説明

電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法

【課題】冷凍・保存後に、電子レンジ加熱により容易に、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた揚げ物を得ることができ、しかも大量生産に適した、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法、該方法により得られる電子レンジ調理用冷凍揚げ物を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、アラビアガム又はガディガムと、保水剤と塩と水とを含む保水作用を有する溶液(X)、肉類又は魚介類からなる中具を準備する工程(A)と、前記溶液(X)に前記中具を接触させて、少なくとも中具を保水処理する工程(B)と、前記保水処理した中具に衣材を付着させる工程(C)と、得られる衣材付中具を油ちょうする工程(D)と、油ちょう後の揚げ物を冷凍する工程(E)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法に関し、更に詳細には、冷凍・保存後に、電子レンジ加熱により容易に、衣のサクサク感と、肉類、魚介類等の中具のジューシー感とを兼ね備えた、から揚げやフライ類等の揚げ物を得ることができ、しかも大量生産に適した、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法及び該方法で得られた電子レンジ調理用冷凍揚げ物に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏のから揚げ等のから揚げや、カツ等のパン粉を用いたフライ類等の揚げ物は、肉類、魚介類等の中具のジューシー感及び衣のサクサク感を兼ね備えたものが良好な品質として好まれている。
工業的に冷凍揚げ物を生産する方法としては、油ちょう処理せずに冷凍する方法と、油ちょう処理した後に冷凍する方法が知られている。前者は、冷凍・保存後に食する際に油ちょう処理する必要があり、調理が煩雑であるが、揚げ物の衣のサクサク感が得られ易いという利点がある。
一方、後者は、予め油ちょう処理されているので、冷凍・保存後、電子レンジ加熱等の容易な方法で食することができる。しかし、電子レンジ調理の場合、揚げ物の衣がべちゃつき、衣のサクサク感が著しく低下するという問題がある。
そこで、従来、このような課題を解決するために種々の提案がなされている。しかし、従来提案されている方法は、いずれも揚げ物の製造に用いるバッター、ブレッダーミックス、パン粉等の衣材の改良であり(特許文献1及び2等参照)、その効果が必ずしも十分であるとは言い難い。
【0003】
ところで、冷凍揚げ物の工業的生産においては、通常、中具である肉類や魚介類等のジューシー感を保持するために、衣材を揚げ物の中具に付着させる前に、保水剤を用いた保水処理が行われることが多い。該保水剤は、pHの調整、イオン強度の増加等の様々の要因により、結果として肉類や魚介類の保水性を高めるものであり、通常、食塩溶液にリン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩のうち単独又は2種以上の混合物を添加した溶液が使用されている。この保水処理は、通常、肉類の場合、タンブラーミックス混合機等の容器付混合機を用いて行なわれ、また、魚介類の場合は、該溶液に浸漬することにより、中具の水分を増加保持させることができる。
しかし、このような保水処理は、冷凍・保存中の揚げ物の衣に中具である肉類や魚介類から水分が移行する可能性が高くなり、中具のジューシー感を保持する一方、揚げ物の衣のサクサク感を低下させる一因となっている。特に、冷凍保存中の衣への水分移行を抑制し得た場合であっても、最終調理方法が電子レンジ加熱の場合には、衣のサクサク感の低下を抑制することが困難である。
従って、容易に調理可能な電子レンジ加熱により、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた冷凍揚げ物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−135014号公報
【特許文献2】特開平11−169117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冷凍・保存後に、電子レンジ加熱により容易に、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた揚げ物を得ることができ、しかも大量生産に適した、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、電子レンジ加熱により容易に、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた揚げ物を得ることができる電子レンジ調理用冷凍揚げ物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、揚げ物の工業的生産において従来から行われている保水処理における保水剤に、特定の増粘剤を組み合わせることで、電子レンジ調理する揚げ物の場合には、衣材を改良するよりも、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた揚げ物が得られることを見い出し本発明を完成した。ここで、後述する比較例6〜8、16及び20に示されるように、特定の増粘剤を配合した場合であっても、従来、保水剤に配合されている、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩のうち単独又は2種以上の混合物や、塩を配合しない場合は上記課題が解決できず、本発明の効果が単に特定の増粘剤によるものでないことが明らかである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、アラビアガム又はガディガムと、保水剤と塩と水とを含む保水作用を有する溶液(X)、肉類又は魚介類からなる中具を準備する工程(A)と、前記溶液(X)に前記中具を接触させて、少なくとも中具を保水処理する工程(B)と、前記保水処理した中具に衣材を付着させる工程(C)と、得られる衣材付中具を油ちょうする工程(D)と、油ちょう後の揚げ物を冷凍する工程(E)とを含むことを特徴とする、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法(以下、本発明の製造方法と略すことがある)が提供される。
また本発明によれば、上記製造方法により得られた電子レンジ調理用冷凍から揚げが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法は、上記工程(C)における衣材を付着させる前の工程(B)において、特定の溶液(X)により、中具に保水処理するので、冷凍・保存後に、電子レンジ加熱により容易に、衣のサクサク感と中具のジューシー感とを兼ね備えた揚げ物を得ることができる。しかも、従来の冷凍揚げ物生産の設備を利用することができ、大量生産にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造方法は、特定の保水作用を有する溶液(X)、肉類又は魚介類からなる中具を準備する工程(A)を含む。
溶液(X)は、アラビアガム又はガディガムと、保水剤と塩と水とを含む。
アラビアガムとガディガムは、共に増粘多糖類の一種であり、その用途が類似していることが知られている。そこで、これらは互いに代替品として使用されることもある。このような増粘多糖類は、従来、揚げ物用バッター等の衣材に配合することによって、衣材の安定性の向上に利用されることが知られている。しかし、最終調理方法が電子レンジ加熱である場合に、バッターとは別に、従来行われていた保水処理に用いる保水剤に混合して用いることによって、所望の効果が得られる点については知られていない。
【0010】
溶液(X)には、アラビアガム又はガディガムに加えて、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、また、所望の効果を更に向上させるために、他の増粘多糖類を配合することができる。他の増粘多糖類としては、例えば、キサンタンガム、ペクチン、グアガムの少なくとも1種が所望の効果をより向上させる点で好ましい。しかし、アラビアガム又はガディガムの代わりに単独等で用いる場合には、所望の効果が全く得られない。
溶液(X)において、アラビアガム又はガディガムの含有量は、溶液(X)全量に対して、通常1〜15質量%、好ましくは2〜8質量%である。1質量%未満では、所望の効果が得られ難く、一方、15質量%を超えると、粘度が上昇し、目的とする保水効果が低下するおそれがある。
溶液(X)に上記他の増粘多糖類を含有させる場合は、その種類に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液(X)全量に対して、当該溶液(X)の粘度が通常500cP〜10000cP、好ましくは1000cP〜5000cPの範囲となる量から選択することができる。500cP未満では、他の増粘多糖類を含有させる効果が得られ難く、一方、10000cPを超えると、目的とする保水効果が低下するおそれがある。
【0011】
溶液(X)において、保水剤は、pHの調整、イオン強度の増加等の様々の要因により、結果として肉類や魚介類の保水性を高めるものであり、例えば、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩、炭酸ナトリウム等の炭酸塩のうち単独又は2種以上の混合物を含み、これらは従来、から揚げやフライ類等の冷凍揚げ物を工業的に生産する際に中具の肉類や魚介類に対して行っている保水剤成分であって、従来公知の成分を用いることができる。
また、塩としては、塩が含まれるしょうゆ等の調味料を用いることができる。
溶液(X)において、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩のうち単独又は2種以上の混合物の濃度は、通常0.5〜5.0質量%、好ましくは1.0〜4.0質量%である。また、塩の濃度は、通常0.1〜3.0質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%である。
溶液(X)には、必要に応じて、例えば、調味料を添加することもできる。調味料の添加量はその目的に応じて適宜選択することができるが、該溶液全量に対して25質量%以下が好ましい。
溶液(X)の調製は、上記各成分を水に溶解させるように混合する方法等により得ることができる。
【0012】
工程(A)において準備する中具は、肉類又は魚介類であって、揚げ物の種類や中具の種類に応じて、所定の大きさにカットしたり、所定の下拵えするか、素のまま用いることができる。
肉類としては、例えば、鶏、豚、牛等の畜肉を挙げることができる。これら畜肉を、から揚げ用肉として用いる場合には、畜肉表面が後述する溶液(X)と接触し易くし、本発明の所望の効果をより確実に得るために、予めから揚げ1個分となるようにカットする必要がある。ただし、エビなど1尾が1食分である場合は必ずしもカットする必要はない。その大きさはから揚げの種類により異なるが、通常、1個のから揚げ用肉の重量が10〜100g程度となるような大きさとすることができる。
魚介類としては、例えば、エビなどの甲殻類が挙げられる。
【0013】
中具として肉類を用いる場合には、工程(A)において、後述する工程(B)の保水処理に用いる容器付混合機を準備することが好ましい。該容器付混合機は、上記溶液(X)と、カットされた複数の肉類とを混合でき、溶液(X)が肉類の表面から浸透させることが可能なものであれば特に限定されず、例えば、羽根付回転筒状タンク(タンブラー)を備えた混合機を用いることができ、市販品を用いることもできる。
【0014】
本発明の製造方法は、前記溶液(X)に前記中具を接触させて、少なくとも中具を保水処理する工程(B)を含む。
中具が肉類である場合、工程(B)の保水処理をより効率的に行うために、容器付混合機を用いて、所定の大きさにカットした複数の肉類を、該容器付混合機の容器内において、前記溶液(X)と混合することにより行うことが好ましい。
工程(B)を、上記混合で行う場合、前記溶液(X)及び前記複数の肉類の混合割合は、溶液(X)が肉類の表面から十分浸透し得る割合であれば良く、例えば、質量比で、肉類100に対して溶液(X)10〜30が好ましい。この場合、保水率(保水後中具/保水前中具×100=保水率%)は、110〜130%が好ましい。この際、溶液(X)は過剰量となるように使用することもできる。
上記混合の時間及び回転数は、溶液(X)が肉類の表面から十分浸透し得るように、混合機の容器の容量、混合する肉類の量に応じて適宜選択して決定することができる。また、混合は、0〜20℃程度の環境下で行うことができる。
中具が魚介類である場合、工程(B)の保水処理において、中具を傷つけないように、中具を前記溶液(X)に浸漬することにより行うことが好ましい。
浸漬は、中具全体が溶液(X)に浸漬するように、所望の容器を用いて行うことができる。この際、溶液(X)の温度は通常0〜25℃程度とすることができ、浸漬時間は、中具の種類や大きさによって適宜決定することができるが、通常は2〜60分間の範囲から選択することができる。この場合、保水率(保水後中具/保水前中具×100=保水率%)は、103〜120%が好ましい。
【0015】
本発明の製造方法は、前記保水処理した中具に衣材を付着させる工程(C)を含む。
工程(C)に用いる衣材は、揚げ物の種類に応じて決定することができる。
揚げ物がから揚げである場合、衣材としては、バッター、もしくはバッターとブレッダーミックス粉を用いることができる。また、揚げ物がフライ類である場合、衣材としては、バッター及びパン粉を用いることができる。
バッターは、通常、澱粉及び/又は小麦粉を含み、必要に応じて各種添加剤が配合された通常のから揚げ用バッターを使用することができ、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、市販品を用いることもできる。また、必要に応じてバッターに調味液等を配合することもできる。
バッターの付着にあたっては、予め中具に常法に従って打ち粉を施すこともできる。
工程(C)においては衣材を付着させるには、衣材が具材の表面に均一に付着する方法であれば特に限定されないが、例えば、噴射、塗布等の処理や、バッタリングマシーン等にて中具を衣剤に潜らせる処理で行うことができる。
工程(C)において、中具に付着させるバッター量は特に限定されず、通常、中具100質量部あたり、5〜30質量部程度である。
から揚げの生産に使用されるブレッダーミックス粉は、上記から揚げ用中具に付着させたバッター表面に更に付着させることができ、通常、から揚げに用いられる市販品を用いることができる。
パン粉は特に限定されず、フライ類の種類に応じて適宜選択でき、市販品を用いることもできる。
【0016】
本発明の製造方法は、前記衣材が付着した中具を油ちょうする工程(D)を含む。
工程(D)において油ちょうは、フライヤーを用いて、通常、揚げ物に使用される温度及び時間から中具の種類や大きさ等に応じて適宜選択でき、その油温は、通常160〜200℃程度で行うことができる。
【0017】
本発明の製造方法は、油ちょう後の揚げ物を冷凍する工程(E)を含む。
前記冷凍は、公知の方法で実施することができ、例えば、−15℃以下に冷凍することで行うことができ、冷凍保存、冷凍輸送することにより広範囲における販売が可能になる。
本発明の製造方法では、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、上記工程以外の工程を行うこともできる。
【0018】
本発明の製造方法により得られる電子レンジ調理用冷凍揚げ物は、通常の電子レンジにより冷凍状態のまま加熱調理することにより食することができる他、電子レンジ加熱調理後の揚げ物を、ウォーマー等の保温器具により保温保存した後に食することも可能である。
加熱調理時間は、揚げ物の種類、大きさ、数、電子レンジの種類に応じて適宜決定することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例中の評価は以下の基準で専門のパネル3人で行った。
衣の食感(さくさく感)評価(電子レンジ調理後の食感、もしくは電子レンジ調理後に電気ヒーター式ウォーマーケース内で4時間保温・保存後の食感)
+4:衣のさくさくする部分がかなり多い、+2:衣のサクサクする部分が多い、0:衣のサクサクする部分が多くも少なくも無い、−2:衣のサクサクする部分が少ない、−4:衣が全くサクサクしない。
衣の食感(ひき)評価(電子レンジ調理後に電気ヒーター式ウォーマーケース内で4時間保温・保存後の食感)
+4:全くひきがない、+2:弱いひきが感じられる、0:ややひきがあるが、許容できる限界である、−2:強いひきが感じられる、−4:ひきが強く噛み切れない。
中具の食感評価(電子レンジ調理後の食感、もしくは電子レンジ調理後に電気ヒーター式ウォーマーケース内で4時間保温・保存後の食感)
+4:中具のジューシー感がかなり強い、+2:中具のジューシー感が強い、0:中具のジューシー感が普通である、−2:中具のジューシー感が弱い、−4:中具のジューシー感が全くない。
【0020】
実施例1
アラビアガム0.33kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。
鶏もも肉20kgから皮及び脂肪を取り除き、1個当たり約20gにカットし、カットされたから揚げ用鶏肉を得た。
得られたから揚げ用鶏肉400gと、溶液(X)90gとを、ポリエチレン袋の中に空気をためた状態で密閉し、羽根付回転筒状タンクを備えた混合機(型式「MG−40」、トーニチ社製)のタンクに投入し、15回転/分の条件で40分間10℃以下で混合した。
得られた混合後のから揚げ用鶏肉を、ボールに移し、打粉(商品名「T−156」、昭和産業社製)10gを付着させ、次いで、バッター粉(登録商標「これでい粉」、日本製粉社製」)26.4gを水17.6gに溶解して得たバッター液44gを混合した。続いて、打粉とバッター液が付着したから揚げ用鶏肉を、1個づつボールから取り出し、ブレッダー粉(商品名「ミックス#11−69」、昭和産業社製)3gをこれに付着させた。
次に、175℃の揚げ用油で2分30秒間油ちょうし、1分間放冷後、−35℃、1時間急冷し、−18℃にて一晩冷凍して冷凍鶏肉から揚げを調製した。
得られた冷凍鶏肉から揚げ12個を、電子レンジ600Wで4分間加熱調理した後、20℃で3分間静置させた後に専門パネルによる食感評価を行った。結果を表1に示す。
【0021】
実施例2、比較例1〜4
実施例1で調製した溶液(X)において、アラビアガムを表1に示す他の増粘性多糖類に変更した以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0022】
比較例5
実施例1において、溶液(X)にアラビアガムを配合しないでタンクでの混合後、アラビアガム22.0kg、水77.6kgを混合溶解して得た溶液を、タンク混合後のから揚げ用鶏肉の表面に1.3gを1個当たりに付着させた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0023】
比較例6
実施例1において、溶液(X)にポリリン酸ナトリウムを配合しない以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0024】
比較例7
実施例1において、溶液(X)に並塩を配合しない以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】
比較例8
実施例1において、溶液(X)にポリリン酸ナトリウム及び並塩を配合しない以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

表1の結果より、溶液(X)に配合する増粘多糖類は、アラビアガム又はガディガム以外は所望の効果が得られないことがわかった。また、実施例1及び比較例5より、アラビアガムを、溶液(X)ではなく、から揚げ用鶏肉の表面に付着させても本発明の所望の効果が得られないことがわかった。
【0027】
実施例3
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0028】
実施例4
アラビアガム0.33kg、ペクチン0.20kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1600cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0029】
実施例5
アラビアガム0.33kg、グアガム0.20kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0030】
参考例1
実施例3と同様に保水性を有する溶液(X)を調製した。また、実施例1と同様にから揚げ用鶏肉を得た。
得られたから揚げ用鶏肉400gと、溶液(X)90gとを、羽根付回転筒状タンクを備えた混合機(型式「MG−40」、トーニチ社製)のタンクに投入し、15回転/分の条件で40分間10℃以下で混合した。
得られた混合後のから揚げ用鶏肉の表面に付着している溶液(X)をペーパーで拭き取り、次いで、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0031】
比較例9
実施例3において、溶液(X)にアラビアガム及びキサンタンガムを配合しないでタンクでの混合後、アラビアガム22.0kg、キサンタンガム0.4kg、水77.6kgを混合溶解して得た溶液を、タンク混合後のから揚げ用鶏肉の表面に1.3gを1個当たりに付着させた以外は、実施例3と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

表2の結果より、増粘多糖類として同一のアラビアガム及びキサンタンガムを用いた場合でも、溶液(X)に配合した実施例3が最も優れた効果を示し、これら同じ増粘多糖類を溶液(X)ではなく、から揚げ用鶏肉の表面に付着させた比較例9では、その効果が実施例3に比較して極端に低下することがわかった。また、参考例1は、本発明の製造方法における工程(B)を行った後、工程(C)を行う前に鶏肉表面を拭き取った例であるが、この場合も、実施例3に比較してその効果が低下した。このことより、溶液(X)が鶏肉内に浸透し、鶏肉内の塩溶性蛋白等を溶出させるとともに、その後さらに表面に付着することで、本発明の効果が最大限得られているものと推測できる。
更に、実施例3〜5で追加した増粘多糖類は、表1の比較例1〜3の結果からは予期し得ない衣の食感の向上に寄与していること、即ち、アラビアガムと組み合わせることにより、予期し得ない効果が得られることがわかった。
【0033】
実施例6
アラビアガム0.33kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。
鶏もも肉20kgから皮及び脂肪を取り除き、1個当たり約18gにカットし、カットされたフライ用鶏肉を得た。
得られたフライ用鶏肉400gと、溶液(X)90gとを、羽根付回転筒状タンクを備えた混合機(型式「MG−40」、トーニチ社製)のタンクに投入し、15回転/分の条件で40分間10℃以下で混合した。
得られた混合後のフライ用鶏肉を、ボールに移し、打粉(商品名「T−156」、昭和産業社製)10gをボールに投入し、混合して付着させ、次いで、1個ずつボールから取り出し、バッター粉(商品名「B2417」日本製粉社製)16.7gとキサンタンガム(商品名「ネオソフトXC」太陽化学社製)0.17gを水83.2gに溶解して得られたバッター液5.0gを1個当たりに付着させた。続いて、パン粉(商品名「WG−4T」共栄食品社製)4.0gを、得られたバッター付フライ用鶏肉1個あたりに付着させた。
次に、175℃の揚げ用油で2分30秒間油ちょうし、1分間放冷後、−35℃、1時間急冷し、−18℃にて一晩冷凍して冷凍鶏肉フライを調製した。
得られた冷凍鶏肉フライ12個を、電子レンジ600Wで4分間加熱調理した後、20℃で3分間静置させた後に専門パネルによる食感評価を行った。結果を表3に示す。
【0034】
実施例7
アラビアガム0.33kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。
頭と殻を取り除いた一尾20gのブラックタイガーを、同質量の溶液(X)に30分間浸漬した後、5分間液切りした。得られた浸漬後のエビに、打粉(商品名「T−156」、昭和産業社製)1gを1尾当たりに付着させ、次いで、バッター粉(商品名「B2417」、日本製粉社製)16.7kgとキサンタンガム(商品名「ネオソフトXC」太陽化学社製)0.17gを水83.2gに溶解して得られたバッター液6.5gを付着させた。続いて、パン粉(商品名「WG−4T」共栄食品社製)6.5gを、得られたバッター付フライ用エビ1尾当たりに付着させた。
次に、175℃の揚げ用油で2分20秒間油ちょうし、1分間放冷後、−35℃、1時間急冷し、−18℃にて一晩冷凍して冷凍エビフライを調製した。
得られた冷凍フライ6個を、電子レンジ600Wで2分20秒間加熱調理した後、20℃で3分間静置させた後に専門パネルによる食感評価を行った。結果を表3に示す。
【0035】
実施例8
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例6と同様に冷凍鶏肉フライを調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0036】
実施例9
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例7と同様に冷凍エビフライを調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0037】
比較例10及び11
溶液(X)にアラビアガムを配合しない以外は、実施例6〜9と同様に冷凍フライを調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例10
アラビアガム0.33kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。
鶏もも肉20kgから皮及び脂肪を取り除き、1個当たり約20gにカットし、カットされたから揚げ用鶏肉を得た。
得られたから揚げ用鶏肉400gと、溶液(X)90gとを、ポリエチレン袋の中に空気をためた状態で密閉し、羽根付回転筒状タンクを備えた混合機(型式「MG−40」、トーニチ社製)のタンクに投入し、15回転/分の条件で40分間10℃以下で混合した。
得られた混合後のから揚げ用鶏肉を、ボールに移し、打粉(商品名「T−156」、昭和産業社製)10gをボールに投入し、混合して付着させた。次いで、バッター粉(登録商標「これでい粉」、日本製粉社製」)26.4gを水17.6gに溶解して得たバッター液44gをボールに投入し、混合して付着させた。続いて、打粉とバッター液が付着したから揚げ用鶏肉を、1個ずつボールから取り出し、ブレッダー粉(商品名「ミックス#11−69」、昭和産業社製)3gをこれに付着させた。
次に、175℃の揚げ用油で2分30秒間油ちょうし、1分間放冷後、−35℃、1時間急冷し、−18℃にて一晩冷凍して冷凍鶏肉から揚げを調製した。
得られた冷凍鶏肉から揚げ6個を、電子レンジ600Wで1分30秒間加熱調理した後、電気ヒーター式の店頭販売用小型ウォーマーの60℃に維持された位置に4時間静置した。その後に専門パネルによる食感評価を行った。結果を表5に示す。
【0040】
実施例11
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、ポリリン酸ナトリウム(商品名「リンサンエン35」第一化成社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例10と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製した。
得られた冷凍鶏肉から揚げ6個を、電子レンジ600Wで1分30秒間加熱調理した後、電気ヒーター式の店頭販売用小型ウォーマーの60℃に維持された位置に2時間又は4時間静置した。その後に専門パネルによる食感評価を行った。また、ウォーマー保存前と保存後の歩留りをあわせて測定した。2時間静置後の結果を表4に、4時間静置後の結果を表5に示す。
【0041】
比較例12
実施例10において、溶液(X)にポリリン酸ナトリウムを配合しない以外は、実施例10と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、実施例11と同様に評価及び測定を行った。2時間静置後の結果を表4に、4時間静置後の結果を表5に示す。
【0042】
比較例13
実施例10において、溶液(X)に並塩を配合しない以外は、実施例10同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、実施例11と同様に評価及び測定を行った。2時間静置後の結果を表4に、4時間静置後の結果を表5に示す。
【0043】
比較例14
実施例10において、溶液(X)にポリリン酸ナトリウム及び並塩を配合しない以外は、実施例10と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、実施例11と同様に評価及び測定を行った。2時間静置後の結果を表4に、4時間静置後の結果を表5に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
実施例12
アラビアガム0.33kg、クエン酸三ナトリウム(昭和化工社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0047】
実施例13
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、クエン酸三ナトリウム(昭和化工社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0048】
比較例15
実施例12で調製した溶液(X)において、アラビアガムを用いなかった以外は、実施例12と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0049】
比較例16
実施例12において、溶液(X)に並塩を配合しない以外は、実施例12と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0050】
比較例17
実施例12において、溶液(X)にアラビアガム及び並塩を配合しない以外は、実施例12と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0051】
比較例18
実施例13において、溶液(X)にアラビアガム及びキサンタンガムを配合しないでタンクでの混合後、アラビアガム22.0kg、キサンタンガム0.4kgを、水77.6kgに混合溶解して得た溶液を、タンク混合後のから揚げ用鶏肉の表面に1.5gを1個当たりに付着させた以外は、実施例13と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0052】
【表6】

【0053】
実施例14
アラビアガム0.33kg、炭酸ナトリウム(旭硝子社製)0.15kg及び並塩0.14kgを、水3.86kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0054】
実施例15
アラビアガム0.33kg、キサンタンガム0.04kg、炭酸ナトリウム(旭硝子社製)0.16kg及び並塩0.14kgを、水3.88kgに混合溶解して、保水性を有する溶液(X)を調製した。溶液(X)を、C型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、粘度は1800cPであった。
得られた溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0055】
比較例19
実施例14で調製した溶液(X)において、アラビアガムを用いなかった以外は、実施例14と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0056】
比較例20
実施例14において、溶液(X)に並塩を配合しない以外は、実施例14と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0057】
比較例21
実施例14において、溶液(X)にアラビアガム及び並塩を配合しない以外は、実施例14と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0058】
比較例22
実施例15において、溶液(X)にアラビアガム及びキサンタンガムを配合しないでタンクでの混合後、アラビアガム22.0kg、キサンタンガム0.4kgを、水77.6kgに混合溶解して得た溶液を、タンク混合後のから揚げ用鶏肉の表面に1.5gを1個当たりに付着させた以外は、実施例15と同様に冷凍鶏肉から揚げを調製し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0059】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビアガム又はガディガムと、保水剤と塩と水とを含む保水作用を有する溶液(X)、肉類又は魚介類からなる中具を準備する工程(A)と、
前記溶液(X)に前記中具を接触させて、少なくとも中具を保水処理する工程(B)と、
前記保水処理した中具に衣材を付着させる工程(C)と、
得られる衣材付中具を油ちょうする工程(D)と、
油ちょう後の揚げ物を冷凍する工程(E)とを
含むことを特徴とする、電子レンジ調理用冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項2】
保水剤が、リン酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
溶液(X)が、アラビアガム又はガディガム以外の他の増粘多糖類を含む請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
他の増粘多糖類が、キサンタンガム、ペクチン、グアガムの少なくとも1種である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
中具が肉類である場合、工程(B)の保水処理を、容器付混合機を用いて、所定の大きさにカットした複数の肉類を、該容器付混合機の容器内において、前記溶液(X)と混合することにより行う請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
中具が魚介類である場合、工程(B)の保水処理を、中具を前記溶液(X)に浸漬することにより行う請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
揚げ物がから揚げであって、衣材がバッター、もしくはバッターとブレッダーミックス粉である請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
揚げ物がフライ類であって、衣材がバッター及びパン粉である請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法により得られた電子レンジ調理用冷凍揚げ物。

【公開番号】特開2012−196196(P2012−196196A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90910(P2011−90910)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】