説明

電子ビーム描画装置および電子ビーム描画装置の診断方法

【課題】描画中に放電箇所を特定することのできる電子ビーム描画装置および電子ビーム描画装置の診断方法を提供する。
【解決手段】電子ビーム描画装置は、電子ビームを放出する電子銃100と、電子銃100に電子の加速電圧を印加する高圧電源108と、電子銃100の内部の圧力変動と、高圧電源108の電圧変動とをそれぞれ演算し、圧力変動が所定の圧力変動値以上である時刻と、電圧変動が所定の電圧変動値以上である時刻とをデータ出力する演算部111と、演算部111から出力されたデータを受け取り、圧力変動が生じた時刻と電圧変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、電圧変動が生じた時刻に対応する圧力変動のデータがない場合にログBとしてこの時刻を記録する記録部112とを有する。電子銃100の内部の圧力は真空計110によって測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム描画装置および電子ビーム描画装置の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅は益々狭く微細なものとなっている。半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置によって、ウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。こうした微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造に電子ビーム描画装置が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置には、電子ビームを放出する電子銃が配置される。電子銃に高電圧が印加されると、電極表面におけるバリや傷などの突起部、塵埃などの付着物といった放電要因による異常放電が発生することがある。また、電極間の絶縁体表面における不純物や付着物などが放電要因となって大きな沿面放電が生じることもある。このような異常放電の発生頻度は、新しい電子銃の取り付け後や交換後または電子銃のメンテナンス後であって、電子銃の使用開始から数十時間程度といった初期段階で高くなる。
【0004】
電子銃に異常放電が発生すると、電子ビーム描画装置の高圧電源に電圧ドロップが引き起こされて稼動停止となり、電子ビーム描画装置の稼働率が低下する。また、描画工程で本来必要な電子ビームが消えてしまうことにより、描画精度が低下して製品歩留まりも低下する。
【0005】
そこで、こうした異常放電を抑制または防止するために、新しい電子銃を取り付けたり、交換したりした後、あるいは、電子銃をメンテナンスした後に、電子銃に対しコンディショニング処理を行う(例えば、特許文献1および2参照。)。コンディショニング処理は、電極表面や絶縁体表面における放電要因を除去し、電子銃の耐電圧特性を向上するのに効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−026112号公報
【特許文献2】特開平3−133040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のコンディショニング処理では、微小放電の要因となる微小な突起部や不純物あるいは付着物を十分に取り去ることができない。このため、電子銃の実使用時において、かかる微小放電の要因による異常放電が発生し易い。
【0008】
こうした異常放電と描画異常との関係について、従来は、電子銃の高圧電源に電圧変動が生じた時刻と、描画異常が生じた時刻とを照らし合わせ、両者が一致した場合に、この描画異常を放電に起因するものと判断していた。そして、高圧電源、ケーブルおよび電子銃を順次交換し、放電の原因となる箇所を特定していた。
【0009】
しかし、上記方法では、例えば、高圧電源本体の放電と、高圧電源とケーブルの接続箇所における放電との区別がつかず、特定に時間がかかるという問題があった。また、描画後に、描画異常が生じた時刻を挙げ、この時刻における高圧電源の電圧変動の有無を調べるので、描画途中で放電により不良となったマスクについても、描画を全て終了するまで待たなければならないという問題もあった。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、描画中に放電箇所を特定することのできる電子ビーム描画装置および電子ビーム描画装置の診断方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、電子ビームを放出する電子銃と、
電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源と、
電子銃の内部の圧力変動と、高圧電源の電圧変動とをそれぞれ演算し、圧力変動が所定の圧力変動値以上である時刻と、電圧変動が所定の電圧変動値以上である時刻とをデータ出力する演算部と、
演算部から出力されたデータを受け取り、圧力変動が生じた時刻と電圧変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、電圧変動が生じた時刻に対応する圧力変動のデータがない場合にログBとしてこの時刻を記録する記録部とを有することを特徴とする電子ビーム描画装置に関する。
【0013】
本発明の第2の態様は、電子ビームを放出する電子銃と、
電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源と、
電子銃の内部の圧力変動と電位変動をそれぞれ演算し、圧力変動が所定の圧力変動値以上である時刻と、電位変動が所定の電位変動値以上である時刻とをデータ出力する演算部と、
演算部から出力されたデータを受け取り、圧力変動が生じた時刻と電位変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、電位変動が生じた時刻に対応する圧力変動のデータがない場合にログBとしてこの時刻を記録する記録部とを有することを特徴とする電子ビーム描画装置に関する。
【0014】
本発明の第1の態様と第2の態様は、電子銃の内部の圧力を測定する真空計を有することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の態様は、電子銃の内部の圧力の時間変動と、電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源の電圧の時間変動とを測定し、
圧力に所定の圧力変動値以上の変動が生じた時刻と、電圧に所定の電圧変動値以上の変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、
電圧に上記の電圧変動値以上の変動が生じた時刻に、圧力に上記の圧力変動値以上の変動が生じていない場合にログBとしてこの時刻を記録することを特徴とする電子ビーム描画装置の診断方法に関する。
【0016】
本発明の第4の態様は、電子ビームを放出する電子銃と、電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源とを有する電子ビーム描画装置の診断方法であって、
電子銃の内部の圧力の時間変動と電位の時間変動とを測定し、
圧力に所定の圧力変動値以上の変動が生じた時刻と、電位に所定の電位変動値以上の変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、
電位に上記の電位変動値以上の変動が生じた時刻に、圧力に上記の圧力変動値以上の変動が生じていない場合にログBとしてこの時刻を記録することを特徴とする電子ビーム描画装置の診断方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、描画中に放電箇所を特定することのできる電子ビーム描画装置および電子ビーム描画装置の診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1における電子銃の構成を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態1における電子銃周辺の構成を示す図である。
【図3】図2の記録部における記録処理の一例である。
【図4】実施の形態2における電子銃周辺の構成を示す図である。
【図5】図4の記録部における記録処理の一例である。
【図6】実施の形態3の電子ビーム描画装置の構成を示す図である。
【図7】実施の形態3における電子ビーム描画方法の説明図である。
【図8】実施の形態4の電子ビーム描画装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における電子銃の構成を模式的に示す図である。
【0020】
図1に示すように、電子銃100は、電子光学鏡筒101の上方部に配設されており、一対の第1の電極102(102a、102b)と、第2の電極としてのコラム103と、第3の電極としてのウェネルト(引き出し電極とも言う。)104とを有する。
【0021】
電子ビーム描画装置の動作時には、電子銃100および電子光学鏡筒101の内部が高真空(例えば、10−7Pa程度)になる。そして、第1の電極102の先端に取り付けられたカソード105と、アノード107との間に、高圧電源108によって、例えば、50kV程度の高電圧(加速電圧)が印加される。これにより、アノード107は、カソード105から放出された電子を集束して電子ビームを形成する。また、ウェネルト104には、カソード105との間で所望のビーム電流を放出するためのバイアス電圧が印加される。尚、カソード105には、例えば、六硼化ランタン(LaB)が用いられる。
【0022】
第1の電極102a、102bの間に電圧が印加されると、カソード105から熱電子が出射する。この熱電子は、上記高電圧により加速され、電子ビーム106となって電子光学鏡筒101内に放出される。その後、電子ビーム106は、電子光学鏡筒101内に設けられた各種レンズ、各種偏向器、ビーム成形アパーチャなど(図示せず)によって所望の形状に成形された後、描画対象となるマスク(図示せず)上の所望の位置に照射される。
【0023】
電子銃100において、ウェネルト104は、高圧電源108の負極側に接続されており、第1の電極102は、バイアス電源109を介して、高圧電源108の負極側に接続されている。ここで、ウェネルト104は、第1の電極102よりも、例えば、500V程度負側に高くなる。また、アノード107およびコラム103は、高圧電源108の正極側に接続されるとともに接地電位にされる。ここで、図示しないが、第1の電極102a、102bと、コラム103と、ウェネルト104との間は、例えば、セラミックス絶縁体によって絶縁分離されている。
【0024】
電子銃100に上記高電圧が印加されると、電極間、特に、アノード107とウェネルト104との間において、電極表面におけるバリや傷などの突起部、塵埃などの付着物などに起因した異常放電が発生する。あるいは、電極間の絶縁体表面における不純物、付着物などの放電要因による大きな沿面放電が生じる。このような異常放電の発生頻度は、新しい電子銃の取り付け後や交換後、または、電子銃のメンテナンス後において、電子銃の使用を開始してから数十時間といった初期段階で高い。
【0025】
そこで、こうした異常放電を抑制または防止するために、新しい電子銃を取り付けたり、交換したりした後、あるいは、電子銃をメンテナンスした後に、電子銃に対しコンディショニング処理を行う。コンディショニング処理は、電極表面や絶縁体表面における放電要因を除去して電子銃の耐電圧特性を向上するのに効果がある。
【0026】
コンディショニング処理には、ガスコンディショニング方法と真空コンディショニング方法がある。ガスコンディショニング方法は、電子銃の内部を真空排気した後、放電を起こしやすいガスを導入して所定の圧力のガス雰囲気を形成し、コンディショニング処理する方法である。導入するガスとしては、例えば、窒素(N)ガスなどが用いられる。一方、真空コンディショニング方法は、電子銃の内部を高真空にしてコンディショニング処理する方法である。これらの方法は、それぞれ単独で行うこともあるが、組み合わせて行うこともある。
【0027】
しかしながら、上記のコンディショニング処理によっても、微小放電の要因となる微小な突起部や不純物あるいは付着物を十分に取り去ることができない。このため、電子銃の実使用時において、かかる微小放電の要因による異常放電が発生し易い。異常放電が発生すると描画不良が起こり易いので、異常放電が生じている箇所を迅速に特定して原因を取り除く措置をとることが必要になる。
【0028】
本実施の形態では、異常放電が起こっている箇所を迅速に特定するために、電子銃内部で圧力変動が生じた時刻と、高圧電源で電圧変動が生じた時刻とを調べる。図2は、電子銃周辺の構成を示す図である。また、図3は、図2の記録部における記録処理の一例である。以下では、これらの図を用いて、本実施の形態における電子ビーム描画装置の診断方法を説明する。
【0029】
本実施の形態においては、電子銃100の内部の圧力の時間変動と、高圧電源108の電圧の時間変動とを測定する。各測定値は演算部111に送られ、それぞれ所定値と比較される。演算部111で所定値以上の変動があると認められると、変動が起こった各時刻が記録部112にデータ出力される。例えば、基準値に対して10%以上の圧力変動があれば、この圧力値を記録部112に送る。また、例えば、50kVの基準電圧に対して500mVの電圧変動があれば、この電圧値を記録部112に送る。
【0030】
電子銃100の内部の圧力値は、真空計110によって測定することができる。真空計110は、フランジ(図示せず)を介して、電子銃100に接続させることができる。尚、真空計110による測定に代えて、電子銃100の内部の気体を排気する排気装置(図示せず)の圧力値を測定してもよい。排気装置としては、例えば、イオンポンプまたは分子ポンプなどを挙げることができる。
【0031】
電子銃100の内部に圧力変動が生じた時刻と、高圧電源108に電圧変動が生じた時刻とが一致している場合には、電子銃100の内部で放電が起きていると判断できる。そこで、この時刻を記録部112にログAとして記録する。
【0032】
電子銃100の内部に圧力変動が生じているが、高圧電源108には電圧変動が生じていない場合(すなわち、圧力変動が生じた時刻に対応する電圧変動のデータがない場合)は、真空計110のノイズと判断する。これは、描画異常に関係しないので、記録部112にログとして記録する必要はない。
【0033】
高圧電源108に電圧変動が生じているが、電子銃100の内部に圧力変動が生じていない場合(すなわち、電圧変動が生じた時刻に対応する圧力変動のデータがない場合)は、大気側の放電と判断できる。例えば、ケーブル114、ケーブル114と電子銃100の接続部、または、高圧電源108に放電が生じていると考えられる。そこで、この時刻を記録部112にログBとして記録する。
【0034】
図3は、図2の記録部112における記録処理の一例である。S101において、高圧電源108の電圧に変動が生じたことが検知されると、電子銃100の圧力に変動があるか否かが判定される(S102)。電子銃100に圧力変動がある場合には、電子銃100の内部で放電が起きているとして、ログAにその時刻が記録される(S103)。一方、電子銃100に圧力変動がない場合には、大気側で放電が起きているとして、ログBにその時刻が記録される(S104)。
【0035】
本実施の形態では、ログAおよびログBの少なくとも一方に記録がなされていれば、電子銃100、高圧電源108およびケーブル114のいずれかを交換する。例えば、ログAに記録があり、ログBに記録がない場合には、電子銃100を交換し、高圧電源108およびケーブル114は交換しなくてよい。尚、電子銃100の交換に代えて、コンディショニング処理を行ってもよい。また、ログAには記録がないが、ログBには記録がある場合には、高圧電源108および/またはケーブル114を交換する。この場合、電子銃100の交換は不要である。
【0036】
本実施の形態による電子ビーム描画装置の診断方法によれば、電子銃内での放電と、大気側での放電とを容易に区別することができる。これにより、放電箇所を迅速に特定することができるので、交換不要な部品を交換する必要がない。例えば、電子銃内での放電であれば、電子銃を交換すればよく、高圧電源やケーブルを交換する必要はない。
【0037】
また、ログAやログBに記録があれば、この時刻に描画異常が生じている可能性が高い。したがって、この時刻に描画した付近のパターンを検査することで、検査を効率的に行うことができる。
【0038】
本実施の形態では、予め、電子銃100の内部における圧力変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる圧力の変動値を把握しておくことが好ましい。尚、高圧電源108の電圧変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる電圧の変動値を把握しておくのでもよい。
【0039】
例えば、描画不良となる圧力の変動値を第1の閾値とする。そして、記録部112に記録された圧力変動が第1の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部112に記録された圧力変動が第1の閾値を超えるか否かの判断を判定部113で行い、第1の閾値を超えたと判定された場合には、(後述する)電子ビーム描画装置の制御計算機へ描画停止の信号を送る。
【0040】
あるいは、描画不良となる電圧の変動値を第2の閾値とする。そして、記録部112に記録された電圧変動が第2の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部112に記録された電圧変動が第2の閾値を超えるか否かの判断を判定部113で行い、第2の閾値を超えたと判定された場合には、電子ビーム描画装置の制御計算機へ描画停止の信号を送る。
【0041】
上記のようにすることにより、無駄な描画処理をなくすことができる。したがって、例えば、マスク製造工程におけるマスクのパターン描画時間やパターン検査時間を短縮して、スループットを向上させることが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1では、電子銃の内部における圧力の時間変動と、高圧電源の電圧の時間変動とをモニタした。これに対して、本実施の形態では、電子銃の内部における圧力と電位の各時間変動をモニタする。
【0043】
図4は、本実施の形態における電子銃周辺の構成を模式的に示す図である。尚、この図において、図1と同じ符号を付した部分は同じものであるので説明を省略する。
【0044】
図4において、電子銃200は筐体201を有し、図1に示す構成は、この筐体201の内部に配置される。また、筐体201には、導電板202が絶縁体203を介して取り付けられている。導電板202には、例えば、SUS(Steel Use Stainless;ステンレス鋼)などを用いることができる。絶縁体203には、例えば、セラミックスなどを用いることができる。導電板202は、電子銃200の内部の電位を測定するのに用いられる。この電位はアンプ204で増幅され、演算部207に送られる。
【0045】
また、筐体201には、フランジ205を介して真空計206が接続している。真空計206は、電子銃200の内部の圧力を測定するのに用いられる。測定した圧力値は、演算部207に送られる。尚、真空計206による測定に代えて、電子銃200の内部の気体を排気する排気装置(図示せず)の圧力値を測定してもよい。排気装置としては、例えば、イオンポンプまたは分子ポンプなどを挙げることができる。
【0046】
演算部207に送られた電位と圧力の各測定値は、それぞれ所定値と比較される。演算部207で所定値以上の変動があると認められると、変動が起こった各時刻が記録部208にデータ出力される。例えば、基準値に対して10%以上の圧力変動があれば、この圧力値を記録部208に送る。また、例えば、50kVの基準電位に対して500mVの電位変動があれば、この電位値を記録部208に送る。
【0047】
電子銃200の内部に圧力変動が生じた時刻と電位変動が生じた時刻とが一致している場合には、電子銃200の内部で放電が起きていると判断できる。そこで、この時刻を記録部208にログAとして記録する。
【0048】
電子銃200の内部に圧力変動が生じているが、電位変動は生じていない場合(すなわち、圧力変動が生じた時刻に対応する電位変動のデータがない場合)は、真空計206のノイズと判断する。これは、描画異常に関係しないので、記録部208にログとして記録する必要はない。
【0049】
電子銃200の内部に電位変動が生じているが、圧力変動はない場合(すなわち、電位変動が生じた時刻に対応する圧力変動のデータがない場合)は、大気側の放電と判断できる。例えば、ケーブル210、ケーブル210と電子銃200の接続部、または、高圧電源108に放電が生じていると考えられる。そこで、この時刻を記録部208にログBとして記録する。
【0050】
図5は、図4の記録部208における記録処理の一例である。S201において、電子銃200の電位に変動が生じたことが検知されると、電子銃200の圧力に変動があるか否かが判定される(S202)。電子銃200に圧力変動がある場合には、電子銃200の内部で放電が起きているとして、ログAにその時刻が記録される(S203)。一方、電子銃200に圧力変動がない場合には、大気側で放電が起きているとして、ログBにその時刻が記録される(S204)。
【0051】
本実施の形態では、ログAおよびログBの少なくとも一方に記録がなされていれば、電子銃200、高圧電源108およびケーブル210のいずれかを交換する。例えば、ログAに記録があり、ログBに記録がない場合には、電子銃200を交換し、高圧電源108およびケーブル210は交換しなくてよい。尚、電子銃200の交換に代えて、コンディショニング処理を行ってもよい。また、ログAには記録がないが、ログBには記録がある場合には、高圧電源108および/またはケーブル210を交換する。この場合、電子銃200の交換は不要である。
【0052】
本実施の形態による電子ビーム描画装置の診断方法によっても、電子銃内での放電と、大気側での放電とを容易に区別することができる。これにより、放電箇所を迅速に特定することができるので、交換不要な部品を交換する必要がない。例えば、電子銃内での放電であれば、電子銃を交換すればよく、高圧電源やケーブルを交換する必要はない。
【0053】
また、ログAやログBに記録があれば、この時刻に描画異常が生じている可能性が高い。したがって、この時刻に描画した付近のパターンを検査することで、検査を効率的に行うことができる。
【0054】
本実施の形態では、予め、電子銃200の内部における圧力変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる圧力の変動値を把握しておくことが好ましい。尚、電子銃200の内部における電位変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる電位の変動値を把握しておくのでもよい。
【0055】
例えば、描画不良となる圧力の変動値を第1の閾値とする。そして、記録部208に記録された圧力変動が第1の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部208に記録された圧力変動が第1の閾値を超えるか否かの判断を判定部209で行い、第1の閾値を超えたと判定された場合には、(後述する)電子ビーム描画装置の制御計算機へ描画停止の信号を送る。
【0056】
あるいは、描画不良となる電位の変動値を第3の閾値とする。そして、記録部208に記録された電位変動が第3の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部208に記録された電位変動が第3の閾値を超えるか否かの判断を判定部209で行い、第3の閾値を超えたと判定された場合には、電子ビーム描画装置の制御計算機へ描画停止の信号を送る。
【0057】
上記のようにすることにより、無駄な描画処理をなくすことができる。したがって、例えば、マスク製造工程におけるマスクのパターン描画時間やパターン検査時間を短縮して、スループットを向上させることが可能となる。
【0058】
実施の形態3.
図6は、本実施の形態の電子ビーム描画装置の構成を示す図である。この電子ビーム描画装置30は、(図1および図2に示す)実施の形態1の電子銃およびその周辺装置を備えている。また、電子ビーム描画装置30は、マスク基板32に対して描画を行う描画部Aと、描画を制御する制御部Bとを備えている。
【0059】
描画部Aは、試料室31と電子ビーム光学系40を有する。試料室31には、ステージ33が配置され、ステージ33上にはマスク基板32が載置されている。電子ビーム光学系40には、電子銃100、各種レンズ37、38、39、41、42、ブランキング用偏向器43、成形偏向器44、ビーム走査用の主偏向器45、ビーム走査用の副偏向器46、および、2個のビーム成形用アパーチャ47、48が配置されている。
【0060】
制御部Bは、描画データが入力される入力部51と、この描画データを読み出す制御計算機50と、制御計算機50から送られた描画データをフレーム領域毎に格納するパターンメモリ52と、パターンメモリ52に格納されたフレーム情報を解析するパターンデータデコーダ53および描画データデコーダ54と、これらからデータを送られて、電子ビーム光学系40に配置された各偏向器を制御するブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57および副偏向器ドライバ58と、パターンデータデコーダ53からデータを送られて副偏向領域の偏向量を算出する副偏向領域偏向量算出部60と、セトリング時間を決めるセトリング時間決定部61と、制御計算機50、副偏向領域偏向量算出部60およびセトリング時間決定部61からデータを送られて、ブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57および副偏向器ドライバ58を制御する偏向制御部62とを有する。また、制御部Bは、ステージ33を駆動するステージ駆動回路34と、ステージ33の移動位置を測定する位置回路35とを有する。
【0061】
次に、図6および図7を参照しながら、電子ビーム描画装置30の構成についてさらに詳しく説明する。
【0062】
図6において、電子ビーム描画装置30の試料室31内には、試料であるマスク基板32が設置されたステージ33が設けられている。ステージ33は、ステージ駆動回路34によりX方向とY方向に駆動される。ステージ33の移動位置は、レーザ測長計などを用いた位置回路35により測定される。
【0063】
試料室31の上方には、電子ビーム光学系40が設置されている。この電子ビーム光学系40は、本実施の形態の電子銃100、各種レンズ37、38、39、41、42、ブランキング用偏向器43、成形偏向器44、ビーム走査用の主偏向器45、ビーム走査用の副偏向器46、および、2個のビーム成形用アパーチャ47、48などから構成されている。
【0064】
電子銃100は、図1の電子銃100に対応するものであり、図2の高圧電源108、演算部111、記録部112および判定部113が接続している。また、判定部113は、制御計算機50に接続している。
【0065】
これらによって、電子ビーム描画装置30では、放電に関する診断、具体的には、放電が起こっているか否かと、起こっている場合にその箇所の特定を行うことができる。
【0066】
すなわち、電子銃100の内部の圧力変動と、高圧電源108の電圧変動とを測定し、演算部111に送る。そして、演算部111で所定値以上の圧力変動や電圧変動があると認められると、これらの測定値は記録部112に送られて記録される。このとき、電子銃100の内部に圧力変動が生じた時刻と、高圧電源108に電圧変動が生じた時刻とが一致している場合には、電子銃100の内部で放電が起きていると判断し、記録部112にログAとして記録する。一方、電子銃100の内部に圧力変動はないが、高圧電源108に電圧変動が生じている場合には、大気側の放電と判断し、記録部112にログBとして記録する。尚、電子銃100の内部に圧力変動が生じているが、高圧電源108に電圧変動が生じていない場合には、真空計110のノイズと判断する。
【0067】
ログAおよびログBの少なくとも一方に記録がなされていれば、放電が起こっていると判定され、電子銃100、高圧電源108およびケーブル114(図2参照)のいずれかを交換する。例えば、ログAに記録があり、ログBに記録がない場合には、電子銃100を交換し、高圧電源108およびケーブル114は交換しなくてよい。尚、電子銃100の交換に代えて、コンディショニング処理を行ってもよい。また、ログAには記録がないが、ログBに記録がある場合には、高圧電源108および/またはケーブル114を交換する。この場合、電子銃100の交換は不要である。
【0068】
本実施の形態の電子ビーム描画装置30によれば、電子銃100の内部での放電と、ケーブル114または高圧電源108での放電とを容易に区別することができる。したがって、放電箇所を迅速に特定することができ、交換不要な部品を交換する必要がない。例えば、上述のように、電子銃100の内部での放電であれば、電子銃100を交換すればよく、高圧電源108やケーブルを交換する必要はない。
【0069】
本実施の形態では、予め、電子銃100の圧力変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる圧力の変動値を把握しておくことが好ましい。尚、高圧電源108の電圧変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる電圧の変動値を把握しておくのでもよい。
【0070】
例えば、描画不良となる圧力の変動値を第1の閾値とする。そして、記録部112に記録された圧力変動が第1の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部112に記録された圧力変動が第1の閾値を超えるか否かの判断を判定部113で行い、第1の閾値を超えたと判定された場合には、制御計算機50へ描画停止の信号を送る。
【0071】
あるいは、描画不良となる電圧の変動値を第2の閾値とする。そして、記録部112に記録された電圧変動が第2の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部112に記録された電圧変動が第2の閾値を超えるか否かの判断を判定部113で行い、第2の閾値を超えたと判定された場合には、制御計算機50へ描画停止の信号を送る。
【0072】
上記のようにすることにより、無駄な描画処理をなくすことができる。したがって、例えば、マスク製造工程におけるマスクのパターン描画時間やパターン検査時間を短縮して、スループットを向上させることが可能となる。
【0073】
図7は、本実施の形態における電子ビーム描画方法の説明図である。この描画方法は、本実施の形態の電子ビーム描画装置30を使用することにより実現される。すなわち、図7に示す電子ビーム20は、図6の電子ビーム描画装置30の電子銃100によって放出された電子ビームである。
【0074】
図7に示すように、マスク基板32上に描画されるパターン81は、短冊状のフレーム領域82に分割されている。電子ビーム描画装置30の電子銃100によって放出される電子ビーム20による描画は、ステージ33が一方向(例えば、X方向)に連続移動しながら、フレーム領域82毎に行われる。フレーム領域82は、さらに副偏向領域83に分割されており、電子ビーム20は、副偏向領域83内の必要な部分のみを描画する。尚、フレーム領域82は、主偏向器45の偏向幅で決まる短冊状の描画領域であり、副偏向領域83は、副偏向器46の偏向幅で決まる単位描画領域である。
【0075】
副偏向領域83内での電子ビーム20の位置決めは、副偏向器46で行われる。副偏向領域83の位置制御は、主偏向器45によってなされる。すなわち、主偏向器45によって、副偏向領域83の位置決めがされ、副偏向器46によって、副偏向領域83内でのビーム位置が決められる。さらに、成形偏向器44とビーム成形用アパーチャ47、48によって、電子ビーム20の形状と寸法が決められる。そして、ステージ33を一方向に連続移動させながら、副偏向領域83内を描画し、1つの副偏向領域83の描画が終了したら、次の副偏向領域83を描画する。フレーム領域82内の全ての副偏向領域83の描画が終了したら、ステージ33を連続移動させる方向と直交する方向(例えば、Y方向)にステップ移動させる。その後、同様の処理を繰り返して、フレーム領域82を順次描画して行く。
【0076】
電子ビームによる描画を行う際には、まず、CADシステムを用いて設計された半導体集積回路などのパターンデータ(CADデータ)が、図6の電子ビーム描画装置30に入力することのできる形式のデータ(レイアウトデータ)に変換される。次いで、レイアウトデータが変換されて描画データが作成された後、描画データは実際に電子ビーム20がショットされるサイズに分割された後、ショットサイズ毎に描画が行われる。
【0077】
レイアウトデータから変換された描画データは、記憶媒体である入力部51に記録された後、制御計算機50によって読み出され、フレーム領域82毎にパターンメモリ52に一時的に格納される。パターンメモリ52に格納されたフレーム領域82毎のパターンデータ、すなわち、描画位置や描画図形データ等で構成されるフレーム情報は、データ解析部であるパターンデータデコーダ53と描画データデコーダ54に送られる。次いで、これらを介して、副偏向領域偏向量算出部60、ブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57、副偏向器ドライバ58に送られる。
【0078】
また、制御計算機50には、偏向制御部62が接続している。偏向制御部62は、セトリング時間決定部61に接続し、セトリング時間決定部61は、副偏向領域偏向量算出部60に接続し、副偏向領域偏向量算出部60は、パターンデータデコーダ53に接続している。また、偏向制御部62は、ブランキング回路55と、ビーム成形器ドライバ56と、主偏向器ドライバ57と、副偏向器ドライバ58とに接続している。
【0079】
パターンデータデコーダ53からの情報は、ブランキング回路55とビーム成形器ドライバ56に送られる。具体的には、パターンデータデコーダ53で描画データに基づいてブランキングデータが作成され、ブランキング回路55に送られる。また、描画データに基づいて所望とするビーム寸法データも作成されて、副偏向領域偏向量算出部60とビーム成形器ドライバ56に送られる。そして、ビーム成形器ドライバ56から、電子ビーム光学系40の成形偏向器44に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム20の形状と寸法が制御される。
【0080】
副偏向領域偏向量算出部60は、パターンデータデコーダ53で作成したビーム形状データから、副偏向領域83における、1ショット毎の電子ビームの偏向量(移動距離)を算出する。算出された情報は、セトリング時間決定部61に送られ、副偏向による移動距離に対応したセトリング時間が決定される。
【0081】
セトリング時間決定部61で決定されたセトリング時間は、偏向制御部62へ送られた後、パターンの描画のタイミングを計りながら、偏向制御部62より、ブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57、副偏向器ドライバ58のいずれかに適宜送られる。
【0082】
描画データデコーダ54では、描画データに基づいて副偏向領域83の位置決めデータが作成され、このデータは、主偏向器ドライバ57と副偏向器ドライバ58に送られる。そして、主偏向器ドライバ57から、電子ビーム光学系40の主偏向器45に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム20が所定の主偏向位置に偏向走査される。また、副偏向器ドライバ58から、副偏向器46に所定の副偏向信号が印加されて、副偏向領域83内での描画が行われる。この描画は、具体的には、設定されたセトリング時間が経過した後、電子ビーム20を繰り返し照射することによって行われる。
【0083】
以上述べたように、本実施の形態の電子ビーム描画装置によれば、描画中に放電箇所を特定できるので、放電に対する迅速な対応が可能となる。また、場合により、放電による描画不良を検知して、描画を停止することができるので、無駄な描画処理をなくすことができる。
【0084】
また、ログAやログBに記録があれば、この時刻に描画異常が生じている可能性が高い。したがって、この時刻に描画した付近のパターンを検査することで、検査を効率的に行うことができる。
【0085】
実施の形態4.
図8は、本実施の形態の電子ビーム描画装置の構成を示す図である。この電子ビーム描画装置は、(図4に示す)実施の形態2の電子銃およびその周辺装置を備えている。尚、図8において、図6と同じ符号を付した部分は同じものであり、説明を省略する。
【0086】
電子銃200は、図4の電子銃200に対応するものであり、図4の高圧電源108、演算部207、記録部208および判定部209が接続している。また、判定部209は、制御計算機50に接続している。
【0087】
これらによって、電子ビーム描画装置301では、放電に関する診断、具体的には、放電が起こっているか否かと、起こっている場合にその箇所の特定を行うことができる。
【0088】
すなわち、電子銃200の内部の圧力変動と電位変動を測定し、測定結果を演算部207に送る。そして、演算部207で所定値以上の圧力変動や電位変動があると認められると、これらの測定値は記録部208に送られて記録される。このとき、電子銃200の内部に圧力変動が生じた時刻と、電位変動が生じた時刻とが一致している場合には、電子銃200の内部で放電が起きていると判断し、記録部208にログAとして記録する。一方、電子銃200の内部に圧力変動はないが、電位変動が生じている場合には、大気側の放電と判断し、記録部208にログBとして記録する。尚、電子銃200の内部に圧力変動が生じているが、電位変動が生じていない場合には、真空計206のノイズと判断する。
【0089】
ログAおよびログBの少なくとも一方に記録がなされていれば、放電が起こっていると判定され、電子銃200、高圧電源108およびケーブル210のいずれかを交換する。例えば、ログAに記録があり、ログBに記録がない場合には、電子銃200を交換し、高圧電源108およびケーブル210は交換しなくてよい。尚、電子銃200の交換に代えて、コンディショニング処理を行ってもよい。また、ログAには記録がないが、ログBに記録がある場合には、高圧電源108および/またはケーブル210を交換する。この場合、電子銃200の交換は不要である。
【0090】
また、この場合にも、予め、電子銃200の圧力変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる圧力の変動値を把握しておくことが好ましい。尚、電子銃200の電位変動と、電子ビームによる描画結果との関係を調べ、描画不良となる電位の変動値を把握しておくのでもよい。
【0091】
例えば、描画不良となる圧力の変動値を第1の閾値とする。そして、記録部208に記録された圧力変動が第1の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部208に記録された圧力変動が第1の閾値を超えるか否かの判断を判定部113で行い、第1の閾値を超えたと判定された場合には、制御計算機50へ描画停止の信号を送る。
【0092】
あるいは、描画不良となる電位の変動値を第3の閾値とする。そして、記録部208に記録された電位変動が第3の閾値を超えた場合に、描画処理を停止することができる。具体的には、記録部208に記録された電位変動が第3の閾値を超えるか否かの判断を判定部209で行い、第3の閾値を超えたと判定された場合には、制御計算機50へ描画停止の信号を送る。
【0093】
上記のようにすることにより、無駄な描画処理をなくすことができる。したがって、例えば、マスク製造工程におけるマスクのパターン描画時間やパターン検査時間を短縮して、スループットを向上させることが可能となる。
【0094】
本実施の形態の電子ビーム描画装置によれば、描画中に放電箇所を特定できるので、放電に対する迅速な対応が可能となる。また、場合により、放電による描画不良を検知して、描画を停止することができるので、無駄な描画処理をなくすことができる。
【0095】
また、ログAやログBに記録があれば、この時刻に描画異常が生じている可能性が高い。したがって、この時刻に描画した付近のパターンを検査することで、検査を効率的に行うことができる。
【0096】
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施の形態では電子ビームを用いたが、本発明は、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームを用いた荷電粒子銃を備えた荷電粒子ビーム描画装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
100、200 電子銃
101 電子光学鏡筒
102、102a、102b 第1の電極
103 コラム
104 ウェネルト
105 カソード
107 アノード
108 高圧電源
110、206 真空計
111、207 演算部
112、208 記録部
113、209 判定部
114、210 ケーブル
201 筐体
202 導電板
203 絶縁体
204 アンプ
205 フランジ
20、106 電子ビーム
30、301 電子ビーム描画装置
31 試料室
32 マスク基板
33 ステージ
34 ステージ駆動回路
35 位置回路
37、38、39、41、42 各種レンズ
40 電子ビーム光学系
43 ブランキング用偏向器
44 成形偏向器
45 主偏向器
46 副偏向器
47、48 ビーム成形用アパーチャ
50 制御計算機
51 入力部
52 パターンメモリ
53 パターンデータデコーダ
54 描画データデコーダ
55 ブランキング回路
56 ビーム成形器ドライバ
57 主偏向器ドライバ
58 副偏向器ドライバ
60 副偏向領域偏向量算出部
61 セトリング時間決定部
62 偏向制御部
81 描画されるパターン
82 フレーム領域
83 副偏向領域





【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出する電子銃と、
前記電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源と、
前記電子銃の内部の圧力変動と、前記高圧電源の電圧変動とをそれぞれ演算し、前記圧力変動が所定の圧力変動値以上である時刻と、前記電圧変動が所定の電圧変動値以上である時刻とをデータ出力する演算部と、
前記演算部から出力されたデータを受け取り、前記圧力変動が生じた時刻と前記電圧変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、前記電圧変動が生じた時刻に対応する前記圧力変動のデータがない場合にログBとしてこの時刻を記録する記録部とを有することを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項2】
電子ビームを放出する電子銃と、
前記電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源と、
前記電子銃の内部の圧力変動と電位変動をそれぞれ演算し、前記圧力変動が所定の圧力変動値以上である時刻と、前記電位変動が所定の電位変動値以上である時刻とをデータ出力する演算部と、
前記演算部から出力されたデータを受け取り、前記圧力変動が生じた時刻と前記電位変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、前記電位変動が生じた時刻に対応する前記圧力変動のデータがない場合にログBとしてこの時刻を記録する記録部とを有することを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記電子銃の内部の圧力を測定する真空計を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子ビーム描画装置。
【請求項4】
電子銃の内部の圧力の時間変動と、前記電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源の電圧の時間変動とを測定し、
前記圧力に所定の圧力変動値以上の変動が生じた時刻と、前記電圧に所定の電圧変動値以上の変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、
前記電圧に前記電圧変動値以上の変動が生じた時刻に前記圧力に前記圧力変動値以上の変動が生じていない場合にログBとしてこの時刻を記録することを特徴とする電子ビーム描画装置の診断方法。
【請求項5】
電子ビームを放出する電子銃と、前記電子銃に電子の加速電圧を印加する高圧電源とを有する電子ビーム描画装置の診断方法であって、
前記電子銃の内部の圧力の時間変動と電位の時間変動とを測定し、
前記圧力に所定の圧力変動値以上の変動が生じた時刻と、前記電位に所定の電位変動値以上の変動が生じた時刻とが一致している場合にログAとしてこの時刻を記録し、
前記電位に前記電位変動値以上の変動が生じた時刻に前記圧力に前記圧力変動値以上の変動が生じていない場合にログBとしてこの時刻を記録することを特徴とする電子ビーム描画装置の診断方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−26421(P2013−26421A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159352(P2011−159352)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】