説明

電子写真印刷機

【課題】ウェブを複数の電子写真印刷ユニットに通過させて多色画像形成を行う場合に、印刷ユニットのトナー像転写用の転写ローラにウェブのトナーが逆転移する現象の発生を抑えることができ、印刷品質を維持できる電子写真印刷機の提供。
【解決手段】ウェブ流れ方向において複数設置された電子写真印刷ユニット12同士の間の位置に赤外線ヒータ17を設置し、ウェブ101の印刷ユニット12間に位置する部分(ユニット間延在部101c)に前記赤外線ヒータ17から赤外線を照射してウェブ101のキャリア液の一部蒸発除去及びトナーの一部定着を行うようにした電子写真印刷機10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体トナーとキャリア液とからなる現像液を用いる湿式の電子写真印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
液体トナー(以下、単にトナーとも言う)とキャリア液とからなる現像液を用いる湿式の電子写真印刷機にあっては、感光体ドラム外周面に形成されたトナー像を転写ローラを介して用紙の印刷面に転写して画像印刷する方式のものが広く採用されている(例えば、特許文献1)。この種の電子写真印刷機では、転写ローラ(特許文献1では中間画像担体301)から用紙へのトナー像の転写に伴い用紙に吸収されたキャリア液を、例えば熱ローラ等を用いて蒸発除去することでトナーを用紙に定着させる。
また、ウェブ(帯状の用紙)を、感光体ドラム、転写ローラ、該転写ローラとの間に用紙をニップするバックアップローラを具備する構成の複数の印刷ユニットに通過させ、多色印刷を行うように構成されたシステムも種々提案されている。
【特許文献1】特表2008−512711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように、ウェブを多数のユニットに通過させ多色画像を形成するシステムの場合、ウェブ流れ方向上流側のユニットにてウェブ印刷面に転写されたトナー像が下流側ユニットの転写ローラに逆転移することがあり、印刷品質の低下を引き起こすといった問題があった。
また、本発明者は、転写ローラとバックアップローラとの間にバイアス電圧を印加して、転写ローラからウェブ印刷面へのトナーの転移が生じやすくする電位差を確保し、このバイアス電圧によってウェブ印刷面から転写ローラへのトナーの逆転移を防止することを検討した。この構成は転写ローラへのトナーの逆転移の抑制に有効であるが、しかしながら、転写ローラとバックアップローラとの間のニップ圧によるトナーの転写ローラへの付着転移を防止するには物理的限界があり、転写ローラへのトナーの逆転移をより確実に防いで印刷品質を向上できる技術の開発が求められていた。
【0004】
本発明は、前記課題に鑑みて、多色画像形成等におけるウェブ印刷面に転写されたトナー像の電子写真印刷ユニットの転写ローラへの逆転移が生じにくく、印刷品質を向上できる電子写真印刷機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、液体トナーとキャリア液とからなる現像液を用いる湿式の電子写真印刷機であって、トナー像が形成される感光体ドラムと該感光体ドラムのトナー像をウェブに転写する転写ローラとを有する電子写真印刷ユニットが複数連設され、ウェブ流れ方向において電子写真印刷ユニット間に、前記ウェブのトナー及びキャリア液に加熱エネルギーを与えて前記キャリア液の一部を蒸発除去するとともに前記トナーのウェブ印刷面への定着度を高める定着補助機構が設けられていることを特徴とする電子写真印刷機。
第2の発明は、前記定着補助機構が、ウェブの印刷面に赤外線を照射する赤外線ヒータであることを特徴とする第1の発明の電子写真印刷機を提供する。
第3の発明は、前記赤外線ヒータは、最大エネルギー波長が1.2〜2.5μmの赤外線を出力するものであることを特徴とする第2の発明の電子写真印刷機を提供する。
第4の発明は、前記定着補助機構が前記ウェブのトナー及びキャリア液に与える加熱エネルギーの出力を、該加熱エネルギーによるウェブに対するトナーの定着度が該定着補助機構のウェブ流れ方向下流側の電子写真印刷ユニットによる前記ウェブへの画像転写に支障を生じない範囲で制御するエネルギー出力制御部を具備することを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第5の発明は、前記電子写真印刷ユニットの転写ローラとバックアップローラとの間に、転写ローラからウェブ印刷面へのトナーの転移を生じやすくするバイアス電圧が印加されていることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第6の発明は、複数の前記電子写真印刷ユニットが上下多段に設けられていることを特徴とする第1〜5のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第7の発明は、複数の前記電子写真印刷ユニットは互いの印刷色が異なることを特徴とする第1〜6のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第8の発明は、さらに、電子写真印刷ユニットによる印刷が完了したウェブのキャリア液の乾燥除去、トナー定着を行うトナー定着装置を具備することを特徴とする第1〜7のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第9の発明は、前記トナー定着装置は、前記電子写真印刷機にて送り移動されるウェブの印刷面に赤外線を照射する赤外線ヒータを有する仮定着器が設けられてなる仮定着部と、前記仮定着部のウェブ流れ方向下流側に設けられ、ヒートローラを含む複数のローラによってウェブをニップする1又は複数の本定着用ユニットを有する本定着部とを具備することを特徴とする第8の発明の電子写真印刷機を提供するを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ウェブ流れ方向において電子写真印刷ユニット(以下、単に印刷ユニットとも言う)間に設けられた定着補助機構から、該定着補助機構よりもウェブ流れ方向上流側の印刷ユニットによってトナー像が転写されたウェブに吸収されているキャリア液及びトナーに加熱エネルギーを与えて前記キャリア液の一部を蒸発除去するとともにウェブ印刷面へのトナーの溶融定着を一部進行させることができる。これにより、ウェブ印刷面に対するトナーの転移性(定着度)が高められ、定着補助機構からウェブ流れ方向下流側の印刷ユニットの転写ローラがウェブ印刷面に接触したときのウェブ印刷面から転写ローラへのトナー像の逆転移を防止あるいは殆ど無くすことができ、印刷品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電子写真印刷機の構成を示す正面図である。
【図2】図1の電子写真印刷機のトナー定着装置の仮定着器をその開口側から見た構成を示す図である。
【図3】図1の電子写真印刷機のトナー定着装置の本定着部の本定着用ユニットの構成を示す図である。
【図4】図3の本定着用ユニットの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施した電子写真印刷機の一例について、図面を参照して説明する。
なお、図1〜図4において、上側を上、下側を下、として説明する。
【0009】
図1に例示する電子写真印刷機10は、多色印刷を行うために電子写真印刷ユニット12が上下多段(図示例では4段)に設けられた印刷装置部10Aと、これら電子写真印刷ユニット12を経て印刷後のウェブ101(帯状の用紙)を乾燥させてトナーを定着させるトナー定着装置1とを具備する。
図1中、符号11は電子写真印刷機10のフレーム、14は仕切壁である。
【0010】
仕切壁14は、フレーム11内に上下方向に延在するように形成されて、印刷装置部10Aとトナー定着装置1との間に介在設置されている。トナー定着装置1は、仕切壁14を介して印刷装置部10Aとは反対側に設けられている。また、この仕切壁14は、後述するように前記トナー定着装置1の赤外線ヒータから放出される赤外線や熱を遮蔽して前記赤外線や熱が電子写真印刷ユニット12に到達することを阻止する熱遮蔽壁としても機能する。
なお、仕切壁14の上部には、最上段の電子写真印刷ユニット12(上下多段の電子写真印刷ユニット12の内、ウェブ101の送り方向(以下、流れ方向とも言う)最下流に位置するもの)からトナー定着装置1へ送り移動されるウェブ101を通すための窓14aが形成されている。
【0011】
印刷装置部10Aは、上下多段の電子写真印刷ユニット12と、上下方向において電子写真印刷ユニット12(以下、単に印刷ユニットとも言う)間にそれぞれ配置された赤外線ヒータ17(定着補助機構。赤外線ランプ)とを具備している。図1では、上下多段の印刷ユニット12間にそれぞれ赤外線ヒータ17をひとつずつ設置した構成を例示しているが、上下方向に隣り合う一対の印刷ユニット12間における赤外線ヒータ17の設置数は、ひとつに限定されず複数であっても良い。図示例の電子写真印刷機10の印刷装置部10Aは、上下4段の印刷ユニット12と、上下方向に隣り合う印刷ユニット12間にひとつずつ設置された計3つの赤外線ヒータ17とを具備して構成されている。
【0012】
前記電子写真印刷ユニット12は、液体トナーとキャリア液とからなる現像液を用いる湿式の電子写真印刷装置である。
この電子写真印刷ユニット12は、感光体ドラム121、該感光体ドラム121の表面を均一に帯電させる帯電装置122、帯電装置122によって帯電された前記感光体ドラム2表面の電荷を露光によって除去して静電潜像を形成する露光装置123、前記現像液を前記感光体ドラム121に供給して前記感光体ドラム121表面に前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成する現像器124、感光体ドラム121に接して回転して前記トナー像を感光体ドラム121表面からウェブ101に転写する転写ローラ125、ウェブ101を転写ローラ125に押し付けるバックアップローラ126を具備した構成となっている。
【0013】
また、転写ローラ125とバックアップローラ126との間には、転写ローラ125からウェブ101印刷面へのトナーの転移を生じやすくするバイアス電圧を印加している。このバイアス電圧は、ウェブ101に転写されたトナーの転写ローラ125への逆転移を抑える機能も果たす。
【0014】
電子写真印刷機10に設けられた上下多段の電子写真印刷ユニット12は、印刷色が互いに異なる。
長尺帯状のウェブ101は、電子写真印刷機10の機内(印刷装置部10A内)での縦方向の送り移動(図示例では最下段の電子写真印刷ユニット12の下方から上方への送り移動)によって上下多段の電子写真印刷ユニット12を順次経由して、多色印刷が実現される。印刷装置部10Aにおいて下側(図1において下側)がウェブ流れ方向上流側、上側(図1において上側)がウェブ送り方向下流側となっている。
【0015】
上下多段の電子写真印刷ユニット12の内、ウェブ101の送り方向において最も下流側に位置する電子写真印刷ユニット12(図示例では最上段の電子写真印刷ユニット12)から送り出されたウェブ101は、電子写真印刷機10の機内にて上下に互いに離隔させて設けられたローラ131、132によって、上下多段の電子写真印刷ユニット12に通された部分とは逆方向(図示例では、上側のローラ131から下方向)に案内され、上下のローラ131、132間に設けられたトナー定着装置1によりトナーが定着される。
なお、図中、符号15は上下のローラ131、132間にてウェブ101に張力を与えるテンションローラ、符号16は下側のローラ132から送り方向下流側へ送り出されるウェブ101に張力を与えるテンションローラである。
【0016】
赤外線ヒータ17は、通電によって加熱されて赤外線を放射するフィラメント(図示せず)を内蔵するヒータ本体17a(赤外線ランプ本体)の外側に、該ヒータ本体17aから放射された赤外線をウェブ101の印刷面に向けて反射する湾曲凹面をなす反射面17bを形成する反射カバー17cを取り付けたものである。この赤外線ヒータ17は、前記反射カバー17c内面の前記反射面17bが、ウェブ101の印刷面101aに対面するようにして設置されており、ヒータ本体17aから放射された赤外線を、ウェブ101の上下の印刷ユニット12間に位置する部分(以下、ユニット間延在部101cとも言う)に照射するようになっている。
【0017】
ウェブ101のユニット間延在部101cには、当該ユニット間延在部101cからウェブ流れ方向上流側に位置する印刷ユニット12によってトナー像が転写されている。また、ユニット間延在部101cは、トナー像の転写に伴い印刷ユニット12から供給されたキャリア液を吸収した状態になっている。
印刷装置部10Aにあっては、ウェブ101のユニット間延在部101cの印刷面101aに赤外線ヒータ17から赤外線を照射することによって、ウェブ101に吸収されているキャリア液及びトナーに加熱エネルギーを与えて前記キャリア液の一部を蒸発除去するとともにウェブ印刷面101aへのトナーの溶融定着を一部進行させる。これにより、ユニット間延在部101cからウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12の転写ローラ125がウェブ印刷面101aに接触したときに、ウェブ印刷面101aから転写ローラ125への逆転移が生じる可能性があるトナー量を少なくすることができる。その結果、転写ローラ125へのトナー像の逆転移を防止あるいは殆ど無くすことができ、印刷品質を向上させることができる。
【0018】
ウェブ101からキャリア液の一部を蒸発除去することは、ウェブ印刷面101aに存在する未定着状態のトナーをウェブ101に対して定着状態に近付ける(定着度を高める)こと、換言すれば、トナーの転写ローラ125への逆転移を生じにくくすることに有効に寄与する。
赤外線ヒータ17からの赤外線照射によるウェブ101からのキャリア液の一部蒸発除去は、赤外線ヒータ17からの輻射熱に加えて、ウェブ101に吸収されているキャリア液に赤外線が吸収されることでキャリア液内での光エネルギーによる内部振動が生じ該内部振動による摩擦でキャリア液が加熱され、キャリア液の蒸発、乾燥が行われるものである。すなわち、赤外線ヒータ17からの輻射熱と、キャリア液に内部振動を与える赤外線の光エネルギーとが、キャリア液を加熱する加熱エネルギーとして機能し、キャリア液の一部の蒸発除去がなされる。
キャリア液の蒸発除去を赤外線の照射(さらに輻射熱が作用していても良い)によって行う構成であれば、ウェブ101に吸収されているキャリア液を短時間で効率良く加熱でき、キャリア液の一部蒸発除去を短時間で効率良く実現することができる。
【0019】
キャリア液の一部蒸発除去を短時間で行えることは、ウェブ101の入熱を少なく抑えることができるという利点がある。これにより、余熱による紙じわや紙伸びといった、障害の発生を防止できる。
赤外線ヒータ17(詳細にはヒータ本体17a)は、最大エネルギー波長が1.2〜2.5μmの比較的短波長の赤外線を出力するものであることが好ましい。最大エネルギー波長とは、赤外線ヒータ17が出力(放射)する赤外線の波長域において、エネルギーが最大の波長を指す。
【0020】
この赤外線ヒータ17としては、例えば、通電によるフィラメントの温度が1400〜2100℃で、最大エネルギー波長が1.2〜1.7μm、最大エネルギー密度が120kw/mのもの、通電によるフィラメントの温度が950〜1200℃で、最大エネルギー波長が2.0〜2.5μm、最大エネルギー密度が100kw/m程度のものを用いることが好適である。このような赤外線ヒータは、加熱対象物の短時間での昇温に有効である。例えば、赤外線の照射開始から1〜3秒程度の短時間でキャリア液を一部蒸発除去できる温度まで昇温することが可能である。したがって、このような赤外線ヒータは、キャリア液の一部蒸発除去の時間短縮に有利である。
また、例えば、印刷準備時間後の立ち上げや一時停止後の再立ち上げにおいて、損紙の発生を少なくすることができ、これにより印刷物の生産効率の向上が可能となるといった利点もある。
【0021】
ところで、ウェブ101のユニット間延在部101cへの赤外線照射によってウェブ101へのトナー溶融定着が進行しすぎると、該ユニット間延在部101cのウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12の転写ローラ125へのトナーの逆転移の比率は低下するものの、この印刷ユニット12によるウェブ印刷面101aへのトナー画像(トナー像)の転写が阻害され、印刷品質が低下する。したがって、ウェブ101のユニット間延在部101cへの赤外線照射は、それによるトナー定着の進行で、当該ユニット間延在部101cのウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12によるウェブ101へのトナー画像の転写に支障が生じないように調整することが適切である。
【0022】
図1に例示した電子写真印刷機10の印刷装置部10Aは、各赤外線ヒータ17の赤外線出力を制御するための赤外線出力制御部18を具備している。赤外線ヒータ17の輻射熱出力は赤外線出力に連動して変動するので、赤外線出力を制御すれば、赤外線ヒータ17がウェブ101のユニット間延在部101cに与える加熱エネルギー全体の出力を制御できる。
【0023】
赤外線ヒータ17がウェブ101のユニット間延在部101cに与える加熱エネルギーの出力は、前記加熱エネルギーによるウェブ101に対するトナーの定着度が当該赤外線ヒータ17が加熱エネルギーを与えるユニット間延在部101cのウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12による前記ウェブ101へのトナー像転写に支障を生じない範囲で前記赤外線出力制御部18によって制御される。赤外線出力制御部18は、赤外線ヒータ17がウェブ101のユニット間延在部101cに与える加熱エネルギー出力を制御するエネルギー出力制御部として機能する。赤外線ヒータ17の加熱エネルギー出力は、トナーの逆転移現象を防ぐ点では、当該赤外線ヒータ17からウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12におけるウェブ101へのトナー像転写に支障が生じない範囲で出来るだけ高出力であることが好ましい。
【0024】
赤外線ヒータ17が出力した加熱エネルギーによるウェブ101(ユニット間延在部101c)に対するトナーの定着度は、印刷速度、ウェブ101の送り速度、赤外線ヒータ17からユニット間延在部101cまでの距離によって左右される。
赤外線出力制御部18による赤外線ヒータ17の加熱エネルギーの出力制御は、印刷速度、ウェブ101の送り速度、赤外線ヒータ17からユニット間延在部101cまでの距離に応じて、赤外線ヒータ17毎に、前記加熱エネルギーによるウェブ101に対するトナーの定着度が当該赤外線ヒータ17が加熱エネルギーを与えるユニット間延在部101cのウェブ流れ方向下流側の印刷ユニット12による前記ウェブ101へのトナー像転写に支障を生じない範囲でなされる。
【0025】
次に、トナー定着装置1について説明する。
図1に示すように、図示例の電子写真印刷機10において、トナー定着装置1は、ウェブ101の上下のローラ131、132間に張設された部分の印刷面101aに赤外線を照射する仮定着器20が設けられてなる仮定着部2と、この仮定着部2のウェブ流れ方向下流側(図1において仮定着部2の下側)に設けられた本定着部3とを具備する。
【0026】
前記仮定着部2は、前記仮定着器20と、ウェブ101の上下のローラ131、132間に張設された部分を介して前記仮定着器20とは反対の側にてウェブ101に沿って延在配置された熱遮蔽板21と、この熱遮蔽板21と前記仮定着器20との間に確保された空間である仮定着処理空間22内に前記ウェブ101に沿うエア流を形成するための送風機23及びブロア24とを具備する。
前記仮定着処理空間22には、ウェブ101が上下方向に延在するように通されている。また、仮定着処理空間22を介して対向する仮定着器20及び熱遮蔽板21は、ウェブ101に接触しないように、ウェブ101の前記仮定着処理空間22に通された部分から離隔して設けられている。
【0027】
前記仮定着器20は、前記ウェブ101に沿って設けられた仮定着器本体201に、赤外線ヒータ202と、前記ウェブ101の印刷面101aへの送風用の送風ファン203とを取り付けた構成とされている。
図1、図2に示すように、仮定着器本体201は、背板部201aと、この背板部201aの外周部から該背板部201aの片面側に突設された四角枠状の側壁部201bとを具備し、側壁部201bの内側に赤外線ヒータ202を収容する凹形のカバー状に形成されている。
【0028】
赤外線ヒータ202は外観棒状に形成されており、その長手方向をウェブ101の流れ方向に揃えるようにして、前記仮定着器本体201の内側に複数本並列に配列設置されている。複数本の赤外線ヒータ202は、仮定着処理空間22に通されているウェブ101の印刷面101aと略平行の面内に横並びに配列設置されている。
なお、赤外線ヒータ202の設置数は、特には限定は無い。
また、赤外線ヒータ202は、必ずしも、その長手方向をウェブ101の流れ方向に揃えた向きで設置する必要は無く、例えば水平方向に延在する向きで上下多段に設置しても構わない。
また、本発明において、赤外線ヒータの形状は特に限定は無く、外観棒状のものに限定されない。
【0029】
この赤外線ヒータ202は、通電により加熱されて赤外線を放射するフィラメント202aを赤外線透過性の収納管202b内に収納した構成になっている。収納管202bは例えば石英ガラス等の赤外線透過性に優れる材質によって形成されている。フィラメント202aは収納管202bの長手方向全長にわたって収納されている。フィラメント202aの材質としては、例えば、カンタル線、タングステン、カーボン等を挙げることができる。
【0030】
前記仮定着器本体201は、側壁部201bによって囲まれた内側の空間(ヒータ収容空間201c)を介して前記背板部201aとは反対の側(以下、開口側とも言う)がウェブ101側となる向きで設けられている。これにより、仮定着器20は、赤外線ヒータ202から放射された赤外線を、仮定着器本体201の開口側からウェブ101に照射できるようになっている。
なお、仮定着器本体201は、ヒータ収容空間201c内面を、赤外線を反射する反射板の取り付けなどによって赤外線反射面としてもよい。仮定着器本体201自体を赤外線反射性の材質によって形成して、ヒータ収容空間201c内面を赤外線反射面としてもよい。これにより、赤外線ヒータ202から放射された赤外線を、無駄なくウェブ101に照射することができる。
【0031】
前記送風ファン203は、仮定着器本体201の背板部201aに開口された給気口201dに組み込まれている。この送風ファン203は、仮定着器本体201の外部のエアを仮定着器本体201内に取り込んで、ウェブ101に吹き付けるように送風する。
この送風ファン203による送風は、ウェブ101に吸収されているキャリア液の乾燥除去(蒸発による除去、乾燥)に利用される。また、仮定着器20の過熱防止にも有効に寄与する。
【0032】
送風機23及びブロア24は、それぞれ、仮定着処理空間22内にその下端部から上方へのエア流を形成して、前記仮定着器20の前記赤外線ヒータ202からの赤外線の照射によって前記ウェブ101から蒸発したキャリア液の蒸気を排気するためのエア流形成装置として機能する。
エア流は、ウェブ101の仮定着処理空間22に通されている部分(主として、ウェブ101の長手方向において、前記仮定着器20の赤外線ヒータ202の全長に沿わせるようにして設けられた領域(以下、仮定着領域101bとも言う))から蒸発したキャリア液(キャリア液の蒸気)を仮定着処理空間22から排出する機能を果たす。
【0033】
送風機23は、熱遮蔽板21と前記仮定着器20との間の仮定着処理空間22の下側に設置されており、上方への送風によって、仮定着処理空間22内にその下端部から上方へのエア流を形成する。つまり、この送風機23は、仮定着処理空間22に通されているウェブ101に沿って上昇するエア流を仮定着処理空間22内に形成する。
送風機23は、ウェブ101を介して両側(ウェブ101の厚み方向において、ウェブ101を介して両側)にそれぞれ設置されている。ウェブ101は、仮定着処理空間22の下側にて互いに離隔させて設置されている一対の送風機23の間に通されている。
【0034】
ブロア24は、仮定着処理空間22の上端に設置されており、仮定着処理空間22内のエアを吸引排気することで、仮定着処理空間22内にその下端部から上方へのエア流を形成する。
【0035】
なお、本発明に係るトナー定着装置、電子写真印刷機としては、仮定着処理空間22内にその下端部から上方へのエア流を形成するためのエア流形成装置として、送風機23及びブロア24の両方を採用した構成に限定されず、送風機23及びブロア24の片方のみを採用した構成としても良い。
エア流形成装置によって仮定着処理空間22内のエア流を形成するために仮定着処理空間22内に導入されるエア(図示例では送風機23によって仮定着処理空間22に送り込まれるエア)の温度は例えば10〜40℃であることが好ましい。
また、ここでは、エア流形成装置の具体例として、仮定着処理空間22内を上昇するエア流を形成するものを説明するが、エア流形成装置としてはこれに限定されない。エア流形成装置としては、仮定着処理空間22内にウェブ101に沿う方向(ウェブ101の面に沿う方向)のエア流を形成するものであれば良く、例えば、仮定着処理空間22内を下降するエア流を形成するものや、水平方向のエア流を形成するものであっても良い。
但し、上述のように、仮定着処理空間22内を上昇するエア流を形成する構成であれば、仮定着器20の赤外線ヒータ202からの赤外線照射によって加熱されてウェブ101から放出されるキャリア液の蒸気(この蒸気はウェブ101の仮定着領域101bから上方に立ち上る)の仮定着処理空間22からの排出を円滑に行う点で有利である。
【0036】
送風機23及びブロア24によって仮定着処理空間22内に形成されるエア流は、該仮定着処理空間22に通されているウェブ101の仮定着領域101b全体に接触される。これにより、キャリア液を吸収して濡れた状態にあるウェブ101が、前記仮定着器20の前記赤外線ヒータ202からの赤外線の照射による乾燥と、仮定着処理空間22内に形成されたエア流による乾燥の相乗効果によって効率良く乾燥される。その結果、ウェブ101に対するトナーの仮定着を短時間で実現できる。
しかも、赤外線の照射によって前記ウェブ101から蒸発したキャリア液の蒸気は、送風機23及びブロア24によって仮定着処理空間22内に形成されるエア流によって、仮定着処理空間22から円滑に排気される。これにより、仮定着処理空間22内でのキャリア液の蒸気の滞留を防止できる。このことも、ウェブ101の短時間での乾燥に有効に寄与する。また、残留トナーの蒸発成分停滞による汚染防止にも有効であることは言うまでも無い。
【0037】
赤外線の照射によるウェブ101の乾燥は、赤外線がウェブ101に吸収されているキャリア液に吸収されることで、キャリア液内での光エネルギーによる内部振動による摩擦でキャリア液が加熱されて、キャリア液の蒸発、乾燥が行われるものである。赤外線の照射によるウェブ101の乾燥であれば、例えば実開平2−51353号公報記載のようにプレート状のヒーター体に設けられた多数の貫通孔からの熱風の噴出、吹き付けのみによってウェブをその表面から加熱する方式に比べて、ウェブ101に吸収されているキャリア液を短時間で効率良く加熱して、キャリア液の乾燥除去、ウェブ101の乾燥を短時間で効率良く実現することができる。
さらに、上述のように、エア流形成装置によって仮定着処理空間22内に形成したエア流をウェブ101(特に、仮定着領域101b)に接触させることで、このエア流によってもウェブ101の乾燥が促進される。これにより、短時間でのウェブ101の乾燥を実現できる。
【0038】
ウェブ101の乾燥に赤外線を利用すること、これによりキャリア液の乾燥除去、ウェブ101の乾燥を短時間で行えることは、乾燥のためのウェブ101の入熱を少なく抑えることができるという利点がある。これにより、余熱による紙じわや紙伸びといった、障害の発生を防止できる。さらに、エア流形成装置によって仮定着処理空間22内に形成したエア流も併用して、キャリア液の乾燥除去、ウェブ101の乾燥を行うことにより、ウェブ101の入熱を一層少なくできるため、余熱による紙じわや紙伸びといった、ウェブの送り移動に影響を与える障害の発生をより確実に防止できる。
また、このように、キャリア液の乾燥除去、ウェブ101の乾燥を短時間で行える仮定着部2の構成であれば、仮定着部2の小型化も容易であり、トナー定着装置全体、電子写真印刷機全体の小型化、省スペース化に有効に寄与する。
【0039】
赤外線ヒータ202は、最大エネルギー波長が1.2〜2.5μmの赤外線を出力するものであることが好ましい。
この赤外線ヒータ202としては、例えば、通電によるフィラメント202aの温度が1400〜2100℃で、最大エネルギー波長が1.2〜1.7μm、最大エネルギー密度が120kw/mのもの、通電によるフィラメント202aの温度が950〜1200℃で、最大エネルギー波長が2.0〜2.5μm、最大エネルギー密度が100kw/m程度のものを用いることが好適である。このような赤外線ヒータは、加熱対象物の短時間での昇温に有効である。例えば、ウェブ101を、赤外線の照射開始から1〜3秒程度の短時間でキャリア液を乾燥除去できる温度まで昇温することが可能である。したがって、このような赤外線ヒータは、キャリア液の乾燥除去、ウェブ101の乾燥の時間短縮に有利である。
また、例えば、印刷準備時間後の立ち上げや一時停止後の再立ち上げにおいて、損紙の発生を少なくすることができ、これにより印刷物の生産効率の向上が可能となるといった利点もある。
【0040】
また、図示例のトナー定着装置1、電子写真印刷機10にあっては、既述のように、仮定着器20の送風ファン203による送風も、ウェブ101に吸収されているキャリア液の乾燥除去に利用される。この送風ファン203による送風は、仮定着器20の仮定着器本体201内側のヒータ収容空間201cを通過することで加熱されてウェブ101(仮定着領域101b)に吹き付けられる。この送風ファン203によってウェブ101に吹き付けられたエアは、エア流形成装置によって仮定着処理空間22内に形成されたエア流によって押し流されて、仮定着処理空間22から排出される。
【0041】
次に、本定着部3を説明する。
図1に示すように、本定着部3は、本定着用の一対のヒートローラ31、32によってウェブ101をニップする本定着用ユニット33を上下多段(図1では6段)に設置した構成となっている。
なお、ヒートローラ31、32は、いずれも、赤外線ヒータ39を内蔵しており、該赤外線ヒータ39によって加熱される構成となっている。
【0042】
図1、図3に示すように、前記本定着用ユニット33は、フレーム11に固定のヒートローラ31である固定側ローラ31と、この固定側ローラ31にウェブ101を押し付けるヒートローラ32である押圧用ローラ32と、この押圧用ローラ32を固定側ローラ31に押圧するための押圧機構34とを具備して構成されている。
図3、図4に示すように、図示例の本定着用ユニット33において、前記押圧用ローラ32は、その軸心方向両端が、フレーム11に設けられた回転軸35に回転自在に取り付けられたブラケット36に回転自在に軸支されており、ブラケット36と一体に前記回転軸35を中心に回転可能になっている。前記押圧機構34は具体的には駆動シリンダ装置(以下、押圧機構が駆動シリンダ装置を指す場合、押圧機構を駆動シリンダ装置とも言う)であり、フレーム11にピン結合(ピン結合部34a)されたシリンダ本体34bから突出されたピストンシャフト34cの先端が、ピン37を介して前記ブラケット36に回転自在に連結され、ピストンシャフト34cのシリンダ本体34bからの突出によって押圧用ローラ32を固定側ローラ31に向かって押圧できるようになっている。これにより、一対のヒートローラ31、32によってウェブ101をニップすることができる。
【0043】
また、この本定着部3の本定着用ユニット33は、押圧用ローラ32を固定側ローラ31に向かって押圧する際に、駆動シリンダ装置34のピストンシャフト34cの先端に突設されている当接片34dが当接されるストッパ38を具備している。
前記ストッパ38はフレーム11に固定して設けられている。このストッパ38は、フレーム11に固定された固定ブロック38aと、この固定ブロック38aに螺着され回転操作によって該固定ブロック38aからの突出寸法を変更できるボルト38bと、このボルト38bに螺着され締め付けることで前記ボルト38bを固定ブロック38aに固定するための固定用ナット38cと、前記ボルト38bの前記固定ブロック38aから突出された先端に形成され前記駆動シリンダ装置34のピストンシャフト34c先端の当接片34dが当接される頭部38dとを具備している。
この本定着用ユニット33にあっては、ボルト38bの固定ブロック38aに対する螺着位置の変更によって、ボルト38bの固定ブロック38aからの突出寸法を変更することで、一対のヒートローラ31、32がウェブ101をニップするニップ力を調整できる。
【0044】
一対のヒートローラ31、32の間にウェブ101をニップした状態(図3実線で示す状態)から、ピストンシャフト34cをシリンダ本体34b内に引き込み、ピストンシャフト34cのシリンダ本体34bからの突出量を縮小すれば、押圧用ローラ32を固定側ローラ31から離隔させるように移動できる。これにより、一対のヒートローラ31、32の間にウェブ101をニップした状態を解除でき、一対のヒートローラ31、32間に、ウェブ101の挿入、取り出しを楽に行える距離を確保できる。
このとき、図3中仮想線で示すように、駆動シリンダ装置34のピストンシャフト34c先端の当接片34dが、ストッパ38のボルト38bの頭部38dから離隔される。このように、駆動シリンダ装置34のピストンシャフト34c先端の当接片34dが、ストッパ38から離隔(具体的にはボルト38bの頭部38dから離隔)された状態から、ピストンシャフト34cがシリンダ本体34bから突出すれば、押圧用ローラ32が固定側ローラ31に接近する。押圧用ローラ32の固定側ローラ31に対する接近は、ピストンシャフト34c先端の当接片34dがストッパ38に当接(具体的にはボルト38bの頭部38dに当接)したところで停止する。
【0045】
駆動シリンダ装置34のピストンシャフト34cの突出、引き込みによる押圧用ローラ32の移動(回転軸35を中心とする回転)は、該押圧用ローラ32の軸心、固定側ローラ31の軸心が互いに平行な状態を保ってなされる。一対のヒートローラ31、32によるウェブ101のニップは、ウェブ101をその厚み方向両側から一対のヒートローラ31、32によって挟み込むことでなされる。
【0046】
図3、図4に示すように、押圧用ローラ32は、金属製筒体32a1の外周面をゴム被覆層32a2によって被覆してなる外胴32a内に、赤外線ヒータ39を収納した構成になっている。赤外線ヒータ39は、仮定着器20の赤外線ヒータ202と同様の構成である。すなわち、通電により加熱されて赤外線を放射するフィラメント39aを赤外線透過性の収納管39b内に収納した、外観棒状の構成になっている。フィラメント39aは、仮定着器20の赤外線ヒータ202のフィラメント202aとして使用可能なものを採用できる。このフィラメント39aは収納管39bの長手方向全長にわたって収納されている。前記赤外線ヒータ39は、押圧用ローラ32の外胴32aの軸心上に配置され、外胴32aの軸心方向全長にわたって設けられている。押圧用ローラ32の外胴32aは、通電加熱されたフィラメント32bが放射する赤外線によって加熱される。
【0047】
この本定着用ユニット33の固定側ローラ31も、押圧用ローラ32と同様の構成になっている。図3において、符号31aは固定側ローラ31の外胴である。この外胴31aは、金属製筒体31a1の外周面をゴム被覆層31a2によって被覆した構成になっている。固定側ローラ31は、前記外胴31a内に赤外線ヒータ39を収納した構成になっている。固定側ローラ31において、赤外線ヒータ39は、固定側ローラ31の外胴31aの軸心上に配置され、外胴31aの軸心方向全長にわたって設けられている。固定側ローラ31の外胴31aは、通電加熱されたフィラメントが放射する赤外線によって加熱される。
【0048】
本定着用ユニット33は、赤外線ヒータ39によって加熱された一対のヒートローラ31、32によってウェブ101をニップすることで、加熱圧着によりトナーを確実にウェブ101に定着させることができる。また、このように、一対のヒートローラ31、32によって加熱圧着する構成であれば、ウェブ101の印刷面101aにおける表面性を良好に確保することができる。この結果、印刷面101aにおける表面性及び乾燥の両方を満たす良好な定着を実現できる。
【0049】
赤外線ヒータ39は、仮定着器20の赤外線ヒータ202と同様に、最大エネルギー波長が1.2〜2.5μmの赤外線を出力するものであることが好ましい。
この赤外線ヒータ39としては、例えば、通電によるフィラメント39aの温度が1400〜2100℃で、最大エネルギー波長が1.2〜1.7μm、最大エネルギー密度が120kw/mのもの、通電によるフィラメント39aの温度が950〜1200℃で、最大エネルギー波長が2.0〜2.5μm、最大エネルギー密度が100kw/m程度のものを用いることが好適である。
このような赤外線ヒータは加熱対象物の短時間での昇温に有効であるため、例えば、印刷準備時間後の立ち上げや一時停止後の再立ち上げにおいて、損紙の発生を少なくすることができる。これにより印刷物の生産効率の向上が可能となる。
また、ヒートローラ31、32の外胴のウェブ101と接触して温度が低下した部分を、ヒートローラ31、32の回転によってウェブ101と再接触するまでに所期の温度まで短時間で昇温させるといったことが可能であり、ヒートローラ31、32の表面温度の安定化にも有効に寄与する。
【0050】
図1に示すように、本定着部3は複数の本定着用ユニット33を具備し、ウェブ101を複数の本定着用ユニット33に経由させて、各本定着用ユニット33における加熱圧着によりウェブ101に対するトナーの本定着を行う構成である。このような構成であれば、電子写真印刷機10における電子写真印刷ユニット12の設置数や印刷速度に応じて、本定着用ユニット33の設置数を設定することにより、むらの無い安定した定着状態を得るといったことが可能である。また、複数の本定着用ユニット33によって、ウェブ101の加熱、加圧を複数回に分けて行うので、むらの無い安定した定着状態を容易かつ確実に得ることができ、しかも、これにより被記録材(ウェブ101)に紙じわや紙伸び等の障害が発生することを抑えることができる。
【0051】
また、このトナー定着装置1にあっては、仮定着部2についても、仮定着器20のサイズ(特に、ウェブ101の流れ方向に沿った方向の寸法)によって、電子写真印刷機10における電子写真印刷ユニット12の設置数や印刷速度に応じて、むらの無い安定した定着状態を得るべく対応することが可能である。
【0052】
また、このトナー定着装置1にあっては、複数の本定着用ユニット33を上下多段に設置した構成の本定着部3の上側に、仮定着部2を設けた構成であるため、印刷機の横方向における一定スペースにて、印刷色数や印刷速度などの印刷条件に応じた構成(仮定着器20のサイズの選択、及び/又は、本定着用ユニット33の設置数の設定)で自由に組み立てることができる。このため、印刷品質、生産効率、設置スペース、設備コストの面で無駄が無く、品質及び経済性に優れたシステムを提供することができる。
【0053】
前記電子写真印刷機10によれば、印刷ユニット12の転写ローラ125とバックアップローラ126との間へのバイアス電圧の印加に加え、赤外線ヒータ17から出力した加熱エネルギーによって印刷装置部10Aを送り移動されるウェブ101のユニット間延在部101cに吸収されているキャリア液の一部除去、トナーの一部溶融定着を行う構成により、ウェブ101から印刷ユニット12の転写ローラ125へのトナーの逆転移現象を効果的に抑えることができ、印刷品質の改善、向上を実現できる。
また、この結果、低速領域から高速領域までの広範囲の速度範囲で優れた印刷品質を安定維持することができる。
【0054】
また、この電子写真印刷機10によれば、トナー定着装置1には、印刷装置部10Aにて赤外線ヒータ17の加熱エネルギーによって、キャリア液の除去、トナーの定着がある程度進行した状態のウェブ101が送り移動によって供給されることになる。このため、トナー定着装置1の小型化、簡易化も容易に実現できる。
また、この電子写真印刷機10は、いわば、ウェブ101からのキャリア液の乾燥除去、トナーの定着を、印刷装置部10A(赤外線ヒータ17)、仮定着部2、本定着部3によって段階的に行う構成になっている。このため、キャリア液の乾燥除去、トナーの定着のための加熱によってウェブ101に与えるストレスを軽減でき、紙じわや紙伸び等の障害が発生しにくくなるといった利点もある。
【0055】
印刷装置部10Aは、印刷ユニット12を上下多段に設けた構成であるため、印刷機の横方向における一定スペースにて、印刷色数や印刷速度などの印刷条件に応じた構成(印刷ユニットの設置数の設定)で自由に組み立てることができる。このため、印刷品質、生産効率、設置スペース、設備コストの面で無駄が無く、品質及び経済性に優れたシステムを提供することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
印刷装置部は、多色印刷を行うために印刷色が互いに異なる複数の印刷ユニットを設けた構成に限定されず、例えば互いの印刷色が同一の印刷ユニットを複数含む構成、全ての印刷ユニットの印刷色が同一で単色重ね印刷を行う構成等も採用可能である。
上述の実施形態では、定着補助機構として赤外線ヒータを例示したが、本発明に係る定着補助機構としてはこれに限定されず、例えば、電熱線等の通電発熱体からの輻射熱によってウェブを加熱するヒータ(電熱ヒータ)、温風ヒータ等も採用可能である。
トナー定着装置としては、ウェブに吸収されたキャリア液の乾燥除去及びウェブへのトナーの溶融定着を実現できる構成であれば良く、上述の実施形態のように仮定着部、本定着部を具備する構成のトナー定着装置に限定されず、様々な構成のものを採用可能である。
【0057】
上述の実施形態では、複数の本定着用ユニット33を上下多段に設置した構成の本定着部3の上側に、仮定着部2が設けられた構成のトナー定着装置1、電子写真印刷機10を説明したが、本発明に係る電子写真印刷機にあっては、赤外線の照射によって仮定着を行う仮定着器を具備する仮定着部と、本定着用のヒートローラを含む複数のローラによってウェブをニップすることでトナーの本定着を行う本定着部とを具備する構成であれば良く、仮定着部と本定着部との位置関係、本定着部の本定着用ユニットの設置数、設置位置については、上述の実施形態にて説明した構成に限定されるものでは無い。
【0058】
上述の実施形態では、本定着用ユニット33について一対のヒートローラ31、32によってウェブをニップして本定着を行う構成を例示したが、本定着ユニットとしては、ウェブをニップするためのローラとして、ヒートローラと、ヒートローラ以外のローラ(加熱機能が設けられていないローラ)とを具備する構成も採用可能である。
また、本定着部に設けられるヒートローラとしては、上述の実施形態に例示したような赤外線ヒータを内蔵した構成のものに限定されない。本発明は、このヒートローラとして、湿式の電子写真印刷機におけるトナー定着用の周知のヒートローラを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…トナー定着装置、2…仮定着部、20…仮定着器、201…仮定着器本体、202…赤外線ヒータ、203…送風ファン、21…熱遮蔽板、22…仮定着処理空間、23…エア流形成装置(送風機)、24…エア流形成装置(ブロア)、
3…本定着部、31…ヒートローラ(固定側ローラ)、32…ヒートローラ(押圧用ローラ)、33…本定着用ユニット、39…赤外線ヒータ、
10…電子写真印刷機、12…電子写真印刷ユニット、17…定着補助機構、赤外線ヒータ、17a…ヒータ本体、17b…反射面、17c…反射カバー、18…エネルギー出力制御部(赤外線出力制御部)、
101…ウェブ、101a…印刷面、101b…仮定着領域、101c…ユニット間延在部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体トナーとキャリア液とからなる現像液を用いる湿式の電子写真印刷機であって、
トナー像が形成される感光体ドラムと該感光体ドラムのトナー像をウェブに転写する転写ローラとを有する電子写真印刷ユニットが複数連設され、ウェブ流れ方向において電子写真印刷ユニット間に、前記ウェブのトナー及びキャリア液に加熱エネルギーを与えて前記キャリア液の一部を蒸発除去するとともに前記トナーのウェブ印刷面への定着度を高める定着補助機構が設けられていることを特徴とする電子写真印刷機。
【請求項2】
前記定着補助機構が、ウェブの印刷面に赤外線を照射する赤外線ヒータであることを特徴とする請求項1記載の電子写真印刷機。
【請求項3】
前記赤外線ヒータは、最大エネルギー波長が1.2〜2.5μmの赤外線を出力するものであることを特徴とする請求項2記載の電子写真印刷機。
【請求項4】
前記定着補助機構が前記ウェブのトナー及びキャリア液に与える加熱エネルギーの出力を、該加熱エネルギーによるウェブに対するトナーの定着度が該定着補助機構のウェブ流れ方向下流側の電子写真印刷ユニットによる前記ウェブへの画像転写に支障を生じない範囲で制御するエネルギー出力制御部を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項5】
前記電子写真印刷ユニットの転写ローラとバックアップローラとの間に、転写ローラからウェブ印刷面へのトナーの転移を生じやすくするバイアス電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項6】
複数の前記電子写真印刷ユニットが上下多段に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項7】
複数の前記電子写真印刷ユニットは互いの印刷色が異なることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項8】
さらに、電子写真印刷ユニットによる印刷が完了したウェブのキャリア液の乾燥除去、トナー定着を行うトナー定着装置を具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項9】
前記トナー定着装置は、前記電子写真印刷機にて送り移動されるウェブの印刷面に赤外線を照射する赤外線ヒータを有する仮定着器が設けられてなる仮定着部と、前記仮定着部のウェブ流れ方向下流側に設けられ、ヒートローラを含む複数のローラによってウェブをニップする1又は複数の本定着用ユニットを有する本定着部とを具備することを特徴とする請求項8記載の電子写真印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33650(P2011−33650A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176742(P2009−176742)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】