説明

電子内視鏡システム、電子内視鏡システムのプロセッサ装置、及び画像処理方法

【課題】AFI、NBIなどの特殊光観察において、目的に合った最適な画像を取得する。
【解決手段】体腔内には白色光と励起光が照射される。電子内視鏡は、体腔内で反射した白色光をCCDで撮像することにより白色光画像を取得し、励起光の照射により体腔内の生体組織から発せられる自家蛍光をCCDで撮像することにより自家蛍光画像を取得する。白色光画像から体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求める。自家蛍光画像に対してビニング処理を施す。ビニング処理では、自家蛍光画像の輝度値を調整する場合、被写体距離が遠いときにはビニング数を増加させ、被写体距離が近いときにはビニング数を減少させる。自家蛍光画像の解像度を調整する場合、被写体距離が遠いときにはビニング数を減少させ、被写体距離が近いときにはビニング数を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFI、NBIなどの特殊光観察機能を備える電子内視鏡システム、電子内視鏡システムのプロセッサ装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野では、電子内視鏡システムを用いた診断や治療が数多く行なわれている。電子内視鏡システムでは、波長が青色帯域から赤色帯域にまでおよぶ白色光を体腔内を照射し、体腔内で反射した光をCCDなどの撮像素子で撮像する。そして、撮像により得られた画像をモニタに表示する。これにより、体腔内の画像をリアルタイムに確認することができるため、診断などを確実に行うことができる。
【0003】
白色光を照射したときに得られる撮像画像からは、被写体組織全体を大まかに把握することはできるものの、微細血管、深層血管、ピットパターン(腺口構造)、陥凹や隆起といった凹凸構造などの被写体組織は明瞭に観察することが難しいことがある。このような被写体組織には病変部が潜んでいる可能性があることから、微細血管や陥凹や隆起なども撮像画像から確実に把握できるようにすることが求められている。
【0004】
例えば、癌などの腫瘍性病変を観察する方法としては、特許文献1に示すように、特定波長に制限した励起光を体腔内に照射し、その励起光によって生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像素子で撮像するAFI(Auto Fluorescence Imaging)が知られている。AFIにおいては、腫瘍性病変がある病変部から発せられる自家蛍光の強度が、腫瘍性病変が存在しない正常部から発せられる自家蛍光の強度よりも弱くなる性質を利用して、撮像画像においては病変部と正常部とを別々の色で表示している。したがって、このAFIによって、正常部とほとんど見分けが付かない病変部であっても観察できるようになる。
【0005】
また、特許文献2に示すように、波長を特定領域に制限した狭帯域光を照射することによって、生体組織の表面にある表層血管などを明瞭に観察できるようにするNBI(Narrow Band Imaging)が知られている。NBIでは、狭帯域光を照射したときに現れる血管の吸光特性とその血管周辺の生体組織の光散乱特性を利用することによって、表層血管などを強調表示している。このように表層血管などを強調表示することにより、白色光を用いた観察だけでは見出すことができない病変部を発見できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−34224号公報
【特許文献2】特開2001−170009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような、AFI、NBIなどの特殊光観察においては、画像診断における様々な目的に合わせて、最適な内視鏡画像を取得する必要がある。例えば、全体的に明るい内視鏡画像から病変部の発見を試みるような場合には、観察対象と電子内視鏡の先端部が遠く離れる遠景状態にある場合であっても、内視鏡画像における輝度を十分に確保する必要がある。また、血管の小さな塊など微細な部位から病変部の発見を試みるような場合には、遠景状態においてもそのような微細な部位を確実に識別できるように、解像度を上げておく必要がある。しかしながら、このように各種の目的に応じた最適な内視鏡画像を取得することができる電子内視鏡システムについては、上記特許文献1及び2に記載されておらず、また示唆もされていない。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、AFI、NBIなどの特殊光観察において、様々な目的に合った最適な画像を取得することができる電子内視鏡システム、電子内視鏡システムのプロセッサ装置、及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電子内視鏡システムは、波長を特定帯域に制限した特殊光を体腔内に向けて照射する光源装置と、特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像を含む内視鏡画像を、撮像素子による撮像で取得する電子内視鏡と、前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求める距離算出手段と、前記特殊光画像に対してビニング処理を施すビニング処理手段と、被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうビニング処理制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記特殊光は体腔内の生体組織から自家蛍光を励起させるための励起光であり、前記特殊光画像は、励起光の照射により自家蛍光が発せられた体腔内の自家蛍光画像であることが好ましい。前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が遠いときにはビニング数を増加させ、被写体距離が近いときにはビニング数を減少させることによって、自家蛍光画像の輝度値を調整することが好ましい。前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が遠いときにはビニング数を減少させ、被写体距離が近いときにはビニング数を増加させることによって、自家蛍光画像の解像度を調整することが好ましい。
【0011】
前記特殊光は、表層血管を含む特定部位を強調表示させるためのNBI(Narrow Band Imaging)用狭帯域光であり、前記特殊光画像は、NBI用狭帯域光が照射された体腔内のNBI用狭帯域光画像であることが好ましい。前記特殊光は、血管深さおよび酸素飽和度を含む血管情報を取得するために用いられる血管情報取得用狭帯域光であり、この血管情報取得用狭帯域光には、血管中の還元ヘモグロビンの吸光度と酸化ヘモグロビンの吸光度が略等しい波長の狭帯域光と、双方の吸光度に差を有する波長の狭帯域光とを含み、前記特殊光画像は、血管情報取得用狭帯域光が照射された体腔内の血管情報取得用狭帯域光画像であることが好ましい。
【0012】
前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が近い近景状態と被写体距離が遠い遠景状態との間においては、被写体距離が大きくなるほどビニング数を増加させるとともに、観察対象に接近して拡大観察を行なう強拡大時おけるビニング数を、その強拡大時よりも観察対象から少し離れて拡大観察を行なう弱拡大時と近景状態の間におけるビニング数よりも大きくすることが好ましい。
【0013】
体腔内の生体組織から自家蛍光を励起させるための励起光を前記光源装置から発し、その励起光の照射により自家蛍光が発せられた体腔内の自家蛍光画像を前記電子内視鏡で取得する自家蛍光観察モード、表層血管を含む特定部位を強調表示させるためのNBI用励起光を前記光源装置から発し、そのNBI用狭帯域光の照射により表層血管などの特定部位が強調表示されたNBI用狭帯域光画像を前記電子内視鏡で取得するNBIモード、血管中の還元ヘモグロビンの吸光度と酸化ヘモグロビンの吸光度が略等しい波長の狭帯域光と、双方の吸光度に差を有する波長の狭帯域光を含む血管情報取得用狭帯域光を前記光源装置から発し、その血管情報取得用狭帯域光が照射された体腔内の血管情報取得用狭帯域光画像を前記電子内視鏡で取得する血管情報取得モードのいずれかのモードに切り替えるモード切替手段を備え、前記ビニング処理制御手段は、各モードと被写体距離に応じて、ビニング数を変化させる制御を行なうことが好ましい。
【0014】
前記ビニング処理手段は、前記特殊光画像において隣接する複数の画像を画素群として再構成し、各画素郡群内の画素の輝度値を加算したものを各画素群における輝度値とするソフトウエアビニングであり、前記ビニング数は前記画素群内の画素数であることが好ましい。前記ビニング処理手段は、前記撮像素子において隣接する複数の画素からなる画素群単位で1つの撮像信号を出力するように撮像素子を制御するハードウエアビニングであり、前記ビニング数は前記画素群内の画素数であることが好ましい。
【0015】
前記光源装置は、波長が青色帯域から赤色帯域におよぶ白色光を体腔内に向けて発することが可能であり、前記距離算出手段は、白色光が照射された体腔内の撮像により得られる白色光画像から被写体距離を求めることが好ましい。前記距離算出手段は、前記白色光画像から露光量を検出し、検出した露光量に応じて被写体距離を求めることが好ましい。
【0016】
前記内視鏡画像から体腔内における観察対象の動きを検出する動き検出手段と、前記特殊光画像に対してフレーム加算を施すフレーム加算手段と、観察対象の動きに応じて、フレーム加算におけるフレーム加算数を変化させる制御を行なうフレーム加算制御手段を備えることが好ましい。
【0017】
本発明は、波長を特定帯域に制限した特殊光を含む照明光を体腔内に照射し、体腔内からの戻り光を撮像素子で撮像する電子内視鏡に接続された電子内視鏡システムのプロセッサ装置において、特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像を含む内視鏡画像を、前記電子内視鏡から受信する受信手段と、前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求める距離算出手段と、前記特殊光画像に対してビニング処理を施すビニング処理手段と、被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうビニング処理制御手段を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明は、波長を特定帯域に制限した特殊光を含む照明光を体腔内に照射し、体腔内からの戻り光を撮像素子で撮像することによって得られる内視鏡画像を画像処理する画像処理方法において、前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求め、前記特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像に対してビニング処理を施し、被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自家蛍光画像などの狭帯域光画像にビニング処理を施す際に、狭帯域光画像の輝度値や解像度に影響を与える被写体距離に応じて、ビニング数を変化させる制御を行なっていることから、目的に合った最適な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の電子内視鏡システムを示す概略図である。
【図2】第1実施形態の電子内視鏡システムにおける電気的構成を示すブロック図である。
【図3】励起光、自家蛍光、及び白色光の分光強度分布を示すグラフである。
【図4】オーバーチューブおよびフードが装着された第1実施形態の電子内視鏡の先端部を示す斜視図である。
【図5】白色光の照射範囲を説明するための説明図である。
【図6A】白色光照射期間にあるときのロータリシャッタを説明するための説明図である。
【図6B】白色光遮光期間にあるときのロータリシャッタを説明するための説明図である。
【図7】白色光の光量に応じて励起光の光量を制御する方法を説明するための説明図である。
【図8】励起光の照射範囲を説明するための説明図である。
【図9】励起光照射用の第1投光ユニットの断面図である。
【図10A】通常光観察モードにおけるCCDの撮像制御を説明するための説明図である。
【図10B】自家蛍光観察モードにおけるCCDの撮像制御を説明するための説明図である。
【図11】信号処理部における処理フローを示すブロック図である。
【図12】高感度化処理部の構成を示すブロック図である。
【図13】輝度値調整処理時におけるビニング数と被写体距離との関係を示すグラフである。
【図14】解像度調整処理時おけるビニング数と被写体距離との関係を示すグラフである。
【図15】被写体距離とその被写体距離に対応するビニング処理とを記憶したLUTを示す表である。
【図16】第2実施形態における電子内視鏡システムを示すブロック図である。
【図17】第2実施形態で行なうビニング処理におけるビニング数と被写体距離との関係を示すグラフである。
【図18】第2実施形態における電子内視鏡システムを示すブロック図である。
【図19】酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光特性を示すグラフである。
【図20】二次元マップを示すグラフである。
【図21】第4実施形態における電子内視鏡システムを示すブロック図である。
【図22】RGBの面順次光の照射に用いられるロータリフィルタの平面図である。
【図23】青色励起光と蛍光部材によって白色光を照射する投光ユニットを備えた電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図24】白色光照射用の投光ユニットの断面図である。
【図25】励起光用プローブ、フード、及び先端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す、本発明の第1実施形態の電子内視鏡システム10は、体腔内の生体組織から発せられる自家蛍光の観察(AFI)機能を備えている。電子内視鏡システム10は、被検者の体腔内をCCDなどの撮像素子で撮像する電子内視鏡11と、この電子内視鏡11の挿入部20が挿通されるオーバーチューブ13と、挿入部20における先端部24aに装着されるフード14と、撮像により得られた信号に基づいて体腔内の被写体組織の画像を生成するプロセッサ装置15と、体腔内に照射する白色光を供給する白色光の光源装置16と、生体組織内から自家蛍光を励起するための励起光を供給する励起光の光源装置17と、体腔内の画像を表示するモニタ18とを備えている。
【0022】
電子内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部20と、挿入部の基端部分に設けられた操作部21と、操作部21とプロセッサ装置15及び白色光の光源装置16との間を連結するユニバーサルコード23とを備えている。挿入部20の先端には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部24が形成されている。湾曲部24は、操作部のアングルノブ26における操作によって、上下左右方向に湾曲動作する。
【0023】
湾曲部24の先端には、体腔内撮影用の光学系等を内蔵した先端部24aが設けられいる。先端部24aは、湾曲部24の湾曲動作によって、体腔内の所望の方向に向けられる。先端部24aには、白色光や励起光を照射する2つの第1および第2照明窓57,59(図4参照)と、体腔内からの白色光や自家蛍光を受光する観察窓62(図4参照)と、観察窓に向けて水やエアを吹き付ける送気・送水ノズル63(図4参照)と、挿入部20内の鉗子チャンネルに挿通された処置具の出口となる鉗子出口64(図4参照)とが設けられている。
【0024】
操作部21には、白色光を用いて体腔内の観察を行なう通常光観察モード、励起光を用いて生体組織内から発せられる自家蛍光を観察する自家蛍光観察モードのいずれかに切り替える観察モード切替ボタン28が設けられている。この観察モード切替ボタン28による切替情報はプロセッサ装置のコントローラ113(図2参照)に送信される。
【0025】
ここで、通常光観察モードに設定されている場合には、体腔内で反射した白色光を撮像することにより得られる白色光画像がモニタ18に表示され、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、自家蛍光を撮像することにより得られる自家蛍光画像、または白色光画像と自家蛍光画像とを合成した合成画像がモニタ18に表示される。
【0026】
ユニバーサルコード23のうち、プロセッサ装置15および白色光の光源装置16側の端部にはコネクタ30が取り付けられている。コネクタ30は、通信用コネクタと光源用コネクタからなる複合タイプのコネクタであり、電子内視鏡11は、このコネクタ30を介して、プロセッサ装置15および白色光の光源装置16に着脱自在に接続される。
【0027】
電子内視鏡11の先端部24aには、励起光カットフィルタ32を備えるフード14が装着される。励起光カットフィルタ32は、先端部24aに設けられた観察窓62(図4参照)を覆うことにより、観察窓62に入る前の光のうち励起光の波長帯域の光をカットまたは減光する。エネルギーが非常に高い励起光を観察窓62の手前でカットし、その励起光が観察窓62の奥側に設けられたCCD100(図2参照)に入らないようにすることで、CCD100の画素が電荷飽和状態になって画面が真っ白になるハレーションを防止することができる。
【0028】
オーバーチューブ13は、チューブ本体35と、このチューブ本体35内に設けられ、電子内視鏡11の挿入部29が挿通される内視鏡挿通管路37と、この内視鏡挿通管路37の周囲に設けられ、励起光の光源装置17からの励起光を導光する2本の第1および第2光ファイバ38,39とを備えている。
【0029】
内視鏡挿通管路37は、電子内視鏡の挿入部20の挿入口となる基端側開口37aと、その挿入部20の出口となる先端側開口37bとを備えている。したがって、挿入部20を内視鏡挿通管路37に挿通したときには、先端側開口37bから電子内視鏡の先端部24a及びその先端部24aに装着されたフード14が露呈される。電子内視鏡の挿入部20を体腔内に挿入する際には、オーバーチューブ13に挿入部20を挿通させた状態で挿入する。また、フード14の外周面には、第1および第2光ファイバ38,39からの励起光を体腔内に照射する第1および第2投光ユニット41,42が固着されている。なお、第1および第2光ファイバ38,39と第1および第2投光ユニット41,42との間はコネクタ等によって光結合されている。
【0030】
図2に示すように、白色光の光源装置16、白色光光源45、絞り調節機構46、白色光制御部47、ロータリシャッタ48、位置検出部49、回転制御部50を備えている。白色光光源45は、白色光の光源装置16の電源がオンのときに、常にオンにして白色光を発する。白色光は、波長が青色帯域から赤色帯域に及ぶ広帯域光であり、例えば、図3に示すように、400nm〜700nmの波長帯域を有している。白色光光源45としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED(発光ダイオード)、蛍光発光素子ランプ、またはLD(レーザーダイオード)などが使用される。白色光光源45から発せられる白色光は、レンズ53で集光される。レンズ53で集光された光は、絞り調節機構46を介して、第1および第2ライトガイド55,56に入射する。
【0031】
第1および第2ライトガイド55,56は大口径光ファイバなどから構成されている。第1および第2ライトガイド55,56の入射側端部は、白色光の光源装置16に接続されている。一方、図4に示すように、第1ライトガイド55の出射側端部は電子内視鏡11の先端部24aの第1照明窓57に向けられおり、第2ライトガイド55の出射側端部は先端部24aの第2照明窓59に向けられている。これら第1および第2照明窓57,59のそれぞれから白色光が体腔内に向けて出射される。
【0032】
第1照明窓57と第2照明窓59は、フード14に設けられた励起光カットフィルタ32(または観察窓62)に関して、それぞれ対称の位置に設けられている。また、図5に示すように、第1照明窓57から出射される白色光の照射範囲WL1と第2照明窓59から出射される白色光の照射範囲WL2とはほぼ重なり合っている。したがって、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、それら照射範囲WL1,WL2の重複領域WLR内に観察対象Tがほぼ入る。これにより、観察対象Tに対して、白色光を十分に且つ照明ムラなく照射することができる。
【0033】
なお、フード14は、先端部24aのうち観察窓62のみを覆い、それ以外は開口部14aから体腔内に露呈している。したがって、第1および第2照明窓57,59からの白色光の照射をフード14が妨げることはない。また送気・送水ノズル63からのエアや水をフードの励起光カットフィルタ32に吹き付けることができる。さらには、鉗子出口64から処置具を体腔内に向けて突出させることができる。
【0034】
図2に示すように、絞り調節機構46は、レンズ53とロータリシャッタ48との間に配置され、白色光光源45から発せられる白色光の光量を調節する。絞り調節機構46は、例えば、絞り径を可変させる複数の絞り羽根、及びこの絞り羽根を移動させるモータなどから構成される。絞り調節機構の絞り量(すなわち、白色光の光量)は、ドライバ47aを介して、白色光制御部47によって制御される。白色光制御部47は、プロセッサ装置15内の信号処理により得られる白色光画像に基づいて、絞り量(すなわち、白色光の光量)を制御する。
【0035】
図6A及びBに示すように、ロータリシャッタ48は、円板形状で一部に扇形の切欠部分を有する。ロータリシャッタ48のうち、切欠部分が白色光を透過させる光透過部48aとなり、残りの部分が白色光を遮断する遮光部48bとなっている。ロータリシャッタ48は、白色光光源45の光軸と平行に配置されたモータ70の回転軸70aに接続されている。このモータ70の駆動によってロータリシャッタ48が回転することで、白色光光源の光路P上に光透過部48aと遮光部48bとが交互に位置する。
【0036】
光路P上に光透過部48a、遮光部48bのいずれが位置しているかは、フォトセンサなどから構成される位置検出部49によって検出される。ここで、図2や図6A及びBにおいては、位置検出部はロータリシャッタの外周近傍に配置されているが、配置位置はそれ以外、例えば、ロータリシャッタの内部であってもよい。
【0037】
図6Aに示すように、光透過部48aが光路P上に位置する間は、白色光が第1および第2ライトガイド55,56に入射するため、体腔内に白色光が照射される。この期間を、以下において白色光照射期間する。一方、図6Bに示すように、遮光部48bが光路P上に位置する間は、第1および第2ライトガイド55,56へ白色光が入射しないため、体腔内において白色光が遮光された状態となる。この期間を、以下において白色光遮光期間とする。位置検出部49は、白色光照射期間と白色光遮光期間のいずれの状態にあるかについての情報を、励起光の光源装置内の励起光制御部75およびプロセッサ装置のコントローラ113に適宜送信する。
【0038】
白色光照射期間と白色光遮光期間は観察モードによって異なり、自家蛍光観察モード時における各期間は通常光観察モード時の2倍に設定されている。したがって、図2に示す回転制御部50は、自家蛍光観察モード時においては、ロータリシャッタ48の回転速度を通常光観察モード時の回転速度の半分とする回転制御を行なっている。なお、回転制御部50は、モータ70に接続されたドライバ50aを介して、ロータリシャッタ48の回転速度を制御する。
【0039】
図2に示すように、励起光の光源装置17は、第1および第2レーザ光源72,73、励起光制御部75を備えている。第1および第2レーザ光源72,73は発光ダイオード等から構成され、図3に示すような、405±10nmの波長を有する励起光を発する。このような波長域を有する励起光を体腔内に照射することで、波長が420nm〜650nmにおよぶ自家蛍光が生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる。
【0040】
第1および第2レーザ光源72,73は、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、常に励起光が発せられる。これにより、生体組織からは常に自家蛍光が発せられる。図3に示すように、電子内視鏡の先端部24aに戻ってくる励起光は励起光カットフィルタによりカットされ、また自家蛍光の光量は白色光に比べて微弱である。したがって、体腔内において白色光だけでなく励起光や自家蛍光が存在する状態で、白色光画像を取得したとしても、その取得した白色光画像においては励起光や自家蛍光は全く影響を与えない。
【0041】
励起光制御部75は、ドライバ75a,75bを介して、励起光光源の光量を制御する。励起光制御部75は、白色光制御部47に接続されており、白色光制御部47による白色光の光量制御に従って、励起光の光量も制御する。励起光の光量の制御は、白色光と励起光とが所定の相関を有するように、例えば、励起光の光量と白色光の光量との光量比が1/10等を保持するように、励起光の光量を変化させる。
【0042】
このように白色光の光量が変更された場合であっても、これに追従して、励起光の光量も励起光制御部で自動的に変更されるため、白色光画像と自家蛍光画像との露出バランスを常に適正な状態に維持することができる。なお、励起光の光量制御は、白色光の光量制御に連動してごとに行なうのではく、図7に示すように、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときに、白色光と励起光とが所定の相関を有するように制御してもよい。
【0043】
第1レーザー光源72から発せられた励起光は、オーバーチューブの第1光ファイバ38に入射する。もう一方の第2レーザー光源73から発せられた励起光は、オーバーチューブの第2光ファイバ39に入射する。そして、図4に示すように、第1光ファイバ38内の励起光ELはフード14の第1投光ユニット41から出射し、第2光ファイバ内の励起光ELはフード14の第2投光ユニット42から出射する。
【0044】
第1および第2投光ユニット41,42は、先端部24aの第1および第2照明窓57,59と同様に、フード14の励起光カットフィルタ32(または観察窓62)に関して、それぞれ対称の位置に設けられている。また、図8に示すように、第1投光ユニット41から出射される励起光の照射範囲EL1と第2投光ユニット42から出射される励起光の照射範囲EL2とはほぼ重なり合っている(重複領域ELR)。さらに、この重複領域ELRは、2つの白色光の照射範囲が重なりあった重複領域WLRに含まれている。
【0045】
以上のような照射範囲EL1,EL2を有することから、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、それら照射範囲EL1,EL2の重複領域ELRに観察対象Tがほぼ入る。これにより、観察対象Tに対して、励起光を十分に且つ照明ムラなく照射することができる。したがって、例えば、観察対象Tの全体が正常部である場合には、その観察対象の全域からほぼ同一強度の自家蛍光が発せられる。さらには、2つの励起光の照射範囲が重なり合った重複領域ELRは、2つの白色光の照射範囲の重複領域WLRに含まれていることから、観察対象T全体において、白色光と励起光の光量比は一定に保持される。
【0046】
図9に示すように、第1投光ユニット41は、光拡散部材90、この光拡散部材の外周を覆う筒状のスリーブ部材91と、スリーブ部材91の一端側を封止する保護ガラス92と、スリーブ部材内に挿入され第1光ファイバ38を保持するフェルール93とを備えている。また、フェルール93の後端側から外皮に覆われて延出される第1光ファイバ38には、その外皮の外側を覆うフレキシブルスリーブ95がスリーブ部材91との間に挿入されている。なお、第2投光ユニットについては第1投光ユニットと同様であることから説明を省略する。
【0047】
光拡散部材90は、第1光ファイバ38からの励起光を拡散させる透光性樹脂材料からなる。透光性樹脂材料の他にも、例えば、透光性セラミックスやガラス等が利用可能である。また、光拡散部材90は、その表面や中間層等に、微小の凹凸や屈折率の異なる粒子(フィラー等)を混在させた光拡散層を設けた構成や、半透明の材料を用いた構成としてもよい。これにより、光拡散部材90から出射する励起光は、光の偏光作用や拡散作用によって光量が均一化される。したがって、光拡散部材の材料や分量を適宜変更することによって、第1投光ユニット内で、励起光の照射範囲や光量を調節することができる。なお、第1投光ユニット内での光の照射範囲や光量は、光拡散部材の他、レンズや保護ガラスを適宜変更することによっても調節することができる。
【0048】
図2に示すように、電子内視鏡11は、CCD100、アナログ処理回路104(AFE:Analog Front End)、撮像制御部106を備えている。CCD100は、励起光カットフィルタ32、観察窓62、及び集光レンズ102を透過した光を、撮像面100aで受光する。そして、CCD100では、撮像面100aで受光した光を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として読み出す。読み出された撮像信号は、AFE104に送られる。
【0049】
CCD100はカラーCCDであり、撮像面100aには、R色、G色、B色のカラーフィルターが設けられたR画素、G画素、B画素の3色の画素が配列されている。ここで、白色光は波長域が青色帯域から赤色帯域にまでおよぶことから、白色光がCCDの撮像面に入射したときには、R画素、G画素、B画素の全てが感応する。したがって、白色光受光時に得られる撮像信号には、R画素から出力される撮像信号、G画素から出力される撮像信号、及びB画素から出力される撮像信号の3種類が含まれている。
【0050】
一方、自家蛍光は主たる波長域が緑色帯域であり、一部が青色帯域または赤色帯域にまで及ぶ。そのため、自家蛍光がCCDの撮像面100aに入射したときには、G画素は確実に自家蛍光に感応する。したがって、自家蛍光受光時に得られる撮像信号には、G画素から出力される撮像信号が含まれている。
【0051】
AFE104は、相関二重サンプリング回路(CDS)および自動ゲイン制御回路(AGC)から構成されている。CDSは、CCDからの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD100の駆動により生じたノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。
【0052】
撮像制御部106はCCD44の撮像制御を行なう。この撮像制御部106の撮像制御に従って、AFE45から所定のフレームレートで撮像信号が出力される。撮像制御部106は、プロセッサ装置15内のコントローラ113に接続されており、撮像時においてコントローラ113が認識している観察モード等によって、撮像制御部106は制御方法を適宜変更する。
【0053】
ここで、図10Aに示すように、通常光観察モードに設定されている場合には、白色光照射期間のときに、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときには、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。CCD100が撮像信号読出しパルスを受信したときに、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。そして、白色光遮光期間から白色光照射期間に切り替わったときに、再度、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。以上の一連の動作は、通常光画像モードに設定されている間、繰り返し行なわれる。
【0054】
これに対して、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、図10Bに示すように、白色光照射期間のときには、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときには、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。CCD100が撮像信号読出しパルスを受信したときに、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。これとほぼ同時に、自家蛍光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。自家蛍光は微弱であるが、自家蛍光観察モード時の白色光遮光期間、即ち自家蛍光観察期間を通常光観察モード時の白色光遮光期間の2倍にすることで、自家蛍光画像を形成できる程度の光量はCCD100で確実に受光することができる。
【0055】
そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わってから一定時間経過後、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。これに応じて、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。そして、白色光遮光期間から白色光照射期間に切り替わったときに、再度、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。以上の一連の動作は、自家蛍光観察モードに設定されている間、繰り返し行なわれる。
【0056】
図2に示すように、プロセッサ装置15は、電子内視鏡11、白色光の光源装置16、励起光の光源装置17、モニタ18、キーボード(図示省略)、プリンタ(図示省略)等と電気的に接続され、電子内視鏡システム10全体の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置15は、信号処理部110と、フレームメモリ112と、コントローラ113とを備えている。
【0057】
信号処理部110は、電子内視鏡11のAFE104から出力される撮像信号に対して、A/D変換部115、色調補正部116、及び画像処理部117で各種処理を施すことによって、モニタ18に表示可能な映像信号を生成する。そして、この映像信号に基づいて、各種画像がモニタ18に表示される。なお、色調補正部116および画像処理部117は、例えば、それぞれ対応する処理を行なうソフトウエアと、このソフトウエアを格納するEPROM(書き換え可能型ROM)等の記憶装置等によって構成される。また、A/D変換後のデジタルの画像データや画像処理部において画像処理された後の映像信号は、一時的にまたは処理が施される毎に、フレームメモリ112に記憶される。
【0058】
A/D変換部115は、AFE104からの撮像信号をデジタルの画像データに変換する。画像データには、CCD100のB画素から出力された撮像信号から得られるB画像、G画素から出力された撮像信号から得られるG画像、R画素から出力された撮像信号から得られるR画像が含まれている。また、A/D変換後の画像データには、通常光観察モード時または自家蛍光観察モード時に取得する白色光画像の画像データと、自家蛍光観察モード時に取得する自家蛍光画像の画像データとがある。
【0059】
色調補正部116および画像処理部117は、図11に示すようなフローに従って処理を行なう。色調補正部116は、白色光画像のうち励起光カットフィルタ32によってカットまたは減光されたB画像の成分を補う。図3に示すように、電子内視鏡11は415nm以下の波長帯域の成分をカットまたは減光する励起光カットフィルタ32を通して撮像を行なうため、白色光画像及び自家蛍光画像のB画像のうちの低波長側の一部がカットされている。したがって、このカットされた部分の画像を色調補正部116によって補正する。
【0060】
白色光画像のB画像の補正は、以下のようにして行われる。まず、内視鏡使用前に、以下の補正式(1)、(2)を求めておく。ここで、励起光カットフィルタを装着しない場合における白色光画像のB画像の光量をB´とし、励起光カットフィルタを装着した場合における白色光画像のB´画像の光量をBとした場合には、BとB´との関係は次式(1)で表される。
B=B´×α ・・・(1)
ここで、αは励起光カットフィルタによる光量カット率である。したがって、B´は、次式(2)で求めることができる。
B´=B/α ・・・(2)
【0061】
式(2)に示すように、BとB´との関係が線形の関係にある場合には、励起光カットフィルタを装着したときに得られる白色光画像のB画像の光量Bを係数αで除算することで、励起光カットフィルタによりカットされた部分の光量B´が求まる。そして、白色光のB画像のうちカットされた部分の光量Bを光量B´に置き換えることで、励起光カットフィルタを装着しない場合と同様の白色光画像を得ることができる。
【0062】
なお、BとB´との関係が線形の関係にない場合には、例えば、乗算、加算、マトリックス変換等の演算処理によって、B画像のカットされた部分に相当する光量を増加させることができる。また、B画像のカットされた成分に相当する成分だけG画像およびR画像の成分を減少させてもよい。さらに、励起光カットフィルタによってG画像のうち低周波側の一部の成分がカットされた場合には、B画像の場合と同様にして、色調補正を行うことが好ましい。
【0063】
図2に示す画像処理部117は、バランス調整部120、高感度化処理部121、表示階調処理部122を備えている。バランス調整部120は、自家蛍光観察モードに設定されている場合に、較正データを用いて、白色光画像と自家蛍光画像とのバランス調整を行なう。較正データは、不特定の被写体の病変部(早期ガン等の発生部)および正常部について、予め撮像した白色光画像および自家蛍光画像から得られる。
【0064】
較正データを用いてバランス調整を行なうことで、例えば、白色光画像における病変部と正常部のコントラストと、自家蛍光画像における病変部と正常部とのコントラストとが、等しくなる。例えば、白色光画像のコントラストに対して自家蛍光画像のコントラストが1/5であった場合には、色調補正部116は、較正データに基づいて、自家蛍光画像のコントラストを5倍にするバランス調整を行なう。なお、上述したように、白色光と励起光の光量比は一定に保持されていることにより、バランス調整はより精度良く行なわれる。
【0065】
白色光画像と自家蛍光画像のバランスは、CCD等の特性に依存するため、バランス調整は、電子内視鏡システムの工場出荷前、もしくは、電子内視鏡システムを初めて使用する前等に、少なくとも1回実施することが好ましい。
【0066】
図12に示すように、高感度化処理部121は、距離算出部130、ビニング処理部131、ビニング数記憶部132を備えている。距離算出部130は、白色光画像から露光量を検出し、検出した露光量に基づいて、CCD100が設けられた先端部24aと観察対象との間の被写体距離を算出する。ここで、露光量が大きいときには被写体距離は近いとされ、露光量が小さいときには被写体距離は遠いとされる。なお、被写体距離は自家蛍光画像から求めてもよい。
【0067】
ビニング処理部131は、自家蛍光画像に対してソフトウエアビニングを施すことによって、自家蛍光画像の高感度化する。ソフトウエアビニングは、自家蛍光画像において隣接する複数の画素を1つの画素群として再構成するとともに、各画素群内における画素の輝度値を加算したものを各画素群の輝度値とする処理である。ここで、画素群内における画素数をビニング数といい、ビニング数は、例えば、垂直方向に沿って配置された画素数と水平方向に沿って配置された画素数との掛け合わせ、例えば2×2のように表される。ビニング数はビニング数記憶部132に予め記憶されている。なお、高感度化処理は自家蛍光画像だけでなく白色光画像にも施してもよい。
【0068】
ビニング処理部131では、自家蛍光画像の輝度値をソフトウエアビニングで調整する輝度値調整処理と、自家蛍光画像の解像度をソフトウエアビニングで調整する解像度調整処理の2種類の処理を行なう。輝度値調整処理または解像度調整処理のいずれの処理を行なうかは、ビニング処理選択部133(図2参照)の操作によって、決定される。
【0069】
輝度値調整処理は、図13のグラフ134に示すように、被写体距離が近い近景状態のときはビニング数を小さくし、被写体距離が大きくなるのに従ってビニング数を大きくする。そして、被写体距離が遠くなる遠景状態のときには、ビニング数を最大にする。近景状態から遠景状態に変化するにつれて、即ち、被写体距離が大きくなるほど自家蛍光画像における輝度の不足も大きくなるが、この輝度不足は、被写体距離の増加に合わせてビニング数を大きくすることで、解消することができる。
【0070】
一方、解像度調整処理は、図14のグラフ135に示すように、近景状態のときにはビニング数を最大にし、被写体距離が大きくなるのに従ってビニング数を小さくする。そして、遠景状態のときには、ビニング数を最小にする。近景状態から遠景状態に変化するにつれて、即ち被写体距離が大きくなるのに従って、観察対象の像は小さくなり、観察対象の視認性が低下するが、この視認性の低下は、ビニング数を減少させて解像度を向上させることによって、解消される。
【0071】
なお、本実施形態では、被写体距離に応じてビニング数を増減させるが、その他、観察対象の動きに応じたフレーム加算を行なってもよい。フレーム加算は、連続する複数フレームの自家蛍光画像の画像データを加算して、1フレームの高画質な自家蛍光画像を生成する処理であり、このフレーム加算においては、1フレームの高画質な自家蛍光画像の生成に用いられる自家蛍光画像のフレーム数を示すフレーム加算数を、観察対象の動きに応じて変化させる。例えば、観察対象に動きが無いときには、フレーム加算数を大きくして自家蛍光画像の高画質化を図る。そして、観察対象に動きが生じたときには、フレーム加算数を小さくすることによって、自家蛍光画像において像ブレが生じないようにする。
【0072】
また、本実施形態では、ビニング数を図13および図14に示すようなグラフ134,135に従って変化させたが、これに代えて、図15に示すような、被写体距離とその被写体距離に対応するビニング数を記憶したLUT135に従って、ビニング数を変化させてもよい。また、高感度化処理部121においては、観察対象内に高周波構造を多く含む場合にはビニング数を減らし、観察対象内において高周波構造が少ない場合にはビニング数を増やしてもよい。また、ビニング数が大きくなる場合には、高周波強調信号処理を行なってもよい。また、被写体距離に応じてビニング数を変化させたが、その他、スクリーニング時と詳細診断時とでビニング数を変化させてもよい。また、高画素なCCDを使用する場合には、通常時はビニング処理を使用し、高解像度な画像が必要なときだけビニング処理を行なわないようにしてもよい。
【0073】
表示階調処理部122では、白色光画像または自家蛍光画像をモニタに表示可能な映像信号に変換する表示階調処理を行なう。この表示階調処理には、モニタに対応したγ補正処理や階調補正処理が含まれる。この表示階調処理においては、通常光観察モードに設定されている場合には、白色光画像のうち、B画像が映像信号のBチャンネル信号に、G画像が映像信号のGチャンネル信号に、R画像がRチャンネル信号に割り当てられる。
【0074】
一方、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、白色光画像のB画像が映像信号のBチャンネル信号に、白色光画像のR画像が映像信号のRチャンネル信号に割り当てられ、自家蛍光画像のG画像が映像信号のGチャンネル信号に割り当てられる。これにより、白色光画像と自家蛍光画像とが合成された合成画像が得られる。このような合成画像をモニタ18に表示することで、正常部は緑色で、病変部はマゼンダ色で表示される。
【0075】
なお、自家蛍光の輝度レベルが低くなるのは、病変部が原因である他に、撮像距離が遠くなることも原因の一つにある。そこで、画像処理部は、モニタにマゼンダ色を表示する前には、白色光画像のG画像と自家蛍光画像のG画像の輝度レベルを比較する。その比較の結果、両者がともに低い場合には、病変部ではなく、単に撮像距離が遠くて輝度レベルが低くなっているだけと判断し、マゼンダ色ではなく緑色で表示する。一方、白色光画像のG画像の輝度レベルが高く、自家蛍光画像の輝度レベルが低い場合には、病変部であると判断し、マゼンダ色で表示する。
【0076】
次に、本発明の作用について説明する。まず、観察モード切替ボタン28により、自家蛍光観察モードに設定される。自家蛍光観察モードでは、白色光照射期間に白色光と励起光が体腔内に照射され、白色光遮光期間には励起光のみが体腔内に照射される。励起光は白色光照射期間および白色光遮光期間の両方で照射されるため、体腔内の生体組織からは自家蛍光が常時発せられる。そして、電子内視鏡11は、CCD100を用いて、白色光照射期間のときには白色光画像を撮像し、白色光遮光期間のときには、自家蛍光画像を撮像する。これら撮像によって取得した撮像信号はプロセッサ装置15に送られる。
【0077】
プロセッサ装置15では、A/D変換部115によって、撮像信号をデジタルの画像データに変換する。そして、得られた画像データに基づき色調補正部116で色調補正がされた後、画像処理部117のバランス調整部120で較正データを用いたバランス調整が、高感度化処理部121で高感度化処理が、表示階調処理部122で表示階調処理が行なわれる。これら処理を経て、白色光画像と自家蛍光画像とを合成した合成画像が得られる。そして、この合成画像がモニタ18に表示される。
【0078】
画像処理部117のうち高感度化処理部121では、自家蛍光画像に対してソフトウエアビニングを施すことによって、自家蛍光画像の高感度化を行なう。まず、距離算出部130が、白色光画像に基づいて、被写体距離を算出する。被写体距離が算出された後は、ビニング処理部131が、被写体距離に応じてビニング数を増減させる。
【0079】
ここで、輝度値調整モードに設定されている場合には、図13のグラフ134に示すように、被写体距離の増加に合わせてビニング数を大きくする。これにより、近景状態から遠景状態に変化するにつれて生じる輝度不足を解消することができる。一方、解像度調整モードに設定されている場合には、図14のグラフ135に示すように、被写体距離の増加に合わせてビニング数を小さくことによって解像度を向上させる。したがって、この解像度の向上により、遠景状態のときに生ずる観察対象の視認性の低下を解消することができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、電子内視鏡からプロセッサ装置に送られた自家蛍光画像に対してビニング処理するソフトウエアビニングを行なったが、これに代えて、電子内視鏡内のCCDで撮像したときにビニング処理するハードウエアビニングを行なってもよい。ハードウエアビニングは、CCDにおいて隣接する複数の画素からなる画素群単位で1つの撮像信号を出力する処理をいう。したがって、観察対象の動き量が小さいときには、画素群内の画素数を減らす一方で、動き量が大きいときには、画素群内の画素数を増やす。
【0081】
本発明の第2実施形態では、図16に示す電子内視鏡システム200によって、体腔内に狭帯域光を照射して表層血管などを強調表示するNBI観察を行なう。第2実施形態の電子内視鏡システム200は、第1実施形態の電子内視鏡システム10とでは構成が一部相異する。
【0082】
電子内視鏡システム200においては、第1実施形態の白色光の光源装置16および励起光の光源装置17の2台の光源装置のに代わりに、NBI専用のNBI用光源装置201が設けらている。また、電子内視鏡システム200では、第1実施形態のように、励起光カットフィルタ32と投光ユニット41,42を備えたフード14が電子内視鏡の先端部24aに装着されておらず、光ファイバ38,39を内蔵したオーバーチューブ13は挿入部20に挿通されていない。また、電子内視鏡システム200においては、プロセッサ装置15内の高感度化処理部121および表示階調処理部122で、NBIに対応した処理が行なわれる。それ以外については、電子内視鏡システム200は電子内視鏡システム10と同様である。
【0083】
NBI用光源装置201は、白色光光源ユニット203と、NBI用光源ユニット204とを備えている。白色光光源ユニット203は、第1実施形態の白色光の光源装置16と同様の構成を備えている。白色光光源ユニット203からの白色光は、白色光照射期間において、白色光用光ファイバ206に入射する。光ファイバに入射した白色光は、カプラー207を介して、ライトガイド55,56に入射する。
【0084】
NBI用光源ユニット204は、青色帯域のうち特定の波長に制限した狭帯域光であるNBI用青色光を発するNBI用青色光光源208と、緑色帯域のうち特定の波長に制限した狭帯域光であるNBI用緑色光を発するNBI用緑色光光源209と、これら光源をドライバ208a,209aを介して制御するNBI用光源制御部210とを備えている。NBI用青色光は、中心波長が415nmである狭帯域光であることが好ましく、NBI用緑色光は、中心波長が540nmである狭帯域光であることが好ましい。
【0085】
NBI用青色光光源208から発せられたNBI用青色光はNBI用光ファイバ212に入射し、NBI用緑色光光源209から発せられたNBI用緑色光はNBI用光ファイバ213に入射する。各光ファイバ212,213に入射した光は、カプラー207を介して、ライトガイド55,56に入射する。NBI用光源制御部210は、白色光光源ユニット203内の位置検出部49と接続されており、白色光遮光期間において、NBI用青色光およびNBI用緑色光がそれぞれ一定時間だけ照射されるように、NBI用青色光光源208およびNBI用緑色光光源209を制御する。
【0086】
電子内視鏡11は、白色光照射期間においては、白色光で照明された体腔内を撮像することによって白色光画像を取得する。一方、白色光遮光期間においては、NBI用青色光で照明された体腔内を撮像して青色狭帯域光画像を取得するとももに、NBI用緑色光で照明された体腔内を撮像して緑色狭帯域光画像を取得する。電子内視鏡で得られた画像はプロセッサ装置15に送られる。
【0087】
プロセッサ装置15内の画像処理部117では、第1実施形態と同様のバランス調整が行なわれる一方、高感度化処理および表示階調処理についてはNBIに対応した処理が行なわれる。高感度化処理部121では、図17のグラフ220に示すように、近景状態のときはビニング数を小さくし、被写体距離が大きくなるのに従ってビニング数を大きくする。そして、遠景状態のときにはビニング数を最大にする。一方、観察対象に接近して拡大観察を行なう強拡大時はビニング数は、強拡大時よりも観察対象から少し離れて拡大観察を行なう弱拡大時と近景状態との間におけるビニング数よりも若干大きくする。例えば、強拡大時のビニング数は2×2とし、弱拡大時〜近景状態間のビニング数は1×1とする。
【0088】
NBIにおいても、被写体距離が大きくなることで生ずる輝度不足は、ビニング数の増加によって、解消することができる。特に、NBIでは、遠景状態で輝度不足を解消することで、血管の固まりであるブラウニッシュエリアの発見も容易になる。更に、近景状態における強拡大時には、ビニング数を弱拡大時よりも若干増加させて輝度を向上させることによって、観察対象における微細な構造までも鮮明に観察することができるようになる。
【0089】
表示階調処理部122では、NBI機能を使用している際には、青色狭帯域光画像が映像信号のBチャンネルとGチャンネルに、緑色狭帯域光画像が映像信号のRチャンネルに割り当てられる。これにより、青色狭帯域光画像と緑色狭帯域光画像とが合成された合成画像が得られる。この合成画像では、表層血管などが他の部位によりも強調されて表示されている。
【0090】
図18に示す本発明の第3実施形態の電子内視鏡システム230は、体腔内における血管の深さおよび血管内の酸素飽和度に関する血管情報を取得する機能を備えている。第3実施形態の電子内視鏡システム230は、第1実施形態の電子内視鏡システム10と構成が一部相異する。
【0091】
電子内視鏡システム230においては、第1実施形態の白色光の光源装置16および励起光の光源装置17の2台の光源装置のに代わりに、血管情報取得用の光源装置231が設けらている。また、電子内視鏡システム230では、励起光カットフィルタ32と投光ユニット41,42を備えたフード14が電子内視鏡の先端部24aに装着されておらず、光ファイバ38,39を内蔵したオーバーチューブ13は挿入部20に挿通されていない。また、電子内視鏡システム230においては、プロセッサ装置15内に血管情報取得部232が設けられるとともに、そのプロセッサ装置15内の高感度化処理部121および表示階調処理部122で、血管情報取得機能に対応した処理が行なわれる。それ以外については、電子内視鏡システム230は電子内視鏡システム10と同様である。
【0092】
血管情報取得用光源装置231は、白色光光源ユニット233と、血管情報取得用光源ユニット234とを備えている。白色光光源ユニット233は、第1実施形態の白色光の光源装置16と同様の構成を備えている。白色光光源ユニット233からの白色光は、白色光照射期間において、白色光用光ファイバ226に入射する。光ファイバに入射した白色光は、カプラー237を介して、ライトガイド55,56に入射する。
【0093】
血管情報取得用光源ユニット234は、中心波長が445nmである第1狭帯域光を発する第1狭帯域光光源238と、中心波長が472nmである第2狭帯域光を発する第2狭帯域光源239、中心波長が405nmである第3狭帯域光を発する第3狭帯域光源240と、これら光源をドライバ238a,239a,240aを介して制御する狭帯域光光源制御部241とを備えている。
【0094】
第1狭帯域光源238から発せられた第1狭帯域光は狭帯域光用光ファイバ242に入射し、第2狭帯域光源239から発せられた第2狭帯域光は狭帯域光用光ファイバ243に入射し、第3狭帯域光源240から発せられた第3狭帯域光は狭帯域光用光ファイバ244に入射する。各光ファイバ242,243,244に入射した光は、カプラー237を介して、ライトガイド55,56に入射する。狭帯域光光源制御部241は、白色光光源ユニット内の位置検出部49と接続されており、白色光遮光期間において、第1〜第3狭帯域光がそれぞれ一定時間だけ照射されるように、第1〜第3狭帯域光源238〜240を制御する。
【0095】
電子内視鏡11は、白色光照射期間においては、白色光で照明された体腔内を撮像することによって白色光画像を取得する。一方、白色光遮光期間においては、第1〜第3狭帯域光で照明された体腔内を撮像して第1〜第3狭帯域光画像を取得する。電子内視鏡で得られた画像はプロセッサ装置15に送られる。
【0096】
プロセッサ装置15内の画像処理部117では、第1実施形態と同様のバランス調整が行なわれた後、血管情報取得機能に対応した高感度化処理が行なわれる。高感度化処理部121では、NBIを実施した第2実施形態と同様の高感度化処理を、第1〜第3狭帯域光画像に対して施す。即ち、図17のグラフ220に示すように、近景状態のときはビニング数を小さくし、被写体距離が大きくなるのに従ってビニング数を大きくする。そして、遠景状態のときにはビニング数を最大にする。一方、近景状態においては、強拡大時のビニング数は弱拡大時のビニング数よりも若干大きくする。
【0097】
第3実施形態においては、第1〜第3狭帯域光画像から血管深さと酸素飽和度の2つの血管情報を取得するためには、画像内において血管が明瞭に表示されていることが必要となる。したがって、NBIを実施する第2実施形態と同様のビニング処理を施すことによって、精度の良い血管情報を取得することができる。
【0098】
血管情報取得部232は、第1〜第3狭帯域光画像から、血管深さおよび酸素飽和度の2つの血管情報を取得する。血管深さおよび酸素飽和度の2つの血管情報は、血管中の赤血球に含まれるヘモグロビンの中で、酸化ヘモグロビンとHbOと、酸素放出後の還元ヘモグロビンHbの吸収スペクトルの差を利用することにより取得することができる。酸化ヘモグロビンHbOは、図19の吸光度の分光特性に示すように、第3狭帯域光の中心波長である405nm付近では吸光度は略等しく、第1狭帯域光の中心波長である405nm付近では445nm付近では還元ヘモグロビンHbが酸化ヘモグロビンHbOよりも吸光度が高く、第2狭帯域光の中心波長である472nm付近では酸化ヘモグロビンHbOが還元ヘモグロビンHbよりも吸光度が高くなっている。また、生体組織表層における光の深達度は、波長が長くなるほど大きくなる特性を有している。
【0099】
このような特性を利用して、血管深さおよび酸素飽和度の2つの血管情報を求める。具体的には、以下の(A)〜(C)に従って、血管情報を求める。
(A)第1狭帯域光画像から輝度値S1を、第2狭帯域光画像から輝度値S2を、第3狭帯域光画像から輝度値S3を求める。
(B)S1,S2の値をそれぞれS3の値で標準化する。即ち、S1/S3、S2/S3の値を求める。
(C)図20に示すように、S1/S3の値と、S2/S3の値の大小を直交二軸で表した二次元マップを生成し、この二次元マップ上に、求めたS1/S3、S2/S3の値をプロットする。二次元マップ上では、S1/S3の値が大きいほど、血管深さは浅く、酸素飽和度は高くなり、S1/S3の値が小さいほど、血管深さは深く、酸素飽和度は低くなる。また、S2/S3の値が大きいほど、血管深さは浅く、酸素飽和度は低くなり、S2/S3の値が小さいほど、血管深さは深く、酸素飽和度は高くなる。このような相関関係を利用することによって、酸素飽和度の高低、血管深さの情報を得ることができる。
【0100】
表示階調処理部122では、血管情報機能を使用している際には、血管情報取得部232で得た酸素飽和度の高低、血管深さの程度に対応する擬似カラーを、白色光画像に付与する。この擬似カラーが付与された白色光画像によって、酸素飽和度の高低、血管深さの程度を色で把握することができる。
【0101】
図21に示すように、本発明の第4実施形態の電子内視鏡システム250は、AFI、NBI、血管情報取得機能の3機能を備えている。この第4実施形態の電子内視鏡システム250は、第1実施形態の電子内視鏡システム10の構成が一部相異する。
【0102】
電子内視鏡システム250においては、第1実施形態の白色光の光源装置16および励起光の光源装置17の2台の光源装置のに代わりに、多機能用の光源装置251が設けらている。また、電子内視鏡システム250では、励起光カットフィルタ32と投光ユニット41,42を備えたフード14が電子内視鏡の先端部24aに装着されておらず、光ファイバ38,39を内蔵したオーバーチューブ13は挿入部20に挿通されていない。また、電子内視鏡システム250においては、プロセッサ装置15内に血管情報取得部232が設けられるとともに、そのプロセッサ装置15内の高感度化処理部121および表示階調処理部122で、AFI、NBI、血管情報取得機能に対応した処理が行なわれる。それ以外については、電子内視鏡システム250は電子内視鏡システム10と同様の構成を備えている。
【0103】
多機能用の光源装置251は、白色光光源ユニット253と、多機能用光源ユニット254と、光源ユニット制御部255とを備えている。白色光光源ユニット253は、第1実施形態の白色光の光源装置16と同様の構成を備えている。白色光光源ユニット233からの白色光は、白色光照射期間において、白色光用光ファイバ256に入射する。光ファイバに入射した白色光は、カプラー257を介して、ライトガイド55,56に入射する。
【0104】
多機能用光源ユニット254は、第1実施形態の第1および第2レーザ光源72,73、第2実施形態のNBI用青色光光源208およびNBI用緑色光光源209、第3実施形態の第1〜第3狭帯域光光源238〜240を備えている。光源ユニット制御部255は、観察モード切替ボタン28に接続されており、この観察モード切替ボタン28によって設定された観察モードに応じて、多機能用光源ユニット254内の各光源を切り替える。第4実施形態における観察モードには、自家蛍光観察モード(AFIモード)、狭帯域光観察モード(NBIモード)、血管情報取得モードの3種類がある。また、光源ユニット制御部255は、位置検出部49に接続されており、白色光遮光期間において、設定されたモードに対応した光が照射されるように、多機能用光源ユニット254内の各光源を制御する。
【0105】
したがって、AFIモードに設定されている場合には、第1および第2レーザ光源72,73から励起光が発せられる。NBIモードに設定されている場合には、NBI用青色光光源208およびNBI用緑色光光源209からNBI用青色光およびNBI用緑色光が発せられる。血管情報取得モードに設定されている場合には、第1〜第3狭帯域光光源238〜240から第1〜第3狭帯域光が発せられる。多機能用光源ユニット254からの光は、多機能用光ファイバ258およびカプラー275を介して、ライトガイド55,56に入射する。なお、多機能用光源ユニット254内の各光源における光量制御は、ドライバ255aを介して、光源ユニット制御部255により行なわれる。
【0106】
プロセッサ装置15内における各種処理は、各モードに対応した処理がなされる。即ち、AFIモードに設定されている場合には第1実施形態で示した処理が行なわれ、NBIモードに設定されている場合には第2実施形態で示した処理が行なわれ、血管情報取得モードに設定されている場合には第3実施形態で示した処理が行なわれる。なお、第4実施形態では、電子内視鏡の先端部24aに励起光カットフィルタを装着していないので、AFIモード時には、励起光の照射によるハレーションを防止する処理を施すことが好ましい。
【0107】
なお、上記第1実施形態では、体腔内に白色光をそのまま照射したが、これに代えて、R色の光、G色の光、B色の光からなる面順次光を体腔内に照射してもよい。面順次光を照射するためには、図6A及びBに示すロータリシャッタ48に代えて、図22に示すようなロータリフィルタ280が用いられる。ロータリフィルタ280には、ロータリシャッタ48の遮光部48bと同様の遮光部281と、白色光光源45からの白色光のうちR色の光を透過させるR色カラーフィルタ283rと、白色光光源45からの白色光のうちG色の光を透過させるG色カラーフィルタ283gと、白色光光源45からの白色光のうちB色の光を透過させるB色カラーフィルタ283bとが、周方向に沿って設けられている。このロータリフィルタ280が回転軸280aを中心に回転することで、白色光照射期間に、R色の光、G色の光、B色の光がこの順で体腔内に照射される。
【0108】
また、上記第1実施形態では、体腔内に照射する白色光を白色光の光源装置内の白色光光源で発生させているが、これに代えて、図23の電子内視鏡システム300に示すように、白色光の光源装置内の青色レーザ光源304と電子内視鏡の先端部24a内に設けられた投光ユニット306,307とによって白色光を発生させてもよい。青色レーザ光源304は、中心波長445nmを有する青色レーザ光を発する。発せられた青色レーザ光は、ライトガイド55,56を介して、投光ユニット306,307から体腔内に向けて照射される。なお、青色レーザ光源304は、ドライバ305aを介して、青色レーザ光制御部305によって制御される。
【0109】
図24に示すように、投光ユニット306は、第1および第2投光ユニット41,42において、光拡散部材の代わりに蛍光体310を備える以外は、同一の構成を備えている。蛍光体310は、ライトガイド55からの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体物質(例えばYAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起発光光と、蛍光体310により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色光が生成される。なお、投光ユニット307も、投光ユニット306と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
また、上記第1実施形態では、フード14に固着された第1および第2投光ユニット41,42から励起光を照射したが、これに代えて、図25に示すように、挿入部20の鉗子チャンネル20aに挿通させた励起光用プローブ400をフード402のプローブ保持部403から突出させ、その励起光用プローブ400の照射部400aから励起光を照射してもよい。なお、励起光用プローブ400は、上記実施形態と同様の第1および第2レーザ光源72,73を有する励起光の光源装置401に接続されている。
【0111】
フード402は、励起光カットフィルタ32を備えている点は上記実施形態のフード14と同様であるが、プローブ保持部403と、第1および第2照明窓57,59用の開口405,406と形成されている点がフードと異なる。したがって、プローブ保持部403に保持された励起光用プローブ400の照射部400aは体腔内に向けられ、また第1および第2照明窓57,59は、開口405,406から露呈しているため、フード402の装着が、励起光や白色光の照射を妨げることはない。
【0112】
なお、上記第1実施形態では、励起光の照射によって生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる自家蛍光を観察するAFIを本発明に適用した場合について説明したが、本発明は、蛍光薬剤を用いるPDD(Photo Dynamic Diagnosis)や近赤外蛍光観察においても適用することができる。
【0113】
PDDでは、患者に投与する蛍光薬剤によって、蛍光の波長が異なっている。例えば、薬剤として「フォトフィリン」、「レザフィリン」、「ビスダイン」を投与したときには、中心波長405nmの励起光を体腔内の生体組織に照射することで、生体組織からは中心波長660nmの蛍光が発せられる。また、薬剤として「5−ALA(アミノアレブミン)」を投与したときには、中心波長405nmの励起光を体腔内の生体組織に照射することで、生体組織からは波長635nm、670nmの2つのピークを有する蛍光が発せられる。一方、近赤外蛍光観察においては、薬剤としてICG(Indocyanine Green)が用いられる。このICGを患者に投与して、800nm前後の励起光を体腔内の生体組織に照射することによって、生体組織からはピーク波長845nmを有する近赤外域の蛍光が発せられる。
【0114】
以上のようなPDDや近赤外蛍光観察で観察される薬剤蛍光は、AFIで観察される自家蛍光よりも光量は大きいが、蛍光薬剤が生体組織に十分に蓄積しない等その他の要因によって、光量不足となることがある。このような場合には、薬剤蛍光の撮像により得られる薬剤蛍光画像に対して、上記実施形態のようなフレーム加算およびビニング処理を施す。そして、それらフレーム加算およびビニング処理を、観察対象の動きに応じて変化させる。これにより、薬剤蛍光画像の高感度化を図ることができる。
【符号の説明】
【0115】
10,200,230,250,300 電子内視鏡システム
11 電子内視鏡
15 プロセッサ装置
16 励起光の光源装置
72,73 第1および第2レーザ光源
100 CCD
106 撮像制御部
110 信号処理部
121 高感度化処理部
130 距離算出部
131 ビニング処理部
208 NBI用青色光光源
209 NBI用緑色光光源
238 第1狭帯域光光源(444nm)
239 第2狭帯域光光源(472nm)
240 第3狭帯域光光源(405nm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長を特定帯域に制限した特殊光を体腔内に向けて照射する光源装置と、
特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像を含む内視鏡画像を、撮像素子による撮像で取得する電子内視鏡と、
前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求める距離算出手段と、
前記特殊光画像に対してビニング処理を施すビニング処理手段と、
被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうビニング処理制御手段とを備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記特殊光は体腔内の生体組織から自家蛍光を励起させるための励起光であり、
前記特殊光画像は、励起光の照射により自家蛍光が発せられた体腔内の自家蛍光画像であることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が遠いときにはビニング数を増加させ、被写体距離が近いときにはビニング数を減少させることによって、自家蛍光画像の輝度値を調整することを特徴とする請求項2記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が遠いときにはビニング数を減少させ、被写体距離が近いときにはビニング数を増加させることによって、自家蛍光画像の解像度を調整することを特徴とする請求項2記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記特殊光は、表層血管を含む特定部位を強調表示させるためのNBI(Narrow Band Imaging)用狭帯域光であり、
前記特殊光画像は、NBI用狭帯域光が照射された体腔内のNBI用狭帯域光画像であることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記特殊光は、血管深さおよび酸素飽和度を含む血管情報を取得するために用いられる血管情報取得用狭帯域光であり、この血管情報取得用狭帯域光には、血管中の還元ヘモグロビンの吸光度と酸化ヘモグロビンの吸光度が略等しい波長の狭帯域光と、双方の吸光度に差を有する波長の狭帯域光とを含み、
前記特殊光画像は、血管情報取得用狭帯域光が照射された体腔内の血管情報取得用狭帯域光画像であることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記ビニング処理制御手段は、被写体距離が近い近景状態と被写体距離が遠い遠景状態との間においては、被写体距離が大きくなるほどビニング数を増加させるとともに、観察対象に接近して拡大観察を行なう強拡大時おけるビニング数を、その強拡大時よりも観察対象から少し離れて拡大観察を行なう弱拡大時と近景状態の間におけるビニング数よりも大きくすることを特徴とする請求項5または6記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
体腔内の生体組織から自家蛍光を励起させるための励起光を前記光源装置から発し、その励起光の照射により自家蛍光が発せられた体腔内の自家蛍光画像を前記電子内視鏡で取得する自家蛍光観察モード、表層血管を含む特定部位を強調表示させるためのNBI用励起光を前記光源装置から発し、そのNBI用狭帯域光の照射により表層血管などの特定部位が強調表示されたNBI用狭帯域光画像を前記電子内視鏡で取得するNBIモード、血管中の還元ヘモグロビンの吸光度と酸化ヘモグロビンの吸光度が略等しい波長の狭帯域光と、双方の吸光度に差を有する波長の狭帯域光を含む血管情報取得用狭帯域光を前記光源装置から発し、その血管情報取得用狭帯域光が照射された体腔内の血管情報取得用狭帯域光画像を前記電子内視鏡で取得する血管情報取得モードのいずれかのモードに切り替えるモード切替手段を備え、
前記ビニング処理制御手段は、各モードと被写体距離に応じて、ビニング数を変化させる制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記ビニング処理手段は、前記特殊光画像において隣接する複数の画像を画素群として再構成し、各画素郡群内の画素の輝度値を加算したものを各画素群における輝度値とするソフトウエアビニングであり、
前記ビニング数は前記画素群内の画素数であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
前記ビニング処理手段は、前記撮像素子において隣接する複数の画素からなる画素群単位で1つの撮像信号を出力するように撮像素子を制御するハードウエアビニングであり、
前記ビニング数は前記画素群内の画素数であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項11】
前記光源装置は、波長が青色帯域から赤色帯域におよぶ白色光を体腔内に向けて発することが可能であり、
前記距離算出手段は、白色光が照射された体腔内の撮像により得られる白色光画像から被写体距離を求めることを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項12】
前記距離算出手段は、前記白色光画像から露光量を検出し、検出した露光量に応じて被写体距離を求めることを特徴とする請求項11記載の電子内視鏡システム。
【請求項13】
前記内視鏡画像から体腔内における観察対象の動きを検出する動き検出手段と、
前記特殊光画像に対してフレーム加算を施すフレーム加算手段と、
観察対象の動きに応じて、フレーム加算におけるフレーム加算数を変化させる制御を行なうフレーム加算制御手段を備えることを特徴とする請求項1ないし12いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項14】
波長を特定帯域に制限した特殊光を含む照明光を体腔内に照射し、体腔内からの戻り光を撮像素子で撮像する電子内視鏡に接続された電子内視鏡システムのプロセッサ装置において、
特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像を含む内視鏡画像を、前記電子内視鏡から受信する受信手段と、
前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求める距離算出手段と、
前記特殊光画像に対してビニング処理を施すビニング処理手段と、
被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうビニング処理制御手段を備えることを特徴とする電子内視鏡システムのプロセッサ装置。
【請求項15】
波長を特定帯域に制限した特殊光を含む照明光を体腔内に照射し、体腔内からの戻り光を撮像素子で撮像することによって得られる内視鏡画像を画像処理する画像処理方法において、
前記内視鏡画像に基づいて、体腔内における観察対象との距離を示す被写体距離を求め、
前記特殊光が照射されたときの体腔内の特殊光画像に対してビニング処理を施し、
被写体距離に応じて、ビニング処理におけるビニング数を変化させる制御を行なうことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−90725(P2012−90725A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239857(P2010−239857)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】