説明

電子キー

【課題】防水カバーの破損が抑制された電子キーを提供する。
【解決手段】ケースの内部空間に、電波を送信する送信部と該送信部に電波の送信を指示する制御信号を出力する制御部と該制御部に制御信号の出力を指示する内部スイッチとが設けられた回路基板と、該回路基板を防水するための防水カバーと、ケースの開口部から一部が露出し、ユーザーの押圧によって撓む外部スイッチと、が順次配置されており、回路基板における内部スイッチが設けられた上面と防水カバーとの間に可撓性シートが配置され、防水カバーと可撓性シートとを介して、外部スイッチから内部スイッチに、ユーザーの押圧力が作用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のキーレスエントリーシステムに適用される電子キーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、上部カバーと下部カバーとによって構成される内部空間に、上部より、ノブ部材と、防水カバーと、上面にスイッチ、下面にアンテナ素子を備えた基板と、が順次配置されてなる携帯機が提案されている。該携帯機は、ユーザーがノブ部材を押圧して、ノブ部材とともに防水カバーを撓ませることで、基板に設けられたスイッチに押圧力が作用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される携帯機では、防水カバーとスイッチとが直接接触する構成となっている。したがって、ユーザーの押圧によって、防水カバーとスイッチとが線接触、若しくは点接触し、防水カバーにスイッチから局所的な応力が作用し、これによって防水カバーが破損する虞がある。特に、ウインドウの昇降などを、スイッチの長押しによって操作する場合、防水カバーとスイッチとが長時間線接触、若しくは点接触することとなるので、防水カバーにスイッチから局所的な応力が長時間作用し、防水カバーが破損する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、防水カバーの破損が抑制された電子キーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケースの内部空間に、電波を送信する送信部と該送信部に電波の送信を指示する制御信号を出力する制御部と該制御部に制御信号の出力を指示する内部スイッチとが設けられた回路基板と、該回路基板を防水するための防水カバーと、ケースの開口部から一部が露出し、ユーザーの押圧によって撓む外部スイッチと、が順次配置されており、回路基板における内部スイッチが設けられた上面と防水カバーとの間に可撓性シートが配置され、防水カバーと可撓性シートとを介して、外部スイッチから内部スイッチに、ユーザーの押圧力が作用されることを特徴する。
【0007】
このように本発明によれば、防水カバーと内部スイッチとの間に可撓性シートが配置されている。これにより、防水カバーと内部スイッチとが直接接触することを抑制することができる。また、可撓性シートは、外部スイッチと防水カバーとを介して伝達される押圧力に応じて撓むので、防水カバーと可撓性シートとが面接触される。これにより、可撓性シートから防水カバーに均一な応力が作用されるので、内部スイッチから防水カバーに局所的な応力が作用することが抑制される。以上により、防水カバーの破損が抑制される。
【0008】
請求項2に記載のように、可撓性シートの形成材料としては、PET若しくはPCを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る電子キーの組立構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子キーを、車両のキーレスエントリーシステムに適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子キーの組立構成図である。図1に示すように、本実施形態では、下部ケース10から上部ケース11へ向かう方向を上部方向、上部ケース11から下部ケース10へ向かう方向を下部方向と示す。
【0011】
電子キー100は、互いに勘合されることで内部空間を構成する下部ケース10及び上部ケース11と、上記した内部空間に下部ケース10から上部方向へ順次配置された、回路基板20と、可撓性シート30と、防水カバー40と、外部スイッチ50と、を有している。回路基板20、可撓性シート30、防水カバー40、及び外部スイッチ50は、下部ケース10と上部ケース11とによって挟持されて、内部空間内に固定されている。
【0012】
回路基板20には、電波を送信する送信部(図示略)と、該送信部に電波の送信を指示する制御信号を出力する制御部(図示略)と、該制御部に制御信号の出力を指示する複数の内部スイッチ21と、が設けられている。上記した制御部の駆動電力は、回路基板20における下部方向側の面である下面20aに接続された電池22から供給される。電池22は、ホルダー23によって回路基板20に機械的に接続され、ターミナル24によって回路基板20に電気的に接続されている。内部スイッチ21は、回路基板20における上部方向側の面である上面20bに、後述する可撓性シート30と防水カバー40とを介して、外部スイッチ50の押圧部51と対向するように、実装されている。
【0013】
可撓性シート30は、回路基板20と防水カバー40との間に配置され、内部スイッチ21と防水カバー40とが直接接触し、内部スイッチ21と防水カバー40とが線接触、若しくは点接触することを抑制するものである。可撓性シート30における下部方向側の面である下面30aの一部が、内部スイッチ21と接触され、可撓性シート30における上部方向側の面である上面30bの全面が、防水カバー40と接触されている。本実施形態に係る可撓性シート30は、平面矩形状を成し、ポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成され、厚さが0.1mmとなっている。
【0014】
防水カバー40は、可撓性シート30と外部スイッチ50との間に配置され、回路基板20を防水するものである。防水カバー40は、開口部を有する箱状を成し、回路基板20と可撓性シート30とを内包することで、回路基板20を防水し、且つ回路基板20及び可撓性シート30における、下部方向及び上部方向に対して垂直な方向への移動を抑制している。防水カバー40の開口部を構成する縁部には、該縁部に沿った形状がリング状のシール部41が設けられており、該シール部41が、下部ケース10と上部ケース11との組み付け時に、下部ケース10の内面と上部ケース11の内面とによって挟まれて弾性変形することで、下部ケース10と上部ケース11との接続部位のシール性が確保されるようになっている。本実施形態に係る防水カバー40は、シリコーンゴムによって形成されている。
【0015】
外部スイッチ50は、ユーザーの押圧によって撓み、押圧力を内部スイッチ21に伝達するものである。外部スイッチ50は、上部ケース11に設けられた開口部11aから外部に露出する、複数の押圧部51を有しており、この露出した押圧部51を下部方向に押圧することで、ユーザーの押圧力が、外部スイッチ50、防水カバー40、及び可撓性シート30を介して、内部スイッチ21に作用されるようになっている。
【0016】
ユーザーの押圧力によって内部スイッチ21がオンされると、電波の送信を指示する制御信号が制御部から送信部に入力され、送信部から該制御信号を含む電波が送信される。上記した制御信号を含む電波を車両が受信すると、車両は、制御信号に含まれる指示を実行する。制御信号としては、車両のドアの開錠を指示する開錠制御信号と、車両のドアの施錠を指示する施錠制御信号と、車両のウインドウの昇降を指示する昇降制御信号と、がある。昇降制御信号は、内部スイッチ21を長押しした場合に、制御部から送信部に入力される。
【0017】
次に、本実施形態の特徴点と、その作用効果を説明する。上記したように、本実施形態に係る電子キー100では、回路基板20と防水カバー40との間に、可撓性シート30が配置されている。したがって、ユーザーが押圧部51を下部方向に押圧すると、その押圧力が、押圧部51、防水カバー40、及び可撓性シート30を介して、内部スイッチ21に伝達される。可撓性シート30は、押圧部51と防水カバー40とを介して伝達される押圧力に応じて撓むので、可撓性シート30と防水カバー40とが面接触される。可撓性シート30と内部スイッチ21とは、押圧力によって、線接触、若しくは点接触される。したがって、内部スイッチ21と可撓性シート30とは線接触、若しくは点接触されているので、内部スイッチ21から可撓性シート30には、局所的な応力が作用されるが、可撓性シート30と防水カバー40とは面接触されているので、可撓性シート30から防水カバー40には、均一な応力が作用される。このように、本実施形態に係る電子キー100は、可撓性シートを有さない従来の電子キーとは異なり、防水カバー40と内部スイッチ21とが直接接触されず、可撓性シート30から防水カバー40に均一な応力が作用される構成となっている。これにより、防水カバー40の破損が抑制される。
【0018】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0019】
本実施形態では、電子キー100がキーレスエントリーシステムに適用される例を示した。しかしながら、電子キー100が、電波を受信する受信部を有する場合、電子キー100を、スマートエントリーシステムに適用することができる。スマートエントリーシステムでは、車両から電子キー100に送信される応答信号に対する返答信号を、電子キー100が車両に送信し、車両が返答信号に含まれる電子キー100のIDと車両が保有するIDとを照合することで、自車両と電子キー100との認証を行っている。IDが一致した場合、車両は、上記した制御信号の受け入れ準備状態に移行する。この状態において、電子キー100から車両に制御信号を含む電波が送信されると、車両は制御信号に含まれる指示を実行する。具体的には、車両のドアの開錠施錠、若しくはウインドウの昇降を実行する。
【0020】
本実施形態では、可撓性シート30が、PETによって形成された例を示した。しかしながら、可撓性シート30の形成材料としては上記例に限定されず、例えば、ポリカーボネート(PC)を採用することもできる。
【0021】
本実施形態では、可撓性シート30の厚さが0.1mmである例を示した。しかしながら、可撓性シート30の厚さは、一方の押圧部51に作用された押圧力による可撓性シート30の撓みによって、他方の押圧部51と、防水カバー40と可撓性シート30とを介して対向する内部スイッチ21がオンされない程度の厚さであれば良く、特に限定されない。
【0022】
本実施形態では、内部スイッチ21を長押しした場合に、車両のウインドウの昇降を指示する昇降制御信号が、制御部から送信部に入力される例を示した。しかしながら、内部スイッチ21を長押しした場合に、車両のシートの格納振出を指示する格納振出制御信号が、制御部から送信部に入力されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
10・・・下部シート
11・・・上部シート
20・・・回路基板
21・・・内部スイッチ
30・・・可撓性シート
40・・・防水カバー
50・・・外部スイッチ
51・・・押圧部
100・・・電子キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部空間に、電波を送信する送信部と該送信部に電波の送信を指示する制御信号を出力する制御部と該制御部に前記制御信号の出力を指示する内部スイッチとが設けられた回路基板と、該回路基板を防水するための防水カバーと、前記ケースの開口部から一部が露出し、ユーザーの押圧によって撓む外部スイッチと、が順次配置されており、
前記回路基板における前記内部スイッチが設けられた上面と前記防水カバーとの間に可撓性シートが配置され、前記防水カバーと前記可撓性シートとを介して、前記外部スイッチから前記内部スイッチに、ユーザーの押圧力が作用されることを特徴とする電子キー。
【請求項2】
前記可撓性シートの形成材料は、PET若しくはPCであることを特徴とする請求項1に記載の電子キー。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189971(P2010−189971A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37087(P2009−37087)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】