によって、検出誤差やユーザの微細な動きに伴い生じる加速度の変化を含む範囲に設定されている。なお、当該許容範囲45はメモリ21aに予め記憶されている。車載制御部21は検出される加速度(電圧値)が許容範囲45を外れる場合には、ユーザは静止していないと判断する。一方、車載制御部21は、検出される加速度(電圧値)が許容範囲45内である場合、ユーザは静止していると判断する。
【0044】
第1の実施形態と同様に、ユーザが静止しているか否かの判断は、車両ドア5が閉じた時刻t1から一定時間T1経過後の時刻t2までされる。そして、車載制御部21は、時刻t1から時刻t2までの間において、ユーザが静止していると判断したときに、エンジン制御装置35に駆動信号を出力して、エンジン始動許可状態とさせる。一方、車載制御部21は、時刻t1から時刻t2までの間において、ユーザが静止していないと判断したときには、ユーザの動きは妥当でないとして、エンジン制御装置35に駆動信号を出力せず、エンジン始動許可状態としない。これにより、車両2から離れた位置において、静止していないユーザが所持する電子キー10の電波傍受等による不正なエンジン始動が防止できる。
【0045】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(2)ユーザの静止の有無の判断は、加速度センサ19により検出される加速度がゼロを含む許容範囲45内であるか否かに基づき行われる。車載装置20は、車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1において許容範囲45を外れる加速度が検出された場合には、ユーザの動きが妥当でないと判断し、エンジンの始動を許可しない。一方、車載装置20は、車両ドア5の閉じた時刻t1から一定時間T1に亘り加速度が許容範囲45内である場合には、ユーザの動きは妥当であると判断し、エンジンの始動を許可する。このように、許容範囲45を設定することで、次のような利点がある。すなわち、正規の電子キー10を携帯するユーザが車両ドア5を閉じる操作をする場合であっても、ユーザの微細な動きや、車両ドア5が閉じたときの振動等が電子キー10に加わり、加速度センサ19により検出される加速度は正確にゼロとならずに、僅かに加速度変化が検出される。このような場合であっても、加速度センサ19に検出される加速度に対してゼロを中心値とした許容範囲45を設定する。これにより、上述のような加速度変化が生じてもユーザは静止していると正しく判断される。なお、許容範囲45はシミュレーション等によって、ユーザの微細な動きや、車両ドア5が閉じること等に伴い生じる加速度の変化を含む範囲に設定されている。
【0046】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1及び第2の実施形態においては、電子キー10側においては、RSSI検出回路16又は加速度センサ19の検出結果に対して何らの判断も加えることなく、RSSI情報又は加速度情報として応答信号に含ませて車両2側に送信していた。しかし、電子キー10側にてユーザの動きの妥当性を判断してもよい。この場合には、車両2側からは車外照合成立後に車両ドア5が閉じた時刻t1となった旨の信号が電子キー10に送信され、電子キー制御部11は同信号に基づき時刻t1を認識する。そして、電子キー制御部11は時刻t1から時刻t2までにおけるRSSIの推移又は加速度変化に基づきユーザが静止しているか否か、すなわちユーザの動きの妥当性を判断する。この妥当性の判断結果は車両側に送信される。これにより、車両2側においてユーザの動きの妥当性を判断する必要がないため、車両2側の処理負担を低減することができる。
【0047】
・第1の実施形態においてはRSSI検出回路16の検出結果であるRSSI情報を応答信号に含ませ、第2の実施形態においては加速度センサ19の検出結果である加速度情報を応答信号に含ませ、それぞれ車両2側に送信していた。しかし、RSSI情報又は加速度情報を応答信号とは別の新たな無線信号に含ませて車両2側に送信してもよい。この場合には、新たな無線信号にはIDコードを含ませる必要はないので、車載制御部21のID照合に係る処理を減らすことができる。
【0048】
・第1の実施形態においてはRSSI検出回路16の検出結果に基づき、第2の実施形態においては加速度センサ19の検出結果に基づきユーザの動きの妥当性、具体的にはユーザが静止しているか否かの判断を行っていた。しかし、電子キー10にRSSI検出回路16及び加速度センサ19の両方を設け、RSSI検出回路16及び加速度センサ19の両検出結果に基づき、それぞれユーザの動きの妥当性の判断を行ってもよい。この場合には、応答信号にIDコードに加えRSSI情報及び加速度情報が付加される。そして、車載制御部21は両情報に含まれるRSSI検出回路16及び加速度センサ19の検出結果に基づきそれぞれユーザの動きの妥当性の判断を行う。そして、車載制御部21は両検出結果から、それぞれにつきユーザの動きの妥当性が確認できたときに、エンジン始動許可状態とする。このように、両検出結果に基づきそれぞれユーザの動きの妥当性の判断を行うところ、妥当性判断の精度を向上させることができる。
【0049】
・第1の実施形態においては、RSSI検出回路16は電子キー10のLF受信部12に設けられていた。しかし、RSSI検出回路16が設けられる位置はこれに限定されない。例えば、電子キー10側であれば、電子キー制御部11に設けられていてもよい。また、車載装置20に設けられていてもよい。この場合には、例えばRSSI検出回路16は車載受信部24に設けられて、応答信号のRSSIを検出することになる。この場合でも、電子キー10及び車両2の距離に応じてRSSI検出回路16の検出するRSSIは変動するため、RSSIの推移を算出可能である。よって、上記実施形態と同様にユーザが静止しているか否かを判断できる。本構成においては、応答信号にRSSI情報を含ませる必要がないため、特に電子キー10側の処理負担を低減させることができる。
【0050】
さらに、RSSI検出回路16は電子キー10及び車載装置20以外の位置に独立してRSSI検出装置として設けてもよい。この場合には、RSSI検出装置は例えば車両2の外側に固定されて、電子キー10及び車載装置20間の応答信号のRSSIを検出する。本構成においても、電子キー10及び車載装置20間の距離に応じたRSSIが検出される。
【0051】
・第1の実施形態においては、RSSIの推移の傾きに基づきユーザの動きの妥当性を判断していた。しかし、ユーザの動きの妥当性の判断は、この方法に限定されない。具体的には、時刻t1から時刻t2までにおけるRSSIの比較を通じてユーザの動きの妥当性を判断してもよい。例えば、時刻t1におけるRSSIと時刻t2におけるRSSIとを比較して、時刻t1におけるRSSIが時刻t2におけるRSSIと同一若しくは近似していれば、ユーザは静止しているとして、ユーザの動きは妥当であると判断する。この場合には、時刻t1から時刻t2までにおけるRSSIの比較のみで妥当性の判断ができるので、妥当性の判断がいっそう容易となる。この判断手法は、第2の実施形態にも適用可能である。すなわち、時刻t1における加速度と時刻t2における加速度とが何れもゼロと判断された場合に、ユーザは静止しているとして、ユーザの動きは妥当であると判断する。これにより、上記と同様に、ユーザの動きの妥当性の判断がいっそう容易となる。
【0052】
・第1及び第2の実施形態においては、時刻t1から時刻t2までにおいて、ユーザが静止していると判断したときにエンジン始動許可状態とされていた。しかし、エンジン始動許可状態とするための条件を付加してもよい。例えば、車両の運転席にユーザの着座の有無を検出する着座センサを備える。そして、車載装置20は車両ドアが閉じた時刻t1において、着座センサの検出結果を通じてユーザの着座が検出されなかった場合には、ユーザが車内にいるか否かが不明であるとして、エンジン始動許可状態としない。一方、車載装置20は車両ドアが閉じた時刻t1において、着座センサの検出結果を通じてユーザの着座が検出された場合には、ユーザの静止の有無について判断する。そして、車載装置20は、ユーザが静止していると判断された場合に、エンジン始動許可状態とする。このように、ユーザの着座をエンジンの始動許可の条件とすることで、いっそうセキュリティ性を向上させることができる。
【0053】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車両ドアには同車両ドアの開閉を検出するカーテシスイッチが設けられ、前記車載機は前記カーテシスイッチの検出結果により前記車両ドアが閉じた時刻を認識する電子キーシステム。
【0054】
同構成によれば、カーテシスイッチを設けることで、車載機は正確に車両ドアが閉じた時刻を認識することができる。
(ロ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、車両の座席にはユーザの同座席への着座の有無を検出する着座センサが備えられ、前記車載機は、前記車両ドアが閉じた時刻において、前記着座センサの検出結果を通じてユーザの着座を検出することをエンジンの始動許可の条件とする電子キーシステム。
【0055】
同構成によれば、車載機は車両ドアが閉じた時刻において、着座センサの検出結果を通じてユーザの着座が検出されなかった場合には、ユーザが車内にいるか否かが不明であるとして、エンジンの始動を許可しない。一方、車載機は車両ドアが閉じた時刻において、着座センサの検出結果を通じてユーザの着座が検出された場合には、次に動作検出手段の検出結果を通じてユーザの静止の有無について判断する。このように、ユーザの着座をエンジンの始動許可の条件とすることで、セキュリティ性をいっそう向上させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、11a…メモリ、12…LF受信部、13…UHF送信部、16…RSSI検出回路(信号強度検出手段、動作検出手段)、19…加速度センサ(加速度検出手段、動作検出手段)、20…車載装置(車載機)、21…車載制御部(車載制御装置)、21a…メモリ、22…車外送信部、22a…車外送信アンテナ、23…車内送信部、23a…車内送信アンテナ、24…車載受信部、24a…受信アンテナ、32…ドアハンドルセンサ(ハンドル操作検出手段)、33…エンジンスイッチ、34…ドアロック装置、35…エンジン制御装置、37…カーテシスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯されて車両側からの無線信号である要求信号に応じて自身の識別コードを含む同じく無線信号である応答信号を送信する電子キーと、車両に搭載されて前記要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記応答信号を受信する車載機と、を備え、
前記車載機は前記応答信号に含まれる識別コードの照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、
ユーザの静止の有無を検出する動作検出手段を備え、
前記車載機は前記動作検出手段の検出結果に基づき車両ドアが閉じた時刻から一定時間に亘りユーザが静止していることが認識されるときにのみエンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記動作検出手段は前記車載機及び前記電子キー間で送受信される前記無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を備え、
前記車載機は前記信号強度検出手段により検出される前記無線信号の信号強度が、車両ドアが閉じた時刻から前記一定時間に亘り一定範囲内の値であるときユーザが静止しているとして、エンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記動作検出手段は前記電子キーを携帯するユーザの動きに伴う前記電子キーに働く加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記車載機は前記加速度検出手段により検出される加速度が、車両ドアが閉じた時刻から一定時間に亘りゼロを中心値とする一定範囲内であるときユーザが静止しているとして、エンジンの始動を許可する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−25715(P2011−25715A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170201(P2009−170201)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】