説明

電子ペンセット

【課題】 使用者が変色性被筆記体に筆記した内容が直接電子データ化され通信端末で利用できるシステムを実用するに際し、変色性被筆記体上に形成された筆跡を水等の媒体の適用により消去することができ、前記変色性被筆記体を容易に再利用できる利便性、経済性に優れた電子ペンセットを提供する。
【解決手段】 ドットパターンが印刷された変色性被筆記体と、ペンユニット及び読取ユニットを備えた電子ペンとからなる電子ペンセットであって、前記ペンユニットは、媒体に屈折率が1.3〜1.8の固体物を溶解及び/又は分散させた液状組成物を収容してなり、前記変色性被筆記体10は、支持体11上に、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた吸液状態で透明又は半透明化して変色する多孔質層13と、ドットパターン14を設けた変色性被筆記体である電子ペンセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ペンセットに関する。詳細には、電子ペンとそれに用いる被筆記体とからなる電子ペンセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、筆記された情報を再入力する手間を省くことを目的として、帳票を電子化した電子フォームが利用されている。
前記電子フォームは、紙製帳票の記入項目等を複数のフィールドとして含む電子データであって、利用者が書類(帳票)を作成する場合、パーソナルコンピュータに電子フォームを読み込んで画面表示し、キーボードやマウス等の入力装置を操作して電子フォームに必要事項を入力すると、入力された事項は電子データとして取得され、ネットワーク等を通じて当該帳票の提出先機関等の通信端末に送信することができる。
しかし、前記方式は、キーボード入力やパーソナルコンピュータの操作に不慣れな利用者にとって利用し難く、従来より用いられる紙製帳票に記入する方法が確実である。
そこで、被筆記体として紙への筆記により、筆跡が電子データ化される入力デバイスとして、「電子ペン」や「デジタルペン」と呼ばれるペン型入力デバイスが汎用されつつあり(以下、「電子ペン」と呼ぶ)、例えばAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto:登録商標)」が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された被筆記体に使用されるものであり、被筆記体に筆記するためのインキを収容するペンユニットに加えて、被筆記体上のドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを備えた撮像部と、Bluetooth(登録商標)やUSBに対応する通信部からなる読取ユニットを搭載している。
使用者がアノトペンを用いて被筆記体に文字等を筆記した際、筆圧によるペンユニットの移動に伴ってデジタルカメラが被筆記体上のドットパターンを検出し、書き込んだ文字が電子データとして取得される。この電子データが、通信部によりアノトペンからパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。尚、被筆記体に形成される筆跡は、利用者が自分の書いた文字を視認するために形成されるものであり、電子データには関連しない。
前記アノトペンを利用したシステムは、キーボードやマウスに代わる入力デバイスとして利用することが可能であり、パーソナルコンピュータやキーボードの使用に抵抗がある使用者にとっては非常に使い易く、官公庁等の書類提出先においても、使用者の記入内容をそのまま電子データとして取得できるので、再入力する手間を省くことや誤入力を防止できるというメリットがある。
しかしながら、前記被筆記体は、精密ドットパターン印刷がなされた特殊な被筆記体であるため、汎用の紙と比べてコスト高であることに加えて、ペンユニットにより形成される筆跡は消去できないため、一度使用した被筆記体は処分される。そのため、前記システムを普及させる障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−528387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用者が被筆記体に筆記することにより筆記内容が直接電子データ化され通信端末で利用できる前記システムにおいて、被筆記体に形成した筆跡を消去することができ、被筆記体を再利用できる電子ペンセットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ドットパターンが印刷された変色性被筆記体と、前記変色性被筆記体に筆記するペンユニット及び前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えた電子ペンとからなる電子ペンセットであって、前記ペンユニットは、媒体に屈折率が1.3〜1.8の固体物を溶解及び/又は分散させた液状組成物を収容してなり、前記変色性被筆記体は、支持体上に、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた吸液状態で透明又は半透明化して変色する多孔質層と、ドットパターンを設けた変色性被筆記体であることを特徴とする電子ペンセットを要件とする。
更には、前記媒体中に剪断減粘性付与剤を含有してなること、前記媒体中に分散された固体物の粒子径が10μm以下であること、媒体が蒸発した後、水に対して溶解可能な固体物を用いてなること、前記媒体中に潤滑剤を含有してなること、前記ペンユニットが着脱可能であること、前記支持体が透明性を有すること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、使用者が変色性被筆記体に筆記した内容が直接電子データ化され通信端末で利用できるシステムを実用するに際し、変色性被筆記体上に形成された筆跡を水等の媒体の適用により消去することができ、前記変色性被筆記体を容易に再利用できる利便性、経済性に優れた電子ペンセットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に用いられる電子ペンの一実施例を示す縦断面説明図である。
【図2】本発明に用いられる変色性被筆記体の一実施例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記電子ペンは、ドットパターンが印刷された変色性被筆記体と共に用いられるものであり、変色性被筆記体に筆記するための液状組成物を収容するペンユニットと、前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えている。
【0009】
前記ペンユニットは、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したレフィル形態のマーキングペンやボールペンが使用される。
前記ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではないが、例えば、液状組成物を充填した収容筒を有し、該収容筒はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更に液状組成物の端面には逆流防止体が密接しているボールペン形態のペンユニットを例示できる。
【0010】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mm径程度のものが適用できる。
【0011】
前記液状組成物を収容する収容筒は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体や、ステンレスパイプ等の金属加工体が用いられる。
更に、前記収容筒として透明、着色透明、或いは半透明の樹脂成形体を用いることにより、液状組成物の残量を確認できる。
前記収容筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記収容筒とチップを連結してもよい。
【0012】
また、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、収容筒内に繊維集束体からなる吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるペン先を直接或いは中継部材を介して収容筒に装着してなり、前記吸蔵体とペン先が連結されてなるマーキングペンの前記吸蔵体に液状組成物を含浸させたマーキングペン形態や、ペン先の押圧により開放する弁体を介してペン先と収容筒とを配置し、該収容筒内に液状組成物を直接収容させたマーキングペン形態のペンユニット等を例示できる。
【0013】
前記ペン先は、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。前記チゼル形状のペン体にあっては、筆記面への当接位置を変えることにより細書き用、或いは太書き用として、更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有し、多様な筆跡を形成できる利便性に優れたペンユニットを構成できる。
前記吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0014】
前記ペンユニットに収容される液状組成物は、変色性被筆記体の多孔質層に付着して当該箇所の多孔質層に浸透させ、透明又は半透明化して像を視覚させるものであり、多孔質層に浸透した媒体が蒸発しても、液状組成物中に含まれる固体物は残存するため、像が永続して視認される。
【0015】
前記液状組成物に用いられる媒体は、水が安全性、コスト面から好適に用いられるが、これに限らず、有機溶剤、又は、有機溶剤と水の混合物であってもよい。
前記有機溶剤としては、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、ミネラルスピリット、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、0−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、p−シメン、ソルベントナフサ、テトラヒドロナフタリン、α−ピネン、テレピン油、鉱物油、植物油等の炭化水素類。
メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第3ブチルアルコール、イソアミルアルコール、フーゼル油、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の一価アルコール類。
エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル酢酸エステル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、酢酸モノグリセリド、酢酸ジグリセリド、酢酸トリグリセリド、酪酸モノグリセリド等の多価アルコール及びその誘導体。
エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フェニルメチルエーテル、フェニルエチルエーテル、o−クレシルメチルエーテル、m−クレシルメチルエーテル、p−クレシルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジエチレンオキシド、シネオール、フルフラール、フルフリルアルコール、酪酸フルフリル、テトラヒドロフルフリルアルコール、ホルマール、アセタール等のエーテル及びアセタール類。
アセトン、アセトン油、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、カンフル等のケトン類。
蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ノルマルブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、イソ吉草酸イソアミル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、桂皮酸エチル、アジピン酸エチル、アジピン酸ブチル、アジピン酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ−n−ヘキシルアジペート、アジピン酸ジ−n−オクチルアジペート、アジピン酸ジ−n−デシルアジペート、フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ビス(2エチルヘキシル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2エチルヘキシル)、ドデカン2酸ビス(2−エチルヘキシル)、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸トリス(2エチルヘキシル)、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸アミル、オキシイソ酪酸エチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、サリチル酸メチル、ジエチルオキサレート、ジブチルオキサレート、マロン酸ジエチル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジアミルフタレート、ジノルマルヘキシルフタレート、ジノルマルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のエステル類。
蟻酸、酢酸、無水酢酸、クレゾール、等の脂肪酸及びフェノール類。
アニリン、o−トルイジン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゾール、ニトロアニソール等の窒素化合物類を例示できる。
前記化合物のうち、流動パラフィン、植物油、アジピン酸エステル等の脂肪族エステル類、プロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類は他の有機溶剤と比較して安全性に優れるために好適に用いられる。
【0016】
前記媒体中に溶解及び又は分散される固体物は、20℃において固体状態を示す物質であり、媒体が乾燥しても多孔質層中に残存して像を永続して視認させるため、屈折率が1.3〜1.8、好ましくは1.4〜1.7のものが用いられる。
これは、変色性被筆記体の多孔質層中に含まれる低屈折率顔料の屈折率が1.4〜1.8の範囲にあるため、層中に浸透した固体物が低屈折率顔料と同等の屈折率を有して、層に良好な透明性を付与でき、下層の色調を視認できる効果を永続して示すことができるからである。
よって、前記固体物を用いることにより、変色性被筆記体に形成された像が経時後も初期と同様の形状及び色調で保存することが可能となる。
【0017】
前記固体物としては、20℃で固体状態を示し、且つ、屈折率が1.3〜1.8の範囲にある有機物もしくは無機物であれば特に限定されないが、その例としては、アイオノマー樹脂、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレートターポリマー、塩化ビニル樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレンアクリル酸エステル共重合、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−プロピレン共重合樹脂、塩化ビニル−ビニリデン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、メトキシメチル化ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フノール樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ポリオレフィン系共重合樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、イソプレンゴム、ブチルゴム、環化ゴム、塩素化ゴム、ポリビニルアルキルエーテル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、トルエン樹脂、キシレン樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合樹脂、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合樹脂、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾールメチル硫酸塩共重合樹脂、ビニルピロリドン−メタクリル酸ナトリウム塩共重合樹脂、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合樹脂、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン−ビニルイミダゾール、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリリン酸塩等の合成樹脂、若しくはオリゴマー。
【0018】
セルロースアセテート、セロファン、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、リン酸澱粉等の澱粉誘導体、デキストリン、ゼラチン、ニカワ、ロジン、セラック、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カルナバワックス、グルー、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、コラーゲン、エラスチン、アラビアゴム、エステルガム、グアーガム、グリチルリチン、コパールゴム、タラカントガム、ダンマルゴム、五倍子、没食子、タンニン酸、ヒアルロン酸、ショウ脳、合成ショウ脳、乳糖、ブドウ糖、ペクチン、ポリフェノール、蜜ロウ、木ロウ、没食子酸、ピロガロール等の天然物、若しくは半合成樹脂。
【0019】
ヤシ油、パーム油、牛脂、硬化油、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、オキシ酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル脂肪酸エステル等の固形油脂。
【0020】
脂肪酸石けん、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩−ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩、硫酸化油、アルキル硫酸塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキルアマイド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、アルキルジメチルベンタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリュウムベンタイン、レシチン、レシチン誘導体、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フルオロアルキルカルボン酸塩、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[フルオロアルキルオキシ]−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,Nジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベンタイン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベンタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パ−フルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩等の界面活性剤類。
【0021】
デンプン糖、デキストラン、カードラン、プルラン、シクロアミロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の多糖類。
【0022】
D−ソルビット、マンニット、マルチトール、イノシトール、フィチン酸、アルブチン等の配糖体。
【0023】
ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、アスコルビン酸カルシウム、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンG、ビタミンH、ビタミンK、ビタミンL、ビタミンM、ビタミンP、ビタミンR、ビタミンS、ビタミンT、ビタミンU、ビタミンV、ビタミンW、ビタミンX、ビタミンY、パントテン酸、ニコチン酸、リポ酸、リポアミド等のビタミン類。
【0024】
L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸塩、D−アスパラギン酸、DL−アラニン、L−アラニン、D−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−イソロシアニン、グリシン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−シスチン、L−システインの誘導体、L−スレオイン、L−セリン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、DL−メチオニン、L−メチオニン、L−リジン、L−ロイシン、グリシルグリシン、グルタチオン、酸化型グルタチオン、γ−アミノ酪酸、εアミノカプロン酸、L−オルニチン塩酸塩、L−シトルリン、等のアミノ酸類。
【0025】
コルチゾン、テストステロン、チロキシン、アドレナリン、インシュリン等のホルモン類。
【0026】
アデニン、アデノシン、5′−アデニル酸、3′,5′−サイクリックアデニル酸、アデノシン三リン酸ナトリウム塩、6−アリルアデノシン、6−ベンジルアデニン、6−アリルアデノシン、6−ベンジルアデノシン、デキシアデノシン一リン酸、グアニン、グアノシン、グアニル酸ナトリウム塩、デオキシグアノシン一リン酸、ウラシル、ウリジン、5′−ウリジル酸二ナトリウム塩、デオキシウリジン、5′−ヨードデオキシウリジン、ウリジン−5′−ジホスフェートグルコース、オロト酸、シトシン、シチジン、5′−シチジル酸、シチジン−5′−三リン酸塩、デオキシシチジン一リン酸、シチジン−5′−ジホスフェートコリンナトリウム塩、アラビノシルシトシン、ピポキサンチン、イノシン、5′−イノシン酸ナトリウム、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型ナトリウム塩、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート還元型ナトリウム塩、コレステリン、γ−オリザノール等の核酸及び脂質類。
【0027】
その他、尿素、N,N′−エチレンビス(ステアロアミド)、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、N,N′−メチレンビス(ステアロアミド)、メチロールステアロアミド、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、CTU、CTUグアナミン、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデカン二酸ジヒドラジド、ペンタエリスリトール、マロン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、アセトアニリド、アセト酢酸アニリド、p−アミノアセトアニリド、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、ジフェニル酢酸、ジフェニルスルホン、ジメチルテレフタレート、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、P−ヒドロキシ安息香酸、没食子酸ステアリル、ラウロン、ステアロン等を例示できる。
【0028】
また、無機物としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、サラシ粉、炭酸二ナトリウム、ソーダ石灰、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アンモニウムミョウバン、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ等を例示できる。
【0029】
前記媒体中に含まれる固体物は3.0質量%以上、好ましくは3.0〜90.0質量%である。3.0質量%未満では明瞭な像の形成性に乏しく、90.0質量%を越えると適用される固体物によっては粘度が上昇して初期の像形成性を損ない易くなる。
【0030】
また、固体物が液状組成物中で分散した系において、前記固体物を多孔質層に効率的に含浸させるためには、固体物の粒子径が10μm以下、好ましくは0.01μm〜10μm、より好ましくは0.01μm〜5μmのものが用いられる。
固体物を0.01μm以下に微分散することは困難であり、10μm以上では多孔質層の空隙に固体物粒子が入り込み難くなり、多孔質層表面に付着して明瞭な像の形成が困難となる。
【0031】
なお、前記固体物として水に可溶なものを用いると、液状組成物を変色性被筆記体に適用し、媒体が蒸発して固体物により形成した像を水洗により容易に除去することができ、変色性被筆記体を繰り返し使用することができる。
また、手に固体物が付着しても水で容易に洗い流すことができる。
【0032】
前記液状組成物中に剪断減粘性付与剤を添加すると、液状組成物を充填するボールペン形態のペンユニットの不使用時にボールとチップの間隙からの液状組成物の漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合の液状組成物の逆流を防止することができる。
更に、変色性被筆記体に形成される文字や像の滲みを防止することもできるため、明瞭な筆跡を形成できる。
なお、前記剪断減粘性付与剤を添加した液状組成物の粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度における液状組成物の粘度が20〜300mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.6を示すことが好ましい。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kj(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、アルカガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0033】
前記媒体中には、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0034】
その他、必要に応じてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤を使用してもよい。
また、固着性や粘性付与のためにアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等を用いることもできる。
【0035】
前記ペンユニットに収容した液状組成物の後端には逆流防止体を充填することができる。前記逆流防止体は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0036】
更に、前記不揮発性液体や難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
尚、前記液状の逆流防止体と共に、固体の逆流防止体を併用することもできる。
【0037】
前記電子ペンの読取ユニットは、変色性被筆記体に印刷されたドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを備えた撮像部と、BluetoothやUSBに対応する通信部を備えている。
前記読取ユニットは、筆記時のペン先の動きに合わせて、変色性被筆記体に印刷されたドットパターン情報を撮像部で読み取って記憶部に記憶した後、筆記の順番や時間等の識別情報と共に通信部からパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信するものである。
更に、前記読取ユニットの構成部を起動するためのバッテリーや圧力センサ、筆記時にドットパターンを照射するLED、操作状態を感応的に知らせる振動部等を設けることもできる。
【0038】
前記変色性被筆記体は、支持体上に、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた吸液状態で透明又は半透明化して変色する多孔質層と、ドットパターンを設けてなる。
前記支持体の材質は特に限定されるものではないが、耐水性を有する合成紙、プラスチックフィルムが好適に用いられる。
前記支持体の形状は特に限定されるものではないが、平面形状、シート状の形状が好適である。
【0039】
前記支持体上には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及び/又は珪酸塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0040】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2質量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、形成される多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30質量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層中には着色剤を含有させることもできる。
【0041】
前記多孔質層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
また、前記多孔質層中に着色顔料させたり、支持体と多孔質層の間に着色顔料を含む非変色層を設けることもできる。
【0042】
前記多孔質層上には、前記撮像部で読み取られるドットパターンが表面に印刷され、必要に応じて、文字や罫線や図形等が印刷される。その場合、図形内に特定情報を表すドットパターンを印刷すると図形にタッチした際に電子データ化される内容(例えば、筆跡の色調や太さ、入力完了指示等)やデータ送信開始指示等を指定できるような構成(所謂、専用ボックス)とすることも可能である。
前記ドットパターンは所定の位置に印刷されており、電子ペンの撮像部で読み取られた際、液状組成物(ペンユニット)で筆記した文字や図形がドットパターンのストローク座標情報として電子データ化され、記憶部に記憶されるようになっている。
【0043】
更に、前記変色性被筆記体には、筆跡が水により消去可能であることを説明した表示部を設けることもでき、表示部を確認したユーザーが書き込んだ筆跡を水洗いすることで消去させて変色性筆記体を再利用することができる。
前記変色性被筆記体は1枚の変色性被筆記体として使用される他、複数枚を冊子形態として構成することもできる。また、ドットパターンのみを印刷したメモやノートとしての使用や、種々の書式を用いた帳票形態での使用により実用に供される。
【0044】
また、前記支持体を透明性プラスチックフィルム等の透明性を有する材料により形成し、多孔質層が乾燥状態で支持体の下部に配置した印刷物を視認できるように構成すると、種々印刷物に多孔質層及びドットパターンを印刷することなく実用に供することができると共に、該印刷物を耐水性に乏しい紙により形成することもでき、経済性を満足させることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部である。
実施例1
ペンユニットの作製
ポリエチレングリコール40.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、水59.7部を混合して液状組成物を調製した。
前記液状組成物24を外径2.2mmのポリプロピレン製パイプ(収容筒22)に充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ21と連結させた。次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部よりポリブテンを主成分とする粘弾性を有する逆流防止体25を充填して遠心処理による脱気を行なった後、収容筒22の後端に尾栓23を取り付けてペンユニット2を得た。
尚、前記ボールペンチップ21は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0046】
電子ペンの作製(図1参照)
電子ペン1として、ドットパターンが印刷された電子ペン用変色性被筆記体を使用する「Anoto社」のシステムを用いるものが適用される。
前記電子ペン1は、ペンユニット2を収容し、該ペンユニット後端に圧力センサ3が搭載される。更に、読取ユニットとして、ドットパターンを読み取るデジタルカメラを備える撮像部4、デジタルカメラで読み取られた筆跡情報(ドットパターンの座標情報)を記憶する記憶部5、通信端末に座標情報(電子データ)を送信する通信部6、これらの機能を制御する制御部7、各要素に電源供給する電源部8により構成され、これらを電子ペン外装9内に搭載している。
更に、非使用時にペン先(ボールペンチップ21)を被覆するキャップ(図示せず)が設けられ、キャップ被覆時には電子ペン1の電源がオフ状態になると共に、キャップを外すことで電子ペン1の電源がオン状態となるように構成される。
【0047】
前記ペンユニット2は外装9内に交換可能に収容されており、収容時に尾栓後端が、圧力センサに接触するように設定されている。前記圧力センサは、筆記が開始されたことを制御部に伝達する機能と、筆圧の強弱を認識する機能とを備えている。
また、ペンユニットは、筆記時に液状組成物による筆跡を可視状態で変色性被筆記体に残す役割の他に、撮像部(デジタルカメラ)とドットパターン印刷面との距離を一定に保つ役割を担っている。
前記撮像部により変色性被筆記体に印刷されたドットパターン情報を読み取った後、該情報(電子データ)を記憶部に記憶する。その際、読み取った情報に加えて、他の識別情報(筆記された順番、速度、日時等)を付加することもできる。尚、前記記憶部に記憶された電子データが不要になった際に消去するためのリセットボタンが外装の表面に埋没する位置に設けられ、ピン等で押圧することでデータが消去される。
【0048】
前記通信部は、USBとBluetoothに対応するものである。変色性被筆記体への筆記により得られたデータを記憶部に記憶した後、送信指示を行うことで前記データが通信部から通信端末に送信される。
前記送信指示は、変色性被筆記体上の所定位置に設けられた専用ボックス(ドットパターンによる送信指示が示された図形)を電子ペンでチェックすることや、電子ペンをクレイドル(充電機能を付したスタンド型拡張機)に接続することで行われ、BluetoothやUSB経由で通信端末に前記データが送信される。
【0049】
更に、前記電子ペンには、電源の通電情報やデータの送信完了や専用ボックス内の情報読取完了等を電子ペンの振動により示すための振動部が配設され、より利便性の高い構成となっている。
【0050】
変色性被筆記体の作製(図2参照)
支持体11として白色合成紙(大きさ200mm×100mm、厚み80μm)上に、黒色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤2部、レベリング剤1部、エポキシ系架橋剤2.5部、水36.3部を均一に混合、攪拌した黒色スクリーン印刷用インキを用いて、全面に印刷して非変色層12を形成した。
次いで、前記非変色層上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水28.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ印刷を施し、70℃で15分間乾燥、硬化させて多孔質層13を形成した。
前記多孔質層上に、非変色性黒色インキを用いてドットパターン14(通称「アノトパターン」と呼ばれ、各ドットが0.3mm間隔で形成された直角に交わる縦横の仮想線の交点近傍に、それぞれ異なる4方向の何れかに配置され、36個のドットを1単位情報としている)を印刷し、変色性被筆記体10を得た。
【0051】
電子ペンセットの作製
前記電子ペンと、変色性被筆記体とを組み合わせて電子ペンセットを得た。
電子ペンのキャップを外すことで電源部8が通電して電源が入る。
前記電子ペンを用いて変色性被筆記体に文字等を筆記した際、筆圧によるペンユニットの移動に伴って圧力センサが筆記状態を検知する。その際、デジタルカメラ(撮像部)が筆跡に対応する位置のドットパターン(座標情報)を検出し、ユーザーが書き込んだ文字をデータとして取得し記憶部に電子データが記憶される。
尚、変色性被筆記体に筆記する前に、専用ボックス(電子化された際に得られる筆跡の太さ、形状、色調等の情報がドットパターンで印刷される図形)が印刷されたカードに、チップを接触させることで撮像部が印字情報を認識し、電子化された際に得られる筆跡の状態を選択できる。
前記記憶部に記憶された電子データは、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップの接触又はクレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。
前記電子ペンから電子データが送られる通信端末は、例えば、キーボード等の入力手段、インターネットに接続され入力情報を送受信する送受信手段、ディスプレイ等の表示手段、入力情報や読み込んだ情報を保存する保存手段を有する携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)、パーソナルコンピュータ等の装置である。前記通信端末では、電子ペンから送信された電子データを、ソフトやシステム管理サーバ等を介して、テキストデータ等に変換して利用することができる。
一方、変色性被筆記体は、ペンユニットから導出される液状組成物を多孔質層が吸液して透明化し、下層の非変色層による黒色の筆跡が形成される。
前記筆跡は滲みがなく明瞭であると共に、筆跡が形成された変色体を20℃の環境下で3カ月間放置しても初期と同様の色濃度と形状を維持しており、保存安定性に優れていた。
又、前記液状組成物に含まれる固体物は水に可溶であるため、筆跡を形成する際に液状組成物が手に付着しても水で容易に洗い落とすことができると共に、間違った筆跡を形成した場合でも変色性被筆記体を水洗することによって筆跡を完全に除去することができ、再度変色性被筆記体に筆跡を形成することができる。
電子ペンの使用が終了した後には、再びキャップを被せることで電源部の通電が解除され電源が切れる。
尚、前記専用ボックスへのチップ接触時、キャップの着脱時(電源オンオフ時)等には、所望の指示を認識したことを知らせるために振動部が作動し、ユーザーに振動で合図を送るように制御される。
【0052】
実施例2
ペンユニットの作製
水溶性ナイロン樹脂30.0部、サクシノグリカン0.3部(剪断減粘性付与剤)、リン酸エステル系界面活性剤(潤滑剤)0.5部、水69.2部を混合して液状組成物を調製した。
前記変色体用液状組成物を外径2.2mmのステンレス製パイプ(収容筒)に充填し、ボールペンチップと連結させた。次いで、前記ステンレス製パイプの後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有する逆流防止体を充填して遠心処理により脱気処理を行なってペンユニット(交換用)を得た。
尚、前記ボールペンチップは、金属塊を切削したチップの先端部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0053】
前記ペンユニットを実施例1と同様の電子ペンに収容した。
【0054】
変色性被筆記体の作製
支持体として白色コート紙(大きさ100mm×100mm、厚み80μm)上に、青色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤2部、レベリング剤1部、エポキシ系架橋剤2.5部、水36.3部、を均一に混合、攪拌した青色スクリーン印刷用インキを用いて、全面に印刷して非変色層を形成した。
次いで、前記非変色層上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水28.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ印刷を施し、70℃で15分間乾燥、硬化させて多孔質層を形成した。
前記多孔質層上に、非変色性黒色インキを用いてドットパターンを印刷し、変色性被筆記体を得た。
【0055】
電子ペンセットの作製
前記電子ペンと、変色性被筆記体とを組み合わせて電子ペンセットを得た。
電子ペンを用いて変色性被筆記体に筆記すると、実施例1と同様に記憶部に記憶された電子データは、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップの接触又はクレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。
一方、変色性被筆記体は、ペンユニットから導出される液状組成物を多孔質層が吸液して透明化し、下層の非変色層による青色の筆跡が形成される。
前記筆跡は滲みがなく明瞭であると共に、筆跡が形成された変色体を20℃の環境下で3カ月間放置しても初期と同様の色濃度と形状を維持しており、保存安定性に優れていた。
又、前記液状組成物に含まれる固体物は水に可溶であるため、筆跡を形成する際に液状組成物が手に付着しても水で容易に洗い落とすことができると共に、間違った筆跡を形成した場合でも変色性被筆記体を水洗することによって筆跡を完全に除去することができ、再度変色性被筆記体に筆跡を形成することができる。
【0056】
実施例3
ペンユニットの作製
ポリビニルピロリドン40.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、グリセリン5部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、水54.2部を混合して液状組成物を調製した。
前記変色体用液状組成物を外径2.2mmのポリプロピレン製パイプ(収容筒)に充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップと連結させた。次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部よりポリブテンを主成分とする粘弾性を有する逆流防止体を充填して遠心処理による脱気を行なった後、収容筒の後端に尾栓を取り付けてペンユニットを得た。
尚、前記ボールペンチップは、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0057】
前記ペンユニットを実施例1と同様の電子ペンに収容した。
【0058】
変色性被筆記体の作製
支持体として透明プラスチックフィルム(大きさ250mm×150mm、厚み80μm)上に、黒色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤2部、レベリング剤1部、エポキシ系架橋剤2.5部、水36.3部を均一に混合、攪拌した黒色スクリーン印刷用インキを用いて、全面に印刷して非変色層を形成した。
次いで、前記非変色層上に、低屈折率顔料として湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE−200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP−10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水28.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いてベタ印刷を施し、70℃で15分間乾燥、硬化させて多孔質層を形成した。
前記多孔質層上に、非変色性黒色インキを用いてドットパターンを印刷し、変色性被筆記体を得た。
【0059】
電子ペンセットの作製
前記電子ペンと、変色性被筆記体とを組み合わせて電子ペンセットを得た。
電子ペンを用いて変色性被筆記体に筆記すると、実施例1と同様に記憶部に記憶された電子データは、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップの接触又はクレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。
一方、変色性被筆記体は、ペンユニットから導出される液状組成物を多孔質層が吸液して透明化し、下層の非変色層による黒色の筆跡が形成される。
前記筆跡は滲みがなく明瞭であると共に、筆跡が形成された変色体を20℃の環境下で3カ月間放置しても初期と同様の色濃度と形状を維持しており、保存安定性に優れていた。
又、前記液状組成物に含まれる固体物は水に可溶であるため、筆跡を形成する際に液状組成物が手に付着しても水で容易に洗い落とすことができると共に、間違った筆跡を形成した場合でも変色性被筆記体を水洗することによって筆跡を完全に除去することができ、再度変色性被筆記体に筆跡を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 電子ペン
2 ペンユニット
21 ボールペンチップ
22 収容筒
23 尾栓
24 液状組成物
25 逆流防止体
3 圧力センサ
4 撮像部
5 記憶部
6 通信部
7 制御部
71 切替部
8 電源部
9 外装
10 変色性被筆記体
11 支持体
12 非変色層
13 多孔質層
14 ドットパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットパターンが印刷された変色性被筆記体と、前記変色性被筆記体に筆記するペンユニット及び前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えた電子ペンとからなる電子ペンセットであって、前記ペンユニットは、媒体に屈折率が1.3〜1.8の固体物を溶解及び/又は分散させた液状組成物を収容してなり、前記変色性被筆記体は、支持体上に、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた吸液状態で透明又は半透明化して変色する多孔質層と、ドットパターンを設けた変色性被筆記体であることを特徴とする電子ペンセット。
【請求項2】
前記媒体中に剪断減粘性付与剤を含有してなる請求項1記載の電子ペンセット。
【請求項3】
前記媒体中に分散された固体物の粒子径が10μm以下である請求項1又は2記載の電子ペンセット。
【請求項4】
媒体が蒸発した後、水に対して溶解可能な固体物を用いてなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子ペンセット。
【請求項5】
前記媒体中に潤滑剤を含有してなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子ペンセット。
【請求項6】
前記ペンユニットが着脱可能である請求項1記載の電子ペンセット。
【請求項7】
前記支持体が透明性を有する請求項1記載の電子ペンセット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−247900(P2012−247900A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117726(P2011−117726)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】