説明

電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法

【課題】偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を低減し、電子ビーム描画における生産性を向上させる。
【解決手段】N個目の描画領域の位置データを取得する手段と、ステージ位置及びステージ速度を取得する手段と、N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段と、ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する手段と、距離が偏向距離以下とされた場合,距離に応じた偏向歪の補正を行い,偏向電圧を決定する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合,決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する手段とを備えるステージ連続移動方式の電子ビーム描画装置及び描画方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に関し、特に、半導体集積回路の回路パターンを描画する電子ビー描画装置及び電子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子ビーム描画装置では、スループットを向上させるために、ステージ連続移動方式と呼ばれる描画方式を採用している。この方式は、描画制御回路が、ステージ座標系に変換された所望の描画位置データに対して、ステージ位置測長系からの位置データを基に、描画制御回路は現在のステージ位置と所望の描画位置までの電子ビーム偏向距離を設定する方式である。ステップアンドリピート方式に比べ、ステージの移動停止に伴う無駄時間が少ないため、高速にパターンを描画することが可能になる。しかしながら、近年のパターン微細化に伴い、このステージ連続移動方式にも以下のような問題が生じた。
【0003】
ステージ連続移動方式における従来の描画処理フローを図21に示す。この処理フローによれば、前サブフィールド(SF:Sub Field )の終了を確認するステップS1、現在のステージ位置及びSFデータを取得するステップS2、現在のステージ位置と目標とするSF描画位置までの距離を算出するステップS3、目標までの距離が偏向距離(ビーム偏向可能な領域)内であるかどうかを判断するステップS4、目標までの距離が偏向距離内であれば、距離に応じた偏向歪の算出を行い、偏向電圧を決定するステップS5、偏向アンプにデータを転送するステップS6、偏向アンプの電圧が安定させるため、整定(セトリング)時間分描画処理を待機するステップS7、及び描画処理を実行するステップS8という手順で描画処理を実施する。
【0004】
しかしながら、上述のステップS1〜ステップS5までの処理には数10μsecの時間を要していた。このステップS1〜ステップS5までの処理時間は、実際に描画をしていない無駄時間となっていた。パターン微細化により、パターン数が増加すると、上述した無駄時間が多くなり、スループットが向上しないという問題があった。
【0005】
電子ビームの照射位置の補正方法として、各図形アパーチャに対して基板表面上の照射位置ずれを予め測定し、照射位置ずれを対物偏向器にフィードバックすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、特許文献1の補正方法では、図形アパーチャの数が多い場合、各図形アパーチャに対する照射位置の測定やビーム軸調整に膨大な時間を要し、ビーム軸調整パラメータを含めたデータ量も膨大な量となってしまう。
【特許文献1】特許第3394233号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を低減し、電子ビーム描画における生産性を大幅に向上させる電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ステージ連続移動方式の電子ビーム描画装置であって、(イ)N個目の描画領域の位置データを取得する手段と、(ロ)ステージ位置及びステージ速度を取得する手段と、(ハ)N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段と、(ニ)ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する手段と、(ホ)判断する手段において,ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下とされた場合,距離に応じた偏向歪の補正を行い,偏向電圧を決定する手段と、(ヘ)(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する手段と、(ト)(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合,決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する手段とを備える電子ビーム描画装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、N個目の描画領域の位置データを取得する手段と、ステージ位置及びステージ速度を取得する手段と、N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段と、前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する手段と、前記判断する手段において,前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下とされた場合に,前記距離に応じた偏向歪の補正を行い,偏向電圧を決定する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合には,前記決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する手段とを備えるステージ連続移動方式の電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法であって、(イ)N個目の描画領域の位置データを取得する工程と、(ロ)ステージ位置及びステージ速度を取得する工程と、(ハ)N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める工程と、(ニ)ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する工程と、(ホ)判断手段において、ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下と判断された場合に、距離に応じた偏向歪の補正を行い、偏向電圧を決定する工程と、(ヘ)(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する工程と、(ト)(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合,決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する工程とを含む電子ビーム描画方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法によれば、偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を低減し、電子ビーム描画における生産性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第2の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各ブロックの平面寸法の関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法、比率等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す第1乃至第2の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(全体構成)
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の模式的全体ブロック構成は、図1に示すように表される。本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置は、ステージ連続移動方式と主副2段偏向方式を用いている。
【0013】
試料室1内には、ウェハ(試料、半導体基板)Sを載置したX−Yステージ101が収容されている。このX−Yステージ101は、ステージ駆動回路11により駆動され、X−Yステージ101の移動位置はレーザ測長計からなる位置回路12により測定される。又、ウェハSからの2次電子及び反射電子は電子検出器13により検出される。
【0014】
試料室1の上方には、鏡筒200内に電子光学系2が設けられている。電子光学系2は、電子銃201、各種レンズ(コンデンサレンズ202、投影レンズ203、縮小レンズ204、対物レンズ205)、各種偏向器(CP偏向器205a−d、主偏向器206a,副偏向器206b,ブランキング用偏向器207)、ビーム成形用アパーチャ208、及びCPアパーチャ209から構成されている。ここでは、従来の電子ビーム描画装置に備わっている、ビーム調整用電極やコイル等については図示を省略している。
【0015】
制御回路3は、ブランキングアンプ401を介してブランキング用偏向器207を制御し、ブランキング用偏向器207はビームをオン・オフする。また制御回路3は、ビーム成形アンプ402を介してCP偏向器205a−dを制御し、CP偏向器205a−dはビームを成形する。更に、制御回路3は、主偏向アンプ403を介して主偏向器206aを制御し、副偏向アンプ404を介して副偏向器206bを制御する。これにより、ウェハS上でビームが走査される。尚、加速電圧は5keVであり、主偏向器206a,副206bの偏向領域の大きさは、例えば、それぞれ1.5mm、50μmとなっている。
【0016】
主副2段偏向方式とは、主偏向器206aで副偏向領域を数mmの広い範囲で位置決めし、副偏向器206bでショットを数10μmの範囲で高速に位置決めすることで、描画範囲を高速に描画する方式である。この方式では、チップデータ(描画データ)をフレームと呼ばれる帯状の主偏向領域に分割しており、主偏向領域内の副偏向領域位置を主偏向器206aで位置決めし、副偏向領域内のショット位置を副偏向器206bで位置決めする。
【0017】
(ステージ連続移動方式)
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法のステージ連続移動方式を、図2を用いて説明する。ステージ連続移動方式とは、図2に示すように、ウェハS上の複数のチップをストライプと呼ばれる帯状の主偏向領域に分割し、X−Yステージ101を連続駆動しながら描画する方式である。ステージ連続移動方式は、X−Yステージ101のステップ移動回数が少ないため、高いスループットを期待できる。なお、図2では、ストライプを縦方向に分割しているが、横方向に分割してもよい。図7以降では、ストライプを横方向に分割した例を示している。
【0018】
これら一連の制御は、図1に示す制御計算機(コンピュータ)4内に格納された制御プログラムによって実行される。この制御プログラムは、電子ビーム(EB)描画データとレイアウトデータに従って、制御回路3等の各部を動作させ、描画を実行する。
【0019】
(電子ビーム描画装置)
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の制御計算機4及び制御回路3の詳細を含む模式的ブロック構成は、図3に示すように表される。以下、図3を基に各部の機能を説明する。図3において図1と同一な部分には同符号を付してある。また、偏向制御回路301へのパラメータの転送手順など、従来の電子ビーム描画装置で行われている事項についても説明を省略する。
【0020】
制御計算機4は、描画データ401a、ウェハレイアウトデータ401bの格納部を具備している。制御回路3は、偏向制御回路301、データ展開回路302、及び位置補正回路303を備える。偏向制御回路301は、演算部301a,301bを備える。制御計算機4からは、描画データ401a、ウェハレイアウトデータ401b(手順データ、チップ位置データ、フレーム位置データ、ストライプ位置データを含む)が、データ展開回路302に書き込まれる。
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に関係する描画データの構造は、図4に示すように表される。図4(a)は描画データ401aのデータ形式を示す図であり、図4(b)は図4(a)の各データを説明するための図である。図4(a)に示すように、描画データ401aは、主偏向器206aを制御するための主偏向データと、副偏向器206bを制御するための副偏向データ(ショットデータ)から構成されている。
【0022】
主偏向データには、主偏向領域内での副偏向領域の位置(Xm,Ym)、副偏向領域内に含まれるショットのデータ開始位置を示すアドレス、及び副偏向領域内のショット数を含む制御コードが記述されている。ここでいう主偏向領域内での副偏向領域の位置(Xm,Ym)は、フレーム原点からの副偏向領域中心の位置として記述されており、フレーム座標系における(フレーム原点からの)副偏向領域の描画位置を示す。
【0023】
副偏向データには、各ショットの副偏向領域内での位置(Xs,Ys)と、CP偏向器205a−205dを制御するための図形コード、照射時間、ショットサイズなどが書き込まれている。また、ここでいうショット位置(Xs,Ys)は副偏向領域中心を原点としたショット左下位置として記述されている。また、図形コードとは、図4(c)に示すように、CPアパーチャ上のCP開口(A〜E)のCPアパーチャ原点(0,0)から位置を示しており、ショットサイズはショット左下を原点とした場合の幅及び高さとして記述されている。
【0024】
図5乃至図8は、本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法において、ウェハレイアウトデータ401bの詳細について説明するための図である。ウェハレイアウトデータ401bは、チップ位置データ、フレーム位置データ、ストライプ位置データ、手順データを含む。なお、本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置は、主偏向器206a,副206bの偏向領域の大きさは、それぞれ1.5mm、50μmであるが、図5乃至図8では説明を容易にするために、便宜上、ウェハサイズを直径200mm、チップサイズを25mm角、フレーム幅を6.25mmとしている。
【0025】
図5(a)はチップレイアウトを示す図であり、図5(b)はチップ位置データを示す図である。図5(a)のウェハS上に配置された各チップに対し、チップ位置データでは図5(b)に示すようにチップ番号(X,Y)が付与されており、ウェハ座標系(ウェハ中心が原点)での各チップ位置Xchip,Ychipが記述されている。
【0026】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法のチップデータの詳細は、図6に示すように表される。図6(a)はチップデータを示す図であり、図6(b)はチップデータから生成されるフレーム位置データを示す図である。図6(a)に示すチップデータの各フレームに対し、フレーム位置データでは図6(b)に示すように、チップ座標系(チップ中心が原点)でのフレーム番号に対応するフレーム原点位置Xf,Yfが記述されている。
【0027】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用されるストライプデータの詳細は、図7に示すように表される。図7(a)はストライプレイアウトを示す図であり、図7(b)はチップレイアウトデータとフレーム位置データから生成されるストライプ位置データを示す図である。図7(a)に示すようにウェハS上の描画領域がストライプに分割され、スウェハプ位置データでは、図7(b)に示すように各ストライプの番号に対応するストライプ原点位置Xstr,Ystrが記述されている。ここでは、図7(b)に示す各チップ原点位置に、図6(b)に示す各フレームの原点位置を加算することによって、図7(b)に示すストライプ原点位置Xstr,Ystrを求めることができる。
【0028】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される手順データの詳細は、図8に示すように表される。図8に示すように、手順データには、チップ番号、フレーム番号、及びストライプ番号が記述されている。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用されるデータ展開回路302の詳細なブロック構成は、図9に示すように表される。
【0030】
データ展開回路302は、バスアダプタ311、主偏向データ回路312、ショットデータ回路313、及び展開回路314から構成されており、これらはデータバス315に接続されている。制御計算機4から、チップデータがバスアダプタ41を介して、データ展開回路302に書き込まれる。主偏向データは主偏向データ回路312内のメモリに格納され、ショットデータはショットデータ回路313内のメモリに格納される。図8に示した手順データは、展開回路314内の第1演算回路3141に接続されている第1メモリ3142に格納される。
【0031】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される位置補正回路303の詳細なブロック構成は、図10に示すように表される。
【0032】
制御計算機4から、描画データ401aが、データ展開回路302に書き込まれ、ウェハレイアウトデータ401b(チップ位置データ、フレーム位置データ、ストライプ位置データを含む)が、位置補正回路303に書き込まれる。
【0033】
図5(b)に示したチップ位置データ、図6(b)に示したフレーム位置データ、図7(b)に示したストライプ位置データは、位置補正回路303内の第2演算回路3032に接続されている第2メモリ3033に格納される。
【0034】
図3において、ウェハSが、X−Yステージ101上に置かれ「描画準備」が整った段階で、制御計算機4がデータ展開回路302にデータ送出指示を出す。
【0035】
「描画準備」とは、X−Yステージ101が移動開始点及び終了点が求められており、X−Yステージ101が移動開始点にある状態をいう。
【0036】
X−Yステージ101の移動開始点及び終了点は、各ストライプの描画開始点及び終了点(Xstart、Xend)から求まる。各ストライプの描画開始点及び終了点(Xstart、Xend)に対し、各ストライプのステージ速度に合わせて、助走および減速距離(X助走、X減速)を決定する。すなわち、ステージ移動開始及び終了点(Xstgs、Xetge)を以下のように決定する。
【0037】
順方向移動の場合は、
ステージ移動開始点(Xstgs)=描画開始点(Xstart)―助走距離(X助走)
ステージ移動終了点(Xstge)=描画終了点(Xend)+減速距離(X減速)
逆方向移動の場合は、
ステージ移動開始点(Xstgs)=描画開始点(Xstart)+助走距離(X助走)
ステージ移動終了点(Xstge)=描画終了点(Xend)−減速距離(X減速)
となる。
【0038】
具体的には、図9に示す主偏向データ回路312に、転送開始アドレス、ワード数、転送繰り返し数を指示すると、主偏向データ回路312内のメモリから、展開回路314内の第1演算回路3141へ主偏向データの転送が開始される。主偏向データ回路312は、展開回路314のFIFOのハーフフル(HF)フラグを検出して、データの送出/一時停止を判断する。
【0039】
データ展開回路302へのデータ送出指示がなされた段階で、制御計算機4から、ステージ101への移動指示を行う。制御計算機4は、ステージ駆動回路11を介して、ステージ101をステージ移動開始点に移動させ、移動終了位置及び速度を指定する。
【0040】
展開回路314の第1演算回路3141では、主偏向データ回路312から主偏向データをFIFOで受け、さらにFIFOから1個分の主偏向データを読み込むと、ショットデータ回路313からショットデータを読み出す。具体的には、図4(a)に示す主偏向データに含まれるショットデータの開始アドレスとショット数を指定して、ショットデータ回路313に起動をかける。ショットデータ回路313は、第1演算回路3141から指定されたアドレスに記述されたショットデータを指定されたショット数分だけ送出する。
【0041】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用されるデータ展開回路からの送出データは、図11に示すように表される。
【0042】
第1演算回路3141では、主偏向データに、ショットデータ回路313から送られたショットデータを付与して、図11に示すような形式で、後段の位置補正回路303に送出する。この際、第1メモリ3142に格納された手順データにしたがって、主偏向データ回路312から送られた主偏向データに、チップ番号、フレーム番号、及びストライプ番号を付加する。フレームの最後の副偏向位置データには、フレームの終了を示す制御コードが付与されており、第1演算回路3141では、この制御コードを検出して、手順データの手順をひとつ進める。
【0043】
位置補正回路303では、送られたデータを、主偏向データとショットデータに分割する。まず、第1演算回路3031において、主偏向データとショットデータに分割する。主偏向データは第2演算回路3032に送出され、ショットデータは偏向制御回路301の演算部301bに送出される。
【0044】
位置補正回路303の第2演算回路3032では、データ展開回路302から送られたチップ番号とフレーム番号を含む主偏向データをウェハ座標系に変換する。
【0045】
まず第2演算回路3032は、ウェハップ番号を基に第2メモリ3033に格納されたチップ位置データを呼び出し、ウェハ座標系(ウェハ中心が原点)で記述されたチップ位置Xchip,Ychipを読み出す。
【0046】
次に第2演算回路3032は、フレーム番号を基に第2メモリ3033に格納されたフレーム位置データを呼び出し、チップ座標系(チップ中心が原点)で記述されたフレーム原点位置Xf,Yfを読み出す。
【0047】
次に第2演算回路3032は、チップ位置Xchip,Ychip、フレーム位置Xf,Yf、及び主偏向位置Xm,Ymを加算し、ウェハ座標系における主偏向位置Xmwf、Ymwfを求める。
【0048】
Xmwf=Xm+Xf+Xchip
Ymwf=Ym+Yf+Ychip
ここで、主偏向位置(Xmwf,Ymwf)は、ウェハ座標系における(ウェハ原点からの)副偏向領域の描画位置を示す。
【0049】
更に、第4演算回路3036において、主偏向データについてはウェハ歪みやチップ歪みの位置補正を実施して主偏向位置(Xmwf,Ymwf)を算出し、さらに主偏向位置(Xmwf,Ymwf)に対し、ウェハ原点のステージ座標を加算して、ウェハ座標系からステージ座標系(Xmstg,Ymstg)に変換して、後段の偏向制御回路301に送出する。なお、第4演算回路3036には図示しないメモリが搭載されており、位置補正に必要な補正係数や座標値が格納されている。
【0050】
図3中の偏向制御回路301では、送出された主偏向データ及びショットデータの処理を行う。演算部301aは、ステージ座標系に変換された主偏向データ(Xmstg,Ymstg)に対し、位置回路12の出力する現在のステージ座標(Xstg,Ystg)から、次式のように、主偏向位置(Xmdef,Ymdef)を算出する。
【0051】
Xmdef=Xmstg−Xstg
Ymdef=Ymstg−Ystg
更に、レンズ歪みによる位置補正を実施し、主偏向位置(Xmdef,Ymdef)を算出する。ここで、主偏向位置(Xmdef,Ymdef)は、主偏向領域座標系における(主偏向領域原点からの)副偏向領域の描画位置であり、チップ歪補正量とウェハ歪補正量が加算されたものである。主偏向データ(Xmstg,Ymstg)、主偏向位置(Xmdef,Ymdef)は、主偏向アンプ403に送出され、主偏向器206aに所望の電圧を発生させる。
【0052】
(電子ビーム描画方法)
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法を示すフローチャート図であって、偏向制御回路301内の演算部301aの描画処理フローを説明するフローチャートは、図12に示すように表される。
【0053】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される偏向制御回路301内の演算部301aのブロック構成は、図13に示すように表される。本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法においては、上述の偏向制御回路301内の演算部301aの処理を効率よく行うことで、処理の高速化を実現している。
【0054】
(a)まず、ステップS10において、初期化を実施する。初期化では、図13中のメモリ133に書き込まれている描画処理フラグ(最初のSFであるか否かを示すフラグであり、予測したステージ位置を使用するか否かを示すフラグ)をゼロにする。更に、メモリ133に格納されているステージ予測移動量(予測STG量)をゼロに設定する。
【0055】
(b)次に、ステップS11において、図13中のデータ読み出し部131が、SF位置データを読み込む。
【0056】
(c)次に、ステップS12において、窓枠判定部132が、位置回路12から現在のステージ位置及びステージ速度を取得する。
【0057】
(d)次に、ステップS13において、窓枠判定部132は、メモリ133から読み込んだステージ予測移動量と現在のステージ位置に基づいて、SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入っているかどうかを判定する。入っていれば、ステップS14に進み、偏向距離内に入っていない場合は、ステップS13に戻り、一連の動作を繰り返して、SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入るまで待つ。更に、メモリ133に書き込まれた描画処理フラグを読み出し、図示しないレジスタに格納する。
【0058】
(e)次に、ステップS14において、歪み補正部134では、現在のステージ位置と目標とするSF描画位置までの距離を算出し、補正係数メモリ135から偏向距離に応じた補正係数を読み出して、偏向歪の算出を行い、偏向電圧を決定する。
【0059】
(f)次に、ステップS15において、STG位置予測部136では、SF位置データ(描画データ)に含まれるSF内のショット数、及び平均ショット時間に基づいて、SFの描画時間を予測する。
【0060】
(g)次に、ステップS16において、STG位置予測部136では、SF描画時間と、位置回路12から読み出したステージ速度に基づいて、計算処理しているSFの描画後のステージ位置を予測する。即ち、SF描画にかかる時間に、ステージ速度を乗算すれば、SF描画中のステージ予測移動量が算出される。予測したステージ予測移動量はメモリ133に書き込まれ、次のSFの計算を実施する際に使用する。
【0061】
更に、次のSF計算処理でステージ予測移動量を使用するためのフラグを1に設定し、メモリ133に書き込む。なお、ステージ予測移動量の算出にあたっては、(データ読み出し時間と窓枠判定時間と演算処理時間)の合計時間とSFの予測描画時間を比較して、大きな方の時間を使い、ステージ速度と乗算してステージ予測移動量を算出する。これにより、SF内のショット数が少なく、描画時間が極端に短い場合でも正確なステージ予測移動量を求めることができる。
【0062】
(h)次に、ステップS17において、出力判定部137では、ステップS13で図示しないレジスタに格納した描画処理フラグがゼロの場合は、次のステップS19に進む。
【0063】
(i)次に、ステップS17において、描画処理フラグが1の場合は、ステップS18に進み、前SFの描画終了信号を検知するまで待ち、前SFの終了信号が検知した段階で次のステップS19に進む。
【0064】
(j)次に、ステップS19において、転送部138は、偏向アンプにデータを転送する。
【0065】
(k)次に、ステップS20において、転送部138では、所定のセトリング時間が経過するのを待つ。
【0066】
(l)次に、ステップS21において、偏向アンプ139の電圧が安定した段階で、描画開始(ビーム照射)の信号を偏向アンプ139に送出する。
【0067】
(m)次に、ステップS22において、描画処理では、データ読み出し部131がストライプエンドフラグ(ストライプ内の最終SFを示すフラグ)を検知しない場合は、ステップS23に進み、描画処理フラグを1に設定し、ステップS11に戻る。
【0068】
(n)次に、ステップS22において、描画処理では、データ読み出し部131がストライプエンドフラグ(ストライプ内の最終SFを示すフラグ)を検知した場合は、該当SFの描画終了信号を検知して、ストライプ描画を終了する。
【0069】
―タイミングチャート―
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法のタイミングチャートは、図14に示すように表される。
【0070】
図14に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法の場合、描画開始した段階で、前SFの計算処理(図12のステップS15及びステップS16)中に予測したステージ予測位置に基づいて、次のSFに対する偏向歪み計算を開始している。この結果、図21に示す従来例に比べ、無駄時間を大幅に短縮し、電子ビーム描画における生産性を従来に比べ、大幅に向上させることができる。
【0071】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法では、図12のステップS14〜ステップS16において、偏向歪み補正、SFの描画時間予測、ステージ移動量予測の順序で行ったが、他の順序で行ってもよい。例えば、SFの描画時間予測とステージ移動量予測を実施した後で、偏向歪み補正演算を実施しても構わない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で順序を変更することができる。
【0072】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置において、図13に示す偏向制御回路301の演算部301aはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いて構成することができる。即ち、図12に示す処理フローを実現するプログラムを作成し、DSPで処理することもできる。メモリ133や補正係数メモリ135は、DSP内部のメモリを用いることが望ましいが、外部メモリを用いても構わない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形することができる。
【0073】
本発明の電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法によれば、偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を低減し、電子ビーム描画における生産性を大幅に向上させることができる。
【0074】
本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法によれば、偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を低減し、電子ビーム描画における生産性を大幅に向上させることができる。
【0075】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画方法を、図15に示す描画フローを説明するフローチャートを用いて説明する。本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の制御計算機4及び制御回路3の詳細を含む模式的ブロック構成は、図16に示すように表される。本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画方法では、予め描画におけるステージ位置を予測し、この予測したステージ位置に基づいて、描画を実施している。
【0076】
又、本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の描画経過時間とステージ位置の関係は、図17に示すように表される。又、本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置のステージ予測移動量データの関係は、図18に示すよう表される。
【0077】
図17(a)は、あるストライプについて、ステージ速度を一定とした場合のストライプ描画開始からの経過時間とステージ位置の関係と、図17(b)は、あるストライプについて、チップ内のパターンの粗密に従って、ステージ速度が変化している場合を示している。図17(b)では、ステージはパターンが蜜な所は遅く、パターンが疎なとこは早く移動するため、描画経過時間に対するステージ位置の傾きは一定にはならない。ここでは、ストライプの描画開始から1秒間隔でステージ移動量を予測し、図18に示すようなステージ移動量予測データを作成した。
【0078】
(可変速対応の描画方法)
(a)まず、図15のステップS30において、ウェハS上のチップレイアウト(図5)を作成し、作成したウェハレイアウトデータ401bを制御計算機4内に格納する。
【0079】
(b)次に、ステップS31において、ステージ速度予測部402aは、制御計算機4内に格納された描画データ401aに対し、フレーム(ストライプ)毎のステージ速度を算出する。
【0080】
(c)次に、ステップS32において、ステージ位置予測部403bは、ステップS31で算出されたフレーム(ストライプ)毎のステージ速度情報、及びウェハレイアウトデータ401bに基づき、ストライプ毎に描画開始からの経過時間に対するステージ予測位置データ401cを作成する。
【0081】
(d)次に、ステップS33において、ステージ予測位置データ401cを、偏向制御回路301内の演算部301aに格納する。
【0082】
(e)次に、ステップS34において、描画に際しては、描画データ401aに記述されたストライプ情報に基づき、該当のストライプに対応したステージ予測位置データ401cを読み込む。偏向制御回路301内の演算部301aにおいては、ストライプ描画開始からの経過時間を内部のタイマで計測し、ステージ予測移動量データから、ある経過時間におけるステージ予測位置を算出し、第1の実施の形態と同様の描画処理を実施する。
【0083】
(f)次に、ステップS35において、さらに処理すべきストライプがある場合はステップS36に進み、全てのストライプが描画終了した場合は、描画終了処理を実施する。
【0084】
(g)次に、ステップS36において、次のストライプの処理を実施する場合には、ステップS34と同様に、描画データに記述されたストライプ情報に基づき、該当のストライプに対応したステージ予測移動量データを読み込む。偏向制御回路内の演算部301aは、ストライプ描画開始からの経過時間を内部のタイマで計測し、ステージ予測移動量データから、ある経過時間におけるステージ予測位置を算出し、第1の実施の形態と同様の描画処理を実施する。
【0085】
(h)全てのストライプの処理が終了した場合は、描画終了処理を実施する。
【0086】
(電子ビーム描画方法)
本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法を示すフローチャート図であって、偏向制御回路301内の演算部301aの描画処理フローを説明するフローチャートは、図19に示すように表される。
【0087】
本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される偏向制御回路301内の演算部301aのブロック構成は、図20に示すように表される。
【0088】
(a)まず、図19のステップS40において、初期化を実施する。初期化では、図20中のメモリ133aに書き込まれている描画処理フラグ(最初のSFであるか否かを示すフラグであり、ステージ予測移動量を使用するか否かを示すフラグ)をゼロにする。更に、メモリ133aに格納されているステージ予測移動量(予測STG量)をゼロに設定する。また、経過時間タイマのカウントを開始する。
【0089】
(b)次に、ステップS41において、図20中のデータ読み出し部131が、SF位置データを読み込む。
【0090】
(c)次に、ステップS42において、経過時間に基づき、メモリ133aに格納されているステージ予測移動量からステージ予測移動量を求める。
【0091】
(d)次に、ステップS43において、窓枠判定部132が、位置回路12から現在のステージ位置を取得する、
(e)次に、ステップS44において、窓枠判定部132は、メモリ133aから読み込んだステージ予測移動量と現在のステージ位置に基づいて、SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入っているかどうかを判定する。SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入っている場合には、ステップS45に進み、SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入っていない場合には、ステップS43及びステップ44に戻り、SF描画時のステージ位置が偏向距離内に入るまで待つ。更に、メモリ133aに書き込まれた描画処理フラグを読み出し、図示しないレジスタに格納する。
【0092】
(f)次に、ステップS45において、歪み補正部134では、現在のステージ位置と目標とするSF描画位置までの距離を算出し、補正係数メモリ135から偏向距離に応じた補正係数を読み出して、偏向歪の算出を行い、偏向電圧を決定する。
【0093】
(g)次に、ステップS46において、STG位置予測部136では、SF位置データ(描画データ)に含まれるSF内のショット数、及び平均ショット時間に基づいて、SFの描画時間を予測する。
【0094】
(h)次に、ステップS47において、更に、STG位置予測部136では、ステップS40でカウントを開始したタイマの経過時間を取得し、ステップS46で算出したSFの描画時間を加算して、SF描画終了後の経過時間を算出する。その後、メモリ133bに格納されたステージ位置予測データに基づいて、計算処理しているSFの描画後のステージ移動量を予測する。SF描画後の経過時間に対するステージ予測移動量は、メモリ133bに格納されたステージ予測位置データ401cを補間処理することにより求めることができる。求めたステージ予測移動量は、メモリ133aに書き込まれ、次のSFの計算を実施する際に使用する。
【0095】
更に、次のSF計算処理でステージ予測移動量を使用するためのフラグを1に設定し、メモリ133aに書き込む。なお、ステージ予測移動量の算出にあたっては、(データ読み出し時間と窓枠判定時間と演算処理時間)の合計時間とSFの予測描画時間を比較して、大きな方の時間を使い、ステージ速度と乗算してステージ予測移動量を算出する。これにより、SF内のショット数が少なく、描画時間が極端に短い場合でも正確なステージ予測移動量を求めることができる。
【0096】
(i)次に、ステップS48において、出力判定部137では、ステップS44で図示しないレジスタに格納した描画処理フラグがゼロの場合は、次のステップS50に進む。
【0097】
(j)次に、ステップS48において、描画処理フラグが1の場合は、ステップS49に進み、前SFの描画終了信号を検知するまで待ち、前SFの終了信号が検知した段階で次のステップS50に進む。
【0098】
(k)次に、ステップS50において、転送部138は、偏向アンプにデータを転送する。
【0099】
(l)次に、ステップS51において、転送部138では、所定のセトリング時間が経過するのを待つ。
【0100】
(m)次に、ステップS52において、偏向アンプ139の電圧が安定した段階で、描画開始(ビーム照射)の信号を偏向アンプ139に送出する。
【0101】
(n)次に、ステップS53において、描画処理では、データ読み出し部131がストライプエンドフラグ(ストライプ内の最終SFを示すフラグ)を検知しない場合は、ステップS54に進み、描画処理フラグを1に設定し、ステップS11に戻る。
【0102】
(o)次に、ステップS53において、描画処理では、データ読み出し部131がストライプエンドフラグ(ストライプ内の最終SFを示すフラグ)を検知した場合は、該当SFの描画終了信号を検知して、ストライプ描画を終了する。
【0103】
尚、本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法では、ストライプの描画開始からの経過時間に基づいて、ステージ位置を予測したが、他の方法を用いてもよい。例えば、各SFを描画する時点のステージ位置を予測し、各SF描画終了後のステージ予測移動量をメモリ133bに格納してもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形することができる。
【0104】
本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法によれば、偏向制御回路内で描画すべきSF位置のステージ位置を予測することにより、前回のSF描画終了を待たずに、偏向歪の計算を行うことが可能になり、無駄時間を大幅に短縮し、電子ビーム描画における生産性を、大幅に向上させることができる。
【0105】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1乃至第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0106】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の模式的全体ブロック構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法のステージ連続移動方式を説明するための図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の制御計算機及び制御回路の詳細を含む模式的ブロック構成図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に関係する描画データの構造を示す図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法において、ウェハレイアウトデータの詳細について説明する図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法において、チップデータの詳細について説明する図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画装置の描画方法に適用されるストライプデータの詳細について説明するための図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される手順データの詳細について説明する図。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用されるデータ展開回路の詳細について説明する図。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される位置補正回路の詳細について説明するの図。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用されるデータ展開回路からの送出データを示す図。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法を示すフローチャート図であって、偏向制御回路内の演算部の描画処理フローを説明するフローチャート図。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される偏向制御回路内の演算部の模式的ブロック構成図。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る電子ビーム描画方法のタイミングチャート図。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画方法の描画フローを説明するフローチャート図。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の制御計算機及び制御回路の詳細を含む模式的ブロック構成図。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法の描画経過時間とステージ位置の関係を示す図。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法のステージ予測移動量データを示す図。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法を示すフローチャート図であって、偏向制御回路内の演算部の描画処理フローを説明するフローチャート図。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法に適用される偏向制御回路内の演算部の模式的ブロック構成図。
【図21】従来の電子ビーム描画装置及び電子ビーム描画方法において、描画処理フローを示す図。
【符号の説明】
【0108】
1…試料室
2…電子光学系
3…制御回路
4…制御計算機
5…磁気ディスク
6…ストライプ
8…フレーム(主偏向領域)
9…副偏向領域
10…CPアパーチャ
41,311…バスアダプタ
11…ステージ駆動回路
12…位置回路(レーザ測長計)
13…電子検出器
101…X−Yステージ
131…データ読み出し部
132…窓枠判定部
133,133a,133b…メモリ
134…歪み補正部
135…補正係数メモリ
136…STG位置予測部
137…出力判定部
138…転送部
139…偏向アンプ
200…鏡筒
201…電子銃
202…コンデンサレンズ
203…投影レンズ
204…縮小レンズ
205…対物レンズ
205a−d…CP偏向器
206a…主偏向器
206b…副偏向器
207…ブランキング用偏向器
208…ビーム成形用アパーチャ
209…CPアパーチャ
301…偏向制御回路
301a,301b…演算部
302…データ展開回路
303…位置補正回路
312…主偏向データ回路
313…ショットデータ回路
314…展開回路
3031,3141…第1演算回路
3142…第1メモリ
3032…第2演算回路
3033…第2メモリ
3036…第3演算回路
315…データバス
401a…描画データ
401b…ウェハレイアウトデータ
401c…ステージ予測位置データ
401…ブランキングアンプ
402…ビーム成形アンプ
402a…ステージ速度予測部
403…主偏向アンプ
403b…ステージ位置予測部
404…副偏向アンプ
S…ウェハ
b…電子ビーム
S10〜S23,S30〜S36,S40〜S54…ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ連続移動方式の電子ビーム描画装置であって、
N個目の描画領域の位置データを取得する手段と、
ステージ位置及びステージ速度を取得する手段と、
N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段と、
前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する手段と、
前記判断する手段において、前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下とされた場合に、前記距離に応じた偏向歪の補正を行い、偏向電圧を決定する手段と、
(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する手段と、
(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合には、前記決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する手段
とを備えることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記ステージ予測位置を求める手段は、
(N−1個目)の描画領域の描画時間と前記ステージ位置に基づいて、(N−1)個目の描画領域の処理終了時のステージ移動量を算出する手段と、
算出した前記ステージ移動量と前記ステージ位置に基づいて前記N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段
とを備えることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記ステージ予測位置を求める手段において、描画領域の描画時間を、描画領域のショット数、平均ショット時間に基づいて決定する手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記ステージ予測位置を求める手段が、予め求めた描画開始からの経過時間とステージ移動量が記載されたテーブルを用いて、描画領域のステージ予測位置を求める手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画装置。
【請求項5】
N個目の描画領域の位置データを取得する手段と、ステージ位置及びステージ速度を取得する手段と、N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める手段と、前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する手段と、前記判断する手段において,前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下とされた場合に,前記距離に応じた偏向歪の補正を行い,偏向電圧を決定する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する手段と、(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合には,前記決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する手段とを備えるステージ連続移動方式の電子ビーム描画装置の電子ビーム描画方法であって、
N個目の描画領域の位置データを取得する工程と、
ステージ位置及びステージ速度を取得する工程と、
N個目の描画領域を処理する時点のステージ予測位置を求める工程と、
前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下かどうかを判断する工程と、
前記判断手段において、前記ステージ予測位置とN個目の描画領域位置までの距離が偏向距離以下と判断された場合に、前記距離に応じた偏向歪の補正を行い、偏向電圧を決定する工程と、
(N−1)個目の描画領域の描画終了を検出する工程と、
(N−1)個目の描画領域の描画終了を確認した場合には、前記決定した偏向電圧にて電子ビームを偏向させて描画する工程
とを含むことを特徴とする電子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−335743(P2007−335743A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167632(P2006−167632)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】