説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、車載される単一の送信アンテナを利用して電子キーの位置判定を可能としつつ、電子キー及び車両間において迅速な無線通信を可能とすることにある。
【解決手段】第1のリクエスト信号Sr1は、第1の電界強度L1の領域と、その強度より弱い第2の電界強度L2の領域とからなる。電子キーが車室外エリアに存在する場合、第1のリクエスト信号Sr1が検波されることで、第1の電界強度L1の領域における信号レベルがしきい値Th以上となって、第2の電界強度L2の領域における信号レベルがしきい値Th未満となる。従って、第1のリクエスト信号Sr1が認識される。電子キーが車室内エリアに存在する場合には検波されることで、両電界強度L1,L2の領域における信号レベルがしきい値Th以上となる。従って、信号レベルが常にHiレベルとなって、第1のリクエスト信号Sr1が認識されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーシステムにおいては、電子キー及び車両間での無線通信を通じて、車両ドアの施解錠、エンジン始動等が許可される。例えば、車両は、車室内エリアにリクエスト信号を送信する車内アンテナと、車両周辺の車室外エリアにリクエスト信号を送信する車外アンテナと、を備える。何れかのエリアに進入した電子キーは、リクエスト信号を受信すると、自身のIDコードを含むレスポンス信号を送信する。車両は、車外アンテナを通じて送信したリクエスト信号に対するレスポンス信号を受信して、これに含まれるIDコードの照合が成立したとき車両ドアの施解錠を許可する。一方、車両は、車内アンテナを通じて送信したリクエスト信号に対するレスポンス信号を受信して、これに含まれるIDコードの照合が成立したときエンジンの始動を許可する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−92071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、構成の簡易化を図るべく、1つの車内アンテナで電子キーが車室内及び車室外の何れに存在するかが判定可能な電子キーシステムが検討されている。具体的には、図5に示すように、車内アンテナから送信されるリクエスト信号にRSSI(受信信号強度:Receive Signal Strength Indication)の測定用コードを付加する。電子キーは、リクエスト信号を受信すると、その測定用コードのRSSIを検出する。ここで、測定用コードには情報は付加されていないため、測定用コードのRSSIを安定して検出可能である。そして、電子キーは、RSSIの検出結果をRSSI情報としてレスポンス信号に含ませて送信する。
【0005】
ここで、車内アンテナ及び電子キー間の距離が小さくなるほど、電子キーにおいて検出されるRSSIは大きくなる。このため、車両は、受信したレスポンス信号に含まれるRSSI情報に基づき、電子キーが車室内及び車室外の何れに位置しているかを判定することができる。
【0006】
当該電子キーシステムにおいては、電子キーは、測定用コードのRSSIを検出し、その検出結果をRSSI情報としてレスポンス信号に付加する必要がある。車両は、リクエスト信号に測定用コードを付加し、受信したレスポンス信号に含まれるRSSI情報に基づき電子キーが車室内及び車室外の何れに位置しているかを判定する必要がある。このように、上記システムを採用した場合には、電子キー及び車両において必要となる処理が増え、電子キー及び車両間における迅速な通信が阻害されるおそれがあった。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載される単一の送信アンテナを利用して電子キーの位置判定を可能としつつ、電子キー及び車両間において迅速な無線通信が可能となる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯されるとともに、リクエスト信号を受信すると、受信した前記リクエスト信号を検波して、その検波信号の信号レベルをしきい値と比較してHiレベル及びLoレベルからなる信号に復調することでリクエスト信号を認識し、そのリクエスト信号の妥当性を確認したときレスポンス信号を送信する電子キーと、単一のアンテナが設けられ、同アンテナを通じて車両の周辺に設定される車室外エリアに送信される前記リクエスト信号の1つである第1のリクエスト信号を送信するとともに、受信した前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき制御対象の制御を許可する車載装置と、を備えた電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、前記第1のリクエスト信号を、第1の電界強度の領域と、この第1の電界強度より弱い第2の電界強度の領域との組み合わせとなるように変調して送信するとともに、前記電子キーは、受信した前記第1のリクエスト信号を検波し、その検波信号における信号レベルが、前記第1の電界強度の領域においてしきい値以上となることでHiレベルに復調され、前記第2の電界強度の領域において前記しきい値未満となることでLoレベルに復調されて得られるHiレベル及びLoレベルからなる第1のリクエスト信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室外エリアに存在するとして前記レスポンス信号を送信し、前記検波信号における信号レベルが、前記第1及び第2の電界強度の領域において、しきい値未満又はしきい値以上となることで、常にLoレベル又はHiレベルとなる信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室外エリアの外に存在するとして前記レスポンス信号を送信しないことをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、第1のリクエスト信号は、第1の電界強度の領域と、この第1の電界強度より弱い第2の電界強度の領域との組み合わせで構成される。
電子キーが車室外エリアに存在する場合には、第1のリクエスト信号が検波されることで、第1の電界強度の領域における信号レベルがしきい値以上となって、第2の電界強度の領域における信号レベルがしきい値未満となる。従って、しきい値を通じて復調されることで信号レベルがHiレベル及びLoレベルの繰り返しでなる第1のリクエスト信号が認識される。よって、車室外エリアにおいては、電子キーは、第1のリクエスト信号に対してレスポンス信号を送信する。これにより、制御対象の制御が許可される。
【0010】
また、電子キーが車室外エリアに対する車内側(車室内)に存在する場合には、第1のリクエスト信号が検波されることで、第1の電界強度の領域における信号レベル及び第2の電界強度の領域における信号レベルがそれぞれしきい値以上となる。従って、しきい値を通じて復調されることで信号レベルが常にHiレベルとなる。この場合には、電子キーからレスポンス信号が送信されない。
【0011】
また、電子キーが車室外エリアに対する車外側に存在する場合には、第1のリクエスト信号が検波されることで、第1の電界強度の領域における信号レベル及び第2の電界強度の領域における信号レベルがそれぞれしきい値未満となる。従って、しきい値を通じて復調されることで、信号レベルが常にLoレベルとなる。この場合にも、電子キーからレスポンス信号が送信されない。
【0012】
以上の構成によれば、電子キーが車室外エリアに存在するときにのみ、レスポンス信号が返信される。本構成においては、リクエスト信号の受信信号強度に基づき電子キーの位置を判定する構成と異なって、レスポンス信号及びリクエスト信号に新たな情報を付加する必要がない。また、電子キーは、従来と同様に検波及び復調等の信号処理を行えばよい。よって、電子キーが車室外であるか否かの判定を可能としつつ、電子キー及び車載装置間において迅速な無線通信が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、前記第1のリクエスト信号と、前記アンテナを通じて車室内に設定される車室内エリアに送信される第2のリクエスト信号との何れかを送信し、前記第2のリクエスト信号を、前記第2の電界強度の領域と、電界強度がゼロに近似する領域との繰り返しとなるように変調して送信し、前記電子キーは、受信した前記第2のリクエスト信号を検波し、その検波信号における信号レベルが、前記第2の電界強度の領域においてしきい値以上となることで、Hiレベルに復調され、前記ゼロに近似する領域において前記しきい値未満となることで、Loレベルに復調されて得られるHiレベル及びLoレベルからなる前記第2のリクエスト信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室内エリアに存在するとして前記レスポンス信号を送信し、前記検波信号における信号レベルが、前記第2の電界強度の領域及び前記ゼロに近似する領域においてそれぞれしきい値未満となることで、常にLoレベルとなる信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室内エリアの外に存在するとして前記レスポンス信号を送信しないことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、第2のリクエスト信号の送信を通じて、電子キーが車室内に存在するか否かの判定が可能となる。第2のリクエスト信号におけるHiレベルに対応する第2の電界強度は、第1のリクエスト信号のLoレベルに対応している。このため、電界強度の種類を増やすことなく、電子キーが車室内又は車室外にいるか否かの判定が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車載される単一の送信アンテナを利用して電子キーの位置判定を可能としつつ、電子キー及び車両間において迅速な無線通信が可能となる電子キーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子キーシステムの構成図。
【図2】通信エリアを示した車両の上面図。
【図3】第1のリクエスト信号における、(a)変調信号の波形図、(b)電子キーが車室内エリアに存在する場合の検波信号及び復調信号の波形図、(c)電子キーが車室外エリアに存在する場合の検波信号及び復調信号の波形図、(d)電子キーが送信エリアの外に存在する場合の検波信号及び復調信号の波形図。
【図4】第2のリクエスト信号における(a)変調信号の波形図、(b)電子キーが車室内エリアに存在する場合の検波信号及び復調信号の波形図、(c)電子キーが車室内エリアの外に存在する場合の検波信号及び復調信号の波形図。
【図5】背景技術におけるリクエスト信号及びレスポンス信号の内容を示す信号図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、ユーザによって所持される電子キー10と、車両2に設けられる車載装置20とを備えている。以下、電子キー10及び車載装置20の構成について説明する。
<車載装置>
図1に示すように、車載装置20は、車載制御部21と、車内送信部22と、送信アンテナ22aと、車載受信部24と、受信アンテナ24aとを備えている。また、車載制御部21には、ロックスイッチ36と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、が電気的に接続されている。
【0018】
図2に示すように、車内送信部22及び送信アンテナ22aは車室内における中央付近に設けられている。車載受信部24も車室内の中央付近に設けられている。
ロックスイッチ36はアウトサイドドアハンドル4の外面に設けられるとともに、ユーザに押し操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0019】
また、エンジンスイッチ33は運転席近傍に設けられるとともに、ユーザによって押し操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
車載制御部21は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ21aを備える。このメモリ21aには、電子キー10に記憶されるIDコードと同一のIDコードが記憶されている。
【0020】
車載制御部21は、デジタル情報である「0」及び「1」からなるリクエスト信号を生成し、その生成した信号を車内送信部22に出力する。車内送信部22は、リクエスト信号における「0」及び「1」に応じて、振幅の異なるLF(Low Frequency)帯の電波に変調する。すなわち、本例では変調方式として振幅偏移変調が採用されている。車載制御部21は、車内送信部22を介して無線送信する、リクエスト信号の電界強度を、強い方から順に第1の電界強度L1、第2の電界強度L2及び「0」の3段階で切り替えることで、「0」及び「1」の情報をLF帯の電波に含ませる。
【0021】
図2に示すように、リクエスト信号には、車両2の周辺まで送信される第1のリクエスト信号Sr1と、車室内に送信される第2のリクエスト信号Sr2とがある。
第2のリクエスト信号Sr2は、車室内に対応した車室内エリアA2に送信される。また、車室内エリアA2の外周には車室外エリアA1が設定されている。第1のリクエスト信号Sr1は、車室内エリアA2及び車室外エリアA1を合わせた送信エリアA3に送信される。
【0022】
図3(a)に示すように、送信アンテナ22aから出力される第1のリクエスト信号Sr1は、デジタル情報における「1」に対応する領域においては第1の電界強度L1の電波とされ、デジタル情報における「0」に対応する領域においては第2の電界強度L2の電波とされる。
【0023】
また、図4(a)に示すように、送信アンテナ22aから出力される第2のリクエスト信号Sr2は、デジタル情報における「1」に対応する領域においては第2の電界強度L2の電波とされ、デジタル情報における「0」に対応する領域においては電界強度が「0」とされる。
【0024】
車載制御部21は、ロックスイッチ36が操作された旨認識すると、車内送信部22及び送信アンテナ22aを介して第1のリクエスト信号Sr1を送信する。この第1のリクエスト信号Sr1の送信を通じて電子キー10が車室外エリアA1に存在するか否かの判定が行われる。電子キー10は、後述する理由により車室外エリアA1に存在するときにのみ、第1のリクエスト信号Sr1に対してレスポンス信号を送信する。
【0025】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したレスポンス信号を復調し、その復調した信号を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、第1のリクエスト信号Sr1に対するレスポンス信号を認識したとき、電子キー10が車室外エリアA1に存在すると判定する。そして、車載制御部21は、レスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、IDコードの照合が成立した旨判断したとき、ドアロック装置34を通じて車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【0026】
また、車載制御部21は、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、車内送信部22及び送信アンテナ22aを介して第2のリクエスト信号Sr2を送信する。この第2のリクエスト信号Sr2の送信を通じて電子キー10が車室内エリアA2に存在するか否かの判定が行われる。電子キー10は、後述する理由により車室内エリアA2に存在するときにのみ、第2のリクエスト信号Sr2に対してレスポンス信号を送信する。車載制御部21は、第2のリクエスト信号Sr2に対するレスポンス信号を認識したとき、電子キー10が車室内エリアA2に存在すると判定する。そして、車載制御部21は、レスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、IDコードの照合が成立した旨判断したとき、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0027】
<電子キー>
電子キー10は、電子キー制御部11と、LF受信部12と、UHF送信部13とを備える。
【0028】
電子キー制御部11は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ11aを備える。このメモリ11aには電子キー10に固有のIDコードが記憶されている。
【0029】
受信アンテナ12aは、各リクエスト信号Sr1,Sr2を受信すると、その受信信号をLF受信部12に出力する。LF受信部12は、検波部15と、復調部16と備える。
検波部15は、図3(a)に示される受信信号(アナログ信号)を、図3(b)〜(d)の上段に示すように、Hiレベル及びLoレベルからなる信号に検波し、その検波信号を復調部16に出力する。検波信号は、第1の電界強度L1の電波に対応する領域はHiレベルとされ、第2の電界強度L2の電波に対応する領域はLoレベルとされる。
【0030】
復調部16は、検波部15からの信号における信号レベルと、しきい値Thとの比較を通じて信号を2値化することで復調し、その復調信号を電子キー制御部11に出力する。
ここで、電子キー10が各位置に存在するときの第1のリクエスト信号Sr1の検波及び復調の態様について述べる。この各位置とは、車室内エリアA2における位置と、車室外エリアA1における位置と、送信エリアA3(車室外エリアA1及び車室内エリアA2)の外における位置である。
【0031】
図3(b)には、車室内エリアA2に存在する電子キー10において受信された第1のリクエスト信号Sr1の検波信号及び復調信号が示される。この検波信号のHiレベル及びLoレベルはしきい値Th以上となる。従って、復調信号は常にHiレベルとされる。
【0032】
ここで、図3(b)におけるLoレベルとなる領域においては、第2の電界強度L2の電波にて信号が送信されている。一方、図4(b)に示すように、第2のリクエスト信号Sr2においては、第1のリクエスト信号Sr1とは異なって、第2の電界強度L2にて送信された領域がHiレベルとなる。これにより、電子キー10が車室内エリアA2における同一の位置に存在するとき、図4(b)のHiレベルと、図3(b)のLoレベルとは同一の信号レベルに検波される。しきい値Thは、この同一の信号レベル未満に設定される。
【0033】
電子キー制御部11は、常にHiレベルとされた復調信号を受けると、電子キー10が車室内エリアA2に存在するとして、レスポンス信号を生成しない。
図3(c)には、車室外エリアA1に存在する電子キー10において受信された第2のリクエスト信号Sr2の検波信号及び復調信号が示される。この検波信号のHiレベルはしきい値Th以上となり、Loレベルはしきい値Th未満となる。従って、復調信号は、「1」に対応する領域はHiレベルとなって、「0」に対応する領域はLoレベルとなる。
【0034】
電子キー制御部11は、この復調信号を受けると、その信号レベルに基づき「0」及び「1」、すなわち第1のリクエスト信号Sr1を認識する。電子キー制御部11は、第1のリクエスト信号Sr1を認識すると、レスポンス信号を生成し、その生成した信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波に変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介して無線信号として送信する。
【0035】
図3(d)には、送信エリアA3の外に存在する電子キー10において受信された第1のリクエスト信号Sr1の検波信号及び復調信号が示される。この検波信号のHiレベル及びLoレベルはしきい値Th未満となる。従って、復調信号は常にLoレベルとされる。
【0036】
電子キー制御部11は、常にLoレベルとされた復調信号を受けると、電子キー10が送信エリアA3の外に存在するとして、レスポンス信号を生成しない。
次に、電子キー10が車室内エリアA2の内外に存在するときの第2のリクエスト信号Sr2の検波及び復調の態様について述べる。
【0037】
図4(b)には、車室内エリアA2に存在する電子キー10において受信された第2のリクエスト信号Sr2の検波信号及び復調信号が示される。この検波信号のHiレベルはしきい値Th以上となり、Loレベルはしきい値Th未満となる。従って、復調信号は、「1」に対応する領域はHiレベルとなって、「0」に対応する領域はLoレベルとなる。
【0038】
電子キー制御部11は、この復調信号を受けると、その信号レベルに基づき「0」及び「1」、すなわち第2のリクエスト信号Sr2を認識する。電子キー制御部11は、第2のリクエスト信号Sr2を認識すると、レスポンス信号を生成し、その生成した信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号をUHF帯の電波に変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介して無線送信する。
【0039】
図4(c)には、車室内エリアA2の外に存在する電子キー10において受信された第2のリクエスト信号Sr2の検波信号及び復調信号が示される。この検波信号のHiレベル及びLoレベルはしきい値Th未満となる。従って、復調信号は常にLoレベルとなる。電子キー制御部11は、常にLoレベルとなる復調信号を受けると、電子キー10が車室内エリアA2の外に存在するとして、レスポンス信号を生成しない。
【0040】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)送信アンテナ22aから出力される第1のリクエスト信号Sr1は、第1の電界強度L1の領域と、この第1の電界強度L1より弱い第2の電界強度L2の領域との繰り返しで構成される。
【0041】
電子キー10が車室外エリアA1に存在する場合には、第1のリクエスト信号Sr1が検波されることで、第1の電界強度L1の領域における信号レベルがしきい値Th以上となって、第2の電界強度L2の領域における信号レベルがしきい値Th未満となる。従って、しきい値Thを通じて復調されることで信号レベルがHiレベル及びLoレベルの繰り返しでなる第1のリクエスト信号Sr1が認識される。よって、車室外エリアA1においては、電子キー10は、第1のリクエスト信号Sr1に対してレスポンス信号を送信する。これにより、車両ドアの施解錠が可能となる。
【0042】
また、電子キー10が車室内エリアA2に存在する場合には、第1のリクエスト信号Sr1が検波されることで、第1の電界強度L1の領域における信号レベル及び第2の電界強度L2の領域における信号レベルがしきい値Th以上となる。従って、しきい値Thを通じて復調されることで信号レベルが常にHiレベルとなる。この場合には、電子キー10からレスポンス信号が送信されない。
【0043】
また、電子キー10が送信エリアA3の外に存在する場合には、第1のリクエスト信号Sr1が検波されることで、第1の電界強度L1の領域における信号レベル及び第2の電界強度L2の領域における信号レベルがしきい値Th未満となる。従って、しきい値Thを通じて復調されることで、信号レベルが常にLoレベルとなる。この場合にも、電子キー10からレスポンス信号が送信されない。
【0044】
以上の構成によれば、第1のリクエスト信号Sr1に対して、電子キー10が車室外エリアA1に存在するときにのみ、レスポンス信号が返信される。本構成においては、上記「発明が解決しようとする課題」において説明した構成、すなわちリクエスト信号の受信信号強度に基づき電子キー10の位置を判定する構成と異なって、レスポンス信号及びリクエスト信号に新たな情報を付加する必要がない。また、電子キー10は、従来と同様に検波及び復調等の信号処理を行えばよい。よって、電子キー10が車室外エリアA1であるか否かの判定を可能としつつ、電子キー10及び車載装置20間において迅速な無線通信が可能となる。
【0045】
(2)第2のリクエスト信号Sr2の送信を通じて、電子キー10が車室内エリアA2に存在するか否かの判定が可能となる。
また、第2のリクエスト信号Sr2におけるHiレベルに対応する第2の電界強度L2は、第1のリクエスト信号Sr1のLoレベルにも対応している。このため、出力する電界強度の種類を増やすことなく、電子キー10が車室内にいるか否かの判定、並びに車室外にいるか否かの判定が可能となる。
【0046】
(3)送信アンテナ22aは車室内に1つだけ設けられる。このため、構成を複雑化することなく、電子キー10が車室外に存在するか否かの判定が可能である。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0047】
・上記実施形態においては、デジタル情報における「1」にHiレベルが対応し、「0」がLoレベルに対応していた。しかし、これに限らず、例えば、Hiレベルが維持される長さに「1」及び「0」を対応させてもよい。この場合、Hiレベルが2ビット続いたときには「1」と認識され、1ビット分のHiレベルの後にLoレベルとなったときには「0」と認識される。
【0048】
・上記実施形態においては、ロックスイッチ36が操作されると、第1のリクエスト信号Sr1の送信を通じて、電子キー10が車室外エリアA1に存在するか否かの判定が行われていた。しかし、第1のリクエスト信号Sr1の送信タイミングはこれに限らず、例えば、ユーザの降車に伴い車両ドアを開いた後に閉じたときであってもよい。また、一定周期毎に第1のリクエスト信号Sr1が送信されてもよい。
【0049】
・上記実施形態においては、第1のリクエスト信号Sr1における「0」に対応する領域と、第2のリクエスト信号Sr2における「1」に対応する領域とでは、何れも第2の電界強度L2の電波にて信号が送信されている。しかし、これら領域において異なる電界強度にて信号を送信してもよい。この場合であっても、電子キー10が車室内エリアA2に存在する状況において第1のリクエスト信号Sr1が検波されることで、「0」に対応する領域の信号レベルがしきい値Th以上となり、かつ電子キー10が車室外エリアA1に存在する状況において「0」に対応する領域の信号レベルがしきい値Th未満となるように、「0」に対応する領域の電界強度が設定される。結果的に、「0」に対応する領域の電界強度は、第2のリクエスト信号Sr2における「1」に対応する電界強度と近似する。
【符号の説明】
【0050】
1…電子キーシステム、10…電子キー、15…検波部、16…復調部、20…車載装置(制御対象)、21…車載制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯されるとともに、リクエスト信号を受信すると、受信した前記リクエスト信号を検波して、その検波信号の信号レベルをしきい値と比較してHiレベル及びLoレベルからなる信号に復調することでリクエスト信号を認識し、そのリクエスト信号の妥当性を確認したときレスポンス信号を送信する電子キーと、
単一のアンテナが設けられ、同アンテナを通じて車両の周辺に設定される車室外エリアに送信される前記リクエスト信号の1つである第1のリクエスト信号を送信するとともに、受信した前記レスポンス信号の妥当性を確認したとき制御対象の制御を許可する車載装置と、を備えた電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、前記第1のリクエスト信号を、第1の電界強度の領域と、この第1の電界強度より弱い第2の電界強度の領域との組み合わせとなるように変調して送信するとともに、
前記電子キーは、受信した前記第1のリクエスト信号を検波し、その検波信号における信号レベルが、前記第1の電界強度の領域においてしきい値以上となることでHiレベルに復調され、前記第2の電界強度の領域において前記しきい値未満となることでLoレベルに復調されて得られるHiレベル及びLoレベルからなる第1のリクエスト信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室外エリアに存在するとして前記レスポンス信号を送信し、
前記検波信号における信号レベルが、前記第1及び第2の電界強度の領域において、しきい値未満又はしきい値以上となることで、常にLoレベル又はHiレベルとなる信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室外エリアの外に存在するとして前記レスポンス信号を送信しない電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、前記第1のリクエスト信号と、前記アンテナを通じて車室内に設定される車室内エリアに送信される第2のリクエスト信号との何れかを送信し、前記第2のリクエスト信号を、前記第2の電界強度の領域と、電界強度がゼロに近似する領域との繰り返しとなるように変調して送信し、
前記電子キーは、受信した前記第2のリクエスト信号を検波し、その検波信号における信号レベルが、前記第2の電界強度の領域においてしきい値以上となることで、Hiレベルに復調され、前記ゼロに近似する領域において前記しきい値未満となることで、Loレベルに復調されて得られるHiレベル及びLoレベルからなる前記第2のリクエスト信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室内エリアに存在するとして前記レスポンス信号を送信し、
前記検波信号における信号レベルが、前記第2の電界強度の領域及び前記ゼロに近似する領域においてそれぞれしきい値未満となることで、常にLoレベルとなる信号を認識したとき、前記電子キーが前記車室内エリアの外に存在するとして前記レスポンス信号を送信しない電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14935(P2013−14935A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148341(P2011−148341)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】