説明

電子レンジ用包装体

【課題】箱体の開封部を開放した後に、その開封部が開放した状態をより確実に維持できるようにした電子レンジ用包装体を提供することである。
【解決手段】前面11に開放可能な開封部15が設けられた箱体10と、蒸気抜き部21a、21b、21cが形成され、該蒸気抜き部が開封部15に対向するように箱体10に収められた包装袋20とを有する電子レンジ用包装体であって、側面は、第1側面13aとそれを挟んで相互に対向する第2側面13b及び第3側面13dとを少なくとも有し、開封部15は、非開封部との境界16から第1側面13aの側に開放するものであって、開封部15の非開封部16との境界は、前面11をわたって第2側面13b及び第3側面13dのそれぞれに続き、第2側面13b及び第3側面13dのそれぞれと第1側面13a及び裏面12とが交わる角部に至るように延びている構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジでの加熱が可能となる逃圧口(蒸気抜き部)の設けられた食品用の包装袋(パウチ)が箱体に収められた構造となる電子レンジ加熱包装体が提案されている(特許文献1参照)。この電子レンジ加熱包装体においては、包装袋に加熱する際の内圧上昇を緩和するための逃圧口(蒸気抜き部)が形成され、その包装袋が、開放可能な切離開封部の形成された箱体に、その逃圧口を前記切離開封部に対向させて収められている。そして、箱体の切離開封部を開放して包装袋の逃圧口を露出させた状態にて、電子レンジにより包装袋内の食品内容物が加熱される。この加熱によって、箱体内の包装袋が膨張して内圧がある限界を超えると、逃圧口から蒸気が噴出し、包装袋内部の圧力が適切に維持されつつ包装袋内の食用内容物が加熱調理される。
【0003】
また、電子レンジでの加熱が可能な密封包装食品B(包装袋)が箱体Aに収められた構造となる他の電子レンジ加熱包装体が提案されている(特許文献2参照)。この電子レンジ加熱包装体では、箱体Aの天壁1の両側壁3、3間にわたって延びる天壁破断用ライン11及びその両端から両側壁3、3及び底壁2を通って前壁4に至る側壁破断用ライン31、底壁破断用ライン21が破断されることにより箱体Aが開封されて、内部の密封包装食品(包装袋)Bが露出するようになっている。具体的には、前記ライン11、31、21の破断によって切り残った前壁4と底壁2との境界をヒンジにして、天壁1、両側壁3、3及び底壁2に形成されたライン11、31、21から前壁4側の部分が、前壁4と底壁2とが同じ面となるまで回動することによって立ち上がって箱体Aが開封される。そして、このように開封された箱体Aとそれから露出する密封包装食品Bとが一体となって電子レンジに入れられて、密封包装食品Bの加熱がなされる。この場合も、加熱される密封包装食品Bの包装袋6には、蒸気逃がし部621が形成されており、加熱中に蒸気逃がし部621から蒸気が噴出することで、包装袋6内の圧力が適切に維持されつつ、食用内容物が加熱調理される。
【0004】
前述したような各電子レンジ用包装体によれば、箱体を開封するだけで、箱体から包装袋を取り出すことなく、電子レンジによって前記包装袋内の食品内容物を加熱することができるので、電子レンジによる加熱調理の準備を簡単かつ容易に行うことができる。更に、包装袋が箱体内に収まった状態で電子レンジよる加熱がなされるので、包装袋内の食品内容物を安定した状態で加熱することができる。また、加熱調理終了後も、熱くなったパウチに直接触れずに、箱体を持って電子レンジから安全に取り出すことができる。
【0005】
また、後者の例の場合(特許文献2参照)、底壁2の前壁4と両側壁3、3に挟まれた両角部分が、回動する部分に含まれて立ち上がるので、箱体Aが開封された状態で、前記底壁2の両角部分が密封包装食品Bの端縁に突き当たるようになる。このため、加熱中に箱体Aの起き上がった部分が戻ることなく、箱体A内部の包装体6の膨張が妨げられたり、包装袋6の蒸気逃がし部621から噴出する蒸気によってその起き上がった部分が湿ってしまったりすることが防止され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−39476号公報
【特許文献2】特開2002−019776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、箱体の開封部を開放して包装袋の蒸気抜きの部分(逃圧口)を露出させ、その状態で電子レンジによって包装袋の内容物を加熱することのできる電子レンジ用包装体では、箱体が容易に開放できること、また、開放された開封部が加熱中に戻って包装袋を被い、その膨張を妨げたり、蒸気抜きの部分から噴出する蒸気によって開封部が湿ってしまったりすることを極力防止できるようにすることが重要である。
【0008】
前述した後者の例(特許文献2参照)では、底壁2の前壁4と両側壁3、3に挟まれた両角部分が、回動する部分に含まれて立ち上がるので、箱体Aを開封する際に、前記底壁2の両角部分が内部の密封包装食品Bの角部分に干渉してしまい、スムーズな箱体Aの開封ができない場合がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、箱体のスムーズな開封が妨げられることなく、箱体の開封部を開放した後に、その開封部が開放された状態をより確実に維持できるようにした電子レンジ用包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子レンジ用包装体は、相互に対向する前面及び裏面と該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有する電子レンジ用包装体であって、前記側面は、第1側面とそれを挟んで相互に対向する第2側面及び第3側面とを少なくとも有し、前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側に開放するものであって、前記開封部の非開封部との境界は、前記前面をわたって前記第2側面及び前記第3側面のそれぞれに続き、当該第2側面及び第3側面のそれぞれと前記第1側面及び前記裏面とが交わる角部に至るように延びている構成となる。
【0011】
このような構成により、包装袋の収められた箱体の開封部は、非開封部との境界より内側の第1側面に続く前面、第2側面及び第3側面のそれぞれの部分を含むので、その開封部を非開封部との境界から第1側面の側に開放する際に、該開封部は、第1側面、第2側面及び裏面が交わる角部と、第1側面、3側面及び裏面が交わる角部を結ぶ直線である第1側面と裏面との境界をヒンジのようにして回動しつつ開放される。前記開封部の非開封部分との境界が第2側面及び第3側面のそれぞれと第1側面及び裏面とが交わる角部に至るようになっているので、開封部が開放される際に、内部の包装袋と開封部とが干渉することはない。このようにして開封部が開放された箱体から部分的に露出する包装袋は、電子レンジにより加熱されると、内部で発生する水蒸気により膨張し、その内圧がある限度を超えると、水蒸気が蒸気抜き部から噴出する。よって、包装袋内の内容物が適度な圧力にて加熱調理され得る。
【0012】
本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記開封部が開放された状態で、当該電子レンジ用包装体が電子レンジによって加熱される際に、膨張する前記包装袋の第1側面側の端縁の高さが前記箱体の前記側面の高さの2倍以上となる構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、電子レンジの加熱により第1側面側の端縁の高さが箱体の側面の高さの2倍以上となるように膨張した包装袋の当該端縁によって箱体の開封部が効果的に支えられるので、加熱中に蒸気抜き部から蒸気が噴出する包装袋に開封部が被いかぶさることを確実に防止することができ、その結果、加熱中に包装袋の蒸気抜き部から噴出する蒸気によって開封部が湿ってしまうことを確実に防止することができるようになる。
【0014】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記電子レンジによる加熱が終了した後に、前記包装袋の前記第1側面側の端縁の高さが、前記箱体の前記側面高さの2倍以上に維持されるように構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、電子レンジによる加熱が終了した後に、第1側面側の端縁の高さが箱体の側面の高さの2倍以上に維持される包装袋の当該端縁によって箱体の開封部が効果的に支えられるので、加熱後の包装袋に開封部が被いかぶさることを確実に防止することができ、その結果、箱体から包装袋の取出しが被いかぶさる開封部によってし難くなってしまうことを防止することができる。
【0016】
更に、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記包装袋は、前記電子レンジによる加熱時に前記箱体の前記裏面側へ突出する折り返し部を有する構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、電子レンジによる加熱時に、包装袋の折返し部が箱体の裏面側に突出するので、蒸気抜き部が形成された部分がせり上がって、蒸気が噴出する際に内容物が誤って吹きこぼれるのを防止できる。また、このせり上がった部分に近い包装袋の第1側面側の端縁によって、開放された開封部が戻って包装袋に被いかぶさることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋によれば、開封部が、第1側面、第2側面及び裏面が交わる角部と、第1側面、3側面及び裏面が交わる角部を結ぶ直線である第1側面と裏面との境界をヒンジのようにして回動しつつ開放すると、開封部の表面、第2側面及び第3側面のそれぞれの部分につながる第1側面が前記ヒンジを軸に外側に傾いた状態となるので、その第1側面につながる各部分の重さによって当該開封部が戻り難い。また、加熱時に膨張する包装袋によって、開封部の開放時に外側に傾いた第1側面がもとの状態に戻ることが妨げられるようになる。よって、箱体の開封部を開放した後に、その開封部が開放された状態をより確実に維持できるようになる。更に、開封部が開放される際に、内部の包装袋と開封部とが干渉することがないので、箱体のスムーズな開封も妨げられることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【図3】箱体に形成された開封部の詳細構造を示す部分拡大展開図である。
【図4】図1に示す電子レンジ用包装体の断面構造を示す断面図である。
【図5】図1に示す電子レンジ用包装体の箱体の開封部を開放した状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示す電子レンジ用包装体の箱体の開封部を開放した状態を示す側面図である。
【図7】箱体内に納められるパウチの膨張した状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示す状態の電子レンジ用包装体を電子レンジにて加熱している際の状態を示す斜視図である。
【図9】図5に示す状態の電子レンジ用包装体を電子レンジにて加熱している際の状態を示す側面図である。
【図10】図5に示す状態の電子レンジ用包装体を電子レンジにて加熱し終えた際の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
本発明の実施の一形態に係る電子レンジ用包装体は、図1及び図2に示すように構成される。なお、図1は、電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【0022】
図1において、この電子レンジ用包装体に用いられる箱体(化粧箱)10は、紙製(例えば、コートボール紙310g/cm2等)であって、相互に対向する矩形形状の前面11及び裏面12と、前面11及び裏面12の各縁に連なる上側面13a、横側面13b、下側面13c及び横側面13dの4つの側面とから形成されている。そして、図1には表れていないが、箱体10内には、プラスチック製シートにて形成され、食品等の内容物が充填された所謂平袋タイプの電子レンジ用のパウチ20(包装袋)が収められている(後述する図4乃至図7参照)。
【0023】
箱体10は、図2に示す展開紙から組み立てられる。この展開紙は、矩形形状(長方形状)の前面11及び裏面12、短冊形状の上側面13a、一方の横側面13b、下側面13c、他方の横側面13d、糊代(糊付け面)14aa、14b、14ca、及び折り片14ab、14ac、14cb、14ccからなっている。この展開紙を折り曲げ接着することで、図1に示すように、相互に対向する前面11、裏面12と、相互に対向する上側面13a、下側面13c及び相互に対向する2つの横側面13b、13dの4つの側面とによって扁平直方体形状となる箱体10が形成される。具体的には、横側面13bから突出する糊代14bを裏面12の裏側に接着することにより、前面の縁に連なる横側面13bが裏面12に接合される。そして、折り片14ab、14ac、14cb、14ccを内側に折り込みつつ糊代14aaを上側面13aの裏側に接着するとともに、糊代14caを下側面13cの裏側に接着することにより、前面11及び裏面12に上側面13a、下側面13c及び横側面13b、13dの4つの側面が接合して、箱体10が形成される。図2に示す展開紙を図1に示す箱体10に組み立てたときに、上側面13aと裏面12との境界となる裏面12と糊代14aaとの境界にミシン目線18が形成されている。このミシン目線18によって上側面13aと裏面12との境界においてそれら上側面13a及び裏面12を元に戻す力が弱められる(復元弱化部)。
【0024】
また、図1とともに図2及び図3を参照するに、箱体10の前面11から上側面13a(第1側面)を挟む両横側面13b(第2側面)及び13d(第3側面)にかけて開放可能な開封部15が形成されている。開封部15の非開封部との境界16には切込み線が連なった切込み線列が形成されており、この切込み線列の非切込み部分が連鎖的に切れることによって開封部15が境界16から上側面13aの方向に開放する。開封部15の非開封部との境界16は、前面11において上側面13aの側に開口する略V字状となる第1部分161と、当該第1部分161の一方の端部に続いて前面11から一方の横側面13bに延びて当該横側面13bと上側面13a及び裏面12とが交わる角部C1に至る第2部分162と、第1部分161の他方の端部に続いて前面11から他方の横側面13dに延びて当該横側面13dと上側面13a及び裏面12とが交わる角部C2に至る第3部分163とからなっている。箱体10の展開紙上において、境界16の第1部分161と第2部分162とは直線的に続き、第1部分161と第3部分163とも直線的に続いている。このため、開封部15の非開封部との境界16の切込み線列を箱体10に比較的容易に形成することができる。
【0025】
開封部15の非開封部との境界16のV字状になる第1部分161の頂部の内側には指掛け部17が形成されている。指掛け部17はミシン目線17aによって画されるともに、切込み線17bが形成されている。これにより、指掛け部17は、指によって前面11の内側に押し込むことができるようになっている。
【0026】
箱体10に収められた平袋タイプのパウチ20は、図4、図5、及び図6に示すように、縁部に蒸気抜き部21a、21b、21cが並んで形成されている。各蒸気抜き部21a、21b、21cは、例えば、特開2002−249176号公報に記載されるように、孔(弱化部)の周りがシールされた構造となって、パウチ20の内圧が限界を超えると、その蒸気抜き部21a、21b、21c(孔)から蒸気が噴出するようになっている。なお、蒸気抜き部21a、21b、21cの構造としては、上述したものに限らず、パウチ20の縁辺シール部の所定部位を、狭幅とする、内側に突出させる、易剥離性フィルムを挟んでシールするなどして、パウチ10の内圧が上昇した際に前記所定部位のシールが優先的に剥離するようにしたもの、マイクロ波の照射で発熱する発熱体をフィルム材(シート)に貼り付け、該フィルム材が溶融、もしくはシール強度が低下して蒸気が抜けるようにしたものなど、公知のものを適用することができる。
【0027】
パウチ20は、蒸気抜き部21a、21b、21cが前面11に形成された開封部15に対向するように箱体10に収められている。また、このパウチ20は、開封部15に対応した部位に内圧上昇によって裏面12側に突出する折返し部22が形成されている。この折返し部22は、パウチ20が膨張した際に突出するようになっており、その詳細な構造は、特開2006−62672号公報に記載されている。
【0028】
このように箱体10に収められたパウチ20の内容物を電子レンジにて加熱する場合について説明する。
【0029】
箱体10の開封部15の指掛け部17を内方に押し込んで形成される孔に指を引っかけて引き上げることで、開封部15の非開封部との境界16である前面11の第1部分161、一方の横側面13bの第2部分162及び他方の横側面13dの第3部分163のそれぞれに形成された切込み線列が順次切れて、開封部15は、その非開封部との境界16から上側面13aの方向に開放される。このとき、図5及び図6に示すように、開封部15は、上側面13a、一方の横側面13b及び裏面12が交わる角部C1と、上側面13a、他方の横側面13d及び裏面12が交わる角部C2と結ぶ直線で、ミシン目線18の形成された上側面13aと裏面12との境界をヒンジのようにして回動しつつ開放される。開封部15が開放されると、パウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分、すなわちパウチ20の上側面13a側の縁部が露出する。
【0030】
このようにして開封部15が開放された箱体10からパウチ10の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分が露出した状態の電子レンジ用包装体は、そのままの状態で電子レンジ内にセットされる。電子レンジによってパウチ20内の食品内容物が加熱されると、加熱された食品内容物から発生する水蒸気によってパウチ20が、図7に示すように、膨張し、箱体10の裏面12に当接した折返し部22が拡張して突出する。パウチ20の膨張及びその折返し部22の突出によって、図8、及び図9に示すように、箱体10内でパウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分がせり上がる。これら蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された縁部の端縁は、箱体10の上側面13a側に向けられており、例えば、この電子レンジの加熱によって膨張するパウチ20の上側面13a側の端縁の高さβ1が、箱体10の側面の高さαの2倍以上となるように、パウチ20の形状及び容量や折返し部22の構造等が決められている。図9に示すように膨張するパウチ20の内圧がある限度を超えると、パウチ20のせり上がった部分に形成された蒸気抜き部21a、21b、21cから水蒸気が噴出し、パウチ20の食品内容物が適度な圧力によって加熱調理される。
【0031】
電子レンジによる加熱が終了すると、パウチ20内での蒸気の発生が止まり、蒸気抜き部21a、21b、21cが蒸気抜けの抵抗となるものの、内圧が徐々に低下してパウチ20が収縮していく。その際、突出した折返し部22は折り返しが反転して元に戻りにくくなっており、加熱終了後も、図10に示すように、パウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分のせり上がった状態が維持される。
【0032】
前述したようにして開放された開封部15は、表面11及び両横側面13b、13dのそれぞれの部分につながる上側面13aが裏面12との境界をヒンジとして外方に倒れた状態になるので、上側面13aがそれにつながる各部分の重さによってもとの状態に戻り難いものとなっている。更に、上側面13aと裏面12との境界にミシン目線18が形成されて、その境界にいて上側面13a及び裏面12を元に戻す力が弱くなることからも開封部15が戻って、パウチ20に触れるようにはならない。また、膨張するパウチ20によって裏面12の中央部分が押えつけられながら前面11の非開封部部分の中央部分が盛り上がり、この前面11の盛り上がりにつられた両横側面13b、13dのつり上がりによって裏面12の両横側面13b、13dとの隣接部分がつり上がって、裏面12が湾曲するようになる。この裏面12の湾曲によってそれに続く上側面13aが立ち上がり難くなる。更に、膨張するパウチ20によっても外側に倒れた上側面13aがもとの状態に戻ることが妨げられる。これらのことによって、パウチ20内の食品内容物が加熱調理されている間、開放された開封部15がその開放された状態をより確実に維持できるようになる。
【0033】
更に、電子レンジによる加熱中に、膨張するパウチ20の上側面13a側の端縁の高さβ1が、箱体10の側面の高さαの2倍以上となり(図9参照)、仮に開封部15が被いかぶさってきても、パウチ20の端縁がせり上がることによって押し戻すことができる。パウチ20がせり上がっていく間は蒸気の噴出は始まらないので、この間に開封部が蒸気によって湿ることもない。また加熱が終了した後もせり上がった状態が維持されるので、開放した開封部15がパウチ20に被いかぶさることを更に確実に防止することができるようになる。このように蒸気抜き部を設けた端縁がせり上がる作用を有するパウチとしては、特開2006−62672号公報記載のものの他に、例えば、特開2003−81360号公報記載のように、分岐部に蒸気抜き部を設けたパウチも適用できる。
【0034】
このように、本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体によれば、開封部15が開放されて箱体10から蒸気抜き部21a、21b、21cの部分が露出するパウチ20内の食品内容物が電子レンジによって加熱される際に、開封部15がその開放された状態を確実に維持できるようになるので、開封部15によってパウチ20の膨張が妨げられたり、蒸気抜きの部21a、21b、21cから噴出する蒸気によって開封部15が湿ってしまったりすることを確実に防止することができる。また、開封部15を開放する際に、箱体10内部のパウチ20と開封部15とが干渉することがないので、箱体10の開封も引っ掛かりなくスムーズに行うことができるようになる。
【0035】
本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体では、開封部15の非開封部との境界16の横側面13b、13dに形成された第2部分162、第3部分163は、前面11との境界から角部C1、C2まで直線になっていたが、これら第2部分162、第3部分は、前記角部C1、C2までの曲線であっても、折れ線であってもよい。
【0036】
また、開封部15の非開封部との境界16に切込み線列を形成して開封部15が境界16から開放するようになっていたが、開口のある箱体に、開封部15に相当する部分を貼り付けて全体としての箱体10を形成するようにしてもよい(2009−51562号公報参照)。この場合、貼り付けられた部分をはがすことによって開封部が境界16から上側面13aの方向に開放されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上、説明したように、本発明に係る電子レンジ用包装体は、箱体の開封部を開放した後に、その開封部が開放された状態をより確実に維持できるようになるという効果を有し、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体として有用である。
【符号の説明】
【0038】
10 箱体
11 前面
12 裏面
13a 上側面(第1側面)
13b 横側面(第2側面)
13c 下側面
13d 横側面(第3側面)
15 開封部
16 境界
161 第1部分
162 第2部分
163 第3部分
18 ミシン目
14aa、14ca 糊代
14b 糊代
14ab、14ac、14cb、14cc 折り片
20 パウチ(包装袋)
21a、21b、21c 蒸気抜き部
22 折返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する前面及び裏面と該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有する電子レンジ用包装体であって、
前記側面は、第1側面とそれを挟んで相互に対向する第2側面及び第3側面とを少なくとも有し、
前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側に開放するものであって、前記開封部の非開封部との境界は、前記前面をわたって前記第2側面及び前記第3側面のそれぞれに続き、当該第2側面及び第3側面のそれぞれと前記第1側面及び前記裏面とが交わる角部に至るように延びている電子レンジ用包装体。
【請求項2】
前記開封部が開放された状態で、当該電子レンジ用包装体が電子レンジによって加熱される際に、膨張する前記包装袋の第1側面側の端縁の高さが前記箱体の前記側面の高さの2倍以上となる請求項1記載の電子レンジ用包装体。
【請求項3】
前記電子レンジによる加熱が終了した後に、前記包装袋の前記第1側面側の端縁の高さが、前記箱体の前記側面高さの2倍以上に維持される請求項2記載の電磁レンジ用包装体。
【請求項4】
前記包装袋は、前記電子レンジによる加熱時に前記箱体の前記裏面側へ突出する折り返し部を有する請求項1乃至3いずれか記載の電子レンジ用包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219121(P2011−219121A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89324(P2010−89324)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】